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前記給電コイルは、前記移動経路の所定区間に前記移動体が位置する状態で、前記受電コイルと前記移動経路に沿う方向に同一の位置で対向して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の移動体給電システム。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の
参考例に係る、給電装置が適用されたタイヤ式クレーンシステム(移動体給電システム)1Aについて説明する。
【0032】
タイヤ式クレーンシステム1A(以下、単にクレーンシステム1Aとする)は、外部から給電を受けて、港湾等のコンテナヤードにおいて、一対の仮想タイヤ走行路の間の走行経路2上のストック領域Sにストックされたコンテナ等の荷物Lの積降ろし、積込みを行なう。
【0033】
図1及び
図2に示すように、クレーンシステム1Aは、地上に設けられた走行経路(移動経路)2と、この走行経路2上を走行し、荷物Lの積降ろし、積込みを行なうクレーン(移動体)10と、走行経路2に沿って間隔をあけて設けられた複数の給電コイル3と、給電コイル3へ給電する高周波電源(電源)7と、クレーン10に設けられて給電コイル3から給電される受電コイル15と、クレーン10に設けられて受電コイル15に接続された不図示のモーター(負荷)とを備えている。
【0034】
走行経路2は、クレーン10の走行範囲を定めるものであり、長方形状に延びて設置されおり、この走行経路2上のストック領域Sにコンテナ等の荷物Lが載置されている。
【0035】
クレーン10は、走行経路2上を走行可能に配置されている。
また、このクレーン10は、クレーン本体11と、クレーン本体11の上部に設けられる吊下げ装置25と、走行経路2の幅方向両側においてクレーン本体11の下部に設けられた走行装置12と、走行経路2の幅方向一方側における走行装置12に干渉しない位置に設けられた受電箱16と、この受電箱16の上方に設けられた電気室17とを有している。
そして受電箱16には、走行装置12の移動軌跡から外れた位置に、受電コイル15が設置されている。
【0036】
ここで、走行経路2に沿う方向であるクレーン10が走行する方向を前後方向Dとし、走行経路2の幅方向を単に幅方向Wとする。そして、走行方向に対して前後左右を定義する。
【0037】
クレーン本体11は、幅方向Wの両側部において、前後方向Dに延びて設けられた一対のベース部材20と、これらベース部材20の前後方向Dの両端部からそれぞれ対をなして上方に延設される柱部材21と、これら柱部材21の上端部で幅方向Wに対になっている柱部材21を接続する一対の桁部材22とによって、門型に組み付けられている。
【0038】
吊下げ装置25は、クレーン本体11の上部に設けられており、即ち、互いに前後方向Dに平行に配置されるクレーン本体11における一対の桁部材22に、幅方向Wへ移動可能に支持される吊下げ装置本体26と、この吊下げ装置本体26の下方に、ワイヤ等によって昇降可能に吊り下げられて、荷物Lを吊ることが可能な吊具27を有している。
【0039】
走行装置12は、クレーン本体11の幅方向Wの両側の下部にそれぞれ設けられており、即ちクレーン本体11における一対のベース部材20の前後方向Dの両端部それぞれの下部に設けられた走行装置本体13と、各走行装置本体13に、幅方向Wに延在する回転軸を介して回転可能に設けられた走行輪14とを有している。そしてこの走行輪14は、それぞれの走行装置12当りで、前後方向Dに間隔をあけて2セットずつ設けられている。
【0040】
受電箱16は、クレーン本体11の幅方向Wの一方側における走行装置本体13同士の間において、クレーン本体11におけるベース部材20の下部に、走行装置12に干渉しない位置に設けられている。また、受電コイル15からの電力を受電可能とされている。
【0041】
電気室17は、ベース部材20を挟んでこのベース部材20の反対側、即ち受電箱16の上方に設けられ、受電箱16からの電力を変換してクレーン10に供給するDC/DCコンバーター、インバーター、整流器、ブレーカ(不図示)等の各種電子機器類を内蔵している。さらに、この電気室17には不図示のモーターが接続されている。
【0042】
このようにして、クレーン10は幅方向Wの両端部それぞれが、走行経路2の幅方向の両縁部2aに沿うように走行経路2を跨いで配置されていることになる。
【0043】
次に給電コイル3、受電コイル15、高周波電源7及びモーターについて説明する。
高周波電源7は、給電コイル3に電力を供給する電源装置であり、複数の給電コイル3のうちで、前後方向Dの前側の端部に配置される給電コイル3に接続されている。
【0044】
給電コイル3は、走行経路2の左側の縁部2aで、前後方向Dに沿って配置される複数の中間コイル4と、左側の縁部2aで、前後方向Dの前側の端部に配置される送電コイル5とを有している。
【0045】
送電コイル5は、前後方向Dの前側の端部に配置されて、高周波電源7に接続されている。そしてこの送電コイル5は地中に設置されている。
【0046】
中間コイル4は、送電コイル5同様に、走行経路2の左側の縁部2aで、前後方向Dに複数が配置され、送電コイル5と同様にこれらが地中に設置されている。
【0047】
即ち、本
参考例では、前後方向Dを軸線方向として、相互に間隔をおいて同一軸上に多数配置された複数の給電コイル3のうち、前側の端部の1つが高周波電源7に接続された送電コイル5として使用され、他の給電コイル3が、この送電コイル5から給電を受ける中間コイル4として使用されている。
【0048】
なお、給電コイル3同士の上記間隔は、必要となる給電量及び給電効率、中間コイル4同士の間、及び、送電コイル5と中間コイル4との間の結合度や、送電コイル5及び中間コイル4のQ値等の条件によって決定される。
【0049】
受電コイル15は、給電コイル3と同様のコイル部材を、軸線方向を前後方向Dに一致させて、クレーン10における受電箱16に設置されている。そして、この受電コイル15の軸線と、中間コイル4及び送電コイル5の軸線とは幅方向の位置が同一となるように配置されている。
【0050】
モーターは、図示しないが、受電箱16と電気室17とを介して、受電コイル15に接続されるとともに、走行装置12及び吊下げ装置25を駆動させる動力装置である。
【0051】
このようなクレーンシステム1Aにおいては、高周波電源7から送電コイル5に電力が供給され、送電コイル5に隣接する中間コイル4との間が磁気的に結合されることによって、この中間コイル4に電力が供給される。さらにこの電力が隣接する中間コイル4同士の間を順次伝達されていき、電力を走行経路2全域に行き渡らせることができる。
【0052】
そして、走行経路2上のクレーン10に設けられた受電コイル15が、対向する中間コイル4との間で磁気的に結合されることによって、給電を受けることが可能となる。さらにこの電力は、受電箱16及び電気室17を介してモーターへ給電されることで、走行装置12及び吊下げ装置25を駆動させることができる。従って、走行経路2上をクレーン10が移動しながら、荷物Lの積降ろし、積込みの作業を行なう際、非接触で給電を行なうことができるため、通電する金属が露出するような部分が存在せず、このような部分に誤って接触してしまうことがない。
【0053】
さらに、高周波電源7から離間した位置にクレーン10が配置された場合でも、仮にケーブル等による有線給電を行なう場合等に発生する、ケーブルを別の電源装置に付け替える等の手間を省くことができ、クレーン10の操作性の向上を図ることが可能となる。
【0054】
ここで、給電効率は、中間コイル4間の相互インダクタンスの増大にともなって単調増加することがわかっているため、中間コイル4同士の配置間隔を狭めることによって、この相互インダクタンスを増大させ、給電効率を向上することができる。従って、さらに遠方にあるクレーン10に対しても確実に給電が可能となる。
【0055】
従って、中間コイル4の設置数量等を増加させることで、1つの高周波電源7から遠方にあるクレーン10まで確実に給電を行なうことができる。
【0056】
本
参考例のクレーンシステム1Aによると、送電コイル5、中間コイル4、及び受電コイル15によって非接触にクレーン10への給電が可能となり、クレーン10の操作性を向上しながら、安全に給電を行なうことができる。さらに1つの高周波電源7のみによって、遠方のクレーン10に対しても確実に非接触に給電可能となるため、さらなる操作性の向上につながる。
【0057】
なお、高周波電源7の設置位置、即ち、送電コイル5の設置位置は、本
参考例の場合に限定されない。例えば、前後方向Dの中途位置であってもよいし、後側の端部であってもよい。
【0058】
さらに、給電コイル3の設置場所は、地中に限られるものではなく、クレーン10の走行範囲から外れた地上のいずれかの位置であってもよい。
【0059】
また、電気室17にバッテリーを積込むことによって、クレーン10に供給される電力のピークカットを行って供給電力を平準化してもよい。この場合、各種機器類の許容電力量を低く抑えることができ、コストダウンにつながる。
【0060】
次に、第
一実施形態に係るクレーンシステム1Bについて説明する。
なお、
参考例と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細説明を省略する。本実施形態では、給電コイル33及び受電コイル36の設置状態が
参考例とは異なっている。
【0061】
図3に示すように、給電コイル33及び受電コイル36は、
参考例同様のものである。
そして、給電コイル33である中間コイル34及び送電コイル35と、受電コイル36とは、鉛直方向の上方から下方に向かうに従って、前後方向Dの後方から前方に45度傾斜して設けられている。
【0062】
このようなクレーンシステム1Bにおいては、受電コイル36と中間コイル34の磁気的結合度と隣接する中間コイル34同士の磁気的結合度の値を均等に近づけることができ、より効率的にクレーン10への給電を行なうことができる。なお、受電コイル36と中間コイル34との間隔が、送電コイル35と中間コイル34との間隔、及び隣接する中間コイル34同士の間隔と等しくなる場合には、送電コイル35、受電コイル36、中間コイル34全ての間で磁気的結合度を均等にできる。
【0063】
ここで、
参考例では、給電コイル3及び受電コイル15の設置角度が0度となっている場合を説明したが、この場合には、給電コイル3同士の間隔は広く取ることができるものの、給電コイル3と受電コイル15との間の磁気的結合度は低くなるため、受電コイル15を給電コイル3へ接近させたり、受電コイル15のターン数や直径を大きくする等の対策が必要である。この一方で、本実施形態では、給電コイル33同士の間隔は第一実施形態よりも狭くする必要があるが、受電コイル36と給電コイル33との間の磁気的結合度は
参考例の場合よりも大きくなる。
【0064】
本実施形態のクレーンシステム1Bによると、送電コイル35、中間コイル34、及び受電コイル36によって、クレーン10の操作性を向上しながら安全に、さらに効率的に給電を行なうことができる。
【0065】
なお、本実施形態では、給電コイル33及び受電コイル36の設置角度が45度となっているが、これに限定されない。
例えば、クレーン10の自重による撓み等で、受電コイル36の設置位置が変化し、給電コイル33と受電コイル36との間の磁気的結合度の低下があった場合等には、給電コイル33の設置角度に合わせて、受電コイル36の設置角度を適宜変更しもよい。
【0066】
また、走行経路の路面状況に応じて、最も効率的に給電可能となるように、給電コイル33それぞれに異なった設置角度を設定してよい。
【0067】
次に、第
二実施形態に係るクレーンシステム1Cについて説明する。
なお、
参考例及び第
一実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、
参考例のクレーンシステム1Aを基本構成として、中間コイル44の配置状態が
参考例及び第
一実施形態とは異なっている。
【0068】
図4に示すように、給電コイル43における中間コイル44は、クレーン10は荷物Lの積降ろし、積込み、を行なうストック領域(所定区間)Sに停止した際に、受電コイル15に鉛直方向にちょうど対向するように配置されている。
【0069】
このようなクレーンシステム1Cにおいては、最も作業負荷が大きくなる、荷物Lの積降ろし、積込みの作業を行なうストック領域Sにおいて、中間コイル44と受電コイル15との間での磁気的結合度を向上することができる。従って、ストック領域Sにおいてクレーン10への供給電力を大きくでき、給電効率の向上が可能となる。
【0070】
本実施形態のクレーンシステム1Cによると、送電コイル45、中間コイル44、及び受電コイル46によって、クレーン10の操作性を向上しながら安全に給電を行なうとともに、高負荷作業時の作業性を向上することが可能となる。
【0071】
なお、荷物Lの積降ろし積込み及び移動を繰り返す積載運転の場合のクレーン10の消費電力は、単なる移動のための空荷運転と比較して非常に大きい。このため、中間コイル44を、ストック領域Sにおけるクレーン10の停車位置のみか、又はその付近に配置して、クレーン10にはバッテリーを搭載することによって、ストック領域S間の移動はバッテリーからの給電のみによって行ってもよい。即ち、ストック領域S内のみにおいて、中間コイル44からの給電を行なうようにすることもできる。さらにこの場合、ストック領域Sでの作業時に、バッテリーの充電を行なうことも可能である。
【0072】
また、本実施形態における中間コイル44を第
一実施形態のクレーンシステム1Bへも適用可能である。
【0073】
次に、第
三実施形態に係るクレーンシステム1Dについて説明する。
なお、
参考例、第一実施形態、及び第二実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では第
一実施形態のクレーンシステム1Bを基本構成として、受電コイル56の設置状態が
参考例、第一実施形態、及び第二実施形態とは異なっている。
【0074】
図5に示すように、クレーンシステム1Dは、地上に設けられた走行経路2と、走行経路2上を走行し、荷物Lの積降ろし積込みを行なうクレーン10と、走行経路2に沿って間隔をあけて設けられた複数の給電コイル33と、給電コイル33へ給電する高周波電源7と、クレーン10に設けられて給電コイル33から給電される複数の受電コイル56と、クレーン10に設けられて受電コイル56に接続された不図示のモーターとを備えている。
【0075】
走行経路2、給電コイル33、高周波電源7、モーターについては第
一実施形態と同様な構成となっている。
【0076】
クレーン10は複数(本実施形態では3つ)の受電箱57を有している。
受電箱57は、走行装置12に干渉しないように、前後方向Dに所定の間隔(給電コイル3の間隔とは異なる、ただし、その倍数とならない間隔)をあけてベース部材20の下部に設けられ、さらに、これら全ての受電箱57には、それぞれ受電コイル56が設置されている。
【0077】
受電コイル56は、第
一実施形態と同様に、鉛直方向の上方から下方に向かうに従って、前後方向Dの後方から前方に45度傾斜して、全ての受電箱57にそれぞれ1つずつ設置されている。
【0078】
このようなクレーンシステム1Dにおいては、複数の受電コイル56のうち、1つの受電コイル56への供給電力が少ない状況で他の受電コイル56への供給電力が多くなるように設けられている。即ち、クレーン10の移動に伴って、受電コイル56と中間コイル34との間の位置関係が変化した場合、例えば、1つの受電コイル56が中間コイル34同士の間に位置した場合であっても、他のいずれかの受電コイル56が中間コイル34の近くに配置されることによって、受電コイル56が1つの場合と比較して、全体として、いずれかの受電コイル56と中間コイル34との距離を小さく保つことが可能となる。従って、クレーン10への供給電力の変動を抑制できる。
【0079】
さらに、受電コイル56が複数設けられていることによって、より多くの電力を受電することが可能となる。
【0080】
本実施形態のクレーンシステム1Dによると、給電コイル33及び受電コイル56によって、クレーン10の操作性を向上しながら安全に給電を行なうとともに、複数の受電コイル56によって、クレーン10の上記モーターへの給電の安定化を図ることができ、さらに給電の効率化も図ることが可能となる。
【0081】
なお、本実施形態では、第
一実施形態の構成を基本として説明を行なったが、例えば、本実施形態の受電コイル56を
参考例及び第
二実施形態のクレーンシステム1A
、1Cへ適用してもよい。
【0082】
また、受電コイル56の設置数量は本実施形態の場合に限定されず、それぞれの受電コイル56同士の間隔がそれぞれに異なっていてもよい。
【0083】
次に、第
四実施形態に係るクレーンシステム1Eについて説明する。
なお、
参考例、及び、第一実施形態から第
三実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、第
一実施形態のクレーンシステム1Bを基本構成として、受電コイル66の設置状態が
参考例、及び、第一実施形態から第
三実施形態とは異なっている。
【0084】
図6に示すように、受電コイル66は、幅方向Wを軸線方向として、この軸線回りに前後方向に回転自在に設けられている。
なお、受電コイル66は、例えば不図示のモーター等によって回転制御することが可能である。
【0085】
このようなクレーンシステム1Eにおいては、受電コイル66と中間コイル34との間での磁気的結合度を常に最適な状態に保つように、受電コイル66の設置角度を適宜変更することが可能となる。具体的には、クレーン10の自重による撓み等で、受電コイル66の設置位置が変化し、中間コイル34との間の磁気的結合度の低下があった場合等には、この変化に対応して、受電コイル66を軸線回りに回転させることによって、磁気的結合度を向上することができる。
【0086】
また、クレーン10、走行経路2の一定期間使用後には、給電コイル33及び受電コイル66が経時的に角度ズレを起こす可能性があるが、このような角度ズレに対して、受電コイル66を適宜回転させ、設置角度を調整することによって、磁気的結合度を最適化することが可能である。
【0087】
またここで、受電コイル66が、中間コイル34の鉛直方向直上に位置する場合には、受電コイル66と中間コイル34との間で最も磁気的結合度が大きくなる。一方で、隣接する中間コイル34同士のちょうど中間に受電コイル66が位置する場合には、磁気的結合度が最も小さくなる。このように受電コイル66へ供給される電力は、走行経路2に沿って変動することとなる。
【0088】
このような供給電力が変動する状況において、例えば、
図6(a)に示すように、隣接する中間コイル34同士のちょうど中間に受電コイル66が位置する場合に、中間コイル4との間で最も磁気的結合度を大きくできるように、中間コイル34の設置角度と同等の角度に受電コイル66を回転させて設定する。さらに
図6(b)に示すように、受電コイル66が中間コイル4の鉛直方向直上に接近して位置する場合に、受電コイル66を回転させて、前後方向Dに平行な方向となるように設定する。そして、
図6(c)に示すように、受電コイル66が中間コイル34の鉛直方向直上に位置する場合には、再度受電コイル66を回転させて、中間コイル34と鏡像関係になるように、中間コイル34とは逆の角度に設定する。
【0089】
このようにして、変動する電力のピークカットを行い、供給電力の平準化を行なうことが可能となり、受電箱16や電気室17における各種電子機器類の許容電力量を低く抑えることによって、コストを抑えることもできる。
【0090】
本実施形態のクレーンシステム1Eによると、一定期間使用後に、給電コイル33と受電コイル66との間の磁気的結合度が変化した場合にも、適宜受電コイル66の設置角度を変化させることによって、磁気的結合度を最適に保ち、確実に給電を行なうことが可能となる。また、上記各種電子機器類の許容電力量を低く抑え、コストダウンを図ることができる。
【0091】
なお、本実施形態では、第
一実施形態を基本構成として説明したが、例えば、
参考例、第
二実施形態、第
三実施形態のクレーンシステム1A、1C、1Dにも本実施形態の受電コイル66を適用可能である。
【0092】
次に、第六実施形態に係るクレーンシステム1Fについて説明する。
なお、
参考例、及び、第一実施形態から第
四実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、第
一実施形態のクレーンシステム1Bを基本構成として、走行経路72の構成、受電コイル76、給電コイル73の設置状態、高周波電源77の設置位置が
参考例、及び、第一実施形態から第
四実施形態とは異なっている。
【0093】
図7及び
図8に示すように、走行経路72は、上記前後方向Dに長方形状に延びて互いに平行に設けられた複数(本実施形態では3つ)のレーン70、即ち第一レーン70a、第二レーン70b、第三レーン70cと、これらを接続し、幅方向Wに延在するレーンチェンジ部71とを有している。
【0094】
第一レーン70aは、レーン70のうちで幅方向Wの最も右側(
図7の紙面下側)に長方形状に延びて配置され、クレーン10の走行範囲を定めるものであり、このレーン70上にコンテナ等の荷物Lが載置されている。
【0095】
第二レーン70b、第三レーン70cについては、第一レーン70aと略同一の構成となっており、第三レーン70cは、第一レーン70aとは幅方向Wの反対側、即ち最も左側に配置され、第二レーン70bは、第一レーン70aと第三レーン70cとの間に配置されている。
【0096】
レーンチェンジ部71は、レーン70の前後方向Dの後方側で、幅方向Wに3つのレーン70を接続して延在し、各レーン70間でのクレーン10の行き来を可能としている。
【0097】
なお、クレーン10は、
参考例、及び、第一実施形態から第
四実施形態における走行経路2への配置状態と同様に各レーン70上に配置されて前後方向Dに走行可能とされるとともに、レーンチェンジ部71にも配置可能とされて幅方向Wに走行可能とされている。
【0098】
給電コイル73は、各レーン70において前後方向D、及び、レーンチェンジ部71において幅方向Wに配置される複数の中間コイル74と、レーン70のうち第一レーン70aと第三レーン70cの前後方向Dの前側の端部に配置される中間コイル74から、等距離となる位置に配置される送電コイル75とを有している。
【0099】
中間コイル74は、
参考例、及び、第一実施形態から第
四実施形態のものと同一のものであり、各レーン70において前後方向Dに沿って幅方向Wの左側の縁部で、複数が配置されている。さらに、レーンチェンジ部71においては、幅方向Wに沿って前後方向Dの略中央部に配置されている。そして、第一レーン70aとレーンチェンジ部71との間、第三レーン70cとレーンチェンジ部71との間の接続部である屈曲点72aにおいては、第一レーン70a及び第三レーン70cと、レーンチェンジ部71とにおける中間コイル74が連続するように配置されている。
【0100】
さらに、第二レーン70bとレーンチェンジ部71との間の接続部である分岐点72bにおいては、レーンチェンジ部71における中間コイル74から、第二レーン70bにおける中間コイル74が分岐するように配置されており、この分岐点72bに送電コイル75が配置されている。
そしてこれら全ての中間コイル74は、地中に設置されている。
【0101】
送電コイル75は、
参考例、及び、第一実施形態から第
四実施形態のものと同一のものであり、第一レーン70aと第三レーン70cの前後方向前側の端部に配置される中間コイル74から等距離となる位置、即ち、レーンチェンジ部71と第二レーン70bとの分岐点72bにおいて、地中に設置されている。換言すると、給電コイル73のうち、分岐点72bに配置された1つが高周波電源77に接続された送電コイル75として使用され、他の給電コイル73が、この送電コイル75から給電を受ける中間コイル74として使用されている。
【0102】
また、
図8に示すように、隣接する中間コイル74同士の間、及び中間コイル74と送電コイル75とは、所定の間隔があけられて配置されるとともに、全ての中間コイル74及び送電コイル75は、前後方向Dの後方から前方に向かうに従って、幅方向Wの右方から左方に45度傾斜して設けられている。
【0103】
受電コイル76は、
参考例、及び、第一実施形態から第
四実施形態のものと同一のものとなっており、この受電コイル76は、中間コイル74及び送電コイル75と同様に、前後方向Dの後方から前方に向かうに従って、幅方向Wの右方から左方に45度傾斜して受電箱16に設置されている。
【0104】
高周波電源77は、
参考例、及び、第一実施形態から第
四実施形態のものと同一のものであり、上記分岐点72bに配置された送電コイル75に接続され、送電コイル75に電力を供給するものである。
【0105】
このようなクレーンシステム1Fにおいては、中間コイル74、送電コイル75、受電コイル76を45度傾斜させて設置することによって、1つの高周波電源77からの給電によって、全てのレーン70に給電が可能となる。さらに、全てのレーン70において受電コイル76と中間コイル74とが磁気的に結合可能となる。
【0106】
そして、1つの高周波電源77が分岐点72bに配置されているため、高周波電源77から最も離間した位置にある第一レーン70a及び第三レーン70cの前後方向Dの前側の端部における中間コイル74までの距離を最小とすることができる。
【0107】
本実施形態のクレーンシステム1Fによると、全てのレーン70で、受電コイル76と中間コイル74とが確実に磁気的に結合される。また、高周波電源77から末端の中間コイル74までの距離を最小とすることができ、全てのレーン70へ最大効率で給電することが可能となる。従って、複数のレーン70間の移動、及び、各レーン70での作業が可能となる。
【0108】
なお、本実施形態では、給電コイル73及び受電コイル76の設置角度が45度となっているが、これに限定されず、例えばクレーン10の自重による撓み等で、受電コイル76の設置位置が変化し、給電コイル73との間の磁気的結合度の低下があった場合等には、給電コイル73の設置角度に合わせて、受電コイル76の設置角度を適宜変更してもよい。
【0109】
また、走行経路72の路面状況に応じて、給電コイル73それぞれに異なった設置角度で設定してもよい。即ち、常に、最も効率的に給電可能となるように、それぞれの設置角度を設定してよい。
【0110】
さらに、本実施形態では、第
一実施形態を基本構成として説明したが、例えば、
参考例、第
二実施形態から第
四実施形態のクレーンシステム1A、1C、1D、1Eと本実施形態のクレーンシステム1Fとを組み合わせてもよい。
【0111】
次に、第
六実施形態に係るクレーンシステム1Gについて説明する。
なお、
参考例、及び、第一実施形態から第
五実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、第
五実施形態のクレーンシステム1Fを基本構成として、受電コイル86、給電コイル83の設置状態、高周波電源87の設置位置が第
五実施形態とは異なっている。
【0112】
図9に示すように、給電コイル83は、各レーン70における前後方向D、及びレーンチェンジ部71における幅方向Wに沿って配置される中間コイル84と、各レーン70の前側の端部、及びレーンチェンジ部71の右側の端部に配置される送電コイル85とを有している。
【0113】
中間コイル84は、
参考例、及び、第一実施形態から第
五実施形態のものと同一のものであり、レーン70においては、レーン70の前後方向Dに沿って幅方向Wの左側の縁部で、前後方向Dを中間コイル84の軸線方向として、同軸上に複数が配置され、地中に設置されている。
さらに、レーンチェンジ部71においては、幅方向Wに沿って前後方向Dの略中央部に、幅方向Wを軸線方向として、同軸上に複数が配置され、地中に設置されている。
【0114】
このようにして各レーン70の中間コイル84と、レーンチェンジ部71の中間コイル84とは、屈曲点72a、分岐点72bで不連続となるように配置されていることとなる。
【0115】
送電コイル85は、
参考例、及び、第一実施形態から第
五実施形態のものと同一のものであり、各レーン70における前後方向Dの前側の端部、及び、レーンチェンジ部71における幅方向Wの右側の端部に配置され、地中に設置されている。
【0116】
高周波電源87は、
参考例、及び、第一実施形態から第
五実施形態のものと同一のものが、各レーン70及びレーンチェンジ部71に1つずつ配置された送電コイル85に接続されている。
【0117】
そして、受電コイル86は、鉛直方向を軸線方向としてこの軸線回りに回転自在に設けられている。
【0118】
このようなクレーンシステム1Gにおいては、各レーン70、レーンチェンジ部71それぞれ独立に設けられた高周波電源87によって、第
五実施形態のように中間コイル84及び送電コイル85を傾斜させなくとも、全てのレーン70及びレーンチェンジ部71へ給電が可能となる。このため、隣接する中間コイル84同士、送電コイル85と中間コイル84との間の磁気的結合度を向上でき、送電コイル85と中間コイル84、中間コイル84同士の間隔を大きくすることができる。
【0119】
また、それぞれの高周波電源87を独立して作動させることが可能となるため、使用していないレーン70及びレーンチェンジ部71への給電を停止することが可能となる。
【0120】
そして、クレーン10が、レーン70からレーンチェンジ部71へ、レーンチェンジ部71からレーン70へ走行する際には、受電コイル86が軸線回りにちょうど90度回転することによって、各レーン70及びレーンチェンジ部71の両方において、中間コイル84からの電力の供給を確実に受けることができる。
【0121】
本実施形態のクレーンシステム1Gによると、給電コイル83の設置数量を低減することができ、また、クレーン10が配置されず、給電の不要なレーン70への給電を停止できるため、コストを抑制可能となる。さらに、レーン70とレーンチェンジ部71との間の行き来の際にも、受電コイル86が回転することによって、確実にクレーン10が電力の供給を受けることができ、複数のレーン70間を移動しながらの作業が可能となる。
【0122】
なお、本実施形態では、第
五実施形態、即ち第
一実施形態と同様に、中間コイル84及び送電コイル85と受電コイル86とは、鉛直方向の上方から下方に向かうに従って、前後方向の後方から前方に向かって45度傾斜して設けられている。しかし、例えば
参考例のように角度が0度であってもよい。さらに第
二実施形態、第
三実施形態、第
四実施形態の構成を本実施形態と組み合わせてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、受電コイル86を回転させる際、走行装置12の転換とともに手動で行なってもよいし、モーター制御等によって行なってもよい。
【0124】
さらに、走行経路72にセンサ等を設けて、クレーン10の位置を認識し、必要に応じてそれぞれの高周波電源87からの各レーン70、レーンチェンジ部71への給電の有無を切り換えてもよい。
【0125】
次に、第
七実施形態に係るクレーンシステム1Hについて説明する。
なお、
参考例、及び、第一実施形態から第
六実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、第
六実施形態のクレーンシステム1Gを基本構成として、給電コイル93の設置状態、高周波電源97の設置位置が
参考例、及び、第一実施形態から第
六実施形態とは異なっている。
【0126】
図10に示すように、給電コイル93は、各レーン70及びレーンチェンジ部71において前後方向Dに沿って配置される中間コイル94と、分岐点72bの位置、即ち、第二レーン70bの前後方向Dの後側の端部及びレーンチェンジ部71における幅方向Wの中途位置に配置される送電コイル95とを有している。
【0127】
中間コイル94は、
参考例、及び、第一実施形態から第
六実施形態のものと同一のものであり、レーン70においては、レーン70の前後方向Dに沿って幅方向Wの左側の縁部で、前後方向Dを中間コイル94の軸線方向として同軸上に複数が配置され、地中に設置されている。さらに、レーンチェンジ部71においては、幅方向Wに沿って前後方向Dの略中央部に、前後方向Dを軸線方向として複数が配置され、地中に設置されている。
【0128】
さらに、屈曲点72aにおいて、第一レーン70aとレーンチェンジ部71との間では、中間コイル94が前後方向Dの後方から前方に向かうに従って、幅方向Wに左方から右方へ傾斜して設けられている。また、第三レーン70cとレーンチェンジ部71との間では、中間コイル94が前後方向Dの後方から前方に向かうに従って、幅方向Wに右方から左方へ傾斜して設けられている。即ち、上方から見た場合に、これら屈曲点72aに配置される中間コイル94によって、中間コイル94の列が滑らかに湾曲して形成されている。
【0129】
送電コイル95は、
参考例、及び、第一実施形態から第
六実施形態のものと同一のものであり、分岐点72b、即ち第二レーン70bとレーンチェンジ部71との間に配置されるものであり、分岐点72bを挟んでレーンチェンジ部71における幅方向Wの両側と、第二レーン70bにおける前後方向Dの後側の端部との合計3つが、隣接する中間コイル94と同軸上に、地中に設置されている。
【0130】
高周波電源97は、
参考例、及び、第一実施形態から第
六実施形態のもの同等な電源装置であり、分岐点72bに配置され、上記3つの送電コイル95に接続されているとともに、3つの送電コイル95への接続の有無を切り換え可能とされている。
【0131】
このようなクレーンシステム1Hにおいては、分岐点に1つの高周波電源97を配置し、各送電コイル95への接続を切り換えることで、レーン70及びレーンチェンジ部71への給電の有無を選択できる。このため、クレーン10が配置されず、使用されていないレーン70への電力供給を停止できる。このように、使用中のレーン70のみへ給電を行なうことで、給電効率を向上できる。
【0132】
さらに、屈曲点72aにおいては、中間コイル94が傾斜されて設置されているため、屈曲点72aにおいて、レーン70及びレーンチェンジ部71の中間コイル94同士が磁気的に結合され、分岐点72bに設けられた1つの高周波電源97のみからの給電によって、すべてのレーン70の中間コイル94への給電が可能となる。このため、コストを抑制しながら、クレーン10への給電を確実に行なうことができ、複数のレーン70間を移動しながらの作業が可能となる。
【0133】
なお、走行経路72にセンサ等を設けて、クレーン10の位置を認識し、必要に応じて高周波電源97から各レーン70、レーンチェンジ部71への給電の有無を切り換えてもよい。
【0134】
次に、第
八実施形態に係るクレーンシステム1Iについて説明する。
なお、
参考例、及び、第一実施形態から第
七実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態では、第
六実施形態のクレーンシステム1Gを基本構成として、受電コイル106の設置状態が
参考例、及び、第一実施形態から第
七実施形態とは異なっている。
【0135】
図11に示すように受電コイル106は、鉛直方向を軸線方向として、この軸線回りに回転自在に設けられている。
なお、受電コイル106は、例えば不図示のモーター等によって回転制御してもよい。
【0136】
このようなクレーンシステム1Iにおいては、受電コイル106と中間コイル94との間での磁気的結合度を常に最適な状態に保つように、受電コイル106の設置角度を適宜変更することが可能となる。具体的には、クレーン10の自重による撓み等で、受電コイル106の設置位置が変化し、給電コイル93との間の磁気的結合度の低下があった場合等には、この変化に対応して、受電コイル106を回転させることによって磁気的結合度を向上することができる。
【0137】
また、クレーン10、レーン70及びレーンチェンジ部71の一定期間使用後には、給電コイル93及び受電コイル106が経時的に角度ズレを起こす可能性があるが、このような角度ズレに対して、受電コイル106を適宜回転させ、設置角度を調整することによって、磁気的結合度を最適化することが可能である。
【0138】
本実施形態のクレーンシステム1Iによると、一定期間使用後に、給電コイル93と受電コイル106との間の磁気的結合度が変化した場合にも、適宜受電コイル106の設置角度を変化させることによって磁気的結合度を最適に保ち、確実に給電を行なうことが可能となる。また、各種電子機器類の許容電力量を低く抑え、コストダウンを図ることができる。
【0139】
なお、本実施形態の受電コイル106を、第
五実施形態及び第
七実施形態へ適用することも可能であり、レーン70とレーンチェンジ部71との間の移動する際に、電力供給量が低下してしまうことを確実に防止できる。
【0140】
以上、本発明の実施形態についての詳細説明を行なったが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
上述の実施形態では、本発明の移動体の具体例として、港湾等のコンテナヤードで用いられるクレーン10について詳細説明を行なったが、例えば、この移動体は、APM(Automated People Mover)等であってもよい。
なお、APMとは、ゴムタイヤからなる走行輪で軌道上を軌道の両側部に設けられたガイドレールによって案内されて走行する軌道系交通システムである。
【0141】
また、第
五実施形態から第
八実施形態では、レーン70が3つ、レーンチェンジ部71が1つの場合について説明を行なったが、これらの数量はこれに限定されない。
【0142】
さらに、上述の実施形態では、各レーン70においては幅方向の左側に、レーンチェンジ部71においては前後方向の略中央に中間コイル74、84、94が配置されているが、これに限定されず、受電コイル106の設置位置を適宜変更することによって、中間コイル74、84、94の設置位置を任意に選択できる。