(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737939
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】歯の漂白用調製品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/38 20060101AFI20150528BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20150528BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20150528BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
A61K8/38
A61Q11/00
A61K8/24
A61K8/42
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-525447(P2010-525447)
(86)(22)【出願日】2008年9月18日
(65)【公表番号】特表2010-540427(P2010-540427A)
(43)【公表日】2010年12月24日
(86)【国際出願番号】GB2008050836
(87)【国際公開番号】WO2009037505
(87)【国際公開日】20090326
【審査請求日】2011年5月18日
(31)【優先権主張番号】0718346.0
(32)【優先日】2007年9月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510075985
【氏名又は名称】エスエムティー リサーチ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SMT Research Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トッド クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】トリンブル シルヴィア
【審査官】
井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0202621(US,A1)
【文献】
米国特許第05648064(US,A)
【文献】
特表2006−504776(JP,A)
【文献】
特開平05−194165(JP,A)
【文献】
特表2003−508469(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/127053(WO,A1)
【文献】
特開昭50−069243(JP,A)
【文献】
特開2008−081442(JP,A)
【文献】
特表2008−519772(JP,A)
【文献】
特表2009−523782(JP,A)
【文献】
特表2008−533130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00〜 8/99
A61Q 1/00〜 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物、尿素、及びアルカリ金属ポリリン酸塩を含む出発物質から調合される付加物を含む歯の漂白用調製品であって、前記付加物の水溶液中のアルカリ金属ポリリン酸塩:過酸化物比が、0.05:1〜0.5:1の無水アルカリ金属ポリリン酸塩:過酸化水素溶液(35%(w/w)濃度)重量比に相当し、アルカリ金属ポリリン酸塩:尿素比が、0.1:1〜2.0:1の無水アルカリ金属ポリリン酸塩:尿素重量比に相当し、尿素:過酸化物比が、0.2:1〜1.0:1の尿素:過酸化水素溶液(35%(w/w)濃度)重量比に相当し、前記付加物が前記調製品において水性条件下で与えられ、且つ前記調製品及び/又は前記付加物の水溶液中のpHが、前記溶液を10倍に希釈した場合に少なくとも1.0上昇する、歯の漂白用調製品。
【請求項2】
前記pHの上昇が、5倍に希釈した場合に少なくとも0.5である、請求項1に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項3】
前記pHの上昇が、2倍に希釈した場合に少なくとも0.25である、請求項2に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項4】
前記溶液のpHが、50%(w/w)で7.0を超える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項5】
前記溶液のpHが、5%(w/w)に希釈した場合に8.0を超える、請求項4に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項6】
前記過酸化物及び尿素出発物質が共に過酸化尿素として与えられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項7】
過酸化物及び尿素が別個の出発物質として与えられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項8】
前記過酸化物が過酸化水素である、請求項7に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項9】
前記アルカリ金属ポリリン酸塩がアルカリ金属トリポリリン酸塩である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項10】
前記アルカリ金属トリポリリン酸塩がトリポリリン酸ナトリウムである、請求項9に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項11】
1つ又は複数のさらなる機能材料、賦形剤、担体、増粘剤、漂白剤、及び/又は安定剤を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の歯の漂白用調製品。
【請求項12】
過酸化物、尿素、及びアルカリ金属ポリリン酸塩を含む出発物質から調合される、漂白用組成物の調合において使用するのに適切な付加物であって、前記付加物の水溶液中のアルカリ金属ポリリン酸塩:過酸化物比が、0.05:1〜0.5:1の無水アルカリ金属ポリリン酸塩:過酸化水素溶液(35%(w/w)濃度)重量比に相当し、アルカリ金属ポリリン酸塩:尿素比が、0.1:1〜2.0:1の無水アルカリ金属ポリリン酸塩:尿素重量比に相当し、尿素:過酸化物比が、0.2:1〜1.0:1の尿素:過酸化水素溶液(35%(w/w)濃度)重量比に相当し、且つ前記付加物の水溶液中のpHが、前記溶液を10倍に希釈した場合に少なくとも1.0上昇する、付加物。
【請求項13】
過酸化物、尿素、及びアルカリ金属ポリリン酸塩を含む出発物質から調合される付加物を調製する方法であって、前記付加物の水溶液中のアルカリ金属ポリリン酸塩:過酸化物比が、0.05:1〜0.5:1の無水アルカリ金属ポリリン酸塩:過酸化水素溶液(35%(w/w)濃度)重量比に相当し、アルカリ金属ポリリン酸塩:尿素比が、0.1:1〜2.0:1の無水アルカリ金属ポリリン酸塩:尿素重量比に相当し、尿素:過酸化物比が、0.2:1〜1.0:1の尿素:過酸化水素溶液(35%(w/w)濃度)重量比に相当し、前記付加物の水溶液中のpHが、前記溶液を10倍に希釈した場合に少なくとも1.0上昇し、前記方法が、前記出発物質を準備すること、及び前記出発物質を、前記出発物質の溶液を提供するのに効果的な温度及び/又は圧力及び/又は攪拌条件下で、水溶液中で共に混合することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の漂白用調製品、及びその調合に有用な或る化学付加物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過酸化水素、過酸化カルバミド(過酸化尿素)、及び他の過酸化物を、歯の漂白ジェルの調合において漂白剤として使用できることがよく知られている。また、従来技術は、カルボキシポリメチレン(カルボポール)、ポロキサマー(プルロニック)、及びセルロースガム、並びに他の増粘剤を、過酸化物ジェルの調製においてゲル化剤として使用できることを開示している。
【0003】
従来、漂白性能を最適化するため、使用中に、そのような組成物のpHを調整することに多くの注意が払われてきた。
【0004】
このため、特許文献1は、カルシウムキレート剤の存在下での歯の漂白手順中に、6.0〜10.0という実質的に一定のpH範囲に維持される過酸化水素含有化合物を対象とする、歯を漂白するための歯科用組成物及び方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2006251591号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歯の漂白ジェルの調合者が直面する1つの難点は、特許文献1に認められるように、過酸化水素が水溶液中で、酸性条件下では安定であるが、アルカリ性条件下では高活性の漂白剤であるということである。
【0007】
本発明の概念では、過酸化水素が可逆反応:
H
2O
2=H
++OOH
−
のように解離し、漂白効果に関与するのはペルヒドロキシルイオン(OOH
−)であると考える。反応は可逆的であるため、H
+イオンを吸収する任意のアルカリが存在する場合、すなわちpH値が比較的高い場合、平衡が右にシフトする。酸性条件下では、豊富な水素イオンが存在するため、平衡が左にシフトし、より反応性の低い過酸化水素の安定性を支持する。
【0008】
歯の漂白ジェルの主成分として使用することのできる、比較的高いpHで安定な過酸化物溶液の改良型を製造することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、歯の漂白用組成物の調合において使用するのに適切な付加物であって、当該付加物が過酸化物、尿素、及びアルカリ金属ポリリン酸塩を含む出発物質から調合され、且つ当該付加物の水溶液中のpHが、当該溶液の希釈時に上昇する、付加物が提供される。
【0010】
本発明はまた、前記付加物を含む歯の漂白用調製品に関し、そのような調製品は、本発明の当該歯の漂白用調製品のpHもまた水溶液中で当該溶液の希釈時に上昇するように、任意の付加的成分の同一性、及び/又はこれらの成分の互いに対する及び/又は当該付加物に対する相対的比率に関して調合される。
【0011】
本発明者らは、付加物の出発物質を、好ましくは互いに対するそのw/w%比に関して注意深く選択することにより;、任意の付加的物質を、好ましくは任意の他の付加的物質に対する及び/又は付加物に対するそのw/w%比に関して注意深く選択することにより;、及び/又は成分を調合する順序又は様式を注意深く選択することにより、卓越した歯のホワイトニング性を示し、水溶液中で希釈時に(したがって、口内でのin situ使用時に)上昇するpHを有する歯の漂白用調製品を確実に提供することが可能であることを見出した。これにより、理論的には、使用時に歯に対して付加的な活性過酸化物イオンを放出させることにより、そのようなpHの上昇を示さない、又はpHの上昇が有意に低い従来技術の製剤に対して、優れた性能がもたらされる。
【0012】
付加物又は付加物の組み合わせ、又はそれらから作製される歯の漂白用調製品の驚くべき特徴は、当該付加物又は組み合わせ又は調製品の水溶液のpH値が、希釈時に相当の程度まで上昇するように見えることである。本発明者らは、本発明による或る付加物(下記実施例1に記載される付加物)のpHが、50%(w/w)水溶液中で約7.5であり、水で5%(w/w)に希釈すると約9.0に上昇することを見出した。
【0013】
好ましくは、前述の溶液のpHは、50%(w/w)で7.0を超える。
【0014】
好ましくは、前述の溶液のpHは、5%(w/w)で8.0を超える。
【0015】
本発明者らは、或る特定の従来技術の製剤が、そのような製剤中のカルボポールの存在に起因し得ると考えられる特性として、希釈時にわずかなpHの上昇を示し得ることを見出した。希釈時のわずかなpHの上昇は、製剤を使用する(すなわち歯に分散する)場合に過酸化物イオンを放出させる上で、幾らかの有益な効果を有し得るが、本発明者らは、本発明による調製品の優れた性能を実現するためには、希釈時にさらなる相当のpHの上昇が必要であるか、又は少なくとも望ましいと考える。本発明の調製品における付加物の化学的挙動は、本発明の組成物及び付加物が示す希釈時のpHの上昇と大いに、又は少なくとも有意に関与すると考えられる。
【0016】
好ましくは、(歯の漂白用調製品及び/又は出発付加物溶液)のpHの上昇は、2倍、又は代替的には5倍、又は代替的には10倍に希釈した場合に、少なくとも約0.1、好ましくは少なくとも約0.25、より好ましくは少なくとも約0.5、さらにより好ましくは少なくとも約1.0、最も好ましくは少なくとも約2.0である。このようなpHの上昇は、本発明の組成物においては、カルボポールの非存在下で調合された場合であっても証明され得る。
【0017】
過酸化物及び尿素出発物質は、共に過酸化尿素として与えられ得る。代替的には、他の過酸化物、好ましくは過酸化水素、及び尿素が別個の出発物質として与えられ得る。さらに、本発明の付加物は、出発物質の各々の化学結合が存在する三成分の付加物だけでなく、出発物質のうち2つの化学結合を含む二成分の付加物も含み得るが、ただし、二成分の付加物は、重要なことには希釈時に上昇するpHを有する水性製剤として、又は水性製剤の一部として、第三の出発物質と接触又は会合した状態で与えられる。
【0018】
好適なアルカリ金属ポリリン酸塩は、アルカリ金属トリポリリン酸塩、特にトリポリリン酸ナトリウムである。
【0019】
本発明者らの実験研究により、水溶液中で希釈時にpHが上昇する性質を有する本発明の付加物は、或る特定の比率の出発物質を用いて選択的に調合されることが示された。
【0020】
好ましくは、付加物の水溶液中のアルカリ金属ポリリン酸塩:過酸化物比は、約0.05:1〜約0.5:1の無水アルカリ金属ポリリン酸塩:過酸化水素溶液(35%(w/w)濃度)重量比に相当する。
【0021】
好ましくは、付加物の水溶液中のアルカリ金属ポリリン酸塩:尿素比は、約0.1:1〜約2.0:1の無水アルカリ金属ポリリン酸塩:尿素重量比に相当する。
【0022】
好ましくは、付加物の水溶液中の尿素:過酸化物比は、約0.2:1〜約1.0:1の尿素:過酸化水素溶液(35%(w/w)濃度)重量比に相当する。
【0023】
本発明によれば、歯の漂白用組成物の調合において使用するのに適切な付加物を調製する方法であって、出発物質である過酸化物、尿素、及びアルカリ金属ポリリン酸塩を準備すること、及び当該出発物質を、当該出発物質の溶液を提供するのに効果的な温度及び/又は圧力及び/又は攪拌条件下で、水溶液中で共に混合することを含む、方法も提供される。次に、溶液を(もしあれば)他の望ましい成分と単に合わせることにより、歯の漂白用製剤が提供され得る。
【0024】
本発明はまた、前述の方法に従って調製される付加物、及び当該方法に従って調製される歯の漂白用製剤を提供する。
【0025】
本発明はまた、歯の漂白用製剤の調製における、前述されるような付加物の使用に関する。
【0026】
本発明によれば、前述の付加物又はその溶液を含む歯の漂白用調製品も提供される。
【0027】
上記に従う歯の漂白用調製品は、上記付加物に加えて、1つ又は複数のさらなる機能材料、賦形剤、担体、増粘剤、漂白剤、安定剤等を含み得る。調製品はジェル、溶液、粉末、分散液、エマルション等、好ましくはジェルとして調合され得る。
【0028】
本発明は以下の実施例においてさらに説明される。百分率は全て、重量によるものであり、組成物の全重量に関して表される。
【実施例】
【0029】
[実施例1]
歯の漂白ジェルの調合において使用するのに適切な過酸化物/尿素/ポリリン酸塩付加物を、下記に記載の成分から作製する。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明者らは、付加物を調合するのに適切なやり方は多数あるが、そのような方法の1つでは、トリポリリン酸ナトリウムを過酸化水素に添加することから始め、続いて尿素を添加することを見出した。尿素を添加した後、尿素が溶解するまで混合物を攪拌する。次に、溶液を使用して、歯の漂白ジェルを作製する。
【0032】
[実施例2]
歯の漂白ジェルを、実施例1で得られた付加物溶液を用いて、下記に記載の成分から調合した。
【0033】
【表2】
【0034】
上記成分を単に一つに合わせることにより、本発明による歯の漂白ジェルを製造した。
【0035】
[実施例3]
歯の漂白ジェルを、実施例1で得られた付加物溶液を用いて、下記に記載の成分から調合した。
【0036】
【表3】
【0037】
上記成分を単に一つに合わせることにより、本発明による歯の漂白ジェルを製造した。
【0038】
[実施例4]
歯の漂白ジェルを、下記に記載の成分から直接調合した。
【0039】
【表4】
【0040】
本実施例に関する混合方法は以下である。段階1:カルボポール、グリセリン、及び香料を共に混ぜ合わせる。段階2:水、尿素、フッ化ナトリウム、及び他の微量成分を溶解するまで混ぜ合わせる。段階3:段階1及び段階2を均一になるまで混合する。段階4:苛性ソーダを段階3に添加して、カルボポールを中和する。段階5:過酸化水素及びSTPPを混ぜ合わせて段階4に添加し、均一になるまで混ぜ合わせる。次に、pHを約6.5に調整する。