【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る顕微鏡は、少なくとも1つの照明光路と少なくとも1つの検出光路とを有した顕微鏡であって、照明光路の照明軸線の方向で延びる線状の対象物照明領域を形成するために、各照明光路に1つの集束装置が設けられており、少なくとも1つの検出光路の検出方向が、前記線状の対象物照明領域に対してほぼ直交方向に位置しており、線状の対象物照明領域と検査したい対象物との間の相対運動を行わせるための少なくとも1つの運動装置が設けられていることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、少なくとも1つの運動装置が、対象物と線状の対象物照明領域との間の相対運動が、照明軸線および検出軸線に対してほぼ直交方向に行われるように形成されている。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの運動装置が、相対運動を行わせるために対象物を動かすように形成されている。
【0014】
好ましくは、少なくとも1つの運動装置が、少なくとも1つの照明光路を、少なくとも前記照明光路によって準備された線状の対象物照明領域において、相対運動を行わせるために動かすように形成されている。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つの運動装置が、少なくとも1つの検出光路を、少なくとも1つの照明光路の運動に合わせて、少なくとも対象物近くの領域で動かすように形成されている。
【0016】
好ましくは、少なくとも1つの検出光路が、多数の検出器画素を有した検出器を有している。
【0017】
好ましくは、対象物に対する検出器の検出器画素の数および配置が、少なくとも1つの検出光路が、少なくとも1つの照明光路によって対象物照明領域において照明される対象物の区分をほぼ完全に検出器に結像させるように選択されている。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つの運動装置が、検査したい対象物を、少なくとも1つの検出光路のほぼ検出方向で動かすように形成されている。
【0019】
上記課題を解決するために本発明に係る顕微鏡は、少なくとも1つの照明光路と少なくとも1つの検出光路とを有した顕微鏡であって、照明光路の照明軸線の方向で広がる対象物照明領域を形成するために、少なくとも1つの照明光路に1つの集束装置が設けられており、少なくとも1つの検出光路の検出方向が、前記対象物照明領域に対してほぼ直交方向に位置しており、ホルダを備えた運動装置であって、対象物照明領域とホルダ上の検査したい対象物との間の相対運動を行わせるための、ホルダを備えた運動装置が設けられており、運動装置が、重力方向に位置する少なくとも1つの回転軸線を有しており、該回転軸線は、照明軸線に対してほぼ直交方向に、かつ検出方向に対してほぼ直交方向に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上記の課題は本発明に係る顕微鏡により解決された。試料は細い光ストリップにより照明され、観察は面状の延在を有するこの対象物照明領域に対して垂直に行われる。従って照明光ストリップの太さはシステムの被写界深度を大部分決めている。撮像のために対象物を空間的に固定された光ストリップを通して動かし、蛍光及び/又は散乱光は、走査運動の各位置で面状の検出器によって撮影される。有利な構成では対象物が回転されるので、複数の方向からこのような3次元的な撮影を行うことができ、1つの3次元的な写真に纏めることができる。その解像度は、個々の撮影のうち横方向(lateral)の解像度によって規定される。この撮影の高い解像度は、集束された照明、垂直方向の検出、対象物の運動、画像処理による個々の撮影の組合せの結果である。
【0021】
本発明による顕微鏡は、対象物照明領域において有利には互いに直交する照明光路および検出光路を有している。これにより検出方向は、照明光平面に対して垂直に位置する。しかしながら本発明の利点は、照明方向と検出方向との間の角度もしくは照明光平面と検出方向との間の角度が、直角からそれほど大きくずれていなければ十分に得られる。
【0022】
有利には光源としてレーザが使用され、レーザにより試料における蛍光放射の選択的な励起が可能になる。細いストリップへの照明光の集束のために、有利には円柱レンズが使用される。しかしながらこれは、別の集束エレメント(例えばホログラフィエレメントまたは別の円錐レンズ(Axicon)または位相板またはベッセル放射(Bessel-Strahl)を生ぜしめる別のエレメント)に代替可能である。
【0023】
検出された光は有利には蛍光である。しかしながら散乱光の検出も可能である。検出光は有利にはテレセントリック系によって2つの対物レンズから検出器に結像される。しかしながら別の光学的な構成群も適している。
【0024】
検出は有利には、全てのフィールドを検出する面状の検出器、例えばCCDカメラによって行われる。このような検出器の使用により迅速な撮像が可能であり、3次元的な撮影のための試料の運動は1方向(即ち検出器軸線に対して長手方向)に制限されている。システムの解像度は検出光学機器の横方向の解像度によって規定される。
【0025】
目下使用可能な検出器の面積は一般的に、数ミリメータの大きな対象物を高解像度で完全に撮影するのを保証するには十分でないので、本発明による顕微鏡の構成では、まとめると対象物全体のイメージを形成することができる、対象物の複数の部分のイメージを撮影するために、検出器平面において、即ち検出方向に対してほぼ横方向で、検出器を動かすことができるようになっている。
【0026】
有利な簡単な構成では、光路をガイドするための光学エレメントを使用していない。しかしながら例えばミラー、ダイクロイックミラー、ビーム分配器、光ファイバを光路ガイドのために使用することができる。本発明による顕微鏡では、照明光路および検出光路が分割されているので、照明光と蛍光とを分離するための、別の蛍光顕微鏡で通常使用されているダイクロイックミラーのような受動的な構成部分または例えば音響光学構成部分のような能動的な構成部分を省くことができる。
【0027】
この構成を例えば別の照明光路によって補完することができる。このような別の照明光路の光はストリップもしくは対象物照明領域を形成するように集束し、有利には第1の照明光路の対象物照明領域と同じ平面に位置する。従って試料の良好な照明が得られる。このような別の照明光路のための光は同じ光源から出ても良い。有利には試料はこの場合、互いに反対側の2つの方向から照明される。4パイ共焦点顕微鏡(4Pi konfokalen Mikroskopie)[S. Hell und E.H.K. Stelzer, J. Opt. Soc. Am. A9,2159(1992)]とは異なり、本発明による顕微鏡における調整の手間は僅かである。何故ならば、複数のマイクロメータのうち2つだけが太い光ストリップに重ねられれば良いからである。さらにビームの位相は考慮しなくて良い。
【0028】
しかしながら本発明による顕微鏡は、共焦点ではない4パイシータ(4Pi−Theta)顕微鏡としても使用できる。この場合、試料は4パイ(A)共焦点顕微鏡と同様に、2つの反対の方向からコヒーレントに照明され、これによりこの照明軸線に沿って、照明光平面における強度を空間的に調節する干渉パターンが生じる。これにより照明容積は半分になり、(ビームの間の位相差の調節による)干渉パターンの移動により、試料の補完領域を照射することができる。これによりイメージはより高い分解能で、照明軸線に沿って再生される。
【0029】
例えば、検出光路に対して逆方向で放射する光を検出する別の検出光路によって構成を完成することができる。これにより光の検出は常に、光が試料のできるだけ短い距離を通るように行われる。
【0030】
付加的に散乱光検出器及び/又は透過光検出器を設けることもできる。
【0031】
本発明による顕微鏡において試料を試料台に置くまたは空気中に保持することもできるが、試料は有利にはホルダによって上方から、水の満たされた試料室内に保持され、垂直の、即ち重力方向に位置する軸線を中心として回転する。このことは、別方向からの撮影のために試料を回転する際に、試料に加わる重力が変わらず、試料が変形することがないという利点を有している。有利には、このような試料室における試料の回転の際に試料室は動かないので、運動過程中に(試料自体における屈折率による差異は除いて)光路長は変わらない。これにより良質なイメージが得られる。有利には、このように保持された試料は、撮像の際に著しく散乱されるまたは吸収される試料の部分の影響を最小にするように形成されている。
【0032】
本発明による顕微鏡の別の構成では、照明路と検出路とを、空間的に固定された検査したい対象物を中心として回転させることができる。しかしながら、試料もしくは対象物は一般的に、さらなる撮影で結像するために後から調整しなければならない。
【0033】
検査すべき対象物は撮影の際に、面状の対象物照明領域に位置しており、対象物はこの領域の厚さよりもずっと大きい。この領域に位置する対象物の部分の2次元的な撮影が面状の検出器によって行われる。対象物の3次元的な撮影は、空間的に固定された照明領域を通して検出方向で対象物が走査することにより(または対象物を通るように照明領域が走査することにより)行われる。この場合、対象物の各位置で2次元的なイメージが撮影される。運動、照明、検出の同期化は有利には、試料負荷を減じるために最適にされる。
【0034】
有利には対象物の回転は(直線的な走査運動と同様に)電気的に制御される。これにより種々異なる角度からの複数のイメージの撮影は自動化され、試料検査の速度は高められる。所定の空間分解能による全体撮影のために必要なイメージの数と試料の回転角度は、短い試料検査時間と、ひいては僅かな試料負荷に関して最適にされる。
【0035】
有利には検査したい対象物は照明軸線を中心として傾動可能であって、これによりさらに付加的な方向から観察することができる。本発明による顕微鏡の別の構成では、下方に向かって放射される光の検出を可能にする第2の検出光路が設けられている。(例えば円柱レンズの回転により)対象物照明領域が照明軸線を中心として90°回転されると、試料は水平方向で光学的に切断される(鉛直方向の走査運動により3次元的な撮影が行われる)。
【0036】
有利には、本発明による顕微鏡では円柱レンズが有利には高周波で動かされ、例えば照明光路において高周波で、円柱軸線に沿って及び/又は照明軸線に沿って動かされ、及び/又は円柱軸線が照明軸線の方向で高周波で傾けられる。これにより円柱レンズへの汚染の影響は少なくなり、試料は均一に照明される。
【0037】
有利には、多数の生物学的な試料の保持は、(約99%が水の)ゲルへの、または別の重合化されたまたは架橋された構造体への埋め込みによって簡単に実現される。
【0038】
検査したい対象物の回転により行われる種々異なる方向からの撮影は、個々の3次元的な未処理のデータセットを組み合わせることにより、この対象物の3次元的再生を可能にする。本発明による顕微鏡の有利な構成では、試料の一部(一般的には、照明軸線と検出軸線との間の直角の内側に位置する2つの8分割)だけが光学的に結像されるので、試料全体を良好に再生するためには少なくとも4つの撮影が必要である。これらの写真は、この再生が、個々の写真よりも高い解像度を有するように組合せられる。再生されたイメージの品質は別の角度に沿った撮影により改善され、これにより共通の光学的な伝送機能の死角が埋められる。
【0039】
長い焦点距離を有する対物レンズの使用により、数ミリメータの作業距離が得られる。対象物のサイズはこれによりまず第1に光の透過性により制限される。対象物を(縁部層だけではなく)完全に検査しようとするならば、光は十分に対象物のあらゆる部分から、一方または他方に方向付けられて検出器に達しなければならない。
【0040】
既に述べたように、検出光路における光学システムの倍率に応じて、2次元的な画素検出器における検出器の制限された画素数に実質的に基づいて、検査したい対象物の完全なイメージを撮影するために、検出光路に対応する検出器を動かす必要がある。即ち、システム全体の解像度は、主として光学的な構成部分、特に使用されるレンズの開口数によって、したがって試料自体における解像度によって制限されるのではなく、むしろ例えばCCDカメラで使用されるような画素検出器の範囲にある技術的な限界によって制限される。この問題は、例えば天文学またはデジタル写真において使用されるような数百万の範囲の画素数を有する高解像度の画素検出器の使用により対処する。しかしながらこの画素検出器は比較的高価であり緩慢である。
【0041】
従って本発明の別の構成によれば、少なくとも1つの照明光路と少なくとも1つの検出光路とを有した顕微鏡が設けられていて、照明光路の照明軸線の方向で延びる線状の対象物照明領域を形成するために、各照明光路に1つの集束装置が設けられており、少なくとも1つの検出光路の検出方向が、前記線状の対象物照明領域に対してほぼ直交方向に位置しており、線状の対象物照明領域と検査したい対象物との間の相対運動を行わせるための少なくとも1つの運動装置が設けられている。
【0042】
本発明のこのような構成によれば、即ち、対象物照明領域がほぼ1つの次元に、即ち長さの次元に制限され、これにより前述の対象物照明領域の面状の構造が縦長の構造に、もしくは線状の構造に移行する。このような線状の対象物照明領域により相応に、検査したい対象物の線状の区分のみが照明され、蛍光励起され、もしくは光散乱するように使用される。今や形成されたこの直線状の照明領域は、検出光路によって、縦長の構造を有する、即ち実質的に1つの次元で互いに連続的に配置された画素を有する画素検出器に結像される。原理的に「1次元的な」画素検出器として解釈されるこのような形式の検出器は、極めて高い画素数、例えば8000画素まで準備される。今や線状の対象物照明領域により照明され、従って検出器に結像される検査したい対象物の区分は、相応に高い解像度で検出器自体でも撮影され、相応に高解像度のイメージに変換される。このような形式の画素検出器における画素のサイズは、検出光路で生ぜしめられる拡大倍率を考慮しても、一般的に、画素検出器の長手方向の延びに対して横方向で、この方向における線状の対象物照明領域のイメージの幅よりも極めて小さいので、例えば64×4096の画素数を有する、即ち対象物照明領域の長手方向で、もしくは相応のイメージの長手方向で横方向よりもずっと高い画素数を有する「2次元的な」縦長の画素検出器に変えると有利である。
【0043】
このような形式のシステムによって、検査したい対象物を完全に結像し、もしくはその完全なイメージを形成するために、検査したい対象物と照明光路もしくは検出光路との間で走査を行うことができ、これにより原理的には、検査したい対象物が直線的に走査され、この場合、生ぜしめられた個々の線イメージを1つの全体像にまとめることができる。
【0044】
このために、少なくとも1つの運動装置を、対象物と、直線状の対象物照射領域との間の相対運動が、照明軸線と検出方向とに対してほぼ垂直に行われるように形成することもできる。このために例えば、少なくとも1つの運動装置が、相対運動を行うために対象物を動かすように形成されている。
【0045】
検査したい対象物をこのように移動させることに対して選択的にまたは付加的に、少なくとも1つの運動装置を、少なくとも1つの検出光路が、相対運動を形成するために、少なくともこれにより準備された線状の対象物照明領域で運動するように形成する。この場合、例えば対象物が固定されている場合には対象物照明領域が動かされるので、少なくとも1つの運動装置を、少なくとも1つの検出光路が少なくとも1つの照明光路の運動に合わせて、少なくとも対象物の近くの範囲で運動するように形成する必要がある。
【0046】
既に説明したように、少なくとも1つの検出光路が、多数の検出器画素を有した検出器を有している。この場合、有利には、検出器の検出器画素の総数と配置は、少なくとも1つの検出光路が、少なくとも1つの照明光路によって対象物照明領域で照明される対象物の区分がほぼ完全に検出器に結像されるように選択されている。
【0047】
本発明によるシステムにより、検査したい対象物の面状の結像を生ぜしめるだけでなく、対象物を3次元的な走査によっても3次元的に結像させるために、少なくとも1つの運動装置が、検査したい対象物を少なくとも1つの検出光路のほぼ検出方向で動かすように形成されている。
【0048】
上記説明から明らかであるように、本発明の主要な原理は、少なくとも1つの照明光路によって縦長の対象物照明領域を形成することにある、この対象物照明領域では検査したい対象物を位置決めすることができ、蛍光励起により、または散乱光形成により、少なくとも1つの検出光路において、対象物照明領域で位置決めされた検査したい対象物または対象物栓体の区分のイメージを形成することができる。
【0049】
従って本発明によればさらに、少なくとも1つの照明光路と少なくとも1つの検出光路とを有する顕微鏡であって、照明光路の照明軸線の方向で広がる対象物照明領域を形成するために、各照明光路に1つの集束装置が設けられており、少なくとも1つの検出光路の検出方向が、前記対象物照明領域に対してほぼ直交方向に位置しており、対象物照明領域と検査したい対象物との間の相対運動を行わせるための運動装置が設けられている。