(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
石炭焚き火力発電プラントにおいては、発電機及びボイラの協調制御が行われている。
具体的には、協調制御によれば、特許文献1に記載されているように、電力需要、則ち負荷に基づいて設定される発電出力指令(MWD)に基づいて、タービンマスタ指令(TM)、則ち、ガバナ弁の開度の設定値が決定される。ガバナ弁の開度が、その設定値に近付けられることによって、ガバナ弁を通じて蒸気が供給されるタービンの回転数が適切に調整される。一方、発電出力指令に基づいて、ボイラマスタ指令(BID)が演算され、ボイラマスタ指令に基づいて、ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量の設定値が決定される。つまり、ボイラマスタ指令に基づいて、ボイラで発生する蒸気の量が決定される。
【0003】
ところで近年、地球温暖化対策のために、燃焼設備から排出される排ガス中のCO
2を回収するCO
2回収装置(CCS)の研究開発が行われている。
具体的には、特許文献2及び特許文献3が開示しているように、CO
2回収装置は、化学吸収法を採用しており、CO
2を吸収液に一旦吸収させてから、該吸収液を加熱してCO
2を分離・回収する。
【0004】
石炭焚き火力発電プラントにも、CO
2回収装置の適用が検討されている。例えば、特許文献4は、複数の発電プラントを運用するための情報処理装置を開示しており、発電プラントには、CO
2回収装置を備える火力発電プラントが含まれている。
該情報処理装置は、発電機の運転に伴う燃料費の最小化を行いつつ、CO
2の排出量を最小化することを課題として発明されている。このため、該情報処理装置は、CO
2回収装置を備える火力発電プラントにおけるCO
2回収比率(β)及びCCS稼働電力量比率(αi)を考慮して、複数の発電プラントの運転スケジュールを作成する。
なお、CO
2回収装置は、特許文献4の
図3に記載されているように、ボイラから供給される蒸気を利用してCO
2を回収している。
【0005】
一方、特許文献5及び特許文献6は、CO
2を回収及び圧縮する発電プラントを開示しており、該発電プラントでは、CO
2回収システムの消費電力が、発電プラントの正味電力出力の制御パラメータとして使用される。例えば、特許文献5の発電プラントでは不足周波数事象時に、特許文献6の発電プラントでは電力需要が高いときに、CO
2回収システムがそれぞれオフにされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CO
2回収装置を備える石炭焚き火力発電プラントでは、負荷が変化して排ガスの排出量が変化した場合に、CO
2の回収率を一定に保ち、CO
2回収量を変化させることが考えられる。この場合、CO
2回収量の変化に伴い、CO
2回収装置への蒸気供給量も変化させることになる。具体的には、負荷が増大した場合には、CO
2回収装置への蒸気供給量を増大させることになる。
【0008】
しかしながら、CO
2回収装置への蒸気供給量の増加は、その反動としてタービンへの蒸気供給量の減少を招き、発電機の出力低下を招く。このため、従来の協調制御では、発電機から出力される電力が、負荷に対し不足してしまう。つまり、CO
2回収装置への蒸気供給量の変化が、発電機の出力の制御に対して外乱となってしまう。
このためCO
2回収装置を備える石炭焚き火力発電プラントでは、負荷が変化した場合に、如何にして発電機の出力を適切に制御するかが問題となっている。
【0009】
なお、特許文献4は、複数の発電プラントを運転する情報処理装置を開示するのみであって、CO
2回収装置を備える石炭焚き火力発電プラントにおいて負荷が変化した場合に、如何にして発電機の出力を適切に制御するかについては開示していない。
また、負荷が増大した場合に、特許文献5及び特許文献6に開示されているように、CO
2回収装置を停止すれば、発電機の出力低下は防止されるが、CO
2回収装置の運転に負の影響を与えることは好ましくない。
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされ、その目的とするところは、負荷が変化した場合に、CO
2回収装置への蒸気供給量が変化しても、発電機の出力を適切に制御する、CO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラントの制御システム及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明によれば、石炭、水及び空気が供給され、石炭の燃焼によって排ガスを発生させながら蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラから蒸気が供給され、蒸気を用いて発電機を駆動するタービンと、前記タービンから流出した蒸気を液相の水に戻す復水装置と、前記タービンから抽気された蒸気が供給され、供給された蒸気を熱源として前記ボイラで発生した排ガスに含まれるCO
2を回収するCO
2回収装置と、前記タービンから前記CO
2回収装置へ供給される蒸気の流量を調整するCO
2回収用蒸気流量制御弁と、を備えるCO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラントに適用されるCO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラントの制御システムにおいて、前記タービンから前記CO
2回収装置に供給される蒸気の流量に対応する指標に基づいて、負荷に基づいて設定される発電出力指令を補正する、発電出力指令補正手段を有し、前記発電出力指令補正手段によって補正された発電出力指令に基づいて、前記ボイラに供給される石炭、水及び空気の供給量を調整する、ことを特徴とするCO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラントの制御システムが提供される。
【0012】
この制御システムでは、負荷が変化した場合に、負荷に基づいて発電出力指令が設定されるのに加えて、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量が変化した場合に、発電出力指令が補正される。そして、補正された発電出力指令に基づいて、ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量が調整される。ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量を調整するということは、ボイラで発生する蒸気の量を調整するということであり、この調整により、発電及びCO
2の回収のために充分な量の蒸気が確保される。この結果として、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量が変化したとしても、発電機の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0013】
好ましくは、前記発電出力指令補正手段による前記発電出力指令の補正は、前記CO
2回収装置に供給される蒸気の流量が増大する場合に、前記ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量を増大するように行われる。
この構成によれば、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量が増大した場合に、ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量が増大し、ボイラで発生する蒸気の量が増大する。このため、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量が増大したとしても、充分な量の蒸気が確保され、確実に、発電機の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0014】
好ましくは、前記発電出力指令補正手段は、前記指標として、前記CO
2回収装置に供給される蒸気の流量の測定値に基づいて、前記発電出力指令を補正する。
この構成によれば、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量自体に基づいて発電出力指令が補正されるので、確実に、発電機の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0015】
好ましくは、前記発電出力指令補正手段は、前記指標として、前記CO
2回収装置に供給されるべき蒸気の流量の設定値に基づいて、前記発電出力指令を補正する。
この構成によれば、CO
2回収装置に供給されるべき蒸気の流量の設定値に基づいて発電出力指令が補正されるので、簡単な構成にて、発電機の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0016】
好ましくは、前記発電出力指令補正手段は、前記指標として、前記CO
2回収装置に供給される蒸気の圧力の測定値に基づいて、前記発電出力指令を補正する。
CO
2回収装置に供給される蒸気の圧力は、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量と相関があるので、この構成によれば、簡単な構成にて、発電機の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0017】
好ましくは、前記発電出力指令補正手段は、前記指標として、前記ボイラで発生した排ガスのうち、前記CO
2回収装置において処理されるべき排ガスの割合を示す排ガス処理率の設定値、前記CO
2回収装置によって処理される排ガスに含まれるCO
2のうち、前記CO
2回収装置において回収されるべきCO
2の割合を示すCO
2回収率の設定値、及び、負荷に基づいて設定される前記発電機の出力の設定値に基づいて、前記発電出力指令を補正する。
【0018】
排ガス処理率の設定値、CO
2回収率の設定値、及び、発電機の出力の設定値は、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量と相関があるので、この構成によれば、簡単な構成にて、発電機の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0019】
好ましくは、前記発電出力指令補正手段は、前記指標に基づいて得られる補正量に、前記ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量の変化率を抑制する遅れ要素を作用させ、前記遅れ要素を作用させた補正量を用いて、前記発電出力指令を補正する。
【0020】
ボイラで発生する蒸気の量は、ボイラに供給する石炭、水及び空気の流量の増大開始から、ある程度遅れて増加する。このため、指標に直接基づいて、ボイラに供給する石炭、水及び空気の流量を増大すると、蒸気を過剰に発生させる虞がある。また、指標に直接基づいてボイラに供給する石炭、水及び空気の流量を増大すると、増大量が急激に大きくなる場合がある。このような調整は、ボイラに負担をかけることになり望ましくない。
そこで、この構成では、補正量に遅れ要素を作用させることで、蒸気の過剰な発生が防止されるとともに、ボイラに急激な負担が加わることが防止される。
【0021】
上記の課題を解決するために、本発明によれば、石炭、水及び空気が供給され、石炭の燃焼によって排ガスを発生させながら蒸気を発生させるボイラと、前記ボイラから蒸気が供給され、蒸気を用いて発電機を駆動するタービンと、前記タービンから流出した蒸気を液相の水に戻す復水装置と、前記タービンから抽気された蒸気が供給され、供給された蒸気を熱源として前記ボイラで発生した排ガスに含まれるCO
2を回収するCO
2回収装置と、前記タービンから前記CO
2回収装置へ供給される蒸気の流量を調整するためのCO
2回収用蒸気流量制御弁と、を備えるCO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラントに適用されるCO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラントの制御方法において、前記タービンから前記CO
2回収装置に供給される蒸気の流量に対応する指標に基づいて、負荷に基づいて設定される発電出力指令を補正し、前記補正された発電出力指令に基づいて、前記ボイラに供給される石炭、水及び空気の供給量を調整する、ことを特徴とするCO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラントの制御方法が提供される。
【0022】
この制御方法では、負荷が変化した場合に、負荷に基づいて発電出力指令が設定されるのに加えて、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量が変化した場合に、発電出力指令が補正される。そして、補正された発電出力指令に基づいて、ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量が調整される。ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量を調整するということは、ボイラで発生する蒸気の量を調整するということであり、この調整により、発電及びCO
2の回収のために充分な量の蒸気が確保される。この結果として、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量が変化したとしても、発電機の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、負荷が変化した場合に、CO
2回収装置への蒸気供給量が変化しても、発電機の出力を適切に制御する、CO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラントの制御システム及び制御方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0026】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係るCO
2回収装置付き石炭焚き火力発電プラント(以下、単に発電プラントともいう)10の概略的な構成を示している。発電プラント10は、大別して、蒸気系統、復水系統、石炭・空気供給系統、排ガス処理系統、及び、これらの動作を制御する制御系統からなる。
【0027】
〔蒸気系統〕
蒸気系統は、ボイラ12、ガバナ弁14、高圧タービン(HPT)16、中圧タービン(IPT)18及び低圧タービン(LPT)20を有している。ボイラ12は、節炭器22、蒸発管24、過熱器26及び再熱器28を有し、水の循環路30には、節炭器22、蒸発管24、過熱器26、ガバナ弁14、高圧タービン16、再熱器28、中圧タービン18及び低圧タービン20がこの順序で配置されている。
ボイラ12には、石炭、水及び空気が供給され、ボイラ12は、石炭の燃焼によって排ガスを発生させながら蒸気を発生させる。
【0028】
そして、高圧タービン16、中圧タービン18及び低圧タービン20は、ボイラ12から供給された蒸気を用いて発電機31を駆動する。具体的には、高圧タービン16、中圧タービン18及び低圧タービン20の出力軸は、発電機31に接続され、高圧タービン16、中圧タービン18及び低圧タービン20は、ボイラ12から供給される蒸気のエネルギーを回転力にそれぞれ変換し、発電機31は、回転力を電力に変換して出力する。
【0029】
〔復水系統〕
復水系統は、水の循環路30に順次配置される、復水器32、復水ポンプ34、脱気器レベル調整弁36、低圧給水加熱器(LPH)38、脱気器40、ボイラ給水ポンプ42、高圧給水加熱器(HPH)44を有する。復水器32は、低圧タービン20から流出した蒸気を液相の水に戻し、得られた液相の水が、再びボイラ12に供給される。
なお、高圧タービン16の抽気点は、抽気路46を通じて高圧給水加熱器44に接続され、中圧タービン18の出口は、抽気路48を通じて脱気器40に接続され、そして、低圧タービン20の抽気点は、抽気路50を通じて低圧給水加熱器38に接続されている。従って、ボイラ12に供給される水の温度は、抽気された蒸気を利用して上昇させられている。
【0030】
〔石炭・空気供給系統〕
更に、発電プラント10は、ボイラ12のバーナ52に石炭及び空気を供給するための石炭・空気供給系統として、石炭供給装置54、押し込み送風機56、及び、空気予熱器58を有する。
石炭供給装置54は、図示しないホッパ、コンベヤ及び石炭粉砕機を有する。ホッパからベルトコンベヤによって石炭粉砕機に供給された石炭は、石炭粉砕機によって粉砕されて微粉炭になる。微粉炭は、キャリアガスとしての窒素ガスによって、ボイラ12のバーナ52に搬送される。
なお、ボイラ12における燃焼方式は、噴流床燃焼方式が好ましいが、流動床燃焼方式や固定床燃焼方式であってもよい。
【0031】
〔排ガス処理系統〕
また更に、発電プラント10は、ボイラ12で発生した排ガスを処理する排ガス処理系統として、排ガス流路60に順次配置される、脱硝装置62、電気集塵機64、脱硫装置66、及び、ダンパ68を有する。ダンパ68で分岐された排ガス流路60の一方には、煙突70が設けられ、他方にはCO
2回収装置72が設けられている。なお、空気予熱器58は、脱硝装置62と電気集塵機64の間に配置され、排ガスの熱を利用して空気を予備的に加熱する。
【0032】
〔CO
2回収装置〕
CO
2回収装置72は、化学吸着法により排ガスに含まれるCO
2を回収する。CO
2回収装置72は、吸収液の循環路74を有し、循環路74には、吸収塔76、送出ポンプ78、熱交換器80の低温部、再生塔82、返戻ポンプ84、及び、熱交換器80の高温部が、吸収液の循環方向にてこの順序で配置されている。
【0033】
また、CO
2回収装置72は、リボイラ86を有し、リボイラ86は、再生塔82内の吸収液を加熱する。リボイラ86は、中圧タービン18の出口と脱気器40を繋ぐリボイラ用抽気路88に配置され、熱源として蒸気を用いて吸収液を加熱する。なお、リボイラ用抽気路88には、リボイラ86に供給される蒸気の流量を調整するCO
2回収用蒸気流量調整弁90が配置されている。
【0034】
回収装置72においては、吸収塔76において、相対的に低温の吸収液が排ガス中のCO2を吸収する。そして、再生塔82において、CO
2を吸収した吸収液の温度が上昇させられて吸収液からCO
2が放出され、放出された気相のCO
2が回収される。
【0035】
〔制御系統〕
図2は、制御系統(制御システム)の全体的な構成を概略的に示すブロック図である。制御システムは、統合的な制御を行う中央制御装置92を有する。中央制御装置92は、例えば、演算装置、記憶装置及び入出力装置からなるコンピュータによって構成される。中央制御装置92は、主蒸気圧力調節器94、発電出力調節器96、排ガス流量調節器98、及び、CO
2流量調節器100に電気的に接続されている。主蒸気圧力調節器94、発電出力調節器96、排ガス流量調節器98、及び、CO
2流量調節器100も、それぞれコンピュータによって構成される。
【0036】
〔主蒸気圧力調節器〕
主蒸気圧力調節器94は、中央制御装置92と協働して、ボイラ12の過熱器26から供給される蒸気(主蒸気)の圧力を制御する。
具体的には、主蒸気圧力調節器94は、ボイラ12に供給される石炭、水及び空気の流量を制御することによって、主蒸気の圧力を制御する。そのために、主蒸気圧力調節器94は、ボイラ給水ポンプ42を制御することによって、ボイラ12に供給される水の流量を調整可能である。
また、主蒸気圧力調節器94は、石炭供給装置54を制御することによって、ボイラ12に供給される石炭の流量を調整可能である。更に、主蒸気圧力調節器94は、押し込み送風機56を制御することによって、ボイラ12に供給される空気の流量を調整可能である。
【0037】
なお、主蒸気圧力調節器94には、主蒸気の圧力を測定する主蒸気用圧力計102が電気的に接続され、主蒸気の圧力の測定値が設定値に近付くように、主蒸気圧力調節器94は主蒸気の圧力を制御する。主蒸気用圧力計102は、過熱器26とガバナ弁14との間に配置される。
【0038】
〔発電出力調節器〕
発電出力調節器96は、中央制御装置92と協働して、発電機31から出力される電力を制御する。そのために、発電出力調節器96は、ガバナ弁14の弁開度を調整することによって、高圧タービン16に供給される主蒸気の流量を調整する。
なお、発電出力調節器96には、発電機31が出力する電力及びその周波数を測定する電力/周波数計104が電気的に接続され、発電出力調節器96は、電力及び周波数の測定値が設定値に近付くように、ガバナ弁14の弁開度を調整する。
【0039】
〔排ガス流量調節器〕
排ガス流量調節器98は、中央制御装置92と協働して、ボイラ12からCO
2回収装置72に供給される排ガスの流量を制御する。そのために、排ガス流量調節器98は、ダンパ68、送出ポンプ78及び返戻ポンプ84を制御する。
なお、排ガス流量調節器98には、排ガスの流量を測定する排ガス流量計106が電気的に接続され、排ガス流量調節器98は、排ガスの流量の測定値が設定値に近付くように、ダンパ68、送出ポンプ78及び返戻ポンプ84を制御する。排ガス流量計106は、ダンパ68と吸収塔76との間に配置される。
【0040】
〔CO
2流量調節器〕
CO
2流量調節器100は、中央制御装置92と協働して、CO
2回収装置によって回収されるCO
2の流量を制御する。そのため、CO
2流量調節器100は、CO
2回収用蒸気流量調整弁90の弁開度を調整する。
なお、CO
2流量調節器100にはCO
2流量計108及びCO
2回収用蒸気流量計110が電気的に接続されている。CO
2流量計108は、再生塔82の出口に配置され、再生塔82から流出するCO
2の流量、則ち、CO
2回収装置によって回収されたCO
2の流量を測定する。CO
2回収用蒸気流量計110は、リボイラ用抽気路88に配置され、リボイラ86に供給されるCO
2回収用の蒸気の流量を測定する。CO
2流量調節器100は、回収されたCO
2の流量及びCO
2回収用の蒸気の流量の測定値が設定値にそれぞれ近付くように、CO
2回収用蒸気流量調整弁90の弁開度を調整する。
【0041】
以下、上述した発電プラント10の制御システムが実行する制御方法について、
図3を参照して説明する。
図3は、制御システムの機能的な構成を概略的に示す図である。制御システムの中央制御装置92には、電力需要、則ち負荷が入力され、入力された負荷にそれぞれ対応する発電出力設定値及び発電出力変化率設定値が、出力変化率制御器112に入力される。出力変化率制御器112は、発電出力設定値の単位時間あたりの変化率が、発電出力変化率設定値の範囲内に収まるように、発電出力設定値を調整して出力する。
【0042】
一方、中央制御装置92には、電力/周波数計104によって測定された周波数の測定値が入力され、周波数の測定値と設定値の偏差(Δf)が関数器114に入力される。関数器114は、予め設定された関数に偏差を代入して、発電出力設定値を補正するための周波数変動補正量を演算する。
出力変化率制御器112で調整された発電出力設定値、及び、関数器114で演算された周波数変動補正量は、加算器116に入力されて加算される。これにより発電出力設定値が補正される。
【0043】
加算器116で補正された発電出力設定値は、上下限制限器118に入力される。上下限制限器118は、発電出力設定値が、予め設定された下限と上限で規定される範囲内に収まるように、発電出力設定値を更に補正する。この補正された発電出力設定値が、発電出力指令(MWD)として、上下限制限器118から出力される。発電出力指令の単位は、例えばMW(メガワット)である。
【0044】
上下限制限器118から出力された発電出力指令は、発電出力調節器96の減算器120に入力される。また、減算器120には、電力/周波数計104によって測定された、発電機31から出力される電力の測定値(MW)が入力されている。減算器120は、発電出力指令と電力の測定値の偏差を演算し、得られた偏差は、発電出力調節器96の制御器122に入力される。
【0045】
制御器122は比例積分(PI)制御を行う。具体的には、制御器122は、入力された偏差が縮小するように、タービンマスタ指令(TM)を演算により求める。そして、発電出力調節器96は、演算により求めたタービンマスタ指令に基づいて、ガバナ弁14の弁開度を調整し、これにより発電機31の出力を調整する。
【0046】
一方、中央制御装置92には、CO
2回収用蒸気流量計110によって測定された、CO
2回収用蒸気の流量の測定値が入力されている。CO
2回収用蒸気の流量の測定値は、中央制御装置92の関数器124に入力され、関数器124は、予め設定された関数にCO
2回収用蒸気の流量の測定値を代入し、CO
2回収用蒸気流量変動補正量を求める。求められたCO
2回収用蒸気流量変動補正量は、中央制御装置92の加算器126に入力される。
【0047】
また、加算器126には、発電出力指令が入力されており、加算器126は、発電出力指令にCO
2回収用蒸気流量変動補正量を加算することによって、発電出力指令を補正する。つまり関数器124及び加算器126は、発電出力指令補正手段127を構成している。
【0048】
加算器126によって補正された発電出力指令は関数器128に入力される。関数器128は、予め設定された関数に補正された発電出力指令を代入して、ボイラマスタ指令(BID)を求める。関数器128によって求められたボイラマスタ指令は、図示しないけれども、複数の関数器に入力され、これらの関数器によって、ボイラに供給される石炭、水及び空気の流量の設定値がそれぞれ演算される。
【0049】
そして、演算された石炭、水及び空気の流量の設定値は、主蒸気圧力調節器94に入力され、主蒸気圧力調節器94は、ボイラ12に供給される石炭、水及び空気の流量が設定値にそれぞれ近付くように、石炭供給装置54、ボイラ給水ポンプ42、及び、押し込み送風機56を制御する。なお、主蒸気圧力調節器94は、主蒸気用圧力計102によって測定される主蒸気の圧力の測定値に基づいて、ボイラ12に供給される石炭、水及び空気の流量の設定値を補正してもよい。
【0050】
他方、中央制御装置92には、CO
2の回収量又は回収率の設定値が入力され、中央制御装置92は、CO
2の回収量又は回収率が設定値に近付くように、排ガス流量調節器98及びCO
2流量調節器100と協働する。例えば、発電プラント10の管理者が、CO
2の回収量又は回収率の設定値の入力を行うことができ、CO
2の回収量又は回収率の設定値は、負荷に基づいて設定されてもよく、或いは、負荷とは独立に設定されてもよい。
【0051】
以下、上述した発電プラント10の動作を、CO
2の回収率が一定であるときに負荷が増大した場合について説明する。
負荷が増大すると、発電出力指令が増大し、タービンマスタ指令も増大する。このため、ガバナ弁14の弁開度が増大される。
一方、CO
2の回収率が一定であるときに負荷が増大すると、排ガスの排出量が増えるため、CO
2回収装置72の能力を増大させる必要がある。このため、CO
2回収用蒸気流量調整弁90の弁開度が増大され、中圧タービン18の出口からリボイラ86に供給されるCO
2回収用蒸気の流量が増大する。
【0052】
CO
2回収用蒸気の流量は、CO
2回収用蒸気流量計110によって測定されており、CO
2回収用蒸気流量計110によって測定されたCO
2回収用蒸気の流量の測定値は、中央制御装置92に入力される。中央制御装置92の関数器124は、入力されたCO
2回収用蒸気の流量の測定値を関数に代入してCO
2回収用蒸気流量変動補正量を求め、求められたCO
2回収用蒸気流量変動補正量は、加算器126にて、発電出力指令に加算される。
【0053】
かくして、加算器126によって補正された発電出力指令に基づいて、ボイラマスタ指令が求められ、更に、ボイラ12に供給される石炭、水及び蒸気の流量の設定値が設定される。この結果として、CO
2回収用蒸気の流量の変動をあたかも外乱であるかのように考慮して、ボイラ12で蒸気が生成される。
【0054】
上述した第1実施形態の発電プラント10の制御システム及び制御方法によれば、負荷が変化した場合に、負荷に基づいて発電出力指令が設定されるのに加えて、CO
2回収装置72に供給される蒸気の流量が変化した場合に、発電出力指令が補正される。そして、補正された発電出力指令に基づいて、ボイラ12に供給される石炭、水及び空気の流量が調整される。
【0055】
ボイラ12に供給される石炭、水及び空気の流量を調整するということは、ボイラ12で発生する主蒸気の量を調整するということであり、この調整により、発電及びCO
2の回収のために充分な量の主蒸気が確保される。この結果として、CO
2回収装置72に供給される蒸気の流量が変化したとしても、発電機31の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0056】
そして、第1実施形態の発電プラント10の制御システムにおいては、CO
2回収用蒸気の流量に対応する指標として、流量自体に基づいて発電出力指令が補正されるので、確実に、発電機31の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0057】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態の発電プラント10の制御システムについて説明する。
なお、第2実施形態以下の説明においては、先行する実施形態と同一又は類似の構成要素についての説明を簡略化又は省略する。
【0058】
図4は、第2実施形態の制御システムの機能的な構成を概略的に示す図である。第2実施形態の制御システムは、関数器124が、CO
2回収用蒸気の流量の設定値に基づいてCO
2回収用蒸気流量変動補正量を演算する点においてのみ、第1実施形態の制御システムと異なる。CO
2回収用蒸気の流量の設定値は、中央制御装置92によって、CO
2の回収量又は回収率に基づいて設定される。CO
2流量調節器100は、CO
2回収用蒸気流量計110によって測定される蒸気の流量の測定値が、CO
2回収用蒸気の流量の設定値に近付くように、CO
2回収用蒸気流量調整弁90の弁開度を調整する。
【0059】
上述した第2実施形態の発電プラント10の制御システムでは、CO
2回収装置72に供給される蒸気の流量に対応する指標として、CO
2回収装置72に供給される蒸気の流量の設定値に基づいて、発電出力指令が補正される。かかる第2実施形態の制御システムによれば、簡単な構成にて、発電機31の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0060】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態の発電プラント10の制御システムについて説明する。
図5は、第3実施形態の制御システムの機能的な構成を概略的に示す図である。第3実施形態の制御システムは、関数器130が、CO
2回収用蒸気の抽気点における圧力の測定値に基づいてCO
2回収用蒸気流量変動補正量を演算する点においてのみ、第1実施形態の制御システムと異なる。
そのために、第3実施形態では、図示しないけれども、リボイラ用抽気路88に圧力計が配置され、この圧力計によって測定された蒸気の圧力の測定値が、CO
2回収用蒸気の抽気点における圧力の測定値として、関数器130に入力される。
【0061】
上述した第3実施形態の発電プラント10の制御システムでは、CO
2回収装置72に供給される蒸気の流量に対応する指標として、CO
2回収用蒸気の抽気点における圧力の測定値に基づいて、発電出力指令が補正される。かかる第3実施形態の制御システムによれば、簡単な構成にて、発電機31の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0062】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態の発電プラント10の制御システムについて説明する。
図6は、第4実施形態の制御システムの機能的な構成を概略的に示す図である。第4実施形態の制御システムでは、CO
2回収装置72に供給される蒸気の流量に対応する指標として、排ガス処理率の設定値、発電出力設定値、及び、CO
2回収率の設定値を用いて、CO
2回収用蒸気流量変動補正量が演算される。
【0063】
排ガス処理率は、ボイラ12から排出された排ガスのうち、CO
2回収装置72に供給される排ガスの割合であり、ダンパ68の開度によって決定される値である。そして、排ガス処理率の設定値は、例えば、発電プラント10の管理者によって、中央制御装置92に予め入力され、排ガス流量調節器98は、排ガス処理率の設定値に基づいてダンパ68の位置を制御する。排ガス処理率の設定値は可変であってもよい。
なお、CO
2回収装置72に供給されなかった排ガスは、煙突70から放出される。
【0064】
発電出力設定値は、前述したように、負荷に基づいて設定される発電機31の出力の設定値である。
CO
2回収率は、CO
2回収装置72に供給される排ガスに含まれるCO
2のうち、CO
2回収装置72によって回収されるCO
2の割合である。そして、CO
2回収率の設定値は、例えば、発電プラント10の管理者によって、中央制御装置92に予め入力され、排ガス流量調節器98は、CO
2回収率の設定値に基づいて、CO
2回収用蒸気流量調整弁90の弁開度を調整する。なお、CO
2回収率の設定値は可変であってもよい。
なお、CO
2回収装置72に供給されながらも、回収されなかったCO
2は、吸収塔76から排ガスとして放出される。
【0065】
排ガス処理率設定値、発電出力設定値及びCO
2回収率設定値は、関数器132、関数器134及び関数器136にそれぞれ入力され、関数器132、関数器134及び関数器136は、それぞれ、入力された設定値を所定の関数に代入して、CO
2回収用蒸気流量変動補正量を出力する。
関数器132、関数器134及び関数器136が出力したCO
2回収用蒸気流量変動補正量は、加算器138に入力されて加算される。そして、加算器138によって加算されたCO
2回収用蒸気流量変動補正量が、加算器126に入力される。
【0066】
上述した第4実施形態の発電プラント10の制御システムでは、CO
2回収装置72に供給される蒸気の流量に対応する指標として、排ガス処理率設定値、発電出力設定値及びCO
2回収率設定値に基づいて、発電出力指令が補正される。
排ガス処理率、発電出力設定値及びCO
2回収率は、CO
2回収用蒸気の流量の設定値を決定するのに用いられるパラメータでもあり、CO
2回収用蒸気の流量と相関を有する。かかる第4実施形態の制御システムによれば、簡単な構成にて、発電機31の出力が負荷に応じて適切に制御される。
【0067】
〔第5実施形態〕
以下、第5実施形態の発電プラント10の制御システムについて説明する。
図7は、第5実施形態の制御システムの機能的な構成を概略的に示す図である。第5実施形態の制御システムでは、関数器124と加算器126の間に遅れ設定器140が設けられている点においてのみ、第1実施形態の制御システムと異なる。
【0068】
遅れ設定器140は、関数器124によって演算されたCO
2回収用蒸気流量変動補正量に、遅れ要素を例えば乗算によって作用させ、遅れ要素を作用させたCO
2回収用蒸気流量変動補正量が加算器126に入力される。遅れ要素は、例えば1次の遅れ要素であり、ボイラ12に供給される石炭、水及び空気の流量の変化率を抑制するように、CO
2回収用蒸気流量変動補正量に作用する。
【0069】
ボイラ12で発生する蒸気の量は、ボイラ12に供給する石炭、水及び空気の流量の増大開始から、ある程度遅れて増加する。このため、指標に直接基づいて、ボイラ12に供給する石炭、水及び空気の流量を増大すると、蒸気を過剰に発生させる虞がある。また、指標に直接基づいてボイラ12に供給する石炭、水及び空気の流量を増大すると、増大量が急激に大きくなる場合がある。このような調整は、ボイラ12に負担をかけることになり望ましくない。
そこで、第5実施形態の制御システムでは、CO
2回収用蒸気流量変動補正量に遅れ要素を作用させることで、蒸気の過剰な発生が防止されるとともに、ボイラ12に急激な負担が加わることが防止される。
【0070】
本発明は、上述した第1乃至第5実施形態に限定されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、CO
2回収用蒸気流量変動補正量を求めるために使用される、CO
2回収装置72に供給される蒸気の流量に対応する指標としては、第1乃至第5実施形態に例示された指標以外を用いても良い。指標の数は1つに限定されることはなく、また指標は、測定値であってもよく、設定値であってもよい。
また、指標に基づいてCO
2回収用蒸気流量変動補正量を求めるために使用される関数は、指標に応じて適宜選択可能であり、マップデータであってもよい。
【0071】
そして、発電プラント10の制御システムは、中央制御装置92、主蒸気圧力調節器94、発電出力調節器96、排ガス流量調節器98、及び、CO
2流量調節器100によって構成されているが、制御システムのハードウェアの構成は、これに限定されることはない。
【0072】
更に、発電プラント10は、高圧タービン16、中圧タービン18及び低圧タービン20の3つのタービンを備えていたが、タービンの数は限定されることはない。そして、タービンが3つの場合、中圧タービン18の出口をCO
2回収用蒸気の抽気点に設定するのが好ましいが、抽気点の位置はこれに限定されることはない。
【0073】
また更に、上述した第1乃至第5実施形態では、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量に対応する指標に基づいて、発電出力指令を補正し、ボイラ12に供給される石炭、水及び空気の流量を調整したが、当該指標に基づいて、タービンマスタ指令も補正してもよい。すなわち、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量に対応する指標に基づいて、ガバナ弁14の弁開度も調整しても良い。
ボイラ12に供給される石炭、水及び空気の流量を調整することによって、ボイラ12で発生する蒸気の量を調整すれば、CO
2回収装置に供給される蒸気の流量の変動幅が広くても、発電機の出力が適切に制御される。これにガバナ弁14の調整を加えれば、発電機31の出力の追従性が更に向上し、より一層、発電機31の出力が適切に制御される。