(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記の成分(A)〜(C)を含有し、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4〜6であり、かつ、染毛後の毛髪のpHが5.5〜6であることを特徴とする酸性染毛料組成物。
(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5〜4.5質量%。
(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005〜1.5質量%。
(C)酸性染料。
前記有機酸は、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の酸性染毛料組成物。
前記酸性染毛料組成物中における前記(B)緩衝剤の含有量に対する前記(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比は、1〜750であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸性染毛料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の酸性染毛料組成物を具体化した実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の酸性染毛料組成物は、(A)イオン性水溶性高分子化合物、(B)緩衝剤、(C)酸性染料を含有しており、例えば浸透促進剤及び有機溶剤を更に含有してもよい。
【0015】
(A)イオン性水溶性高分子化合物は、染毛処理後の毛髪の感触を向上させるとともに、酸性染毛料組成物のpH安定性を向上させる。(A)イオン性水溶性高分子化合物としては、アニオン性、カチオン性、及び両性の天然又は合成高分子が使用可能である。アニオン性高分子としては、例えばアラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、変性キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、アクリルアミド・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体(市販名;SIMULGEL NS,FL;セイワサプライ社製)、アクリル酸塩・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体(市販名;SIMULGEL EG;セイワサプライ社製)、及び(アクリロイルジメチルタウリン塩/メタクリル酸ベヘネス−25)共重合体(市販名;Aristoflex HMB;クラリアントジャパン社製)が挙げられる。カチオン性高分子としては、例えばカチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル4級アンモニウム塩・アクリルアミド共重合物、及び4級化ポリビニルピロリドン誘導体が挙げられる。両性高分子としては、例えばN−メタクリロイルエチルN,N−ジメチルアンモニウムα−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸ブチル共重合体(市販名;ユカフォーマーAM−75;三菱化学社製)、アクリル酸ヒドロキシプロピル・メタクリル酸ブチルアミノエチル・アクリル酸オクチルアミド共重合体(市販名;アンフォマー28−4910;ナショナルスターチ社製)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(市販名;マーコート280,295;カルゴン社製)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド・アクリル酸のターポリマー(市販名;マーコートプラス3330,3331;カルゴン社製)、及びアクリル酸・アクリル酸メチル・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム共重合体(市販名;マーコート2001;カルゴン社製)が挙げられる。
【0016】
酸性染毛料組成物中における(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量は、1.5〜4.5質量%、好ましくは2〜3.5質量%である。含有量が1.5質量%未満であると毛髪の感触及び粘度安定性が低下する場合がある。一方、含有量が4.5質量%を超えると、毛髪の感触が低下する場合がある。
【0017】
(B)緩衝剤は、酸性染毛料組成物のpHを所定範囲に規定し、それにより(C)酸性染料を毛髪タンパクに定着させる作用を発揮する。(B)緩衝剤は、有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される。有機酸としては、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸が挙げられる。無機酸としては、例えば塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、及び炭酸が挙げられる。それらの酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、及びトリエタノールアミン塩が挙げられる。これらの中で、長期保存時におけるpH安定性を向上させる観点から、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸が好ましい。さらに、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸がより好ましい。なお、上記有機酸の具体例は、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0018】
酸性染毛料組成物中における緩衝剤の含有量は、0.005〜1.5質量%、好ましくは0.01〜1質量%である。含有量が0.005質量%未満であると酸性染毛料組成物のpH安定性及び粘度安定性が低下する場合がある。一方、含有量が1.5質量%を超えると、染毛処理後の毛髪の感触が低下する場合があるとともに、酸性染料の保存安定性に影響を与えるおそれがある。
【0019】
酸性染毛料組成物中における(B)緩衝剤の含有量に対する(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比(A/B)は、好ましくは1〜750、より好ましくは2〜350、さらに好ましくは4.5〜100に規定される。かかる範囲内に規定することにより、長期保存時における酸性染毛料組成物の粘度安定性をより向上させることができる。また、pH変化に伴う感触の低下をより抑制することができる。
【0020】
(C)酸性染料は、毛髪を染色するために配合される。この酸性染料は、反応性がなく、それ自体で発色可能なものを示す。具体的には、「医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令」(昭和41年告示、厚生省)により定められた酸性染料等が挙げられ、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、及び黒色401号が挙げられる。なお、上記酸性染料の具体例は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0021】
酸性染毛料組成物中における酸性染料の含有量は、好ましくは0.001〜1質量%である。酸性染料の含有量が0.001質量%未満の場合には、染毛効果が十分に得られない場合がある。一方、酸性染料の含有量が1質量%を超える場合には、酸性染毛料組成物中における溶解性が十分に得られないおそれがある。
【0022】
浸透促進剤は、酸性染料の染毛力を向上させる。そのため酸性染毛料組成物は、好ましくは浸透促進剤を含有する。浸透促進剤としては、例えば炭素数4〜8の一価アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、芳香族アルコール、環状アルコール、及び低級アルキレンカーボネートが挙げられる。炭素数4〜8の一価アルコールとしては、例えばn−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、及びn−オクタノールが挙げられる。エチレングリコールアルキルエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノn−ブチルエーテルが挙げられる。芳香族アルコールとしては、例えばベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、フェニルジグリコール、α−メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、及びp−アニシルアルコールが挙げられる。環状アルコールとしては、例えばシクロヘキサノールが挙げられる。低級アルキレンカーボネートとしては、例えば炭酸エチレン、及び炭酸プロピレンが挙げられる。浸透促進剤の中でも、染毛力を向上させる効果に優れるという観点から、芳香族アルコールが好ましい。酸性染毛料組成物中における浸透促進剤の含有量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。含有量が0.1質量%未満であると十分な染毛力の向上効果が得られない場合がある。一方、含有量が20質量%を超えると、地肌汚れが生じやすくなる場合がある。
【0023】
有機溶剤は、酸性染料の染毛力を向上させる。そのため酸性染毛料組成物は、好ましくは有機溶剤を含有する。有機溶剤としては、例えば炭素数1〜3の一価アルコール(低級アルコール)、多価アルコールとしてのグリコール類及びグリセリン類、並びにジエチレングリコール低級アルキルエーテルが挙げられる。炭素数1〜3の一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールが挙げられる。グリコール類としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、及び1,3−ブチレングリコールが挙げられる。グリセリン類としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、及びポリグリセリンが挙げられる。ジエチレングリコール低級アルキルエーテルとしては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)が挙げられる。酸性染毛料組成物中における有機溶剤の含有量は、好ましくは0.1〜25質量%、より好ましくは2〜20質量%、さらに好ましくは5〜15質量%である。含有量が0.1質量%未満であると十分な染毛力の向上効果が得られない場合がある。一方、含有量が25質量%を超えると、地肌汚れが生じやすくなる場合がある。
【0024】
酸性染毛料組成物のpHは、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4〜6である。酸性染毛料組成物のpHをかかる範囲内に規定することにより、染毛後の毛髪内部のpHを本来の毛髪のpHである弱酸性領域、つまり5.5〜6の範囲に維持することができる。酸性染毛料組成物のpHは、上述した緩衝剤及び後述するpH調整剤を用いて調整することができる。
【0025】
酸性染毛料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて、例えば水、非イオン性の水溶性高分子化合物、油性成分、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、キレート化剤、上記以外のpH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。
【0026】
非イオン性の水溶性高分子化合物としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン、グアーガム、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。
【0027】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため酸性染毛料組成物は、好ましくは油性成分を含有する。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、及びシリコーンが挙げられる。
【0028】
油脂としては、例えばオリーブ油、ローズヒップ油、ツバキ油、シア脂、マカデミアナッツ油、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、及び卵黄油が挙げられる。ロウとしては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、及びラノリンが挙げられる。高級アルコールとしては、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、及びラノリンアルコールが挙げられる。
【0029】
炭化水素としては、例えばα−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、及びワセリンが挙げられる。高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、及びラノリン脂肪酸が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルとしては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、及びイソステアリルグリセリルエーテルが挙げられる。
【0030】
エステルとしては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸トリイソデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸ラウリル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸オクチルドデシル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、及びラノリン誘導体が挙げられる。
【0031】
シリコーンとしては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、脂肪酸変性ポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、グリセリン変性シリコーン、脂肪族アルコール変性ポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、及びポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。これらの油性成分の具体例は単独で使用されてもよく、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0032】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分の可溶化剤として酸性染毛料組成物の安定性を保持するために配合される場合がある。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0033】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤、リン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤、及びN−アシルアミノ酸型界面活性剤が挙げられる。アルキル硫酸エステル塩としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、及びラウリル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばポリオキシエチレン(以下、「POE」という)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤としては、例えばステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、及びテトラデセンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。リン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤としては、例えばPOEラウリルエーテルリン酸及びその塩が挙げられる。N−アシルアミノ酸型界面活性剤としては、例えばN−ラウロイルグルタミン酸塩類、及びN−ラウロイルメチル−β−アラニン塩類が挙げられる。
【0034】
カチオン性界面活性剤としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、及びメチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウムが挙げられる。
【0035】
両性界面活性剤としては、例えば2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、及びラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。
【0036】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、及びPOEオクチルフェニルエーテルが挙げられる。
【0037】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、及びモノミリスチン酸デカグリセリルが挙げられる。これらの界面活性剤の具体例は、単独で使用されてもよく、二種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0038】
糖としては、例えばソルビトール、及びマルトースが挙げられる。防腐剤としては、例えばパラベンが挙げられる。安定剤としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、及びタンニン酸が挙げられる。キレート化剤としては、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸塩、エデト酸、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、並びにヒドロキシエチリデンジホスホン酸及びその塩が挙げられる。pH調整剤としては、例えば2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、トリエタノールアミン(TEA)、及びアルギニンが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば亜硫酸塩が挙げられる。また「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0039】
酸性染毛料組成物の剤型は特に限定されず、例えば液状、ゲル状、フォーム状、及びクリーム状が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、及び乳化液が挙げられる。酸性染毛料組成物の毛髪への塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜使用することができる。例えばコーム又は刷毛を用いた塗布方法、手櫛による塗布方法、スプレー(噴霧)による塗布方法を挙げることができる。
【0040】
次に、本実施形態の酸性染毛料組成物の作用について説明する。
本実施形態の酸性染毛料組成物は毛髪に塗布された後に、所定時間放置される。そして毛髪は、その表面における酸性染料の吸着、及び毛髪の内部への酸性染料の浸透により、所望の色調に染色される。染毛処理後、毛髪内部のpHは、本来の毛髪内部のpHである弱酸性領域、つまり5.5〜6の範囲に維持される。これにより、pH変動に伴う感触の低下を抑制することができる。また、施術時のpH変動に伴う酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる。つまり、酸性染毛料組成物で染毛処理した後、続けて酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理する場合、酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすことがないため、酸性染料を除染することなく、酸化染料をさらに重ね塗りした場合に予測される色調通りに染毛することができる。また、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、続けて酸性染毛料組成物で染毛処理する場合、先に染色した酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすことがないため、酸性染毛料組成物をさらに重ね塗りした場合に予測される色調通りに染色することができる。
【0041】
以上により、本実施形態の酸性染毛料組成物は、酸性染毛料組成物で染毛処理した後、続けて酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理する染毛方法、又は酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、続けて酸性染毛料組成物で染毛処理する染毛方法に好ましく適用することができる。かかる染毛方法としては、酸化染毛剤で染毛処理を完了した直後に、本実施形態の酸性染毛料組成物で染毛処理してもよい。また、酸化染毛剤で染毛した後、数日から数週間、1ヶ月経過後に酸性染毛料組成物で染毛してもよい。同様に、本実施形態の酸性染毛料組成物で染毛処理を完了した直後に、酸化染毛剤で染毛してもよい。また、酸性染毛料組成物で染毛した後、数日から数週間、1ヶ月経過後に酸化染毛剤で染毛してもよい。
【0042】
かかる染毛方法に用いられる酸化染毛剤としては、公知のものを適宜採用することができる。例えば、酸化染毛剤は、アルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とから構成される2剤式の酸化染毛剤が挙げられる。
【0043】
アルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤の作用を促進することにより、毛髪の染色性を向上させる。アルカリ剤としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ハロゲン化アンモニウム、並びに無機系アンモニウム塩として、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩が挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えばモノエタノールアミン、及びトリエタノールアミンが挙げられる。ハロゲン化アンモニウムとしては、例えば塩化アンモニウムが挙げられる。ケイ酸塩としては、例えばケイ酸ナトリウム、及びケイ酸カリウムが挙げられる。炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウム、及び炭酸アンモニウムが挙げられる。炭酸水素塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素アンモニウムが挙げられる。メタケイ酸塩としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、及びメタケイ酸カリウムが挙げられる。硫酸塩としては、例えば硫酸アンモニウムが挙げられる。リン酸塩としては、例えばリン酸第1アンモニウム、及びリン酸第2アンモニウムが挙げられる。これらの中で、染毛力向上の観点から、アンモニア及びアンモニウム塩が好ましい。
【0044】
アルカリ剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは第1剤及び第2剤を混合した酸化染毛剤において、その酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHが好ましくは7〜9.5の範囲となる量である。pHが7未満では、第2剤の酸化剤の作用が十分に促進されないおそれがある。混合液のpHが9.5を超えると、酸性染毛料組成物で染毛した毛髪に重ね塗りする場合、又は酸化染毛剤で染毛処理後に酸性染毛料組成物を重ね塗りする場合に色調の変色が生じる場合がある。
【0045】
酸化染料は、第2剤に含有される酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類される。酸化染料は少なくとも染料中間体を含んでいる。
【0046】
染料中間体としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0047】
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、α−ナフトール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、及びそれらの塩が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料、及び直接染料から選ばれる少なくとも一種を適宜含有してもよい。また、第1剤に含有される、前述した成分以外の成分としては、酸性染毛料組成物に含有される染料以外の成分、例えば水、水溶性高分子化合物、油性成分、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、キレート化剤、pH調整剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が挙げられる。
【0048】
第2剤は、酸化剤を含有する。酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンを脱色する。酸化剤としては、例えば過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物が挙げられる。第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは0.1〜15.0質量%であり、より好ましくは2.0〜9.0質量%であり、最も好ましくは3.0〜6質量%である。酸化剤の含有量が0.1質量%未満では、メラニンを十分に脱色することができない場合がある。酸化剤の含有量が15.0質量%を超えると、毛髪に損傷等が発生するおそれがある。
【0049】
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、酸化染毛剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される、アルカリ剤以外の成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
【0050】
酸化染毛剤は、第1剤と第2剤とが混合された後、次いで、必要量の混合物が薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布され、所定時間放置後、洗浄及び乾燥処理することにより染毛処理が施される。
【0051】
本実施形態の酸性染毛料組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の酸性染毛料組成物では、(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5〜4.5質量%、(B)有機酸とその塩、及び無機酸とその塩から選ばれる少なくとも一種として構成される緩衝剤0.005〜1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有するとともに、酸性染毛料組成物の10質量%水溶液のpHが4〜6に調整される。したがって、染毛処理後、毛髪内部のpHは、本来の毛髪内部の等電点である弱酸性領域、つまり5.5〜6の範囲に維持される。よって、酸性染料を含有する酸性染毛料組成物において、pH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色を抑制することができる。
【0052】
(2)また、酸性染毛料組成物の長期保存時における粘度安定性及びpH安定性を向上させることができる。
(3)好ましくは(B)緩衝剤を構成する有機酸として、酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、及びピロリドンカルボン酸から選ばれる少なくとも一種が用いられる。したがって、長期保存時における酸性染毛料組成物のpH安定性をより向上させることができる。また、pH変化に伴う感触の低下及び酸化染毛剤の色調の変色をより抑制することができる。
【0053】
(4)好ましくは、酸性染毛料組成物中における(B)緩衝剤の含有量に対する(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比は、1〜750である。したがって、長期保存時における酸性染毛料組成物の粘度安定性をより向上させることができる。また、pH変化に伴う感触の低下をより抑制することができる。
【0054】
(5)本実施形態の酸性染毛料組成物は、好ましくは、酸性染毛料組成物で染毛処理した後、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理する染毛方法に適用される。したがって、酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすことがないため、酸性染料を除染することなく、酸化染料をさらに重ね塗りした場合に予測される色調通りに染毛することができる。
【0055】
(6)本実施形態の酸性染毛料組成物は、好ましくは、酸化染料を含有する酸化染毛剤で染毛処理した後、酸性染毛料組成物で染毛処理する染毛方法に適用される。したがって、先に染色した酸化染毛剤の染毛色調に変色を引き起こすことがないため、酸性染毛料組成物をさらに重ね塗りした場合に予測される色調通りに染毛することができる。
【0056】
(7)本実施形態の酸性染毛料組成物と酸化染毛剤を交互に繰り返して使用する染毛方法において、好ましくは、酸化染毛剤の10質量%水溶液のpHは、7〜9.5である。したがって、第2剤の酸化剤の作用を十分に促進することができるとともに、酸性染毛料組成物で染毛した毛髪に重ね塗りする場合、又は酸化染毛剤で染毛処理後に酸性染毛料組成物を重ね塗りする場合に色調の変色を抑制することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、酸性染毛料組成物を構成する各成分を全て配合する1剤式として構成した。しかしながら、各成分を分離して複数剤式に構成し、使用直前にそれらを混合するよう構成してもよい。
【0058】
・上記実施形態において、酸化染毛剤をアルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と酸化剤を含有する第2剤とからなる2剤式として構成した。しかしながら、各構成成分を全て配合する1剤式として構成してもよく、各構成成分を分離して3剤式以上の複数剤式に構成し、使用直前にそれらを混合するよう構成してもよい。
【0059】
・上記実施形態において、酸性染毛料組成物の製品形態は、ヘアマニキュアの他に、例えばカラートリートメントであってもよい。なお、ヘアマニキュアは、一度の染毛作業により、所望する色調に染め上げる染毛料である。一方、カラートリートメントは、日常的なヘアケア等により毛髪に適用されることで、染毛処理が繰り返される結果、所望する色調へ徐々に染め上げる徐染性の染毛料である。
【実施例】
【0060】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
表1,2に示される各成分を混合して各実施例及び比較例の酸性染毛料組成物を調製した。得られた酸性染毛料組成物を白髪混じりの人毛毛束に刷毛を用いて塗布し、40℃で20分放置した後、通常のシャンプーにて洗浄し、次いで乾燥させることにより染毛処理毛束とした。かかる染毛処理毛束について、染毛処理後の毛髪内部のpH及び毛髪の感触について評価を行った。また、各例の酸性染毛料組成物及び酸化染料を含有する酸化染毛剤を用いて繰り返し染毛処理した場合の色調の変色抑制効果を評価した。また、各実施例及び比較例の酸性染毛料組成物についてpH安定性及び粘度安定性について評価を行った。それらの評価結果を表1,2に示す。なお、表1,2における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。また、表中「成分」欄における(A)〜(C)の表記は、それぞれ本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における「a」の表記は、本願請求項記載の成分(A)の対比化合物を示す。
【0061】
表中「(A)の合計質量/(B)の合計質量」は、酸性染毛料組成物中における(B)緩衝剤の含有量に対する(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比(A/B)を示す。また、酸性染毛料組成物のpHは、粘度を下げるために各調製された酸性染毛料組成物を水で10倍希釈した10質量%水溶液のpHを示す。また、後述する表3中の酸化染毛剤のpHは、粘度を下げるために各調製された第1剤と第2剤を混合した混合物を水で10倍希釈した10質量%水溶液のpHを示す。
【0062】
表中のイオン性水溶性高分子化合物Aは、Aristoflex HMB((アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス−25)共重合体:クラリアントジャパン社製)を使用した。イオン性水溶性高分子化合物Bは、SIMULGEL EG((アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、イソヘキサデカン、ポリソルベート80、及び水の混合原料:セイワサプライ社製)を使用した。表中の配合量を示す数値は、イオン性水溶性高分子化合物の純分を示している。
【0063】
<染毛処理後の毛髪内部のpH>
染毛処理した毛髪を約5mmに切断し、約1gを計りとり、凍結粉砕装置(FREEZER/MILL、Spex Industries Inc.N.J.U.S.A製)の粉砕用セルにと金属製粉砕用バーとともに入れ、液体窒素で20分冷やす。毛髪が完全に凍結したのを確認したのち、20分間粉砕を行い、毛髪パウダーを得た。毛髪パウダー0.5gを計りとり、精製水2gを加えペースト状水溶液を得た。ペースト状水溶液約1gを計りとり、コンパクトpHメータ<Twin pH>AS212形(堀場製作所社製)を用いてpHを測定した。
【0064】
<感触>
染毛処理後の人毛毛束について、パネラー10名が手で触れることにより、感触が良いか否かを判断した。パネラー10人中「良い」と答えた人が8人以上を評価5、パネラー10人中「良い」と答えた人が6〜7人を評価4、パネラー10人中「良い」と答えた人が4〜5人を評価3、パネラー10人中「良い」と答えた人が2〜3人を評価2、パネラー10人中「良い」と答えた人が1人以下を評価1とした。
【0065】
<pH安定性>
各例における酸性染毛料組成物を60℃の恒温槽に入れ、1週間保存した。1週間保存後の酸性染毛料組成物のpHを測定した。調製直後の酸性染毛料組成物のpH及び1週間保存後の酸性染毛料組成物のpHから比率(=調製直後のpH/1週間保存後のpH)を算出した。この比率が0.99以上1.01未満(非常に優れる:5)、pH比率が0.97以上0.99未満又は1.01以上1.03未満(優れる:4)、pH比率が0.95以上0.97未満又は1.03以上1.05未満(良好:3)、pH比率が0.93以上0.95未満又は1.05以上1.07未満(やや悪い:2)及びpH比率が0.93未満又は1.07以上(悪い:1)の5段階で評価した。
【0066】
<粘度安定性>
各例における酸性染毛料組成物を60℃の恒温槽に入れ、1週間保存した。1週間保存後の酸性染毛料組成物の粘度をB型粘度計にて、BLアダプター(回転数60rpm、25℃、1分間の条件)、又はTV−10M形粘度計/デジタル形にて、ローターNo.3、ローターNo.4にて(回転数3rpm、6rpm、12rpm、25℃、1分間の条件)で測定した。調製直後の酸性染毛料組成物を同条件で測定した粘度及び1週間保存後の酸性染毛料組成物の粘度から粘度比率(=調製直後の粘度/1週間保存後の粘度)を算出した。この粘度比率が0.80以上1.20未満(非常に優れる:5)、粘度比率が0.60以上0.80未満又は1.2以上2.0未満(優れる:4)、粘度比率が0.40以上0.60未満又は2.0以上4.0未満(良好:3)、粘度比率が0.20以上0.40未満又は4.0以上6.0未満(やや悪い:2)及び粘度比率が0.20未満又は6.0以上(悪い:1)の5段階で評価した。
【0067】
<酸性染毛料組成物を用いた染毛処理の後に酸化染毛剤を用いて染毛処理した場合の色調の変色抑制効果>
上記のように酸性染毛料組成物を用いて処理された各例の染毛処理毛束について、さらに続けて酸化染料を含有する酸化染毛剤を用いて染毛処理した場合の色調の変色抑制効果を評価した。酸化染毛剤として、表3の処方4に示される各成分を含有する組成物を使用した。尚、表3における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。そして、第1剤と第2剤とを1:1の質量比で混合して酸化染毛剤を調製した。得られた各例の酸化染毛剤を、各例の染毛処理毛束に刷毛を用いて塗布し、30℃にて30分間放置した。そして、毛束に付着した酸化染毛剤を水で洗い流した後、毛束にシャンプーを2回、及びリンスを1回施した。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。酸性染毛料組成物と酸化染毛剤で染毛処理が施された毛束について、色調の変化について評価した。
【0068】
上記のように染毛処理が施された毛束の色調について、専門のパネラーが標準光源下にて目視で観察し、色調の変色抑制効果が良好であると判定したパネラーの人数に基づいて評価した。パネラー10人中「良好」と答えた人が8人以上を評価5、パネラー10人中「良好」と答えた人が6〜7人を評価4、パネラー10人中「良好」と答えた人が4〜5人を評価3、パネラー10人中「良好」と答えた人が2〜3人を評価2、パネラー10人中「良好」と答えた人が1人以下を評価1とした。
【0069】
<酸化染毛剤と酸性染毛料組成物を用いて染毛処理した場合の色調の変色抑制効果>
表4の試験例1〜12に示される各順番で実施例17又は比較例9の酸性染毛料組成物と表3に示される各処方の酸化染毛剤を用いて染毛処理した場合の色調の変色抑制効果を評価した。先に酸性染毛料組成物を用いて染毛処理し、続けて酸化染毛剤を用いて染毛処理した場合(試験例4〜6、10〜12)、及び先に酸化染毛剤を用いて染毛処理し、続けて酸性染毛料組成物を用いて染毛処理した場合(試験例1〜3、7〜9)の2つの染毛方法で処理した。酸性染毛料組成物と酸化染毛剤の染毛方法は、上記の方法に従った。
【0070】
上記のように酸化染毛剤と酸性染毛料組成物で染毛処理が施された毛束の色調について、専門のパネラーが標準光源下にて目視で観察し、色調の変色抑制効果が良好であると判定したパネラーの人数に基づいて評価した。パネラー10人中「良好」と答えた人が8人以上を評価5、パネラー10人中「良好」と答えた人が6〜7人を評価4、パネラー10人中「良好」と答えた人が4〜5人を評価3、パネラー10人中「良好」と答えた人が2〜3人を評価2、パネラー10人中「良好」と答えた人が1人以下を評価1とした。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
表1に示されるように(A)イオン性水溶性高分子化合物1.5〜4.5質量%、(B)緩衝剤0.005〜1.5質量%、及び(C)酸性染料を含有するとともに、pH4〜6の範囲に調整された各実施例は、各評価が良好な結果であることが確認される。また、(B)緩衝剤としてクエン酸、乳酸、グリコール酸、又はピロリドンカルボン酸を使用する実施例9〜14は、酢酸又は酒石酸を使用する実施例1〜8に対し、pH安定性の評価がより優れることが確認される。(B)緩衝剤の含有量に対する(A)イオン性水溶性高分子化合物の含有量の質量比(A/B)が、2〜350である実施例15〜18は、実施例1〜14に対し、感触及び粘度安定性の評価がより優れることが確認される。
【0075】
また、表2に示されるように(A)イオン性の水溶性高分子化合物を含有しない比較例1は、感触及びpH安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(A)イオン性の水溶性高分子化合物の含有量が1.5質量%未満である比較例2は、感触及び粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(A)イオン性の水溶性高分子化合物の含有量が4.5質量%を超える比較例3は、感触の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(B)緩衝剤の含有量が0.005質量%未満の比較例4は、pH安定性及び粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(B)緩衝剤の含有量が1.5質量%を超える比較例5は、感触及び粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。(B)緩衝剤を含有しない比較例6は、pH安定性及び粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。酸性染毛料組成物のpHが4未満である比較例7,9は、染毛処理後の毛髪内のpHが5.5を下回るため、酸化染毛剤を用いた染毛処理において、色調の変色抑制効果が各実施例に比べて低いことが確認される。酸性染毛料組成物のpHが6を超える比較例8は、染毛処理後の毛髪内のpHが6を超えるため、毛髪の感触が各実施例に比べて低下することが確認される。(A)イオン性の水溶性高分子化合物の代わりに非イオン性の水溶性高分子化合物を含有する比較例10は、特に粘度安定性の評価が各実施例に比べて低いことが確認される。
【0076】
表4に示されるように、処方1の酸化染毛剤で染毛処理した直後の毛束に、実施例17の酸性染毛料組成物で染毛処理した毛束は色調変化が少ない。処方2及び処方3の各酸化染毛剤で染毛処理した直後の毛束に、実施例17の酸性染毛料組成物で染毛処理した毛束は色調の変色抑制効果が良好であることが確認された。実施例17の酸性染毛料組成物で染毛した直後の毛束に処方1〜処方3の各酸化染毛剤で染毛処理した各毛束は色調の変色抑制効果が良好であることが確認された。
【0077】
処方1の酸化染毛剤で染毛した直後の毛束に、比較例9の酸性染毛料組成物で染毛処理した毛束は、酸性染毛料組成物のpHが低いため色調変化が大きい。処方2及び処方3の各酸化染毛剤で染毛した直後の毛束に、比較例9の酸性染毛料組成物で染毛処理した毛束は、酸性染毛料組成物のpHが低いため色調変化がやや大きい。比較例9の酸性染毛料組成物で染毛した直後の毛束に処方1の酸化染毛剤で染毛処理した毛束は、酸性染毛料組成物のpHが低いため色調変化がやや大きい。比較例9の酸性染毛料組成物で染毛した直後の毛束に処方2,3の各酸化染毛剤で染毛処理した各毛束は、酸性染毛料組成物のpHが低いため色調変化が大きい。
【0078】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記酸性染毛料組成物と前記酸化染毛剤と交互に複数回繰り返し処理することを特徴とする染毛方法。