(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィルターによって潤滑剤を捕捉する場合には、経路を通過する潤滑剤の量が多いとフィルターで捕捉しきれず、潤滑剤がフィルターの外部に流出してしまうおそれがある。そこで、本発明は、上記に鑑み、潤滑剤が所定の収容空間外に流出することを効率よく抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業工具の好ましい形態によれば、先端工具を駆動する駆動機構と、駆動機構が配置された駆動機構室を有している。さらに、駆動機構室においては、駆動機構には潤滑剤が配されている。この駆動機構は、可動駆動軸を備えた可動部材を有しており、可動部材には、第1開口と第2開口と、第1開口と第2開口を連通させる連通路が形成されている。そして、連通路は、少なくとも一部が可動駆動軸の内部に形成され、第1開口
は、駆動機構室の内部に
開口し、第2開口
は、駆動機構室の外部
に開口するよう構成されている。なお、駆動機構室内には、駆動機構の少なくとも一部が配置されていればよい。
【0006】
本発明によれば、駆動機構室の内部と外部を連通させる連通路が形成されているため、駆動機構室内の圧力が上昇することを抑制することができる。さらに、連通路が可動部材に形成されているため、可動部材の移動に伴って、第1開口の位置が変化する。そのため、移動しない部材に第1開口が形成されている場合、すなわち第1開口が固定されて常時同じ位置に開口している場合に比べて、潤滑剤が第1開口から連通路に流入しにくくなる。これにより、潤滑剤が駆動機構室の外部に流出することを抑制することができる。
【0007】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、可動部材は、回転駆動軸を備えた回転部材であり、連通路は、少なくとも一部が回転駆動軸の内部に形成されていることを特徴とする。
【0008】
本形態によれば、可動部材としての回転部材に、連通路が回転部材に形成されているため、回転部材の回転に伴って回転部材の回転軸に対して、第1開口の位置が変化する。そのため、回転しない部材に第1開口が形成されている場合に比べて、潤滑剤が第1開口から連通路に流入しにくくなる。
【0009】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、連通路は、回転部材の回転径方向に延在して第1開口に接続していることを特徴とする。なお、連通路が、「回転径方向に延在」とは、連通路が回転径方向の成分を有して延在していればよい。
【0010】
本形態によれば、潤滑剤が第1開口から連通路に流入した場合であっても、連通路が回転径方向に延在して第1開口に接続しているため、回転部材が回転したときの遠心力によって、潤滑剤が第1開口から駆動機構室に向かって排出される。その結果、潤滑剤が駆動機構室の外部に流出することを抑制することができる。
【0011】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、連通路は、回転部材の回転軸方向に延在して第2開口に接続していることを特徴とする。なお、連通路が、「回転軸方向に延在」とは、連通路が回転軸方向の成分を有して延在していればよい。
【0012】
本形態によれば、潤滑剤が連通路に流入した場合であっても、連通路が回転軸方向に延在して第2開口に接続しているため、回転部材が回転したときの遠心力によっては、潤滑剤が第2開口から外部に流出しにくい。その結果、潤滑剤が駆動機構室の外部に流出することを抑制できる。
【0013】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、連通路は、回転駆動軸の回転軸を含み当該回転軸に平行に延在して第2開口に接続していることを特徴とする。
【0014】
連通路が回転部材の回転軸方向に延在して第2開口に接続している場合は、回転駆動軸の回転軸を含み当該回転軸に平行に延在して第2開口に接続していることにより、より潤滑剤が第2開口から外部に流出しにくくなる。
【0015】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、駆動機構はモータを有し、回転部材は、モータの出力軸であることを特徴とする。また、出力軸の先端部に、駆動機構室から隔てられ、駆動機構室の外部に連通する外部連通室を有し、第2開口は、出力軸の先端部に形成され、第2開口が外部連通室に開口するように配置されていることがより好ましい。
【0016】
本形態によれば、回転部材としてのモータの出力軸に連通路を形成することができ、連通路を形成するために作業工具に特別な部材を追加する必要がない。
【0017】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、駆動機構は、モータと、当該モータによって回転駆動される被駆動部材を有し、回転部材は、被駆動部材であることを特徴とする。また、当該被駆動部材は、モータの回転出力を直線方向の運動に変換するクランク機構に設けられたクランク軸であることがより好ましい。
【0018】
本形態によれば、回転部材としてのモータに駆動される被駆動部材に連通路を形成することができる。例えば、被駆動部材としてのクランク機構に設けられたクランク軸に、連通路を形成するために作業工具に特別な部材を追加する必要がない。
【0019】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、連通路は、複数の内部空間が連通して構成されていることを特徴とする。
【0020】
本形態によれば、連通路が複数の内部空間が連通して構成されているため、潤滑剤が連通路に流入した場合であっても、各内部空間に潤滑剤が保持されて駆動機構室の外部に流出することを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、潤滑剤が所定の収容空間外に流出することを効率よく抑制できる技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態につき、
図1〜
図3を参照して、詳細に説明する。本実施形態は、回転工具の一例として電動式のハンマドリルを用いて説明する。
図1、
図2に示すように、本実施形態に係るハンマドリル100は、概括的に見て、ハンマドリル100の外郭を形成する工具本体としての本体部101を主体として構成される。本体部101の先端領域(
図1左側)には、ハンマビット119が筒状のツールホルダ159を介して着脱自在に取り付けられる。ハンマビット119は、ツールホルダ159に対し軸方向には相対移動可能とされ、周方向には一体回転するように装着される。本体部101の先端領域の反対側には、作業者が握るハンドグリップ107が連接されている。ハンマビット119は、本発明における「先端工具」に対応する実施構成例である。なお、説明の便宜上、ハンマドリル100のハンマビット119側を前、ハンドグリップ側を後という。
【0024】
本体部101は、駆動モータ110を収容したモータハウジング103と、運動変換機構120、打撃要素140及び動力伝達機構150を収容したギアハウジング105とによって構成されている。駆動モータ110は、その回転軸線(モータ軸111の回転軸線)が本体部101の長軸方向(ハンマビット119の長軸方向)と概ね直交する縦方向(
図1の上下方向)となるように配置されている。駆動モータ110のトルクは、運動変換機構120によって直線運動に適宜変換された上で打撃要素140に伝達され、当該打撃要素140を介してハンマビット119の長軸方向への衝撃力を発生する。駆動モータ110が、本発明における「可動部材」、「回転部材」、「モータ」に対応し、モータ軸111が、本発明における「可動駆動軸」、「回転駆動軸」、「出力軸」、に対応する実施構成例である。
【0025】
また、駆動モータ110のトルクは、動力伝達機構150によって回転速度が適宜減速された上でツールホルダ159を介してハンマビット119に伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。駆動モータ110は、ハンドグリップ107に配置されたトリガ107aの引き操作によって通電駆動される。
【0026】
運動変換機構120は、駆動モータ110のモータ軸111に形成された第1駆動ギア121及び当該第1駆動ギア121に噛み合い係合された被動ギア123を介して駆動されるクランク機構によって構成される。クランク機構は、被動ギア123と一体回転するクランク軸125、当該クランク軸125の軸線からずれた位置に設けられた偏心軸127、ピストン131、当該ピストン131と偏心軸127を連接する連接ロッド129等で構成される。クランク軸125は、軸方向の両端部において上下の軸受を介してギアハウジング105に回転自在に支持されている。ピストン131は、打撃要素を駆動する駆動子として備えられ、シリンダ141内をハンマビット119の長軸方向と同方向に摺動可能とされる。駆動モータ110のモータ軸111とクランク軸125は、互いに平行にかつ横並びに配置される。また、駆動モータ110とシリンダ141は、長軸線が互いに直交するように配置される。シリンダ141は、ギアハウジング105に固定状に支持されている。
【0027】
打撃要素140は、シリンダ141内に摺動自在に配置された打撃子としてのストライカ143と、ツールホルダ159内に摺動自在に配置されるとともに、ストライカ143の運動エネルギをハンマビット119に伝達する中間子としてのインパクトボルト145とを主体として構成される。シリンダ141は、ツールホルダ159の後方に配置されるとともに、ピストン131及びストライカ143によって仕切られる空気室141aを有する。ストライカ143は、ピストン131の摺動動作に伴う空気室141aの圧力変動(空気バネ)を介して駆動され、インパクトボルト145に衝突(打撃)し、当該インパクトボルト145を介してハンマビット119に打撃力を伝達する。
【0028】
動力伝達機構150は、第2駆動ギア151、第1中間ギア161、第1中間軸163、電磁クラッチ170、第2中間ギア165、機械式トルクリミッター167、第2中間軸153、小ベベルギア155、大ベベルギア157及びツールホルダ159を主体として構成され、駆動モータ110のトルクをハンマビット119に伝達する。ツールホルダ159は、略円筒状の筒状部材であり、ギアハウジング105によってハンマビット119の長軸周りに回転自在に保持される。第2駆動ギア151は、駆動モータ110のモータ軸111に固定され回転駆動される。トルク伝達において、モータ軸111の下流側に位置する第1中間軸163及び第2中間軸153は、モータ軸111に対して平行かつ横並びに配置される。第1中間軸163は、上下の軸受を介して軸方向の端部がギアハウジング105に回転自在に支持されている。また第2中間軸153は、上下の軸受を介して軸方向の端部がギアハウジング105に回転自在に支持されている。第1中間軸163は、電磁クラッチ搭載用の軸として備えられ、モータ軸111と第2中間軸153との間に配置されるとともに、第2駆動ギア151と常時噛み合い係合する第1中間ギア161により電磁クラッチ170を経て回転駆動される。なお、第1中間ギア161は、第2駆動ギア151に対して減速されるよう第2駆動ギア151に対する減速比が設定されている。
【0029】
電磁クラッチ170は、駆動モータ110とハンマビット119との間、詳しくはモータ軸111と第2中間軸153との間において、トルクの伝達と遮断を行うものであり、ハンマドリル作業中において、ハンマビット119が被加工材に捕捉されてロックしたような場合に、本体部101側に作用する反動トルク(ハンマビット119の回転方向と逆方向に作用するトルク)が異常に増大して本体部101が振り回されることを防止する手段として備えられている。電磁クラッチ170は、第1中間軸163の長軸方向において第1中間ギア161の上方に配置されており、ストライカ143の動作軸線に対して第1中間ギア161よりも近接して配置されている。
【0030】
電磁クラッチ170は、摩擦を利用した摩擦式であり、円盤状の駆動側クラッチ部材171、円盤状の被動側クラッチ部材173、クラッチバネ175、電磁コイル177、及び当該電磁コイル177を内蔵したコイル内蔵部材179を主体として構成される。駆動側クラッチ部材171と被動側クラッチ部材173は、第1中間軸163の長軸方向において、対向状に長軸方向に相対移動可能に配置されている。そして、駆動側クラッチ部材171と被動側クラッチ部材173は、電磁コイル177に通電された場合に、電磁力によって互いに接近する方向へと相対移動されて接触し、接触面の摩擦力によってトルクを伝達する。電磁コイル177の通電が遮断された場合には、クラッチバネ175の付勢力によって、駆動側クラッチ部材171と被動側クラッチ部材173の接触が解除され、これによりトルクの伝達を遮断する。
【0031】
電磁クラッチ170から出力されるトルクは、機械式トルクリミッター167を介して第2中間軸153に伝達されるよう構成されている。機械式トルクリミッター167は、ハンマビット119にかかる過負荷に対する安全装置として備えられ、ハンマビット119に設計値(以下、最大伝達トルク値ともいう)を超える過大なトルクが作用したとき、ハンマビット119へのトルク伝達を遮断するものであり、第2中間軸153上に同軸で取り付けられている。
【0032】
機械式トルクリミッター167は、第2中間ギア165と噛み合い係合する第3中間ギア168aを有する駆動側部材168と、第2中間軸153と一体回転する被動側部材169を有する。第2中間軸153に作用するトルク値(ハンマビット119に作用するトルク値に相当する)が、スプリング167aの付勢力によって予め定まる最大伝達トルク値以下であれば、駆動側部材168と被動側部材169間でトルク伝達する。一方、第2中間軸153に作用するトルク値が最大伝達トルク値を超えたときには、駆動側部材168と被動側部材169間でのトルク伝達を遮断するよう構成されている。なお、駆動側部材168の第3中間ギア168aは、第2中間ギア165に対して減速されるよう速度比が設定されている。
【0033】
第2中間軸153へと伝達されたトルクは、当該第2中間軸153に一体に形成された小ベベルギア155から当該小ベベルギア155に噛み合い係合する大ベベルギア157、そして当該大ベベルギア157と結合された最終出力軸としてのツールホルダ159を介してハンマビット119へと伝達されるように構成されている。
【0034】
運動変換機構120、打撃要素140、動力伝達機構150、および駆動モータ110のモータ軸111の先端部分は、ギアハウジング105によって囲まれている内部空間としてのギア収容空間105aに収容されている。ギア収容空間105a内には、運動変換機構120、打撃要素140及び動力伝達機構150を潤滑する潤滑剤が配されている。ギア収容空間105aが、本発明における「駆動機構室」に対応し、運動変換機構120、打撃要素140、動力伝達機構150、および駆動モータ110が、本発明における「駆動機構」に対応する実施構成例である。
【0035】
電磁クラッチ179は、駆動側クラッチ部材171と被動側クラッチ部材173の接触面の摩擦力によってトルク伝達を行うため、摩擦面に潤滑剤が付着した場合に、摩擦面がスリップを引き起こしトルク伝達能力が低下する可能性がある。そこで、潤滑剤のクラッチ収容空間105aへの侵入を抑制するために、第1のオイルシール181及び第2のオイルシール183が配置されている。
【0036】
上記のように構成されたハンマドリル100は、トリガ107aが操作されると駆動モータ110に通電し駆動される。駆動モータ110のトルクは、運動変換機構120に伝達され、ピストン131がシリンダ141に沿って直線状に摺動動作される。これにより、空気室141a内の空気の圧力変化、すなわち空気バネの作用によりストライカ143がシリンダ141内を直線運動する。ストライカ143は、インパクトボルト145に衝突することで、その運動エネルギをハンマビット119に伝達する。
【0037】
一方、駆動モータ110のトルクは、動力伝達機構150に伝達される。これにより、ツールホルダ159が回転駆動され、ツールホルダ159と共にハンマビット119が一体に回転される。このようにして、ハンマビット119が軸方向のハンマ動作と周方向のドリル動作を行い、被加工材にハンマドリル作業を遂行する。
【0038】
なお、本実施の形態に係るハンマドリル100は、上述したハンマビット119にハンマ動作とドリル動作とを行わせるハンマドリルモードでの作業態様のほか、ハンマビット119にドリル動作のみを行わせるドリルモードでの作業態様、あるいはハンマビット119にハンマ動作のみを行わせるハンマモードでの作業態様に切り替えることが可能とされている。しかしながら、モードの切替機構については、その説明を便宜上省略する。
【0039】
以上の通り、ハンマドリル100が駆動する際に、運動変換機構120、打撃要素140および動力伝達機構150等の駆動機構の駆動に伴う発熱で、ギア収容空間105a内の圧力が上昇する。そのため、ギア収容空間105a内の空気を外部に連通させて、ギア収容空間105a内の圧力が上がらないようにする必要がある。一方で、ギア収容空間105a内には、上記駆動機構を潤滑させるための潤滑剤が配されているため、ギア収容空間105aを構成するギアハウジング105に貫通孔を形成するだけでは、潤滑剤が外部に流出する可能性がある。そこで、本実施形態においては、駆動モータ110のモータ軸111の先端部であって、ギア収容空間105a内に配置された部分にギア収容空間105aと外部を連通させる空気連通部190が形成されている。
【0040】
空気連通部190は、内部連通開口191、外部連通開口192、および空気連通路193で構成されている。具体的には、
図3に示すように、モータ軸111の側面に内部連通開口191と、モータ軸111の軸方向端部に外部連通開口192が形成されており、モータ軸111内部には、空気連通路193が形成されている。
【0041】
空気連通路193は、モータ軸111の軸中心部に、回転軸方向に平行に延在する軸方向延在部194と、その軸方向延在部194の回転軸方向における略中央部の側方から内部連通孔191に向かって回転径方向に延在する径方向延在部195とから構成されている。すなわち、空気連通路193は、径方向延在部195を通じて内部連通開口191と接続しており、軸方向延在部194を通じて外部連通開口192と接続している。これにより、内部連通開口191と外部連通開口192が連通する。この内部連通開口191、外部連通開口192、空気連通路193がそれぞれ、本発明における「第1開口」、「第2開口」、「連通路」に対応する実施構成例である。
【0042】
モータ軸111の先端(
図3の上方)には、外気に連通している円筒状の外気連通室196が形成されている。すなわち、インナハウジング部106とモータ軸111の間に第3のオイルシール197が配置されており、インナハウジング部106の壁と第3のオイルシール197とで、外気連通室196を形成している。この第3のオイルシール197は、金属リングと合成ゴムを組み合わせた環状に形成されている。そして、第3のオイルシール197は、金属リングがインナハウジング部106の内周部に圧入されて固定され、内周部側の合成ゴムがその弾性によって、モータ軸111に密着して保持されている。外気連通室196は、ギアハウジング105に形成された図示しない貫通孔を通じて外気と連通している。モータ軸111の先端部が外気連通室196に配置されており、これにより、外部連通開口192が外気と連通している。
【0043】
以上の本実施形態によれば、空気連通部190が形成されていることにより、ギア収容空間105a内の空気と外気とを連通させることができ、運動変換機構120、打撃要素140および動力伝達機構150等の駆動機構の駆動に伴う発熱で、ギア収容空間105a内の圧力が上昇することを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、駆動モータ110のモータ軸111に空気連通部190が形成されている。回転する部材に空気連通部190が形成されている場合は、回転しない部材に空気連通部190が形成されている場合に対して、潤滑剤が空気連通部190に流入しにくい。すなわち、モータ軸111の回転に伴ってモータ軸111の回転軸に対して、内部連通開口191の位置が変化するため、内部連通開口191の位置が変化しない場合に比べて、潤滑剤が内部連通開口191から空気連通路193に流入しにくい。したがって、回転するモータ軸111によって潤滑剤が空気連通路190内に流入することを抑制できる。その結果、ギア収容空間105aの外部に潤滑剤が流出することを抑制できる。
【0045】
また、本実施形態によれば、空気連通路193は、モータ軸111の回転径方向に延在する径方向延在部195が内部連通開口191と接続している。そのため、潤滑剤が内部連通開口191から空気連通路193内に流入した場合でも、モータ軸111の回転による遠心力によって、潤滑剤は内部連通開口191からギア収容空間105a内に戻される。その結果、ギア収容空間105aの外部に潤滑剤が流出することを抑制できる。
【0046】
また、本実施形態によれば、空気連通路193は、モータ軸111の回転軸方向に延在する軸方向延在部194が外部連通開口192と接続している。そのため、潤滑剤が内部連通開口191から空気連通路193内に流入した場合でも、軸方向延在部194においては、モータ軸111の回転による遠心力が、潤滑剤を外部連通開口192に移動させる方向には働かず、潤滑剤は軸方向延在部194に保持されたままとなる。特に、軸方向延在部194が回転軸を含み、回転軸に平行に延在している場合はより効果的である。その結果、ギア収容空間105aの外部に潤滑剤が流出することを抑制できる。
【0047】
また、本実施形態によれば、径方向延在部195は、軸方向延在部194の回転軸方向における略中央部の側方から内部連通孔191に向かって回転径方向に延在して形成されている。そのため、潤滑剤が軸方向延在部194に流入した場合でも、軸方向延在部194の、回転軸方向における外部連通開口192と反対側に、潤滑剤を保持する空間があるため、潤滑剤が軸方向延在部194から外部に流出することを抑制できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、空気連通部190は、駆動モータ110のモータ軸111に形成されているため、ハンマドリル100に回転する部材を新たに追加することなく、既存の回転部材を利用して、空気連通部190を形成することができる。
【0049】
以上の本実施形態においては、空気連通路193は、軸方向延在部194と径方向延在部195で構成されていたが、これには限られない。例えば、軸方向延在部194と径方向延在部195の間に潤滑油を捕捉する捕捉空間等が形成されていてもよい。あるいは、軸方向延在部194または径方向延在部195の内部が複数の空間に区画されていてもよい。また、軸方向延在部194は、回転軸を含む構成には限られず、回転軸に対して偏心した位置に形成されていてもよく、また、回転軸に対して傾斜して形成されていてもよい。
【0050】
次に、本発明の実施形態に係る空気連通部の変形例につき、
図4〜
図6を参照して説明する。空気連通部以外の構成は上記の実施形態と同様の構成であり、同じ符号を付して説明を省略する。
図4、
図5に示すように、変形例においては、空気連通部200が運動変換機構120のクランク軸125周りに形成されている。
【0051】
空気連通部200は、内部連通開口201、外部連通開口202、および空気連通路203で構成されている。具体的には、
図6に示すように、クランク軸125の回転軸方向と交差する側方に内部連通開口201と、クランク軸125の回転軸方向における下方の端部に外部連通開口202が形成されている。さらに、クランク軸125周囲と内部に空気連通路203が形成されている。この空気連通路203は、第1の部屋204、第2の部屋205、第1の連通路206、第2の連通路207及び第3の連通路208により構成されている。空気連通路203と一体となって回転するクランク軸125および被動ギア123が、本発明における「可動部材」、「回転部材」、「被駆動部材」に対応し、クランク軸125が、本発明における「可動駆動軸」、「回転駆動軸」、「クランク軸」に対応する実施構成例である。
【0052】
空気連通路203は、クランク軸125の周囲に、クランク軸125を環状に囲み、一部(
図6の下方)が被動ギア123で封止された第1の部屋204が形成されている。第1の部屋204の外周部に、クランク軸125の回転径方向に延在する第1の連通路206が形成されており、第1の部屋204が第1の連通路206を通じて内部連通開口201に接続している。また、クランク軸125の内部に第2の部屋205が形成されている。第1の部屋204と第2の部屋205は、クランク軸125の回転径方向に延在する第2の連通路207を通じて連通している。さらに、クランク軸125の中心部には、第2の部屋205に突出してスリーブ状に形成され、第2の部屋205からクランク軸125の軸中心部に、回転軸方向に平行に延在する第3の連通路208が形成されており、第2の部屋205が第3の連通路208を通じて外部連通開口202と接続している。
【0053】
このように空気連通路203が形成されていることにより、クランク軸125内部を通じて内部連通開口201と外部連通開口202が連通されている。この内部連通開口201、外部連通開口202、空気連通路203がそれぞれ、本発明における「第1開口」、「第2開口」、「連通路」に対応する実施構成例である。また、第1の部屋204、第2の部屋205が、本発明における「複数の内部空間」に対応する実施構成例である。
【0054】
クランク軸125の下方には、円筒状の外気連通室209が形成されており、当該外気連通室209は、フィルタ210を介して外気に連通している。すなわち、クランク軸125を保持するギアハウジング105とクランク軸125の間に第4のオイルシール211が配置されており、ギアハウジング105の壁と第4のオイルシール211とフィルタ210とで、外気連通室209を形成している。この第4のオイルシール211は、金属リングと合成ゴムを組み合わせた環状に形成されている。そして、第4のオイルシール211は、金属リングがギアハウジング105の内周部に圧入されて固定され、内周部側の合成ゴムがその弾性によって、クランク軸125に密着して保持されている。外部連通開口202が外気連通室209に向かって開口しており、これにより、外部連通開口202が外気と連通する。
【0055】
以上の変形例によれば、空気連通部200が形成されていることにより、ギア収容空間105a内の空気と外気を連通させることができ、運動変換機構120、打撃要素140および動力伝達機構150等の駆動機構の駆動に伴う発熱で、ギア収容空間105a内の圧力が上昇することを抑制することができる。
【0056】
また、変形例によれば、クランク軸125周りに空気連通部200が形成されていることにより、本実施形態と同様に、クランク軸125および被動ギア123の回転に伴って、内部連通開口201の位置が変化するため、潤滑剤が空気連通路200内に流入することを抑制できる。その結果、ギア収容空間105aの外部に潤滑剤が流出することを抑制できる。
【0057】
また、変形例によれば、空気連通路203は、クランク軸125の回転径方向に延在する第1の連通路206を介して内部連通開口201と接続している。そのため、潤滑剤が内部連通開口201から空気連通路203内に流入した場合でも、クランク軸125、および被動ギア123の回転による遠心力によって、潤滑剤は内部連通開口201からギア収容空間105a内に戻される。その結果、ギア収容空間105aの外部に潤滑剤が流出することを抑制できる。
【0058】
また、変形例によれば、空気連通路203は、クランク軸125の回転軸方向に延在する第3の連通路208が外部連通開口202と接続している。そのため、潤滑剤が内部連通開口201から空気連通路203内に流入した場合でも、第3の連通路208においては、クランク軸125の回転による遠心力が、潤滑剤を外部連通開口202に移動させる方向には働かず、潤滑剤は空気連通路203、すなわち、第1の部屋204もしくは、第2の部屋205に保持されたままとなる。特に、第3の連通路208が回転軸を含み、回転軸に平行に延在している場合はより効果的である。その結果、ギア収容空間105aの外部に潤滑剤が流出することを抑制できる。
【0059】
また、変形例によれば、第3の連通路208は、第2の部屋205に突出して形成されている。そのため、潤滑剤が第2の部屋205に流入した場合でも、第2の部屋205に潤滑剤を保持する空間があるため、潤滑剤が第3の連通路208に流入することを抑制できる。その結果、ギア収容空間105aの外部に潤滑剤が流出することを抑制できる。
【0060】
また、変形例によれば、空気連通路203は、複数の部屋である第1の部屋204、第2の部屋205が連通して構成されているため、潤滑剤が第3の連通路208にまで到達しにくい構成となっている。その上、第3の連通路208は、クランク軸125の中心部に形成されているため、回転するクランク軸125の遠心力によって、潤滑剤が第3の連絡路208まで到達することをさらに抑制できる。
【0061】
また、変形例によれば、空気連通部200は、クランク軸125、および被動ギア123の周囲に形成されているため、ハンマドリル100に回転する部材を新たに追加することなく、既存の回転部材を利用して、空気連通部200を形成することができる。
【0062】
以上の変形例においては、空気連通路203を2つの部屋で構成していたが、3以上の部屋を連通させて構成してもよい。また、第3の連通路208は、回転軸を含む構成には限られず、回転軸に対して偏心した位置に形成されていてもよく、また、回転軸に対して傾斜して形成されていてもよい。
【0063】
以上においては、内部連通開口191,201は、回転部材としてのモータ軸111、クランク軸125の周方向に開口して形成されていたが、これには限られない。すなわち、内部連通開口191,201が回転部材の回転軸方向端部に、回転軸に対して偏心して形成されてもよい。このように内部連通開口191,200が形成されていても、回転部材の回転に伴って、内部連通開口191,201の位置が変化するため、潤滑剤が内部連通開口191,200から空気連通路193,203に流入しにくい。
【0064】
以上においては、回転部材として、駆動モータ110のモータ軸111や、クランク軸125および被動ギア123を設定していたが、他の回転する部材であってもよい。すなわち、回転する第1中間軸163や第2中間軸153やツールホルダ159周りに空気連通部を設けてもよく、また、これとは別の回転部材を設けてもよい。また、ハンマドリル100の駆動に伴って、内部連通開口191,201の位置が変化するように構成されていれば、空気連通部190,200が形成されるのは、回転部材には限られない。すなわち、ハンマビット119の長軸方向に動作する連接ロッド129、ピストン131等の可動部材に、空気連通路190,200が形成されていてもよい。そして、ギア収容空間105a内の空気が当該可動部材の内部に形成された空気連通路193,203を介して外部と連通するように外気連通開口192,202が開口した位置に外気連通室を設けるか、あるいは外気連通開口192,202が直接外気に開放されていてもよい。この場合においては、連接ロッド129やピストン131等が、本発明における「可動部材」あるいは「可動駆動軸」に対応する実施構成例である。
【0065】
以上においては、作業工具の一例として電動式のハンマドリルの場合で説明したが、駆動機構室を有している作業工具であれば、ハンマドリル以外の作業工具、例えば、電動ディスクグラインダやネジ締め機等にも本発明を適用することは可能である。