(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の冷却媒体通路が前記冷却媒体供給通路から分岐する位置は、それぞれ前記軸方向における前記ローターコアの中央部である請求項1から3のいずれか1項に記載の電動機の冷却構造。
前記複数の冷却媒体通路は、前記冷却媒体の流れ方向と平行な平面で前記冷却媒体通路を切った場合の寸法及び形状がそれぞれ同一である請求項1から4のいずれか1項に記載の電動機の冷却構造。
前記ローターコアは、前記軸方向に向かって貫通する貫通孔を有し、前記溝と前記貫通孔とは、前記ローターコアの端部で接続される請求項6に記載の電動機の冷却構造。
前記ローターコアが取り付けられた前記シャフト及び前記ローターコアの外側に配置されるステーター6を内部に格納する筐体は、前記ステーターが有するコイルのコイルエンドと対向する部分に、コイルエンド冷却用通路を有する請求項1から10のいずれか1項に記載の電動機の冷却構造。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
電動機は、ステーターが有するコイルのジュール発熱及びローターコアの渦電流損失及びヒステリシス損失等によって発熱する。本実施形態に係る電動機の冷却構造(以下、必要に応じて冷却構造という)は、電動機のシャフト内に設けられた冷却媒体供給通路から分岐して冷却媒体を流し、複数の鋼板を積層したローターコアの表面から放出させる複数の冷却媒体通路の圧力損失が、シャフト及びローターコアの回転に起因する遠心力を考慮した上で、それぞれ同一(公差、製造誤差を含む)になっている。このような構造により、本実施形態に係る冷却構造は、冷却媒体を用いてローターコア、磁石及びコイル(特にコイルエンド)を冷却する。次に、本実施形態に係る冷却構造を備えた電動機の構造を説明する。本実施形態に係る電動機は、前記冷却構造を備えている。本実施形態に係る冷却構造及び電動機は、建設車両に好適である。まず、本実施形態に係る電動機を適用した建設車両の一例としてホイールローダを説明する。
【0024】
<ホイールローダ>
図1は、ホイールローダを示す説明図である。ホイールローダ100は、車体101と、車体101の前部に装着されたリフトアーム(作業機)102と、リフトアーム102の先端に取り付けられたバケット(作業機)103と、車体101を支持しながら回転して車体101を走行させる2本の前輪104F及び2本の後輪104Rと、車体101の上部に搭載されたキャブ105と、を備えている。
【0025】
図2は、ホイールローダの駆動系を示す模式図である。本実施形態において、ホイールローダ100は、動力発生源として、ディーゼルエンジン又はガソリンエンジン等の内燃機関106と、電動機1とを有する。このように、ホイールローダ100の駆動方式は、いわゆるハイブリッド方式である。本実施形態において、ホイールローダ100は、内燃機関106と、電動機1とを有している。内燃機関106及び電動機1の出力は、変速装置107に入力される。変速装置107は、内燃機関106及び電動機1の出力を合成した後、前輪側プロペラシャフト108F及び後輪側プロペラシャフト108Rへ出力する。前輪側プロペラシャフト108Fの出力は、前輪側デファレンシャルギア109F及び前輪側ドライブシャフト110Fを介して2本の前輪104Fに伝達される。また、後輪側プロペラシャフト108Rの出力は、後輪側デファレンシャルギア109R及び後輪側ドライブシャフト110Rを介して2本の後輪104Rに伝達される。このように、内燃機関106及び電動機1の出力は前輪104F及び後輪104Rに伝達されて、ホイールローダ100を走行させる。ホイールローダ100の運転時においては、電動機1の出力又は内燃機関106の出力のみが変速装置107に伝達されるような場合もある。すなわち、ホイールローダ100の運転時においては、常に電動機1の出力及び内燃機関106の出力が変速装置107へ伝達される訳ではない。また、電動機1は1台に限定されるものではなく、複数台であってもよい。さらに、ホイールローダ100は、電動機1の動作(力行又は回生)を制御するインバータと、電動機1の回生によって得られたエネルギー(電力)を蓄えるキャパシタ又は二次電池等の蓄電装置とを有している。なお、本実施形態において、ホイールローダ100は、内燃機関を有さずに蓄電装置の電力によって電動機1を駆動源とする電動車両(建設車両)であってもよい。すなわち、本実施形態に係る電動機の冷却構造は、ハイブリッド車両、電動車両を問わずに適用できる。
【0026】
本実施形態において、電動機1及び内燃機関106は横置きされている。すなわち、電動機1及び内燃機関106の動力伝達軸が、ホイールローダ100の直進時における進行方向と直交するように、より具体的には、前輪側プロペラシャフト108F後輪側プロペラシャフト108Rと直交するように、電動機1及び内燃機関106が配置される。なお、電動機1及び内燃機関106の配置は横置きに限定されるものではなく、縦置き、すなわち、電動機1及び内燃機関106の動力伝達軸が、前輪側プロペラシャフト108F後輪側プロペラシャフト108Rと平行になるように配置されていてもよい。次に、本実施形態に係る冷却構造及び電動機について説明する。
【0027】
<冷却構造及び電動機>
図3は、本実施形態に係る電動機の冷却構造及び前記電動機の冷却構造を備えた電動機を示す断面図である。電動機1は、冷却構造2と、筐体3と、動力伝達軸としてのシャフト10と、ローターコア20と、ステーター6とを含んでいる。シャフト10は、電動機1の発生する動力を電動機1の外部に出力したり、電動機1を発電機として用いる場合に電動機1へ動力を入力したりする。シャフト10は、外周部にローターコア20が取り付けられる。ローターコア20は円板形状の鋼板(電磁鋼板)21を積層した円筒形状の構造体である。ローターコア20の外側には、ステーター6が配置される。ステーター6は、ローターコア20の外側に配置される。本実施形態において、後述するように、ローターコア20は、内部に複数の永久磁石を埋め込んでいる。このように、本実施形態において、電動機1は、IPM(Interior Permanent Magnet)であるが、SPM(Surface Permanent Magnet)であってもよい。ステーター6は、ステーターコア6Yとコイル6Cとを有する構造体であり、ステーターコア6Yにコイル6Cが巻き付けられている。コイル6Cのステーターコア6Yから突出した部分が、コイルエンド6CEである。ステーターコア6Yは、複数の鋼板(電磁鋼板)を積層した構造体である。なお、電動機1は、永久磁石を有さない電動機、例えば、誘導電動機等であってもよい。すなわち、冷却構造2は、電動機1が磁石を有するか否かに関わらず適用することができる。
【0028】
筐体3は、ローターコア20が取り付けられたシャフト10及びステーター6を内部に格納する。筐体3は、円板形状のシャフト取り出し側部材3Tと、円筒形状の側部3Sと、円板形状の反シャフト取り出し側部材3Rとを有する。シャフト取り出し側部材3Tと、側部3Sと、反シャフト取り出し側部材3Rとで囲まれる空間が、筐体3の内部になる。シャフト取り出し側部材3Tは、シャフト10を筐体3の外部に取り出すための貫通孔3HAを有する。筐体3の内部に格納されたシャフト10は、貫通孔3HAから取り出される。本実施形態において、シャフト取り出し側部材3Tと側部3Sとは、例えば、鋳造等により一体成形されるが、両者を別部材とするとともにねじ等の締結部材で両者を結合してもよい。反シャフト取り出し側部材3Rは、シャフト取り出し側部材3Tとは反対側における側部3Sの端部に取り付けられる。反シャフト取り出し側部材3Rは、ねじ等の締結部材によって側部3Sに取り付けられる。
【0029】
筐体3の側部3Sの内周部には、ステーター6が取り付けられる。ステーター6は、環状の構造体であり、側部3Sの内周部全周に渡って取り付けられる。ステーター6の内周側には、シャフト10を取り付けたローターコア20が配置される。シャフト10は、両側にそれぞれ軸受4A、4Bが取り付けられている。2つの軸受4A、4Bは、筐体3に取り付けられており、シャフト10を回転可能に支持している。より具体的には、軸受4Aがシャフト取り出し側部材3Tに取り付けられ、軸受4Bが反シャフト取り出し側部材3Rに取り付けられる。このような構造により、筐体3は、軸受4A、4Bを介してシャフト10を回転可能に支持している。そして、シャフト10は、回転中心軸Zrを中心として回転する。
【0030】
シャフト10は、一端部10Cがシャフト取り出し側部材3Tの貫通孔3HAから突出する。シャフト10の一端部10C側には、例えば、ギヤ又は継手等が取り付けられる。このような構造により、前記ギヤ又は前記継手等を介して、シャフト10から電動機1の動力を取り出したり、電動機1に動力を入力して電動機1から電力を発生させたりする。シャフト10の一端部10C側が、シャフト10の入出力側になる。
【0031】
シャフト10と筐体3との間には、封止部材5A、5Bが設けられる。また、シャフト10と筐体3との間には、シャフト10の回転数を検出する回転数センサ5Iが設けられる。なお、回転数センサ5Iは、軸受4Bと封止部材5Bとの間に配置される。封止部材5Aは、シャフト取り出し側部材3Tの貫通孔3HAであって、軸受4Aとシャフト10の一端部10Cとの間に取り付けられる。封止部材5Bは、軸受4Bよりもシャフト10の他端部10R側に配置されるとともに、反シャフト取り出し側部材3Rの貫通孔3HBに取り付けられる。本実施形態において、電動機1は、冷却媒体(例えば、油)によって内部が冷却されるとともに軸受4A、4Bが潤滑されるので、シャフト10から筐体3の外部に漏れる前記冷却媒体を抑制するため、封止部材5A、5Bが筐体3とシャフト10との間に設けられる。また、軸受4Bと封止部材5Bとの間には、封止部材としてのオイルシール5Cが設けられる。
【0032】
ローターコア20は、複数の鋼板21がシャフト10に取り付けられ、積層された構造体である。複数の鋼板21がシャフト10に取り付けられた状態において、前記複数の鋼板21が積層される方向(積層方向)は、シャフト10の軸方向、すなわち、回転中心軸Zrと平行な方向である。積層方向におけるローターコア20の両端部には、バランスプレート30A、30Bが設けられる。なお、バランスプレート30A、30Bは、環状の部材であり、シャフト10の外周部に取り付けられる。前記複数の鋼板21が積層されたローターコア20は、2つのバランスプレート30A、30Bで挟持される。一方のバランスプレート30A側において、シャフト10は、バランスプレート30Aの内径よりも外径が大きくなっているローターコア固定部14を有する。このため、シャフト10の他端部10R側からシャフト10に取り付けられたバランスプレート30Aは、ローターコア固定部14に接すると、それ以上の移動が規制される。バランスプレート30A、ローターコア20、バランスプレート30Bを、この順にシャフト10へ取り付け、ローターコア固定ナット13をシャフト10にねじ込むことにより、ローターコア20がシャフト10に取り付けられる。この状態において、バランスプレート30A、30Bは、ローターコア20、すなわち、積層された前記複数の鋼板21に圧縮力を与えている。バランスプレート30A、30Bの直径は、鋼板21の直径と同一又は鋼板21の直径よりも小さくなっている。
【0033】
シャフト10は、電動機1を内部から冷却するための冷却媒体を通過させるための冷却媒体供給通路11を有している。本実施形態において、冷却媒体供給通路11は、回転中心軸Zrに沿って設けられる。冷却媒体供給通路11は、回転中心軸Zr上に設けられていることが好ましい。また、シャフト10を中空シャフトとし、シャフト10内にさらに別のシャフトを貫通させるような構造であってもよい。この場合、シャフト10と、シャフト10内を貫通する別のシャフトとの間に形成される空間を、冷却媒体供給通路11とすることができる。冷却媒体供給通路11は、シャフト10の内部であって、他端部10Rからシャフト10の軸方向、すなわち、回転中心軸Zr方向に向かって延在している。このため、シャフト10の他端部10Rには、冷却媒体が冷却媒体供給通路11へ流入する冷却媒体入口11Iが設けられる。このように、シャフト10の他端部10R側は、冷却媒体入口側になる。
【0034】
本実施形態において、冷却媒体供給通路11は、シャフト10の軸方向に向かって途中まで設けられる。冷却媒体供給通路11は、シャフト10の径方向外側に向かって延在する冷却媒体放出通路12A、12Bを有している。冷却媒体放出通路12A、12Bは、冷却媒体供給通路11に開口している。冷却媒体放出通路(第1の冷却媒体放出通路)12Aは、シャフト10の表面10Sであって、一方の軸受4Aよりもシャフト10の一端部10C側に開口する。冷却媒体放出通路(第2の冷却媒体放出通路)12Bは、シャフト10の表面10Sであって、他方の軸受4Bよりもシャフト10の他端部10R側に開口する。このような構造により、冷却媒体放出通路12A、12Bは、冷却媒体供給通路11とシャフト10の表面10Sとを連通する。冷却媒体供給通路11に供給された冷却媒体は、冷却媒体放出通路12A、12Bから放出されて、後述する冷却媒体回収通路7Bへ流れる途中で軸受4A、4Bを冷却及び潤滑する。なお、電動機1は、冷却媒体放出通路12A、12Bを必ずしも有していなくてもよい。
【0035】
冷却媒体供給通路11からは、複数の冷却媒体通路40A、40Bが分岐している。なお、
図3はシャフト10の回転中心軸Zrと平行かつ回転中心軸Zrを含む平面でシャフト10を切った場合の断面を示しているが、説明の便宜上、同一断面に複数の冷却媒体通路40A、40Bが現れている。しかし、実際は、後述するように、冷却媒体通路40A、40Bは、回転中心軸Zrを中心とした中心角が90度異なる平面でシャフト10を切った場合のそれぞれの断面に現れる。
【0036】
複数の冷却媒体通路40A、40Bは、冷却媒体供給通路11から分岐して、シャフト10の軸方向に対しては冷却媒体を分岐させず一方向に流しながらローターコア20を冷却した後、ローターコア20の表面に開口した放出口40AH、40BHから冷却媒体を放出させる。そして、複数の冷却媒体通路40A、40Bは、冷却媒体供給通路11に前記冷却媒体が流入する冷却媒体入口11Iから放出口40AH、40BHまでの距離(通路距離)が同一である。冷却媒体通路40A、40Bについては、後に詳述する。放出口40AH、40BHから放出された冷却媒体は、バランスプレート30B、30Aが有する冷却媒体出口31B、31Aから筐体3の内部に流出する。ローターコア20が回転している場合、前記回転に起因する遠心力によって、冷却媒体出口31B、31Aから流出した冷却媒体は、ローターコア20の径方向外側に飛ばされる。そして、前記径方向外側に飛ばされた冷却媒体は、コイルエンド6CEを冷却する。
【0037】
筐体3の側部3Sには、冷却媒体回収通路7Bが設けられている。冷却媒体回収通路7Bは、電動機1が使用される状態において、下方(重力の作用する方向側であり、
図3においては矢印Gで示す方向側)に設けられる。例えば、電動機1が
図1に示すホイールローダ100に搭載される場合、ホイールローダ100が水平面に接地している状態を電動機1が使用される状態であるとして、その状態において下方となる位置に冷却媒体回収通路7Bが設けられる。
【0038】
本実施形態において、筐体3は、コイルエンド6CEと対向し、かつ冷却媒体回収通路7Bを避けた部分に、コイルエンド冷却用通路7Tを有している。そして、コイルエンド冷却用通路7Tからもコイルエンド6CEに冷却媒体を供給して、コイルエンド6CEを冷却している。なお、コイルエンド冷却用通路7Tは必ずしも設ける必要はなく、例えば、電動機1又は電動機1の搭載対象等の仕様又は運転条件に応じてコイルエンド冷却用通路7Tを筐体3に設けるか否かが決定される。コイルエンド冷却用通路7Tは、シャフト10の回転中心軸Zrが鉛直方向(重力の作用方向)と直交するように電動機を配置した場合に、上方(鉛直方向とは反対側)に配置されることが好ましく、より好ましくは最上方(すなわちトップの位置)に配置されるのがよい。
【0039】
本実施形態において、冷却媒体は、冷却媒体循環手段であるポンプ8によって電動機1に供給されるとともに、電動機1を冷却等した後は、ポンプ8によって吸引される。ポンプ8の吸引口は、第1冷却媒体配管CL1によって冷却媒体回収通路7Bと接続される。また、ポンプ8の吐出口は、第2冷却媒体配管CL2によって電動機1と接続される。本実施形態において、第2冷却媒体配管CL2は、シャフト側供給配管CLAとコイルエンド側供給配管CLBとに分岐する。前者は冷却媒体供給通路11の冷却媒体入口11Iに接続され、後者はコイルエンド冷却用通路7Tに接続されて、それぞれの接続対象にポンプ8から吐出された冷却媒体を供給する。
【0040】
本実施形態において、冷却構造2は、冷却媒体供給通路11と、複数の冷却媒体通路40A、40Bとを含んでいる。ポンプ8から吐出された冷却媒体は、第2冷却媒体配管CL2を通って一部がシャフト側供給配管CLAに、残りがコイルエンド側供給配管CLBに流れる。シャフト側供給配管CLAに流れた冷却媒体は、冷却媒体入口11Iを通ってから、一部がそれぞれの冷却媒体通路40A、40Bに流入する。そして、冷却媒体は、冷却媒体通路40A、40Bを通過する過程でローターコア20を冷却し、放出口40AH、40BHから筐体3の内部に放出される。筐体3の内部に放出された冷却媒体は、ローターコア20の遠心力によってコイルエンド6CEに到達し、これを冷却する。冷却媒体通路40A、40Bに流入しなかった冷却媒体は、冷却媒体放出通路12A、12Bから放出されて軸受4A、4Bを冷却及び潤滑する。コイルエンド側供給配管CLBに流れた冷却媒体は、コイルエンド冷却用通路7Tに流入した後、コイルエンド6CEに供給されてこれを冷却する。冷却媒体出口31B、31Aから流出した冷却媒体によるコイルエンド6CEの冷却が不十分になりやすい運転条件で電動機1が運転されている場合でも、コイルエンド冷却用通路7Tにより、コイルエンド6CEを冷却することができる。このため、コイルエンド冷却用通路7Tは、様々な運転条件においても安定して電動機1を運転させることができる。
【0041】
コイルエンド6CEを冷却した冷却媒体と軸受4A、4Bを冷却及び潤滑した冷却媒体とは、重力の作用により、筐体3の下方に流れる。この冷却媒体は、冷却媒体回収通路7Bを通って筐体3の外部へ排出される。筐体3の外部に排出された冷却媒体は、第1冷却媒体配管CL1を通ってポンプ8に吸引される。ポンプ8は、吸引した冷却媒体を第2冷却媒体配管CL2に吐出する。このように、冷却構造2においては、ポンプ8を用いて、電動機1と、第1冷却媒体配管CL1、第2冷却媒体配管CL2、シャフト側供給配管CLA及びコイルエンド側供給配管CLBとの間で冷却媒体を循環させる。そして、冷却構造2は、上述したローターコア20及びコイルエンド6CEの冷却と、軸受4A、4Bの潤滑及び冷却とを繰り返す。なお、第1冷却媒体配管CL1及び第2冷却媒体配管CL2に、冷却媒体中の異物を除去するフィルタを、また、第1冷却媒体配管CL1に、及びローターコア20及びコイルエンド6CEを冷却して昇温した冷却媒体を冷却するクーラーを設けてもよい。なお、コイルエンド冷却用通路7Tに冷却媒体を供給する手段は、上述したような冷却媒体の循環構造の他に、ポンプ8とは異なる冷却媒体の供給ポンプを新たに設けて、コイルエンド冷却用通路7Tに冷却媒体を供給する循環構造であってもよい。すなわち、電動機1は、コイルエンド冷却用通路7T専用の冷却回路を有していてもよい。次に、電動機1の構成要素についてより詳細に説明する。
【0042】
<シャフト及びローターコア>
図4は、本実施形態に係る電動機が備えるシャフト及びローターコアを、シャフトの入出力側から見た状態を示す正面図である。
図5は、本実施形態に係る電動機が備えるシャフト及びローターコアの側面図である。
図4、
図5は、後述する
図6、
図8、
図10から
図12に現れる断面を示すためのものである。
図6は、
図4のA−A矢視図であり、
図7は、
図6に示す溝の拡大図である。
図8は、
図4のB−B矢視図であり、
図9は、
図8に示す溝の拡大図である。
図10は、
図5のC−C矢視図であり、
図11は、
図5のD−D矢視図である。
図12は、
図5のE−E矢視図である。
図13は、本実施形態に係る電動機が備えるローターコアの拡大図である。
【0043】
図6に示すように、冷却媒体供給通路11からは、径方向外側に延在する2本の第1冷却媒体通路41A、41Aが分岐している。本実施形態において、第1冷却媒体通路41A、41Bは、それぞれの中心軸が回転中心軸Zrと直交している。このため、第1冷却媒体通路41A、41Bは、シャフト10が有する冷却媒体供給通路11に対して90度曲がった方向に分岐する。このような構造により、2本の第1冷却媒体通路41A、41Aは、シャフト10の径方向外側に向かって延在する。なお、第1冷却媒体通路41A、41Bの中心軸と回転中心軸Zrとのなす角度は90度以外であってもよい。
【0044】
シャフト10の表面10Sには、シャフト10の軸方向に延在する2本の溝15A、15Aが形成されている。すなわち、シャフト10は、軸方向に延在する溝15A、15Aを有している。
図6、
図7に示すように、第1冷却媒体通路41A、41Aは、それぞれ溝15A、15A内に開口する。なお、溝15A、15Aは、シャフト10の一端部10Cに向かって延在している。第1冷却媒体通路41Aは、
図3に示す冷却媒体通路40Aの一部である。また、シャフト10にローターコア20が取り付けられると、溝15Aとローターコア20とで囲まれる空間が第2冷却媒体通路42Aとなる。すなわち、第2冷却媒体通路42Aは、シャフト10の軸方向に延在する。第2冷却媒体通路42Aも、
図3に示す冷却媒体通路40Aの一部である。
【0045】
図8には、回転中心軸Zrを中心とした中心角が
図6とは90度異なる平面でシャフト10を切った場合の断面が現れている。
図8に示すように、冷却媒体供給通路11からは、径方向外側に延在する2本の第1冷却媒体通路41B、41Bが分岐している。シャフト10の表面10Sには、シャフト10の軸方向に延在する2本の溝15B、15Bが形成されている。すなわち、シャフト10は、軸方向に延在する溝15B、15Bを有している。
図8、
図9に示すように、第1冷却媒体通路41B、41Bは、それぞれ溝15B、15B内に開口する。なお、溝15B、15Bは、上述した溝15A、15Aとは異なり、シャフト10の他端部10Rに向かって延在している。第1冷却媒体通路41Bは、
図3に示す冷却媒体通路40Bの一部である。また、シャフト10にローターコア20が取り付けられると、溝15Bとローターコア20とで囲まれる空間が第2冷却媒体通路42Bとなる。すなわち、第2冷却媒体通路42Bは、シャフト10の軸方向に延在する。第2冷却媒体通路42Bも、
図3に示す冷却媒体通路40Bの一部である。
【0046】
冷却媒体入口11Iから冷却媒体供給通路11に流入した冷却媒体は、
図6に示す第1冷却媒体通路41A及び
図8に示す第1冷却媒体通路41Bに流入した後、90度向きを変えて
図6に示す第2冷却媒体通路42A及び
図8に示す第2冷却媒体通路42Bに流入する。すなわち、本実施形態において、冷却媒体供給通路11に流入した冷却媒体は、4本の通路に分岐する。シャフト10の表面10Sに設けた溝15A、15Bを用いて第2冷却媒体通路42A、42Bとすることにより、第2冷却媒体通路42A、42Bを作るためにローターコア20を加工する必要はない。このため、本実施形態において、第2冷却媒体通路42A、42Bを設けることによるローターコア20の磁気特性の低下はほとんど発生しないので、第2冷却媒体通路42A、42Bによる電動機1の性能低下はほとんど発生しない。また、ローターコア20の加工が不要なので、ローターコア20の製造コストも低減できる。さらに、溝15A、15Bは、シャフト10を把持する際の滑り止めの役割を果たしたり、シャフト10にローターコア20又はバランスプレート30A、30B等を取り付ける際の目印となったりするので、電動機1の製造効率を向上させる働きもある。
【0047】
<バランスプレート>
図10に示すように、バランスプレート30Aは、複数(本実施形態では4個)の冷却媒体出口31Aと、2つの連結部32A、32Aとを有する。冷却媒体出口31Aは、
図3に示すように、冷却媒体通路40Bがローターコア20の表面に開口した放出口40BHとつながっている。連結部32Aは、バランスプレート30Aの厚み方向(回転中心軸Zrと平行な方向)に向かって凹んだ凹部である。連結部32Aは、第3冷却媒体通路43Aであり、
図3に示す冷却媒体通路40Aの一部である。連結部32Aは、溝15A(第2冷却媒体通路42A)と、ローターコア20が有する貫通孔(第4冷却媒体通路)とを、ローターコア20の端部で接続する。本実施形態において、連結部32Aは、ローターコア20の周方向に向かって2箇所の貫通孔と接続しているが、少なくとも一箇所の貫通孔と接続していればよい。貫通孔(第4冷却媒体通路)については後述する。2つの連結部32A、32Aは、それぞれ回転中心軸Zrを中心とした点対称の位置にある。また、複数の冷却媒体出口31Aは、2つの溝15A、15Aと回転中心軸Zrとを通る直線に対して線対称となるように配置されている。シャフト10にはキー溝16が設けられ、バランスプレート30Aにもキー溝33Aが設けられる。キー溝16Aとキー溝33Aとの間にキー34Aが介在することにより、シャフト10に取り付けられたバランスプレート30Aが位置決めされるとともに回転が規制される。なお、シャフト10には、冷却媒体供給通路11が現れている。
【0048】
図11に示すように、バランスプレート30Bは、複数(本実施形態では4個)の冷却媒体出口31Bと、2つの連結部32B、32Bとを有する。冷却媒体出口31Bは、
図3に示すように、冷却媒体通路40Aがローターコア20の表面に開口した放出口40AHとつながっている。連結部32Bは、上述した連結部32Aと同様に、バランスプレート30Bの厚み方向(回転中心軸Zrと平行な方向)に向かって凹んだ凹部である。連結部32Bは、第3冷却媒体通路43Bであり、
図3に示す冷却媒体通路40Bの一部である。連結部32Bは、溝15B(第2冷却媒体通路42B)と、ローターコア20が有する貫通孔24(第4冷却媒体通路44B)とを接続する。本実施形態において、連結部32Bも、ローターコア20の周方向に向かって2箇所の貫通孔と接続しているが、少なくとも一箇所の貫通孔と接続していればよい。貫通孔24は、複数の鋼板21の積層方向(回転中心軸Zrと平行な方向)に向かってローターコア20を貫通している。このため、貫通孔24は、バランスプレート30A、30Bとつながっている。
【0049】
2つの連結部32B、32Bは、それぞれ回転中心軸Zrを中心とした点対称の位置にある。複数の冷却媒体出口31Bは、2つの溝15B、15Bと回転中心軸Zrとを通る直線に対して線対称となるように配置されている。
図11において、それぞれの冷却媒体出口31Bには、ローターコア20が有する貫通孔24(第4冷却媒体通路44A)が現れている。
【0050】
シャフト10にはキー溝16が設けられ、バランスプレート30Bにもキー溝33Bが設けられる。なお、シャフト10には、冷却媒体供給通路11が現れている。キー溝16Bとキー溝33Bとの間にキー34Bが介在することにより、シャフト10に取り付けられたバランスプレート30Bが位置決めされるとともに回転が規制される。シャフト10に設けられたキー溝16は、バランスプレート30A、30Bいずれの位置でも共通である。キー溝16を基準とすると、バランスプレート30Bの連結部32B、32Bは、回転中心軸Zrを中心として、バランスプレート30Aの連結部32A、32Aを90度回転させた位置に配置される。また、バランスプレート30Bの複数の冷却媒体出口31Bは、回転中心軸Zrを中心として、バランスプレート30Aの複数の冷却媒体出口31Aを90度回転させた位置に配置される。このような構造により、バランスプレート30A、30Bをシャフト10に取り付けた状態で、バランスプレート30Aの連結部32Aをバランスプレート30Bに投影すると、バランスプレート30Bの冷却媒体出口31Bと連結部32Aとが重なる。同様に、前記状態で、バランスプレート30Bの連結部32Bをバランスプレート30Aに投影すると、バランスプレート30Aの冷却媒体出口31Aと連結部32Bとが重なる。
【0051】
バランスプレート30Bの連結部32Bにはローターコア20が有する貫通孔24(第4冷却媒体通路44A)が現れており、複数の冷却媒体出口31Bには、それぞれ貫通孔24(第4冷却媒体通路44B)が現れている。貫通孔24は、上述したように、複数の鋼板21の積層方向に向かってローターコア20を貫通し、バランスプレート30A、30Bとつながっている。本実施形態において、ローターコア20は複数(この例では8個)の貫通孔を有するとともに、複数の貫通孔24は、回転中心軸Zrを中心とした同心円上に設けられる。
【0052】
バランスプレート30Bの冷却媒体出口31Bとバランスプレート30Aの連結部32Aとが重なることから、両者は第4冷却媒体通路44Bとなる貫通孔24でつながっている。また、バランスプレート30Bの連結部32Bとバランスプレート30Aの冷却媒体出口31Bとが重なることから、両者は第4冷却媒体通路44Aとなる貫通孔24でつながっている。後述するように、第4冷却媒体通路44Aは、
図3に示す冷却媒体通路40Aの一部であり、第4冷却媒体通路44Bは、
図3に示す冷却媒体通路40Bの一部である。
【0053】
<ローターコア>
図12に示すように、ローターコア20を構成するそれぞれの鋼板21には突起25が設けられる。突起25は、シャフト10に設けられたキー溝16に嵌り込んで、鋼板21を位置決めするとともに回転を規制する。シャフト10のキー溝16は、シャフト10の軸方向に向かって共通であるので、キー溝16を基準として複数の鋼板21とバランスプレート30A、30Bとの位置関係が規定される。
【0054】
図12、
図13に示すように、ローターコア20は、貫通孔24と、磁石保持孔22とを有する。貫通孔24は、シャフト10の軸方向(鋼板を積層させたものでは鋼板の積層方向)に向かって貫通してローターコア20の両方の端部に開口し、かつ磁石保持孔22に開口する。磁石保持孔22は、シャフト10の軸方向(鋼板を積層させたものでは鋼板の積層方向)に向かって貫通して磁石(永久磁石)23を保持する。なお、貫通孔24は、磁石保持孔22に開口していなくてもよい。また、本実施形態において、磁石保持孔22は、ローターコア20の周方向に向かって複数個(この例では16個)形成されているが、磁石保持孔22の数はこれに限定されるものではない。
【0055】
本実施形態において、貫通孔24は、ローターコア20の径方向内側において2つの磁石保持孔22が隣接する部分に設けられ、それぞれに開口する。このため、本実施形態において、貫通孔24は、隣接する2つの磁石保持孔22を連結する。本実施形態において、貫通孔24は、ローターコア20の周方向に向かって複数の位置(本実施形態では8つの位置)に設けられている。ローターコア20が有する貫通孔24は、ローターコア20の冷却を目的としている。本実施形態において、貫通孔24は複数(8個)であるが、このため、貫通孔24は、少なくとも1つあればよく、その数は限定されない。また、貫通孔24は、本実施形態のものに限定されず、例えば、2つの貫通孔24が、隣接する2つの磁石保持孔22それぞれ別個に開口していてもよい。
【0056】
図13に示すように、貫通孔24は、冷却媒体出口31A、31B、連結部32A、32B(第3冷却媒体通路43A、43B)と重なる。上述したように、貫通孔24は、冷却媒体通路40A、40Bの一部である第4冷却媒体通路44A、44Bである。冷却媒体は、連結部32Aから冷却媒体出口31B又は連結部32Bから冷却媒体出口31Aに向かって貫通孔24を通過する。貫通孔24を冷却媒体が通過する過程で、ローターコア20が冷却される。また、貫通孔24は、磁石保持孔22に開口しているので、貫通孔24に磁石23の一部が露出する。このため、貫通孔24を冷却媒体が流れることにより、磁石23も冷却される。なお、貫通孔24は、必ずしも磁石保持孔22に開口している必要はない。
【0057】
<冷却構造及び冷却媒体通路>
図14、
図15は、本実施形態に係る冷却構造及び冷却媒体通路を示す図である。
図16は、冷却媒体供給通路及び冷却媒体通路を示す斜視図である。
図17は、冷却媒体供給通路及び冷却媒体通路の配置を示す模式図である。上述したように、A−A断面に現れる冷却媒体通路40Aは、第1冷却媒体通路41Aと、第2冷却媒体通路42A(溝15A)と、第3冷却媒体通路43A(連結部32A)と、第4冷却媒体通路44A(貫通孔24)と、放出口40AHとを含む。また、B−B断面に現れる冷却媒体通路40Bは、第1冷却媒体通路41Bと、第2冷却媒体通路42B(溝15A)と、第3冷却媒体通路43B(連結部32B)と、第4冷却媒体通路44B(貫通孔24)と、放出口40BHとを含む。冷却構造2は、冷却媒体供給通路11と、複数の冷却媒体通路40A、40Bとを含む。
【0058】
冷却媒体供給通路11を流れる冷却媒体は、それぞれの冷却媒体通路40A、40Bの第1冷却媒体通路41A、41Bで分岐して、シャフト10の径方向外側に流れた後、90度流れの向きを変えて第2冷却媒体通路42A、42Bへ流入して、シャフト10の軸方向に向かって流れる。冷却媒体は、第2冷却媒体通路42A、42Bを通過する過程で、ローターコア20を内周側から冷却する。このため、ローターコア20を直接冷却するとともに、ローターが有する磁石23を間接的に冷却することができるので、磁石23の昇温を抑えて磁気特性の低下を抑制できる。
【0059】
第2冷却媒体通路42A、42Bを通過した冷却媒体は、ローターコア20の端部20TA、20TB側から一旦流出した後、ローターコア20の端部側に配置される第3冷却媒体通路43A、43Bで流れの向きを180度変えて第4冷却媒体通路44A、44Bへ流入する。その後、冷却媒体は、第4冷却媒体通路44A、44Bを流れる過程でローターコア20及びローターコア20が有する磁石23を冷却しながら、放出口40AH、40BHに向かって流れる。
【0060】
冷却媒体通路40Aの放出孔40AHはローターコア20の端部20TBに開口し、冷却媒体通路40Bの放出孔40BHはローターコア20の端部20TAに開口する。このように、放出口40AH、40BHは、ローターコア20の表面に開口している。放出口40AHから放出された冷却媒体はバランスプレート30Bの冷却媒体出口31Bに流出し、放出口40BHから放出された冷却媒体はバランスプレート30Aの冷却媒体出口31Aに流出する。シャフト10とともにローターコア20が回転している場合には、ローターコア20の遠心力により、冷却媒体出口31A、31Bから
図3に示すコイルエンド6CEに向かって冷却媒体が飛ばされてコイルエンド6CEに衝突し、これを冷却する。
【0061】
このように、冷却媒体通路40A、40Bそれぞれの放出口40AH、40BHは、ローターコア20の両方の端部20TB、20TAにそれぞれ開口する。このような構造により、シャフト10の軸方向における両方のコイルエンド6CEに冷却媒体を供給して冷却することができる。また、本実施形態において、それぞれの冷却媒体通路40A、40Bは、冷却媒体入口11Iから放出口40AH、40BHまでの距離(通路距離)Lが同一である。本実施形態において、同一とは、完全な同一のみならず、公差又は製造誤差の分は異なることも含む。
【0062】
通路距離Lは、
図17に示すように、冷却媒体入口11Iから第1冷却媒体通路41A、41Bの入口までの距離(供給通路距離)Liに、第1冷却媒体通路41A、41Bの長さL1と、第2冷却媒体通路42A、42Bの長さL2と、第3冷却媒体通路43A、43Bの長さL3と、第4冷却媒体通路44A、44Bの長さL4との総和(冷却媒体通路40A、40Bの長さ)を加算した大きさになる。本実施形態において、通路距離は、冷却媒体供給通路11、第1冷却媒体通路41A、41B等の中心軸(各断面の図心をつなげて得られる軸)に沿って測る。
【0063】
図16、
図17に示すように、本実施形態において、第3冷却媒体通路43Aは、第2冷却媒体通路42Aを2つの第4冷却媒体通路44A1、44A2に分岐させる。また、第3冷却媒体通路43Bは、第2冷却媒体通路42Bを2つの第4冷却媒体通路44B1、44B2に分岐させる。このため、第3冷却媒体通路43Aの長さL3は、第3冷却媒体通路43Aの入口I3から一方の第4冷却媒体通路44A1又は44A2の入口I4までの距離とする(第3冷却媒体通路43Bについても同様)。なお、第3冷却媒体通路43Aの入口I3から一方の第4冷却媒体通路44A1入口I4までの距離と、第3冷却媒体通路43Aの入口I3から他方の第4冷却媒体通路44A2入口I4までの距離とは等しい。
【0064】
第3冷却媒体通路43Aの長さL3として、第3冷却媒体通路43Aの入口I3から一方の第4冷却媒体通路44A1までの長さL3を用いる場合、第4冷却媒体通路44Aの長さL4は、第4冷却媒体通路44A1の長さを用いる。また、第3冷却媒体通路43Aの長さL3として、第3冷却媒体通路43Aの入口I3から他方の第4冷却媒体通路44A2までの長さL3を用いる場合、第4冷却媒体通路44Aの長さL4は、第4冷却媒体通路44A2の長さを用いる。
【0065】
本実施形態において、複数の冷却媒体通路40A、40Bが冷却媒体供給通路11から分岐する位置は、それぞれシャフト10の軸方向において同じ位置である。このため、ローターコア20の異なる端部にそれぞれ冷却媒体を放出する冷却媒体通路40A、40Bにおいて、それぞれの供給通路距離Liは等しくなる。
【0066】
本実施形態において、断面が円形形状のシャフト10内の冷却媒体供給通路11は、断面が円形であり、中心軸がシャフト10の回転中心軸Zrと同一である(前記断面は、回転中心軸Zrと直交する平面で切った場合の断面)。このため、冷却媒体供給通路11が形成されている部分においては、シャフト10の肉厚は同一であり、冷却媒体通路40A、40Bが有するそれぞれの第1冷却媒体通路41A、41Bの長さL1は同一になる。
【0067】
それぞれの第1冷却媒体通路41A、41Bがシャフト10の表面に開口する位置は、それぞれシャフト10の軸方向におけるローターコア20の中央部である。このため、それぞれの第1冷却媒体通路41A、41Bに接続する第2冷却媒体通路42A、42Bの長さL2は同一になる。
【0068】
2つの連結部32A、32Bの寸法、形状は同一である。また、第4冷却媒体通路44A、44B、すなわち複数の貫通孔24は、回転中心軸Zrを中心とした同心円上に設けられる。このため、それぞれの第3冷却媒体通路43A、43Bの長さL3は同一である。それぞれの第4冷却媒体通路44A、44Bは、いずれもローターコア20を回転中心軸Zrと平行に貫通しているので、第4冷却媒体通路44A、44Bの長さL4は同一である。
【0069】
このため、上述したように、ローターコア20の異なる端部にそれぞれ冷却媒体を放出する冷却媒体通路40A、40Bにおいて、それぞれの通路距離L(=Li+L1+L2+L3+L4)は等しくなる。
【0070】
このようにすることで、ローターコア20の異なる端部にそれぞれ冷却媒体を放出する冷却媒体通路40A、40Bは、冷却媒体入口11Iから放出口40AH1、40AH2、40BH1、40BH2までの圧力損失がほぼ等しくなる。このため、冷却構造2は、それぞれの冷却媒体通路40A、40Bを流れる冷却媒体の流量をほぼ等しくすることができ、また、それぞれの放出口40AH1、40AH2、40BH1、40BH2から放出される冷却媒体の流量のばらつきを抑制することができる。その結果、冷却媒体通路40A、40Bを流れる冷却媒体によるローターコア20の冷却ばらつき及び両方のコイルエンド6CEの冷却ばらつきを低減することができる。このため、冷却構造2は、ローターコア20及びコイルエンド6CEの局所的な昇温等を抑制できるので、コイル6C、磁石23及びローターコア20の昇温に起因する電動機1の性能低下を抑制することができる。
【0071】
冷却構造2において、複数の放出口40AH1、40AH2、40BH1、40BH2から放出される冷却媒体の流量にばらつきがある場合、最も流量の小さい放出口が、要求される冷却性能を確保できるようにする必要がある。すると、流量の大きい放出口は、必要な冷却性能に対して冷却媒体の流量が過剰になってしまう。このことは、余分な冷却媒体を冷却媒体通路に供給することを招くので、余分の冷却媒体の吐出に要するエネルギーが増加してしまう。また、流量の大きい放出口からは過剰な量の冷却媒体が供給されるので、筐体3の内部には多くの冷却媒体が供給されることになる。その結果、ローターコア20は、回転中に筐体3内に存在する大量の冷却媒体を撹拌することになり、冷却媒体の撹拌によるエネルギーの損失が増大する。
【0072】
本実施形態の冷却構造2は、それぞれの冷却媒体通路40A、40Bの通路距離Lを同一にすることにより、それぞれの放出口40AH1、40AH2、40BH1、40BH2から放出される冷却媒体の流量のばらつきを抑制できる。このため、必要な冷却性能に対して冷却媒体の流量が過剰になることを抑制できるので、冷却媒体の供給に要するエネルギー消費を抑制することもできる。また、冷却構造2は、筐体3内に存在する冷却媒体の量を適正にすることができるので、ローターコア20が大量の冷却媒体を撹拌することによるエネルギーの損失も抑制できる。
【0073】
なお、本実施形態において、冷却媒体通路40Aは、2つの第4冷却媒体通路44A1、44A2を有しており、冷却媒体通路40Bは、2つの第4冷却媒体通路44B1、44B2を有している。これに対応して、冷却媒体通路40Aは2つの放出口40AH1、40AH2を放出口40AHとして有し、冷却媒体通路40Bは2つの放出口40BH1、40BH2を放出口40BHとして有する。
【0074】
このような構造の場合、冷却媒体通路40Aは、第4冷却媒体通路44A1を有する通路と、第4冷却媒体通路44A2を有する通路との2つの通路を有すると見ることができる。ここで、第4冷却媒体通路44A1の長さをL4a、第4冷却媒体通路44A2をL4bとする。第4冷却媒体通路44A1、44A2は、いずれもローターコア20を回転中心軸Zrと平行に貫通しているので、第4冷却媒体通路44A1、44A2の長さはそれぞれ同一である(L4a=L4b)。すると、冷却媒体通路40Aは、第4冷却媒体通路44A1を有する通路の通路距離L1(=Li+L1+L2+L3+L4a)と、第4冷却媒体通路44A2を有する通路の通路距離L2(=Li+L1+L2+L3+L4b)とが同一となる。このため、冷却媒体通路40Aは、第4冷却媒体通路44A1を有する通路と第4冷却媒体通路44A2を有する通路との圧力損失をほぼ等しくすることができるので、第4冷却媒体通路44A1、44A2から放出される冷却媒体の流量ばらつきを抑制することができる。冷却構造2は、2つの冷却媒体通路40Aを有するのが、2つの冷却媒体通路40Aにおける4つの通路で、それぞれの通路距離Lも同一となる。その結果、2つの冷却媒体通路40Aにおける前記4つの通路の圧力損失をほぼ等しくすることができるので、前記4つの通路から放出される冷却媒体の流量ばらつきを抑制することができる。
【0075】
上述した関係は、冷却構造2が有するそれぞれの冷却媒体通路40Bについても同様になる。このため、冷却構造2全体においては、2つの冷却媒体通路40A及び2つの冷却媒体通路40Bにおける8つの通路の通路距離Lが同一となる。その結果、前記8つの通路の圧力損失がほぼ等しくなるので、前記8つの通路がローターコア20の両方の端部に開口した開口部から放出される冷却媒体の流量のばらつきを抑制できる。
【0076】
それぞれの冷却媒体通路40A、40Bは、冷却媒体供給通路11から分岐した後、シャフト10の軸方向に対しては冷却媒体を分岐させないで流す。本実施形態において、冷却媒体通路40A、40Bは、シャフト10の軸方向と平行な通路として、第2冷却媒体通路42A、42Bと第4冷却媒体通路44A、44Bとを有する。冷却媒体通路40A、40Bは、シャフト10(及びローターコア20)の径方向外側に向かう第1冷却媒体通路41A、41Bで冷却媒体供給通路11から分岐した後、第2冷却媒体通路42A、42Bに接続する。第2冷却媒体通路42A、42Bは、第3冷却媒体通路43A、43Bと接続している。また、第4冷却媒体通路44A、44Bは、第2冷却媒体通路42A、42Bと同じ側で第3冷却媒体通路43A、43Bと接続する。このため、冷却媒体通路40A、40Bは、第3冷却媒体通路43A、43Bで180度折り返される。
【0077】
第2冷却媒体通路42A、42Bは、第1冷却媒体通路41A、41Bの出口と第3冷却媒体通路43A、43Bの入口とを接続しており、この間では分岐していない。同様に、第4冷却媒体通路44A、44Bは、第3冷却媒体通路43A、43Bの出口と放出口40AH、40BHとを接続しており、この間では分岐していない。このような構造に対し、例えば、シャフト10の軸方向と平行な通路である第2冷却媒体通路42A、42Bが軸方向に対して分岐していた場合、冷却媒体は、シャフト10の軸方向と平行な方向の成分の力が作用する方向に分岐している方に多く流れる。その結果、前記力が作用する方向のローターコア20の端部から冷却媒体がより多く放出されるので、軸方向におけるコイルエンド6CEの冷却ばらつきが発生する。
【0078】
冷却媒体通路40A、40Bは、シャフト10の軸方向に対しては冷却媒体を分岐させないで流す。このように、冷却媒体通路40A、40Bは、軸方向に対しては分岐した通路を有していないので、内部を通過する冷却媒体が、シャフト10の軸方向と平行な方向の成分の力を受けた場合でも、分岐した通路間における流量のアンバランスは発生しない。その結果、冷却構造2は、前記力に起因して発生する、冷却媒体通路40A、40Bを通過する冷却媒体の流量変化を抑制できるので、ローターコア20の両方の端部20TA、20TBから放出される冷却媒体の流量のアンバランスが抑制されて、軸方向におけるコイルエンド6CEの冷却ばらつき及び軸方向におけるローターコア20の冷却ばらつきを低減できる。
【0079】
特に、本実施形態において、冷却媒体通路40A、40Bは、シャフト10の軸方向と平行に延在する第2冷却媒体通路42A、42Bを通過する冷却媒体の向きと、同じくシャフト10の軸方向と平行に延在する第4冷却媒体通路44A、44Bを通過する冷却媒体の向きとは正反対になる。このような構造により、シャフト10の軸方向と平行な方向の成分の力が第2冷却媒体通路42A、42Bを通過する冷却媒体を加速する場合には、前記力は第4冷却媒体通路44A、44Bを通過する冷却媒体を減速する。このため、冷却構造2は、シャフト10の軸方向と平行な方向の成分の力を受けた場合でも、前記力は第2冷却媒体通路42A、42Bと第4冷却媒体通路44A、44Bとの間でほぼ打ち消すことができる。その結果、冷却構造2は、シャフト10の軸方向と平行な方向の成分の力を受けた場合でも、複数の冷却媒体通路40A、40B間における冷却媒体の流量のばらつきを抑制して、軸方向におけるコイルエンド6CEの冷却ばらつき及び軸方向におけるローターコア20の冷却ばらつきをより確実に低減できる。
【0080】
図1に示すホイールローダ100のような建設車両は、傾斜地における作業がある。傾斜地においては、冷却媒体通路40A、40B内を流れる冷却媒体が、シャフト10の軸方向と平行な方向の成分の力を受けやすい。また、ホイールローダは、土砂へ急速で突入し、バケット103に土砂をすくい取った後、急速で後退し、前進方向に急加速しながら旋回して、土砂の積載対象であるダンプ等の位置で急停車して土砂を前記ダンプに積載する。このように、ホイールローダ100は、急激な前後方向及び横方向(前後方向と直交する方向)における加速度を繰り返して受ける作業をすることがある。この場合も、冷却媒体通路40A、40B内を流れる冷却媒体は、シャフト10の軸方向と平行な方向の成分の力を受けやすい。本実施形態の冷却構造2及び電動機1は、上述したように、シャフト10の軸方向と平行な方向の成分の力を受けた場合でも、軸方向におけるコイルエンド6CE及びローターコア20の冷却ばらつきを抑制できるので、ホイールローダ100のような、急激な前後方向及び横方向における加速度を繰り返して受ける用途に好適である。
【0081】
なお、本実施形態において、冷却媒体通路40Aの第3冷却媒体通路43Aは、第2冷却媒体通路42Aから流入した冷却媒体を、2つの第4冷却媒体通路44A1、44A2に分岐させている(第3冷却媒体通路43Bも同様)。これは、シャフト10及びローターコア20の周方向に向かって2つの第4冷却媒体通路44A1、44A2に冷却媒体を分岐させる構造なので、シャフト10の軸方向に対しては冷却媒体を分岐させないで流すという条件を満たしている。
【0082】
複数の冷却媒体通路40A、40Bが冷却媒体供給通路11から分岐する位置は、それぞれシャフト10の軸方向におけるローターコア20の中央部であることが好ましい。
図14、
図15に示す例では、ローターコア20の軸方向における長さをLrとしたとき、ローターコア20の端部20TA及び端部20TBから第1冷却媒体通路41A、41Bの位置、すなわち分岐位置までの距離は、それぞれLr/2となる。このようにすれば、シャフト10の軸方向両側にバランスよく冷却媒体を配分しやすくなるので、軸方向におけるコイルエンド6CE及びローターコア20の冷却ばらつきを抑制しやすくなる。また、複数の冷却媒体通路40A、40B間において、通路距離Lを同一にしやすくなる。
【0083】
冷却媒体供給通路11からは、偶数個の冷却媒体通路40A、40Bが分岐することが好ましい。本実施形態では、それぞれ2本の冷却媒体通路40A、40B、すなわち4本の冷却媒体通路40A、40Bが冷却媒体供給通路11から分岐する。このようにすれば、ローターコア20の両方の端部20TA、20TBに、それぞれ同じ数の放出口を設けることができるので、ローターコア20の両方の端部20TA、20TBから、ほぼ同流量で冷却媒体を放出させることができる。その結果、軸方向におけるコイルエンド6CE及びローターコア20の冷却ばらつきを抑制しやすくなる。
【0084】
複数の冷却媒体通路40A、40Bは、通路距離Lを同一にすることに加え、冷却媒体の流れ方向と直交する平面で冷却媒体通路40A、40Bを切った場合の寸法(通路断面寸法)及び形状(通路断面形状)がそれぞれ同一であることがより好ましい。冷却媒体通路40A、40Bの圧力損失は、通路距離Lが支配的であるが、通路断面寸法及び通路断面形状を複数の冷却媒体通路40A、40B間で同一にすることにより、複数の冷却媒体通路40A、40B間の圧力損失をより同一にすることができる。その結果、複数の冷却媒体通路40A、40B間における冷却媒体の流量のばらつきをより抑制して、軸方向におけるコイルエンド6CE及びローターコア20の冷却ばらつきを低減できる。なお、通路断面寸法及び通路断面形状を同一にする場合、公差又は製造誤差の分は異なっていてもよい。
【0085】
上述したように、冷却構造2は、複数の冷却媒体通路40A、40Bの圧力損失が、シャフト10及びローターコア20の回転に起因する遠心力を考慮した上で、それぞれ同一であればよい。このため、複数の冷却媒体通路40A、40Bにおいて、前記遠心力を考慮した圧力損失が同一であれば、通路距離Lと通路断面寸法と通路断面形状とが異なっていてもよい。しかし、通路距離Lと通路断面寸法と通路断面形状とが異なる場合、特定の条件の下では複数の冷却媒体通路40A、40B間における圧力損失を同一にすることができても、異なる条件で同一にすることは困難である。このため、複数の冷却媒体通路40A、40Bは、少なくとも通路距離Lを同一にし、好ましくは通路断面寸法及び通路断面形状も同一にする。このようにすれば、簡単に、かつ異なる条件において、複数の冷却媒体通路40A、40B間における圧力損失を同一にすることができるので、冷却構造2の安定性及び信頼性が向上する。特に、電動機1を建設車両に用いる場合には、運転条件が大きく変化するので、これに対応するため、通路距離L等を同一にすることが好ましい。
【0086】
複数の冷却媒体通路40A、40Bは、遠心力を考慮した圧力損失を同一にするという観点から、3次元形状も同一にするとより好ましい。すなわち、第1冷却媒体通路41A、41B、第2冷却媒体通路42A、42B、第3冷却媒体通路43A、43B及び第4冷却媒体通路44A、44Bそれぞれの寸法及び形状を同一にすることが好ましい。形状の同一は、上述した通路断面形状を同一とすることの他、通路同士のなす角度、通路同士を接続する部分の曲がり具合等を同一とすることも含まれる。なお、同一には、公差又は製造誤差分の違いは含まれる。このようにすることで、複数の冷却媒体通路40A、40B間において、遠心力を考慮した圧力損失をより同一に近づけることができる。その結果、複数の冷却媒体通路40A、40B間における冷却媒体の流量のばらつきをさらに抑制して、軸方向におけるコイルエンド6CE及びローターコア20の冷却ばらつきをさらに低減できる。
【0087】
<冷却媒体通路の変形例>
図18、
図19は、本実施形態に係る冷却構造が有する冷却媒体通路の変形例を示す模式図である。
図18の冷却構造2aは、冷却媒体供給通路11からシャフト10の径方向外側に向かって分岐する第1冷却媒体通路41Aa、41Baと、シャフト10の軸方向に向かって延在する第2冷却媒体通路42Aa、42Baと、
図15、
図16に示すローターコア20の両方の端部20TA、20TBに開口する放出口40AHa、40BHbとを有する。この冷却構造2aは、冷却媒体通路40A、40Bがローターコア20の両方の端部20TA、20TB側で折り返さない構造である。
【0088】
この冷却構造2aにおいて、冷却媒体通路40Aa、40Baの通路距離は、冷却媒体入口11Iから第1冷却媒体通路41Aa、41Baの入口までの距離(供給通路距離)と、第1冷却媒体通路41Aa、41Baの長さと、第2冷却媒体通路42Aa、42Baの長さとの総和である。冷却構造2aも、上述した冷却構造2と同様に、ローターコア20の両方の端部にそれぞれ開口する冷却媒体通路40Aa、40Baの通路距離(冷却媒体入口11Iからそれぞれの放出口40AHa、40BHaまでの距離)は同一である。その結果、冷却構造2aも、ローターコア20及びコイルエンド6CEの冷却ばらつきを抑制する効果が得られる。
【0089】
図19の冷却構造2bは、冷却媒体供給通路11からシャフト10の径方向外側に向かって分岐する第1冷却媒体通路41Ab、41Bbと、シャフト10の軸方向に向かって延在する第2冷却媒体通路42Ab、42Bbと、シャフト10の径方向外側に向かって延在する第3冷却媒体通路43Ab、43Bbと、シャフト10の軸方向に向かって延在する第4冷却媒体通路44Ab、44Bbと、
図15、
図16に示すローターコア20の両方の端部20TA、20TBに開口する放出口40AHb、40BHbとを有する。この冷却構造2bは、
図16、
図17に示す冷却構造2において、第3冷却媒体通路43A等と接続される第4冷却媒体通路44A1、44A2をいずれか1つにしたものである。
【0090】
この冷却構造2bにおいて、冷却媒体通路40Ab、40Bbの通路距離は、冷却媒体入口11Iから第1冷却媒体通路41Ab、41Bbの入口までの距離(供給通路距離)と、第1冷却媒体通路41Ab、41Bbの長さと、第2冷却媒体通路42Ab、42Bbの長さと、第3冷却媒体通路43Ab、43Bbの長さと、第4冷却媒体通路44Ab、44Bbの長さとの総和である。冷却構造2bも、上述した冷却構造2、2aと同様に、ローターコア20の両方の端部にそれぞれ開口する冷却媒体通路40Ab、40Bbの通路距離(冷却媒体入口11Iからそれぞれの放出口40AHb、40BHbまでの距離)は同一である。その結果、冷却構造2aも、ローターコア20及びコイルエンド6CEの冷却ばらつきを抑制する効果が得られる。
【0091】
<冷却構造の第1変形例>
図20は、本実施形態の第1変形例に係る電動機の冷却構造及び前記電動機の冷却構造を備えた電動機を示す断面図である。本変形例の冷却構造2c及び電動機1cは、上述した冷却構造2及び電動機1と同様であるが、冷却媒体供給通路11から分岐する冷却媒体通路40Ac、40Bcの構造が異なる。他の構造は、上述した冷却構造2及び電動機1と同様なので説明を省略する。
【0092】
冷却媒体通路40Ac、40Bcは、冷却媒体供給通路11から分岐して、第3冷却媒体通路43A、43B(連結部32A、32B)と接続する分岐通路46A、46Bを有している。分岐通路46Aは、シャフト10の径方向外側かつ一端部10Cに向かって斜めに延在し、分岐通路46Bは、シャフト10の径方向外側かつ他端部10Rに向かって斜めに延在する。このような構造であっても、ローターコア20及びコイルエンド6CEの冷却ばらつきを抑制する効果が得られる。
【0093】
<冷却構造の第2変形例>
図21は、本実施形態の第2変形例に係る電動機の冷却構造及び前記電動機の冷却構造を備えた電動機を示す断面図である。本変形例の冷却構造2d及び電動機1dは、上述した冷却構造2及び電動機1と同様であるが、冷却媒体通路40Ad、40Bdが有する第2冷却媒体通路42Ad、42Bdをローターコア20dに設けた点が異なる。他の構造は、上述した冷却構造2及び電動機1と同様なので説明を省略する。
【0094】
ローターコア20dの内周部は、第1冷却媒体通路41A、41Bがシャフト10に開口する部分から、第3冷却媒体通路43A、43B(連結部32A、32B)の入口まで、径方向外側に向かって一部が除去されて凹部26A、26Bを形成している。この部分が、第2冷却媒体通路42Ad、42Bdになる。なお、第2冷却媒体通路42Ad、42Bd等をローターコア20dの内部に形成してもよい。この冷却構造2dは、第2冷却媒体通路42Ad、42Bdを形成するために、シャフト10の表面に溝を設ける必要はない。このような構造であっても、ローターコア20及びコイルエンド6CEの冷却ばらつきを抑制する効果が得られる。
【0095】
以上、本実施形態及びその変形例は、電動機を冷却媒体で冷却するにあたって、複数の冷却媒体通路の通路距離Lを同一とし、かつ電動機のシャフトと平行な方向の冷却媒体通路は冷却媒体を分岐させないようにしてある。このようにすることで、それぞれの冷却媒体通路の圧力損失をほぼ一定にすることができるので、それぞれの冷却通路を通過する冷却媒体の流量をほぼ一定にすることができる。その結果、本実施形態及びその変形例は、ローターコア及びコイル(特にコイルエンド)の冷却ばらつきを抑制して、電動機の性能低下を抑制することができる。また、本実施形態及びその変形例は、電動機を安定して運転させることができる。さらに、電動機のシャフトと平行な方向の冷却媒体通路は冷却媒体を分岐させないので、シャフトと平行な方向の力を受けた場合でも、前記力に起因する冷却媒体の流量ばらつきを低減することができる。その結果、シャフトと平行な方向の力を受ける機会が多い電動機であっても、それぞれの冷却通路を通過する冷却媒体の流量ばらつきを低減して、ローターコア及びコイル(特にコイルエンド)の冷却ばらつきを抑制できる。