特許第5738061号(P5738061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738061
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】FRP構造体の製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20150528BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20150528BHJP
   B29C 43/56 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B29C43/34
   B29C43/12
   B29C43/56
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-106078(P2011-106078)
(22)【出願日】2011年5月11日
(65)【公開番号】特開2012-236304(P2012-236304A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502116922
【氏名又は名称】ジャパンマリンユナイテッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】山田 直樹
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−021869(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/058915(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00−43/58
B29C 70/00−70/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に複数の樹脂流通溝を設けた心材と、
前記心材の前記樹脂流通溝側の面に重ねて置かれた強化繊維布と、を有する被成形体を真空フィルムで気密に覆い、VARTM成形法により前記被成形体に樹脂を含浸してFRP構造体を製造する方法であって
前記被成形体の対向する辺のそれぞれの端縁部に、当該辺平行に樹脂供給部を配置し、
前記被成形体の一辺側に配置された前記樹脂供給部と前記被成形体の他辺側に配置された前記樹脂供給部との間の中間点を結んだ中間線に沿って、防水通気性の膜を有する布と通気手段とを有する脱気部を配置し、
前記脱気部により前記被成形体の前記中間線上から脱気しながら、両側の前記樹脂供給部より同時に樹脂を供給して樹脂含浸を進行させて成形する
ことを特徴とするFRP構造体の製造方法。
【請求項2】
前記脱気部として、防水通気性の膜を有する布と通気手段とを有する脱気バッグを用いることを特徴とする請求項1記載のFRP構造体の製造方法。
【請求項3】
前記複数の樹脂供給部として、螺旋状の樹脂供給用スリットを有するスパイラルチューブを用いることを特徴とする請求項1又は2記載のFRP構造体の製造方法。
【請求項4】
前記心材を突き合わせ、その突き合わせ部に沿って前記脱気部を延在させて、前記心材の下面の空気を逃がす径路を確保することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のFRP構造体の製造方法。
【請求項5】
前記脱気部に貫通孔付きの心材を配して、前記貫通孔により該心材の下面の空気を逃がす径路を確保することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のFRP構造体の製造方法。
【請求項6】
前記被成形体が前記真空フィルムで気密に覆われる際、前記被成形体は、成形型と前記真空フィルムとで挟まれるように配置され、
前記脱気部は、前記被成形体の前記真空フィルム側に配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のFRP構造体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか一項に記載のFRP構造体の製造方法を実施するための製造装置であって、
前記被成形体の両側の端縁部に配置される前記樹脂供給部として、螺旋状の樹脂供給用スリットを有するスパイラルチューブを用い、
前記被成形体の前記中間線に沿って配置される前記脱気部として、防水通気性の膜を有する布と通気手段とを有する脱気バッグを用いる
ことを特徴とするFRP構造体の製造装置。
【請求項8】
前記脱気バッグは、前記防水通気性の膜を有する布で前記通気手段を包囲した袋状に形成されていることを特徴とする請求項記載のFRP構造体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舟艇、プラント、太陽電池パネル、太陽熱発電パネル等のような大型のFRP構造体の製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、大型のFRP構造体の製造方法としては、VARTM(Vacuum Assisted Resin Transfer Molding:真空補助含浸)成形法やRTM(Resin Transfer Molding)成形法が知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
RTM成形法は、一般に金属型などで形成した空洞に強化繊維布や心材等を配置しておき、これに樹脂を圧入して繊維強化プラスチック(以下、FRPという)を製造する方法である。
一方、VARTM成形法は、上記のような空洞を形成した金型等を用いるのではなく、強化繊維布や心材等を配置した被成形物を真空フィルムで覆い閉鎖空間を形成するとともに、その閉鎖空間を真空状態にして、供給部の樹脂溜まりにかかる大気圧により樹脂を閉鎖空間内に注入する方法である。
【0003】
上記のように、VARTM成形法では、成形型に樹脂の注入圧力がかからないので、大型でも成形型の構造強度を向上させる必要がなく、いわゆる手積み成形として用いられる従来のFRP成形型を用いることができる。
また、VARTM成形法は、クローズドモールド法であるので、大規模な成形でも有害なスチレンなど樹脂に含まれる揮発性有機物を空気中に発散することが極めて少ないのでクリーンな成形法である。
更に、この成形法は、ガラス繊維や炭素繊維などの強化材を織った布を成形型の上に積み重ねた後真空フィルムで覆い、周囲をシールして真空状態にした後樹脂を吸い上げて含浸させるので、FRPの品質管理で最も重要な強化繊維への樹脂含浸工程をかなり厳密に管理することができる。そのため、樹脂が過剰な領域や含浸が不十分な領域の発生や、更には気泡の混入なども防ぐことができるので、高品質なFRP構造体を安定して生産できるというメリットがある。
以上のような事情から、最近では大型のFRP構造体の製造にVARTM成形法が利用されるようになってきている。
【0004】
VARTM成形法を利用した従来の成形方法を図6に示す。図6は、例えばFRPサンドイッチパネルを成形する場合を示す製造装置の概略上面図で、図7図6のB−B断面図である。また、図8は溝付き心材を示す斜視図である。
これらの図において、1は定盤のように表面が平坦な成形型、2は被成形体で、図8に示すように上下両面に樹脂が流れる溝3aが縦横に設けられた心材(溝付き心材)3と、溝付き心材3の上下面に置かれた繊維強化布4a、4bとから構成されている。
【0005】
そして、この被成形体2の上にピールプライ5(離型シート)を重ね、さらに樹脂タンク6に樹脂供給ホース7および開閉弁8を介して接続された樹脂供給用のスパイラルチューブ10a、10bを被成形体2の一方の辺の端縁部の上下にその辺と略平行に配置し、またこの被成形体2の対向する他方の辺の端縁部の上下には、真空ホース11を介して真空ポンプ(図示せず)に接続された脱気用のスパイラルチューブ12a、12bを同じくその辺と略平行に配置する。その上で、全体を真空フィルム13で覆い、周囲をシール部材14で気密にシールする。
【0006】
ついで、真空フィルム13内の空気を脱気用スパイラルチューブ12a、12bを通じて吸引し、内部空間を真空状態にしながら樹脂タンク6内の液状の樹脂を樹脂供給用スパイラルチューブ10a、10bより供給する。すると、樹脂は溝付き心材3の溝3aを縦横に流れて拡散し、被成形体2の上下両面の繊維強化布4a、4bに全面にわたって含浸する。その後、樹脂をゲル化、硬化させることで、溝付き心材3とその上下面の繊維強化布4a、4bとが一体に樹脂成形されたFRPサンドイッチパネルを製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−235776号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】鵜沢潔、「近年のFRP船建造のトピックから」、船艇技報、p.2−7、2009年4月発行、社団法人船艇協会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来のVARTM成形法によるFRP構造体の製造方法は、例えば四辺形のサンドイッチパネルでは樹脂を供給する端縁から脱気ラインを設けた対向する端縁に向けて樹脂を含浸させるので、含浸距離(樹脂の行路長)に従って要する含浸時間が決まっているため、製造を早めることは難しいという問題があった。
また、樹脂の粘度が高いために含浸するのに時間がかかったり、ゲル化時間が短くて長い距離を含浸できない樹脂を適用することが難しいという問題もある。
さらにまた、含浸距離を短くするために、対向する両縁から樹脂を含浸させようとしても、両側から含浸してきた樹脂が出合う領域で樹脂が未含浸となったり、エアの存在により含浸不足となる欠陥領域の発生を防止できないといった問題もある。
【0010】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、含浸距離を短くして製造時間の短縮を図るとともに、樹脂の未含浸やボイド等のない高品質のFRP構造体を製造することができるFRP構造体の製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るFRP構造体の製造方法は、少なくとも一方の面に複数の樹脂流通溝を設けた心材と、前記心材の前記樹脂流通溝側の面に重ねて置かれた強化繊維布と、を有する被成形体を真空フィルムで気密に覆い、VARTM成形法により前記被成形体に樹脂を含浸してFRP構造体を製造する方法であって
前記被成形体の対向する辺のそれぞれの端縁部に、当該辺平行に樹脂供給部を配置し、
前記被成形体の一辺側に配置された前記樹脂供給部と前記被成形体の他辺側に配置された前記樹脂供給部との間の中間点を結んだ中間線に沿って、防水通気性の膜を有する布と通気手段とを有する脱気部を配置し、
前記脱気部により前記被成形体の前記中間線上から脱気しながら、両側の前記樹脂供給部より同時に樹脂を供給して樹脂含浸を進行させて成形することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のFRP構造体の製造方法においては、脱気部として、防水通気性の膜を有する布と通気手段とを有する脱気バッグを用いるものである。
【0013】
また、複数の樹脂供給部として、螺旋状の樹脂供給用スリットを有するスパイラルチューブを用いるものである。
【0014】
また、心材を突き合わせ、その突き合わせ部に沿って脱気部を延在させて、心材の下面の空気を逃がす径路を確保するものとする。
【0015】
また、脱気部に貫通孔付きの心材を配して、貫通孔により心材の下面の空気を逃がす径路を確保するものとする。
【0016】
また、本発明に係るFRP構造体の製造装置は、上記のFRP構造体の製造方法を実施するための製造装置であって、
前記被成形体の両側の端縁部に配置される前記樹脂供給部として、螺旋状の樹脂供給用スリットを有するスパイラルチューブを用い、
前記被成形体の前記中間線に沿って配置される前記脱気部として、防水通気性の膜を有する布と通気手段とを有する脱気バッグを用いるものである。
【0017】
また、脱気バッグは、防水通気性の膜を有する布で通気手段を包囲した袋状に形成されているものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被成形体の中心線上から脱気しながら両側の端縁部から樹脂を同時に供給するので、含浸距離が短くなるため、FRP構造体の製造時間を大幅に短縮することができる。また、気体は通過させるが液体は通過させない防水通気性の膜で構成された脱気部を被成形体の中心線に沿って設けることにより中心線上から脱気することができ、未含浸領域や、ボイド、含浸不足領域等の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態1におけるFRP構造体の製造装置の概略構成を示す上面図である。
図2図1のA−A断面図である。
図3】実施の形態1の脱気部の拡大断面図である。
図4】本発明の実施の形態2におけるFRP構造体の製造装置の概略構成を示す断面図である。
図5】実施の形態2の脱気部の拡大断面図である。
図6】従来のFRP構造体の製造装置の概略構成を示す上面図である。
図7図6のB−B断面図である。
図8】FRP構造体に使用する溝付き心材の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1におけるFRP構造体の製造装置の概略構成を示す上面図で、図2図1のA−A断面図である。また、図3は脱気部の拡大断面図である。ここでは、一例として四辺形のFRPサンドイッチパネルを製造する方法について説明する。
図において、1は定盤のように表面(成形面)が平坦な成形型、2は被成形体で、例えば、図8に示すように上下両面に樹脂が流れる溝(樹脂流通溝)3aが縦横に設けられた心材(溝付き心材)3と、複数の溝付き心材3を突き合わせて上下面に重ねて置かれた1枚または複数枚の繊維強化布4a、4bとから構成されている。なお、成形型1の成形面は平坦な形状に限らず湾曲面とすることもできる。
【0022】
上記のように構成された被成形体2を成形型1の上に置く。そして、この被成形体2をピールプライ5(離型シート)で覆い、さらに被成形体2の中心線に沿って脱気部9を配置し、また被成形体2の対向する辺の端縁部の上下に、樹脂供給部10をその辺と略平行に配置する。樹脂供給部10は、ここではスパイラルチューブ10a、10bで構成されている。スパイラルチューブ10a、10bは液状樹脂を貯留した樹脂タンク6に樹脂供給ホース7および開閉弁8を介して接続されている。なお、樹脂には、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。これらの樹脂は常温では液状であり、重合を開始させる硬化剤などを加えて所定の時間でゲル化させ硬化させる。
【0023】
一方、被成形体2の中心線上には脱気部9がライン状又は帯状に配置される。脱気部9は、実施の形態1ではピールプライ5の上面に周囲をシールして設置されており、実施の形態2では、脱気バッグ9aが設置されている。脱気バッグ9aは、真空ホース11を介して樹脂トラップを経て真空ポンプ(いずれも図示せず)に接続されている。
【0024】
ここで、実施の形態1の脱気部9は、図3に示すように、空気等の気体は通過させるが水等の液体(樹脂)は通過させない半透過性膜を有する防水通気性の布9bと、この防水通気性布9bの上面に通気手段である脱気用スパイラルチューブ9cと通気層9dとで構成されている。実施の形態2の脱気部9は、図5に示すように、通気層9dとスパイラルチューブ9cとの全体を防水通気性布9bで包んで袋状にした脱気バッグ9aで構成されている。脱気用スパイラルチューブ9cは上記の樹脂供給用スパイラルチューブ10a、10bと同様のものである。上記の真空ホース11の一端はこの脱気用スパイラルチューブ9cに接続されている。
上記の防水通気性布9bとしては、例えばレインウェアなどの生地として用いられている商品名「ゴアテックス」(登録商標)をあげることができる。そして、この脱気バッグ9aには、真空ホース11が真空フィルム13を貫通させて防水通気性布9b上の通気層9dに接続され、さらに防水通気性布9bの周囲を例えば粘着テープ9fでピールプライ5上に接着し固定している。
【0025】
樹脂供給部10は、樹脂の流れ方向に対して直角の方向に延びるように配置された管形状のものであり、例えば、スパイラルチューブ10a、10bが好適に使用することができる。スパイラルチューブというのは、真空下でも扁平になり難いように、ある程度硬いプラスチック製の帯板を螺旋状に巻いて螺旋状のスリットをもつようにチューブ状に形成したものである。このようなスパイラルチューブの内部に樹脂を供給すると、樹脂が螺旋状のスリットを通じて平面的に拡散しながら流出する。なお、樹脂供給部10としては、硬質の管体に多数の孔やスリット等を設けたものでもよい。
このような樹脂供給部10を被成形体2の対向する辺のそれぞれの端縁部にその辺に略平行になるように設置する。そして、被成形体2の全体を真空フィルム13で覆い周囲をシール部材14でシールする。
【0026】
そして、FRPサンドイッチパネルを成形するに際しては、上記脱気部9を通じて被成形体2の中心線上から脱気し真空フィルム13の内部空間を真空状態にしながら、被成形体2の両側の端縁部に設けられた樹脂供給用スパイラルチューブ10a、10bから同時に樹脂を供給する。そうすると、被成形体2の端縁部のスパイラルチューブ10a、10bから供給された樹脂は、溝付き心材3の樹脂流通溝3aを通じて繊維強化布4a及び4bに浸透しながら、被成形体2の中心部に向かって流れていく。その際の樹脂浸透部の先端ラインはスパイラルチューブ10a、10bに平行に近いラインとなっている。
【0027】
被成形体2の中心線上には脱気部9ないし脱気バッグ9aが設けられており、脱気部9ないし脱気バッグ9aは上述のように空気等の気体は通過させるが水等の液体(樹脂)は通過させないように構成された防水通気性布9bと、この防水通気性布9bの上面に通気層9dとを設けたものであるので、被成形体2の両側から流れてきた樹脂は、中心線上で会合することになる。しかし、脱気部9ないし脱気バッグ9aの防水通気性布9bのために、空気のみが吸引され、樹脂は吸引されないため、両側からの樹脂が会合する線上に未含浸領域や、ボイド、含浸不足領域等は生じない。また、脱気部9ないし脱気バッグ9aは複数の溝付き心材3の突き合わせ部3bに沿って延在されているので、被成形体2の下面中心線上で会合した樹脂は、溝付き心材3の突き合わせ部3bの隙間を通じて上記脱気部9ないし脱気バッグ9aにより吸引されるため、上記同様に、下面における樹脂の会合線上に未含浸領域や、ボイド、含浸不足領域等は生じない。
【0028】
以上のように、本実施の形態によれば、次のような効果がある。
(1)例えば、四辺形の大型のパネルを成形する場合には、対向する長辺の両端縁部から同時に樹脂含浸を開始し、それら両端縁の中間線付近に脱気部9ないし脱気バッグ9aを配置することにより、未含浸領域の発生を防止することができる。その結果、樹脂の含浸距離は従来法に比べて半分程度ですみ、また含浸に必要な時間は1/4程度となり、製造時間の大幅な短縮が図れる。ちなみに従来法では含浸距離は5m程度であったが、本実施の形態では少なくともその2倍の10m以上にまで含浸距離を広げることが可能となる。
(2)含浸時間の短縮が図れる結果、粘度が高い樹脂や、ゲル化時間の短い樹脂を適用できるようになる。
(3)脱気ライン部分では心材の突き合わせ部を通して空気を吸引することができるので、被成形体2の下面に未含浸領域や、ボイド、含浸不足の領域が発生しない。
【0029】
実施の形態2.
図4は本発明の実施の形態2におけるFRP構造体の製造装置の概略構成を示す断面図で、図5は実施の形態2の脱気部の拡大断面図である。
この実施の形態2では、溝付き心材3の突き合わせ部3b付近にこの心材3を上下に貫通する貫通孔3cを設けた点と、脱気部9として、上述のように防水通気性の膜を有する布(防水通気性布)9bの中に通気メディア9eを包含する密閉された袋状の脱気バッグ9aを構成した点が上記の実施の形態1と相違するだけである。また、この脱気バッグ9aは、溝付き心材3の突き合わせ部3bに沿って心材3の貫通孔3c上に載置されている。その他の構成は実施の形態1と同じであるので同一の符号を用いるものとする。
【0030】
この実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を有する上に、脱気部9として防水通気性布9bを配置した部分に貫通孔3c付きの心材3を配したので、被成形体2の下面からの空気の通過経路を十分に確保できるため、未含浸領域や、ボイド、含浸不足の領域をより確実に防止することができるという効果が得られる。
【0031】
なお、以上の実施の形態1、2では、心材3と繊維強化布4a、4bとからなるFRPサンドイッチパネルを製造する例を説明したが、本発明は、サンドイッチ構造体だけでなく心材の片面に繊維強化布を設けたFRP構造体等にも広く適用することができる。この場合、心材には少なくとも一方の面に樹脂流通溝3aが形成してあればよい。
また、パネル形状は平面だけでなく凸または凹状に湾曲した形状にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 成形型
2 被成形体
3 心材
3a 溝(樹脂流通溝)
3b 突き合わせ部
3c 貫通孔
4a、4b 繊維強化布
5 ピールプライ
6 樹脂タンク
7 樹脂供給ホース
8 開閉弁
9 脱気部
9a 脱気バッグ
9b 防水通気性布
9c 脱気用スパイラルチューブ
9d 通気層
9e 通気メディア
9f 粘着テープ
10 樹脂供給部
10a、10b スパイラルチューブ
11 真空ホース
12a、12b 脱気用スパイラルチューブ
13 真空フィルム
14 シール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8