(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738161
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】熱かしめ装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/56 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
B29C65/56
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-267606(P2011-267606)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-119191(P2013-119191A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2013年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】504260357
【氏名又は名称】ウォーマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083633
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏
(72)【発明者】
【氏名】佐野 芳史
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−150555(JP,A)
【文献】
特開2011−148261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体成形させた突起(11)を有する熱可塑性樹脂製の成形品(1)と、前記突起(11)と嵌合する嵌合穴(21)を有する被結合体(2)とを熱かしめする装置であって、前記突起(11)を加熱するための上下移動可能で且つ先端面の中心に凹み(31)を設けた加熱棒(3)と、金属製の帯状薄板をL字状に曲げると共にその曲げた片に、前記突起(11)の頭部を押圧しながら加熱して拡大変形部(12)が形成されるための略半円球状の凹部(41)を設けた成形板(4)と、その成形板(4)にエアを吹付けて冷却させる噴射手段(5)と、前記成形板(4)を上下移動させるエアシリンダー(8)と、から少なくとも構成し、且つ、前記加熱棒(3)の先端面に前記成形板(4)を密着させて、前記突起(11)の頭部が拡大変形された際、冷却を待たずに前記加熱棒(3)が持上げられて前記成形板(4)と分離し、前記成形板(4)は前記突起(11)の頭部を押圧状態に維持すると共に、前記加熱棒(3)が持上げられる際に、噴射手段(5)が作動される構造としたことを特徴とする熱かしめ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂製の成形品に設けた突起を、被結合体の嵌合穴に嵌合させ、突起の頭部を押圧しながら加熱して拡大変形させることにより、被結合体を熱可塑性樹脂製の成形品に固定する際に用いる熱かしめ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に熱かしめ装置は、略半球状の凹みを先端に有した金属製のホットチップが加熱体により常時加熱され、その加熱されたホットチップでプラスチック成形体の突起頭部を押圧し、拡大変形させる構造から成るものであった。このホットチップは常時加熱され、プラスチック成形体の突起頭部の押圧時及び押圧後も加熱が続けられており、その突起頭部を押圧後にホットチップが突起頭部から離れる際、軟化したプラスチックの粘着力により、突起頭部に糸引き現象が生じ易かった。このプラスチックの糸引き現象は、その後に於ける被結合体の組付けを邪魔すると共に見栄えが悪くなる等の問題点があった。
【0003】
又、ホットチップの先端にオン・オフ制御可能なヒーターを設けた熱かしめ装置が提案されているが、このホットチップは、突起頭部を押圧して拡大変形させた後、その突起頭部を押圧しているホットチップを放冷し、その突起頭部が冷却されて硬化するには、長い時間を要していた。また次の熱かしめをする際は、再度のホットチップの加熱時には、ヒーターを低温状態から再び加熱しなければならず、ホットチップを一定温度に加熱するのに長時間を要するため、熱かしめ効率が悪く、且つ、電気消費量が嵩み、熱かしめのコストが高くなる等の問題点があった。
【0004】
一方、前記突起頭部の加熱を短い時間で行え、且つ、突起頭部の冷却、硬化を短い時間で行えるようにしたものとして、特開平7−41675号が提案されている。これは、ボス(突起)に熱風を吹付けて可塑化させ、突起を加熱したかしめ治具で押圧し、回転させて成形を行い、成形した突起を冷却し硬化させるようにした構造のものであり、熱かしめが迅速で且つ高品質に行われ、更に安定した熱かしめが行われる作用効果を生じさせるためのものであった。
【0005】
しかしながら、特開平7−41675号は、予熱部とホットチップにヒーターを設けていると共に回転機能や冷却機能などを有しているため、構造が複雑で製造コストが高くなり、且つ、電気消費量が嵩み、熱かしめのコストが高くなる等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−41675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は糸引き現象の発生を防止すると共に拡大変形部の見栄えが極めて良好となり、且つ、熱かしめ効率が著しく向上し、電気消費量が減少して、熱かしめのコストが低減化可能となる熱かしめ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題点を解消するために成されたものであり、つまり、一体成形させた突起を有する熱可塑性樹脂製の成形品と、前記突起と嵌合する嵌合穴を有する被結合体とを熱かしめする装置であって、前記突起を加熱するための上下移動可能
で且つ先端面の中心に凹みを設けた加熱棒と、
金属製の帯状薄板をL字状に曲げると共にその曲げた片に、前記突起の頭部を押圧しながら加熱して拡大変形部が形成されるための略半円球状の凹部を設けた成形板と、その成形板にエアを吹付けて冷却させる噴射手段と、
前記成形板を上下移動させるエアシリンダーと、から少なくとも構成し、且つ、
前記加熱棒の先端面に成形板を密着させて、前記突起の頭部が拡大変形された
際、冷却を待たずに加熱棒が持上げられ
て成形板と分離し、成形板は突起の頭部を押圧状態に維持すると共に、加熱棒が持上げられる際に、噴射手段が作動される構造とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように突起(11)を加熱するための上下移動可能な加熱棒(3)と、該加熱棒(3)の先端面に少なくとも密着させて配置すると共に突起(11)の頭部を押圧しながら加熱して拡大変形させる薄板の成形板(4)と、その成形板(4)にエアを吹付けて冷却させる噴射手段(5)と、から少なくとも構成し、且つ、突起(11)の頭部を拡大変形させた後、冷却を待たずに加熱棒(3)が持上げられる構造とすることにより、加熱棒(3)が突起(11)に直接接触することがなくなり、糸引き現象の発生が完全に防止可能なものとなると共に拡大変形部(12)の見栄えが極めて良好となり、且つ、拡大変形部(12)の成形後、成形板(4)から加熱棒(3)を直ぐに持上げることが可能となると共に薄板の成形板(4)が噴射手段(5)によって効率良く冷却されるため、熱かしめ効率が著しく向上し、電気消費量が減少して、熱かしめのコストが低減化可能となるのである。
【0010】
又、成形板(4)が、突起(11)の頭部を拡大変形した後、加熱棒(3)が持上げられても突起(11)の頭部を押圧状態に維持する構造であり、且つ、加熱棒(3)が持上げられると、噴射手段(5)を作動させるようにすることにより、突起(11)の拡大変形部(12)が素早く硬化されるものとなるため、熱かしめ作業がより早く済み、電気消費量を減少させて、熱かしめのコストをより低減化することが可能なものとなる。
【0011】
更に加熱棒(3)は電動アクチュエーター(9)と接続し、成形板(4)はエアシリンダー(8)と接続して、突起(11)の頭部が押圧状態に維持されるものとすることにより、加熱棒(3)と成形板(4)とを分離させる動きが簡単に行えるものとなるため、加熱棒(3)が冷却を待たずに素早く持上げられると共に糸引き現象の発生を略完全に防止出来るものとなる。また電動アクチュエーター(9)を使用することにより、突起(11)の形状や大きさに対応した適切な押圧力に調整できるものとなるため、突起(11)を曲げることなく、拡大変形部(12)が最良の状態で成形出来るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の要部及びその作用を示す説明図である。
【
図2】本実施形態の加熱棒が複数本取付けられたものを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を
図1に基づいて説明する。(1)は一体成形させた突起(11)を有する熱可塑性樹脂製の成形品である。(2)は突起(11)と嵌合する嵌合穴(21)を有する被結合体であり、該被結合体(2)はゴムシートや柔軟性を有したシートであるが、必ずしもこれに限定されるものではない。(3)は上下移動可能な加熱棒であり、該加熱棒(3)は従来のホットチップを先端に取付けて支える支持棒と略同様の役目を果たす。また加熱棒(3)先端面の中心には凹み(31)が設けられている。尚、前記加熱棒(3)の先端面には、後述する成形板(4)の成形形状に応じて平面や凸部を設けたものとしても良い。(4)は加熱棒(3)の先端面に少なくとも密着させて配置すると共に前記突起(11)の頭部を押圧しながら加熱して拡大変形させる薄板の成形板であり、該成形板(4)は帯状のステレンレスなどの金属製の薄板をL字状に曲げ、その曲げた片には、突起(11)の頭部を押圧しながら加熱して拡大変形部(12)が形成される略半円球状の凹部(41)を設けている。また前記片側は加熱棒(3)の先端面と密着して取付けられる。尚、前記拡大変形部(12)を形成させるに当り、凹部(41)以外に、平面や凸部を設けた成形板(4)としても良い。
【0014】
(5)は成形板(4)の凹部(41)にエアを吹付けて冷却させる噴射手段であり、該噴射手段(5)は、図示しないコンプレッサーにより
図2中のタンク(52)に圧搾エアを溜め、突起(11)の右上にノズル(51)を配置させると共に該ノズル(51)はタンク(52)とホースなどによって接続されている。尚、前記ノズル(51)の配置位置は、上記の位置に限定されるものではなく、凹部(41)が効率良く冷却出来る位置であれば、何処でも良い。(6)は加熱棒(3)を加熱するための加熱体であり、該加熱体(6)としては、加熱棒(3)の後端部にヒーターを設けておくのが良い。(7)は加熱体(6)付き加熱棒(3)が複数本支持されている支持枠である(
図2参照)。(8)は支持枠(7)に取付けると共に成形板(4)を上下移動させるエアシリンダーである。(9)は支持枠(7)を上下移動させる電動アクチュエーターであり、該電動アクチュエーター(9)の両側にはガイド棒(91)が配置されている。
【0015】
尚、本発明の成形板(4)は、電動アクチュエーター(9)によって加熱棒(3)と一緒に降下し、突起(11)の拡大変形部(12)が形成された後、電動アクチュエーター(9)によって加熱棒(3)は持上げられるが、成形板(4)はエアシリンダー(8)によって前記突起(11)の拡大変形部(12)を押圧状態に維持する。又、この時に噴射手段(5)が作動してノズル(51)から圧搾エアを噴出させると良いが、このタイミングは、図示しないセンサーによって加熱棒(3)の上昇を検知することによって噴射手段(5)が作動されるようにするのが好ましい。この噴射手段(5)の作動制御は一般的な制御方法を用いれば良く、噴射する時間の長さも予め設定しておくのが好ましい。
【0016】
次に本発明の作用を
図1に基づいて説明する。先ず始めに所定位置に成形品(1)をセットし、次に成形品(1)の突起(11)に嵌合穴(21)を嵌合させ、突起(11)を上方へ突出させる。その後、図示しないスイッチを入れると、電動アクチュエーター(9)が作動して支持枠(7)が降下する。支持枠(7)が降下すると、加熱棒(3)と成形板(4)も
図1(a)の矢印のように降下し、成形板(4)の凹部(41)が突起(11)の先端面に当接する。そして突起(11)の頭部は、加熱体(6)によって加熱棒(3)が加熱され、該加熱棒(3)によって成形板(4)が加熱されるため、成形板(4)の凹部(41)から熱が伝導されて突起(11)の頭部を加熱するのである。この時、電動アクチュエーター(9)によって加熱棒(3)が降下し続ける力が働くため、凹部(41)を介して突起(11)の頭部にも押圧力が働くのである。所定時間経過すると、突起(11)の頭部は
図1(b)のように略半球体状に拡大変形して拡大変形部(12)として形成されるのである。
【0017】
拡大変形部(12)が略半球体になると、
図1(c)に示すように電動アクチュエーター(9)によって加熱棒(3)が上昇すると共にエアシリンダー(8)も上昇するが、該エアシリンダー(8)は作動を開始してロッドを伸長させ、成形板(4)は押圧状態を維持し続けるのである。又、加熱棒(3)が上昇すると、噴射手段(5)が作動し、ノズル(51)から
図1(c)の点線矢印のようにエアを噴射させ、成形板(4)の凹部(41)の裏面にエアが吹付けられてその部分を冷却させるのである。この時、成形板(4)は加熱棒(3)から分離されて熱源から離れ、且つ、従来のホットチップと異なり、薄板であるので、凹部(41)の放熱効果が極めて良くなると共に凹部(41)の裏面にエアが直接吹付けられて素早く冷やされるものとなるため、拡大変形部(12)が従来に比べて約3分の1前後の時間で硬化されるものとなるのである。
【0018】
このように本発明は、従来品と異なり、突起(11)の頭部に拡大変形部(12)が形成されると、略同時に加熱体(6)を拡大変形部(12)から遠ざけることが出来ると共に、成形板(4)は薄板で放熱効果が大きく、更に前記成形板(4)はエアによって冷却されるため、糸引き現象が略完全に防止でき、熱かしめ作業の効率が著しく向上するものとなるのである。
【符号の説明】
【0019】
1 成形品
11 突起
2 被結合体
21 嵌合穴
3 加熱棒
4 成形板
5 噴射手段
8 エアシリンダー
9 電動アクチュエーター