【実施例】
【0028】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0029】
図において、符号1は、自動車で例示される車両であり、また、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示しており、この前方は、特許請求の範囲で記載した「水平方向のある一方向」と合致している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の幅方向をいうものとする。
【0030】
上記車両1の車体2は、その前面を形成するバンパ3と、このバンパ3の後方近傍に立設されて、車体2の骨格部材を構成するラジエータサポート4とを備えている。このラジエータサポート4の後方の空間が車体2の前部に形成されたエンジンルームとされ、車両1の走行駆動用のエンジンが収容される。車体2の前部の上面には、上記エンジンルームを車体2の上方に開口させる車体開口5が形成され、この車体開口5をその上方から開閉可能に閉じるフード装置6が設けられる。
【0031】
上記フード装置6は、全体として板金製とされ、車体2の平面視(
図3)で、車体2の幅方向を通る車体中心線9を基準として左右対称形とされている。
【0032】
上記フード装置6は、上下に重ねられたアウタ、インナパネル10,11同士の接合により中空閉断面構造とされて、上記車体開口5をその上方から開閉可能に閉じるフード12と、このフード12の前部側が上、下方回動A,B可能となるようこのフード12の後端部を車体2側であってこの車体2の骨格部材であるエプロンメンバ13に枢支させる左右一対の枢支具14と、上記車体開口5を閉じたフード12の前端部を上記車体開口5の前部開口縁側である上記ラジエータサポート4に解除可能にロックするフードロック装置15とを備えている。
【0033】
上記フード12の前端部の内部空間18に設けられ、上記インナパネル11に第1スポット溶接S1により結合される補強パネル19が設けられている。この補強パネル19は、車体2の側面視(
図1)でU字形状をなし、上記インナパネル11に面接合される底パネル20と、この底パネル20の前端縁から前上方に向かうよう屈曲して一体的に延出する前パネル21と、上記底パネル20の後端縁から後上方に向かうよう屈曲して一体的に延出する後パネル22と、上記前、後パネル21,22の各延出端縁に一体的に形成される前、後外向きフランジ23,24とを備えている。そして、上記底パネル20の左右各側部が、それぞれ複数(3ヵ所)の前記第1スポット溶接S1により上記インナパネル11に結合されている。
【0034】
上記補強パネル19にその上方から重ねられ、前、後端縁部が上記補強パネル19の前、後外向きフランジ23,24に、それぞれ複数(4ヵ所)の前部、後部第2スポット溶接S2,S2´により結合されるデントパネル26が設けられている。このデントパネル26は、車体2の側面視(
図1)でハット形状をなし、その前後方向の中途部が接着剤27を介して上記フード12のアウタパネル10を支持している。
【0035】
上記補強パネル19の前後方向の中途部の上面に前部、後部第3スポット溶接S3,S3´により結合されるベースプレート30が設けられている。このベースプレート30の車体2の幅方向での寸法は上記補強パネル19のそれよりも短く(1/3程度)されている。また、上記ベースプレート30は、上記各パネル10,11,19,26よりも大きい板厚(1.2mm)とされている。上記ベースプレート30は、上記補強パネル19の上面に面接合される底プレート31と、この底プレート31の前端縁から前上方に向かうよう屈曲して一体的に延出する前プレート32とを備えている。そして、この前プレート32が上記補強パネル19の前パネル21の下部側に、複数(左右一対)の前部第3スポット溶接S3により結合されている。また、上記底プレート31の後端部が上記補強パネル19の底パネル20に、複数(左右一対)の後部第3スポット溶接S3´により結合されている。
【0036】
前記フードロック装置15は、車体2の側面視(
図1)でU字形状をなし、その前、後上端部35a,35bが上記ベースプレート30の前後方向の中途部に溶接により強固に固着されるストライカ35と、前記車体開口5の前部開口縁側である前記ラジエータサポート4の上端部に支持され、上記ストライカ35を解除可能にロックするロック機構36とを備えている。車体2の平面視(
図3)で、上記ストライカ35は、上記車体中心線9上に位置している。
【0037】
上記構成において、ロック機構36に対するストライカ35のロックを解除すれば、上記フード12の上方回動Aが可能となる。そして、このフード12の上方回動Aにより上記車体開口5を開ければ、この車体開口5を通し、車体2内部のエンジン等の保守点検が可能となる。
【0038】
一方、上記したように、フード12を上方回動Aさせて上記車体開口5を開いた状態(
図2中一点鎖線)とし、この状態から、上記フード12をある程度勢いよく下方回動Bさせて、上記車体開口5を衝撃的に閉じれば、上記フード12と共に下方回動Bするストライカ35が上記ロック機構36に自動的にロックされる。これにより、上記フード12は、上記車体開口5を閉じた状態に保持される。
【0039】
また、上記したように、フード12が車体開口5を閉じた状態に保持されているとき、上記フード12のアウタパネル10の上面を手押しするなどこのアウタパネル10に押圧力を与えたとする。この場合、この押圧力は、上記アウタパネル10、デントパネル26、ベースプレート30、ストライカ35、およびロック機構36を順次介して車体開口5の前部開口縁側のラジエータサポート4に支持される。これにより、上記アウタパネル10が上記押圧力によって容易に凹むという不都合の発生が防止される。
【0040】
上記構成において、ストライカ35の前、後上端部35a,35b間の前後方向におけるほぼ中央部を通って左右に延びる仮想直線39が設定される。車体2の平面視(
図3)で、上記仮想直線39の近傍に上記各第1スポット溶接S1の各溶接部のうちの一部(4つ)が配置され、かつ、上記仮想直線39の後方側に上記各第1スポット溶接S1の各溶接部のうちの他部(2つ)、および上記各後部第3スポット溶接S3´の各溶接部が配置される。一方、前記したように、補強パネル19とベースプレート30との各前部はそれぞれ前上方に向かって屈曲させられており、これら各前部同士が上記各前部第3スポット溶接S3により結合されている。また、上記各前部第2スポット溶接S2と各前部第3スポット溶接S3とは、前後方向で互いに近傍に配置されている。
【0041】
ここで、前記したように、フード12をある程度勢いよく下方回動Bさせて、上記車体開口5を衝撃的に閉じたとする。すると、この車体開口5を閉じた瞬間の上記フード12は、上記枢支具14とストライカ35とから反力として衝撃力を与えられると共に、これら枢支具14とストライカ35とにより前、後両端支持され、この際、上記フード12は、これ自体の慣性力Fで、その前後方向の中途部が下方に向かって凸となるよう撓みがちになる。すると、この撓みに伴い、上記フード12の前端部では、上記仮想直線39よりも後側の部分が下方に向かう一方、上記仮想直線39よりも前側の部分が上方に向かうよう上記仮想直線39を中心として回動Rしがちとなる。
【0042】
このため、上記構成にいう仮想直線39の近傍、つまり、上記慣性力Fにより上記フード12に与えられる曲げモーメントの中心の近傍、に配置される第1スポット溶接S1の各溶接部の一部では、これらに生じる応力は小さいままに保たれる。また、上記仮想直線39の後方側に配置される第1スポット溶接S1の各溶接部の他部、および後部第3スポット溶接S3´の各溶接部では、これらに生じる応力は圧縮応力となり、いずれにしても、上記各溶接部には引張応力の発生が防止される。よって、上記した各溶接部に剥離や亀裂が生じることは防止される。
【0043】
また、上記構成にいうように、補強パネル19とベースプレート30との各前部はそれぞれ上方に向かって屈曲されていて、この屈曲の方向は、上記仮想直線39回りの回動Rの接線方向に近づくため、上記補強パネル19とベースプレート30との前部同士を結合する前部第3スポット溶接S3の各溶接部には剪断応力が生じがちとなり、大きい引張応力の発生が防止される。よって、これら各溶接部に剥離や亀裂が生じることは防止される。
【0044】
また、上記したように補強パネル19とベースプレート30との前部同士は前部第3スポット溶接S3によって剥離等が生じないよう強固に結合されるため、前記したようにフード12の前端部が上記仮想直線39を中心として回動Rする場合には、上記したベースプレート30の前部と互いに強固に結合された補強パネル19の前部である前パネル21および外向きフランジ23は、上記衝撃力による変形が防止されたまま、上方に回動しようとする。また、その一方、上記補強パネル19に結合されるデントパネル26は上記フード12のアウタパネル10を支持しているため、このアウタパネル10により自由な上方移動が規制される。
【0045】
このため、上記補強パネル19の前端縁部である外向きフランジ23は上記デントパネル26の前端縁部に、その下方から圧接しがちとなる。これにより、上記補強パネル19とデントパネル26との各前端縁部を結合させる前部第2スポット溶接S2の各溶接部には圧縮応力が生じがちとなり、大きい引張応力の発生が防止される。よって、これら溶接部に剥離や亀裂が生じることは防止される。
【0046】
上記の結果、車体開口5をフード12が衝撃的に閉じる際、このフード12には車体2側から衝撃力が与えられるが、この衝撃力に対抗するフード12の各溶接部の耐久性が、より向上することとなる。
【0047】
そして、上記したフード12の各溶接部の耐久性の向上は、上記各スポット溶接S1〜S3,S2´,S3´の各溶接部位置の工夫によるものであって、補強材を別途に設けたり、各部材の板厚を大きくしたりすることなく達成される。よって、上記した耐久性の向上は、簡単な構成で、かつ、軽量に達成できる。
【0048】
車体2の平面視(
図3)で、上記各第1スポット溶接S1と各後部第3スポット溶接S3´との各溶接部のほとんどは、上記ストライカ35をその後方から囲むよう配置されている。より具体的には、上記溶接部は、上記ストライカ35よりも前方における上記車体中心線9上のある点を中心とした仮想円弧線41上にほぼ配置され、かつ、上記各スポット溶接S1,S3´のいずれも、上記仮想円弧線41の内側(前側)には配置されていない。
【0049】
このため、上記車体開口5をフード12が衝撃的に閉じる際、上記ストライカ35を介し上記各第1スポット溶接S1と各後部第3スポット溶接S3´との各溶接部に与えられる衝撃力は、これら各溶接部に分散して、より均等となるよう与えられることから、これら溶接部のうち、一部の溶接部に応力集中が生じて、剥離や亀裂が生じることは防止される。よって、この点でも、フード12に与えられる衝撃力に対抗する各溶接部の耐久性が、より向上する。
【0050】
なお、以上は図示の例によるが、特許請求の範囲にいう「水平方向のある一方向」とは、車体2の後方であってもよく、フード12は、車体2の後部に形成される車体開口5を開閉可能とするリヤフードであってもよい。また、上記第1スポット溶接S1および後部第3スポット溶接S3´の各溶接部の全てを
、上記仮想直線39の後方側に配置してもよい。