(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO
2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO
2の発生源としては化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い尿素等の原料(化学用途)、原油増産、及び地球温暖化対策として、大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの燃焼排ガスをアミン系CO
2吸収液と接触させ、燃焼排ガス中のCO
2を除去、回収する方法及び回収されたCO
2を大気へ放出することなく貯蔵する方法が精力的に研究されている。
【0003】
大量の燃焼排ガス中のCO
2を回収・貯蔵する実用的な方法として、例えばアミン水溶液等のCO
2吸収液と接触させる化学吸収法がある。前記のようなCO
2吸収液を用い、燃焼排ガスからCO
2を除去・回収する工程としては、CO
2吸収塔において燃焼排ガスとCO
2吸収液とを接触させる工程、CO
2を吸収した吸収液を吸収液再生塔において加熱し、CO
2を遊離させると共に吸収液を再生して再びCO
2吸収塔に循環して再使用するものが採用されている(特許文献1)。
【0004】
この従来の化学吸収法によるCO
2回収装置の運転は、吸収液再生塔において高温のスチーム等でアミン水溶液とCO
2とを分離させているが、このスチーム(エネルギー)の消費を最小化させる必要があった。そのため、これまで、二種類以上の異なるCO
2吸収液を混合して用いる方法(特許文献2、3)、CO
2吸収液を送給するプロセスを改良する方法が検討されていた(特許文献4)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0015】
本発明による実施例に係るCO
2回収システムについて、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係るCO
2回収システムの概略図である。
図1に示すように、CO
2回収システム10は、例えばボイラ11やガスタービン等の産業設備から排出されたCO
2を含有する排ガス12を冷却水13によって冷却する排ガス冷却装置14と、冷却されたCO
2を含有する排ガス12とCO
2を吸収するCO
2吸収液15とを接触させて前記排ガス12からCO
2を除去するCO
2吸収塔16と、CO
2を吸収したCO
2吸収液(リッチ溶液)17からCO
2を放出させて吸収液15を再生する吸収液再生塔18とを有する。
このシステムでは、前記吸収液再生塔18でCO
2を除去した再生吸収液(リーン溶液)15はCO
2吸収液15として再利用する。
【0016】
このCO
2回収システム10を用いたCO
2回収方法では、まずCO
2を含有する排ガス12は、排ガス送風機20により昇圧された後、排ガス冷却装置14に送られ、ここで冷却水13により冷却され、CO
2吸収塔16に送られる。
CO
2吸収塔16は、塔内部に充填部16A、16Bが設けられ、塔下部に配設される充填部16Aで排ガス12とCO
2吸収液15との対向接触効率を向上させている。塔上部に配設される充填部16Bでは、排ガス12と冷却水19との対向接触効率を向上させている。
【0017】
前記CO
2吸収塔16において、排ガス12は例えばアミン系の吸収液15と交向流接触し、排ガス12中のCO
2は、化学反応(R−NH
2+H
2O+CO
2→R−NH
3HCO
3)によりCO
2吸収液15に吸収され、CO
2が除去された浄化排ガス21は系外に放出される。CO
2を吸収した吸収液17は「リッチ溶液」とも呼称される。このリッチ溶液17は、リッチ溶液ポンプ22により昇圧され、リッチ・リーン溶液熱交換器23において、吸収液再生塔18でCO
2を除去されることにより再生された吸収液(リーン溶液)15との熱交換により加熱され、その後吸収液再生塔18に供給される。
【0018】
この熱交換されたリッチ溶液17は、吸収液再生塔18の上部から再生塔18内部に導入され、吸収液再生塔18内を流下する際に、水蒸気25による吸熱反応を生じて、大部分のCO
2を放出し、再生される。吸収液再生塔18内で一部または大部分のCO
2を放出した吸収液は「セミリーン溶液」と呼称される。このセミリーン溶液は、吸収液再生塔18下部に至る頃には、ほぼ全てのCO
2が除去された吸収液となる。このほぼ全てのCO
2が除去されることにより再生された吸収液は「リーン溶液」と呼称される。このリーン溶液15は再生過熱器24で飽和水蒸気25により間接的に加熱される。
また、吸収液再生塔18の塔頂部からは塔内においてリッチ溶液17及びセミリーン溶液から放出された水蒸気を伴ったCO
2ガス26が導出され、コンデンサ27により水蒸気が凝縮され、分離ドラム28にて水26bが分離され、CO
2ガス26aが系外に放出されて回収される。分離ドラム28にて分離された水26bは凝縮水循環ポンプ29にて吸収液再生塔18の上部に供給される。
再生された吸収液(リーン溶液)15は、前記リッチ・リーン溶液熱交換器23にて前記リッチ溶液17により冷却され、つづいてリーンソルベントポンプ30にて昇圧され、さらにリーンソルベントクーラ31にて冷却された後、再びCO
2吸収塔16に供給され、CO
2吸収液15として再利用される。
【0019】
なお、
図1中、符号11aはボイラ11やガスタービン等の産業設備の煙道であり、11bは煙突、18A、18Bは充填部、18Cはミストエリミネータ、32は水蒸気凝縮水である。前記CO
2回収システムは、既設の排ガス12源からCO
2を回収するために後付で設けられる場合と、新設排ガス12源に同時付設される場合とがある。煙突11bには開閉可能な扉を設置し、CO
2回収システムの運転時は閉止する。また排ガス12源は稼動しているが、CO
2回収システムの運転を停止した際は開放するように設定する。
【0020】
本実施例では、吸収液再生塔18から排出されたリーン溶液15の熱を回収するリーン溶液降温手段50を設けており、リーン溶液15の熱を有効利用するようにしている。
すなわち、リーン溶液15は吸収液再生塔18で飽和水蒸気25により間接的に加熱された水蒸気15aにより過熱されているので、120℃程度で系外に排出され、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入される。
この際、リーン溶液降温手段50によりその熱を回収し、リーン溶液15の温度を降下させることで、リッチ・リーン溶液熱交換器23の熱交換容量を小さくすることができる。
これは、リッチ溶液17の温度が50℃でリッチ・リーン溶液熱交換器23に導入される場合、熱交換するリーン溶液15の温度が120℃と高い場合には、熱交換後のリッチ溶液17の温度は110℃となるので、その温度差が60℃となる。
これに対し、リーン溶液15の温度を降下させることで、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入されるリーン溶液15の温度が100℃以下となり、熱交換後のリッチ溶液17の温度は95℃となる。
よって、リッチ溶液17の上昇が15℃も少なくなるので、その分リッチ・リーン溶液熱交換器23の熱交換容量も小さくなる。
【0021】
この結果、吸収液再生塔18に導入されるリッチ溶液17の温度が下がるので、このリッチ溶液17からほぼ全てのCO
2を除去するためのリボイラー熱量を大幅に下げることができる。
【0022】
ここで、リボイラー熱量とは、吸収液再生塔18において、吸収液を再生させるために必要な熱容量をいう。
その内訳は、(a)吸収液を再生するための反応熱量Q
1、(b)吸収液再生塔18から溶液として持ち出される損失熱量Q
2、(c)吸収液再生塔18からCO
2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q
3の総和Q
Rをいう。
本実施例によれば、リーン溶液15の熱を回収するリーン溶液降温手段50を設けることにより、リボイラ熱量の総和を減らすことができ、この結果リボイラ熱量が低下するので、吸収液再生塔18側での熱使用量を大幅に低減することができる。
【実施例2】
【0023】
本発明による実施例に係るCO
2回収システムについて、図面を参照して説明する。
図2は、実施例2に係るCO
2回収システムの概略図である。
図2に示すように、CO
2回収システム10Aにおけるリーン溶液降温手段50としては、リーン溶液15をフラッシュさせるフラッシュドラム51と、このフラッシュさせた水蒸気を吸収液再生塔18内に圧力をかけて供給するフラッシュ蒸気コンプレッサ52とから構成されている。
【0024】
フラッシュドラム51でリーン溶液15をフラッシュすることで、リーン溶液15は100℃となる。そして、リーン溶液ポンプ53を介してリッチ・リーン溶液熱交換器23に導入されるリーン溶液15の温度は100℃以下となる。
【0025】
このように、吸収液再生塔18から排出されるリーン溶液の温度T
1が例えば120℃の場合、フラッシュドラム51でリーン溶液15をフラッシュすることで、フラッシュの後のリーン溶液15の温度T
2は100℃となる。
【0026】
例えばリッチ溶液17の温度T
3が50℃の場合、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入されるリーン溶液15の温度T
2が100℃以下で熱交換されるので、熱交換後のリッチ溶液17の温度T
4は95℃となる。なお、リーン溶液15の熱交換後の温度T
5は55℃に低下する。なお、水蒸気として外部に排出する温度T
6は82.5℃である。
ここで、吸収液再生塔18の塔内は0.9kg/cm
2Gである。
【0027】
よって、吸収液再生塔18に導入されるリッチ溶液17の温度が従来よりも低いので、吸収液再生塔18でのリボイラ熱量の低下を図ることができる。
ここで、吸収液再生塔18のリボイラ熱量の内訳は、(a)リッチ溶液17を再生するための反応熱量Q1(404kcal/kgCO
2)、(b)吸収液再生塔18から溶液として持ち出される損失熱量Q2(55kcal/kgCO
2)、(c)吸収液再生塔18からCO
2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q3(86kcal/kgCO
2)の総和(545kcal/kgCO
2)となる。
【0028】
これに対し、従来技術のように、リーン溶液15の熱を回収しない場合、例えばリッチ溶液17の温度T
3が50℃の場合、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入されるリーン溶液15の温度T
2が120℃で熱交換されるので、熱交換後のリッチ溶液17の温度T
4は110℃となる。なお、リーン溶液15の熱交換後の温度T
5は60℃に低下する。なお、水蒸気として外部に排出する温度T
6は92.5℃である。
よって、リボイラ熱量の内訳は、(a)吸収液を再生するための反応熱量Q
1(404kcal/kgCO
2)、(b)吸収液再生塔18から溶液として持ち出される損失熱量Q
2(110cal/kgCO
2)、(c)吸収液再生塔18からCO
2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q
3(151kcal/kgCO
2)の総和Q
R(665kcal/kgCO
2)となる。
【0029】
図2の本発明に係るCO
2回収システム10Aの吸収液再生塔18のリボイラ熱量は、545kcal/kgCO
2であるのに対し、
図4の従来技術に係るCO
2回収システム10Cの吸収液再生塔18のリボイラ熱量は、665kcal/kgCO
2であり、大幅なリボイラ熱量の低減を図ることができることが判明した。
【0030】
このように、本発明によれば、表1に示すように、リーン溶液の熱を有効的に回収することで、吸収液再生塔18側における熱量の総和を大幅に低減することができると共に、ランニングコストの大幅な低減となる。
【0031】
【表1】
【0032】
なお従来技術における提案では、吸収液再生塔18の塔内に供給するリッチ溶液17の温度を上昇させて、塔内でのリボイラ熱量を下げることを主眼として検討していたが、本発明のように、塔内のみならず、(b)吸収液再生塔18から溶液(リーン溶液)として持ち出される損失熱量Q
2と、(c)吸収液再生塔18からCO
2と共に排出される水蒸気として持ち出される損失熱量Q
3(151kcal/kgCO
2)とを考慮して全体として低減することとしたので、リーン溶液15の熱を回収することで、システム全体のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【実施例3】
【0033】
本発明による実施例に係るCO
2回収システムについて、図面を参照して説明する。
図3は、実施例3に係るCO
2回収システムの概略図である。
図3に示すように、CO
2回収システム10Bにおけるリーン溶液降温手段50としては、ボイラ給水61の加熱に用いるボイラ給水熱交換器62から構成されている。
ボイラ給水61と熱交換することで、リーン溶液15は100℃以下とすることができ、リッチ・リーン溶液熱交換器23に導入されるリーン溶液15の温度は100℃以下となり、熱交換後のリッチ溶液17の温度は95℃となる。
【0034】
その内訳は、(a)吸収液を再生するための反応熱量Q
1(404kcal/kgCO
2)、(b)吸収液再生塔18から溶液(リーン溶液)として持ち出される損失熱量Q
2(55cal/kgCO
2)、(c)吸収液再生塔18から水蒸気26aとして持ち出される損失熱量Q
3(155kcal/kgCO
2)の総和Q
R(614kcal/kgCO
2)となる。
【0035】
図3の本発明に係るCO
2回収システム10Bの吸収液再生塔18のリボイラ熱量は、614kcal/kgCO
2であるのに対し、
図4の従来技術に係るCO
2回収システム10Cの吸収液再生塔18のリボイラ熱量は、665kcal/kgCO
2であり、大幅なリボイラ熱量の低減を図ることができることが判明した。
【0036】
以上より、本発明のCO
2回収システムによれば、CO
2回収量が1日当たり例えば1000t以上の処理量となる大型化した場合における吸収液再生に要するリボイラの熱エネルギーの大幅な軽減を図ることができ、システム全体の省エネルギー化を図ることができる。