(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737934
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】平板状ではないワークを選択的に表面処理するための方法
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20150528BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20150528BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20150528BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20150528BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
C23C26/00 L
B23K1/00 330E
B23K1/19 B
H01L23/36 Z
H05K7/20 B
【請求項の数】9
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-504629(P2010-504629)
(86)(22)【出願日】2008年4月17日
(65)【公表番号】特表2010-530027(P2010-530027A)
(43)【公表日】2010年9月2日
(86)【国際出願番号】EP2008054623
(87)【国際公開番号】WO2008128943
(87)【国際公開日】20081030
【審査請求日】2011年3月16日
【審判番号】不服2014-5466(P2014-5466/J1)
【審判請求日】2014年3月25日
(31)【優先権主張番号】102007019634.4
(32)【優先日】2007年4月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ペーター クルーゲ
【合議体】
【審判長】
鈴木 正紀
【審判官】
河本 充雄
【審判官】
松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】
実開平5−54555(JP,U)
【文献】
実開昭58−42167(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0095748(US,A1)
【文献】
特開平8−274225(JP,A)
【文献】
特開2007−88030(JP,A)
【文献】
特開2001−217389(JP,A)
【文献】
特開平4−58550(JP,A)
【文献】
特開平2−181461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D13/00-21/22
C25D 5/00-7/12
C23C18/00-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面(4)及び第2の面(5)を有する第1のワーク(1)に設けた少なくとも1つの金属化された領域(3)において、前記第1のワーク(1)を選択的に表面処理する方法であって、前記第1のワーク(1)に、少なくとも1つの別のワーク(2)を、前記第1の面(4)において、少なくとも部分領域で、外部に対してシールするように解離可能に互いに結合させ、1つの処理段階で、前記結合によりカバーされていない領域を選択的に表面処理する方法において、
前記選択的表面処理によって、前記金属化された領域(3)とは別の金属被膜を形成し、
平板状に形成されていない前記第1のワーク(1)の前記第1の面(4)及び前記第2の面(5)は、それぞれ異なる大きさの表面積を有し、前記第1のワーク(1)がセラミックであって、前記第2の面(5)を、ヒートシンクとすると共に、前記金属化された領域(3)を設けるための面とすることを特徴とする、選択的に表面処理する方法。
【請求項2】
前記別のワーク(2)を平板状に形成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のワーク(1)の上記面の一方及び/又は前記別のワーク(2)に扁平な表面を形成する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記選択的表面処理を、少なくとも1つの前記金属化された領域(3)における化学的及び/又は電気的な析出又はこれらの組み合わせによって行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1のワーク(1)が、回路支持体である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
少なくとも前記第1のワーク(1)の一個所に前記金属化された領域(3)を設け、前記金属化された領域(3)をDCB(direct copper bonding / 直接的銅ボンディング)法又はAMB(active metal brazing / アクティブはんだ付け)法によって前記第1のワーク(1)に設ける、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1のワーク(1)と前記別のワーク(2)との解離可能な結合のために、フレーム状の又は平板状の結合部材を使用し、前記結合部材は、前記第1のワーク(1)のカバーすべき表面のネガ輪郭に相応しており、前記結合部材に、前記別のワーク(2)を、付着性及び/又は接着性及び/又はシール性の材料を使用して、及び/又は負圧を使用して保持する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
同じ又は異なる選択的表面処理を、時間的に連続する複数の処理段階で行い、選択的表面処理の各処理段階の前に、前記第1及び第2のワーク(1,2)を、互いに密に結合させる、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第1のワークと前記別のワークとは、シールエレメントによって結合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式のワークを選択的に表面処理するための方法に関する。
【0002】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10154316号明細書により、このような形式の、ワークを選択的に表面処理するための方法が公知である。
【0003】
平板状のワークを、2つの金属的な表面側の少なくとも一方において、選択的に表面処理をするためのこのような方法は、少なくとも2つの同様のワークを、その第1の表面側の一方で、少なくとも1つの部分領域において外部に対してシールするように、解離可能に互いに結合させ、1つの処理段階で、金属的な表面側の、結合によりカバーされていない領域を選択的に表面処理することを特徴とする。
【0004】
銅シートの構造化後、1つの方法ステップで、所定の金属被覆部でのみ選択的な表面処理が行われるが、表面処理を行わない金属被覆部では行われない。このために、2つの多重基板がそれぞれ、表面処理を行わない金属被覆部を有した側で、結合部材を介して密に、かつ再び解離可能に互いに結合されていて、表面処理を行わない金属被覆部は、結合部材によって外部に対して完全にカバーされている。
【0005】
表面処理を行わない金属被覆部は、結合部材と、両多重基板のセラミック層とによって密に閉じられた空間に存在し、従って、続く表面処理は、表面処理が行われるべきである露出した金属被覆部でのみ行われる。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10154316号明細書には、2つの同じ平板状のワーク上に形成された、片側又は両側の金属被覆部を有した平板状のワークしか記載されていない。
【0007】
本発明の課題は、請求項1の上位概念で記載した形式の方法を改善して、金属化された領域の良好な冷却及び容易な分配が可能であるようにすることである。
【0008】
この課題を解決するために本発明の構成では、少なくとも第1のワークを平板状に形成せず、少なくとも一方の側で、全面的に又は部分面的に、同様に又は異なるように金属化された又は金属化されていない領域又は中空室又はこれらの組み合わせを設け、選択的表面処理の際に、少なくとも1つの別の金属的なコーティング又は別の金属的な被覆を取り付けるようにした。第1のワークの平板状ではない構成により、金属化された領域の良好な冷却及び良好な分配が得られる。良好な冷却は、表面の任意な構成により得られる。ワークがプレート状に構成されていないので、常に、表面積が拡大され、ひいては、冷却が改善され、複数の利用面が提供される。
【0009】
本発明の構成では、ワークの上面及び下面を、それぞれ異なる大きさの表面積を有するように形成する。
【0010】
本発明の特別な構成では、第1のワークの上記面の一方及び/又は別のワークの上記面の一方に偏平な表面を形成する。
【0011】
第1のワークに結合される少なくとも1つの別のワークを平板状に形成する。
【0012】
有利な構成では、選択的表面処理を、少なくとも1つの金属化された層における化学的及び/又は電気的な析出又はこれらの組み合わせによって行う。
【0013】
本発明の構成では、シールし、かつ再び解離可能な、第1のワークと少なくとも1つの別のワークとの結合を、これにより第1のワークの少なくとも一方の表面が全面的に、又は部分的に、結合によりカバーされるように行う。
【0014】
有利には、ワークの少なくともいくつかを、金属、セラミック、ポリマ、又はこれらの組み合わせから製造する。
【0015】
有利には、少なくとも第1のワークが、実装された又は実装されていない、導電性でないまたはほぼ導電性でない回路支持体であって、少なくとも1つの全面的な又は部分面的な金属被覆部が少なくとも1つの表面に支持されている。
【0016】
本発明の構成では、少なくとも第1のワークが、又は有利には別のワークも、セラミック・金属基板である。ドイツ連邦共和国特許出願公開第102004033227号明細書により例えば、金属・セラミック基板が公知である。
【0017】
有利には、少なくとも第1のワークの一個所に金属被覆部を設け、該金属被覆部をDCB(direct copper bonding / 直接的銅ボンディング)法又はAMB(active metal brazing / アクティブはんだ付け)法によってワークに結合する。
【0018】
有利には、第1のワークと少なくとも1つの別のワークとの再び解離可能な結合のために、フレーム状の又は平板状の結合部材を使用し、該結合部材は、第1のワークのカバーすべき表面のネガ輪郭に相応しており、前記結合部材に、別のワークを、付着性及び/又は接着性及び/又はシール性の材料を使用して、及び/又は負圧を使用して保持する。
【0019】
本発明の構成では、同じ又は異なる選択的表面処理を、時間的に連続する複数の処理段階で行い、選択的表面処理の各処理段階の前に、両ワークを、処理すべきではない表面側で互いに密に結合させる。
【0020】
本発明による構成では、エッチングプロセスのような除去プロセスも含む、同じ又は異なる選択的表面処理の時間的に連続する複数の処理段階を、カバーされていない領域で行う。
【0021】
有利には、ワークを形状的に相応に配置することにより、同時的又は選択的に、少なくとも2つの異なる選択的表面処理を行う。
【0022】
有利には、少なくとも1つのワークがセラミックのヒートシンクである。
【0023】
ヒートシンクとは、電気的又は電子的な構成部材又は回路のための支持体であって、導電的ではなく、または殆ど導電的ではなく、支持体に一体的に、熱を導出又は供給する冷却エレメントが設けられているものと理解されたい。有利にはこの支持体は、ボードであって、冷却エレメントは、加熱媒体又は冷却媒体を供給可能な孔、通路、リブ、及び/又は切欠である。支持体及び/又は冷却エレメントは、例えば少なくとも1つのセラミック構成部分又は、種々様々なセラミックの複合体から成っている。ヒートシンクは例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007014433号明細書又はドイツ連邦共和国特許出願公開第3709200号明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【0025】
以下に、本発明を2つの図面につき詳しく説明する。
【0026】
図1には第1のワーク1が示されている。このワーク1は、種々異なる金属化された領域又は金属被覆部3を有している。第1のワーク1の上面4及び/又は下面5の少なくとも1つの金属化された領域3において、ワーク1を選択的に表面処理するために、処理すべきではない領域6をカバーする。このために、ここに図示した構成では、唯一の別のワーク2が使用される。このワーク2は同様に、このワーク2の側に金属被覆部3を有している。この別のワーク2は、シールエレメント7を介して、処理すべきではない領域6上に、この処理すべきではない領域6が覆われるように載置される。この結合は、この別のワーク2が再び、第1のワーク1から取り外し可能であるように行われる。
【0027】
処理すべきではない領域6の結合若しくはカバーを行った後、1つの処理段階で、このような結合によりカバーされなかった領域の選択的表面処理が行われる。選択的表面処理は、有利には、少なくとも1つの金属的な層の化学的及び/又は電気的な析出、またはこれらの組み合わせによって行われる。
【0028】
本発明によれば、第1のワーク1は平板状に形成されていない。図示の実施例では、別のワーク2も平板状に形成されていない。平板状ではないとは、ワーク1,2の上面4と下面5が、それぞれ異なる大きさの表面積を有しているように形成されていることを意味する。第1のワーク1の上面4及び別のワーク2の上面4はこの場合、偏平な表面を有している。第1のワーク1と別のワーク2との間に位置し、シールエレメント7を介してシールされている空間8は、結合の保持を向上させるために、負圧を付与されても良い。
【0029】
図示したワークはセラミックから製造されており、セラミック製のセラミック・金属基板又はヒートシンクである。
【0030】
図2には、セラミックから成る第1のワーク1が示されており、このワーク1は偏平な上面4を有している。この上面4には、種々異なる金属化された領域3が設けられており、この上面4は回路支持体である。第1のワーク1の下面5は冷却リブ9を有しており、ヒートシンクである。ヒートシンクは例えば、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007014433号明細書に記載されている。
【0031】
選択的表面処理のために、処理すべきではない領域6が別のワーク2a,2b,2cによってカバーされる。この別のワーク2a,2b,2cは、シール部材7を介して第1のワークに、かつ互いに結合されている。第1のワーク1は平板状に形成されておらず、第1のワーク1の上面4は下面5とは異なる表面積を有している。
【0032】
別のワーク2aは平板状に形成されている。別のワーク2b,2cは平板状に形成されていない。第1のワーク1及び別のワーク2は、全ての側に金属被覆部3を有している。部分的にこれらの金属被覆部3には、別の金属被覆部又は構成素子が設けられる。
【0033】
別のワーク2bもセラミックから製造されており、それぞれ切欠11,12を有している。切欠12は円錐状であって、切欠11は球状に形成されている。別のワーク2cはU字形に形成されている。この場合も、シールされている空間は符号8で示されている。