【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ゴム製の伸縮ジョイントには、ゴムタイヤに対する滑り抵抗を確保することが困難であることや、タイヤ接地面での耐久性に乏しく取替時期の判断が困難である等の課題があった。
【0008】
一方、鋼製の伸縮ジョイントには、ゴムタイヤに対する滑り抵抗の問題の他に、伸縮ジョイントと走行路との間に段差が生じやいため、数ミリ単位で段差を管理しないとタイヤ等に与える影響が大きく、段差管理が困難である等の課題があった。
【0009】
さらに、取付けボルト等の部品の金属疲労などによる亀裂によりタイヤが走行中にパンクすることがあり、走行中の安全性にも課題があった。
【0010】
また、いずれの伸縮ジョイントにも、橋桁の温度変化による伸縮の大きな箇所やタイヤ径の小さい小型車輌については、依然としてタイヤの落ち込みや嵌り込みが懸念され、乗り心地の低下につながるおそれがあった。
【0011】
また、地震などで橋桁と橋桁との継目部に上下の段差(橋桁が継目部で段違いにずれること)や横方向のずれ(橋桁が継目部で橋軸直角方向にずれること)、さらには角折れ(橋桁が継目部で横方向に折れること)等が生じた場合、従来の伸縮ジョイントでは段差や横ずれ、角折れは地震後もそのままになり、場合によっては完全に損壊してしまうこともあるため、緊急車輌などを通す場合には継目部を鉄板などで覆う等の応急処置を施す必要があった。
【0012】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、タイヤ径などの異なる様々なタイヤ形状への対応が可能で、タイヤに対するすべり抵抗が大きく、かつタイヤの落ち込みや嵌り込みが少なく、保守・メンテナンスの容易な伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造および伸縮部材の取付け方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造は、遊間を挟んで同一軸上に敷設された走行路の端部に相対して設けられた段差
内にそれぞれ設置された伸縮部材と、当該伸縮部材間
に遊間を跨いで設置された
受けプレートと、当該受けプレートの上に設置された目地ブロックと、当該目地ブロックと段差内の側壁部との間に設置された受けブロックとを備えてなる伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造において、
前記伸縮部材は、相対する段差内の底部にそれぞれアンカーボルトによって脱着可能に取り付けられ、かつ前記受けプレートによって連結され、前記目地ブロックは前記受けプレートの上に脱着可能に取り付けられ、かつ前記受けブロックは段差内の側壁部に取付けボルトによって脱着可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明は、橋桁の継目部に設けられた遊間を、その機能を保持しつつ目地ブロックによって塞ぐことにより、タイヤの落ち込みや嵌り込みを防止して車輌がスムーズにかつ安全に走行できるようにしたものであり(
図2参照)、主として橋桁の一部として橋桁の上に敷設された新交通システムやモノレール等の車輌用走行路の継目部に適用され、また道路橋や歩道橋などの道路床版の継目部にも適用することができる。
【0015】
本発明によれば、特に地震などで橋桁と橋桁との継目部に上下の段差や横方向のずれ、さらには角折れ等のいかなる変位が生じた場合でも、伸縮部材の変形によって目地ブロックは必ず遊間の中央に位置することにより、段差や横ずれ等を解消若しくは緩和させることが可能なため、鉄板などによる応急処置がなくても車輌をスムーズに走行させることができる。
【0016】
また、目地ブロックは遊間を跨いで設置されており、各部材の精度を適切に管理すれば、目地ブロックと走行路間の目地に段差が生じることを防ぐことができる。
【0017】
なお、目地ブロックは、走行路と同じコンクリート製とすることにより、ゴム製や金属製の伸縮ジョイントと比較してタイヤの滑り抵抗を大幅に向上させることができる。また特に、高強度繊維補強コンクリート製の目地ブロックは磨耗しにくく耐久性にすぐれ、本発明における目地ブロックに適している。
【0018】
伸縮部材には鉛直方向に硬く、水平方向に柔らく変形しやすい材料が望ましい。本発明では積層ゴムを主体としている。また、伸縮部材と目地ブロックはボルト締結などによって脱着自在に取り付けることにより、保守・メンテナンスも容易に行うことができる。
【0019】
請求項2記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造は、請求項1記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造において、段差
内の底部は走行路の軸方向にそれぞれ二段に形成され、一段目の底部に一段目の伸縮部材がそれぞれ設置され、当該一段目の伸縮部材の上に遊間を跨いで一段目の受けプレートが設置され、当該一段目の受けプレートの上に目地ブロックが設置され、前記二段目の底部と一段目の受けプレートの上に二段目の伸縮部材がそれぞれ設置され、前記二段目の伸縮部材間に二段目の受けプレートが設置され、かつ二段目の受けプレートの上に中間目地ブロックがそれぞれ設置されていることを特徴とするものである。
【0020】
本発明は、主として車輌通過時のタイヤの衝突や衝撃などによって走行路の端部が損傷しないように、走行路の端部を受けブロックによって保護したものである(
図2参照)。受けブロックは走行路および目地ブロックと同様にコンクリート製、あるいは高強度繊維補強コンクリート製とするのがよい。
【0021】
また、受けブロックは、段差内の走行路の側壁部に路面が連続するように密着させ、取付けボルト等によって脱着自在に取り付けることにより、損傷しても交換して容易に復旧させることができる。
【0022】
請求項3記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造は、請求項1または2記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造において、
受けプレートは走行路の軸直角方向に長方形板状に形成され、受けブロックは走行路の軸直角方向に直方体形状に形成され、前記受けプレートの中央部と長辺方向の両端部にアンカーボルトが突設され、前記目地ブロックの中央部と長辺方向の両端部に内径が下方向に徐々に大きくなるルーズ孔と上方向に徐々に大きくなるルーズ孔がそれぞれ形成され、前記各ルーズ孔内に前記アンカーボルトがそれぞれ挿入され、かつ固結材が充填されて前記受けプレートの上に前記目地ブロックが脱着可能に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0023】
本発明は、走行路の継目部に複数の目地ブロックを設置して、継目部の遊間を複数に分散して個々の遊間をより小さくすることにより、タイヤの落ち込みや嵌り込みをより確実に防止して乗り心地を向上させたものである(
図6参照)。例えば、段差内の目地ブロックの両側にそれぞれ一個ずつ中間目地ブロックを設置することにより、走行路の遊間を1/4まで小さくすることもできる。
【0024】
請求項4記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造は、請求項
1〜3のいずれかひとつに記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造において、目地ブロックと受けブロックは、コンクリート製あるいは高強度繊維補強コンクリート製であることを特徴とするものである。
【0025】
本発明によれば、目地ブロック、受けブロックおよび中間目地ブロックを全て走行路と同じ材質のコンクリート製、あるいは高強度繊維補強コンクリート製とすることで、各部材がほぼ同じ様に磨耗してブロック間の継目部に段差が生じ難くなるため、継目部の段差管理がさらに容易になる。
【0026】
また、走行路の継目部、特に走行路の路面に金属やゴム等が露出しない構造になるため、これらの部材の錆や劣化の問題を解消することができるだけでなく、部材の飛散を防止して車輌の走行中の安全性を高めることができる。
【0027】
請求項5記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造は、請求項
1〜4のいずれかひとつに記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における接合構造において、
受けブロックと目地ブロック間の継目部における遊間は、橋軸方向に対して斜めに形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
本発明は、遊間の設置角度を橋軸方向に対して斜めにすることにより、必要な遊間を確保しつつ特にタイヤ径の小さい小型車輌のタイヤの落ち込みや嵌り込みを防止できるようにしたものである(
図7参照)。
【0029】
なお、目地ブロックと中間ブロック間の継目部および中間ブロックと受けブロック間の継目部における遊間をそれぞれ橋軸方向に対して斜めに形成することにより同様の効果が得られる。
【0030】
請求項6記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における伸縮部材の取付け方法は、請求項1〜5のいずれかひとつに記載の伸縮機能を備えた車輌用走行路の継目部等における伸縮部材の取付け方法
であって、段差内の底部にそれぞれ設置した伸縮部材間に遊間を跨いで受けプレートを設置し、かつ各伸縮部材の上にそれぞれ固定した後、春季または秋季を界に夏季は、走行路軸方向の先端側の伸縮部材を段差内の底部に固定し、次に当該伸縮部材を走行路軸方向の先端方向に変形させた後、手前側の伸縮部材を段差内の底部に固定し、冬季は、走行路軸方向の手前側の伸縮部材を段差内の底部に固定し、次に当該伸縮部材を走行路軸方向の先端方向に変形させた後、先端側の伸縮部材を段差内の底部に固定することを特徴とするものである。
【0031】
一般に、RC構造やPC構造、鉄骨構造の橋桁においては、橋桁間の継目部に設けられる遊間の幅は季節によって異なり、また一日の気温の変化によっても異なる。さらに、RC構造やPC構造の橋桁ではコンクリートの乾燥収縮やクリープの影響によっても遊間の幅に変動が起こりやすい。
【0032】
このような環境下で伸縮部材を設計する場合、乾燥収縮やクリープによる収縮が終息し、さらに温度によって変化する橋桁の長さが気温の高いときと低いときの中央値になっているとき(標準気温時)、伸縮部材にも変形が生じないように設計するのが伸縮部材として最も経済的である。
【0033】
このため、伸縮部材は、季節や一日の時間帯、さらには橋梁の材令に左右されることなく取り付けることができ、橋梁の乾燥収縮やクリープが終息し、さらに標準気温になったときの状態で、伸縮部材に変形が生じていないように取り付けられるのが望ましい。
【0034】
従来の伸縮ジョイントで取り付け時の気温や橋梁の材令に対応した遊間に設定しようとする場合は、取り付け時の温度を予測し、工場などで予め遊間幅を調整し、専用の固定冶具によって仮固定し、現地で取り付け後に開放することで遊間の調整を行っていた。
【0035】
しかし、取り付け時の気温は予測値であることから、予測値と取り付け時の気温が大きく異なる場合は、実際の気温に合せて再調整を行なう必要があるため取付けが面倒であった。
【0036】
本発明によれば、季節や時間帯、さらには橋梁の材令等に何ら左右されることなく、常に橋梁の長さが標準気温時の状態になったときに、伸縮部材が変形のない標準の状態になるよう容易に取り付けることができる。
【0037】
この場合、標準気温時の遊間を最も広いときの遊間と最も狭いときの遊間の中間に設定することで、最大時の遊間を最少にすることができ、また遊間が狭くなっても橋桁の端部どうしが衝突することはない。
【0038】
なお、伸縮部材どうしは、伸縮部材間に遊間を跨いで目地ブロックまたは目地ブロックを設置するための受けプレートを設置することにより容易に結合することができる(
図9(a)参照)。また、伸縮部材は油圧ジャッキ等で橋軸方向に押し付けることにより容易に変形させることができる(
図9(b),(c)参照)。