特許第5738128号(P5738128)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738128
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】吊り天井
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   E04B5/58 S
   E04B5/58 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-191798(P2011-191798)
(22)【出願日】2011年9月2日
(65)【公開番号】特開2013-53441(P2013-53441A)
(43)【公開日】2013年3月21日
【審査請求日】2014年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工メカトロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】平尾 克之
(72)【発明者】
【氏名】原田 秀秋
【審査官】 土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−167737(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0250731(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3020926(JP,U)
【文献】 特開平02−289770(JP,A)
【文献】 特開2002−061328(JP,A)
【文献】 実開昭54−183119(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体の上層部に対して天井部材が吊り下げて設けられた吊り天井において、
線状に形成されて前記構造躯体の上層部と前記天井部材とに端部が取り付けられる吊り材と、
前記吊り材の中途部分に介在して設けられる延長部材と、
を備え、
前記構造躯体の側壁と前記天井部材との間に、前記構造躯体の水平方向の振幅に相当する間隙を有しており、かつ前記延長部材は、上下方向に棒材が折り返してコ字状に形成されて、各開口端に前記構造躯体の上層部に繋がる前記吊り材がそれぞれ連結され、閉塞端に前記天井部材に繋がる前記吊り材が連結されることで、前記構造躯体の上層部と前記天井部材との間の最短距離に対して、前記延長部材が前記吊り材の中途部分に設けられた総長さを延長することを特徴とする吊り天井。
【請求項2】
前記延長部材が前記吊り材の中途部分に設けられた構成が前記構造躯体の上層部と前記天井部材との間の複数箇所に設けられており、それぞれの前記延長部材が前記吊り材の中途部分に設けられた総長さを均等にすることを特徴とする請求項1に記載の吊り天井。
【請求項3】
前記延長部材は、前記吊り材を含む総長さを調整する調整機構を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の吊り天井。
【請求項4】
前記間隙を塞いで前記天井部材の水平方向の移動があっても前記隙間を塞いだ状態を維持する補助天井部材と、
前記天井部材および前記補助天井部材の上に多数敷き詰められた充填部材と、
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の吊り天井。
【請求項5】
前記構造躯体の上層部と前記天井部材との間に、前記延長部材が前記吊り材の中途部分に設けられた総長さより短い取り付け長で、鉛直方向に作動するダンパーを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の吊り天井。
【請求項6】
前記吊り材に弾性部材を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の吊り天井。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震などの揺れに対して破損や崩壊を回避することのできる吊り天井に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建屋などの内部に設置される天井として、吊り天井が一般に用いられている。この吊り天井は、例えば、鋼製の野縁と、この野縁を支持する野縁受とをグリッド状に組んでなる下地材を、構造躯体上層部から吊りボルトなどの吊り材を介して吊り下げ、この下地材の野縁に対して天井ボードなどの天井部材を取り付けて構成されている。
【0003】
従来、例えば、特許文献1に記載の吊り天井の制振構造は、構造躯体上層部から垂下された支承部材によって天井部材が支持されるとともに、天井部材に設備機器が取り付けられてなる吊り天井の制振構造であって、天井部材と構造躯体の側壁との間に、水平方向の相対変位を吸収する間隙部を形成し、間隙部に伸縮可能な変形吸収部材を介装するとともに、天井部材と構造躯体上層部との間に、水平方向の振動を吸収する制振ダンパーを設置している。
【0004】
この特許文献1に記載の吊り天井は、間隙部および変形吸収部材によって構造躯体の側壁からの揺れを天井部材に伝わり難くし、かつ制振ダンパーによって水平方向の振動を吸収することで、天井部材の振動の低減化を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−240538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載の吊り天井において、水平方向の振動低減は、制振ダンパーの減衰力によって行われる。この場合、減衰力は制振ダンパーからのみ天井部材に伝達されるが、制振ダンパーは、全ての天井部材と構造躯体の間に設けられているわけではないので、制振ダンパーが設けられた天井部材に対して局所的に大きな力が作用することがあり、天井の破損や崩壊を回避することができない場合がある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、地震などの揺れに対して天井部材の破損や崩壊を回避することのできる吊り天井を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の吊り天井は、構造躯体の上層部に対して複数の吊り材を介して天井部材が吊り下げて設けられた吊り天井において、前記構造躯体の側壁と前記天井部材との間に、前記構造躯体の水平方向の振幅に相当する間隙を有し、かつ前記吊り材の中途部分に、前記構造躯体の上層部と前記天井部材との間で前記吊り材を含む総長さを延長する延長部材を備えることを特徴とする。
【0009】
この吊り天井によれば、延長部材によって吊り材を含む総長さが延長されることで、構造躯体の水平方向の振れの固有周期に対し、天井部材の水平方向の揺れの周期が長周期化される。しかも、天井部材は、構造躯体に対して間隙を介して切り離されている。この結果、構造躯体の揺れに天井部材が追随し難くなり、水平方向の慣性力を低減し、構造躯体の揺れが天井部材に伝わり難くなることから、地震などの揺れに対して天井部材の破損や崩壊を回避することができる。
【0010】
また、本発明の吊り天井は、各吊り材において、吊り材を含む総長さを均等にすることを特徴とする。
【0011】
この吊り天井によれば、天井部材を吊り下げる複数の吊り材が均等の長さとされることで、各吊り材において天井部材の水平方向の振幅が均等化されるため、天井部材に局所的に荷重がかかる事態を防止することができる。また、構造躯体の上層部と天井部材との鉛直距離が場所により異なる場合、各吊り材において、吊り材を含む総長さを均等にすることが、天井部材に局所的に荷重がかかる事態を防止するうえでより好ましい。
【0012】
また、本発明の吊り天井では、前記延長部材は、前記吊り材を含む総長さを調整する調整機構を備えることを特徴とする。
【0013】
この吊り天井によれば、調整機構を備えることで、他の吊り材との総長さを合わせる調整を容易に行うことができる。しかも、同じ延長部材を用いて、他の吊り材との総長さを合わせる調整を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明の吊り天井は、前記間隙を塞ぐとともに、前記構造躯体および前記天井部材の水平方向の振動に伴う前記間隙の変化を吸収する補助天井部材と、前記天井部材および前記補助天井部材の上に多数敷き詰められた充填部材と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この吊り天井によれば、長周期の地震によって天井部材が揺れた場合に、この揺れに伴って各充填部材が移動することで、相互の摩擦によって天井部材の揺れを抑制することができる。しかも、充填部材によって音や熱の伝達を防止することもできる。
【0016】
また、本発明の吊り天井は、前記吊り材による複数の吊り位置に、前記延長部材および前記吊り材を含む総長さより短い取り付け長で、鉛直方向に作動するダンパーを備えることを特徴とする。
【0017】
この吊り天井によれば、間隙に近い水平振動が天井部材に生じた場合に、ダンパーは鉛直軸に対し吊り材より大きな角度が生じて伸びるため、水平方向にも減衰力が発生する。この水平力は、鉛直軸に対するダンパー角度が大きくなるに従い大きくなるため、大振幅時のブレーキとして働き、天井部材の水平振幅を間隙の範囲内に抑制して構造躯体への衝突を回避することができる。
【0018】
また、本発明の吊り天井は、前記吊り材に弾性部材を用いることを特徴とする。
【0019】
この吊り天井によれば、水平方向と同時に鉛直方向の天井部材の振れの周期を長周期化できるため、鉛直方向の慣性力も低減するから、地震などの揺れに対して天井部材の破損や崩壊をより回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地震などの揺れに対して破損や崩壊を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、吊り天井の構成を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る吊り天井の概略側面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る吊り天井の延長部材を示す斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る吊り天井の延長部材を示す斜視図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る吊り天井の延長部材を示す斜視図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る吊り天井の概略側面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る吊り天井の概略側面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る吊り天井の概略側面図である。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る吊り天井の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0023】
図1は、吊り天井の構成を示す概略斜視図である。図1に示すように吊り天井は、建屋などの内部の天井として設置されるものである。この吊り天井は、鋼製の野縁11と、この野縁11を支持する鋼製の野縁受12とをグリッド状に組んでなる下地材1を有している。下地材1の野縁受12は、建屋内の構造躯体の上層部101から吊りボルトなどの線状の吊り材2を複数介して吊り下げられる。下地材1の野縁11は、天井ボードなどの天井部材3が取り付けられる。すなわち、吊り天井は、下地材1に取り付けられた天井部材3が、吊り材2を介して構造躯体の上層部101に対して吊り下げられている。なお、吊り材2は、天井部材3を吊り下げる荷重を均等にするため、天井部材3の水平面上で均等に配置されていることが好ましい。
【0024】
図2は、本実施の形態に係る吊り天井の概略側面図であり、図3図5は、吊り天井の延長部材を示す斜視図である。本実施の形態の吊り天井は、図2に示すように、構造躯体の側壁102と天井部材3の外周縁との間に、構造躯体の水平方向の振幅に相当する間隙4を有している。
【0025】
さらに、本実施の形態の吊り天井は、延長部材5を備えている。延長部材5は、吊り材2の中途部分に介在されたもので、吊り材2を含む総長さを延長する機能を有する。具体的に、延長部材5は、図3に示すように、上下方向に棒材が折り返すように下向きのコ字形状に形成されている。そして、延長部材5は、各開口端5aに、構造躯体の上層部101に繋がる2つの吊り材2がそれぞれ連結され、閉塞端5bに、天井部材3に繋がる1つの吊り材2が連結されている。すなわち、延長部材5は、構造躯体の上層部101と天井部材3との間で、吊り材2を含む総長さを、構造躯体の上層部101と天井部材3との間の最短距離よりも延長する。なお、天井部材3を吊り下げる釣り合いを整えるため、延長部材5は、その開口端5aと、構造躯体の上層部101との間に設けられる各吊り材2が、ともに同じ長さとなるように形成されることが好ましい。
【0026】
このように構成された吊り天井は、延長部材5を備えることで、吊り材2を含む総長さが延長されることで、構造躯体の水平方向の振れの固有周期に対し、天井部材3の水平方向の揺れの周期が長周期化される。しかも、天井部材3は、構造躯体に対して間隙4を介して切り離されている。この結果、構造躯体の揺れに天井部材3が追随し難くなり、水平方向の慣性力を低減し、構造躯体の揺れが天井部材3に伝わり難くなることから、地震などの揺れに対して天井部材3の破損や崩壊を回避することが可能になる。なお、構造躯体の上層部101と天井部材3との上下間隔を大きくすれば、吊り材2が延長され、天井部材3の水平方向の振れを長周期化することが可能であるが、このようにすると天井部材3の高さが低くなるため、床と天井部材3との間隔が狭くなってしまう。延長部材5を備えれば、そのようなことはない。
【0027】
なお、構造躯体の揺れを天井部材3に伝わり難くするため、延長部材5によって延長される吊り材2を含む総長さは、構造躯体の水平方向の振れの固有周期に対し、天井部材3の水平方向の揺れの周期を3倍以上とする長さとすることが好ましい。
【0028】
また、本実施の形態の吊り天井は、各吊り材2において、吊り材2を含む総長さを均等にすることが好ましい。すなわち、天井部材3を吊り下げる複数の吊り材2が均等の長さとされることで、各吊り材2において天井部材3の水平方向の振幅が均等化されるため、天井部材3に局所的に荷重がかかる事態を防止することが可能になる。
【0029】
また、本実施の形態の吊り天井は、図2に示すように、延長部材5の閉塞端5bが水平方向に二股に分けられた下向きコ字形状に形成されているが、この構成に限らない。例えば、図4に示すように、延長部材5は、閉塞端5bを水平方向に三股に分けて形成したものであってもよい。さらに、図5に示すように、延長部材5は、閉塞端5bを水平方向に四股に分けて形成したものであってもよい。すなわち、延長部材5は、閉塞端5bを水平方向に2つを超えて分けて形成したものであってもよい。このように、閉塞端5bを水平方向に2つを超えて分けた場合、水平の複数方向の振動に適応でき、天井部材3の水平方向の揺れの周期が長周期化する効果をより顕著に得ることが可能になる。
【0030】
図6は、本実施の形態に係る吊り天井の概略側面図であり、構造躯体の上層部101と天井部材3との鉛直距離が場所により異なる場合を示している。このような場合であっても、各吊り材2において、吊り材2を含む総長さを均等にする。図6では、構造躯体の上層部101と天井部材3との鉛直距離が最も長い部分であって、吊り材2のみによって天井部材3を吊り下げている部分において、天井部材3の水平方向の振幅が長周期化されている。そして、その他の吊り材2において延長部材5を備えることで、各吊り材2について、吊り材2を含む総長さを均等にする。なお、図6に示すように、延長部材5は、図2に示す延長部材5と上下が反転して設けられていてもよい。なお、図6は、構造躯体の上層部101側における高さが異なる場合であるが、天井部材3側における高さが異なる場合もあり、このような場合であっても、上述したように、各吊り材2において、吊り材2を含む総長さを均等にする。
【0031】
また、本実施の形態の吊り天井では、延長部材5は、吊り材2を含む総長さを調整する調整機構6を備える。調整機構6は、図6に示すように、吊り材2の途中を延長部材5に連結することで、吊り材2を含む総長さを変えるものである。この調整機構6は、延長部材5の各開口端5aに繋がる2つの吊り材2の長さを調整するように設けられていても、延長部材5の閉塞端5bに繋がる1つの吊り材2の長さを調整するように設けられていても、全ての吊り材2の長さを調整するように設けられていてもよい。ただし、延長部材5の各開口端5aに繋がる2つの吊り材2の長さを調整する場合は、各吊り材2の長さを同じくなるように調整する。また、調整機構6は、延長部材5に対して上下方向に無段階または多段階にスライド移動可能に設けられていてもよく、延長部材5に対して着脱可能に設けられていてもよい。
【0032】
このように、調整機構6を備えることで、他の吊り材2との総長さを合わせる調整を容易に行うことが可能になる。しかも、同じ延長部材5を用いて、他の吊り材2との総長さを合わせる調整を容易に行うことが可能になる。
【0033】
図7は、本実施の形態に係る吊り天井の概略側面図である。図7に示す吊り天井は、間隙4を塞ぐとともに、構造躯体および天井部材3の水平方向の振動に伴う間隙4の変化を吸収する補助天井部材7を備える。補助天井部材7は、例えば、構造躯体の側壁102に固定されているが天井部材3には固定されず、天井部材3に対して相互に摺動可能に設けられた構成や、構造躯体の側壁102と天井部材3とに固定されており、中途部分が蛇腹状に形成された構成や、構造躯体の側壁102と天井部材3とに固定されており、中途部分が伸縮可能に形成された構成などがある。
【0034】
さらに、図7に示す吊り天井は、天井部材3および補助天井部材7の上に多数敷き詰められた充填部材8を備える。充填部材8は、発泡スチロールやスポンジなどの発泡材や、内部が中空な中空部材(樹脂製ボール)など、天井部材3および補助天井部材7に荷重をかけず、かつ吊り材2による天井部材3の吊り下げを阻害しないように軽量であって、かつ相互に擦れ合って摩擦抵抗を生じるものである。
【0035】
このように、間隙4を塞ぐとともに、構造躯体および天井部材3の水平方向の振動に伴う間隙4の変化を吸収する補助天井部材7と、天井部材3および補助天井部材7の上に多数敷き詰められた充填部材8とを備えることで、長周期の地震によって天井部材3が揺れた場合に、この揺れに伴って各充填部材8が移動し、相互の摩擦によって天井部材3の揺れを抑制することが可能になる。しかも、充填部材8によって音や熱の伝達を防止することも可能になる。なお、局所的な荷重をかけないため、充填部材8は、天井部材3および補助天井部材7の水平面上全体で均等に配置されていることが好ましい。また、充填部材8は、天井部材3および補助天井部材7と、構造躯体の上層部101との間に満たされていてもよく、充填部材8の摩擦を天井部材3および補助天井部材7や、構造躯体の上層部101にも生じさせることが可能になる。なお、図6に示すように、構造躯体の上層部101と天井部材3との鉛直距離が場所により異なる場合であっても、図7に示す吊り天井の構成を適用することが可能である。
【0036】
図8は、本実施の形態に係る吊り天井の概略側面図である。図8に示す吊り天井は、構造躯体の上層部101と天井部材3との鉛直距離が均等であって、吊り材2による複数の吊り位置に、天井部材3を吊る1箇所の延長部材5および吊り材2を含む総長さより短い取り付け長で、鉛直方向に作動するダンパー9を備えている。
【0037】
複数の吊り位置に、吊り材2に沿わせて延長部材5および吊り材2を含む総長さより短い取り付け長のダンパー9を設けることで、間隙4に近い水平振動が天井部材3に生じた場合に、ダンパー9は鉛直軸に対し吊り材2よりも大きな角度が生じて伸びるため、水平方向にも減衰力が発生する。この水平力は、鉛直軸に対するダンパー角度が大きくなるに従い大きくなるため、大振幅時のブレーキとして働きく。この結果、天井部材3の水平振幅を間隙4の範囲内に抑制して構造躯体への衝突を回避することが可能になる。なお、ダンパー9は、天井部材3の水平方向振動速度最大時には作動しないが、極端な減衰力を生じないようにオイル系のダンパーを適用することが好ましい。また、ダンパー9は、局所的に減衰力を生じないように、天井部材3の水平面上で均等に配置されていることが好ましい。
【0038】
図9は、本実施の形態に係る吊り天井の概略側面図である。図9に示す吊り天井は、吊り材2に弾性部材を用いている。
【0039】
吊り材2に弾性部材を用いることで、水平方向と同時に鉛直方向の天井部材3の振れの周期を長周期化できるため、鉛直方向の慣性力も低減するから、地震などの揺れに対して天井部材3の破損や崩壊をより回避することが可能になる。なお、通常時に天井部材3を安定して吊り下げるため、吊り材2に用いる弾性部材は、コイルバネを用いることが好ましい。なお、図6に示すように、構造躯体の上層部101と天井部材3との鉛直距離が場所により異なる場合であっても、図9に示す吊り天井の構成を適用することが可能である。なお、上述した図8に示すダンパー9と弾性部材とをともに適用した場合、鉛直方向に作動するダンパー9は、天井部材3の上下方向振動速度に応じて上下方向の減衰力を天井部材3に伝達することになるため、弾性部材とダンパー9とは同時に適用しないこととする。
【符号の説明】
【0040】
1 下地材
11 野縁
12 野縁受
2 吊り材
3 天井部材
4 間隙
5 延長部材
5a 開口端
5b 閉塞端
6 調整機構
7 補助天井部材
8 充填部材
9 ダンパー
101 上層部
102 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9