(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5737980
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】整列したサイクル耐性の構造を有するLiバッテリ用のカソード構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20150528BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20150528BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20150528BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20150528BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20150528BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20150528BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20150528BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20150528BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20150528BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20150528BHJP
H01M 12/08 20060101ALN20150528BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/139
H01M4/1391
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/38 Z
H01M4/90 X
H01M4/70 Z
!H01M10/052
!H01M12/08 K
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-22840(P2011-22840)
(22)【出願日】2011年2月4日
(65)【公開番号】特開2011-165665(P2011-165665A)
(43)【公開日】2011年8月25日
【審査請求日】2014年2月4日
(31)【優先権主張番号】10 2010 001 631.4
(32)【優先日】2010年2月5日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヨット. ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴァシュキース
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ アイゼレ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー オーベラッカー
【審査官】
▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−236758(JP,A)
【文献】
特開2010−80432(JP,A)
【文献】
特開平04−328245(JP,A)
【文献】
特開2005−149891(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/030215(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0156361(US,A1)
【文献】
特開2000−268827(JP,A)
【文献】
特開昭55−104073(JP,A)
【文献】
特開2005−267997(JP,A)
【文献】
特開2005−317512(JP,A)
【文献】
特開2001−076761(JP,A)
【文献】
特表2007−516567(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0258577(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/131
H01M 4/139
H01M 4/1391
H01M 4/38
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/70
H01M 4/90
H01M 10/052
H01M 12/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質(40)が導入されている導電性の支持体構造(10)を有するリチウム電池のカソード構造体において、前記支持体構造は相互に平行な多数の突起部(20)を有し、前記突起部(20)は一方の側で一体的に支持体層(30)と結合されていて、前記突起部(20)の間に前記活物質(40)が配置されていて、前記平行な突起部は、水中の懸濁物として凍結キャスティングされ、かつ引き続き固定されている粒子により形成されていて、前記活物質(40)は焼結された突起部(20)の間で前記突起部の表面上に配置されている、カソード構造体。
【請求項2】
前記平行な突起部(20)は、水中の粒子の凍結キャスティングされた懸濁物の粒子成形体から形成されていて、前記粒子成形体は凍結乾燥によって脱水されていて、前記粒子成形体は前記粒子の相互の機械的に結合によって固定されていて、前記固定は粒子の間の焼結結合により提供されている、請求項1記載のカソード構造体。
【請求項3】
前記突起部(20)は相互にほぼ一定の間隔で配置されていて、前記間隔は少なくとも1μmであり、最大で2mmである、請求項1又は2記載のカソード構造体。
【請求項4】
前記支持体層(30)の厚さと、前記突起部(20)の長さの合計として考慮される前記支持体構造の厚さは、少なくとも10μmであり、最大で10mmである、請求項1、2又は3記載のカソード構造体。
【請求項5】
前記支持体構造(10)は、導電性でありかつリチウムイオン伝導性であり、最大で2.9Vのリチウムに対する電極電位を有し、Li−Ti酸化物又はLi4-xMgxTi5O12(式中、0≦x≦2)又はLi4-xMgxTi5-y(Nb,Ta)yO12(式中、0≦x≦2及び0≦y≦0.1)又はLi2-xMgxTi3-y(Nb,Ta)yO7(式中、0≦x≦1及び0<y<0.03)を有する材料から準備されるか、又は前記支持体構造(10)は導電性材料から準備されかつ前記カソード構造体中では支持体構造(10)の間の空間内にLiイオンの伝導のために適している液体電解質が準備されていて、前記支持体構造(10)は連続気孔を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のカソード構造体。
【請求項6】
前記活物質(40)は、Li(Ni,Mn,Co)O2、Li(Ni,Mn)2O4、S、Li−O反応を促進するために調整された触媒材料を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載のカソード構造体。
【請求項7】
前記Li−O反応を促進するために調整された触媒材料は、α−MnO2又はナノ結晶性α−MnOである、請求項6記載のカソード構造体。
【請求項8】
リチウム電池のカソード構造体の製造方法において、粒子を水中の懸濁物(130)として準備すること、前記懸濁物を冷却されたキャスティング型(100)上に前記懸濁物の流出箇所と前記キャスティング型との間で相対運動(150)させながら凍結キャスティングすること、前記凍結キャスティング後に前記粒子を固定し、前記凍結キャスティングにより前記粒子は平行な突起部の形を形成し、前記突起部は上記突起部と一体的に形成された支持体層から延びていることを有し、更に、前記方法は、固定された前記突起部の間の前記突起部の表面上に活物質を導入(190)することを有する、カソード構造体の製造方法。
【請求項9】
前記凍結キャスティングの後でかつ懸濁物の固定(160)の前に水を除去し、前記粒子材料(160)を前記粒子の焼結によるか又は粒子間へのバインダーの導入により固定する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記凍結キャスティングの後でかつ懸濁物の固定(160)の前に、凍結した懸濁物からの氷の昇華により水を除去する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記懸濁物を、平らなベルト(160)上に又はセラミックイオン伝導体により準備された成形体上にキャスティングし、前記ベルト又は前記成形体は、水の氷点に相当する温度か又はそれより低い温度を有する、請求項8、9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記粒子は、導電性であり、リチウムイオン伝導性であり、最大2.9Vのリチウムに対する電極電位を有し、Li−Ti酸化物又はLi4-xMgxTi5O12(式中、0≦x≦2)又はLi4-xMgxTi5-y(Nb,Ta)yO12(式中、0≦x≦2及び0≦y≦0.1)又はLi2-xMgxTi3-y(Nb,Ta)yO7(式中、0≦x≦1及び0<y<0.03)を有する材料から準備される、請求項8、9、10又は11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムベースのガルヴァーニ電池又は蓄電池用のカソード構造体並びにその製造に関する。特に、本発明は、高いサイクル耐性が達成される、特に自動車分野において使用するためのカソード構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の場合、多くの他のガルヴァーニ要素と同じように、充電又は放電は、カソード構造体又はアノード構造体の立体的(koerperlich)な変化を伴う。この体積変化は、ホスト格子(これはカソードを想定している)中へのリチウムのインサーションにより生じ、この格子中でリチウムイオンは(電流の下で)カソード構造体内へ吸収される。特に、リチウム硫黄電池又はリチウム空気電池の場合には、リチウムと硫黄との間の又はリチウムと酸素との間のレドックス反応により特に大きな体積変化が生じる。
【0003】
それにより、複数回の充放電サイクルの後に、立体的な変化に基づく著しい構造変化が生じ、それにより、蓄電池の性能、特に容量が明らかに損なわれる。更に、コンパクトで機械的に安定な構造は明らかに低い性能を伴う、それというのも、比表面積及びそれによるイオン伝導性又は電子伝導性がコンパクトな組織の場合に明らかに低下するためである。高い電流密度のために、できる限り多くの三相界面(又はそれによる高い体積密度)をホスト結晶と炭素(電子伝導体)と電解質(リチウムイオン伝導体)との間に提供することが必要である。高い電流密度は、従って高い表面積を有する微細構造を必要とするが、しかしながらこの微細構造は先行技術による蓄電池の場合には、同時に充放電の経過で高い消耗を伴う(低いサイクル耐性)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、一方で高い電流密度を可能にし、他方で高いサイクル回数でも高いサイクル耐性を提供する機械的構造体として準備されるカソード構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題は、独立請求項による装置及び方法によって、つまり活性材料(40)が導入されている支持体構造(10)を有するリチウム電池のカソード構造体において、前記支持体構造は相互に平行な多数の突起部(20)を有し、前記突起部(20)は側面でそれぞれ一体的に一貫する支持体層(30)と結合されていて、前記突起部(20)の間に前記活性物質(40)が配置されていて、前記平行な突起部は、水中の懸濁物として凍結キャスティングされ、かつ引き続き固定されている粒子により形成されていて、前記活性材料(40)は焼結された突起部(20)の間で前記突起部の表面上に配置されている、カソード構造体及びリチウム電池のために適しているカソード構造体の製造方法において、粒子を水中の懸濁物(130)として準備すること、前記懸濁物を冷却されたキャスティング型(100)上に前記懸濁物の流出箇所と前記キャスティング型との間で相対運動(150)させながら凍結キャスティングすること、前記凍結キャスティング後に前記粒子を固定し、前記凍結キャスティングにより前記粒子は平行な突起部の形を形成し、前記突起部は上記突起部と一体的に形成された一貫する支持体層から延びていることを有し、更に、前記方法は、固定された前記突起部の間の前記突起部の表面上に活性材料を導入(190)することを有する、カソード構造体の製造方法によって解決される。
【0006】
本発明は、特にリチウムベースの蓄電池のために適しているカソード構造体の低コストでかつ簡単な製造を可能にし、この場合、本発明によるカソード構造体は、一方で特に高い機械的強度及び安定性を提供し、他方で高い比表面積(つまり体積に対する三相界面の面積)を可能にする。このことから特に高いサイクル耐性が生じ、その際、充放電サイクルの高い回数に関する機械的安定性が付与される。同様に、本発明は、高いサイクル数の後でも高い電流密度を可能にする、それというのも高い比表面積が基本構造の機械的安定性により多数回の充放電の経過の後でも保証されるためである。本発明による製造方法は、既に十分に検証された方法で実施することができ、その際、カソード構造体の所望な特性を提供するために、多数のパラメータを簡単な方法で正確に調節することができる。この製造方法のプロセスパラメータを用いて、この構造の正確に予測可能な特性パラメータを作り出すことができる。この製造方法は、更に、先行技術による製造方法と比較して少量のエネルギーを必要とするだけであり、簡単な構造を有するが、所望の特性の正確な制御を可能にする自動機械により準備できる。この構造特性は広い範囲にわたり可変であり、特別な使用範囲に特別に適合させることが可能である。
【0007】
本発明の基礎となるコンセプトは、カソード構造体を凍結キャスティングを用いて製造し、その際、カソードの構造は粒子により形成され、この粒子はまずに水中の懸濁物の形で準備され、かつ生じるスラリーは適切に凍結される。この構造は氷の結晶の適切な形成により生じ、この場合、結晶形成は構造体を形成する手段として適切に使用される。この場合、高い比表面積を有し、高い機械的安定性も有する適切な微細構造を準備するために、特に凍結した水の特性又は結晶形性の際のこの特性が使用される。
【0008】
放電の間にリチウムイオンが向かって移行する電池の部材を、カソード又はカソード構造体とみなす。
【0009】
本発明によるカソード構造体は、その微細構造中に活性材料が導入されている支持体構造を有する。微細構造として、この支持体構造体は、多数の相互にほぼ平行の突起部を有し、この突起部が1つの支持体層から延びている。この突起部は、従って、一貫した支持体層と一方の側で一体的に結合しているので、一貫した支持体層に基づきこの支持体構造は一体的に準備されている。多数の平行な突起部は、下地から又は冷却されたキャスティング型から出発する懸濁物の結晶化によって生じ、この場合、懸濁物の上側はキャスティング型又は下側よりもいくらか温かくされている。従って温度勾配が生じるが、上側は、少なくとも水の氷点付近であるか、又はそれより低い温度に冷却されている。この温度勾配により、凝固の間に懸濁物が偏析しかつ水が粒子から分離される氷の結晶構造が形成される。凍結乾燥プロセス、及び懸濁物の供給箇所に対して凝固する材料の適切な送り、及び結晶化の間の偏析プロセスに基づき、突起部が生じる。この温度勾配の更なる構成要素は、送り方向に延びている。この場合、支持体層/キャスティング型から出発しかつ送り方向に沿って、突起部の延在方向で増大する温度低下が行われる。この温度勾配は、この温度低下により定義される。この温度勾配は2つの構成要素を有する、つまり送り方向に沿って低下する第1の構成要素と、支持体層/キャスティング型の法線から出発して低下する第2の構成要素を有し、この場合、第2の低下する構成要素は支持体層か離れて低下する。この突起部は従って、結晶化プロセスにより、つまり凍結プロセス及びその運転パラメータによって定義される。この運転パラメータは、例えば走行速度、温度、温度差及び/又は水中の粒子の濃度を有する。このプロセスパラメータからこの突起部の特徴が生じ、この特徴は主に突起部の断面形状、突起部の間の間隔、突起部中の粒子の密度及び突起部の高さに反映される。この突起部の構造特性は、従って、凍結キャスティングプロセスによって定義される。凍結キャスティングにより形成される突起部の間に、活性材料が配置される。改善された機械的特性を準備するために、平行な突起部を粒子により構成し、この粒子は水中の懸濁物として凍結キャスティングされ、更に固定され、その際、この固定される特徴が凍結キャスティングされた粒子に関連する。この種の固定された粒子の間に活性材料が配置され、有利に支持体構造によって表される突起部の表面の間に配置される。この構造、つまり断面及び特に突起部の間の間隔は、従って凍結キャスティングプロセスによって規定され、特に、突起部の中での個々の粒子間の構造化された関係が固定によって、例えば粒子間の焼結結合又は粒子間のバインダー結合によって規定される。
【0010】
特に支持体構造の中の孔径を定義する他の特徴は、粒子が水によって空間を形成し、この水はまず凍結キャスティング後に粒子の間に存在し、この水はその後で少なくとも部分的に除去される。従って、この水はスペーサーとして使用され、その後にこの水は少なくとも部分的に除去され、バインダーに置き換えられる。これとは別に、この空間はまず水により占められ多空間により形成され、その後で水は除去され、粒子間の共通する焼結結合面を準備することができる。
【0011】
粒子が加工される選択されたプロセスパラメータに依存して、特に粒子と水との混合比に依存して、この突起部は相互に一定の間隔で配置され、この間隔は有利に数マイクロメートルから約1mmの間であることができる。この間隔は、少なくとも1、2、5、10、20、50、100、200又は500μmである。全体の間隔の上限として、有利に2mm、1mm又は500μmの間隔が使用される。この間隔は、一方では、活性材料を良好に導入でき、かつ高い比表面積を形成することを可能にし、他方では、この支持体構造の突起部が機械的に安定に提供され、特に構造的な完全性が損なわれずにこの突起部間の活性材料中の変化を許容する。
【0012】
この支持体構造(つまり支持体層の厚さ及びこの支持体層から延びる突起部の長さ)の全体の厚さは、有利に0.2〜5mmである。一般に、この支持体構造の厚さは、少なくとも10、20、50、100、200又は500μmであることができるか、又は少なくとも1mm又は2mmであることもできる。最大で、この支持体層の厚さは、有利に10mm、5mm又は2mmである。この突起部の断面の縦横比として、つまり一貫する支持体層を出発点として突起部の高さ対幅の比率は、有利に1〜200、有利に1〜100、特に2〜20又は10未満である。この縦横比によって、高い電流密度で高いサイクル抵抗を達成できる。
【0013】
この支持体構造(及び従って粒子も)は、導電性でもあり、リチウムイオンに対しても伝導性である材料から準備される。バッテリのタイプに依存して、この材料はリチウムに対して最大で2.9V、又は最大で2Vの電極電位を有する。この材料は、例えばチタン酸リチウムにより準備され、その際、リチウムの割合はマグネシウムにより置き換えることができる。更に、チタンの割合は、ニオブ及び/又はタンタルにより置き換えることができる。更に、両方の置き換えを考慮することもでき、この場合リチウムの一部をマグネシウムにより置き換え、チタンの一部をニオブ及び/又はタンタルにより置き換える。
【0014】
これとは別の実施態様の場合には、この支持体構造は導電性である。この別の実施態様において、この支持体構造がイオン伝導性を提供しない場合に、支持体構造中に準備された液体電解質がLiイオンの伝導を引き受ける。この別の実施態様において、一般に支持体構造として、導電性である材料、例えば金属又は合金を使用することができる。この粒子は、この場合この材料から準備される。この支持体材料が連続気泡を有する場合に特に有利である。これは、さもないとイオンが一般に電解質に達することができずかつ更にそこにまで達することができないために、特に有利である。
【0015】
この活性材料は、突起部の間でこの突起部の表面に、有利に純粋な粒子又はナノ粒子として配置されている。例えば、この活性材料はLi(Ni,Mn,Co)O
2のタイプの層状インターカレーション酸化物又はLi(Ni、Mn)
2O
4のタイプのスピネルであることができる。更に、この活性材料として硫黄を、有利に硫黄粒子として考慮することができる。リチウム空気電池の場合に、活性材料は触媒材料であることができ、この材料はリチウムと酸素との反応を促進し、例えばα−MnO
2又はナノ結晶性α−MnO
2である。この突起部の櫛状構造に基づき、これは大きな表面積を提供し、この表面積は主に突起部の相互に向き合う側面から形成される。断面で観察すると、この活性材料は突起部表面に設けられている、つまり特に一貫した支持体層に対して垂直に延びる面に設けられていて、この場合にこの突起部(これはリブとして表すこともできる)はこの表面をフィン状に展開し、従ってこの表面は平坦な表面と比べて何倍にも増やされる。この活性材料は、リチウムイオン及び電子を伝導する支持体構造と直接接触している。これにより、電気化学的変換及びそれにより電力の所望な流れを可能にする多相界面が生じる。この支持体構造の材料は複合導体(つまりリチウムイオン及び電子)として準備されるため、電気化学的反応のための活性材料に対して二相界面で十分である。この支持体構造及びそれによる複合導体−骨格は固定されるため、このような構造は組織転移(Gefuegeumlagerungen)によって老化することはない。
【0016】
1つの実施態様の場合には、この支持体構造自体は導電性でない(つまり電気絶縁性の)リチウムイオン導体上に配置され、このリチウムイオン導体はアノードに対するセパレータとして用いられる。本発明によるリチウム電池は、従って、更に本発明によるカソード構造体、並びに導電性ではなく、有利にセラミック材料からなる固体電解質としてリチウムイオン導体の層、有利に平坦な層を有することができる。この場合に、本発明による支持体構造は、固体電解質プレート(リチウムイオンにとって伝導性であり、電極にとって伝導性でない)上に直接又は相応する固体電解質層上に配置されていることができ、これ自体本発明のリチウム電池の一部である。
【0017】
本発明は、一般に本発明によるカソード構造体並びに本発明によるカソード構造体を有するリチウム電池に関する。
【0018】
本発明は、更に、リチウム電池中での使用のために適したカソード構造体の製造方法を提供する。まず、本発明による粒子は水中の懸濁物として準備される。この粒子は、後に支持体構造を形成するため、この粒子は支持体材料から形成されている。この懸濁物は、冷却されたキャスティング型上に、このキャスティング型と流出箇所との間で相対運動させてキャスティングされる。このキャスティング型として、例えば(平らな)ベルトが用いられ、このベルトの表面は流出箇所に対して動くため、このベルトは継続的に懸濁物で覆われる。同様に、キャスティング型として、固体電解質(例えばセラミックリチウムイオン導体)を有し、その上側にこの懸濁物をキャスティングする構造を準備することもできる。冷却によって氷の結晶が生じ、この氷の結晶はこのベルトから又は固体電解質から塗布された懸濁物の表面にまで延びる。このキャスティング型(つまり、このベルト又はその上に準備されたキャスティング構造体)は冷却されるため、この懸濁物はこのキャスティング型の箇所では、懸濁物の表面よりもより冷たく、それにより所望の温度勾配が生じ、この温度勾配は形成される支持体構造に直接影響を及ぼす。基本的に、この方法のプロセスパラメータとして、次の構造体を決定する値が準備される:キャスティング型又はベルトの走行速度、懸濁物、キャスティング型及び周囲の温度、キャスティング型上に塗布された懸濁物中の温度勾配及び水中での粒子の濃度。他のプロセスパラメータは、場合により水の氷点であり、この氷点は場合により溶かした塩又は溶剤添加物によって低下させるか又は変更することができる。このキャスティング型は水の氷点を下回る温度を有する場合、氷の結晶がこのキャスティング型から懸濁物の内部に形成され、この氷の結晶は懸濁物の粒子を押し退け、それにより適切な混合が生じる。流出箇所に対するキャスティング型の動きと共に所望の構造が生じる。この構造は、混合プロセス及びそれにより生じる懸濁物又は水の結晶化プロセスにより生じ、この場合にプロセスパラメータ(例えば温度、搬送速度及び懸濁物中の粒子の濃度)が構造を規定する。
【0019】
それにより粒子は水から偏析し、この粒子が粒子成形体を形成する。この成形体は、有利に凍結乾燥され、例えば焼結(この場合、粒界で粒子間の焼結結合が生じる)又は粒子間の空間へのバインダーの導入及びこのバインダーの硬化により固定される。これにより支持体構造は固定され、この活性材料は突起部の間に導入されるか又はその表面上に固定される。
【0020】
凍結キャスティングされた粒子の固定と、懸濁物の適用(つまり凍結キャスティング)との間に、少なくとも部分的に凍結された懸濁物から水が、有利に凍結された懸濁物からの氷の昇華により取り出される。この場合、有利に、凍結された懸濁物は真空にさらされ、この真空が昇華を促進し、この場合ほぼ乾燥された、粒子成形体の形の中に突起部の形に形成された粒子が残留する。凍結キャスティングの工程に続いて、凍結乾燥の工程を行うことができる。この凍結乾燥の後に残留する粒子を固定するために、焼結プロセスを実施するか、又はバインダーをこうして得られかつ成形された粒子材料に浸透させ、粒子は固定され、かつ所望な支持体構造が機械的に安定化されて形成される。これらの固定工程又は固定メカニズムは、組み合わせることもできる。このバインダーは、水性懸濁物中に既に溶かして含有されていてもよい。
【0021】
この凍結キャスティングのプロセスは、例えばシートキャスティングのための装置を用いて実施することができ、この場合、この装置は適切な冷却装置が取り付けられる。この水性粒子懸濁物は、有利に薄いスリットを通して、0℃未満であるベルト上に塗布される。このベルトの温度は、有利にキャスティング装置の長さにわたって、つまり、ベルトの運動方向にわたり調節可能であり、それにより増大する冷却が準備される。この勾配の推移は、更なるプロセスパラメータであり、これは粒子材料の構造、つまり形状、微細構造及び密度を規定する。同様に、適切な措置により懸濁物の上側の温度を規定することができ、場合により対流及び/又は放熱が適切に制御されるベルトに沿った所望の推移によって規定することができる。対流は例えば場合によりベルト搬送方向に向かって変化する空気冷却によって準備することができるか、もしくは、例えば高い又は低い放射率を有するベルトに向かう面を適切に使用することによる、輻射のための適切な手段を当てることができる。このベルト又は固体電解質の冷却のために有利に冷媒が、場合によりベルトの内部又は、懸濁物が塗布される面とは反対側のベルトの面での熱伝導エレメントと組み合わせて使用される。適切に準備された温度勾配によって、氷の結晶はベルト面から懸濁物の表面の方向に向かって成長する。これは、このベルトが懸濁物の表面よりもより冷たくされ、特に懸濁物自体よりも冷たくされることにより生じる。この結晶化プロセスは、特に時間的な温度推移に依存し、従って、キャスティング型として使用されるベルトにより懸濁物を搬送する方向に沿った温度推移に依存する。
【0022】
引き続き、この凍結キャスティングプロセスの後に、凍結乾燥プロセスが行われ、それにより氷の結晶は凍結乾燥によって昇華し、支持体構造、つまり粒子成形体はほとんど水不含に準備され、それにより、粒子によって形成されるこの細孔壁を有する支持体構造が残留する。この細孔自体は、水又は氷により占められていた空間であり、凍結乾燥により空にされた空間である。
【0023】
水を除去し、粒子材料を焼結又はバインダーの導入により固定された後に、活性材料を導入することができる。バインダーを使用する場合、有利にこの活性材料が取り付けられるか、又はこの活性材料は、活性材料と支持体構造の材料との間で直接的な接触が生じるように加工される。
【0024】
既に記載したように、懸濁物で、キャスティング型として使用される走行ベルトを被覆することにより、支持体構造自体だけを準備することができる。同様に、成形体(例えば固体電解質層又は導電性電極層)が被覆プロセス及び凍結プロセスの間に動く限り、これらを懸濁物で被覆することもできる。更に、コンベアベルト自体はではなく、その上にある分離層を被覆して、支持体構造を成形体として独自に準備することができる。同様にして、この成形体をベルト上に直接準備するか又はベルトの分離層上に準備することができる。キャスティング型の相対運動はコンベアベルトの搬送運動によって提供され、この相対運動は搬送区間に沿った温度推移に合わせられる。このプロセス値の関係は、特に、突起部間の間隔及びさらに支持体構造の縦断面形状を前提とする。
【0025】
本発明による方法の範囲内で、この粒子は、リチウム電池の実施態様に関して上記に定義された支持体材料から準備さる。特に、懸濁物として粒子及び水からなる混合物が準備され、この粒子はリチウムイオン伝導性材料からなり、更に導電性である。既に記載されたように、このためにチタン酸リチウムが適しており、この場合、リチウム、チタン又はこの両方は部分的にマグネシウム又はニオブ/タンタルにより置き換えられている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】この方法を実施するために適した装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面の詳細な説明
図1は、支持体構造10を有する本発明によるカソード構造体が実線により示され、このカソード構造体は相互に平行の多数の突起部20を有し、この突起部は一貫した支持層30上に設けられていて、この突起部はこの支持層から延びている。これらの突起部の間に、つまり突起部の表面に、活性材料40が配置されていて、この活性材料は、
図1において象徴的に点の長さとして示されている。
図1は、縮尺通りではなく、特に粒子サイズ(有利にμm又はnmの範囲)は、突起部20の形状寸法に対して縮尺通りではない。この突起部は、単に象徴的に示されているだけであり、この突起部20の断面形状は、多くの現実の実施態様ではこの突起部20の厚さによって結合することができ、この厚さは個々の突起部20の長さ方向の広がりに沿って一定である。図示されていない実施態様の場合には、従って、この突起部はほぼ一定の厚さである。図示されていない、現実的な実施態様は、支持体層に向かって先細になっている突起部を有する。更に、場合による実施態様は、支持体層から先細になっている突起部が考慮される。
図1中に示された支持体構造10は凍結キャスティングによって生じ、この場合、支持体層30が存在する側は、支持体構造の反対側よりもより冷たくされている。従って、プロセスパラメータに依存して、カソード構造体10の構造特性、例えば突起部の幅、突起部の高さ、突起部の間隔又は多孔性が生じる。このリチウム電池は、更に(破線で示されている)固体電解質50を有する。必要な場合には、固体電解質50と支持体層との間に、ネット状に構成された電極層60(集電体として利用される)が配置されていてもよい。更に、本発明によるリチウム電池は、更に電解質層70(点線で示されている)を有し、この場合に、有利に液体電解質がこの間隙20の間に準備され、これは粒子40を層70と同様に接触する。更に、
図1に示したリチウム電池は、他の電極を有し、この他の電極は70で示される層の箇所で又は70で示される層が存在する側(この側は支持体層とは反対側)に存在することができる。
【0028】
図2中では、冷却エレメント110により冷却されているコンベアベルト構造100が示されている。この冷却エレメント110は、例えば有利にヒートスプレッダを備えた冷却リングにっよって準備され、このヒートスプレッダは、ベルトの下側と熱リング110との間に存在する。まず、収容容器120中に、水中の粒子からなる懸濁物130を準備し、この懸濁物を適切にスリットを通してベルト上に送り出す、矢印140を参照。コンベア運動150によって、懸濁物からなる層160が生じ、この層は冷却リングによって冷却される。このコンベア方向150に沿って温度勾配が生じ、有利にコンベア方向で低下する温度分布が生じ、これによりこの懸濁物160はますます冷却される。冷却が進むことにより結晶化プロセスが始まり、この結晶化プロセスにおいて粒子と水とは再び偏析し、この偏析の際及び結晶化プロセスにより一時的に生じた氷の結晶を有する支持体構造が準備される。
【0029】
図示された凍結乾燥装置170は、結晶化プロセス及び偏析により形成された粒子材料から氷を除去するため、ほぼ乾燥した粒子形成体が残留する。この粒子成形体を更なるプロセス(引用符号180、190により図示されている)で一方で固定し、他方で活性材料を導入する。この図示されたステーション180は、水及び特に氷が除去された粒子成形体を固定し、特に焼結によるか又はバインダーの浸透によって固定するために用いられる。このステーション180は、従って、固定ステーション、例えば焼結炉又はバインダーを導入するための装置であることができる。このステーション180による加工の後に、本発明による支持体構造が生じるが、活性材料は有していない。
【0030】
このステーション190中で、既に固定された粒子成形体中の又は突起部の間のその表面に活性材料を、例えばこの突起部の内側への粉末の塗布により導入する。場合により、ステーション190は、この活性材料を粉末の形で突起部の内面又は表面に、例えばバインダーを用いるか又は焼結の場合に通常の固体架橋の形成により固定する。ステーション190はステーション180と組み合わせることができる。更に、この固定とこの塗布とを組み合わせ、例えば少なくとも部分的に同時に行うことができる。
【0031】
図2を用いて説明されたこのプロセスは、本発明による方法のための特別な実施例であり、この方法の場合に、温度、温度分布、相対運動(符号150)及び特に懸濁物中の粒子と水との混合比によって又は他のプロセスパラメータによっても生じる構造を定義することができる。例えばこの突起部の間隔、つまり結晶化過程及び偏析過程が粒子材料に突起を生じさせる周期性は、このプロセスパラメータの適当な選択により数マイクロメートルから約1mmまで変化させることができる。同様に、このプロセスパラメータによって、通路の体積割合を約30%〜約95%まで変えることができる。この場合、突起部の間の空間が通路とみなされる。換言すれば、プロセスパラメータの適切な選択によって、体積(この中には突起部も予定されている)に対する突起部の体積割合を70〜5%まで調節することができる。使用に応じて、第1の場合に比体積を高めるために、活性材料のための通路の間の特に高い体積を準備することができるか、又は第2の場合に支持体材料の機械的安定性を高めるために、特に著しい体積割合を有する突起部を準備することができる。