(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738186
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】AA−AMPS共重合体を用いる膜システムでのスケール形成及び堆積の阻害方法
(51)【国際特許分類】
C02F 5/10 20060101AFI20150528BHJP
B01D 61/10 20060101ALI20150528BHJP
B01D 61/36 20060101ALI20150528BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20150528BHJP
C02F 1/469 20060101ALI20150528BHJP
C02F 5/00 20060101ALI20150528BHJP
B01D 61/52 20060101ALI20150528BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
C02F5/10 620D
B01D61/10
B01D61/36
C02F1/44 C
C02F1/46 103
C02F5/00 620B
C02F5/10 620C
C02F5/00 610G
B01D61/52
C09K3/00 108A
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-526213(P2011-526213)
(86)(22)【出願日】2009年9月4日
(65)【公表番号】特表2012-501833(P2012-501833A)
(43)【公表日】2012年1月26日
(86)【国際出願番号】US2009055964
(87)【国際公開番号】WO2010028196
(87)【国際公開日】20100311
【審査請求日】2012年8月23日
(31)【優先権主張番号】12/204,488
(32)【優先日】2008年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507248837
【氏名又は名称】ナルコ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムサル,ディーパック,エイ.
【審査官】
岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−125497(JP,A)
【文献】
特開2001−224933(JP,A)
【文献】
特開平11−267644(JP,A)
【文献】
特開2001−129554(JP,A)
【文献】
特表2001−510393(JP,A)
【文献】
特開2006−167549(JP,A)
【文献】
特開昭63−137705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 5/10
B01D 61/10
B01D 61/36
B01D 61/52
C02F 1/44
C02F 1/469
C02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜システムを通過する供給水流からのスケール形成及び堆積の阻害方法であって:
a)供給水流のpHを7.0〜8.2の範囲に制御するステップ;
b)膜システムが逆浸透システム、ナノろ過システム、電気透析システム、電気脱イオン化システム又はこれらの組み合わせであるときに、随意に供給水流の温度を5℃〜40℃の範囲に制御するステップ;
c)膜システムが膜蒸留システムであるときに、随意に供給水流の温度を40℃〜80℃の範囲に制御するステップ;及び
d)供給水流に、リンを含有せず、且つAAとAMPSのモル比が80:20、重量平均分子量が100,000であるAA−AMPS共重合体を含むスケール阻害剤を加えるステップ、
を含む方法。
【請求項2】
膜システムを通過する供給水流からのカルシウム炭酸塩スケール形成及び堆積を阻害する方法であって:
a)供給水流のpHを7.0〜8.2の範囲に制御するステップ;
b)膜システムが逆浸透システム、ナノろ過システム、電気透析システム、電気脱イオン化システム又はこれらの組み合わせであるときに、随意に供給水流の温度を5℃〜40℃の範囲に制御するステップ;
c)膜システムが膜蒸留システムであるときに、随意に供給水流の温度を40℃〜80℃の範囲に制御するステップ;及び
d)供給水流に、リンを含有せず、且つAAとAMPSのモル比が80:20、重量平均分子量が100,000であるAA−AMPS共重合体を含むスケール阻害剤を加えるステップ、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膜システムにおけるスケール形成及び堆積の阻害方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノろ過(NF)、逆浸透(RO)、電気透析(ED)、電気脱イオン化(EDI)及び膜蒸留(MD)膜処理は、汽水性の(地下及び地表)水、海水及び処理済排出水の処理に用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
濃縮処理中に、カルシウム、バリウム、マグネシウム及びストロンチウムなどの硫酸塩;カルシウム、マグネシウム、バリウムの炭酸塩;及びカルシウムリン酸塩のようなやや溶けにくい塩は溶解限度を超えて、システム内と同時に膜表面へのスケール形成をもたらす。膜のスケーリングは、膜を介する浸透流量の損失を生じ、膜を介する塩の通過を増大させ(膜蒸留を除き)、膜要素全体の圧力低下を増大させ、さらに、これらの全ての要素が上述の処理の操業コストの増加及びこれらの膜システムによる水の生成量の損失を生じる。
【0004】
抗スケール剤は、単独又はpH調整剤との組み合わせ(炭酸塩及びリン酸塩スケールの場合)でスケール形成の阻害に成功裏に用いられている。例えばNF及びRO処理に用いられる商業的抗スケール剤のほとんどは、ポリアクリル酸塩、有機リン酸塩、アクリルアミド共重合体及び/又はそれらの混合物である。リンを主成分とする物質に対するますます厳格になる規制により、リンを含まない抗スケール剤が要望されている。ポリアクリル酸塩を主成分とする抗スケール剤は、特定の化学成分の水に対してのみ有効であり、他のものに対しては、特に鉄を含むものに対してはあまり有効ではない。したがって、NF、RO、ED、EDI及びMD処理のためのリンを含まない抗スケール剤の開発の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のものを含む膜システムを通過する供給水流からのスケール形成及び堆積を阻害する方法であって:(a)供給水流のpHを約7.0〜約8.2の範囲に制御するステップ;(b)膜システムが逆浸透システム、ナノろ過システム、電気透析システム、電気脱イオン化システム又はこれらの組み合わせであるときに、随意に供給水流の温度を約5℃〜約40℃の範囲に制御するステップ;(c)膜システムが膜蒸留システムであるときに、随意に供給水流の温度を約40℃〜約80℃の範囲に制御するステップ;及び(d)供給水流に有効量のAA−AMPS共重合体を含むスケール阻害剤を加えるステップ、を含む方法を提供する。
【0006】
本発明は更に膜システムを通過する供給水流からのカルシウム炭酸塩スケール形成及び堆積を阻害する方法であって:(a)供給水流のpHを約7.0〜約8.2の範囲に制御するステップ;(b)膜システムが逆浸透システム、ナノろ過システム、電気透析システム、電気脱イオン化システム又はそれらの組み合わせであるときに随意に供給水流の温度を約5℃〜約40℃の範囲に制御するステップ;(c)膜システムが膜蒸留システムであるときに、随意に供給水流の温度を約40℃〜約80℃の範囲に制御するステップ;及び(d)供給水流に有効量のAA−AMPS共重合体を含むスケール阻害剤を加えるステップ、を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、生成物A、生成物B、生成物C、生成物Dによる小規模容器中でのスケール阻害を示す。
【
図2】
図2は、小規模容器中試験での鉄イオン存在下での生成物Aの有効性を示す。生成物Aはそれぞれ1ppmのFe
3+、0.5ppmのFe
3+、及びFe
3+の非存在下で試験された。
【
図3】
図3は、小規模容器中試験での生成物Aの2つの異なる温度下での有効性を示す(鉄は存在しない)。生成物Aは12℃及び25℃で試験された。
【
図4】
図4は生成物AによるROシステムでのスケール軽減を示す。
【
図5】
図5は生成物AによるROシステムでのスケール軽減を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述のように、本発明は膜システムを通過する供給水流からのスケール形成及び堆積の阻害方法を提供する。
【0009】
定義:
「膜システム」とは、逆浸透システム及び/又はナノろ過システム及び/又は電気透析システム及び/又は膜蒸留システム及び/又は電気脱イオン化システム又はそれらの組み合わせを含む膜システムを指す。当業者に周知の、例えば、特定の種類の組み合わせの膜;供給水流;濃縮水流;浸透水流;水流の移転を促進する1つ以上の装置;それらの組み合わせ;多様な膜システムの成分が、当業者に周知であろう他のシステム成分の他にも存在する。分離/ろ過されるべき目的の水流は、各種の源からのものであることができ、及び当業者は、特定の膜システムにより、目的の水流に対して、その成分への所望の分離/ろ過を行い得るかを周知している。
AA:アクリル酸。
AMPS:2−メチルプロピルスルホン酸2−アクリルアミド。
RO:逆浸透。
逆浸透システム:少なくとも1つの逆浸透膜を含む膜システム。
NF:ナノろ過。
ナノろ過システム:少なくとも1つのナノろ過膜を含む膜システム。
ED:電気透析又は逆電気透析。
電気透析システム:電気透析又は逆電気透析を行い得る少なくとも1つの装置を含む膜システム。
MD:膜蒸留。
膜蒸留システム:少なくとも1つの膜蒸留を行い得る装置を含む膜。
EDI:電気脱イオン化。
EDIシステム:少なくとも1つの電気脱イオン化を行い得る装置を含む膜システム。
【0010】
1実施形態では、このスケールはカルシウム炭酸塩から形成される。別の実施形態では、このスケールは硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、フッ化カルシウム及び/又は硫酸バリウムを除外する。
【0011】
別の実施形態では、このスケール阻害剤は、1つ以上のリン化合物を除外する。
【0012】
別の実施形態では、このスケール阻害剤は三元重合体を除外する。
【0013】
別の実施形態では、このスケール阻害剤は2:98〜98:2のAA及びAMPSの単量体間のモル比を有する。
【0014】
別の実施形態では、このAA及びAMPSは酸の形態でも塩の形態であってもよい。
【0015】
別の実施形態では、AA及びAMP塩のカウンターイオンはNa
+イオン、K
+イオン、又はNH
4+イオンである。
【0016】
別の実施形態では、この共重合体は約1,000〜約100,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0017】
さまざまな量のスケール阻害剤の化学的成分が、スケール形成及び/又は堆積を緩和/最小化するために加えられ得る。当業者は、限定はされないが、供給水流の予備分析及びスケールの種類の特定を含めた膜システムの分析に基づいてスケール阻害剤の量を軽減することができる。当業者には周知の他の要因を、いかなる量の化学成分を特定の膜システムに加えられるべきかの決定において考慮することができ、及びこの決定は不要な実験を行うことなく行い得る。
【0018】
1実施形態では、スケール阻害剤の有効量は、重合体活性物質に基づき約0.01ppm〜約30ppmである。
【0019】
他の実施形態では、スケール阻害剤の有効量は、前記膜システムの供給水流及び/又は排出水流の硬度に基づき決定される。
【0020】
他の実施形態では、スケール阻害剤の有効量は、前記膜システムの供給水流及び/又は排出水流のランゲリア飽和指数(Langeliar Saturation Index:LSI)に基づき決定される。LSI分析はスケール阻害及び膜システムの技術分野ではよく知られている。
【0021】
他の実施形態では1スケール阻害剤の有効量は膜システムから収集される供給水/排出水の水試料の濁度測定により決定される。
【0022】
供給水流の内容及び供給水流の種類はさまざまであり得る。
【0023】
他の実施形態では、供給水流に鉄[Fe
3+]が存在する。
【0024】
他の実施形態では、供給水流は、湖、河川、井戸、排水、工業用処理用水又は海水からの原水である。
【0025】
以下の実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0026】
カルシウム炭酸塩スケール阻害用のアクリル酸−AMPS(AA−AMPS)共重合体の有効性は、以下の2つの方法により決定された:
1)濁度の観察による瓶(ジャー)中のカルシウム炭酸塩沈殿の阻害;
2)らせん状に巻かれたRO膜中の流束損失の阻害。
以下の実施例中の全ての生成物の用量は活性重合体固体に基づく。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
I.ジャーテストでのスケール阻害試験
a)鉄非存在下、25℃
ジャーテストでは、誘導時間[溶液濁度が2NTU(比濁分析的濁度単位:Nephelometric Turbidity Unit)以上に上昇してからの経過時間として定義される]が異なる非リン抗スケール剤製剤について、観察された。以下の
図1は、生成物A(AA−AMPS共重合体、80:20モル比のAA:AMPS、分子量20,000Da)が望まれる2時間の誘導時間を達成するのに、たった0.47ppmの濃度ですむことを示し、一方アクリルアミド−アクリル酸共重合体を主成分とする生成物(生成物B、C及びD)は同じ誘導時間を達成するためにより高い用量を要したことを示している。
【0030】
b)鉄存在下での生成物Aの有効性、25℃
図2に示されるように、生成物Aは0.5ppm及び1ppmの両方の濃度のFe
3+の存在下で、2時間にわたる安定した濁度で示されるようにカルシウム炭酸塩結晶生成を制御した。Fe
3+の存在下では、Fe
3+粒子に起因して初期濁度は高いが、この試験の目的は、カルシウム炭酸塩形成に由来する経時的な濁度の更なる上昇を見出すことである。
【0031】
c)12℃及び25℃における生成物Aの有効性
図3に示されるように、0.47ppmの生成物Aは、より低温である12℃及び環境温度である25℃の両方で2時間の誘導時間を可能にした一方、生成物B及び生成物Dは12℃において0.88ppmを必要としたが、生成物Aが12℃で作用した場合と同濃度ではあるが、生成物Dの25℃での誘導時間は単に70分であった。
【0032】
II.RO膜システムにおけるスケール阻害
生成物Aのカルシウム炭酸塩スケール阻害に関する有効性を測定するために、各段階において3つの2.5インチ×21インチのエレメントが直列に接続されている2段階の逆浸透(RO)システム(即ち、合計6エレメント)が用いられた。第一段階の濃縮物が第二段階の供給水として接続されている。両段階からの最終濃縮物及び浸透物の両方が供給水タンクにリサイクルされた。
【0033】
ほとんどのスケーリングが起きそうな第二段階での、浸透水流、供給水pH及び排出水濁度(
図4)、並びに排出水の伝導度(
図5)の結果が以下に示される。
【0034】
図4に示されるように、対照(比較実験)の場合に流束は減退し、pHは減少し、及び濃縮物の濁度は稼動の最初の1時間以内に上昇して、膜表面へのカルシウム炭酸塩スケール堆積を示したが、一方、0.47ppmの生成物Aの場合、浸透水流のpH及び濁度は安定していた。同様に、
図5に示されるように、排出水の伝導度は対照では最初の1時間以内に減少したが、処理の場合には減少は非常にわずかであった。この結果は対照ではスケーリングが、より高濃度の塩の通過(又はより低い排出)をもたらす濃度分極を助けたが、生成物Aにより濃度分極が緩和されたことを示している。処理の場合の24時間に亘る安定な浸透水流及び塩排出も、0.47ppmの生成物Aが膜を詰まらせないことを示す。非リン抗スケール剤は膜に対して相溶性のはずである。