【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、杭の高支持力化に伴って、杭が大径化、高重量化している。このため、上記した従来の杭を玉掛けワイヤで巻きつけて吊る方法は、杭の重量に合わせた強度の太径のワイヤを採用しなければならない。 しかし、太径のワイヤを採用すると、その巻き付け作業は困難となるばかりか、ワイヤの反発力が強くなるため、作業者に対する危険が伴う。
そこで、複数本の小径のワイヤを玉掛けワイヤとして採用することにより、杭の重量たる荷重を複数の小径ワイヤに分散し、作業性や安全性を改善することが考えられる。
【0008】
しかしながら、杭に複数本の玉掛けワイヤを掛けた場合、全てのワイヤに均一な張力が掛からない場合がある。 すなわち、一部のワイヤが他のワイヤよりも弛んでいたとすれば、弛んでいないワイヤにのみ張力が掛かることとなる。
その場合、張力の掛かったワイヤのみが消耗し、破損のおそれが生じることとなる。 係留具に油圧シリンダが設けられている場合には、その油圧シリンダにも過剰な負荷が掛かるおそれがある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、複数の玉掛けワイヤを杭に掛けて杭を支持する場合において、複数の玉掛けワイヤに掛かる張力を等しくすることが可能な杭保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第一の発明)
前述した課題を解決するため、本願では、以下のような発明を提供する。
第一の発明は、 杭穴(10)に挿入された杭(11)を吊り下げてその軸方向が垂直となるようにするための杭保持装置に係る。
すなわち、前記の杭穴(10)の入り口を囲って設置される杭受け台(20)と、 その杭受け台(20)に固定されるとともに前記の杭(11)に掛けられた
三台の玉掛けワイヤ(19A,19B)をその玉掛けワイヤ(19A,19B)ごとに吊り下げて垂直方向に上下動可能な複数の杭吊りジャッキ(30A,30B)と、 その
三台の杭吊りジャッキ(30A,30B)に対して作動油を行き来させることによって杭吊りジャッキ(30A,30B)を上下動させる油圧制御装置(40)と、
前記の杭吊りジャッキへ作動油の流入または停止を制御するための手動式油圧レバー(41)と、を備える。
前記の油圧制御装置(40)は、
三台の杭吊りジャッキのうちいずれの二台または三台を作動させるかについて選択された場合に前記の油圧レバー(41)の操作に基づいて、選択された複数の杭吊りジャッキ(30A,30B)の全てに同一の圧力が掛かるように作動油を流入させるようにした杭保持装置である。
【0011】
「杭受け台」は、その平面形状がコ字形(C字形、U字形などの変形を含む)、ロ字形、ドーナツ形、などがある。 杭吊りジャッキを、平面位置にて複数配置するためである。
【0012】
(作用)
上記した第一の発明の作用について、その発明の構成要件に基づいて説明する。
まず、杭(11)が杭穴(10)に挿入されて吊り下げられた状態となる。 その杭(11)に複数の玉掛けワイヤ(19A,19B)を掛け、玉掛けワイヤ(19A,19B)ごとに杭吊りジャッキ(30A,30B)へ吊り下げる。
油圧制御装置(40)は、複数の杭吊りジャッキ(30A,30B)の全てに作動油を流入させる。 すると、パスカルの原理により、複数の杭吊りジャッキ(30A,30B)の全てに同一の圧力が掛かる。
いずれかの杭吊りジャッキ(30A)に予めある程度の負荷が掛かっている場合(玉掛けワイヤ(19A)の張力が杭吊りジャッキ(30A)にかかっている場合)、または複数の杭吊りジャッキ(30A,30B)に異なる負荷が掛かっている場合には、作動油は負荷が最小である杭吊りジャッキ(30B)に対して流入し、その杭吊りジャッキ(30B)が作動し、玉掛けワイヤ(19B)が伸ばされ始める。このとき、他の杭吊りジャッキ(30A)には作動油は流入しないため、作動しない。
杭吊りジャッキ(30B)が作動して玉掛けワイヤ(19B)に負荷が掛かり、予めある程度の負荷が掛かっていた杭吊りジャッキ(30A)と同じ負荷となった時点から、同じ負荷となった杭吊りジャッキ(30A,30B)の双方に作動油が流入することとなる。
全ての玉掛けワイヤ(19A,19B)の張力が同一となった後に、全ての杭吊りジャッキ(30A,30B)が同時に上昇することとなる。 その結果、一部の玉掛けワイヤ(19A)や一部の杭吊りジャッキ(30A)のみに負荷が掛かって消耗する、という状態を未然に防ぐことができる。
【0013】
(第一の発明のバリエーション)
第一の発明は、前記複数の杭吊りジャッキ(30A,30B)は、少なくとも二つが杭(11)を挟む位置に配置されている。
二つの杭吊りジャッキ(30A,30B)が向かい合う状態となり、それぞれに掛けられる玉掛けワイヤ(19A,19B)は、杭(11)を均等に支えることとなる。
なお、三機の杭吊りジャッキを配置してその三機を常時使用する場合には、三機が均等に配置される(120度間隔)ことが理想的である。 しかし、三機のうちの一機を補助的に使用する場合には、二機の杭吊りジャッキを向かい合わせた上で、適宜の場所(二機の間)に配置してもよい(
図1参照)。