特許第5738087号(P5738087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5738087-イヤリング 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738087
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】イヤリング
(51)【国際特許分類】
   A44C 7/00 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   A44C7/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-137030(P2011-137030)
(22)【出願日】2011年6月21日
(65)【公開番号】特開2013-485(P2013-485A)
(43)【公開日】2013年1月7日
【審査請求日】2014年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】511151086
【氏名又は名称】武市 知子
(74)【代理人】
【識別番号】100094363
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 孝久
(72)【発明者】
【氏名】武市 知子
【審査官】 大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−19528(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3046743(JP,U)
【文献】 米国特許第4704878(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0332370(EP,A1)
【文献】 米国特許第2669102(US,A)
【文献】 登録実用新案第3033557(JP,U)
【文献】 実開平6−81317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属線材から成り、
金属線材は、
第1仮想平面内を、金属線材の一端から、第1仮想平面内を螺旋状に外方に向かって3/4回転を越えて概ね最下点まで延びる第1の部分、
第1仮想平面と90度±20度の範囲内で交わる第2仮想平面内を上方に、且つ、第1仮想平面から離れる方向に、第1の部分から延びる第2の部分、並びに、
第2仮想平面内を、第1仮想平面に近づく方向に、第2の部分から螺旋状に内方に向かって延び、1/2回転を越えて終端する第3の部分、
から構成され、
第1仮想平面内に位置する金属線材の第1の部分、及び、第3の部分の第1仮想平面に最も近づいた部分によって、耳たぶを挟むことを特徴とするイヤリング。
【請求項2】
金属線材の一端には係止部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のイヤリング。
【請求項3】
係止部は装飾部材から成ることを特徴とする請求項2に記載のイヤリング。
【請求項4】
金属線材の第1の部分と第2の部分の接続部分は滑らかな曲線で結ばれていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のイヤリング。
【請求項5】
金属線材の第1の部分と第2の部分の接続部分を第2仮想平面に投影したとき得られる形状は環状の形状であることを特徴とする請求項4に記載のイヤリング。
【請求項6】
金属線材の第1の部分と第2の部分の接続部分には宝飾品が配されていることを特徴とする請求項5に記載のイヤリング。
【請求項7】
金属線材の第2の部分は滑らかな曲線から構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のイヤリング。
【請求項8】
金属線材は、アレルギーフリーの医療用ステンレス鋼から成ることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のイヤリング。
【請求項9】
金属線材の第1の部分が耳たぶの外側に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のイヤリング。
【請求項10】
金属線材の第3の部分が耳たぶの外側に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のイヤリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ式のイヤリングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のねじ式のイヤリングにあっては、ねじ(あるいはねじの付いた留め金)で耳たぶを挟むことでイヤリングを耳たぶに装着する。従って、使用者は、装着時の不快感や、圧迫感、痛み等を、屡々、感じる場合がある。それ故、近年、ピアス式のイヤリングの需要が増えている。特に、装飾部を取り外し可能なピアス式のイヤリングは、使用者が、自身で自由に装飾部を交換することができ、便利であるし、ファッション的にも非常にバリエーションが広がる。しかしながら、往来のピアス式のイヤリングの装着のためには、耳たぶへの穴開けが必要とされ、抵抗感を感じる者も多い。また、何らかの理由によって、耳たぶに穴あけができない場合もある。
【0003】
このような問題を解決するためのイヤリングとして、金属線材を折り曲げることで作製され、金属線材の弾性を利用して耳たぶを挟み付けるクリップ式のイヤリングが、周知である。例えば、実開平6−081317には、U字状に形成した金属製の弾性線材の凹部に、弾性線材を巻回した小ループを形成し、また、弾性線材の両端にはそれぞれ装飾体を取り付けたクリップ式のイヤリングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−081317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この実用新案出願公開公報に開示されたイヤリングにあっては、2つの装飾体3,4で耳たぶを挟むので、耳たぶの表側及び裏側のそれぞれにおいて一点で耳たぶを挟むことになる。それ故、使用者が長時間装着したとき、圧迫感や痛みを感じるといった問題があるし、腫れやしこり等の原因となる場合もあり得る。また、バチカン5を用いてイヤリングに装飾体7を取り付けるので、装飾体7を自由に交換することは困難である。
【0006】
従って、本発明の目的は、使用者が装着したとき、圧迫感等の痛みを感じ難く、しかも、所望に応じて、宝飾品を使用者が自由に交換することが可能なイヤリングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明のイヤリングは、
金属線材から成り、
金属線材は、
第1仮想平面内を、金属線材の一端から、第1仮想平面内を螺旋状に外方に向かって3/4回転を越えて概ね最下点まで延びる第1の部分、
概ね90度捻られ、第2仮想平面内を上方に、且つ、第1仮想平面から離れる方向に、第1の部分から延びる第2の部分、並びに、
第2仮想平面内を、第1仮想平面に近づく方向に、第2の部分から螺旋状に内方に向かって延び、1/2回転を越えて終端する第3の部分、
から構成され、
第1仮想平面内に位置する金属線材の第1の部分、及び、第3の部分の第1仮想平面に最も近づいた部分によって、耳たぶを挟むことを特徴とする。
【0008】
尚、第1の部分は、金属線材の一端から3/4回転を越えて概ね最下点まで延びるが、この状態として、第1の部分が、その端部から垂直方向下方に延び始めて、例えば、1回転あるいは2回転して延びる状態、その端部から斜めに延び始めて、3/4回転を越えて状態を挙げることができる。概ね最下点とは、最下点から±1/8回転分ずれた位置で第1の部分が終わってもよいことを意味する。また、第2の部分は、第1の部分に対して概ね90度捻られるが、この状態は、第2の部分が、第1の部分に対して90度±20度の範囲内で捻られる状態を包含している。即ち、第1仮想平面と第2仮想平面とは、90度±20度の範囲内で交わる状態を包含している。更には、第3の部分は、1/2回転を越えて終端すればよく、例えば、3/4回転あるいは1回転して終端する状態を挙げることができる。また、第1の部分は第1仮想平面に含まれ、第2の部分及び第3の部分は第2仮想平面に含まれているが、第1仮想平面及び第2仮想平面として、或る厚さのある空間を想定している。即ち、第1仮想平面及び第2仮想平面として、或る程度、波打った仮想平面を想定している。
【0009】
本発明のイヤリングにおいて、金属線材の一端には係止部が設けられている形態とすることができ、この場合、係止部は、各種の装飾部材から成る構成とすることができる。
【0010】
上記の好ましい形態、構成を含む本発明のイヤリングにおいて、金属線材の第1の部分と第2の部分の接続部分は滑らかな曲線で結ばれていることが好ましく、金属線材の第1の部分と第2の部分の接続部分を第2仮想平面に投影したとき得られる形状は環状の形状であることが、より好ましい。そして、この場合、金属線材の第1の部分と第2の部分の接続部分には宝飾品が配されている形態とすることができる。ここで、宝飾品として、具体的には、各種宝石や所謂チャームを挙げることができる。宝飾品は、金属線材の第3の部分の端部から挿入すればよい。
【0011】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明のイヤリングにおいて、金属線材の第2の部分は滑らかな曲線から構成されている形態とすることができる。
【0012】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明のイヤリングにおいて、金属線材は、アレルギーフリーの医療用ステンレス鋼から成ることが好ましく、具体的には、例えば、銅18%、マンガン18%、モリブデン1%、ニッケル1%を含むメンザニウム(MENZANIUM)を例示することができる。尚、金属線材は、金属から作製されているだけでなく、このように、合金から作製されていてもよい。
【0013】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本発明のイヤリングにおいて、金属線材の第1の部分が耳たぶの外側に位置するといった形態であってもよいし、金属線材の第3の部分が耳たぶの外側に位置するといった形態であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のイヤリングにあっては、第1仮想平面内に位置する金属線材の第1の部分、及び、第3の部分の第1仮想平面に最も近づいた部分によって、耳たぶを挟むので、力の分散が図られ、耳たぶを圧迫する点が一点に集中せず、使用者が装着したとき、圧迫感や痛みを感じ難い。しかも、螺旋形状による接触面を広げた構造を有するが故に、圧迫感を和らげるだけでなく、耳たぶとの密着性を高めることができ、安定した装着を可能にする。また、所望に応じて、第3の部分の端部から第1の部分と第2の部分の接続部分へと、使用者が自由に宝飾品を配することができ、所望の宝飾品を自由に交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1の(A)、(B)、(C)及び(D)は、実施例1のイヤリングの模式図である。
図2図2の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)は、実施例1のイヤリングの第1の部分、第2の部分、第3の部分を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
実施例1は、本発明のイヤリングに関する。図1の(A)には、実施例1のイヤリングの模式的な正面図を示し、図1の(B)には、実施例1のイヤリングの模式的な右側面図を示し、図1の(C)には、実施例1のイヤリングを使用している状態を模式的な右側面図で示す。更には、図2の(A)及び(B)に、実施例1のイヤリングの第1の部分を説明するための模式的な正面図及び右側面図を示し、図2の(C)及び(D)に、実施例1のイヤリングの第2の部分を説明するための模式的な正面図及び右側面図を示し、図2の(E)及び(F)に、実施例1のイヤリングの第3の部分を説明するための模式的な正面図及び右側面図を示す。尚、図2の(A)及び(B)にあっては、第1の部分を実線で示し、その他の部分を点線で示す。また、図2の(C)及び(D)にあっては、第2の部分を実線で示し、その他の部分を点線で示す。更には、図2の(E)及び(F)にあっては、第3の部分を実線で示し、その他の部分を点線で示す。ここで、図1に示したイヤリングと鏡像に関係にあるイヤリングとの一対(右耳用イヤリング及び左耳用イヤリング)が、実際の使用に供される。
【0018】
実施例1のイヤリングは、金属線材10、具体的には、弾性と硬度に富む特殊なアレルギーフリーの医療用ステンレス鋼、より具体的には、メンザニウム(MENZANIUM)から製造された線材から成る。そして、金属線材10は、第1の部分11、第1の部分11から連続した第2の部分12、及び、第2の部分12から連続した第3の部分13から構成され、第3の部分13で終端している。即ち、実施例1のイヤリングは、接続部がない1本の金属線材から構成されている。
【0019】
ここで、第1の部分11は、図1の(A)及び(B)、並びに、図2の(A)及び(B)に示すように、金属線材10の一端から、第1仮想平面内を螺旋状に外方に向かって3/4回転を越えて概ね最下点まで延びる。尚、第1仮想平面は、図1の(A)にあっては紙面が該当し、図1の(B)にあっては紙面に垂直な面が該当する。実施例1にあっては、より具体的には、第1の部分11は、その端部から垂直方向下方に延び始めて、第1仮想平面内を螺旋状に外方に向かって延び続け、1回転して最下点まで延びている。また、第2の部分12は、図1の(A)及び(B)、並びに、図2の(C)及び(D)に示すように、第1の部分11に対して、概ね90度捻られ、第2仮想平面内を上方に、且つ、第1仮想平面から離れる方向に、第1の部分11から延びる。尚、第2仮想平面は、図1の(B)にあっては紙面が該当し、図1の(A)にあっては紙面に垂直な面が該当する。より具体的には、実施例1にあっては、第2の部分12は、第1の部分11に対して、90度捻られている。尚、第1仮想平面と第2仮想平面とは、概ね90度(実施例1にあっては90度)にて交わっている。更には、第3の部分13は、図1の(A)及び(B)、並びに、図2の(E)及び(F)に示すように、第2仮想平面内を、第1仮想平面に近づく方向に、第2の部分12から螺旋状に内方に向かって延び、1/2回転を越えて、実施例1においては3/4回転して、終端する。第1の部分11及び第3の部分13は、例えば、クロソイド曲線に類似した曲線を描いている。
【0020】
そして、図1の(C)に示すように、第1仮想平面内に位置する金属線材10の第1の部分11、及び、第3の部分13の第1仮想平面に最も近づいた部分13Aによって、耳たぶを挟む。
【0021】
実施例1のイヤリングにおいて、金属線材10の一端には係止部20、具体的には、装飾部材から成る係止部20が設けられている。ここで、装飾部材は、例えば、真珠から構成されている。より具体的には、係止部20に穴を開け、金属線材10の第1の部分11の端部をこの穴に挿入し、接着剤で固定すればよい。係止部20の大きさ、素材、形、色等は、任意に選択することができるが、係止部20を設けることで、装飾だけでなく、金属線材10の先端部と皮膚や耳たぶとの直接的な接触を防ぎ、安全性を高め、しかも、耳たぶとの密着の安定化を図ることができる。
【0022】
金属線材10の第1の部分11と第2の部分12の接続部分(折返し部)14は、滑らかな曲線で結ばれている。ここで、金属線材10の第1の部分11と第2の部分12の接続部分(折返し部)14を第2仮想平面に投影したとき得られる形状は、閉じた環状である(図1の(B)参照)。即ち、金属線材10の第1の部分11と第2の部分12の接続部分(折返し部)14にあっては、金属線材10は、小さなループ状に巻き回されており、しかも、概ね90度捻られている。また、金属線材10の第2の部分12は、滑らかな曲線、例えば、円弧に類似した2つの曲線の組合せから構成されている(図1の(B)参照)。
【0023】
実施例1のイヤリングの使用にあっては、金属線材の第1の部分11が耳たぶの外側に位置するといった使用形態とすることができる。この状態にあっては、図1の(C)において、第3の部分13の右側に使用者の頭部が位置する。あるいは又、金属線材の第3の部分13が耳たぶの外側に位置するするといった使用形態とすることもできる。この状態にあっては、図1の(C)において、第1の部分11の左側に使用者の頭部が位置する。このような使用形態によって、1つのイヤリングに2つのデザイン性を付与することができる。

【0024】
実施例1のイヤリングは、第1仮想平面内に位置する金属線材10の第1の部分11と、第3の部分13の第1仮想平面に最も近づいた部分13Aとの間の隙間を適度に広げ、この隙間に外耳(耳介、耳殻)の軟骨部を挿入し、イヤリングを下方に耳たぶまでスライドさせることで、イヤリングを耳たぶに装着することができる。尚、金属線材の硬度と弾性により、装着時に隙間を広げても、容易に元に戻る。イヤリングを取り外す際には、そのまま、耳たぶより下方に引き抜けばよい。そして、使用者に応じて、例えば、この隙間の広狭、イヤリング全体の大きさの最適化を図ればよい。
【0025】
実施例1のイヤリングの装着にあっては金属線材10の弾性を利用してはいるが、イヤリングそれ自身は、耳たぶの厚さに適応した状態を保っている。そのため、耳たぶへの圧迫感が殆ど無く、金属線材10の適度な弾性と耳たぶの弾力とによって、耳たぶへのイヤリングの装着、固定を確実に行うことができる。そして、第1仮想平面内に位置する金属線材10の第1の部分11、及び、第3の部分13の第1仮想平面に最も近づいた部分13Aによって、耳たぶを挟むので、使用者が装着したとき、圧迫感や痛みを感じ難い。また、金属線材の曲げ具合により、多様なデザインが可能である。しかも、耳たぶに穴を開けることなく、ピアスを装着したような外観を与えることができる。
【実施例2】
【0026】
実施例2は実施例1の変形である。実施例2にあっては、模式的な右側面図を図1の(D)に示すように、金属線材10の第1の部分11と第2の部分12の接続部分(折返し部)14には、宝飾品21が、例えば鎖22を介して配されている。宝飾品21として、例えば、真珠を挙げることができる。第3の部分13の端部15から第3の部分13へと鎖22を挿入し、鎖22を接続部分14まで移動させることで、簡単に、しかも、自由に、多種多様の宝飾品21をイヤリングに配することができる。以上の点を除き、実施例2のイヤリングは、実施例1にて説明したイヤリングと同様の構成、構造とすることができるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例にて説明したイヤリングの具体的な形状、材質等は例示であり、適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0028】
10・・・金属線材、11・・・第1の部分、12・・・第2の部分、13・・・第3の部分、13A・・・第3の部分の第1仮想平面に最も近づいた部分、14・・・接続部分(折返し部)、15・・・第3の部分の端部、20・・・係止部、21・・・宝飾品、
22・・・鎖
図1
図2