特許第5738010号(P5738010)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5738010二次電池用非水電解液及び非水電解液二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738010
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】二次電池用非水電解液及び非水電解液二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20150528BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20150528BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20150528BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20150528BHJP
【FI】
   H01M10/0567
   H01M10/0569
   H01M10/052
   H01M10/0568
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-48148(P2011-48148)
(22)【出願日】2011年3月4日
(65)【公開番号】特開2012-186009(P2012-186009A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2014年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】大月 正珠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘一
(72)【発明者】
【氏名】辻岡 章一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 愛一郎
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−052736(JP,A)
【文献】 特開2009−129541(JP,A)
【文献】 特開2010−015719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
(NPR2n ・・・ (1)
[式中、Rはそれぞれ独立してフッ素又はフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基であって、全Rのうち1つフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基であり、nは3〜14である]で表されるホスファゼン化合物からなる二次電池の非水電解液用添加剤と、支持塩とを含有する二次電池用非水電解液であって、
上記一般式(1)で表わされるホスファゼン化合物の含有量が1体積%以上且つ15体積%未満の範囲であることを特徴とする二次電池用非水電解液
【請求項2】
前記フッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基が、ヘキサフルオロイソプロポキシ基、パーフルオロ−t−ブトキシ基、ヘプタフルオロイソブトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用非水電解液
【請求項3】
更に非プロトン性有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項4】
前記非プロトン性有機溶媒が環状又は鎖状のエステル化合物を含むことを特徴とする請求項3に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項5】
前記支持塩としてLiPF6を含み、前記非プロトン性有機溶媒としてエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを含ことを特徴とする請求項4に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項6】
前記支持塩としてLiBF4を含み、前記非プロトン性有機溶媒としてプロピレンカーボネートを含ことを特徴とする請求項4に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池用非水電解液と、正極と、負極とを具えることを特徴とする非水電解液二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用非水電解液及びそれを具えた非水電解液二次電池に関し、特には、安全性及び電池特性に優れた非水電解液二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パソコン・VTR等のAV・情報機器のメモリーバックアップやこれらの駆動電源用の二次電池として、ニッケル−カドミウム電池が主に使用されてきた。また、該ニッケル−カドミウム電池の代替として、電圧・エネルギー密度が高く、自己放電性に優れる非水電解液二次電池が特に注目を集め、種々の開発が行われた結果、一部は既に商品化されている。そして、現在、ノート型パソコンや携帯電話等は、その半数以上がこの非水電解液二次電池によって駆動しており、また、近い将来、電気自動車やハイブリッド車に代表される環境車両への活用が大きく期待されている。
【0003】
上記非水電解液二次電池においては、負極の材料として、カーボンが多用され、その電解液には、該負極の表面にリチウムが生成した場合の危険性の低減及び高駆動電圧化を目的として、各種有機溶媒が使用されている。特に、カメラ用の非水電解液二次電池においては、負極の材料として、アルカリ金属(特に、リチウム金属やリチウム合金)等が用いられており、電解液としては、通常エステル系有機溶媒等の非プロトン性有機溶媒が使用されている。
【0004】
上述のように、非水電解液二次電池は、高性能ではあるものの、安全性能は十分とはいえない。まず、非水電解液二次電池の負極の材料として用いられるアルカリ金属(特にリチウム金属やリチウム合金等)は、水分に対して非常に高活性である。そのため、例えば、不完全な電池の封口により水分が侵入した際等には、該負極の材料と水とが反応して水素が発生し、発火等する危険性がある。また、リチウム金属は低融点(約170℃)であるため、短絡時等に大電流が急激に流れ、電池が異常に発熱すると、電池が溶融する等の非常に危険な状況になりうる。更に、その電池の発熱により、電解液が気化・分解してガスが発生すると、発生したガスによって電池の破裂・発火が起こる危険性がある。また、電極合成時に微小な金属屑が混入しても短絡し、異常発熱や発火の原因となることも指摘されている。
【0005】
これらの問題を解決する目的で、例えば、筒形電池において、電池の短絡時・過充電時に温度が上がり電池内部の圧力が上昇した際に、安全弁が作動すると同時に電極端子を破断させることにより、該筒型電池に所定量以上の過大電流が流れることを抑止する機構を電池に設けた技術が提案されている(非特許文献1参照)。しかしながら、必ずしも該機構が正常に作動するわけではなく、正常に作動しない場合には、過大電流による発熱が大きくなり、依然として発火等を引き起こす危険性がある。そこで、安全弁等による安全機構によらず、電解液の気化・分解や発火等の危険性を根本的に低減した非水電解液二次電池の開発が要求されている。
【0006】
これに対して、非水電解液にホスファゼン化合物を添加して、非水電解液に不燃性、難燃性又は自己消火性を付与して、短絡等の非常時に電池が発火・引火する危険性を大幅に低減した非水電解液二次電池が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第02/21629号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日刊工業新聞社,「電子技術」,1997年,第39巻,第9号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、昨今、非水電解液二次電池の安全性及び電池特性を更に向上させることが求められており、上記特許文献1に開示の非水電解液二次電池についても、更なる改善の余地が生じてきた。そこで、本発明の目的は、非水電解液二次電池の安全性及び電池特性を向上させることが可能な二次電池用非水電解液及びそれを具えた非水電解液二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、分子構造中にフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基を含むホスファゼン化合物を非水電解液二次電池の非水電解液に添加することで、非水電解液二次電池の安全性及び電池特性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の二次電池用非水電解液は、下記一般式(1):
(NPR2n ・・・ (1)
[式中、Rはそれぞれ独立してフッ素又はフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基であって、全Rのうち1つフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基であり、nは3〜14である]で表されるホスファゼン化合物からなる二次電池の非水電解液用添加剤と、支持塩とを含有し、
上記一般式(1)で表わされるホスファゼン化合物の含有量が1体積%以上且つ15体積%未満の範囲であることを特徴とする。
【0012】
本発明の二次電池用非水電解液の好適例においては、前記フッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基が、ヘキサフルオロイソプロポキシ基、パーフルオロ−t−ブトキシ基、ヘプタフルオロイソブトキシ基からなる群から選択される少なくとも1種である特にその中でもヘキサフルオロイソプロポキシ基が更に好ましい。
【0015】
本発明の二次電池用非水電解液は、更に非プロトン性有機溶媒を含むことが好ましい。ここで、該非プロトン性有機溶媒が環状又は鎖状のエステル化合物を含むことが更に好ましい。
【0016】
本発明の二次電池用非水電解液の好適例は、前記支持塩としてLiPF6を含み、前記非プロトン性有機溶媒としてエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネート含む。
【0017】
本発明の二次電池用非水電解液の他の好適例は、前記支持塩としてLiBF4を含み、前記非プロトン性有機溶媒としてプロピレンカーボネート含む。
【0018】
また、本発明の非水電解液二次電池は、上述の二次電池用非水電解液と、正極と、負極とを具えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、分子構造中にフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基を含むホスファゼン化合物からなり、非水電解液二次電池の安全性及び電池特性を向上させることが可能な非水電解液用添加剤を提供することができる。また、かかる添加剤を含み、安全性が高く、二次電池の電池特性を大幅に向上させることが可能な非水電解液を提供することができる。更に、該非水電解液を具え、安全性及び電池特性に優れた非水電解液二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<非水電解液用添加剤>
以下に、本発明の非水電解液用添加剤を詳細に説明する。本発明の非水電解液用添加剤は、上記一般式(1)で表されるホスファゼン化合物からなることを特徴とする。
【0021】
従来、非水電解液二次電池に用いられている非プロトン性有機溶媒をベースとした非水電解液は引火性液体であり、短絡時等に大電流が急激に流れ、電池が異常に発熱した際に、気化・分解してガスが発生したり、発生したガスや短絡によって発生した火花等により引火し、電池の破裂・発火が起こることがあるため、危険性が高い。これら従来の非水電解液に、上記ホスファゼン化合物からなる本発明の非水電解液用添加剤を添加することにより、ホスファゼン化合物から誘導される窒素ガス及びフッ素ガス等の作用によって非水電解液に自己消火性、難燃性、又は不燃性が付与される。そのため、本発明の添加剤を含む非水電解液を用いた電池は、安全性が大幅に向上している。また、上記ホスファゼン化合物に含まれるリンには電池を構成する高分子材料の連鎖分解を抑制する作用があるため、更に効果的に難燃化(自己消火性、難燃性、不燃性)が発現される。なお、上記「安全性」については、下記安全性の評価方法により評価することができる。
【0022】
<<安全性の評価方法>>
安全性は、UL(アンダーライティングラボラトリー)規格のUL94HB法をアレンジした方法に従い、大気環境下において着火した炎(試験炎:800℃、30秒間)の燃焼挙動を測定することにより、具体的にはUL試験基準に基づき、不燃性石英ファイバーに1.0mLの電解液を染み込ませ、127mm×12.7mmの試験片を作製し、その着火性(燃焼長等)、燃焼性、炭化物の生成、二次着火時の現象等を観察することにより評価できる。
【0023】
また、従来の非水電解液二次電池においては、非水電解液中の溶媒あるいは支持塩の分解または反応によって生成する化合物が、電極及びその周辺部材を腐食し、また、その支持塩自体の減少が、さらに電池の性能を悪化させると考えられている。例えば、非水電解液二次電池の電解液として用いられているエステル系の電解液においては、支持塩であるLiPF6塩等のリチウムイオン源等が、経時と共にLiFとPF5に分解し、発生するPF5ガスや、該PF5ガスが更に水等と反応して発生するフッ化水素ガス等により、腐蝕が進行して劣化するものと考えられている。これにより、非水電解液の導電性が低下するとともに、発生するフッ化水素ガスで極材が劣化する現象が起こる。一方、上記ホスファゼン化合物は、溶媒あるいは支持塩、例えば、LiPF6等のリチウムイオン源の分解を抑制し安定化に寄与する(特に、PF6に対して有効に働く)。したがって、従来の非水電解液に上記ホスファゼン化合物を添加することにより、非水電解液の分解反応が抑制され、腐蝕、劣化を防止することが可能となる。
【0024】
上記ホスファゼン化合物は、上記一般式(1)で表され、該式中のRはそれぞれ独立してフッ素又はフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基であって、全Rのうち1つフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基であり、nは3〜14である。本発明で用いるホスファゼン化合物が、上記一般式(1)で表される理由は、以下の通りである。
【0025】
即ち、ホスファゼン化合物を含有すれば、非水電解液に優れた自己消火性ないし難燃性を付与することができるが、更に、上記一般式(1)で表され全Rのうち少なくとも1つがフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基であれば、非水電解液に優れた不燃性を付与することが可能となる。更にまた、全Rのうち少なくとも1つがフッ素であれば、更に優れた不燃性を付与することが可能となる。ここで、「不燃性」とは、上述の「安全性の評価方法」において、非水電解液に試験炎を点火しても全く着火しない性質、即ち、試験炎が試験片に着火しない(燃焼長:0mm)性質を言う。また、「自己消火性」とは、上記「安全性の評価方法」において、着火した炎が25〜100mmラインで消火し、かつ、落下物にも着火が認められない状態となる性質をいい、「難燃性」とは、上記「安全性の評価方法」において、着火した炎が25mmラインまで到達せず、かつ、落下物にも着火が認められない状態となる性質をいう。
【0026】
上記一般式(1)におけるフッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基とは、2級または3級の分岐したアルコキシ基中の水素元素の一部がフッ素元素で置換されたものを指す。
【0027】
上記フッ素で置換された2級または3級の分岐したアルコキシ基としては、例えば、ヘキサフルオロイソプロポキシ基、ヘプタフルオロイソプロポキシ基、ヘプタフルオロイソブトキシ基、オクタフルオロ−s−ブトキシ基、パーフルオロ−t−ブトキシ基、ノナフルオロイソブトキシ基等が挙げられ、これらの中でも、ヘキサフルオロイソプロポキシ基、パーフルオロ−t−ブトキシ基、ヘプタフルオロイソブトキシ基が好ましい。
【0028】
また、上記一般式(1)におけるnは3〜14であり、3又は4であることが好ましく、3であることが特に好ましい。
【0029】
なお、フッ素を含む置換基を有する化合物においては、フッ素ラジカルの発生が問題となることがあるが、上記ホスファゼン化合物は、分子構造中のリン元素がフッ素ラジカルを捕捉し、安定なフッ化リンを形成するため、このような問題は発生しない。
【0030】
上記一般式(1)におけるR及びnを適宜選択することにより、より好適な不燃性、粘度、混合に適する溶解性等を有する非水電解液の合成が可能となる。上記ホスファゼン化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
上記ホスファゼン化合物の引火点としては、特に制限はないが、発火の抑制等の観点から、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。ホスファゼン化合物が100℃以上に引火点を有していると、発火等が抑制され、また、仮に電池内部で発火等が生じても、引火して電解液表面に燃え広がる危険性を低下させることが可能となる。なお、引火点とは、具体的には、物質表面に炎が広がり、該物質表面の少なくとも75%を覆う温度をいう。該引火点は、空気と可燃性混合物を形成する傾向度を見る尺度となるものであり、本発明においては、以下のミニフラッシュ法により測定する。即ち、密閉したカップ方式で、4mLの小さな測定チャンバー、加熱カップ、フレーム、イグニッション部、及び、自動フレーム感知システムを備えた装置(自動引火測定器)(MINIFLASH、GRABNER INSTRUMENTS社製)を用意し、測定する試料1mLを加熱カップに入れ、カバーをし、カバー上部から加熱カップを加熱開始する。以降、一定間隔で試料温度を上昇させ、カップ内の蒸気と空気混合物へ一定温度間隔でイグニッションさせ、引火を検知し、引火が検知された時の温度を引火点とする。
【0032】
<非水電解液>
次に、本発明の非水電解液を詳細に説明する。本発明の非水電解液は、上述した非水電解液用添加剤と、支持塩とを含有することを特徴とし、必要に応じて、更に非プロトン性有機溶媒等を含んでもよい。
【0033】
本発明の非水電解液に用いる支持塩としては、リチウムイオンのイオン源となる支持塩が好ましい。該支持塩としては、特に制限はないが、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiC49SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C25SO2)2N等のリチウム塩が好適に挙げられる。これら支持塩は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明の非水電解液中の支持塩の濃度としては、0.5〜1.5mol/Lが好ましく、0.8〜1mol/Lが更に好ましい。支持塩の濃度が0.5mol/L未満では、電解液の導電性を充分に確保することができず、電池の充放電特性に支障をきたすことがあり、一方、1.5mol/Lを超えると、電解液の粘度が上昇し、リチウムイオンの移動度を充分に確保できないため、前述と同様に電解液の導電性を充分に確保できず、電池の充放電特性に支障をきたすことがある。
【0035】
本発明の非水電解液の25℃における粘度としては、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましい。非水電解液の粘度が、10mPa・s(10cP)以下であれば、低内部抵抗、高導電率等の優れた電池特性を有する非水電解液二次電池を作製できる。なお、粘度は、粘度測定計(R型粘度計Model RE500−SL、東機産業(株)製)を用い、1rpm、2rpm、3rpm、5rpm、7rpm、10rpm、20rpm、及び、50rpmの各回転速度で120秒間ずつ測定し、指示値が50〜60%となった時の回転速度を分析条件とし、その際の粘度を測定することによって求める。
【0036】
本発明の非水電解液は、低粘度化、電気導電性の向上の観点から、更に非プロトン性有機溶媒を含むことが好ましい。非水電解液に非プロトン性有機溶媒が含有されていると、非水電解液の低粘度化、電気導電性の向上が容易に達成される。該非プロトン性有機溶媒としては、特に制限はないが、非水電解液の低粘度化の点で、エーテル化合物やエステル化合物等が好ましい。具体的には、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジフェニルカーボネート等が好適に挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状エステル化合物、1,2−ジメトキシエタン等の鎖状エーテル化合物が好ましい。特に、環状のエステル化合物は、比誘電率が高く、支持塩等の溶解性に優れる点で好ましく、また、鎖状のエステル化合物は、低粘度であるため、非水電解液を低粘度化させることができる点で好ましい。これら非プロトン性有機溶媒は、1種単独で使用してもよいが、2種以上を併用するのが好ましい。また、該非プロトン性有機溶媒の25℃における粘度としては、非水電解液の粘度を容易に低下させることができる点で、10mPa・s(10cP)以下が好ましく、5mPa・s(5cP)以下がより好ましい。
【0037】
本発明の非水電解液中の上記一般式(1)で表わされるホスファゼン化合物の含有量は、安全性及び電池特性の観点から、1体積%以上且つ15体積%未満である
【0038】
また、本発明の非水電解液中の上記一般式(1)で表わされるホスファゼン化合物の含有量は、非水電解液の難燃化(自己消火性、難燃性、不燃性)の発現の観点から、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上である。上記ホスファゼン化合物の含有量が1体積%未満では、電解液に充分な難燃化が発現されないことがある。
【0039】
なお、難燃化の発現の観点から、本発明の非水電解液は、上記ホスファゼン化合物と、LiPF6と、エチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートとを含むことが特に好ましく、また、上記ホスファゼン化合物と、LiBF4と、プロピレンカーボネートとを含むことも特に好ましい。これらの場合、非水電解液中の上記ホスファゼン化合物の含有量が少量であっても、優れた難燃化を発現させることができる。
【0040】
また、本発明の非水電解液中の上記一般式(1)で表わされるホスファゼン化合物の含有量は、非水電解液の耐劣化性の観点から1体積%以上且つ15体積%未満である。上記ホスファゼン化合物の含有量が1体積%以上であれば、電解液の劣化を好適に抑制できる。
【0041】
また、耐劣化性と安全性を両立する観点から、非水電解液中の上記一般式(1)で表わされるホスファゼン化合物の含有量は、1体積%以上且つ15体積%未満であり、3体積%以上且つ15体積%未満の範囲がより好ましく、5体積%以上且つ15体積%未満の範囲がより一層好ましい。なお、「劣化」とは、上記支持塩(例えば、リチウム塩)の分解をいい、該劣化防止の効果は、下記安定性の評価方法により評価する。
【0042】
<<安定性の評価方法>>
(1)先ず、支持塩を含む非水電解液を調製後、水分率を測定する。水分率が20ppm以下であることを確認したら、次に、目視により非水電解液の色調を観察する。
(2)その後、上記と同じ非水電解液を10日間グローブボックス内の恒温槽内で60℃にて放置した後、再び、水分率を測定し、色調を観察し、これらの変化により安定性を評価する。
【0043】
以上が本発明の非水電解液電池用電解液の基本的な構成についての説明であるが、本発明の要旨を損なわない限りにおいて、本発明の非水電解液電池用電解液に一般に用いられるその他の添加剤を任意の比率で添加しても良い。具体例としては、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、t−ブチルベンゼン、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジフルオロアニソール、フルオロエチレンカーボネート、プロパンサルトン、ジメチルビニレンカーボネート等の過充電防止効果、負極皮膜形成効果、正極保護効果を有する化合物が挙げられる。また、リチウムポリマー電池と呼ばれる非水電解液電池に使用される場合のように非水電解液電池用電解液をゲル化剤や架橋ポリマーにより擬固体化して使用することも可能である。
【0044】
<非水電解液二次電池>
次に、本発明の非水電解液二次電池を詳細に説明する。本発明の非水電解液二次電池は、上述の非水電解液と、正極と、負極とを具え、必要に応じて、セパレーター等の非水電解液二次電池の技術分野で通常使用されている他の部材を備える。
【0045】
本発明の非水電解液二次電池の正極に用いる正極活物質としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、V25、V613、MnO2、MnO3等の金属酸化物、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiFeO2及びLiFePO4等のリチウム含有複合酸化物、TiS2、MoS2等の金属硫化物、ポリアニリン等の導電性ポリマー等が好適に挙げられる。上記リチウム含有複合酸化物は、Fe、Mn、Co及びNiからなる群から選択される2種又は3種の遷移金属を含む複合酸化物であってもよく、この場合、該複合酸化物は、LiFexCoyNi(1-x-y)2(式中、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y≦1)、或いはLiMnxFey2-x-y等で表される。これらの中でも、高容量で安全性が高く、更には電解液の濡れ性に優れる点で、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24が特に好適である。これら正極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の非水電解液二次電池の負極に用いる負極活物質としては、リチウム又はリチウムイオン等を吸蔵・放出可能であれば特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、リチウム金属自体、リチウムとAl、Si、Sn、In、Pb又はZn等との合金及び金属間化合物、リチウムをドープした黒鉛等の炭素材料等が好適に挙げられ、これらの中でも安全性がより高く、電解液の濡れ性に優れる点で、黒鉛等の炭素材料が好ましく、黒鉛が特に好ましい。ここで、黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)等、広くは易黒鉛化カーボンや難黒鉛化カーボンが挙げられる。これら負極活物質は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
上記正極及び負極には、必要に応じて導電剤、結着剤を混合することができ、導電剤としてはアセチレンブラック等が挙げられ、結着剤としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。これらの添加剤は、従来と同様の配合割合で用いることができる。
【0048】
また、上記正極及び負極の形状としては、特に制限はなく、電極として公知の形状の中から適宜選択することができる。例えば、シート状、円柱形状、板状形状、スパイラル形状等が挙げられる。
【0049】
本発明の非水電解液二次電池に使用する他の部材としては、非水電解液二次電池において、正負極間に、両極の接触による電流の短絡を防止する役割で介在させるセパレーターが挙げられる。セパレーターの材質としては、両極の接触を確実に防止し得、且つ電解液を通したり含んだりできる材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース系、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂製の不織布、薄層フィルム等が好適に挙げられる。これらの中でも、厚さ20〜50μm程度のポリプロピレン又はポリエチレン製の微孔性フィルム、セルロース系、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のフィルムが特に好適である。本発明では、上述のセパレーターの他にも、通常電池に使用されている公知の各部材が好適に使用できる。
【0050】
本発明の非水電解液二次電池の容量としては、LiCoO2を正極とした場合、充放電容量(mAh/g)で、140〜145(mAh/g)の範囲が好ましく、143〜145(mAh/g)の範囲が更に好ましい。なお、充放電容量は、公知の測定方法、例えば、半開放型セルあるいは、密閉型コインセルを用い、充放電試験を行い、充電電流(mA)、時間(t)及び極材質量(g)より、容量を求める方法によって測定することができる。
【0051】
本発明の非水電解液二次電池の形態としては、特に制限はなく、コインタイプ、ボタンタイプ、ペーパータイプ、角型又はスパイラル構造の円筒型電池等、種々の公知の形態が好適に挙げられる。ボタンタイプの場合は、シート状の正極及び負極を作製し、該正極及び負極でセパレーターを挟む等して、非水電解液二次電池を作製することができる。また、スパイラル構造の場合は、例えば、シート状の正極を作製して集電体を挟み、これに、シート状の負極を重ね合わせて巻き上げる等して、非水電解液二次電池を作製することができる。
【0052】
また、本発明の非水電解液二次電池の、充放電サイクル性能や低温特性等の電池特性を向上する観点から、非水電解液中の上記一般式(1)で表わされるホスファゼン化合物の含有量は、1体積%以上且つ15体積%未満の範囲が好ましく、3体積%以上且つ15体積%未満の範囲がより好ましく、5体積%以上且つ15体積%未満の範囲がより一層好ましい。なお、上記「充放電サイクル性能」と「低温特性」については、後述する評価方法により評価することができる。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒[混合比(体積比)でエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1/1](非プロトン性有機溶媒)99mLに、ホスファゼン化合物[上記一般式(1)において、nが3であって、5つのRがフッ素で、1つのRがヘキサフルオロイソプロポキシ基である環状ホスファゼン化合物、引火点:なし](非水電解液用添加剤)1mLを添加(1体積%)し、更に、LiPF6(支持塩)を0.95mol/Lの濃度で溶解させて、非水電解液を調製した。得られた非水電解液の安全性及び耐劣化性を下記の方法で測定・評価した。結果を表1に示す。
【0055】
<安全性の評価>
UL(アンダーライティングラボラトリー)規格のUL94HB法をアレンジした方法に従い、大気環境下において着火した炎(試験炎:800℃)の燃焼挙動を測定することにより、具体的にはUL試験基準に基づき、不燃性石英ファイバーに1.0mLの各種電解液を染み込ませ、127mm×12.7mmの試験片を作製し、その着火性(燃焼長等)、燃焼性、炭化物の生成、二次着火時の現象等を観察することにより評価した。ここで、試験炎を点火しても非水電解液に全く着火しなかった場合(燃焼長:0mm)を「不燃性」と評価し、着火した炎が装置の25mmラインまで到達せず且つ試験片からの落下物にも着火が認められなかった場合を「難燃性」と評価し、着火した炎が装置の25〜100mmラインで消火し且つ試験片からの落下物にも着火が認められなかった場合を「自己消火性」と評価し、着火した炎が100mmラインを超えた場合を「燃焼性」と評価した。
【0056】
<耐劣化性の評価>
得られた非水電解液について、非水電解液調製直後及び10日間グローブボックス内の恒温槽(60℃)に放置した後で水分率(ppm)を測定し、放置前後の色調変化を観察することにより劣化の評価を行った。
【0057】
[非水電解液二次電池の作製]
LiCoO2を正極材料、黒鉛を負極材料としてセルを作製し、実際に電池の充放電試験を実施した。試験用セルは以下のように作製した。
LiCoO2粉末90質量部に、バインダーとして5質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電材としてアセチレンブラックを5質量部混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、ペースト状にした。このペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより、試験用正極体とした。また、黒鉛粉末90質量部に、バインダーとして10質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、スラリー状にした。このスラリーを銅箔上に塗布して、150℃で12時間乾燥させることにより、試験用負極体とした。そして、ポリエチレン製セパレーターに電解液を浸み込ませてアルミラミネート外装の50mAhセルを組み立てた。
得られた電池に対して、下記の評価方法により、充放電サイクル性能及び低温特性を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0058】
<充放電サイクル性能の評価>
60℃において、上限電圧4.2V、下限電圧3.0V、放電電流50mA、充電電流50mAの条件で、500サイクルまで充放電を繰り返した。この時の放電容量を、初期における放電容量と比較し、500サイクル後の容量維持率を算出した。合計3個の電池について、同様に測定・算出し、これらの平均値をとり、充放電サイクル性能の評価とした。
【0059】
<低温特性の評価>
得られた電池について、放電時の温度を、低温(−10℃、−20℃)とした他は、前記「充放電サイクル性能の評価」と同様の条件で、50サイクルまで充放電を繰り返した。この時の低温における放電容量を、20℃において測定した放電容量と比較し、下記式(2)より放電容量残存率を算出した。合計3個の電池について、同様に測定・算出し、これらの平均値をとり、低温特性の評価とした。
放電容量残存率=低温放電容量/放電容量(20℃)×100(%) ・・・ (2)
【0060】
(実施例2)
実施例1の「非水電解液の調製」において、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を97mLとし、ホスファゼン化合物を3mL(3体積%)とした他は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0061】
(実施例3)
実施例1の「非水電解液の調製」において、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を95mLとし、ホスファゼン化合物を5mL(5体積%)とした他は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
実施例1の「非水電解液の調製」において、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を90mLとし、ホスファゼン化合物を10mL(10体積%)とした他は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例5)
実施例1の「非水電解液の調製」において、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を86mLとし、ホスファゼン化合物を14mL(14体積%)とした他は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例6)
実施例1の「非水電解液の調製」において、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を86mLとし、ホスファゼン化合物を14mL(14体積%)とし、LiPF6(支持塩)の代わりにLiBF4(支持塩)を用いた他は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0065】
(比較例1)
実施例1の「非水電解液の調製」において、ホスファゼン化合物を添加しない以外は、実施例1と同様に非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0066】
(比較例2)
実施例1の「非水電解液の調製」において、上記ホスファゼン化合物を、上記一般式(1)において、nが3であって、5つのRがフッ素で、1つのRがエトキシ基である環状ホスファゼン化合物(引火点:なし)に代え、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を99mLとし、ホスファゼン化合物を1mL(1体積%)とした他は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0067】
(比較例3)
比較例2の「非水電解液の調製」において、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を90mLとし、ホスファゼン化合物を10mL(10体積%)とした他は、比較例2と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、比較例2と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例4)
比較例2の「非水電解液の調製」において、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を85mLとし、ホスファゼン化合物を15mL(15体積%)とした他は、比較例2と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、比較例2と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0069】
(比較例5)
実施例1の「非水電解液の調製」において、上記ホスファゼン化合物を、上記一般式(1)において、nが3であって、5つのRがフッ素で、1つのRがトリフルオロエトキシ基である環状ホスファゼン化合物(引火点:なし)に代え、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒を90mLとし、ホスファゼン化合物を10mL(10体積%)とした他は、実施例1と同様にして非水電解液を調製し、安全性及び耐劣化性の評価を行った。また、実施例1と同様にして非水電解液二次電池を作製し、充放電サイクル性能、及び低温特性をそれぞれ測定・評価した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の結果から、本発明の非水電解液用添加剤を非水電解液二次電池の非水電解液に添加することにより、従来の非水電解液二次電池に比べ、安全性及び電池特性を向上させられることが分かる。