特許第5738188号(P5738188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5738188高エネルギー光子を検出するモジュールおよびシステム、当該システムを有するPET用環状検出器、当該検出器を有するガンマカメラおよびコンプトンカメラ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738188
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】高エネルギー光子を検出するモジュールおよびシステム、当該システムを有するPET用環状検出器、当該検出器を有するガンマカメラおよびコンプトンカメラ
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/24 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   G01T1/24
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-527290(P2011-527290)
(86)(22)【出願日】2009年9月9日
(65)【公表番号】特表2012-503190(P2012-503190A)
(43)【公表日】2012年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2009061663
(87)【国際公開番号】WO2010034619
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2012年9月3日
(31)【優先権主張番号】08164936.0
(32)【優先日】2008年9月23日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/099,271
(32)【優先日】2008年9月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511068979
【氏名又は名称】インスティテュート デ フィシカ ダルテス エネルヒエス
(73)【特許権者】
【識別番号】511068980
【氏名又は名称】エクス−レイ イマテク, エセ.エレ
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】チメイサーニ ラード, モクタール
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス パストール, ホセ, エメ.
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス サンチェス, カルロス
【審査官】 藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−106806(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/059425(WO,A1)
【文献】 特開2007−155563(JP,A)
【文献】 特開2000−019254(JP,A)
【文献】 特開2005−106644(JP,A)
【文献】 特開2006−242958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161
G01T 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギー光子を検出するモジュールであって、
高エネルギー光子を検出する複数のデバイス(10)を有し、
該デバイスの各々は、
高エネルギー光子を検出する1つ以上のピクセル型固体検出器(11)と、
前記固体検出器を分極させるための電圧を提供する手段と、
前記ピクセル型固体検出器(11)に連結されている少なくとも1つの読取素子(30)と、
データ入出力のために前記読取素子(30)に接続されている入出力素子(12)と、
前記ピクセル型固体検出器(11)、前記読取素子(30)、および前記入出力素子(12)を実装するための基層(13)とを備えており、各ピクセル型固体検出器は読取素子に実装されており、
前記デバイスが互いを支持するように、且つ前記デバイス(10)の前記ピクセル型固体検出器(11)を組み合わせたものによって高エネルギー光子の衝突点の3次元座標を提供することができるように、前記デバイスが互いの上部に配置されている、モジュール。
【請求項2】
前記複数のデバイス(10)の前記入出力素子(12)が1つのプリント回路基板(61)に接続されている、請求項1に記載のモジュール(60)。
【請求項3】
前記デバイス(10)の前記固体検出器(11)の少なくとも一部が互いにジグザグ状に配列されている、請求項2に記載のモジュール(60)。
【請求項4】
前記デバイスの前記基層(13)が等脚台形の形状を有している、請求項3に記載のモジュール(60)。
【請求項5】
少なくとも1つのピクセル型固体検出器(11)が等脚台形の形状を有している、請求項1に記載のモジュール(60)。
【請求項6】
前記デバイスの前記基層(13)が長方形の形状を有している、請求項1に記載のモジュール(60)。
【請求項7】
高エネルギー光子を検出するシステム(80)であって、
請求項2ないし6のいずれかに記載のモジュール(60)を複数有し、該モジュールの複数のプリント回路基板(61)が適当なコネクタ(62、71)を通じて1つのインタフェースバス(70)に接続されているシステム(80)。
【請求項8】
前記基層(13)が等脚台形の形状を有している、または、少なくとも1つのピクセル型固体検出器(11)が等脚台形の形状を有しているモジュール(60)のみを有している、請求項7に記載のシステム(80)。
【請求項9】
前記基層(13)が長方形の形状を有しているモジュール(60)のみを有している、請求項7に記載のシステム(80)。
【請求項10】
請求項8に記載のシステム(80)を複数有している、PETスキャナ用の環状検出器(100)。
【請求項11】
請求項9に記載のシステム(80)を複数有する検出器(120)を備える、ガンマカメラ。
【請求項12】
請求項9に記載のシステム(80)を複数有する検出器(120)を備える、コンプトンカメラ(130)。
【請求項13】
デバイス(10)を含み、これらにおいて、前記ピクセル型固体検出器(11)、前記読取素子(30)、および前記入出力信号素子(12)が前記基層(13)の上面に収容されており、前記基層(13)の底部側には、隣接するデバイス(10)に実装されているピクセル型固体検出器(11)を分極させるための電圧を提供する手段を備えている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載のモジュール(60)。
【請求項14】
前記デバイス(10)が、前記固体検出器(11)のピクセルパッドと読取素子(30)上の対応するピクセルチャネルとの間のオフセットを調整するために、前記固体検出器(11)と前記読取素子(30)との間に設けられた中間層をさらに備えている、請求項1ないし6、および13のいずれか一項に記載のモジュール(60)。
【請求項15】
ピクセルサイズが変化している少なくとも1つのピクセル型固体検出器(11)を含んでいる、少なくとも1つのデバイス(10)を含んでいることを特徴とする、請求項1ないし6、13および14のいずれか一項に記載のモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー光子を検出するデバイスに関するものである。より具体的には、本発明は、患者の体内で放射性物質により生成されるガンマ線光子を検出するピクセル構成の常温固体検出器を備えたデバイスに関するものである。
【0002】
本発明は、医用画像診断装置において特に利用が見いだされるものである。
【背景技術】
【0003】
陽電子放射断層撮影法(PET: Positron Emission Tomography)は、組織および器官(例えば、中枢神経系)の代謝作用および機能状態を示す画像を取得する診断法である。
【0004】
核医学における他の診断法と同様に、PETは、予め患者に投与された放射性同位元素の体内における分布を検出し分析することに基づいている。放射性同位元素は、経口摂取されるか、ガスとして吸入されるか、あるいは注射により投与することができる。
【0005】
陽電子を放射する医療用の放射性同位元素がいくつか知られている。最もよく用いられるのはフッ素‐18であり、これはグルコース・トレーサと結合することができるもので、これにより、18‐Fフルオロデオキシグルコース(18F‐FDG)を得ることができる。このようにして、放射性信号を発することにより検出可能であるグルコースが取得される。
【0006】
放射性同位元素を投与すると、その後、放射性同位元素は検査対象である身体部位全域に広がり、例えば癌細胞により取り込まれる傾向を持つ。放射性同位元素が崩壊すると、これは陽電子を放出し、陽電子は数ミリメータ飛行した後に電子と対消滅する。これによって、反対方向に飛行する対のガンマ線光子が生成され、これらの光子はそれぞれ511keVのエネルギーを有している。この対のガンマ線光子は、いわゆるPETスキャナを用いて検出することができる。両方のガンマ線光子の検出位置を用いて、(ガンマ光子の2つの検出位置を結ぶ線である)同時計測線(LOR: Line of Response)を再構成することができる。この方法を、図14に概略的に示している。
【0007】
図14は、ベッド3が設けられた従来のPETスキャナ1を示している。このベッドの上に、人間あるいは動物の体2を概略的に示している。PETスキャナの周囲を取り巻くように、複数の検出器4が設けられている。反対方向に飛行するガンマ線光子は、それぞれ検出器4aと検出器4bにより検出される。この検出を利用して、LORを再構成することができる。
【0008】
このような事象をいくつか集めて、複数のLORが交差する点が決定される。これらの点は、放射性同位元素の集中を示しており、ひいては癌細胞が存在する可能性を示すものである。PETスキャナはコンピュータに接続されており、これは、身体に吸収された放射性同位元素の量を計測し、LORを決定するためのものである。このようにして、内臓および身体のその他の部分の構造と機能の両方についての詳細を提供する画像を取得することができる。
【0009】
標準的なPETプロトコルでは、患者は、300から500MBqの18F‐FDG(フルオロデオキシグルコース)を注射される。吸収のために1から1時間半おいた後、スキャンのため、患者はスキャナ内に置かれる。従来のPETスキャナでの標準的なPETスキャンは、30分ほどのスキャン時間を要する。
【0010】
PETは、腫瘍診断において重要な役割を果たしている。その正確さは、(非特許文献1から引用した)つぎの表でわかるように、従来の画像診断システムのそれを上回るものである。
【0011】
PETスキャナは複数の検出器を備えている。現在、PET用に最良、最新の検出器は、標準的な大きさが4mm×4mm×10mmであるLSO(オキシオルト珪酸ルテチウム)結晶によるものである。この結晶は、ガンマ光子が衝突すると閃光を発する。これら閃光は、結晶に結合された光電子増倍管(PMT)を用いて検出することができる。これについても、図14に概略的に示している。検出器4cは、セグメント化された結晶5と複数のPMT6とを有している。複数のPMT6を1つの位置検出型光電子増倍管(PSPMT)で置き換えることもできることは、当業者には明らかであろう。
【0012】
511keVガンマに対するLSO結晶の光収率は、4000pheほどである。LSO結晶が511keVで実現する半値全幅(FWHM: full Width at half maximum)は10%前後である。このようなエネルギー分解能の限界によって、再構成画像における一種のノイズである散乱事象を取り除く能力が低減する。LSO結晶の(PETスキャナにおいて用いられる場合の、径方向の)標準的な長さは10mmほどであり、このことは、検出器に固有の径方向の衝突点の不確かさが3mm前後であることを意味しており、これは同時計測線の投影における誤差につながるものである。このことは、図14を参照すると容易に理解することができる。事象を記録するPMTは、基本的に2次元座標を提供するものである。ガンマ光子が結晶に衝突した径方向の位置は失われる。この情報の損失によって視差効果が生じ、これがLORの投影における誤差につながる。このような誤差は、当然ながら再構成画像の質を低下させる。
【0013】
もう1つの難点は検出器の結晶の形状であり、これは直方体であって、このようなコンポーネントから(例えばPETスキャナのために)円筒形を形成すると、結晶の接触点にクラックが生じることが避けられない。
【0014】
医用画像診断装置の別の例としてガンマカメラがある。ガンマカメラも、やはり核医学において広く用いられている。これは、複数のシンチレーション結晶と、その前面のコリメータとにより形成される単一の検出面から構成されている。小さな角度範囲の光子のみがコリメータの孔を通って検出器に達し、それ以外はコリメータに吸収される。こうして、線源分布の2次元投影が検出面により記録される。
【0015】
単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT: Single Photon Emission Computed Tomography)は、ガンマカメラを用いる核医学断層撮影法である。SPECTによる撮像は、ガンマカメラを用いてさまざまなアングルで複数の2次元画像を取得することにより行われる。そして、コンピュータを用いて、複数の投影に対して断層像再構成アルゴリズムを適用し、3次元画像を生成する。
【0016】
コンプトンカメラは、医用画像診断装置の別の例である。コンプトンカメラは、ガンマ線を放出する放射性同位元素の分布を再構成するために用いられる。その応用範囲は非常に広く、核医学診断以外にも、原子力発電所の廃炉を監視するために用いることもでき、また、(例えば、放射性物質が存在しないか輸送コンテナをスキャンするためなど)国土保安に応用することもできる。
【0017】
コンプトンカメラは2つの検出面を有している。線源から放出された光子は第1の面で散乱し(コンプトン散乱)、第2の面で吸収される(光電効果)。両方の面において、相互作用の位置および付与されたエネルギーが測定される。通常、第1の面は半導体材料により作られ、第2の面はシンチレーション結晶により作られる。両検出器が同時作動することで、双方の検出器と相互作用すると共に付与した総エネルギーが所定のウィンドウの範囲内にある光子のみが、記録される。光子の検出位置およびエネルギーを用いて、いわゆるコンプトンの式により、光子の発生点が計算される。
【0018】
要約すると、核医学撮影においては、いくつかの技術および装置が知られており(PET、SPECT、ガンマカメラ、コンプトンカメラ)、これらは従来、シンチレーション結晶による検出器を用いるものである。
【0019】
シンチレーション結晶による検出器には、さまざまな欠点がある。PETスキャナにおいて、隣接する直方体結晶の接触点には元来、クラックが存在する。PETスキャナについて先に説明したように、視差効果が生じる場合がある。PETスキャナ、ガンマカメラ、あるいはコンプトンカメラにおいて用いられる結晶は4mm×4mm×10mmの大きさであり、このことによって、これらがもつ固有誤差(および固有空間分解能)が決定される。PETスキャンの場合、4から5mmより小さいものを見つけることはできない。SPECTの場合、これは、15から20mm程度である。検出器は100%の効率で作動するわけではないので、空間分解能は、さらに相当悪化したものとなる。
【0020】
シンチレーション結晶のもう1つの問題は、シンチレーション結晶の検出量子効率(DQE: Detection Quantum Efficiency)は、やや低いということである。このDQEを向上させるためには、ガンマ光子を捕獲する確率を高めるように結晶の長さを増加させなければならない。しかしながら、さらに物体を追加することは、結晶内において光電子増倍管から比較的離れた位置で発せられた光の一部がPMTに達する前に減衰することになるので、必ずしも信号品質を向上させるとは限らない。PMT近くで結晶により捕獲されたガンマ光子は、PMTから遠くで捕獲されたガンマ光子よりも、多くの光子を発生させる。このため、より多くのガンマ光子を検出するようにすることで、エネルギー分解能を悪化させることになる。従って、ガンマ検出器において用いられるシンチレーション結晶の標準的な長さ(10mm)は、妥当なDQEを得ると同時に許容可能なエネルギー分解能を得る妥協点である。
【0021】
上記のシンチレーション結晶の不都合な点を解消するため、PET検出器においてピクセル構成の常温固体検出器を用いることが提案されている。ピクセル型固体検出器を用いると、検出器をサブミリメートルのピクセル(あるいはボクセル)にセグメント化することが可能となることで、高空間分解能を実現することができる。
【0022】
PETスキャナにおいて固体検出器を用いることの問題の1つは、高いガンマ線吸収率を実現するためには厚い検出器が必要であるということである。特に、511keVのエネルギーをもつ光子の90%を捕獲するためには、(CdTeを用いる場合)4cmの厚さが必要である。
【0023】
文献では、Cd(Zn)Teの非常に大きいセンサ(例えば、10mm×10mm×10mm)を用いることが提案されており、この場合、結晶の背面にはピクセル読取チップが接続される。この解決法は、紙の上では簡単そうに見えるが、実際はそうではない。第1に、そのような大きいCdTe検出器で良質のものは、非常にコストが高い。第2に、信号の時間収集が非常に長いので、それをPETにおいてトリガとして用いることはできない。第3に、そのような厚い検出器(10mm)を用いると、電子正孔の捕獲および寿命によって、エネルギー分光が著しく悪化する。
【0024】
特許文献1は、第1および第2の画像装置を有する放射線画像システムを開示している。前記第1の画像装置は(非ピクセル型)半導体放射線検出器のアレイを備えている。検出器アレイは、配線によりASICに接続されている。このシステムで用いる検出器はピクセル化されていないので、実現される精度には本質的に限界がある。使用される検出器は、少なくとも2mm×2mmである。従って、精度はこの寸法により制限される。また、実際問題として、このような寸法の検出器を用いることは非常に面倒でコストがかかるので、これより大きい検出器が必要となる。さらに、全ての検出器の間にはギャップが存在する。事象が全く検出されないデッドエリアを意味するこれらのギャップと、検出器アレイをパッケージ化および配置するやり方とが、検出効率の限界につながる。個々の検出器をプリアンプに接続するのに用いられる配線は、寄生容量、インダクタンスおよび抵抗を生じさせる原因となり、これによって、全体としてのノイズ対信号比が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0057191号
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】“Journal of Nuclear Medicine Supplement,Volume42,Number5”,2001年5月,UCLA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
本発明の目的は、従来の検出器の欠点の少なくとも一部を解消する、高エネルギー光子を検出するデバイスを提供することである。
【0028】
本発明のさらなる目的は、高空間分解能および高検出効率で高エネルギー光子を検出するデバイスを提供することである。高空間分解能によって、ガンマ光子の衝突点の正確な位置(x,y,z)が提供される。高検出効率は、放射線量を低減する助けとなる。
【0029】
本発明のもう1つの目的は、向上したエネルギー分解能で高エネルギー光子を検出するデバイスを提供し、これにより、散乱事象の大部分を取り除くと共に、信号対ノイズ比(SNR)を高くする。このことが、高コントラストの画像につながる。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するため、本発明は、高エネルギー光子を検出するデバイスを提供する。これは、高エネルギー光子を検出する少なくとも1つのピクセル型固体検出器と、これらの固体検出器を分極させるための高電圧を提供する手段と、これらのピクセル型固体検出器に連結されている少なくとも1つの読取素子と、この読取素子にデータ入出力のために接続されている入出力素子と、上記のピクセル型固体検出器、読取素子、および入出力素子を実装するための基層とを備えている。
【0031】
(上記の不都合な点をもつ)シンチレーション結晶を用いる代わりに、本発明は、高エネルギー光子を検出するピクセル構成の固体検出器を提供する。標準的なピクセルサイズは、1mm×1mmとすることができるが、例えば10μm×10μmのピクセルサイズでピクセル型固体検出器を作ることも可能である。このように、本発明は空間精度についての大きな可能性を提供するものである。このような精度は、シンチレーション結晶を用いて達成することはできない。デバイスは、このように、さまざまな用途における特定のニーズに合わせることができる。1つの固体検出器内でピクセルサイズを変化させることも可能である。また、検出器のピクセル間にデッドエリアが存在しない。2つのピクセルの間で生じた事象でも、2つのピクセルの協働によって検出することができる。
【0032】
さらには、モジュール式で簡単に重ね合わせできるものであることから、複数のデバイスを容易に組み合わせて3次元の適当な大きさ形成することができる。
【0033】
第2の態様では、本発明は高エネルギー光子を検出するモジュールを提供する。これは、本発明によるデバイスを複数有し、デバイスのピクセル型固体検出器の組み合わせにより3次元検出器を形成するように、それらのデバイスが配列されている。
【0034】
本発明による各デバイスは、基本的に2次元検出器を形成するものである。少なくとも1つのデバイスを別のデバイスの上に配置することによって3次元検出器を構成した。検出器が3次元であることによって、(PETスキャナについて論じたような)視差効果を回避することができる。デバイスをモジュール式に重ね合わせることによって、所望の数のデバイスを組み合わせて、厚さを大きくした、従ってDQEが向上した検出器を、エネルギー分解能あるいは空間分解能について妥協することなく、構成することができる。
【0035】
本デバイスで用いられる固体検出器の標準的な厚さは2mmとすることができる(しかし他の厚さも、もちろん可能である)。このようなデバイスを複数組み合わせて、従来の厚い固体検出器の時間収集などに関する問題に直面することなく、適当な厚さを構成することが可能である。
【0036】
さらに、本発明は、強磁場において用いることが可能な検出器を提供する。このため、本発明に基づく検出器は、例えばMRIスキャナと組み合わせて1つのスキャナを構成することもでき、これによって、PETスキャンとMRIスキャンを同時に行うことが可能となる。
【0037】
一部の実施形態では、デバイスの基層は等脚台形の形状を有している。デバイスの基層を等脚台形の形状として、そこに実装される読取素子およびピクセル型検出器の大きさおよび形状をこの等脚台形に合わせたものとすることで、特に円環状に収まるように構成されたデバイスを得ることができる。これは、PETスキャナにおける用途に特に有効である。
【0038】
随意に、ピクセル型固体検出器と基層の両方を等脚台形の形状とすることができる。検出器は、基層の形状に適合するものであれば、他の形状であってもよい。例えば、適当な四辺形の2つの別個の検出器を用いて台形を形成することができる。しかしながら、特に興味深い選択肢は、固体検出器を合致する等脚台形とすることで、それらが基層上にぴったりと収まるようにすることである。しかし、読取素子は、通常は、その長方形の形状のままである。このため、本発明による一部の実施形態では、検出器のピクセルパッドと読取素子上の対応するピクセルチャネルとの間のいくらかのオフセットを調整するために、デバイスは、固体検出器と読取素子との間に設けられた中間層をさらに備えている。
【0039】
ピクセル型固体検出器が等脚台形である場合には、(台形の高さ全体に沿ってピクセル数は一定で)検出器のピクセルサイズは、幅の変化に適合するように、台形の高さに沿って変化する。
【0040】
一部の実施形態では、デバイスの基層は長方形の形状を有している。この形状は、ガンマカメラやコンプトンカメラなどにおける用途に特に有効である。
【0041】
本発明のモジュールにおいて、複数のデバイスの入出力素子は、1つのインタフェースに接続されていることが好ましい。モジュールを構成する特に有利な方法は、複数のデバイスの信号入出力素子を、例えばプリント回路基板(PCB)のような、1つのインタフェース要素に接続することである。これによって、複数のデバイスにより収集されたデータが、1つのインタフェースを用いて集められ伝送される。
【0042】
随意に、本発明のモジュールにおいて、デバイスの固体検出器の少なくとも一部を互いにスタガード状に配列することができる。固体検出器をスタガード状に配列することにより、1つのデバイスの検出器がその他のデバイスをいくらか支持することになるので、より強固な構造が得られる。
【0043】
随意に、モジュールが含むデバイスは、ピクセル型固体検出器、読取素子、および入出力信号素子が基層の上面に収容されており、基層の底部側には、隣接するデバイスのピクセル型固体検出器を分極させるための高電圧を提供する手段を備えている。当技術分野では、例えば適当な配線を介するなど、固体検出器を分極させるための高電圧を提供するいくつかの方法が知られている。モジュールが複数の基本デバイスから構成されていることを利用して、1つのデバイスが隣接するデバイスのピクセル型固体検出器を分極させる手段を提供することができ、それらはデバイスの底部側に配置される。モジュールの“端”のデバイスのみ(最も可能性が高いのは1番目のもの)、例えば追加のカプトン層など、他の手段が必要となるであろう。
【0044】
選択的に、モジュールが含むデバイスは、固体検出器が読取素子の上に実装されているものとする。固体検出器の各ピクセルパッドを、読取素子の入力ピクセルチャネルに接続することができる(配線は必要ない)。他の実施形態では、読取素子と固体検出器は、(互いに重なり合うのではなく)互いに隣接して配置することができる。
【0045】
一部の実施形態では、デバイスは、固体検出器のピクセルパッドと読取素子のピクセルチャネルとの間のオフセットを調整するため、固体検出器と読取素子との間に設けられた中間層をさらに備えている。固体検出器の大きさが所定の方向に沿って変化している実施形態においては(例えば、特に円環を形成するのに用いられるように構成された、基層が等脚台形の形状であるデバイスにおいて、固体検出器の形状は径方向に沿って変化する)、ピクセルサイズもこの方向に沿って変化する。このため、中間層が、検出器のパッドと読取素子の入力チャネルとの間のいくらかのオフセットを調整するためのインタフェースとして機能する。中間層は、カプトン層とすることができる。
【0046】
第3の態様において、本発明は高エネルギー光子を検出するシステムを提供する。これは、複数のモジュールを有し、該モジュールの複数のインタフェースは適当なコネクタを通じて1つのインタフェースバスに接続されている。この1つのインタフェースバスにより、読取素子により収集されたデータを通して、固体検出器で生じた全ての事象のデータを集めることができる。これは、必要な作動電圧を提供することもできる。
【0047】
随意に、システムは、台形形状の基層を有する(さらに他の要素も適当な形状とされた)デバイスから構成されたモジュールのみを有するものとすることができる。このようにして、PETスキャナ用の環状検出器を構成することができる。
【0048】
随意に、システムは、長方形の基層を有する(さらに他の動作要素も適当な形状とされた)デバイスから構成されたモジュールのみを有するものとすることができる。このようにして、直角プリズム形状の検出器を備えたガンマカメラあるいはコンプトンカメラを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の実施形態について、単に例示によって、添付の図面を参照して以下で説明を行うが、これに限定するものではない。
図1a図1aは、本発明により高エネルギー光子を検出するデバイスの好適な実施形態の概略図である。
図1b図1bは、本発明により高エネルギー光子を検出するデバイスの別の好適な実施形態の概略図である。
図2図2‐5は、図1aのデバイスの段階的構成の概略図である。
図3図2‐5は、図1aのデバイスの段階的構成の概略図である。
図4図2‐5は、図1aのデバイスの段階的構成の概略図である。
図5図2‐5は、図1aのデバイスの段階的構成の概略図である。
図6a図6aは、本発明により高エネルギー光子を検出するモジュールの概略図である。
図6b図6bは、図6aの高エネルギー光子を検出するモジュールをスタガード配置した概略図である。
図7図7は、本発明により高エネルギー光子を検出するシステムを得るためサポートに取り付けられた図6のモジュールの概略図である。
図8図8は、図6aのモジュールを複数有する、本発明により高エネルギー光子を検出するシステムの概略図である。
図9図9aおよび9bは、本発明によるデバイスのさらに別の実施形態であって、等脚台形の形状を有するデバイスの平面図である。
図10図10は、図8のシステムを複数有する、環状のガンマ線検出器の一部分の概略図である。
図11図11は、図10のガンマ線検出器の全体の概略図である。
図12図12は、図8のシステムを複数有する、直方体形状のガンマ線検出器の概略図である。
図13図13は、図12の検出器を有するコンプトンカメラの概略図である。
図14図14は、従来のPETスキャナの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明により高エネルギー光子を検出するデバイスの好適な実施形態について説明する。その次に、本発明による、(複数の当該デバイスを有する)モジュール、(複数のモジュールを有する)システム、PETスキャナ、ガンマカメラ、およびコンプトンカメラの好適な実施形態について説明する。
【0051】
図1aに、本発明によるデバイスの好適な実施形態を示している。高エネルギー光子を検出するための該デバイス10は、タイル状/積層配列された4つのモジュール型ピクセル常温固体検出器11と、各固体検出器11に1つずつ、その読取素子として機能する4つのASIC(特定用途向け集積回路)と、データ入出力のため(主に、固体検出器が確保したパラメータからASICにより生成された値を取得するため)ASICに接続されている入出力素子コネクタ12と、基層として機能して、その上に固体検出器11、ASIC、および入出力素子12が実装されるカプトン層13とを備える。さらに、各ASIC30を個々に入出力素子12に接続するためのコネクタ20(図1aでは見えていない)が設けられている。より具体的には、カプトン層13の前面は、ASIC30、コネクタ20、固体検出器11、および入出力素子12を実装するために用いられ、裏面には、カプトン層13は電源への接続部を備えており、これにより、図示のデバイスの横に隣接して配置される(この配置については後に、例えば図6aに示す)第2のデバイスの固体検出器11を分極させるための高電圧が提供される。
【0052】
本発明の範囲内で、デバイス内に、異なる数の固体検出器を設けることもできる。
【0053】
本実施形態では常温固体検出器を用いた。常温固体検出器は、例えば、Si、Ge、GaAs、CdTe、CdZnTe、あるいはHgl2からできたものとすることができる。ハイZである(原子核に多くの数の陽子をもつ)と共に優れた電子正孔移動度をもつ固体半導体を用いることが望ましい。しかしながら、本発明の範囲内で、どのようなピクセル型固体検出器を用いてもよい。
【0054】
目下の好ましい実施形態では、ピクセル型固体検出器11は、おおよその大きさが2cm×1cm×0.2cmのCdTe検出器であり、ピクセルサイズはおよそ1mm×1mmである。検出器の大きさについては、異なった選択も可能である。0.2cmの厚さのデバイスを用いて、このようなデバイスを複数結合することにより、厚い固体検出器を構成することが可能である。この検出器によれば、従来の厚い固体検出器における時間収集などの問題に悩まされることはない。
【0055】
また、各固体検出器11は、対応するASICの上に実装されて、各ピクセルパッドがそれぞれのチャネルに独立に接続されている。
【0056】
図1bに、本発明によるデバイスの別の実施形態を概略的に示している。この場合、1つのデバイス10は、2列の固体検出器11を1つのデバイスに設けることで形成されている。固体検出器は、基層13の上に実装されている。固体検出器の各列に対して、入出力素子12が設けられている。該デバイスのこのような設計の効果は、これは図1aのデバイス10を2つ結合する場合よりも少し薄く作ることができるということである。
【0057】
以下において、図1aに示すデバイス10の段階的構成(図2‐5に示している)について説明する。
【0058】
図2は、カプトン層13を示しており、その上面には、入出力素子12と、入出力素子12を個々のASICに接続するためのコネクタ20とが設けられている。
【0059】
図3は、同じカプトン層13を示しており、その上に1つのASIC30が実装されている。ASICは50μmの厚さまで薄型化されており、また、ASICの入出力コネクタは金属化ビアホールで形成されていて、これにより、該ASICをバンプボンドあるいは導電性接着剤によりカプトン層に接続することが可能となっている。また、例えば、3M(商標)から市販されているような異方性導電フィルムなど、他の接続方法を用いてもよい。ワイヤボンディングを用いることも可能である。図示の層13は、4つのASICを保持するように設計されているが、接続されるASICの数はデバイス10の要件に応じて変更することができるのは明らかである。
【0060】
図4は、同じ層13を示しており、その上に4つのASIC30が実装されている。この好適な実施形態においては、4つのASIC30を実装した後に、ASICの上に中間層(カプトン層)が設けられる。この中間層の目的は、対応する固体検出器11の各ピクセルパッドをASIC30の入力ピクセルチャネルに接続することである。後に一部の実施形態(例えば図9a)で説明するように,固体検出器11の大きさは所定の方向に沿って変化させることができるので、中間カプトン層は、固体検出器11上のパッドとASIC30の入力チャネルとの間のいくらかのオフセットを調整するインタフェースとしての機能を果たすものである。中間層は必ずしも全ての場合に設けられるものではなく、特に固体検出器の大きさが一定である場合には設けられるとは限らない。
【0061】
図5は、中間カプトン層の上に実装された固体検出器11を示している。他の実施形態では、固体検出器は読取素子(例えば、ASIC)の上に直接実装されてもよい。この好適な実施形態においては、ピクセルサイズは1mm×1mmほどであるように選択されている。この大きさのピクセルパッドを用いると、固体検出器と中間カプトン層、あるいはASICと中間カプトン層を、導電性接着剤で接合することが可能となり、はんだバンプの使用および、それによって固体検出器が加熱されることが回避される。
【0062】
ここで示された好適な実施形態において得られるデバイス10は、長さ4cm、幅2cm、厚さ0.2cmの固体検出器を有している。デバイスの効果的な厚さは、およそ2.2mmである(これは、検出器、カプトン層、および薄型ASICを含んでいる)。
【0063】
このようにして得られるデバイス10は、図1aに示されているものであるが、2つの大きな平行面(前面と裏面)と相当に薄い側端部とを有する本体を備えている。本発明による該デバイス10の動作は、つぎのようである。
【0064】
ガンマ線(高エネルギー光子)が、(図1aに概略的に示しているように)デバイス10に実装されているピクセル型検出器11の薄い側面に衝突する。固体検出器を用いる先行技術のデバイスでは、通常、検出器の大きいほうの面に(つまり、固体検出器に作用する電界の方向に)衝突するガンマ線を捕らえるように向けられている。しかし、本発明によると、デバイスは、検出器の薄い側面に(つまり、検出器に作用する電界の方向に垂直な方向に)衝突するガンマ線を捕らえることができるように向けられている。
【0065】
本発明のデバイスにおいて、ガンマ線が別の面に衝突することもあるが、しかし、後で示すように、衝突の主な方向は実質的に薄い側面に向いている。光子が検出器11内で捕獲される確率は、検出器の実体内を粒子が移動する距離と共に増加する。捕獲された光子は衝突点においてさまざまに異なる過程を経ることになるが、その主なものは光電効果である。検出器11において全てのエネルギーを付与した後、これに応じて同量の電子正孔(e‐h)が放出される。検出器に高電圧(HV)が印加されることで、e‐hがドリフトしてピクセル電極上に信号を生じさせ、これは後にASICによって増幅され処理される。ASIC30は、衝突点の位置すなわち衝突が起きたピクセルの座標を示す。加えて、信号パルスにより、光子のエネルギーについての情報が提供される。さらに、生成された信号の立ち上がり時間から、グローバルクロックに対する衝突時間が決定される。
【0066】
以下で、高エネルギー光子を検出するモジュールについて説明する。
【0067】
図6aに示すように、モジュール60は、(上記の)高エネルギー光子を検出するデバイス10を複数有し、これらは、その入出力素子12を通じてインタフェースに接続されており、この場合のインタフェースはプリント回路基板61(PCB)である。デバイスは、それらの大きい面が互いに隣接するように列に並べられている。それらのすべてが、基層の前面側が同じ方向を向くように並べられているかどうかは問題ではない。デバイス10のモジュール方式であるため、モジュール60を設計者が望む如何なる大きさにすることも可能であることは明らかである。図6aの場合、モジュールは30個のデバイスを有している。上記で採用したデバイスの大きさを用いると、モジュールはおよそ6.6cmの厚さとなる。
【0068】
PCB61はコネクタ62を備えており、これらは例えば薄型のものであって、ASIC30にアクセスするためのものである。つまり、PCBのコネクタ62は、(コネクタ20を通じて)ASICにアクセスできる入出力信号コネクタ12と接続されている。このようにして、ASIC30において処理されたデータをコネクタ62に取得して、そこから読み出すことができる。随意に、このようなモジュールが有するデバイスは、カプトン層の上面にピクセル型固体検出器、読取素子、および入出力信号素子を収容し、カプトン層の底部側には隣接するデバイスのピクセル型固体検出器を分極させるための高電圧を提供する手段を備えたものとすることができる。
【0069】
各ピクセル型固体検出器は、前述のように、ガンマ線による衝突が生じた場所について、基本的に2次元情報を提供することができる。当該モジュールにおいては、3次元の固体検出器が得られるように複数のデバイスが配列されている。デバイスはいずれも2次元検出器であるが、多くのデバイスを互いに重なり合わせることで、3次元検出器が得られる。モジュール60の寸法は、先に図5に関して述べた寸法を用いると、およそ5cm×2cm×6.6cmとなり、48000ボクセルを含むことになる。各ボクセルは、1mm×1mm×2mmの寸法をもち、ASIC30上の、それぞれに独立なピクセルチャネルに接続されている。このことは、およそ725チャネル/cmであることに相当している。
【0070】
本モジュールの動作原理は変わりない。ガンマ線がピクセル型検出器に衝突する。捕獲された光子の衝突点で、電子正孔(e‐h)が生じる。印加される高電圧によって、e‐hがドリフトしてピクセル電極上に信号を生じさせ、これは後にASICによって増幅され処理される。ASICは、衝突点の位置すなわち衝突が起きたピクセルの座標を示す。また、インタフェースすなわちPCB61は、事象がどのASICで記録されたのかについてのデータを有している。このように、PCBは、衝突が起きたボクセルの座標についてのデータを有している。
【0071】
一部の実施形態においては、図6bに示すように、より強度の高いモジュールを得るため、モジュールに含まれるデバイス10の検出器11はさまざまな大きさをもち、スタガード配置とされている。このようにして、1つのデバイスのピクセル型検出器11間のギャップが、隣接するデバイスのピクセル型検出器によって埋め合わせされる。要するに、この構成は、モジュール60がそれ自体を保持するための機械的強度を高めるものである。それ以上に、これがモジュールの機能性に及ぼす影響をもたないのは明らかである。
【0072】
注目すべきことは、図1bに示したデバイスは、特にこのようなスタガード配置で用いるのに適しているということである。すなわち、1つのデバイスで、そのデバイスの一方の側の固体検出器と他方の側の固体検出器とをスタガード配置として提供することが可能である。
【0073】
つぎに、高エネルギー光子を検出するシステムについて説明する。
【0074】
図7は、インタフェースバス70を示しており、これにモジュール60が接続されている。本実施形態におけるインタフェースバスはPCBである。PCB70は複数のコネクタ71を備えており、インタフェース61のコネクタ62が、PCB70のコネクタ71に差し込まれている。このようにして、高エネルギー光子を検出するシステムが得られる。当該システムは、必要に応じて(つまり、スキャン対象の大きさに応じて)1つ以上のモジュールを含むことができる。インタフェースバス70は、固体検出器に対して高電圧を供給し、ASICに対して電力を供給すると共に、ASICからの読み出し、ASICへの書き込みを行う。
【0075】
図8は、複数のモジュール60を含むシステム80を示している。それらのモジュール60は、1つのモジュールの端のデバイスの大きな面が隣りのモジュールの端のデバイスの大きな面に隣接するように、列に並べられている(モジュールは、ピクセル型固体検出器内部の印加電界が同じ方向となるように整列している)。
【0076】
システムを形成するために多くの他の考え得るモジュール配置を採用してもよいことは、当業者にとって明らかである。
【0077】
ここで記述した高エネルギー光子を検出するシステム80から、さまざまな医用画像診断装置を得ることができる。
【0078】
図9aは、本発明によるデバイスの別の実施形態を示している。該デバイス10は、2つの大きな平行面と相当に薄い側端部とを有する本体を備えており、その大きな面は等脚台形の形状を有している。この形状は、デバイスの基層を等脚台形の形状とすることで(また、デバイスのその他の要素を的確に適合させることで)、得られたものである。本実施形態において用いられる固体検出器11は、等脚台形の形状を有している。しかしながら、ASIC30は長方形である。これらの実施形態においては、検出器11のピクセルとASIC30の対応するピクセルチャネルとの間のいくらかのオフセットを調整するために、前述の中間カプトン層が必要となる。ASIC30は、検出器の下に配置されるため全体は見えないので、部分的に破線で示している。
【0079】
デバイスの形状をこのように選択すると、モジュール間に大したギャップを形成することなく環状に収めることができるため、特にPETスキャナに適した検出器を構成することが可能となる。PETスキャナにおいて、同時計測線(LOR)を形成することができるためには、2つの光子が同じ時間窓で(同時に)記録される必要がある。先行技術のデバイスでは、検出器(あるいはモジュール)の間にくさび形のギャップが存在する(例えば、図14を参照)。これらのギャップはLORの両端に存在し、このことが二次的なPETスキャナの検出効率の低減につながる。これが意味するのは、例えば1つの511keV光子の検出効率が25%であるとすると、2つの光子を連続して検出する確率は、(0.25)=0.0625、よって、およそ6%であるということである。等脚台形の検出器を用いると、くさび形のギャップを隣接するモジュール間に形成することなく、PETスキャナのモジュールをほぼ均一な環状に収めることができ、これによって、良好な検出効率が維持される。
【0080】
図9bは、図9aと同じデバイスを示している。本発明の好適な実施形態では、120個の台形のデバイスを結合して、PETスキャナの一部である環状を形成している。点線矢印はPETスキャナの径方向を示している。はっきりと図示されているように、ピクセル型固体検出器の大きさはこの径方向に沿って変化している。この実施形態では、検出器のピクセルパッドと読取素子のピクセルチャネルとの間のオフセットを補うために、中間カプトン層が設けられている。
【0081】
本実施形態では、固体検出器の高さHは1cmである。第1の検出器の短底(SB)の長さは、19.95mmであり、第1の検出器の長底(LB)の長さは20.47mmである。これらの寸法は、半径が40cmのPETスキャナで、その周囲に沿って120個のデバイスを備え、隣接するデバイス間の間隔が100μmであるものに基づいている。
【0082】
図10は、PETスキャナの検出器100の部分図である。PETスキャナの該検出器100は、環状形状を有しており、前述のような高エネルギー光子を検出するシステム80を複数有している。このシステムに含まれるデバイスの少なくとも一部は、等脚台形の形状を有する基層を備えるもので、これによって、環状形状を得ることが可能になっている。
【0083】
基本的には、システム80は環状を形成するように積み重ねられる。つまり、複数のシステムは、デバイス10の側端部が互いに隣接して、環状を形成するように並べられる。このように、システムの形状によって密閉形状を形成する。
【0084】
図11は、PETスキャナの完全な環状100(すなわち、ガンマ線検出器)を示している。この例では、検出器100は、80cmという標準的な大きさのガントリで、66cmの視野(FoV)をもつ。これは、511keVガンマの90%を効果的に捕らえることができる、径方向に4cmのCdTe検出器11を備えている。このことは、このようなデバイスによるPET事象の検出効率が81%であることを意味している。
【0085】
結果として、PETスキャナはシステム80からなるリング100を備え、これは、患者が横たわるベッドを取り巻くものである。各システム(これはリングのセクタと理解することができる)は、少なくとも1つのモジュール60を含み、各モジュールは複数のデバイス10を含んでいる。
【0086】
本発明のデバイス10を備えるPETスキャナの動作はつぎのようである。PET検出器100は多数のデバイス10で作られている。親核種が崩壊すると、1MeVほどのエネルギーをもつ陽電子が放出される。これらの陽電子は、人体内で電子と対消滅するまでに、平均して1mmほど移動する。この消滅過程で、反対方向に飛行する2つのガンマ光子が生成され、これらはそれぞれ511keVのエネルギー(電子‐陽電子対の静止質量)を有している。2本のガンマ線は固体検出器により記録され、同時計測線(LOR)が構成される。本発明の検出器が3次元であることによって、いわゆる視差効果を回避することができる。多くのLORが“同じ点”で交差しているため、放射性核種が特に集積している点、すなわち陽電子放射体が特に多い点の位置を特定することができる。この改良された検出器によって、LORの再構成が改善され、また、(癌細胞の存在を示している可能性がある)放射性核種の集積の検出品質も向上する。
【0087】
上記説明および図9‐11から、ガンマ線が主として固体検出器の薄い側面に衝突すること、つまり検出器に印加される電界と垂直な方向に衝突することは明らかである。
【0088】
デバイス10の大きな面が平行四辺形(例えば、正方形あるいは長方形)の形状を有している場合には、ガンマカメラ用のガンマ線検出器を得ることができる。
【0089】
図12は、そのようなガンマカメラ用のガンマ線検出器120を示している。当該検出器120は、前述のようなシステム80を複数有している。これら複数のシステムは、デバイスの側端部が互いに隣接して、直角プリズムを形成するように並べられる。図12の場合、ガンマ線検出器120は30個のシステムを含んでおり、これによって、検出器の寸法はおよそ66cm×66cmとなる。この検出器の寸法をより大きいものとすることは、何の問題もなく可能である。これは、デバイス10、モジュール60、およびシステム80のモジュール性によって可能となっている。
【0090】
本発明のデバイス10を備えるガンマカメラの動作はつぎのようである。
【0091】
ガンマカメラは、使用する放射性核種の種類により140keV(99Tc)から777keV(82Rb)までのエネルギー範囲の光子を検出することが期待される。カメラに入射する光子の方向を選択するため、検出器の前面に適当なコリメータを配置することができる。エネルギー光子はデバイス10と相互作用し、付与されたエネルギーとボクセルの座標に関する情報のみが用いられる。この撮画手段でのタイミング情報は使用されない。
【0092】
SPECTによる撮像では、ガンマカメラと、陽電子とただ1つの511keV光子を放出する放射性核種とが用いられる。SPECTの画像は、通常、ガンマカメラを用いてさまざまなアングルで複数の画像を取得することで得られる。
【0093】
図13は、コンプトンカメラ130の例を示している。第1の平面でコンプトン散乱が生じ、第2の平面は前述のようなガンマ線検出器120であって、ここで、散乱した後のX線が捕獲される。
【0094】
コンプトンカメラ用の検出器のこのような設計の効果は、
‐ ガンマ線検出器120を、その高エネルギーガンマ吸収効率を向上させるのに必要な厚さにすることができる。
‐ ガンマ線検出器120の寸法を必要な大きさにすることができる。
‐ 検出器120の反応が、広いエネルギー範囲に対して良好である。
‐ 検出器のボクセルの大きさが小さいので、検出器120における視差効果を回避することができる。図示の例では、1mm×1mm×2mmの大きさである。これは、必要に応じて、さらにずっと小さくすることもでき、これは、実際には1μmの空間分解能を有するピクセル電極のパターニングと関係している。
【0095】
本発明によるデバイス、モジュール、システム、および検出器の、その他の効果的な用途として、CTスキャンがある。CTスキャンでは、患者の身体の一方の側にX線源が配置され、他方の側に検出器が配置される。そのX線源および検出器は患者に対して動かされる。検出器により捕獲された光子は、患者の身体部位(臓器、骨など)の組織によるX線の減衰を示している。組織が異なると減衰率が異なることを利用して、患者の画像を得ることができる。
【0096】
CTスキャンで用いられるセンサは、一般的に、80keVから140keVのエネルギー範囲の光子を検出する必要がある。本発明によるデバイスにおいてピクセル型固体検出器を用いることの効果の1つは、ピクセルサイズを同じ検出器の中で変化させることができるということである(これは、シンチレーション結晶による先行技術の検出器では不可能である)。本発明の好適な実施形態では、CTスキャン用の検出器は複数のデバイス(あるいは、モジュールまたはシステム)から作られており、それらにおいて、ピクセルサイズは1つの検出器内で変化している。デバイスの(検出器に光子が入射する側である)“前部”では、ピクセルサイズは小さくなっていることが好ましく、例えば100μm×100μmである。ピクセルサイズはそこから検出器の“後部”に向かって次第に大きくなっている。例えば、その次の列のピクセルは100μm×200μm、それに続く列は100μm×300μmとすることができる。
【0097】
この構成によると、ピクセルチャネルの数を減少させても、低エネルギーの光子を高い精度で視差効果を減少させて捕獲することができ、より高エネルギーの光子はデバイスの後部に向かって高い確率で捕獲されるであろう、という効果がある。
【0098】
CTスキャンでは、例えばPETスキャン(511keV)に比較して、光子のエネルギー範囲(80keV‐140keV)が低いので、検出器の高さ(図9bで定義されているH)もより小さくすることが可能である(同じ検出器材料を用いた場合)。前述のように、PETスキャナに適用されるモジュールを構成するのに用いた全てのデバイスは、それぞれ4つのピクセル型固体検出器を備えていた(図1aに示した構成の場合;図1bの構成では8つの固体検出器)。各固体検出器は、1cm×2cm×0.2cmの大きさである。このため、この場合の検出器の全高は4cmであった。CTスキャナの場合は、CTスキャナのX線源により放出される光子のほぼ100%を捕獲するために、例えば、(図1aに示す構成を用いた)0.5cm×2cm×0.2cmの大きさのCdTe検出器を1つのみ備えなければならないことになる。図1bに示す構成の場合は、この大きさの検出器を2つ備えるであろうことは明らかである。
【0099】
本発明の詳細について、説明目的で説明を行ったが、当然のことながら、そのような詳細はその目的のためだけのものであり、発明の範囲から逸脱することなく、当業者はこれを変形することができる。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14