【実施例1】
【0019】
[液体ダンパー装置の全体構成]
図1は、液体ダンパー装置の断面図である。
【0020】
図1のように、この液体ダンパー装置1は、外筒3及び内筒5を備えている。内筒5は、外筒3内に支持され外筒3の内周面との間に液体還流路7を形成している。内筒5内には、ピストン9が往復動可能に配設されている。ピストン9には、作動ロッド11の一端が結合され、作動ロッド11の他端が外筒3外へ突出している。
【0021】
内筒5の一端部は、端閉部材13で閉塞されている。この端閉部材13には、オリフィス15が形成されている。オリフィス15は、一端にピストン9に対向する断面すり鉢状の開口17を備え、他端が液体還流路7に連通し、外部調節により通路面積を絞ることができる。
【0022】
さらに説明すると、外筒3は、一端に端壁19を備え、他端に止め輪21によって内部側にホルダー23が位置決められ、外部側にばね座25が位置決められている。端壁19には、支持孔27が形成され、支持孔27の周囲に止めねじ29が取り付けられている。液体還流路7を外部へ連通させる注入孔31には、閉止用のボール33が挿入され、ねじ34で固定されている。この注入孔31から後述のオイルが内部へ注入される。
【0023】
内筒5には、ピストン9の移動方向に所定間隔で複数の貫通孔35a,35b,35c,35dが設けられている。貫通孔35a,35b,35c,35dは、内筒5内を液体還流路7に連通させている。内筒5の他端には、液体流通用のスリット7aが形成されている。
【0024】
ピストン9側には、開口17を当接閉止可能な可動閉止部材である可動閉止ピン37が弾性的に支持されている。可動閉止ピン37周辺の構造は、
図2により後述する。ピストン9には、ピストン・オリフィス39が複数形成され、弁体41が取り付けられている。
【0025】
作動ロッド11の外端には、ばね座43がボルト45により固定され、ばね座43、25間にリターン・スプリング47が介設されている。
【0026】
端閉部材13は、回転部49及び固定部51からなっている。
【0027】
回転部49は、操作軸部53及び胴部55からなっている。操作軸部53は、支持孔27に嵌合し、この操作軸部53には、外端にドライバ等を差し込む溝57が形成され、周面にオーリング58が固定されて支持孔27内面に密接している。胴部55には、第1の部分オリフィス59が設けられている。第1の部分オリフィス59は、一端に前記開口17を備え他端に胴部55の外周面に開放された調節口61を有している。
【0028】
固定部51は、座部63を備え、中空に形成されている。固定部51の内周面は、胴部55外周面に嵌合し、固定部51の外周面は、内筒5の一端部内に嵌合している。固定部51の外周面には、オーリング65が取り付けられ、内筒5内周面に密接している。座部63は、外筒3の端壁19に当接し、座部の位置決め孔67に止めねじ29が係合し、回転止めが行われている。この固定部51に第2の部分オリフィス69が設けられている。第2の部分オリフィス69は、一端が前記調節口61に対向し他端が前記液体還流路7に開放され前記第1の部分オリフィス59と共に前記オリフィス15を成している。
【0029】
ホルダー23は外筒3内に嵌合配置され、内周にロッド・ガイド孔71及びシール保持部73が形成され、ロッド・ガイド孔71に前記作動ロッド11が嵌合している。シール保持部73には、シール75が保持され、作動ロッド11外面に密接している。ホルダー23のピストン9側には、流通孔77が形成され、外周側にアキュームレーター保持部79を備えている。アキュームレーター保持部79には、ゴムなどのアキュームレーター81が取り付けられている。
[閉止ピン周辺の構造]
図2は、
図1のA部拡大断面図である。
【0030】
図2のように、ピストン9側に、可動閉止ピン37のピン支持孔83が形成されている。ピン支持孔83は、本実施例において作動ロッド11に渡って形成されている。ピン支持孔83は、ピストン9から作動ロッド11に渡る雌雌ねじ部85と雌ねじ部85の奥側に雌ねじ部85よりも小径のばね収容孔87とを備えている。雌ねじ部85には、ピン・ガイド89が螺合により取り付けられている。ピン・ガイド89のフランジ部89aは、弁体41の内縁を押さえている。
【0031】
ピン・ガイド89には、可動閉止ピン37が出没自在に支持されている。可動閉止ピン37の拡径部37aは、ばね収容孔87よりも小径に形成されている。ばね収容孔87には、弾性部材としてスプリング91が収容され、可動閉止ピン37の拡径部37aに当接している。したがって、可動閉止ピン37は、弾性部材であるスプリング91を介し弾性力に抗して前記ピン支持孔83内側へ退避自在に支持されている。
【0032】
可動閉止ピン37には、逃げ通路93が設けられている。逃げ通路93は、可動閉止ピン37の外周面に軸方向に形成された溝であり、拡径部37aでは、孔となりばね収容孔87内側へ貫通している。逃げ通路93によりピン支持孔83と内筒5内とが連通されている。
【0033】
なお、逃げ通路93は、ピン支持孔83側のピン・ガイド89の内周面等に形成することもでき、可動閉止ピン37及びピン・ガイド89の双方に形成することもできる。
【0034】
外筒3及び内筒5内などには、作動液体として鉱物油系のオイルが封入されている。
[衝撃吸収]
液体ダンパー装置1は、印刷機械、自動車搬送ライン、組立ロボット等の作業において重量物のエネルギー吸収を行うものである。印刷機械では、印刷用のロールに取り付けられ、用紙の位置制御を行い、試験印刷時の機器損傷防止等に寄与する。自動車搬送ラインでは、組立車体搬送速度の減速時等にエネルギー吸収を行い、機器保護に寄与する。組立ロボットでは、スライドメカニズムのオーバーランによるエネルギー吸収を行い、機器損傷を防止する。
すなわち、作動ロッド11が衝撃力を受けると作動ロッド11と共にピストン9が移動し、弁体41がオイルの圧力を受けて移動し、ピストン・オリフィス39を閉じる。
【0035】
したがって、ピストン9の移動に伴って内筒5内のオイルが圧力を受け、貫通孔35a,35b,35c,35d及びオリフィス15を通り液体還流路7へ還流する。
【0036】
液体還流路7へオイルが還流すると、液体還流路7内のオイルが内筒5のスリット7a、ホルダー23の流通孔77を通り、アキュームレーター81側へ移動する。
【0037】
そして、ピストン9の移動に応じて貫通孔35a,35b,35c,35dからの還流が順次なくなり、作動ロッド11へ加わる衝撃を緩和することができる。
【0038】
外部から端閉部材13の回転部49を回転操作し、第1の部分オリフィス59の調節口61と第2の部分オリフィス69との重なり通路面積を調節することでオリフィス15の流通抵抗を調節することができ、衝撃緩和の程度を、外部制御することができる。
【0039】
ピストン9の移動により全ての貫通孔35a,35b,35c,35dからの還流がなくなった後は、可動閉止ピン37がオリフィス15の開口17に弾性的に当接し開口17を閉止する。
【0040】
ピストン9がさらに移動すると、可動閉止ピン37がスプリング91の弾性力に抗してピン支持孔83内側へ移動し、且つピストン9及び内筒5間でオイル・ロックが発生する。このとき、ピストン9と内筒5との間の僅かなオイル漏れも伴って、ピストン9は静かに停止し、端閉部材13への衝突が避けられる。
【0041】
作動ロッド11が力を受けなくなると、リターン・スプリング47によって作動ロッド11が外部へ引き出され、これに伴うピストン9の移動で可動閉止ピン37が開口17を開く。また、弁体41もピストン・オリフィス39を開くように移動を戻し、ピストン・オリフィス39をオイルが流通する。
【0042】
このときのピストン9の復帰移動により、液体還流路7から貫通孔35a,35b,35c,35d及びオリフィス15を通り内筒5内へオイルが戻る。液体還流路7へは、アキュームレーター81内から流通孔77及びスリット7aを通ってオイルが戻る。
【0043】
したがって、作動ロッド11は、素早く伸長動作することができる。
[実施例1の効果]
本発明実施例1は、外筒3及びこの外筒3内に支持され外筒3の内周面との間に液体還流路7を形成した内筒5と、この内筒5内で往復動可能に配設されたピストン9と、このピストン9に一端が結合され他端が外筒3外へ突出する作動ロッド11と、内筒3の一端部を閉塞する端閉部材13と、この端閉部材13に形成されピストン9に対向する開口17を液体還流路7に連通させるオリフィス15とを備え、ピストン9が移動して内筒5内のオイルがオリフィス15を通り液体還流路7へ還流して作動ロッド11へ加わる衝撃を緩和するショックアブソーバ1であって、ピストン9側に、開口17を当接閉止可能な可動閉止ピン37を弾性的に支持した。
【0044】
このため、ピストン9が端閉部材13に接近すると可動閉止ピン37が開口17に弾接して開口17を当接閉止することができる。
【0045】
したがって、オリフィス15が閉じられて液体ロックが発生し、ピストン9及び内筒5間の僅かなオイルの漏れによりピストン9を円滑に停止させ、端閉部材13への衝突を抑制することができる。
【0046】
ピストン9側に、可動閉止ピン37のピン支持孔83を形成し、可動閉止ピン37を、スプリング91を介し弾性力に抗してピン支持孔83内側へ退避自在に支持した。
【0047】
このため、ピストン9の移動により可動閉止ピン37を開口17へ確実に弾接させることができる。
【0048】
可動閉止ピン37に、ピン支持孔83と内筒5内とを連通させる逃げ通路93を設けた。
【0049】
このため、可動閉止ピン37が開口17に弾接してピン支持孔83内側へ退避するとき、オイルが逃げ通路93から内筒5内側へ排出されて閉じ込められることがなく、可動閉止ピン37の動作を円滑に行わせることができる。
【0050】
内筒5は、ピストン9の移動方向に所定間隔で複数の貫通孔35a,35b,35c,35dを備えた。
【0051】
このため、ピストン9の移動に応じて貫通孔35a,35b,35c,35dからの還流が順次なくなり、流通抵抗により作動ロッド11へ加わる衝撃を緩和することができる。
【0052】
端閉部材13は、外部から回転調節可能な回転部49とこの回転部49の外周に嵌合し内筒5側に固定された固定部51とを備え、回転部49に、一端に開口17を備え他端に回転部49の外周面に開放された調節口61を有する第1の部分オリフィス59を設け、固定部51に、一端が調節口61に対向し他端が液体還流路7に開放され第1の部分オリフィス59と共にオリフィス15を成す第2の部分オリフィス69を設けた。
【0053】
このため、外部から端閉部材13の回転部49を回転操作し、衝撃緩和の程度を、外部制御することができる。
[その他]
貫通孔35a,35b,35c,35dは省略することもできる。オリフィス15は、調節しないタイプにすることもできる。