(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ホッパーに投入した硬貨、遊技用メダルなどのコイン状部材を、分離孔を備えた払出ロータによって分離して一枚ずつ払出口から払い出すように構成されたコイン状部材払出装置が知られている。この種のコイン状部材払出装置は一般に両替機、遊技台などに内蔵して用いられる。
【0003】
この種のコイン状部材払出装置では、ホッパー、払出ロータ、ベース部材などの部品が合成樹脂製の部品とされ、その軽量化などが図られている。この場合、コイン状部材は払出ロータの分離孔に嵌った状態で払出ロータと共に回転させられながらホッパー内に投入されているコイン状部材から分離される。また、分離孔に嵌ったコイン状部材は払出ロータの回転に伴ってベース部材上を摺動して払出口に向けて送り出される。このようにコイン状部材は合成樹脂製の部分に擦られながら払出口に向けて送り出されるので、その間に多量の静電気を帯びた状態になる。払出口の近傍には払い出されるコイン状部材の枚数を計数するためのカウンタが配置されており、静電気を帯びたコイン状部材がカウンタの近傍を通過する際にスパークなどが発生すると、カウンタが誤動作するなどの弊害が発生する。
【0004】
コイン状部材の静電気を除去するために、特許文献1に開示の硬貨払出し装置においては、払出ロータの分離孔に嵌った状態で払出ロータと共に回転する硬貨(コイン状部材)が接触可能な位置に導電部材を配置し、この導電部材を介して帯電電荷を接地側に流すようにしている。また、特許文献2に開示のコイン状部材送出装置においては、回転している払出ロータの分離孔に嵌った状態で払出ロータと共に回転しているコイン状部材を分離孔から払出口の側にガイドする固定側壁を導電性側壁とし、コイン状部材の帯電電荷を当該導電性側壁から接地側に逃がすようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、コイン状部材払出装置において、上記のような静電気対策を施した場合においても、その払出口から払い出されたコイン状部材は依然として所定量の静電気を帯びていることが確認された。静電気を帯びたままのコイン状部材が払い出されると、払い出されたコイン状部材の通路近傍に位置する導電性の部品との間でスパークが発生し、その近傍に位置する電子部品などに悪影響が及ぶおそれがある。また、払出口から払い出される際にスパークが発生する等して、払い出されるコイン状部材の枚数を計数するためのカウンタに悪影響を与え誤動作を引き起こすおそれもある。
【0007】
本発明の課題は、この点に鑑みて、払出口から払い出されるコイン状部材の残留静電気を可能な限り少なくできるようにしたコイン状部材払出装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のコイン状部材払出装置は次のように構成したことを特徴としている。なお、括弧内の符号は後述の本発明の実施の形態における対応する部位を示すものであり、理解を容易にするために付してあるが、本発明を実施の形態に限定することを意図したものではない。
【0009】
すなわち、本発明のコイン状部材払出装置(1)は、
合成樹脂製のベース部材(3)と、
前記ベース部材(3)に形成したベース面(6)上に回転可能に配置されており、コイン状部材(M)を受け入れ可能な複数の分離孔(8a)を備えた合成樹脂製の払出ロータ(8)と、
前記ベース部材(3)における前記払出ロータ(8)の外周側の部位に形成した払出口(15)と、
前記ベース部材(3)の定まった位置に配置あるいは形成されており、前記払出ロータ(8)の回転に伴って、各分離孔(8a)に受け入れたコイン状部材(M)を前記ベース面(6)に沿って前記払出口(15)に向けて案内する固定側ガイド部材(16)と、
前記固定側ガイド部材(16)に対して離れる方向に移動可能であり、当該固定側ガイド部材(16)の側に向けて付勢されており、当該固定側ガイド部材(16)によって前記払出口(15)に向けて案内されるコイン状部材(M)によって前記固定側ガイド部材(16)から離れる方向に押されて一時的に移動する可動側ガイド部材(18)と、
前記ベース部材(3)に形成されており、前記固定側ガイド部材(16)および前記可動側ガイド部材(18)の間を通過したコイン状部材(M)を前記払出口(15)に案内する払出通路(14)と、
前記払出通路(14)の通路面における、前記払出口(15)から払い出されるコイン状部材(M)に接触する部位に配置されている払出口導電部材(21)と、
を有しており、
前記払出口導電部材(21)は、前記払出通路(14)を規定している前記ベース部材(3)の凹部(13)の底面部分の全幅に亘って前記払出口(15)に至るまで配置され
ている導電性の金属板であり、
前記払出通路(14)を通って前記払出口(15)からコイン状部材(M)が払い出され終わるまで、当該コイン状部材(M)の円形端面と前記払出口導電部材(21)との接触状態が維持されることを特徴としている。
【0010】
コイン状部材(M)は、払出ロータ(8)の分離孔(8a)に入った状態で払出ロータ(8)と共に回転して払出口(15)の側に搬送され、しかる後に、固定側ガイド部材(16)によって払出通路(14)の側に案内され、可動側ガイド部材(18)によって払出通路(14)に沿って払出口(15)の側に押し出される。払出通路(14)の通路面には払出口導電部材(21)が配置されており、コイン状部材(M)は払出口導電部材(21)に接触しながら払出口(15)から払い出される。したがって、コイン状部材(M)が払出口(15)から払い出され終わるまで当該コイン状部材(M)の帯電電荷を払出口導電部材(21)に逃がすことができる。よって、払い出された後のコイン状部材(M)は残留静電気が殆どない状態になり、残留静電気による弊害の発生を防止あるいは抑制できる。
【0012】
また、前記ベース部材(3)を支持している装置架台(2)が合成樹脂製のものである場合には、前記装置架台(2)に接地用の架台側導電部材(24、25、26)を取り付け、前記払出口導電部材(21)を前記架台側導電部材に電気的に接続しておけばよい。
【0013】
さらに、前記ベース部材(3)の上に、コイン状部材(M)を貯蔵する合成樹脂製のホッパー(9)が取り付けられ、前記払出ロータ(8)の各分離孔(8a)に前記ホッパー(9)の底部開口部(11)からコイン状部材(M)を受け入れるようになっている場合には、前記払出通路(14)および前記払出口(15)を、前記ベース部材(3)と前記ホッパー(9)の底面部分(10)の間に形成することができる。この場合には、前記払出口導電部材(21)を
、前記ホッパー(9)の
前記底面部分(10)にも配置することができる。
【0014】
次に、払出口(15)に至るまでの間においてコイン状部材の静電気を除去するために、前記固定側ガイド部材(16)におけるコイン状部材(M)が接触する部分にガイド側導電部材(16a、16b)を配置しておくことが望ましい。これに加えて、ホッパー(9)内のコイン状部材(M)および払出ロータ(8)によって搬送されるコイン状部材(M)に発生する静電気を除去するためには、前記ベース面(6)に、前記払出ロータ(8)の回転に伴って前記払出通路(14)の側に搬送される各コイン状部材(M)に接触するベース側導電部材(22a)を配置しておくことが望ましい。この場合には、前記払出口導電部材、前記ガイド側導電部材および前記ベース側導電部材を電気的に接続しておけば、共通の経路を介して接地させることができるので便利である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコイン状部材払出装置では、その払出口から払い出されるコイン状部材に接触する払出口導電部材を備えている。したがって、コイン状部材は払出口から払い出され終わるまで導電部材を介して静電気が除去され、払い出された後のコイン状部材の残留静電気の量は殆ど無い。このように、本発明によれば、払出終了までコイン状部材の静電気を逃がすことができるので、払い出された後のコイン状部材の残留静電気を大幅に減少させることができ、かかる残留静電気による弊害を防止あるいは抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明を適用した遊技用メダルの払出を行うメダル払出装置の実施の形態を説明する。なお、本発明は遊技用メダル以外のコイン状部材、例えば、硬貨の払出を行う硬貨払出装置などのコイン状部材払出装置にも適用可能なことは勿論である。
【0018】
(全体構成)
図1は本実施の形態に係るメダル払出装置の分解斜視図であり、
図2は
図1のメダル払出装置を一部断面で示す側面図である。これらの図を参照して説明すると、メダル払出装置1は合成樹脂製の装置架台2を備えており、この装置架台2の上面には前傾状態で合成樹脂製の矩形輪郭のベース部材3が取り付けられている。ベース部材3の上面4の中央部分には円形凹部5が形成されており、当該円形凹部5の底面は全体として平坦なベース面6となっている。このベース面6の中心からは当該ベース面6に直交する状態に回転軸7が突出している。この回転軸7には、円形凹部5に収まる径の円盤状の払出ロータ8が同心状態に固定されている。装置架台2の内部にはモーターおよび減速機構からなる回転駆動機構7Aが組み込まれており、回転駆動機構7Aによって回転軸7が回転駆動され、これにより、払出ロータ8が円形凹部5内において回転するようになっている。
【0019】
次に、ベース部材3の上面4には合成樹脂製のホッパー9が着脱可能な状態で取り付けられている。ホッパー9の下端には、ベース部材3の上面4の輪郭形状と同一の輪郭形状をした傾斜底面10が形成されており、この傾斜底面10によってベース部材3の上面4の全体が覆い隠されている。傾斜底面10の中央部分にはベース部材3の上面4に形成した円形凹部5に対応する大きさの円形開口部11が形成されている。ホッパー9の上端には矩形のメダル投入口12が形成されており、このメダル投入口12の外周上端縁はベース部材3の上面4に取り付けた状態において水平となる輪郭形状をしている。
【0020】
(払出ロータ)
図3は、メダル払出装置1において、ホッパー9を取り外して、ベース部材3の上面4およびその円形凹部5に配置されている払出ロータ8を示す上面図である。
図3も参照して説明すると、払出ロータ8には、その厚さ方向に貫通している円形の分離孔8aが同一円上に等角度間隔に形成されており、本例では6個の分離孔8aが形成されている。各分離孔8aの内周面は、その払出ロータ8の回転方向Aとは反対側の部分が傾斜内周面8bとなっており、この傾斜内周面8bがホッパー9の円形開口部11から各分離孔8aにメダルMをガイドするためのガイド面やロック等の逃げとなっている。
【0021】
払出ロータ8の裏面と円形凹部5の底面である平坦なベース面6との間には、メダル1枚が入り込み可能な隙間が形成されている。また、払出ロータ8の裏面には、各分離孔8aに受け入れたメダルMを、円形凹部5の内周面5aに沿ってその回転方向Aに搬送するためのガイド用段差面8cが各分離孔8aに対応した部位に形成されている。ガイド用段差面8cは、払出ロータ8の裏面からベース面6の側に突出している端面である。払出ロータ8の回転に伴って、ホッパー9の側から送り込まれたメダルMが分離させられて、各分離孔8aからその裏面側に1枚のメダルMが入り込む。各分離孔8aから裏面側に入った各メダルMは、その外周端面が払出ロータ8の裏面のガイド用段差面8cに当たる。したがって、払出ロータ8の回転に伴って、メダルMは、ガイド用段差面8cによって、円形凹部5の底面を規定している平坦なベース面6上を、円形凹部5の内周面5aに沿って払出ロータ8と共に回転方向Aに搬送される。
【0022】
(払出通路の構成)
図1、
図3から分かるように、円形凹部5における装置左側の外周側部分には、当該円形凹部5に連続してベース部材3の上面4における端まで延びている凹部13が形成されている。この凹部13と、これに対峙するホッパー9の傾斜底面10の左端部分とによって、メダルMを外部に払い出すための払出通路14が形成されており、当該払出通路14の先端開口が払出口15となっている。払出通路14は、本例では、凹部13とホッパー9の平坦な傾斜底面部分とによって規定されているが、払出通路14は、例えば、傾斜底面部分を凹状にし、ベース部材3の上面4を平坦面としても形成することができる。また、払出通路14を、ベース部材3の上面側部分に形成したスリットによって規定することもでき、本例のような凹部13に限定されるものではない。
【0023】
払出通路14における払出ロータ8の回転方向Aの上流側の側面は、ベース部材3の上面4に固定した板金製の固定側ガイド部材16によって規定されている。固定側ガイド部材16は、円形凹部5の内周面5aに滑らかに連続して延びるガイド用端面16aと、これに連続して払出口15の側に折れ曲がって延びているガイド用端面16bとを備えている。これに対して、払出通路14における回転方向Aの下流側の側面は、ベース部材3の上面4に形成したガイド用段差面17によって規定されており、このガイド用段差面17は円形凹部5の内周面5aに連続して払出口15まで延びている。このガイド用段差面17と固定側ガイド部材16のガイド用端面16bとの間の間隔は、メダルMの直径よりも僅かに大きな寸法とされている。
【0024】
また、払出通路14における円形凹部5の側には、そのガイド用段差面17に近い位置に、可動側ガイドピン18(可動側ガイド部材)が配置されている。可動側ガイドピン18はピン以外の部材であってもよいことは勿論である。可動側ガイドピン18は、ベース部材3に形成した円弧溝19に沿って固定側ガイド部材16から離れる方向に移動可能であり、常時は、バネ部材18a(
図3参照)によって固定側ガイド部材16の側に向けて付勢されている。この状態では、可動側ガイドピン18と固定側ガイド部材16の間隔が、メダルMの直径よりも狭い寸法となっている。
【0025】
払出ロータ8の各分離孔8aから裏面側に入り込み、当該払出ロータ8の回転に伴って円形凹部5の内周面5aに沿って搬送されるメダルMは、内周面5aから固定側ガイド部材16のガイド用端面16aに引き渡された後は、払出ロータ8の裏面のガイド用段差面8cによってガイド用端面16aに沿って払出ロータ8の半径方向の外方に押し出される。押し出されるメダルMは可動側ガイドピン18を押し開きながら、当該可動側ガイドピン18と固定側ガイド部材16の間を通過する。メダルMの半分が可動側ガイドピン18を通過した後は、可動側ガイドピン18の付勢力によってメダルMが勢い良く払出口15に向けて押し出される。この後、メダルMは払出通路14を通って払出口15から外方に弾き出されることになる。
【0026】
なお、ベース部材3には、払出通路14の近傍に払い出されるメダルMをカウントするためのメダル検出部20が配置されている。メダル検出部20は、機械式、磁気式、光学式などの各種検出形態の公知の機構を用いることができる。
【0027】
(メダルの静電気除去対策)
次に、払出ロータ8の回転によりメダルMを1枚ずつ分離して払出口15から払い出す動作においては、メダルMが合成樹脂製の払出ロータ8と擦れ合って静電気を帯びる。また、合成樹脂製のベース部材3に形成されているベース面6および内周面5aに沿って搬送される間に、これらと擦れ合って静電気を帯びる。さらには、払出通路14を規定している合成樹脂製のベース部材3の凹部13および合成樹脂製のホッパー9の傾斜底面10の部分における払出通路14に面している部分と擦れ合って静電気を帯びる。そこで、メダル払出装置1ではメダルMの静電気を次のように接地側に逃がすようにしている。
【0028】
まず、
図1、
図3から分かるように、払出通路14を規定しているベース部材3の凹部13の底面部分には、その全幅に亘って、払出口15に至るまで、導電性の金属板からなる矩形の払出口導電部材21が配置されている。払出口導電部材21は払出口15に繋がる部分に配置されているので、払出通路14を通って払出口15からメダルMが払い出され終わるまで、メダルMの円形端面と払出口導電部材21との接触状態が維持される。
【0029】
払出口導電部材21は、ホッパー9の傾斜底面10の側に取り付けることも可能であり、ベース部材3の側の凹部13の底面部分とホッパー9の側の傾斜底面10の双方に取り付けることも可能である。一般的には、メダルMはベース面6に連続する凹部13の底面に沿って払出口15に向けて送り出されるので、当該凹部13の底面における払出口15に繋がる部分に取り付けておけば、メダルMとの接触状態を確実に維持することができる。
【0030】
また、メダルMを払出ロータ8の側から払出通路14の側に案内するための固定側ガイド部材16も金属板から形成されたガイド用導電部材とされている。勿論、固定側ガイド部材16におけるガイド用端面16a、16bを備えた部分のみを導電部材としておいてもよい。本例では、この固定側ガイド部材16における底部16cの部分が払出口導電部材21に接続されており、電気的に相互に導通している。
【0031】
さらに、ベース部材3の円形凹部5のベース面6にも導電性の金属板からなるベース側導電部材22が配置されている。ベース側導電部材22は、
図2、
図3から分かるように、払出ロータ8の中心を中心とする略90度の角度を張る一定幅の円弧板部分22aと、この円弧板部分22aの端から折れ曲がって固定側ガイド部材16まで延びている一定幅の折り曲げ板部分22bとを備えている。円弧板部分22aは、
図3から分かるように、常に2個の分離孔8aを跨ぐ位置に配置されており、折り曲げ板部分22bの先端部は固定側ガイド部材16に接続されており、電気的に相互に導通している。
【0032】
次に、固定側ガイド部材16は次のようにして接地側に接続されている。
図1、
図2から分かるように、固定側ガイド部材16は導電性の取付ネジ23によってベース部材3に固定されている。取付ネジ23の先端部はベース部材3を貫通して延びており、その下側の装置架台2の上面に配置されている金属板からなる第1架台導電部材24にねじ込み固定され、当該第1架台導電部材24に電気的に導通している。第1架台導電部材24は、装置架台2の上面に沿って装置前方に引き出されており、その前端部分24aは、導電性の取付ネジ25によって、金属板からなる第2架台導電部材26に締結固定され、この第2架台導電部材26に電気的に導通している。第2架台導電部材26は装置架台2の前端部の裏面側に露出している。当該第2架台導電部材26は、メダル払出装置1が組み込まれる遊技台(図示せず)の装置フレームの側に接地される。
【0033】
このように、メダル払出装置1においては、ホッパー9から払出ロータ8の分離孔8aに受け入れられて払出ロータ8の回転によって搬送されるメダルMは、必ずベース側導電部材22に接触する。したがって、メダルMの静電気は、ベース側導電部材22から固定側ガイド部材16を介して、取付ネジ23、第1架台導電部材24、取付ネジ25および第2架台導電部材26からなる導電経路を介して接地側に流れる。また、メダルMは、固定側ガイド部材16のガイド用端面16a、16bに沿って払出ロータ8の側から払出通路14の側に案内される間に、固定側ガイド部材16から上記の導電経路を介して接地側に流れる。
【0034】
さらに、払出通路14を通って払出口15から払い出されるメダルMは、払出口15から払い出され終わるまで、払出口導電部材21に接触した状態が維持される。したがって、払い出されるメダルMの静電気も、払出口導電部材21から固定側ガイド部材16を経由して上記の導電経路を介して接地側に逃がされる。よって、払出口15から払い出される際においてもメダルMの静電気が除去されるので、払い出された後のメダルMの残留静電気を大幅に低減することができる。この結果、払い出された後のメダルMの残留静電気に起因する不具合を防止あるいは抑制することができる。
【0035】
本発明者等は、本実施の形態のメダル払出装置1と、払出口導電部材21を取り外した以外は同一構成の比較用メダル払出装置とを用いて、払い出された後のメダルMの帯電状態を調べた。
図4の表には、これらのメダル払出装置から1000枚のメダルを払い出した後におけるメダル塊の静電電位の測定データの比較例を示してある。この表から分かるように、払出口導電部材21が備わっている場合には、払い出されたメダルMの静電電位は、−2.0〜−1.0(kV)であった。これに対して、払出口導電部材21が備わっていない比較用メダル払出装置の場合には、払い出されたメダルMの静電電位が、−20.0〜―18.0(kV)と大幅に増加していることが確認された。メダルMの残留静電気は、電子部品への影響が無いようにするための十分低い値が得られ、残留静電気に起因する弊害を確実に防止できることが確認された。
【0036】
なお、各部の導電部材21、15、22などは例えばステンレススチール製のものとすることができるが、その他の導電性の金属部材から形成してもよく、金属部材以外の導電性素材から形成した部品を用いることも可能である。
【0037】
(各導電部材の目的、作用効果)
以上説明したように、本実施の形態のメダル払出装置1においては、ベース側導電部材22と、固定側ガイド部材16(ガイド用導電部材)と、払出口導電部材21とが備わっている。これらの導電部材の目的、作用効果を以下に纏めて説明する。
【0038】
まず、ベース側導電部材22によって、払出ロータ8の分離孔8aに入ったメダルMの静電気除去が直接的に行われる。また、分離孔8aに入ったメダルMの上には、ホッパー9内の他の多数のメダルが接触しているので、結果的にはホッパー9内のメダル全体の静電気除去が行われる。このように、ベース側導電部材22は、メダル払出装置1内のセンサ等がメダルMの静電気に起因して誤動作してしまうことを防止するために設置されている。
【0039】
次に、固定側ガイド部材16による目的、作用効果は次の通りである。払出ロータ8の分離孔8aに入ったメダルMは、払出ロータ8の回転に従いガイド用段差面8cにより分離された後は、単独でベース面6と擦れ合うことになる。固定側ガイド部材16は、この状態で発生する静電気をメダルMから除去することができる。また、可動側ガイドピン18によりメダルMは固定側ガイド部材16に押し付けられているので、メダルMの静電気が確実に固定側ガイド部材16を介して除去される。このように、固定側ガイド部材16は、主に、メダル払出装置1内のセンサ等がメダルMの静電気に起因して誤動作してしまうことを防止するために設置されている。
【0040】
これに対して、払出口導電部材21の目的、作用効果は次の通りである。可動側ガイドピン18の付勢力によって勢いよく押し出されたメダルMは、固定側ガイド部材16のガイド用端面16bに接触している確約は無く、また、払出口15を略半分通過したときには、メダルMが円板状であるが故に、固定側ガイド部材16に接触することは無い。したがって、払出口15から払出される際にメダルMが帯びる静電気を固定側ガイド部材16によって除去することはできない。払出口導電部材21によって、払出口15から払出されるメダルMに生ずる静電気を除去することができる。このように、払出口導電部材21は、メダル払出装置1から払い出されるメダルMの静電気による、払出口近傍の電子部品などの誤動作防止および人的被害の低減を図るために設置されている。また、副次的に、払出口導電部材21は、メダル払出装置1内のセンサ等がメダルMの静電気に起因して誤動作してしまうことを防止する効果もある。
【0041】
(ホッパーの着脱機構)
なお、本実施の形態に係るメダル払出装置1では、メンテナンスなどの作業においてホッパー9をベース部材3の上面4に対して簡単な操作によって着脱できるようにしてある。この着脱機構について説明すると、
図1から分かるように、ホッパー9の傾斜底面10には、その円形開口部11の内周縁に沿って、当該円形開口部11と略同一内径のロータガイドリング31が同心状態にネジ止め固定されている。このロータガイドリング31には、一定幅の円弧状係止板31aが、所定幅の切り欠き溝31bを挟み、所定の角度を張る状態に形成されている。
【0042】
これに対して、ベース部材3の上面4には、円形凹部5を取り囲む状態に、同一円上に、所定角度間隔で係止爪32が形成されている。各係止爪32は、ロータガイドリング31の切り欠き溝31bに対応する角度間隔に配置されており、各係止爪32と上面4の間には、ロータガイドリング31の円弧状係止板31aを差し込み可能な隙間が形成されている。
【0043】
また、一つの係止爪32の隣接位置にはロックレバー33が配置されている。ロックレバー33はその後端33aを中心としてその先端部に形成したロック爪33bが円形凹部5の中心に向かう方向にバネ力によって付勢されている。ロック爪33bはロータガイドリング31の切り欠き溝31bに半径方向の外側から差込可能な形状のものである。
【0044】
図1に示すように取り外された状態のホッパー9をベース部材3の上面4に取り付ける作業においては、ホッパー9の矩形の傾斜底面10の前側の縁を、ベース部材3の上面4における前端に形成されている傾斜端面部分34に沿って上面4に被せる。この結果、ロータガイドリング31の各切り欠き溝31bにベース部材3の側の各係止爪32が差し込まれた状態になる。この状態で、ホッパー9を
図3において矢印Bで示す方向に回すと、ロータガイドリング31の各円弧状係止板31aが、ベース部材3の側の各係止爪32と上面4の間に差し込まれる。また、ロックレバー33のロック爪33bに対峙する位置まで切り欠き溝31bが回転すると、当該切り欠き溝31bにロック爪33bが半径方向の外側から嵌り込む。この結果、ホッパー9がベース部材3の上面4に固定された状態が形成される。
【0045】
ホッパー9をベース部材3の上面4から取り外す場合には、ロックレバー33を操作してロック爪33bを外した状態で、
図3において矢印Cで示す逆方向にホッパー9を回転させる。この結果、ロータガイドリング31の切り欠き溝31bにベース部材3の各係止爪32が重なった位置関係が形成され、各係止爪32に対する各円弧状係止板31aの係止状態が解除される。この状態でホッパー9を上面4から引き上げてベース部材3から外すことができる。