【実施例1】
【0013】
最初に、
図1〜
図4を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。本発明は、例えば、携帯電話やスマートフォン,あるいは、カーナビゲーション装置やゲーム機など、ハプティック機能を備えたタッチパネル式の表示パネル部を有する電子機器に対し、劣化のない放音機能の実現が可能なスピーカ機能を搭載する技術に関するものである。本実施例では、前記電子機器としてスマートフォンを例示して説明する。
図1は、本実施例のスマートフォンを示す図であり、(A)は全体の外観斜視図,(B)は前記(A)を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た断面の概略を示す断面図,(C)は前記(B)の主要部の拡大図である。
図2は、本実施例の圧電素子の積層構造の一例を示す断面図である。
図3は、仕切板へのスピーカの実装面を示す図であり、(A)は実施例1のスピーカを示す斜視図,(B)は変形例のスピーカを示す平面図である。
図4は、本実施例のスマートフォンの音圧特性と表面振動特性を示すグラフである。
【0014】
図1(A)及び(B)に示すように、本実施例のスマートフォン10は、筐体12の表面12A側の一部に、ハプティック機能を備えたタッチパネル式の表示パネル20が設けられており、前記表面12Aには、内蔵したスピーカ30の放音孔44や、操作用スイッチ45が設けられている。なお、本発明では、表示パネルを視覚的に見る方向を表面側(ないし上側),反対方向を背面側(ないし下側)と定義して表現している。前記表示パネル20は、タッチパネル22の下に表示装置24を設けた構成となっており、前記タッチパネル22としては、静電容量式のほか、抵抗膜方式などの公知の既存の方法を用いることができる。前記表示装置24についても、液晶を用いた表示装置のほか、有機ELを用いた表示装置等が利用可能である。
【0015】
前記筐体12の内側は、仕切板14によって厚み方向に仕切られており、前記表示パネル20の表示装置24の背面を、前記仕切板14の表面14Aで支持している。前記仕切板14は、筐体12の剛性を保つとともに、前記表示装置24を支えており、前記表示装置24とは、例えば、両面テープで固定されている。一方、前記仕切板14の背面14B側,すなわち、前記表示パネル20と反対側の面に、複数のクッション材50を介して、スピーカ30が実装されている。図示の例では、前記スピーカ30は、前記筐体12の一つの側面12C側に配置されている。前記スピーカ30は、
図1(C)に示すように、振動板34の主面に圧電素子36が貼り付けられた振動部分の周囲を支えるように全体がケース32によって覆われた構造となっている。前記ケース32の上面32Aと前記筐体表面12Aは、仕切板14を貫通する導音路42で接続されており、該導音路42は、前記筐体表面12Aにおいて放音孔44として開口している。
【0016】
本実施例では、前記圧電素子36として、
図2に示すように、素子の中でバイモルフ構造を形成するような積層素子を利用している。前記
図2に示す圧電素子36は、複数の圧電体層38と電極層40を交互に積層した構造となっており、本実施例では、厚み方向中心の上側36Aと下側36Bで、電界に対する分極方向が逆になるように分極したバイモルフ構造のものを利用した。該圧電素子36は、実装する電子機器の構造にもよるが、全く積層していない単板構造としてもよいし、積層する場合でも、電界に対して全ての圧電体層が同じ方向に分極されているユニモルフ構造を採用することも可能であるが、入力電圧を低く抑えるという観点からは積層構造とする方が望ましく、また、発生変位や発生力を大きくするという観点からはバイモルフ構造とすることが望ましい。前記圧電体層38の材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛に添加物を加えた圧電材料が用いられるが、一般的に知られている圧電セラミックスであれば、他の材料を用いてもよい。電極層40の材料としては、例えば、銀や白金など、公知の各種の電極材料が利用可能である。本実施例では、18μmの厚さの圧電体層38を6層積層した圧電素子36を利用している。また、前記振動板34は、圧電素子36の屈曲振動を阻害せずに圧電素子36を支える必要があるため、例えば、ウレタンエラストマーやゴムなどの柔らかい材料の膜を用いる。本実施例では、厚さ100μmのウレタンエラストマーを用い、粘着剤で前記圧電素子36を貼り付けている。
【0017】
また、前記スピーカ30は、前記振動板34と圧電素子36からなる振動部分の周囲を支えるように、ケース32で全体が覆われている。前記ケース32は、高い剛性が必要となるため、ヤング率100GPa以上の金属材料(例えば、ステンレスなど)を用い、厚さは0.1mm以上とすることが好ましい。これ以下の剛性では、振動伝達が阻害され、十分なハプティック機能を得ることができない。前記ケース32の上面32Aには、前記仕切板14を貫通し、前記筐体12の表面12Aで開口する導音路42を接続する。その際、外部に音が漏れないように、接続部分は密閉される。
【0018】
以上のような構成のスピーカ30は、上述したクッション材50を介して仕切板14の背面14Bに取り付けられる。前記クッション材50は、スピーカ30のケース32と仕切板14の剛性を制御するためのものであって、
図3(A)に示すように、スピーカ30の周囲に沿うように、同一形状・同一寸法の複数のクッション材50が均等に配置される。本実施例では、前記クッション材50として、ゴム硬度40〜60のゴム材料を用いている。なお、前記スピーカ30の周囲側のクッション材50の長さをLとし、設置数をnとした場合、複数のクッション材の長さの合計(n×L)が、前記スピーカ30の周囲長(4辺の合計長)L
spに対して、1/3〜1/2となるように、均等に配置する。上述した硬度よりも硬い材料を用いた場合,あるいは、スピーカ30の周囲長L
spに対する長さ(n×L)が1/2よりも長い場合には、高周波領域でも振動が伝達されてしまい、表示パネル20が振動して、音質の劣化を招く。また、ゴム硬度40〜60以下の硬度,もしくは、スピーカ周囲長L
spに対するクッション材50の長さの合計(n×L)が、1/3よりも短い場合は、低周波領域においても振動伝達が行われず、ハプティック機能を発揮できない。前記クッション材50の長さLは、上記スピーカ周知長L
spとの関係を満たし、かつ、3〜5mm程度とし、幅Wは0.5mm以上2mm以下とし、厚みTは、0.1〜0.5mm程度とする。
【0019】
次に、本実施例の作用を説明する。前記表示パネル20に表示された表示内容に応じてタッチパネル22が押されると、該タッチパネル22が押下されたことを検出し、それに合わせて前記圧電素子36に低周波数の駆動信号を入力して振動させる。前記スピーカ30と仕切板14の間に介在するクッション材50は、低周波成分は伝達するため、表示パネル20を押した指などに振動が伝達され、触覚的に押下を感知させることが可能である。例えば、200Hzの正弦波をスピーカ30の圧電素子36に入力したところ、表示パネル20が7μm振動し、ハプティック機能を実現できたことが確認された。一方、高周波数の駆動信号が圧電素子36に入力されたときは、前記クッション材50が高周波成分を伝達せず、表示パネル20の振動を抑え、導音路42から外部に放射される音の音質劣化が生じない。例えば、600Hz以上の信号を入力した場合には、表示パネル20の振動は1μm以下と小さくなり、表示パネル20の表面からの放射音による音質劣化は認められなかった。
【0020】
図4には、本実施例のスマートフォン10の音圧特性と表面振動特性が示されている。同図において、横軸は入力信号の周波数[Hz]、縦軸は応答レベル[dB]を表している。同図から、表面振動に関しては、周波数250Hz程度まで高い応答レベルを示しており、低周波数側において十分なハプティック機能が実現できることが確認された。また、音圧特性については、1000Hzまで徐々に応答レベルが上昇し、1000Hz以上の高周波数領域では、高い応答レベルを示していることから、高周波領域において音質の劣化が生じないことが確認された。
【0021】
このように、実施例1によれば、筐体12の内部を厚み方向に仕切る仕切板14の表面14Aで表示パネル20の背面を支持し、仕切板14の背面14Bに、振動板34に圧電素子36を貼り付けてなるスピーカ30のケース32を、クッション材50を介して実装し、前記スピーカ30のケース32と前記筐体表面12Aを導音路42で接続した。そして、前記クッション材50の硬度と、スピーカ30の周囲長L
spに対する複数のクッション材50の長さの合計を適切な範囲内に設定することとした。このような構成により、大きな力を発生させることのできる圧電スピーカと、表示パネル20との結合部分の剛性を制御し、低周波数領域では振動が表示パネル20に伝達されて十分なハプティック機能が得られる。また、高周波数領域では前記クッション材50が前記表示パネルへ振動を伝達しないため、良好な音質で音を発するスピーカ機能を実現することが可能になる。
【0022】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法などは一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1では、スピーカ30を方形状としたが、例えば、
図3(B)に示すように、円形としてもよい。この場合も、スピーカ60の周囲長(すなわち円周)に対するクッション材50の長さの合計の最適範囲は、上述した実施例1と同様である。
(2)前記実施例で示した圧電素子36はバイモルフ構造としたが、これも一例であり、ユニモルフ構造としてもよい。
(3)前記実施例では、スピーカ30を例に挙げて説明したが、本発明でいうスピーカは広義のスピーカを示しており、レシーバについても当然に本発明の技術が適用可能である。
(4)前記実施例では、圧電素子36を積層構造としたが、これも一例であり、単板構造としてもよいし、積層構造とする場合も必要に応じて適宜積層数を増減してよい。
(5)前記圧電素子36を形成する材料についても、公知の各種の材料が利用可能である。
(6)ステレオ方式の場合、左右2つのスピーカが用意されるが、その場合、それぞれのスピーカに前記実施例を適用してもよいし、いずれか一方のスピーカに前記実施例を適用するようにしてもよい。その場合に、2つの圧電素子は、同一の信号で駆動してもよいし、周波数や波形が異なる信号で駆動するようにしてもよい。
(7)前記実施例では、本発明のタッチパネル装置を適用した電子機器としてスマートフォン10を例に挙げて説明したが、これも一例であり、本発明は、携帯電話,カーナビゲーション装置,ゲーム機など、タッチパネル機能を備えた表示装置と、それを利用した電子機器全般に適用可能である。