特許第5738172号(P5738172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738172
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】液体封入式防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   F16F13/10 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-283999(P2011-283999)
(22)【出願日】2011年12月26日
(65)【公開番号】特開2013-133860(P2013-133860A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2014年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(72)【発明者】
【氏名】金谷 知宏
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英亮
【審査官】 莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121716(JP,A)
【文献】 特開平11−63087(JP,A)
【文献】 特開平2−240429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を密封状態で収容する液体密封空間と、この液体密封空間を、互いにオリフィスを通じて連通した状態で複数の室に仕切る仕切り部と、上記液体密封空間の少なくとも一部を形成する加硫ゴム成形体と、この加硫ゴム成形体を保持する保持部材とを備え、上記加硫ゴム成形体に伝達された振動が、上記加硫ゴム成形体自身の弾性変形および上記各室間の液体流動によって減衰するよう構成された液体封入式防振装置であって、上記液体として、極性有機溶剤からなる第1液体と、上記第1液体と相溶性を有しかつ界面活性性能を有する極性オイルからなる第2液体と、エアレーションに由来する溶存ガスと、を含有する混合液体が用いられ、上記溶存ガスの気化もしくは液化によって、上記加硫ゴム成形体の弾性変形に伴う液体密封空間内における圧力変動が緩和可能になっていることを特徴とする液体封入式防振装置。
【請求項2】
上記第1液体が、エチレングリコールおよびプロピレングリコールの少なくとも一方からなり、上記第2液体が、ポリエーテル系オイル、ポリエーテル変性シリコーン系オイルおよびビニル系オイルの少なくとも一種の極性オイルである請求項1記載の液体封入式防振装置。
【請求項3】
上記液体が、第1液体100重量部に対し、第2液体を0.1〜80重量部配合してなる混合液体である請求項1または2記載の液体封入式防振装置。
【請求項4】
上記溶存ガスが、空気、アンモニア、二酸化炭素、一酸化窒素、酸素、一酸化炭素、水素、窒素、ネオンおよびヘリウムからなる群から選択される少なくとも一つの溶存ガスである請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体封入式防振装置。
【請求項5】
上記溶存ガスが、混合液体中に、常温、大気圧の環境下で、0.03〜620容積%含有されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の液体封入式防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や産業機械等に使用される液体封入式防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や産業機械等に使用されるエンジンマウント,ミッションマウント,サスペンションブッシュ,モータマウント等の防振装置として、液体封入式のものが賞用されている。例えば、エンジンマウントは、図4に示すように、振動源であるエンジンに取り付けられる上部保持部材1と、車体やフレーム等に取り付けられる下部保持部材2とが、加硫ゴム成形体3および筒状体4を介して一体化されている。そして、下部保持部材2にダイヤフラム5が取り付けられており、このダイヤフラム5と加硫ゴム成形体3との間に、液体Pを密封状態で収容する液体密封空間が形成されている。さらに、この液体密封空間は、オリフィス7が形成された仕切り部材8により、主液室9と副液室10の上下2室に仕切られており、その2室間で上記液体Pがオリフィス7を通って流動するようになっている。なお、11、12は、それぞれ取付用のボルトねじである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この構成によれば、エンジンの振動を加硫ゴム成形体3が受けても、それ自身の弾性による振動吸収作用と上記液体密封空間内における液体Pの流動作用等によって、車体側に伝達される振動が減衰されるようになっている。
【0004】
ところで、近年、自動車産業における技術革新はめざましく、従来に比べて非常に静かな走行が実現されつつあるが、路面の凹凸によってエンジンに大きな振動がかかると、本体ゴム弾性体が大きく弾性変形して受圧室の圧力が急速に著しく低下することで、受圧室内にキャビテーションによると解される気泡が発生し、該気泡が消失する際に発する衝撃波が車両に伝達されることに起因する異音や振動が問題となっている。
【0005】
そこで、このようなキャビテーションの発生を抑制する方法として、リリーフバルブ等のデバイスを設けて主液室9と副液室10の圧力差を小さくする方法や、封入する液体Pに高蒸気圧(=低沸点)の液体を添加しておき、負圧下で上記高蒸気圧液体を気化させることによって、主液室9の圧力低下を抑える方法(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−337348号公報
【特許文献2】国際公開第2009/154222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記リリーフバルブ等のデバイスを設けた場合、キャビテーション抑制のためにバルブを開放すると、主液室9と副液室10の圧力差が小さくなり、オリフィス7を通過しながら減衰性能を発揮する液体Pの移動量が少なくなるため、減衰性能が低下し、本来の目的である防振効果が充分に得られなくなるという問題がある。
【0008】
また、上記特許文献2に記載された、高蒸気圧液体を添加する方法では、添加する液体の沸点が低いため、エンジンルーム等、高温となりやすい環境で使用すると、負圧にならなくても上記添加された液体が沸騰してしまい、液室内に多くの気体が常駐することにより、防振性能の低下や、前記ダイヤフラムの膨張や破裂を引き起こし、製品の機能上問題となる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、防振効果を損なうことなく、異音発生の原因となるキャビテーションを効果的に抑制することのできる、優れた液体封入式防振装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の液体封入式防振装置は、液体を密封状態で収容する液体密封空間と、この液体密封空間を、互いにオリフィスを通じて連通した状態で複数の室に仕切る仕切り部と、上記液体密封空間の少なくとも一部を形成する加硫ゴム成形体と、この加硫ゴム成形体を保持する保持部材とを備え、上記加硫ゴム成形体に伝達された振動が、上記加硫ゴム成形体自身の弾性変形および上記各室間の液体流動によって減衰するよう構成された液体封入式防振装置であって、上記液体として、極性有機溶剤からなる第1液体と、上記第1液体と相溶性を有しかつ界面活性性能を有する極性オイルからなる第2液体と、エアレーションに由来する溶存ガスと、を含有する混合液体が用いられ、上記溶存ガスの気化もしくは液化によって、上記加硫ゴム成形体の弾性変形に伴う液体密封空間内における圧力変動が緩和可能になっているという構成をとる。
【0011】
本発明者らは、液体封入式防振装置において、防振効果を損なうことなくキャビテーションを抑制する方法について、研究を重ねた。その結果、負圧時に発生する気体を複数個の気泡として分散させると、大気泡の発生が抑制され、大気泡の破裂によるキャビテーションが生じなくなることを見いだした。そして、さらに研究を重ねた結果、大気泡の発生を抑制するため気体を複数個の気泡に分散させるには、従来の、エチレングリコール等の極性有機溶剤に、これと相溶性があり、しかも界面活性性能を有する極性オイルを第2液として配合すれば、液体全体の表面張力が低下し、液体中に発生する気泡が、大きくなる前に破泡して複数個に分かれることを見いだした。そして、上記気泡を発生させる気体源として、液体中に、予めエアレーションによって溶存ガスを含有させておくと、液体密封空間が負圧になると上記溶存ガスが気化し、負圧が解消すると、上記気化した溶存ガスが再び液体に溶け込むため、液体密封空間内における圧力変動が効果的に緩和され、優れたキャビテーション抑制効果が得られることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明の液体封入式防振装置は、装置内に封入する液体として、極性有機溶剤からなる第1液体と、上記第1液体と相溶性を有しかつ界面活性性能を有する極性オイルからなる第2液体と、エアレーションに由来する溶存ガスと、を含有する混合液体を用いているため、液体全体の表面張力が従来に比べて低く、負圧下で、上記溶存ガスに由来する気泡が、複数個に分かれた状態で発生し、キャビテーションの原因となる大気泡の発生が抑制されることから、優れたキャビテーション抑制効果を得ることができる。そして、装置本来の、液体流動性に伴う防振性能を損うことなく、キャビテーションによる異音の発生が抑制されるため、車体等、この防振装置を取り付けた環境内を静寂を保つことができる。
【0013】
そして、本発明のなかでも、特に、上記第1液体が、エチレングリコールおよびプロピレングリコールの少なくとも一方からなり、上記第2液体が、ポリエーテル系オイル、ポリエーテル変性シリコーン系オイルおよびビニル系オイルの少なくとも一種の極性オイルである液体封入式防振装置は、とりわけ、負圧時に、発生する気体が複数個の気泡に分かれて成長しやすい液性となるため、キャビテーション抑制効果に優れている。
【0014】
さらに、本発明のなかでも、特に、上記液体が、第1液体100重量部に対し、第2液体を0.1〜80重量部配合してなる混合液体を用いた液体封入式防振装置は、より好ましい液性となるため、キャビテーション抑制効果に優れている。
【0015】
また、本発明のなかでも、特に、上記溶存ガスが、空気、アンモニア、二酸化炭素、一酸化窒素、酸素、一酸化炭素、水素、窒素、ネオンおよびヘリウムからなる群から選択される少なくとも一つの溶存ガスである液体封入式防振装置は、これらのガスが、液体密封空間内における圧力変動を緩和させるのに充分な量だけ液体に溶け込むことができるため、好適である。
【0016】
そして、本発明のなかでも、特に、上記溶存ガスが、混合液体中に、常温、大気圧の環境下で0.03〜620容積%含有されている液体封入式防振装置は、液体密封空間内における圧力変動を緩和させるのに充分な溶存ガスが含有されているため、好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態を示す縦断面図である。
図2】エンジンマウントの伝達荷重を測定する方法の模式的な説明図である。
図3】(a)は本発明の実施例品の防振性能を示す線図、(b)は比較例品の防浸性能を示す線図である。
図4】従来の液体封入式防振装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0019】
本発明の一実施の形態を図1に示す。この液体封入式防振装置は、ボルト(図示せず)を介して振動源であるエンジンに取り付けられる第1保持部材20と、所定の取り付け部材(図示せず)を介して車体やフレーム等に取り付けられる略円筒状の第2保持部材21とが、加硫ゴム成形体22を介して一体化されている。また、上記第2保持部材21の下端開口内側にダイヤフラム23が液密状態で取り付けられており、上記加硫ゴム成形体22とダイヤフラム23との間に、液体Pを密封状態で収容する液体密封空間が形成されている。
【0020】
そして、上記液体密封空間は、仕切り部材24を介して、主液室25と副液室26の上下2室に仕切られており、上記仕切り部材24の周縁部に設けられたオリフィス27によって、主液室25と副液室26とが連通されている。
【0021】
したがって、上記構成によれば、エンジンの振動を加硫ゴム成形体22が受けると、それ自身の弾性による振動吸収作用と上記液体密封空間内における液体Pの流動作用等によって、車体側に伝達される振動が非常に小さく減衰されるのであり、優れた防振性能が発揮されるようになっている。
【0022】
しかも、この装置では、上記液体密封空間に封入する液体Pとして、極性有機溶剤からなる第1液体と、上記第1液体と相溶性を有しかつ界面活性能力を有する極性オイルからなる第2液体と、エアレーションに由来する溶存ガスと、を含有する混合液体が用いられている。これが、本発明の大きな特徴である。
【0023】
上記第1液体として用いられる極性有機溶剤としては、従来から液体封入式防振装置の封入液体として用いられているエチレングリコール(以下「EG」という)単体、プロピレングリコール(以下「PG」という)単体、もしくはこれらの混合液体等を用いることができる。また、ブチルジグリコール、メチルトリグリコール、ブチルトリグリコール、メチルポリグリコール等のグリコール系溶剤、あるいは水やその他の極性流体等を用いることもできる。なかでも、EGとPGの混合液体を用いることが好適であり、特に、その混合比率(EG:PG)が50:50〜90:10のものが好適である。
【0024】
また、上記第2液体として用いられる、上記第1液体と相溶性を有しかつ界面活性性能を有する極性オイルとしては、ポリエーテル系オイル、ポリエーテル変性シリコーン系オイル、ビニル系オイル等があげられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらは、容易に気化しないことが必要であり、通常、平均分子量が2000〜8000のものが好適に用いられる。これらのうち、特に、ポリエーテル変性シリコーン系オイルが、とりわけ、第1液体との相溶性、界面活性性能の点から、好適である。
【0025】
なお、上記「相溶性を有する」とは、第1液体に対し第2液体が親和性を有し、両者を混合した液体が均一な1相の液体となることをいう。また、上記「界面活性性能を有する」とは、分子中に親水部と親油部とを有し、互いに溶け合わない2液の界面において、その界面張力を低下させる性能を有していることをいう。
【0026】
そして、上記第1液体および第2液体とともに用いられる、エアレーションに由来する溶存ガスとしては、エアレーションによって、上記第1液体と第2液体の混合液体中にある程度溶けて溶存ガスとして存在するものでなければならず、そのようなガスとしては、空気、アンモニア、二酸化炭素、一酸化窒素、酸素、一酸化炭素、水素、窒素、ネオン、ヘリウム等があげられ、なかでも、空気、アンモニア、二酸化炭素が好適に用いられる。これらは、単独であっても2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0027】
上記溶存ガスは、エアレーションによって、予め第1液体に溶存させておいても、第2液体に溶存させておいても、あるいは第1液体と第2液体の混合液体に溶存させておいてもよいが、第2液体によって界面張力が低下した混合液体に、上記ガスを溶存させることが好適である。
【0028】
そして、上記エアレーションの方法としては、液体に気体を吹き込むバブリングの他、液体と気体を混合状態で強制循環させる方法、液体を気体充満空間内で繰り返し落下させて気体と接触させる方法等があげられる。なかでも、バブリングによるエアレーションが、低コストで効率よく気体を液体中に溶存させることができ、好適である。
【0029】
これら溶存ガスは、液体封入空間内の圧力変動に応じて気化もしくは液化することによって、上記圧力変動を緩和する作用を果たすものであり、その含有量は、第1液体と第2液体の混合液体に対し、常温、大気圧の環境下で、0.03〜620容積%であることが望ましい。すなわち、0.03容積%未満では、上記圧力変動緩和作用があまり期待できず、逆に、気体を、620容積%を超えて含有させることは、大気圧下において容易ではない。
【0030】
なお、上記「常温」とは、ガスを溶存させようとする液体に対し、特に加熱も冷却もしていない状態の温度(通常、25℃)をいい、「大気圧」とは、上記液体に対し、特に加圧も減圧もしていない状態の圧力をいう。
【0031】
また、前記第1液体として、EGとPGのように複数の液体を混合したものであって、その混合時に多少空気等を巻き込んで溶存ガスとして含有するものを用いる場合は、その溶存ガスも、上記エアレーションによって意図的に含有させた溶存ガスと同様、液体密封空間内の圧力変動に伴って気化と液化を繰り返してその緩和の助けとなるため、好適である。
【0032】
上記第1液体と第2液体の配合割合は、第1液体100重量部に対し、第2液体を0.1〜80重量部に設定することが好適である。すなわち、上記第2液体が、上記の範囲よりも少ないと、液体P全体の表面張力があまり低下せず、気泡が複数個に分かれて発生しにくくなり、逆に、第2液体が、上記の範囲よりも多いと、気泡の発生源である第1液体の割合が少なくなり、充分な圧力変動緩和作用が得られにくくなるからである。
【0033】
また、上記液体Pには、上記第1液体と第2液体の他に、任意成分として、抑泡剤、抗酸化剤等を添加することができる。さらに、液体中の溶存ガスによる圧力変動緩和作用を助けるために、熱分解等によって気体を発生しうる物質、例えば炭酸水素ナトリウムや炭酸水素アンモニウム等を添加することができる。
【0034】
このように、本発明は、上記特殊な液体Pを、液体密封空間内に封入する液体Pとして用いるため、封入された液体P全体の表面張力が従来に比べて低く、負圧下で、上記液体Pに含まれる溶存ガスに由来する気泡が、液中に複数個分かれた状態で発生することから、優れたキャビテーション抑制効果を得ることができる。そして、装置本来の、液体流動性に伴う防振性能を損うことなく、キャビテーションによる異音の発生が抑制されるため、車体等、この防振装置を取り付けた環境内を静寂を保つことができる。
【0035】
つぎに、上記エンジンマウントの製法の一例について説明する。
【0036】
まず、加硫ゴム成形体22を成形するための金型を準備し、その金型の所定位置に、上記第1保持部材20および第2保持部材21をセットする。そして、加硫ゴム成形体22の材料である未加硫ゴム組成物を充填した後、加熱することにより、第1保持部材20、第2保持部材21と加硫ゴム成形体22とを一体化する。ついで、予め加熱成形していたダイヤフラム23を準備し、液体Pが貯溜された液槽内で、上記第1保持部材20、第2保持部材21と加硫ゴム成形体22との一体化物のうち第2保持部材21の下端開口から、仕切り部材24とダイヤフラム23とを嵌入して所定位置に取り付けた後、液槽から取り出す。このようにして、加硫ゴム成形体22とダイヤフラム23との間に液体Pを封入する。その後、上記第2保持部材21の下端部をかしめ、上記液体Pを完全に密封する。このようにして、上記エンジンマウントを作製することができる。
【0037】
なお、上記の例は、本発明の液体封入式防振装置を、エンジンマウントに適用した例の一つであるが、上記エンジンマウントは、吊り下げ型であって、正立取り付け型であっても差し支えない。また、エンジンマウントの外、自動車用のサスペンションブッシュ、モータマウント等、各種の防振装置に適用することができる。
【0038】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。
【実施例】
【0039】
〔実施例1〜12、比較例1〕
液体密封空間内に封入する液体Pとして、後記の表1〜表3に示す組成のものを用い、図1と同様のエンジンマウントを作製した。なお、液体Pに含有される溶存ガスは、二酸化炭素ガスを所定時間バブリングすることによって得られたものである。また、溶存ガスの含有量は、常温、大気圧下における含有量である。
【0040】
得られたエンジンマウントAを、図2に示すように、加振装置30に取り付けて、自動車搭載を模擬してマウント変位を入力し、荷重センサ31によって加振時の荷重を読み取り、ハイパスフィルタ(500Hz)を通して、その伝達荷重(N)を測定した。そして、比較例1品の伝達荷重を100とした場合の、各実施例1〜12品の伝達荷重を算出し、その結果を、下記の表1〜表3に併せて示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
上記の結果から、実施例1〜12品は、比較例1品に比べて伝達荷重が小さくなっており、優れた防振性能を備えていることがわかる。
【0045】
なお、参考までに、上記実施例1品の測定結果を図3(a)に示し、比較例1品の測定結果を図3(b)に示す。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、自動車や産業機械等に使用されるエンジンマウント,ミッションマウント,サスペンションブッシュ,モータマウント等の液体封入式の防振装置であって、とりわけキャビテーションによる異音の発生が効果的に抑制された防振装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
20 第1保持部材
21 第2保持部材
22 加硫ゴム成形体
23 ダイヤフラム
24 仕切り部材
25 主液室
26 副液室
27 オリフィス
P 液体
図1
図2
図3
図4