(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738094
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653A
H01L29/78 652G
H01L29/78 652B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-145895(P2011-145895)
(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公開番号】特開2012-84846(P2012-84846A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2014年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-205698(P2010-205698)
(32)【優先日】2010年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】小林 直人
【審査官】
行武 哲太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−103764(JP,A)
【文献】
特開平9−321303(JP,A)
【文献】
特開2010−34285(JP,A)
【文献】
特開平4−17371(JP,A)
【文献】
特開2001−77362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の表面にチャネル層を形成する工程と、
前記半導体基板の表面にシリコン窒化膜および第一のシリコン酸化膜を順に形成し、前記チャネル層を覆う前記シリコン窒化膜および前記第一のシリコン酸化膜に、トレンチを形成するための開口を設ける工程と、
前記シリコン窒化膜および前記第一のシリコン酸化膜をマスクとして、前記開口の位置に前記半導体基板の表面から前記チャネル層よりも深いトレンチを形成する工程と、
前記シリコン窒化膜を残して前記第一のシリコン酸化膜を除去する工程と、
前記シリコン窒化膜をマスクとして、前記半導体基板の表面に第二のシリコン酸化膜を形成しないで前記トレンチの側面にゲート酸化膜となる前記第二のシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記トレンチを埋め込むように前記シリコン窒化膜表面にゲート電極材料を堆積した後、前記シリコン窒化膜をマスクとして前記シリコン窒化膜上にある前記ゲート電極材料を除去し、上端面が後にソース領域となる前記チャネル層の表面よりも上となるように前記トレンチ内にゲート電極を形成する工程と、
前記シリコン窒化膜を除去した後、前記トレンチの周囲に前記チャネル層と逆導電型のソース領域を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板の表面にチャネル層を形成する工程と、
前記半導体基板の表面にシリコン窒化膜および第一のシリコン酸化膜を順に形成し、前記チャネル層を覆う前記シリコン窒化膜および前記第一のシリコン酸化膜に、トレンチを形成するための開口を設ける工程と、
前記シリコン窒化膜および前記第一のシリコン酸化膜をマスクとして、前記開口の位置に前記半導体基板の表面から前記チャネル層よりも深いトレンチを形成する工程と、
前記シリコン窒化膜を残して前記第一のシリコン酸化膜を除去する工程と、
前記シリコン窒化膜をマスクとして、前記半導体基板の表面に第二のシリコン酸化膜を形成しないで前記トレンチの側面にゲート酸化膜となる前記第二のシリコン酸化膜を形成する工程と、
前記トレンチを埋め込むように前記シリコン窒化膜表面にゲート電極材料を堆積した後、前記シリコン窒化膜をマスクとして前記シリコン窒化膜上にある前記ゲート電極材料を除去し、上端面が後にソース領域となる前記チャネル領域の表面よりも上となるように前記トレンチ内にゲート電極を形成する工程と、
前記トレンチの周囲に前記チャネル層と逆導電型のソース領域を形成した後、前記ゲート電極の上端面が前記ソース領域の表面よりも上となっている状態を保ったまま前記シリコン窒化膜を除去する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、特にトレンチ構造を有する縦型MOSFETの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
縦型MOSFETには、いわゆるプレーナー型とトレンチ型がある。トレンチ内にゲート電極を埋め込んだ構造のトレンチ型は、構造的に低オン抵抗特性を得やすいことから、実用化が進んでいる。このようなトレンチ型構造を持つ縦型MOSFETの構造や製造工程に関しては、例えば以下に示した特許文献1や特許文献2などで開示されている。
【0003】
従来の縦型MOSFETの構造を2例説明する。以下の説明でNのあとに記載された−、+、++等の記号は含有される不純物の相対的な濃度の大きさを表し、−、+、++の順で濃度が高くなる。
図2(a)に示す構造は、P型シリコン基板1上にN+埋め込み層2が形成され、さらにシリコン基板1上にP型シリコン層3が形成されている。P型シリコン層3には、N+埋め込み層2に到達するようにN−型ドレイン層4が、さらにN−型ドレイン層4の内側にP型ウェル層5が拡散等で形成され、さらに縦型MOSFETの表面外周部、およびN++型ドレイン領域12以外の部分に絶縁膜6が形成されている。トレンチ7はP型ウェル層5の表面から、P型ウェル層5を超えてN−型ドレイン層4に達する深さに形成され、トレンチ内部にはゲート酸化膜8を介してゲート電極9が埋設されている。そしてN++型ソース領域11が、P型ウェル層5とトレンチ7に隣接する部分に設けられ、さらにN++型ドレイン領域12が、N−型ドレイン層の表面に設けられている。一方、
図2(b)に示す2例目の構造は、ゲート電極9がトレンチ7から張り出す構造となっている。さらにトレンチ7の上端角部がチャネルとなることを避けるため、N型ソース領域10をゲート電極9の張り出し部の下に形成している点で、
図2(a)と異なる。
【0004】
ここで、縦型MOSFETの動作について簡単に説明する。ドレイン領域12とソース領域10との間に順バイアスをかけた状態において、ゲート電極9に閾値以上の所定の電圧を与えると、P型ウェル層5内にトレンチ7に沿ってN型のチャネルが形成され、ソース・ドレイン間に電流が流れる。トレンチ7に沿って縦型にチャネルができることから、プレーナー型の縦型MOSFETと比較して、単位面積あたりのチャネル幅を格段に長くできるため、そのオン抵抗を小さくすることができるという利点がある。
【0005】
次に、縦型MOSFETの製造方法の概略について、
図2(a)の場合で説明する。まずP型シリコン基板1を準備し、縦型MOSFETの領域となる部分にN+埋め込み層2を例えばイオン注入等により形成し、さらにシリコン基板1上にP型シリコン層3を例えばエピタキシャル成長等で形成する。次に、MOSFETの領域となる部分にN−型ドレイン層4、およびN−型ドレイン層4の内側にP型ウェル層5を、それぞれイオン注入法や熱拡散により形成する。次に、ゲート電極の領域となる部分に、P型ウェル層5からN−型ドレイン層4の深さに達するトレンチ7を形成する。そしてトレンチ13の内部にゲート酸化膜8を形成し、多結晶シリコン膜を全面に被着して、エッチバックすることによりトレンチ7に埋設したゲート電極9を形成する。そして、ホトリソグラフィによって、P型ウェル層5とトレンチ7に隣接する部分、およびN−型ドレイン層の表面の一部を開口し、N型不純物をイオン注入するなどして、N++型ソース領域11およびN++型ドレイン領域12を形成する。そして、P型シリコン層3上に絶縁膜を堆積し、ソース領域11およびドレイン領域12およびゲート電極9上にコンタクトホールを設け、さらにコンタクトホール上に金属電極を設け、縦型MOSFETの主要な構造が出来上がる。
【0006】
一方、
図2(b)では、多結晶シリコンを被着する前にN型ソース領域10を形成し、さらに多結晶シリコンを被着した後に、ホトリソグラフィによってゲート電極9以外の領域を開口した状態でエッチングすることにより、ゲート電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−359294号公報
【特許文献2】特開平11−103052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図2(a)に示した構造において、多結晶シリコン膜を全面に被着してエッチバックすることにより、トレンチ7に埋設したゲート電極9を形成しているが、N++型ソース層11の深さよりも深くゲート電極9がエッチバックされた場合、ゲート電極9の上端がソース領域11の下端から離れるため、縦型MOSFETが動作しなくなる。このため、特許文献2では、トレンチ側面のゲート上端部にN++型ソース領域を形成することでこの問題を解決している。しかし、この方法では、エッチバックのばらつきが、そのままMOSFETのチャネル長の変化となるため、製造歩留まりの低下が懸念される。
【0009】
一方
図2(b)の構造では、前者のようなエッチングプロセスのばらつきの影響を受けないという利点がある。しかし、前者に比べ製造工程は増加し、素子面積は拡大するので、チップあたりの単価が上がり、コストの問題となる。
【0010】
本発明は、製造工程を増やすことなく、安定したプロセス処理が可能な縦型MOSFETを有する半導体装置およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は半導体装置の製造方法において、半導体基板の表面にチャネル層を形成する工程と、前記半導体基板の表面にシリコン窒化膜および第一のシリコン酸化膜を順に形成し、前記チャネル層を覆う前記シリコン窒化膜および前記第一のシリコン酸化膜に、トレンチを形成するための開口を設ける工程と、前記シリコン窒化膜および前記第一のシリコン酸化膜をマスクとして、前記開口の位置に前記半導体基板の表面から前記チャネル層よりも深いトレンチを形成する工程と、前記シリコン窒化膜を残して前記第一のシリコン酸化膜を除去する工程と、前記シリコン窒化膜をマスクとして、前記トレンチの側面にゲート酸化膜となる第二のシリコン酸化膜を形成する工程と、前記トレンチを埋め込むように前記シリコン窒化膜表面にゲート電極材料を堆積した後、前記シリコン窒化膜をマスクとして前記シリコン窒化膜上にある前記ゲート電極材料を除去し、上端面が後にソース領域となる前記チャネル領域の表面よりも上となるように前記トレンチ内にゲート電極を形成する工程と、前記シリコン窒化膜を除去した後、前記トレンチの周囲に前記チャネル層と逆導電型のソース領域を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、ゲート電極形成とシリコン窒化膜の除去との間に、ソース領域を形成することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、トレンチ構造を有する縦型MOSFETを含む半導体装置において、第1導電型の半導体基板上に設けられた第2導電型のチャネル層と、前記チャネル層の表面から前記チャネル層を貫通して設けられたトレンチと、前記トレンチ内壁面に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜を介して前記トレンチ内に充填されたゲート電極と、前記トレンチの周囲に配置されたソース領域と、から成り、前記ゲート電極の上端面が後にソース領域となる前記チャネル層の表面よりも上にあるとともに、前記ゲート電極の上端部の側面が、前記トレンチ内の前記ゲート電極の側面と略同一形状を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、半導体基板の表面にトレンチを形成するためのシリコン窒化膜を残したまま、トレンチ内をゲート電極材料で埋設した後、シリコン窒化膜上にあるゲート電極材料を除去し、トレンチ内にゲート電極を形成する。これにより、ゲート電極材料を除去する際に、シリコン窒化膜の膜厚分までのオーバーエッチングであれば、ゲート電極材料の上端部が半導体基板の表面を下回ることがなくなる。そのため、ゲート電極材料のエッチングプロセスによる半導体装置の特性ばらつきは改善される。また、本発明の製造工程によれば、ゲート電極上部の形状をトレンチ幅より長くとったT字型ではなく、トレンチ幅のままにしたI字型にできるため、素子面積を小さくすることができるだけでなく、T字型とするためのホトリソグラフィが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)乃至(h)は、本発明の第一の実施例のトレンチゲート型MOSFETの製造工程を示す概略断面図である。
【
図2】(a)および(b)は、従来のトレンチゲート型MOSFETの断面構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る半導体装置およびその製造方法を実施例に即して説明する。
図1(a)乃至(h)は、本発明の第一の実施例にかかる半導体装置の製造工程を示した概略断面図である。
【0017】
図1(a)は本発明に係る半導体装置の概略断面図であり、ある程度製造工程を経た状態を示している。P型シリコン基板1上にN+埋め込み層2を形成し、さらに基板1上にP型シリコン層3をエピタキシャル成長により形成する。また、P型シリコン層3の表面から、N+埋め込み層2に到達するようにN+埋め込み層2よりも低濃度のN−型ドレイン層4を熱拡散等で形成し、さらにN−型ドレイン層4の内側にP型ウェル層(P型チャネル層)5を形成する。また、縦型MOSFETのトレンチおよびソース領域の外側となる表面外周部にはN++型ドレイン領域となる部分を除いた部分に絶縁膜6を形成する。図では絶縁膜6はシャロートレンチによる絶縁膜としているが、これに限るものではなく、LOCOS法により形成される絶縁膜でもよいことは言うまでもない。
【0018】
続いて、
図1(b)のように、シリコン基板1の表面に、順に約100nmのシリコン窒化膜13と約200nmのシリコン酸化膜14を堆積した後、ホトリソグラフィおよびエッチングを用いて、トレンチとなる部分のみを開口したシリコン窒化膜とシリコン酸化膜から成るパターンを形成する。このパターンをマスクに、基板1の表面からP型チャネル層5を超えるまでシリコンをエッチングにより除去し、約1μm幅のトレンチ7を形成する。
【0019】
続いて、
図1(c)のように、シリコン窒化膜13を残して、シリコン酸化膜パターン14を除去した後、熱酸化によりトレンチ側面にゲート酸化膜となるシリコン酸化膜8を約20〜100nmの厚さとなるように形成する。このときにトレンチ以外のシリコン基板の表面はシリコン窒化膜13に覆われているので酸化膜が形成されることはない。トレンチ側面だけにシリコン酸化膜8が形成される。
【0020】
続いて、
図1(d)のように、ゲート電極材料である不純物をドープしたポリシリコン膜9を、トレンチ7が完全に埋め込まれるまで堆積する。同時にシリコン基板の表面全体がポリシリコン膜9により覆われる。
【0021】
そして、
図1(e)のように、トレンチ領域にのみポリシリコン膜を残してゲート電極とするために、等方性または異方性のガスエッチングにより、シリコン窒化膜13の表面上に堆積されたポリシリコン膜を除去する。このとき、トレンチ上のポリシリコン膜もエッチングされることになるが、シリコン窒化膜の厚さ100nm未満のポリシリコン膜のオーバーエッチングであれば、ポリシリコン膜の上端面をP型チャネル層5の表面(もとのP型エピタキシャル層3の表面)よりも上にすることができる。つまり、
図2(a)を用いて説明した、エッチバックによってチャネル長が変化し、製造歩留まりが低下する問題が解決される。さらに、シリコン窒化膜13とトレンチ7の開口部は略同一であるため、ゲート電極形成時のホトリソグラフィ工程が不要であることに加え、
図2(b)を用いて説明したように、ゲート電極上部の形状をトレンチ幅より長くとったT字型ではなく、ゲート電極上部までトレンチ幅のままにしたI字型であることにより、素子面積を小さくすることが可能である。
【0022】
続いて、
図1(f)のように、シリコン窒化膜を除去した後、
図1(g)のように、ホトリソグラフィにより、N++型ドレイン領域12、N++型ソース領域11をイオン注入等により形成する。ここで、N++型ドレイン領域12、N++型ソース領域11は、シリコン窒化膜を除去する前に形成しても良い。
【0023】
最後に、
図1(h)のように、層間絶縁層として、シリコン基板1の表面に約1000nmのリンガラス層15を形成し、所定のパターニングを行い、コンタクト孔を開孔する。そして、その上にアルミ等の金属膜を堆積し所定のパターニングを行い、金属電極16を形成することにより、本発明に係るトレンチゲート型MOSFETが得られる。
【0024】
なお、本発明は、Nチャネルのトレンチゲート型MOSFETについての例を示したが、他の構造のトレンチゲート型MOSFETやIGBTにも適用可能である。以上に説明したものは本発明の一実施の形態に過ぎないものであり、本発明の趣旨を逸脱することなく、この他にも種々の変形した実施の形態が考えられることは勿論のことである。
【符号の説明】
【0025】
1 P型シリコン基板
2 N+型埋め込み層
3 P型シリコン層
4 N−型ドレイン層
5 P型ウェル層(P型チャネル層)
6 フィールド絶縁膜
7 トレンチ
8 ゲート絶縁膜
9 ゲート電極
10 N型ソース領域
11 N++型ソース領域
12 N++型ドレイン領域
13 シリコン窒化膜
14 シリコン酸化膜
15 リンガラス層
16 金属電極