【実施例】
【0112】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
【0113】
各実施例及び比較例において、触媒活性は以下の式
【数1】
により算出した。ただし、比較例6では式中の「パラジウムのモル数」を「ニッケルのモル数」とした。
得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、ポリスチレンを標準物質として用いたゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)により求めた。また、共重合体中のノルボルネンと5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの組成比は、
1H−NMRにより得られたピーク[δ:3.5−4.5ppm,5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(「ANB」と略す。)の「−COOCH
2−」ユニット]と[δ:0.5−3.0ppm,ノルボルネン(「NB」と略す。)及び5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの「CH
3COO−」、「−CH
2−」及び「−CH=」ユニット]の積分比から求め、ANB含有率は以下の式
【数2】
より算出した。
【0114】
実施例及び比較例で合成した物質の諸物性は、以下の通りに測定した。
1.
1H−NMR,
13C−NMR
使用機種:JEOL EX−400(400MHz,日本電子社製)、
測定方法:重水素化クロロホルムに溶解し、内部標準物質にテトラメチルシランを使用して測定した。
2.FT−IR
使用機種
システム:Spectrum GX(パーキンエルマー社製)、
ATR:MIRacleTM(Pike Technologies社製)。
測定方法
1回反射ATR法により測定した。
【0115】
3.ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)
使用機種
カラム:Shodex GPC K−G+KF−806L×2(昭和電工社製)、
検出器:Shodex SE−61(昭和電工社製)。
測定条件
溶媒:テトラヒドロフラン、
測定温度:40℃、
流速:1.0ml/分、
試料濃度:1.0mg/ml、
注入量:1.0μl、
検量線:Universal Calibration curve、
解析プログラム:SIC 480II (システム インスツルメンツ社製)。
【0116】
また、シクロペンタジエニル(π−アリル)パラジウムは、Shawらの合成法(Shaw.B.L.,Proc.Chem.Soc.,1960,247)に従って合成した。
【0117】
合成例1:2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの合成
10Lのステンレス製オートクレーブにジシクロペンタジエン(東京化成工業社製,759.80g,5.747mol)、酢酸アリル(東京化成工業社製,1457.86g,14.561mol)及びヒドロキノン(和光純薬工業社製,2.25g,0.0204mol)を加えた。系内を窒素
ガスで置換した後、500rpmで撹拌しながら、このオートクレーブを190℃まで昇温し、5時間反応させた。反応終了後、オートクレーブを室温まで冷却し、内容物を蒸留装置に移し、減圧下に蒸留を行い、0.07kPa、48℃の留分として、無色透明液状物1306.70gを得た。
得られた液状物の
1H−NMRを測定し、目的の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンであることを確認した。また、得られた2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンのエキソ異性体とエンド異性体のモル比率はエキソ/エンド=18/82であった。
【0118】
合成例2:2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノールの合成
一口フラスコに、サリチルアルデヒド(東京化成工業社製,2.00g,16.4mmol)、2,6−ジイソプロピルアニリン(東京化成工業社製,3.12g,17.6mmol)、エタノール(和光純薬工業社製,20ml)、ギ酸(和光純薬工業社製,305mg,6.63mmol)を加え、撹拌しながら、室温で一日反応を行った。析出物をろ別し、メタノールから再結晶を行って黄色結晶1.79gを得た。得られた結晶の
1H−NMR及び
13C−NMRを測定し、2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノールであることを確認した。
【0119】
合成例3:2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−4−フルオロフェノールの合成
一口フラスコに、5−フルオロサリチルアルデヒド(東京化成工業社製,2.01g,14.3mmol)、2,6−ジイソプロピルアニリン(東京化成工業社製,2.82g,15.9mmol)、エタノール(和光純薬工業社製,20ml)、ギ酸(和光純薬工業社製,305mg,6.63mmol)を加え、撹拌しながら、室温で一日反応を行った。析出物をろ別し、メタノールから再結晶を行って黄色結晶2.10gを得た。得られた結晶の
1H−NMR及び
13C−NMRを測定し、2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−4−フルオロフェノールであることを確認した。
【0120】
合成例4:2−(N−フェニルイミノメチル)フェノールの合成
一口フラスコに、サリチルアルデヒド(東京化成工業社製,2.00g,16.4mmol)、アニリン(和光純薬工業社製,1.70g,18.4mmol)、エタノール(和光純薬工業社製,20ml)、ギ酸(和光純薬工業社製,305mg,6.63mmol)を加え、撹拌しながら、室温で一日反応を行った。析出物をろ別し、n−ヘキサンから再結晶を行って黄色結晶1.36gを得た。得られた結晶の
1H−NMR及び
13C−NMRを測定し、2−(N−フェニルイミノメチル)フェノールであることを確認した。
【0121】
合成例5:2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−6−メチルフェノールの合成
一口フラスコに、6−メチルサリチルアルデヒド(Aldrich社製,881mg,6.47mmol)、2,6−ジイソプロピルアニリン(東京化成工業社製,1.15g,6.49mmol)、エタノール(和光純薬工業社製,10ml)、ギ酸(和光純薬工業社製,159mg,3.45mmol)を加え、撹拌しながら、室温で一日反応を行った。析出物をろ別し、エタノールから再結晶を行って黄色結晶1.31gを得た。得られた結晶の
1H−NMR及び
13C−NMRを測定し、2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−6−メチルフェノールであることを確認した。
【0122】
実施例1:(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1]の合成
【化21】
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これに合成例2で調製した2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノール(506mg,1.80mmol)を仕込み、脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて溶解した。これを、ドライアイス−エタノール浴に漬けて−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムの1.6mol/lヘキサン溶液(和光純薬工業社製,1.14ml,1.82mmol)を5分かけてゆっくりと滴下し、滴下終了後、徐々に室温に戻した。
別途用意した三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これにアリルパラジウムクロリドダイマー(和光純薬工業社製,305mg,0.834mmol)を仕込み、脱水ジクロロメタン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて溶解した。
この溶液を氷浴に漬けて0℃に冷却し、これに先に調製したテトラヒドロフラン/ヘキサン混合溶液を5分間かけてゆっくりと滴下し、0℃で2時間反応を行った。その後、減圧下に溶媒を完全に留去し、あらためて脱水トルエン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて撹拌した後、窒素下に遠心分離を行って、不要な塩を取り除き、上澄みのトルエン溶液を回収した。この溶液より減圧下に濃縮し、再結晶を行って、黄色結晶356mgを得た。得られた結晶の
1H−NMR、
13C−NMR及びIRスペクトル測定を行い、(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1]であることを確認した。
1H−NMRスペクトルを
図1、
13C−NMRスペクトルを
図2に示す。
【0123】
実施例2:(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−4−フルオロフェノラト}パラジウム[錯体A−2]の合成
【化22】
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これに合成例3で調製した2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−4−フルオロフェノール(503mg,1.68mmol)を仕込み、脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製,10ml)を加えて溶解した。これを、ドライアイス−エタノール浴に漬けて−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムの1.6mol/lヘキサン溶液(和光純薬工業社製,1.10ml、1.76mmol)を5分かけてゆっくりと滴下し、滴下終了後、−78℃で15分間撹拌した後、徐々に室温に戻した。
別途用意した三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これにアリルパラジウムクロリドダイマー(和光純薬工業社製,301mg,0.823mmol)を仕込み、脱水ジクロロメタン(和光純薬工業社製,10ml)を加えて溶解した。
この溶液をドライアイス−エタノール浴に漬けて−78℃に冷却し、これに先に調製したテトラヒドロフラン/ヘキサン混合溶液を5分間かけてゆっくりと滴下し、その後、90分かけて徐々に0℃まで温度を上げた。その後、減圧下に溶媒を完全に留去し、あらためて脱水トルエン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて撹拌した後、窒素下に遠心分離を行って、不要な塩を取り除き、上澄みのトルエン溶液を回収した。この溶液より減圧下に濃縮し、再結晶を行って、黄色結晶297mgを得た。得られた結晶の
1H−NMR、及び
13C−NMR測定を行い、(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−4−フルオロフェノラト}パラジウム[錯体A−2]であることを確認した。
1H−NMRスペクトルを
図1、
13C−NMRスペクトルを
図2に示す。
【0124】
実施例3:(π−アリル)[2−(N−フェニルイミノメチル)フェノラト]パラジウム[錯体A−3]の合成
【化23】
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これに合成例4で調製した2−(N−フェニルイミノメチル)フェノール(329mg,1.67mmol)を仕込み、脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製、10ml)を加えて溶解した。これを、ドライアイス−エタノール浴に漬けて−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムの1.6mol/lヘキサン溶液(和光純薬工業社製,1.10ml,1.76mmol)を5分かけてゆっくりと滴下し、滴下終了後、−78℃で30分間撹拌した後、徐々に室温に戻した。
別途用意した三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これにアリルパラジウムクロリドダイマー(和光純薬工業社製,303mg,0.827mmol)を仕込み、脱水ジクロロメタン(和光純薬工業社製,10ml)を加えて溶解した。
この溶液をドライアイス−エタノール浴に漬けて−78℃に冷却し、これに先に調製したテトラヒドロフラン/ヘキサン混合溶液を5分間かけてゆっくりと滴下し、その後、0℃まで温度を上げて30分間撹拌した。その後、減圧下に溶媒を完全に留去し、あらためて脱水トルエン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて撹拌した後、窒素下に遠心分離を行って、不要な塩を取り除き、上澄みのトルエン溶液を回収した。この溶液より減圧下に濃縮し、再結晶を行って、黄色結晶87mgを得た。得られた結晶の
1H−NMR、及び
13C−NMR測定を行い、(π−アリル)[2−(N−フェニルイミノメチル)フェノラト]パラジウム[錯体A−3]であることを確認した。
1H−NMRスペクトルを
図1、
13C−NMRスペクトルを
図2に示す。
【0125】
実施例4:(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−6−メチルフェノラト}パラジウム[錯体A−4]の合成
【化24】
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これに合成例5で調製した2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−6−メチルフェノール(495mg,1.67mmol)を仕込み、脱水テトラヒドロフラン(和光純薬工業社製,10ml)を加えて溶解した。これを、ドライアイス−エタノール浴に漬けて−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムの1.6mol/lヘキサン溶液(和光純薬工業社製,1.10ml,1.76mmol)を5分かけてゆっくりと滴下し、滴下終了後、−78℃で20分間撹拌した後、徐々に−10℃まで温度を上げた。
別途用意した三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、これにアリルパラジウムクロリドダイマー(和光純薬工業社製,303mg,0.827mmol)を仕込み、脱水ジクロロメタン(和光純薬工業社製,10ml)を加えて溶解した。
この溶液をドライアイス−エタノール浴に漬けて−78℃に冷却し、これに先に調製したテトラヒドロフラン/ヘキサン混合溶液を5分間かけてゆっくりと滴下し、その後、−78℃で2時間撹拌して反応させた。その後、減圧下に溶媒を完全に留去し、あらためて脱水トルエン(和光純薬工業社製,20ml)を加えて撹拌した後、窒素下に遠心分離を行って、不要な塩を取り除き、上澄みのトルエン溶液を回収した。この溶液より減圧下に濃縮し、再結晶を行って、黄色結晶197mgを得た。得られた結晶の
1H−NMR、及び
13C−NMR測定を行い、(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−6−メチルフェノラト}パラジウム[錯体A−4]であることを確認した。
1H−NMRスペクトルを
図1、
13C−NMRスペクトルを
図2に示す。
【0126】
実施例5:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、トルエン75mlで溶解し、さらにN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製,8.0mg,0.010mmol)をジクロロメタン1mlで溶解した溶液を加えた後、70℃まで昇温した。そこへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C
3H
7)
3](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、70℃で30分重合反応を行った。その後、その反応溶液に別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)をトルエン5.4mlで溶解した溶液を加え、さらに70℃で30分重合反応を行った。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加え、反応を停止した後、トルエンで希釈し、さらに多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー10.52gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1052g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=916,000、分子量分布はMw/Mn=2.12であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は20.4mol%であった。
1H−NMRスペクトルを
図3、IRスペクトルを
図4、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)のチャートを
図5に示す。
【0127】
実施例6〜7:
重合温度を表1に示す通り80℃、90℃とした他は、実施例5と同様にして重合を行った。
【0128】
実施例8〜10:
助触媒(B)及びホスフィン系配位子(C)を表1に示すものに替えた他は、実施例6と同様にして重合を行った。
【0129】
実施例11:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、トルエン75mlで溶解し、さらにN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製、8.0mg,0.010mmol)をジクロロメタン1mlで溶解した溶液を加えた後、80℃まで昇温した。そこへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C
3H
7)
3](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、重合を開始した。この後、別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)をトルエン5.4mlで溶解した溶液を30分おきに5回、5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(5.00g,0.030mol)を1時間おきに2回、反応溶液に加えながら、80℃でトータル3時間重合反応を行った。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加え、反応を停止した後、トルエンで希釈し、さらに多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー33.90gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は3390g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=283,400、分子量分布はMw/Mn=3.12であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は19.3mol%であった。
【0130】
実施例12〜14:
重合温度、金属錯体(A)、助触媒(B)及びホスフィン系配位子(C)の仕込量を表1に記載の通りに替えた他は実施例11と同様にして重合を行った。
【0131】
実施例15:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、トルエン75mlで溶解し、さらに、実施例1で合成した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)をトルエン1.0mlに溶解した溶液と、トリイソプロピルホスフィン[P(i−C
3H
7)
3](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)をトルエン1.0mlに溶解した溶液を加えた後、80℃まで昇温した。そこへ、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製、8.0mg,0.010mmol)をジクロロメタン1mlで溶解した溶液を加えて重合を開始し、80℃で30分重合反応を行った。その後、その反応溶液に別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)をトルエン5.4mlで溶解した溶液を加え、さらに80℃で30分重合反応を行った。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加え、反応を停止した後、トルエンで希釈し、さらに多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー4.30gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は430g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=355,000、分子量分布はMw/Mn=2.84であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は17.9mol%であった。
【0132】
実施例16:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、トルエン75mlで溶解し、さらにN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製、8.0mg,0.010mmol)をジクロロメタン1mlで溶解した溶液を加えた後、60℃まで昇温した。そこへ実施例2で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−4−フルオロフェノラト}パラジウム[錯体A−2](4.5mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C
3H
7)
3](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、60℃で30分重合反応を行った。その後、その反応溶液に別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)をトルエン5.4mlで溶解した溶液を加え、さらに60℃で30分重合反応を行った。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加え、反応を停止した後、トルエンで希釈し、さらに多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー13.58gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1358g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=817,000、分子量分布はMw/Mn=2.07であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は31.2mol%であった。
【0133】
実施例17〜23:
重合温度、助触媒(B)、モノマーの仕込量を表1に記載の通りに替えた他は実施例16と同様にして重合を行った。
【0134】
実施例24:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)の代わりに実施例3で合成した(π−アリル)[2−(N−フェニルイミノメチル)フェノラト]パラジウム[錯体A−3](3.4mg,0.010mmol)を用い、重合温度を80℃とした以外は実施例5と同様の方法で重合反応と後処理を行い、白色粉末状のポリマー17.62gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1762g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=460,000、分子量分布はMw/Mn=2.28であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は27.6mol%であった。
【0135】
実施例25〜29:
モノマー仕込量、重合温度、反応時間を表1に記載の通りに替えた他は実施例24と同様にして重合を行った。
【0136】
実施例30:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合
(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)の代わりに実施例4で合成した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−6−メチルフェノラト}パラジウム[錯体A−4](4.4mg,0.010mmol)を用いること以外は実施例21と同様の方法で重合反応と後処理を行い、白色粉末状のポリマー19.02gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1902g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=720,000、分子量分布はMw/Mn=2.20であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は25.4mol%であった。
【0137】
実施例31〜33:
重合温度、反応時間を表1に記載の通りに替えた他は実施例30と同様にして重合を行った。
【0138】
実施例34:2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの単独付加重合
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それに合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、さらにN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製、8.0mg,0.010mmol)をジクロロメタン1mlで溶解した溶液を加えた後、80℃まで昇温した。そこへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C
3H
7)
3](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、80℃で60分重合反応を行った。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加え、反応を停止した後、トルエンで希釈し、さらに多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー6.59gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は659g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=208,000、分子量分布はMw/Mn=2.05であった。
1H−NMRスペクトルを
図6、IRスペクトルを
図7、GPCのチャートを
図8に示す。
【0139】
実施例35〜39:
金属錯体(A)の種類、重合温度を表1に記載の通りに替えた他は実施例34と同様にして重合を行った。
【0140】
実施例40:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(沈殿重合)
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(9.42g,0.100mol)をトルエン5.4mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、酢酸エチル(70ml)で溶解し、80℃まで昇温した。そこへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C
3H
7)
3](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)とN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製、8.0mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、80℃で1時間重合反応を行った。重合中、ポリマーは白色粉末として析出した。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加えて反応を停止し、析出したポリマーをろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー12.41gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1241g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=287,000、分子量分布はMw/Mn=2.18であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は20.1mol%であった。
【0141】
実施例41:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(沈殿重合)
重合温度と反応時間を表1に記載の通りに替えた他は実施例40と同様にして重合を行った。
【0142】
実施例42:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(沈殿重合)
重合溶媒を酢酸エチルから酢酸n−プロピルに替えた他は実施例40と同様にして重合を行った。
【0143】
実施例43:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(沈殿重合)
三方コックと滴下漏斗とメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(6.31g,0.067mol)をトルエン7.3mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(22.11g,0.133mol)を加え、酢酸エチル(80ml)で溶解し、80℃まで昇温した。別途、滴下漏斗にノルボルネン(16.29g,0.173mol)をトルエン19.0mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(14.46g,0.087mol)及び酢酸エチル(80ml)を加えた。その後、フラスコへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C
3H
7)
3](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)とN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製、8.0mg,0.010mmol)をトルエン2.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、重合を開始した。重合中、ポリマーは白色粉末として析出した。重合開始から30分経過した時点から、滴下漏斗に仕込んだ混合液の滴下を開始し、80℃で重合反応を行いながら、80分かけて滴下を完了させた。滴下終了後、さらに80℃で10分反応を行い、重合開始から2時間後に少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加えて反応を停止し、析出したポリマーをろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー36.10gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は3610g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=420,800、分子量分布はMw/Mn=2.77であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は39.0mol%であった。
【0144】
実施例44:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(沈殿重合)
滴下漏斗に仕込んだ、ノルボルネン(27.12g,0.288mol)をトルエン31.0mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(23.94g,0.144mol)及び酢酸エチル(135ml)の混合液を、重合開始後30分経過時から140分かけて滴下したこと及び滴下終了後、さらに80℃で10分反応を行い、反応時間を3時間にしたこと以外は実施例43と同様にして重合を行い白色粉末状のポリマー54.00gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は5400g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=402,800、分子量分布はMw/Mn=3.22であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は34.1mol%であった。
【0145】
実施例45:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(沈殿重合)
滴下漏斗に仕込んだ、ノルボルネン(38.04g,0.404mol)をトルエン44.0mlに溶解した溶液と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(33.58g,0.202mol)及び酢酸エチル(190ml)の混合液を、重合開始後30分経過時から200分かけて滴下したこと及び滴下終了後、さらに80℃で10分反応を行い、反応時間を4時間にしたこと以外は実施例43と同様にして重合を行い白色粉末状のポリマー68.10gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は6810g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=332,300、分子量分布はMw/Mn=3.33であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は38.9mol%であった。
【0146】
実施例46:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(n−ヘキサン溶媒での重合)
三方コックとメカニカルスターラーを装備した三口フラスコを窒素置換し、それにノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)と合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(16.62g,0.100mol)を加え、n−ヘキサン100mlで溶解し、さらにN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製,8.0mg,0.010mmol)をジクロロメタン1mlで溶解した溶液を加えた後、90℃まで昇温した。そこへ実施例1で合成し、別容器中で調製した(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム[錯体A−1](4.3mg,0.010mmol)とトリイソプロピルホスフィン[P(i−C
3H
7)
3](ストレム社製,1.6mg,0.010mmol)をトルエン3.5mlに溶解した触媒溶液を添加し、90℃で30分重合反応を行った。重合開始直後からポリマーは白色固体として析出したが、固体表面のベタつきのため、フラスコ壁に固着した。この後、反応溶液に別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,4.71g,0.050mol)をトルエン5.4mlで溶解した溶液を加え、さらに90℃で30分重合反応を行った。この時点でポリマーはベトつきのある塊状となり、撹拌翼に絡みついた。反応終了後、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加え、反応を停止した後、トルエンを加えてポリマーを溶解し、その溶液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に90℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー12.10gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は1210g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=214,000、分子量分布はMw/Mn=2.46であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は24.3mol%であった。
【0147】
比較例1:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(特許文献4の方法による重合)
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それに合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(14.13g,0.085mol)を加え、トルエン50mlで溶解した。さらに、アリルパラジウムクロライドダイマー[[(C
3H
5)PdCl]
2](和光純薬工業社製,9mg,0.025mmol)をトルエン1mlに溶解した溶液、トリシクロヘキシルホスフィン[P(C
6H
11)
3](ストレム社製,14mg,0.050mmol)をトルエン1mlに溶解した溶液、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製,60mg,0.075mmol)をジクロロメタン1mlに溶解した溶液をそれぞれ順番に加えた後、フラスコをオイルバスに浸し、撹拌しながら90℃まで昇温した。これに別途調製したノルボルネン(東京化成工業社製,8.00g,0.085mol)をトルエン10mlに溶解した溶液を添加することで反応を開始し、90℃で2時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に60℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー19.4gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は388g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=58,000、分子量分布はMw/Mn=2.06であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は37.3mol%であった。
【0148】
比較例2:ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(特許文献4の方法による重合)
触媒系としてアリルパラジウムクロライドダイマー[[(C
3H
5)PdCl]
2](4.5mg,0.0125mmol)、トリシクロヘキシルホスフィン[P(C
6H
11)
3](7mg,0.025mmol)、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](30mg,0.0375mmol)を用い、反応を60℃で行うこと以外は比較例1と同様の方法で重合反応を行い、白色粉末状のポリマー4.3gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は172g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=105,400、分子量分布はMw/Mn=1.98であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は18.2mol%であった。
【0149】
比較例3:2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの単独付加重合(特許文献4の方法による重合)
三方コックを装備した二口フラスコを窒素置換し、それに合成例1で調製した2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(14.13g,0.085mol)を加え、トルエン67mlで溶解した。さらに、アリルパラジウムクロライドダイマー[[(C
3H
5)PdCl]
2](和光純薬工業社製,4.5mg,0.0125mmol)をトルエン1mlに溶解した溶液、トリシクロヘキシルホスフィン[P(C
6H
11)
3](ストレム社製,7mg,0.025mmol)をトルエン1mlに溶解した溶液、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C
6H
5)(CH
3)
2NH][B(C
6F
5)
4](ストレム社製,30mg,0.0375mmol)をジクロロメタン1mlに溶解した溶液をそれぞれ順番に加えた後、フラスコをオイルバスに浸し、撹拌しながら90℃まで昇温し、2時間重合反応を行った。反応終了後、反応液を多量のメタノール中に注いでポリマーを析出させ、ろ別洗浄後、減圧下に60℃で5時間乾燥して白色粉末状のポリマー0.35gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は14g−ポリマー/mmol−Pdであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=26,000、分子量分布はMw/Mn=1.86であった。
【0150】
比較例4:2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの単独付加重合(非特許文献1に記載の方法)
非特許文献1には、以下のような方法が記載されている。すなわち、一般的な反応条件として、「窒素雰囲気下で[(1,2,3−η)−1,1−ジフェニル−2−メチル−2−プロペニル]クロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリデン]パラジウム(1.6mg,0.0022mmol)及びリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ジエチルエーテル錯体Li[B(C
6F
5)
4・2.5(C
2H
5)
2O](3.0mg,0.0034mmol)をクロロベンゼン(3ml)に溶解した溶液を、室温で8時間反応させた。その後、この反応液をシリンジフィルターでろ過し、ろ液を別途調製した5−アセトキシメチル−2−ノルボルネン(1.0g,6.6mmol)のクロロベンゼン(1ml)溶液に添加した。その後、所定の温度で20時間反応し、メタノール(50ml)からの再沈殿によって得られた粉末をメタノール(20ml)で3回洗浄し、さらに真空乾燥を行った。」と記載されている。非特許文献1には、個々の製造方法それぞれの詳しい記載はされていないが、表3に「反応時間を1時間とし、[(1,2,3,−η)−1,1−ジフェニル−2−メチル−2−プロペニル]クロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリデン]パラジウムを5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの2000分の1のモル比で仕込み、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ジエチルエーテル錯体Li[B(C
6F
5)
4・2.5(C
2H
5)
2O]をパラジウム錯体の1.5倍のモル比で仕込み、溶媒をクロロベンゼンとし、反応温度を50℃とした場合に、ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性が123g−ポリマー/mmol−Pdで、数平均分子量(Mn)が65,000のポリマーが得られた」ことが記載されている。
【0151】
比較例5:2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの単独付加重合(非特許文献1に記載の方法)
非特許文献1の表3には、「反応時間を4時間とし、[(1,2,3−η)−1,1−ジフェニル−2−メチル−2−プロペニル]クロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリデン]パラジウムを5−アセトキシメチル−2−ノルボルネンの2000分の1のモル比で仕込み、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート・ジエチルエーテル錯体Li[B(C
6F
5)
4・2.5(C
2H
5)
2O]をパラジウム錯体の1.5倍のモル比で仕込み、溶媒をクロロベンゼンとし、反応温度を50℃とした場合に、ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性が60g−ポリマー/mmol−Pdで、数平均分子量(Mn)が126,000のポリマーが得られた」ことも記載されている。
【0152】
比較例6:Ni触媒を用いたノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの付加共重合(沈殿重合)
三方コックとメカニカルスターラーを装備した300ml三口フラスコを窒素置換し、それに、窒素下でノルボルネン(東京化成工業社製、9.6g、0.102mol)をトルエン11.1mlで溶解した溶液と2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン(17.1g、0.103mol)及び酢酸エチル(昭和電工社製)60mlを加えた。一方、窒素下で20mLガラスアンプルに、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(10.3mg、40μmol)、トリス(ペンタフルオロフフェニル)ボロン[B(C
6F
5)
3](61.0mg、120μmol)及びトリメチルアルミニウム(アルドリッチ社製、2.0M トルエン溶液、0.10ml、200μmol)を仕込み、脱水トルエン4mlで溶解させ、直ちに全量を三口フラスコに添加し重合を開始した。重合中、ポリマーは白色粉末として析出した。重合は室温で30分行い、少量の塩酸を添加したメタノール8mlを反応液に加えて反応を停止した。析出したポリマーをろ別洗浄後、減圧下90℃で5時間乾燥して、白色粉末状のポリマー8.9gを得た。ポリマー収量と仕込み触媒量より算出される触媒活性は223g−ポリマー/mmol−Niであった。
得られたポリマーはTHFやクロロホルムなどの一般的な有機溶剤に容易に溶解し、数平均分子量はMn=687,000、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの分子量分布はMw/Mn=1.99であった。また、
1H−NMRの積分値から算出したポリマー中の2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーユニットの組成は26.0mol%であった。
【0153】
実施例1〜46及び比較例1〜6について触媒種類、重合条件等を表1に、重合結果を表2に示す。表1中の各記号の意味は以下の通りである。
金属錯体(A):
A−1:(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]フェノラト}パラジウム、
A−2:(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−4−フルオロフェノラト}パラジウム、
A−3:(π−アリル)[2−(N−フェニルイミノメチル)]フェノラト}パラジウム、
A−4:(π−アリル){2−[N−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミノメチル]−6−メチルフェノラト}パラジウム、
A−5:アリルパラジウムクロライドダイマー、
A−6:[(1,2,3−η)−1,1−ジフェニル−2−メチル−2−プロペニル]クロロ[1,3−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)−2−イミダゾリデン]パラジウム、
S−1:ビス(アセチルアセトナト)ニッケル。
助触媒(B):
B−1:N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
B−2:トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
B−3:リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
B−4:トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、
B−5:トリメチルアルミニウム。
ホスフィン系配位子(C):
C−1:トリイソプロピルホスフィン、
C−2:トリシクロヘキシルホスフィン、
C−3:トリ−t−ブチルホスフィン。
モノマー:
NB:ノルボルネン、
ANB:2−アセトキシメチル−5−ノルボルネン。
なお、実施例5〜46、比較例1〜3及び6で得られたポリマーはいずれもTHFやクロロホルム等の一般溶剤に容易に溶解した。
【0154】
【表1】
【表2】
【0155】
ノルボルネンと2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンとの共重合に関して、特許文献4の方法では分子量Mnが200,000を超える共重合体を製造できておらず、工業的に実用化が見込める触媒活性も認められなかった(比較例1〜2)。比較例6のニッケル(Ni)触媒系では分子量の高い共重合体が得られたが、触媒活性の面では十分とはいえない。本発明の製造方法によれば、機械的性質に優れた分子量Mnが200,000を超えるノルボルネン系共重合体が工業的に実用化され得る触媒活性で得られた(実施例1〜33、40〜46)。
一方、2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンモノマーの単独重合に関して、非特許文献1の方法では分子量Mnが200,000を超える単独重合体は製造できておらず、しかも分子量Mnが200,000に達していない単独重合体ですら工業的に実用化可能な触媒活性は認められなかった(比較例3)。本発明のノルボルネン系単独重合体の製造方法によれば、分子量Mnが100,000を超える重合体が工業的に実用化され得る触媒活性で得られた(実施例34〜39)。