特許第5738129号(P5738129)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5738129インクの部分硬化および接触による平坦化によって基板上に画像を形成する方法および基板上に画像を形成するのに役立つ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738129
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】インクの部分硬化および接触による平坦化によって基板上に画像を形成する方法および基板上に画像を形成するのに役立つ装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   B41J2/01 123
   B41J2/01 129
   B41J2/01 125
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-193167(P2011-193167)
(22)【出願日】2011年9月5日
(65)【公開番号】特開2012-61852(P2012-61852A)
(43)【公開日】2012年3月29日
【審査請求日】2014年9月4日
(31)【優先権主張番号】12/881,715
(32)【優先日】2010年9月14日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ジェイ・ルーフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイクス・ケイ・ウェブスター−カーリー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・エヌ・クレティエン
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド・エム・トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジー・オデール
【審査官】 小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−271480(JP,A)
【文献】 特開2005−280245(JP,A)
【文献】 特開2006−264169(JP,A)
【文献】 特開2002−107528(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/157262(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷の際に基板上に画像を形成する方法であって、
搬送路に沿ってプロセス方向に基板を搬送するステップと、
冷却デバイスを用いて前記基板を冷却するステップと、
複数の固定された印刷ヘッドの少なくとも1つから前記冷却された基板の表面上へインクを直接塗布するステップと、
前記基板の前記表面上の前記インクに、第1の放射部からの第1放射を照射するステップであって、前記第1の放射部は、前記プロセス方向において前記複数の固定印刷ヘッドのすべてに対して、それらの下流に、重ならないように物理的に配置され、前記基板の前記表面上の前記インクを部分的に硬化させる、ステップと、
第1部材の第1表面および第2部材の第2表面を備える平坦化デバイスの挟持部において、前記基板および前記基板の前記表面にすでに塗布された前記部分硬化したインクに圧力を加えて、前記インクを前記基板の前記表面上で平坦にするステップであって、前記第1の部材の前記第1表面は、前記基板の前記インクが塗布された面に接触するとともに、親水性材料で形成され、前記第1の部材の前記第1表面には、水と洗浄剤とからなる放出液体が塗布される、ステップと、
前記基板の前記表面上の前記平坦にされた状態のインクに、前記プロセス方向において前記挟持部の下流にある第2の放射部から第2放射を照射して、前記基板上の該インクを実質的に完全に硬化させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記インクは、1つのモノマー、1つの光開始剤、1つの着色剤、および少なくとも1つの有機ゲル化剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
印刷の際に基板上に画像を形成する方法であって、
搬送路に沿ってプロセス方向に基板を搬送するステップと、
冷却デバイスを用いて前記基板を冷却するステップと、
複数の固定された印刷ヘッドの少なくとも1つから前記基板の冷却された表面上へ紫外線(UV)硬化性インクを直接塗布するステップと、
前記基板の前記表面上の前記UV硬化性インクに、第1のUV放射部からの第1UV放射を照射するステップであって、前記第1のUV放射部は、前記プロセス方向において前記複数の固定印刷ヘッドのすべてに対して、それらの下流に、重ならないように物理的に配置され、前記基板の前記表面上の前記UV硬化性インクを部分的に硬化させる、ステップと、
挟持部を形成する第1ロールの第1表面および第2ロールの第2表面を備える平坦化デバイスの前記挟持部において、前記基板および前記基板の前記表面にすでに塗布された前記部分硬化したUV硬化性インクに圧力を加えて、前記UV硬化性インクを前記基板の前記表面上で平坦にするステップであって、前記第1ロールの前記第1表面は、前記基板の前記インクが塗布された面に接触するとともに、親水性材料で形成され、前記第1ロールの前記第1表面には、水と洗浄剤とからなる放出液体が塗布される、ステップと、
前記基板の前記表面上の前記平坦にされた状態のUV硬化性インクに、前記プロセス方向において前記挟持部の下流に配置された第2のUV放射部から第2UV放射を照射して、前記基板の前記表面上の該UV硬化性インクを実質的に完全に硬化させるステップと、を含む、方法。
【請求項4】
印刷の際に基板上に画像を形成する装置であって、
搬送路に沿ってプロセス方向に基板を搬送する搬送装置と、
前記基板を冷却する冷却デバイスと、
複数の固定された印刷ヘッドの少なくとも1つから前記基板の冷却された表面上へインクを直接塗布するマーキングデバイスと、
前記プロセス方向において前記複数の印刷ヘッドのすべてに対して、それらの下流に、重ならないように物理的に配置された部分硬化デバイスであって、前記基板の前記表面上の前記インクに第1放射を照射して、前記基板の前記表面上の前記インクを部分的に硬化させる、部分硬化デバイスと、
前記プロセス方向において前記部分硬化装置の下流に配置される平坦化デバイスであって、前記平坦化デバイスは、第1表面を含む第1の部材と、第2表面を含む第2の部材と、前記第1の表面と前記第2の表面とによって形成される挟持部と、を備え、前記第1の表面と前記第2の表面は、前記基板および前記挟持部に収容された前記基板に事前に塗布された前記部分的に硬化されたインクに圧力を加えて、前記インクを前記基板の前記表面上で平坦にし、前記第1の部材の前記第1表面は、前記基板の前記インクが塗布された面に接触するとともに、親水性材料で形成され、前記第1の部材の前記第1表面には、水と洗浄剤とからなる放出液体が塗布される、平坦化デバイスと、
前記プロセス方向において前記挟持部の下流に配置される第2の硬化デバイスであって、前記基板の前記表面上の前記平坦にされた状態のインクに、第2放射を照射して、前記基板の前記表面上の前記インクを実質的に完全に硬化させる第2の硬化デバイスと、を含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
印刷プロセスでは、マーキング部材が基板へ付着されて画像を形成する。これらのプロセスでは、表面との接触によって圧力が基板およびマーキング部材へ加えられて、マーキング部材を基板上で平坦にすることができる。マーキング部材は、接触表面へオフセットすることがあり、結果として定着画像は不満足なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
印刷の際に基板上に画像を形成する方法および画像を形成する装置であって、装置の表面へのインクのオフセットなしに、インクを用いて基板上に画像を形成することができる、方法および装置を提供することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0003】
印刷の際に基板上に画像を形成する方法および印刷の際に基板上に画像を形成する装置が提供される。本方法の典型的な実施形態は、インクを基板の表面上へ付着するステップと、基板の表面上のインクに、第1放射を照射して、インクを部分硬化させるステップと、第1部材の第1表面および第2部材の第2表面を備える挟持部において、基板および部分硬化したインクに圧力を加えて、インクを基板の表面上で平坦にするステップと、基板の表面上の平坦にされた状態のインクに、第2放射を照射して、該インクを実質的に完全に硬化させるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】画像に関するインクの部分硬化および接触による平坦化を用いて、基板上に画像を形成する印刷装置の典型的な実施形態を描写する図である。
図2図1の印刷装置における部分硬化デバイスの実施形態によって放出することができる発光体エネルギーの典型的なスペクトラムを描写する図である。
図3】平坦化デバイスの挟持部において受けられる前に部分硬化デバイスにおいて位置付けられた、インクが配置されるための正表面を含む基板を示すとともに、挟持部を通過後の基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
開示された実施形態は、印刷の際に基板上に画像を形成する方法を含む。本方法の典型的な実施形態は、インクを基板の表面上へ付着するステップと、基板の表面上のインクに、第1放射を照射して、インクを部分硬化させるステップと、第1部材の第1表面および第2部材の第2表面を備える挟持部において、基板および部分硬化したインクに圧力を加えて、インクを基板の表面上で平坦にするステップと、基板の表面上の平坦にされた状態のインクに、第2放射を照射して、インクを実質的に完全に硬化させるステップとを含む。
【0006】
印刷の際に基板上に画像を形成する方法の別の典型的な実施形態は、紫外線(UV)硬化性インクを基板の表面上へ付着するステップと、基板の表面上のUV硬化性インクに第1UV放射を照射して、UV硬化性インクを部分硬化させるステップと、挟持部を形成する第1ロールの第1表面および第2ロールの第2表面を備える挟持部において、基板および部分硬化したUV硬化性インクに圧力を加えてUV硬化性インクを基板の表面上で平坦にするステップと、基板の表面上の平坦にされた状態のUV硬化性インクに、第2UV放射を照射してUV硬化性インクを実質的に完全に硬化させるステップとを含む。
【0007】
開示された実施形態は、さらに、印刷の際に基板上に画像を形成する装置を含む。本装置の典型的な実施形態は、インクを基板の表面上へ付着するマーキングデバイスと、基板の表面上のインクに、第1放射を照射して、インクを部分硬化させる部分硬化デバイスと、第1表面を含む第1部材、第2表面を含む第2部材、ならびに第1表面および第2表面によって形成された挟持部を含み、第1表面および第2表面は、挟持部において受けられる基板および部分硬化したインクに圧力を加えてインクを基板の表面上で平坦にする、平坦化デバイスと、基板の表面上の平坦にされた状態のインクに、第2放射を照射して、インクを実質的に完全に硬化させる第2の硬化デバイスとを含む。
【0008】
紫外線(UV)硬化性相変化インクは、印刷の際に基板上に画像を形成するのに、印刷ヘッドに対して用いることができる。これらのインクは、周囲温度において、粘性のあるゲル状の粘度を有する。これらのインクは、約周囲温度から高温まで加熱されると、低粘度の液体への相変化を受ける。これらのインクは、液体に変化するまで加熱され、次いで印刷ヘッドから直接に基板上へインク小滴として噴出することができる。噴出されたインクがいったん基板上に衝突すると、インクは冷たくなり、液相からさらに粘性のあるゲル粘度へ相を戻す。
基板へ付着されたUV硬化性ゲルインクは、UV放射へ暴露されて、インクを硬化させることができる。用語「硬化性」は、例えばフリーラジカル経路を含む重合を経由して硬化することができる、および/または放射感受性の光開始剤を用いて重合が光開始することができる部材を例えば説明する。用語「放射硬化性」は、例えば放射源への暴露時に硬化させるすべての形態を指し、光源および熱源を含めて、ならびに開始剤の有無を含めて指す。典型的な放射硬化技術は、紫外線(UV)光を用いた硬化であって、例えば200〜400nmの波長またはさらにまれに可視光を有するとともに、任意選択で光開始剤および/または増感剤の存在下において行われる光硬化、熱硬化を用いた硬化であって、高温熱開始剤(吐出温度において大部分が不活性でもよい)の有無を含む熱硬化、ならびにこれらの適切な組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0009】
しかしながら、種々の用途にとっては、このUV硬化の前にインクが平坦にされることが望ましい。この平坦化によって、さらに一様な画像光沢を生み出すことができ、印刷ヘッドの吐出不足を目立たなくすることができる。さらに加えて、包装などの一部の印刷用途は、印刷物に関して比較的一定の厚さの薄膜インク層を有することから、利益を享受することができる。
【0010】
これらのインクは、周囲温度では、硬化する前には粘着力をほとんど有しない。さらにその上、これらのインクは、多くのタイプの部材に対して良好な親和性を有するように調製することができる。したがって、電子写真法で使用されることがある従来の定着ロールなどの、他のインク形式の層を平坦にするのに用いられる、従来の方法およびデバイスは、ゲルインクが、平坦にしようとするのに用いられるデバイス上へ、分かれるとともにオフセットする傾向があるので、硬化の前にゲルインクを平坦にすることには適していないことが指摘されている。
【0011】
ゲルインクは、主として硬化性モノマーで構成されてよい。これらのモノマーは、光重合プロセスの間に架橋される。表面上へのインクのオフセット現象を低減しようとするために、これらのインクの室温粘度を増加させることは、満足なアプローチではないと判断されていた。このようなゲルインクの室温粘度を増加させるために、必要となる物質をインクへ追加すれば、高温においても粘度を高めることになる。したがってインクは、印刷ヘッドにおいてより高い温度へ加熱されて、吐出するのに必要な粘度においてインクを維持する必要があることになる。しかしながら、これらのインクが熱重合を受けることがあるため、印刷ヘッドの温度が高められるのは、望ましくない。
【0012】
UV硬化性インクで基板上に画像を形成することに関するこれらの観察を考慮して、本開示は、インクの部分硬化および部分硬化したインクの接触による平坦化を含む、インクで基板上に画像を形成する方法、ならびに印刷の際に基板上に画像を形成するのに役立つ装置を提供する。本方法および装置は、基板へ付着されたインクを部分硬化させることができ、次いで挟持部において圧力が加えられて、平坦化デバイスの接触表面へのインクのオフセット現象がゼロまたは実質的に皆無の状態で、インクを平坦にすることを可能にする。
【0013】
図1は、インクを用いて、基板上に画像を形成するのに役立つ印刷装置100の典型的な実施形態を描写する。装置100は、マーキングデバイス120、部分硬化デバイス140、平坦化デバイス160および第2の硬化デバイス180を含み、この順序でプロセス方向Pに沿って配置される。正表面112および反対側の背表面114を有する基板110が示される。マーキングデバイス120は、基板110の正表面112上へインクを堆積させて、インク層116を形成するように動作可能である。部分硬化デバイス140は、インク層116を部分硬化させるのに効果的な発光体エネルギーを、インク層116に照射するように動作可能である。平坦化デバイス160は、インク層116に圧力を加えることによって、部分硬化したインク層116を基板110の正表面112上で平坦にする(すなわち、広げる)。第2の硬化デバイス180は、平坦にされた状態のインク層116に発光体エネルギーを照射して、インク層116をさらに硬化させるように動作可能である。
【0014】
実施形態では、マーキングデバイス120、部分硬化デバイス140および第2の硬化デバイス180は静止して、基板110は、インク層116が付着され、次いで照射されている間、これらのデバイスのそばを通り過ぎる。基板110へ加えられる発光体エネルギーの適用量は、滞留時間または強度を制御することによって、制御することができる。部分硬化デバイス140および第2の硬化デバイス180のそばを通り過ぎる基板110の搬送速度、ならびに部分硬化デバイス140および第2の硬化デバイス180に属する発光体エネルギー源の数は、インク層116の暴露時間を制御するように選択することができる。実施形態では、部分硬化デバイス140および第2の硬化デバイス180に属する発光体エネルギー源は、インク層116の部分硬化および第2の硬化の全体を通してオンすることができ、それによって基板110が、これらのデバイスのそばを連続的に通り過ぎながら、最大で正表面112全体を照射することを可能にする。
【0015】
図示された基板110は、シートである。例えば基板110は、普通紙、ポリマーフィルム、金属箔、包装部材、または同類のものなどの、一枚のシートとすることができる。別の実施形態では、基板は、普通紙、ポリマーフィルム、金属箔、包装部材、または同類のものなどの部材からなる、途切れのないウェブの形をした部材とすることができる。
【0016】
図示された実施形態では、マーキングデバイス120は、一連の印刷ヘッド122、124、126および128を含み、これらの印刷ヘッドは、「基板に向かう」配置に配置されて、基板110が、プロセス方向Pに前進しながら、基板110の正表面112上にインク小滴を堆積させる。例えば印刷ヘッド122、124、126および128は、加熱された圧電印刷ヘッド、MEMS(微小電気機械システム=micro−electro−mechanical system)印刷ヘッド、または同類のものとすることができる。印刷ヘッド122、124、126および128は、正表面112上へ別々の色分解を配置して、入力デジタルデータに従って所望のフルカラー画像を組み立てることができる。
【0017】
インクは、発光体エネルギーを用いて部分硬化し、次いでさらに硬化することを可能にする組成物であって、基板上へ堅牢な画像を定着する組成物を含む。インクは、1つ以上の光開始剤部材を含有する紫外線光(UV)硬化性インクを含むことができる。UV硬化性インクは、高温まで加熱されて、低粘度の状態の間に吐出することができる。これらのインクが、周囲温度状態のシートなどのより冷たい基板上に衝突すると、インクは基板温度まで冷たくなる。冷却される間に、インクはますます粘性を有するようにすることができる。UV硬化性インクがUV放射へ暴露されると、インク内に重合および架橋結合が生じ、さらにインクの粘度を増加させる。
【0018】
基板上に画像を形成するのに用いることができる典型的なインクは、着色剤、開始剤、およびインク展色剤(ビヒクル)を含む相変化インクと、着色剤、開始剤、および相変化インク担体を含む相変化インクと、放射硬化性インクをいっしょに形成する、25°Cで液体状態の紫外線(UV)硬化性モノマー、紫外線(UV)硬化性ワックスおよび着色剤を含む放射硬化性インクとを含むことができる。
【0019】
マーキングデバイス120に属する印刷ヘッド122、124、126および128は、例えば、相変化インクの粘度を低減して、印刷ヘッド122、124、126および128のノズルから基板110上へ小滴を吐出するために十分に高い温度まで、相変化インクを加熱するのに用いることができる。相変化インクが基板110上に衝突すると、熱が、インクから冷たい基板110へ伝達される。堆積した状態の相変化インクは急速に冷たくなり、基板110上にゲル粘度を現像する。この急速冷却が原因で、相変化インクは、ゲル粘度が生じる前に、基板110の正表面112上で、横方向にリフローするまたは平坦になるのに十分な時間を有しない。
【0020】
印刷装置100の実施形態では、基板110の正表面112上の堆積した状態のインク層116は、インクを部分硬化させるのに効果的な発光体エネルギーを有する部分硬化デバイス140によって照射される。本明細書では、用語「部分硬化させる」は、部分硬化デバイス140によって放出される発光体エネルギーが、インクの部分的な重合だけが生じるように、インク内に含有されるいくらかの光開始剤を活性化するのに効果的であることを意味する。インクは、いくつかの光開始剤を含有することができ、部分硬化させる放射によって、この光開始剤の一部は部分的に活性化され、一部はまったく活性化されない。この部分重合の結果として、インクの粘度は、照射された状態のインクが挟持部を通過し、挟持部内のインクのオフセット現象なしに圧力が加えられることを可能にするのに十分に高い粘度まで増加する。基板110が挟持部に入ると、インク層を正表面112上で所望のように平坦にするのに十分な圧力が加えられるときに、部分硬化したインク層は、基板110の正表面112上で流れるまたは広がることを可能にする粘度を有する。
【0021】
部分硬化したインク層116は、平坦化デバイス160を用いて正表面112上でインクを横方向に広げるように平坦にされて、インク層116の線の太さを増加させることを可能にする、粘度および凝集力特性を有している。実施形態では、部分硬化デバイス140は、少なくとも1つの発光体エネルギー源を含む。例えば発光体エネルギー源は、発光ダイオード(LED)アレイ、または同類のものとすることができる。発光体エネルギー源は、インク層116について最適化された部分硬化を生み出すために、印刷の際に用いられるインク組成物に最適化されたスペクトラムを有する発光体エネルギーを放出するように選択することができる。発光体エネルギーのスペクトラムは、一般に遠UV(遠紫外、約100nm波長)から近UV(近紫外、約400nm波長)まで広がる波長範囲において、発光体エネルギーの強度を与えるグラフによって提供される。図2は、部分硬化デバイス140によって放出される発光体エネルギーの典型的なスペクトラムを示す。
【0022】
部分硬化の間に、基板110およびインク層116の温度は、温度制御されたプラテン130を用いて制御することができる。例えばプラテン130は、約15°Cから約20°Cまでなどの、約10°Cから約30°Cまでの温度にあり、基板110およびインク層116の温度を所望の温度に制御することができる。インク層116は、部分硬化の間に、周囲温度を下回る温度、周囲温度、または周囲温度を上回る温度とすることができる。
【0023】
平坦化デバイス160は、基板110上のインク層116に圧力を加えるための対向する表面を有する部材を含む。部材は、2つのロール、1つのロールおよび1つのベルト、または2つの、ロール上に設けられたベルトを含むことができ、この1つのロールおよび1つのベルトは、第1ロール、および第2ロール上に設けられた1つのベルトである。図3は、平坦化ロール162および圧力ロール164を含む平坦化デバイス160の典型的な実施形態を示す。LEDアレイ142を含む部分硬化デバイス140の一実施形態も示される。平坦化ロール162および圧力ロール164は、挟持部166において互いに接触し、基板110およびインク層116は、挟持部166において、部分硬化したインク層116を平坦にするのに十分な圧力を受けて、平坦にされたインク層116’を生み出す。典型的には、挟持部166において加えられる圧力は、約30psiから約120psiまでなどの、約10psiから約800psiまでの範囲内とすることができる。
【0024】
平坦化ロール162は、所望の機械的および化学的特性をもたらす種々の部材から形成され得る。例えば、図示された平坦化ロール162は、コア168、およびコア168上を覆う外側表面172を含む外側層170を含む。コア168は、アルミニウム、アルミニウム合金、または同類のものなどの、適切な金属で構成され得る。実施形態では、外側層170は、耐久性のある親水性部材で構成され得る。外側層170は、例えばコア168の全面にわたるコーティングのように、塗布され得る。別の実施形態では、外側層170は、フッ素化ポリマー、または同類のものなどの適切な特性を有するポリマーで構成され得る。
【0025】
圧力ロール164は、種々の部材から形成され得る。図示された圧力ロール164は、コア174、およびコア174上を覆う外側表面178を含む外側層176を含む。実施形態では、コア174は、比較的硬い部材で構成される。例えばコア174は、鋼、ステンレス鋼、または同類のものなどの、適切な金属で構成され得る。外側層176は、挟持部166を形成する平坦化ロール162との接触によって、弾性的に変形する部材で構成され得る。例えば外側層176は、シリコンゴム、または同類のもので構成され得る。
【0026】
実施形態では、放出液体は、平坦化ロール162の親水性の外側表面172に付着され、外側表面172をぬらして、平坦化の間の画像のオフセット現象を低減するのに役立つことができる。例えば放出液体は、有効な量の洗浄剤を付加した水で実質的に構成されて、表面張力を低減することができる。
【0027】
装置100において、第2の硬化デバイス180は、少なくとも1つの発光体エネルギー源を含み、この発光体エネルギー源は、平坦化デバイス160によるインク層116の平坦化に引き続いて、インク相116を実質的に完全に硬化させるのに効果的なスペクトラムを有する発光体エネルギーを放出するように動作可能である。実施形態では、第2の硬化デバイス180に属する発光体エネルギー源のスペクトラムは、部分硬化デバイス140に属する発光体エネルギー源によって放出される発光体エネルギーのスペクトラムと、同じでも、異なってもよい。例えば第2の硬化デバイス180は、部分硬化デバイス140内に含まれる発光体エネルギー源とは異なるピーク波長および強度のエネルギーを放出するUV−LEDアレイを含むことができる。
図1
図2
図3