【課題を解決するための手段】
【0021】
この課題に対する解決策は、伝統的な電極固体支持体を含む新規な材料であって、配位錯体がリンカーアームを通してグラフト化されている上記材料である。
【0022】
本発明の材料において、固体支持体に一旦グラフト化されても電極触媒活性が保持されている金属有機錯体は、選択されたリンカーの使用によるものであることが見出されている。さらに、固定化は、この手順を介して実施されるときには、溶液中の触媒について観察される過電圧と比較して上昇した過電圧を生じない。本発明の材料は、とりわけリンカーアームの性質により、触媒活性をほとんどまたは全く示さない従来技術の材料と相違する。
【0023】
本発明の材料は、調製が容易であり、燃料電池または電解槽において電極として一体化され得る。本発明の材料は、水素の発生または酸化のための分子電極触媒として作用し、改善された安定性によって特徴づけられる(達成される触媒サイクルの総数によって特徴づけられる)。加えて、触媒層は、光電極触媒デバイスにおいてカソードとして用いられ得るように、透明にされていてよい。
【0024】
本発明の第1の対象は、少なくとも2つの先端を含むリンカーアームによって表面が官能化されている、導電性または半導性材料の固体支持体を含む材料であって、第1の先端が、共有結合によって、またはπ−スタッキング相互作用を介してのいずれかで固体支持体に結合されており、第2の先端が、共有結合によって金属有機錯体(C
*)に連結されている、上記材料である。このような材料を、下記のスキームAに概略的に説明する。
【0025】
【化1】
【0026】
固体支持体は、プラークの形状を好ましくは有するが、この形状は、様々であってよい。とりわけ、固体支持体は、用いられるデバイスに応じて、ロッド、円筒またはワイヤの形状を有していてよい。
【0027】
固体支持体は、有利には、高い比表面積を有する導電性または半導性材料である。固体支持体は、ナノ構造であっても、ナノ構造でなくてもよい。高い比表面積を有するこの導電性または半導性材料は、高い比表面積を有する電極を形成するために、別の導電性材料の支持体に堆積されていてよい。この別の導電性材料は、任意の導電性材料、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、ステンレス鋼、鉄、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウム(特に、新たにブラッシングされている場合)、金、ドープダイヤモンド、チタン、黄銅、または炭素、例えば黒鉛から作製されていてよい。好ましくは、固体支持体は、ITOおよび黒鉛から選択される材料から作製されている。
【0028】
固体支持体の調製のための材料は、金属材料、炭素材料、半導体または導電体の金属酸化物、窒化物またはカルコゲニドから選択され得る。
【0029】
固体支持体は、金属材料であるとき、ケイ素、黄銅、ステンレス鋼、鉄、銅、ニッケル、コバルト、アルミニウム(特に、新たにブラッシングされている場合)、銀、金またはチタンから選択され得る。
【0030】
金属固体支持体での官能化は、リンカー分子に由来するアリール基との反応によって実施され、共有結合によるグラフト化をもたらす。
【0031】
固体支持体は、炭素材料であるとき、
−カーボンブラック、単層または多層カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレンナノ粒子のような曲面炭素ナノ構造体、
−黒鉛、
−ガラス状炭素(膨張もしくは非膨張、または発泡体)、
−グラフェン、
−ドープダイヤモンド
から選択され得る。
【0032】
曲面炭素ナノ構造体として、限定されないが、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレンナノ粒子およびカーボンブラックが挙げられる。
【0033】
CNTの調製のための方法として、黒鉛のレーザ蒸発(Thessら、Science 273、1996年、483頁)、アーク放電(Journetら、Nature 388、1997年、756頁)およびHiPCo(高圧一酸化炭素)プロセス(Nikolaevら、Chem.Phys.Lett.313、1999年、91〜97頁)が挙げられる。CNTを製造するための他の方法として、化学蒸着(Kongら、Chem.Phys.Lett.292、1998年、567〜574頁;Cassellら、J.Phys.Chem.103、1999年、6484〜6492頁);ならびに溶液中および固体基材上の両方での触媒プロセス(Yan Liら、Chem.Mater.13(3);2001年、1008〜1014頁;A.Cassellら、J.Am.Chem.Soc.121、1999年、7975〜7976頁)が挙げられる。
【0034】
フラーレンナノ粒子を調製するための方法は、米国特許第5,985,232号および米国特許出願公開第2004/057,896号に記載されている。フラーレンナノ粒子は、Nano−C Corporation、Westwood Massなどの供給者から市販されている。
【0035】
カーボンブラックは、高度に分散されたアモルファス元素状炭素の粉末化形態である。カーボンブラックは、球およびこれらの融合凝集体の形態の、微細に分割されたコロイド材料である。種々のタイプのカーボンブラックは、一次粒子のサイズ分布、ならびにそれらの凝集および集塊の程度によって区別され得る。
【0036】
カーボンブラックは、石油重質留分および残油などの炭化水素混合物、コールタール生成物、天然ガスならびにアセチレンの制御された気相熱分解および/または熱クラッキングから選択される方法によって作製される。アセチレンブラックは、アセチレンの燃焼によって得られるタイプのカーボンブラックである。チャネルブラックは、堆積物が周期的に擦り取られる鋼板またはチャネル鉄に対してガス炎を衝突させることによって作製される。ファーネスブラックは、耐火物でライニングされた炉において作製されるカーボンブラックの名称である。ランプブラックは、固体を収集するための沈降室が備えられた閉鎖系において重質油または他の炭素質材料を燃焼させることによって作製される。サーマルブラックは、加熱された煉瓦の格子積みに天然ガスを通過させることによって製造され得、ここで、熱的にクラッキングされて比較的粗いカーボンブラックを形成する。カーボンブラックは、Cabot Corpなどの多くの供給者から市販されている。
【0037】
フラーレンはカーボンの球形同素体である。フラーレンは、sp
2混成状態にある偶数の炭素原子から全体的に構成される分子であり、閉鎖されたケージの形態を取る。フラーレン族のうち、最も豊富な種はC60分子であり、第2の最も豊富な種はC70である。フラーレンは、単層だけでなく積層された層または平行層からなる多層のケージも含む。フラーレンの調製は、とりわけ、WO92/04279号、米国特許第5,316,636号、米国特許第5,300,203号、およびHowardら、Nature 352、1991年、139〜141頁に開示されている。フラーレンは、Carbon Nanotechnologies Incorporated、MER Corporation、Nano−C Corporation、TDA Research Inc.、Fullerene International Corp.、およびLuna Innovationsなどの供給者から商業的に得ることができる。
【0038】
官能化されるには、本発明において用いられる炭素材料として、不飽和を有する炭素材料(黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、ガラス状炭素)が挙げられる。これらは、公知の方法によって官能化される:
−表面において1個または複数のC=C二重結合で実施される付加化学によって官能化される。ジアゾニウム塩の還元によってリンカーアーム前駆体から生成されるアリール基は、このように炭素材料と相互作用する。
−炭素材料のグラフェン層と、フェニル、ビフェニル、アントラセン、ピレン、ペリレンなどの、リンカーアームの芳香族部位、および他のポリ芳香族基とのπ−スタッキング相互作用を介して官能化される。
【0039】
固体支持体は、半導体または導電体の金属酸化物、窒化物またはカルコゲニドであるとき、TiO
2、NiO、ZnO、ZrO
2 ITO、SnO
2、WO
3、Fe
2O
3、Ta
2O
5、Ta
3N
5、TaON、N−ドープTiO
2、ZnS、ZnSe、CdS、CdSe、CdTe、ZnTeおよびこれらの材料の複合体、さらには他の元素によって場合によりドープされたものから選択され得る。望ましい金属酸化物は、NiO、TiO
2、ZnOから選択される。
【0040】
この場合の固体支持体の官能化は、反応/相互作用、例えば、リンカー分子のアリール基と金属酸化物材料との間の共有結合的連結によって実施される。
【0041】
固体支持体に望ましい材料は、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、および金属酸化物から選択される。さらにより好ましくは、固体支持体は、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)から選択される。
【0042】
リンカーアームは、少なくとも2つの先端を含み、第1の先端は、共有結合によって、またはπ−スタッキング相互作用を介してのいずれかで固体支持体に結合されており、第2の先端は、共有結合によって金属有機錯体に連結されている。
【0043】
リンカーは、有利には、触媒作用に必要とされる配座を分子化合物に取らせるように十分に長くあるべきである。また、好ましくは、リンカーは、導電性または半導性材料の表面に絶縁層を形成することを回避するために、かつ電極から触媒への電子移動を妨げるために、長すぎないようにするべきである。
【0044】
上記リンカーアームは、低い抵抗率を有して良好な電子移動を保証するように固体支持体に結合されている第1の先端、および共有結合によって金属有機錯体に連結されている第2の先端を含む。固体支持体と金属有機錯体との間の良好な電子移動は、層の電気抵抗率の測定を介して評価され得る。低い抵抗率は、リンカーと固体支持体との間の共有結合またはπ−スタッキング相互作用によって達成される。
【0045】
リンカーは、炭化水素分子から選択され得、上記炭化水素分子は、固体支持体との少なくとも1個の共有結合、またはπ−スタッキングを通して固体支持体と相互作用する1個の基を含み、さらには、金属有機錯体との少なくとも1個の共有結合を含む分子である。
【0046】
この炭化水素分子は、以下の式:
【0047】
【化2】
【0048】
に対応するもの、ならびに
【0049】
【化3】
【0050】
(式中、
Arは、C
1〜C
6アルキル、−OH、−NH
2、−COOH、−F、−Cl、−Br、−I、−NO
2、−CONR”
2、−COOR”、−SO
3−、−SR”、−OR”、−NR”
2から選択される1個または複数の置換基を場合により含むC
6〜C
30芳香族残基を表し、
RおよびR’は、同一または異なり、H、ならびに、−OH、−NH
2、−COOH、−CONH
2、トリアゾール、−SH、−N
3から選択される1個または複数の置換基を場合により含み、−CONH−、−CO−O−、−CO−O−CO−、−CO−NH−CO−、−CO−S−、−CS−O−、−CS−S−から選択される1個または複数の架橋によって場合により中断されている、C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルケニル、C
1〜C
20アルキニル、C
6〜C
30アリール、C
6〜C
30アラルキルから選択される基を表し、
R”は、H、C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルケニル、C
1〜C
20アルキニル、C
6〜C
30アリール、C
6〜C
30アラルキルから選択される基を表し、
Xは、−OH、−NH
2、−COOH、−CONH
2、トリアゾール、−SH、−N
3から選択される1個または複数の置換基を場合により含み、−CONH−、−CO−O−、−CO−O−CO−、−CO−NH−CO−、−CO−S−、−CS−O−、−CS−S−から選択される1個または複数の架橋によって場合により中断されている、C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルケニル、C
1〜C
20アルキニル、C
6〜C
30アリール、C
6〜C
30アラルキルから選択される基を表し、
xは、整数であり、1≦x≦5であり、xは、X基上でグラフト化されている官能基Yの数であり、
Yは、単一の共有結合、−O−、−NH−、−S−、−COO−、−CONH−、−CO−S−、−CS−O−、−CS−S−から選択される官能基である)
の還元的オリゴマー化から得られるオリゴマーに対応するもの
から選択される。
【0051】
望ましいリンカーアームは、
【0052】
【化4】
【0053】
のオリゴマー化から得られるものである。
【0054】
リンカーが、
【0055】
【化5】
【0056】
であるとき、リンカーと固体支持体との間の相互作用は、π−スタッキングを介している。
【0057】
リンカーが、
【0058】
【化6】
【0059】
の還元的オリゴマー化から得られるオリゴマーであるとき、リンカーは、Ar基を通して、固体支持体に共有結合されている。
【0060】
式(IA)および(IC)において、望ましい変形例は、以下である。
【0061】
Arは、有利には、C
6〜C
30芳香族残基を表す。Arは、以下のリスト:フェニル、ビフェニル、ピレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ペリレニル、ナフタセニルから選択され得る。
【0062】
好ましくは、RおよびR’は、H、C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルケニル、C
1〜C
20アルキニル、C
6〜C
30アリール、C
6〜C
30アラルキルから選択され、さらにより好ましくは、H、C
1〜C
12アルキルから選択される基を表す。有利には、R=R’=Hである。
【0063】
好ましくは、Xは、C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルケニル、C
1〜C
20アルキニル、C
6〜C
30アリール、C
6〜C
30アラルキルから選択される基を表す。さらにより好ましくは、Xは、C
1〜C
12アルキル、C
1〜C
12アルケニル、C
1〜C
12アルキニル、C
6〜C
20アリール、C
6〜C
20アラルキルから選択される基を表す。
【0064】
好ましくは1≦x≦3、さらにより好ましくはx=1である。
【0065】
アルキル、アルケニルおよびアルキニル基は、線状、分枝状、または環状であり得る。
【0066】
上記リンカー分子は、種々の形状を取り得る:上記リンカー分子は、固体支持体と金属有機錯体とを連結する単なる線状鎖であってよいが、数個のアームを含む分枝状分子であってよく、1個または数個のアームが固体支持体に連結されており、1個または数個のアームが金属有機錯体に連結されている一方で、他のアームは遊離状態のままであってよい。この最後の場合は、実験部において特に説明され、リンカーが
【0067】
【化7】
【0068】
の還元的オリゴマー化から得られるオリゴマーである。
【0069】
リンカーは、専ら明確な化合物ではない。オリゴマー化の間に、N
2分子が各(IC)分子について除去され得る。製造の間に、リンカーの一部のオリゴマー化が起こり得るが、このプロセスは、電極と分子触媒との間の絶縁層の形成を回避するために制御されなければならない。いくつかの異なるリンカーが、同じ固体支持体上でグラフト化されていてよく、および/または同一の金属有機錯体に連結されていてよい。1個のリンカーアームは、2個の異なる官能基によって固体支持体にアンカーをかけていてもよい。1個のリンカーアームが、1個を超える金属有機錯体を有してもよく、これらの金属有機錯体は、同一であっても異なっていてもよい。このような変形は、下記のスキームBおよびCで説明される。
【0070】
【化8】
【0071】
本発明の材料において用いられ得る金属有機錯体は、以下の基準に対応するものから選択される。
【0072】
金属有機錯体は、1個または数個の、好ましくは1、2または3個の金属原子と配位子とを含む分子である。金属原子は、遷移金属、ならびに、特に、元素の周期的分類の原子21〜29、42、44〜46および74〜78および有機配位子から選択される。これらの望ましい遷移金属原子は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Ru、Rh、Pd、W、Re、Os、Ir、Ptである。配位子は、1個または数個の異なる分子から構成されていてよい。金属有機錯体は、溶液中で試験されるとき、リンカーでのグラフト化の前に、水素の発生または取り込みのための電極触媒活性を示す。これは、増加量のプロトン源(目的とする用途で用いられる酸と同等の強度を有する酸)の存在下に対象とする溶媒中でサイクリックボルタモグラムを記録すること、および800mV未満の(操作条件下、H
+/H
2のカップルの平衡電位に関係する)過電圧で、水素発生用のカソードまたは水素取り込み用のアノードのいずれかの電流の向上を観察することによって、簡単に評価することができる。
【0073】
好ましくは、電極触媒作用は、触媒サイクルに沿って活性状態にある触媒の、可逆性、擬似可逆性、または少なくとも化学的に可逆性の電気化学プロセスに依存すべきである。金属有機錯体は、配位球の安定を保証するためのキレートの多座配位子を有し、好ましくは単核または多核であってよい。金属の配位球は、不安定な配位子、または還元もしくは酸化時に容易に除去され得る、効率的な触媒特性が必要とされる配位子を含有しないことが好ましい。
【0074】
本発明の材料において用いられ得る金属有機錯体は、非限定的に、以下の式に対応するものから選択され得る。さらなる例は、Coord.Chem.Rev.2005年、249頁、またはComptes Rendus Chimie 2008年、11、8頁において見出すことができ、2つの専門的な刊行物は、ヒドロゲナーゼおよびモデル化合物を扱っている。
【0075】
−金属ジオキシム/ジイミン錯体、例えば、以下の式:
【0076】
【化9】
【0077】
を有するもの。
【0078】
−金属アミン/イミン/ピリジン錯体、例えば、以下の式:
【0079】
【化10】
【0080】
を有するもの。
【0081】
−金属ポルフィリンおよび関係する(拡大もしくは制限された)ポリピロール大環状化合物もしくは金属フタロシアニン錯体、または金属シクラムおよび関係するポリアザ大環状錯体、例えば、以下の式:
【0082】
【化11】
【0083】
を有するもの。
【0084】
−フェロセノファンおよび関係する錯体例えば、以下の式:
【0085】
【化12】
【0086】
を有するもの。
【0087】
−金属ジホスフィンまたはジホスファイト錯体、例えば、以下の式:
【0088】
【化13】
【0089】
(式中、
Mは、元素周期表の遷移金属から、好ましくは、先に与えたリストから選択される原子を表し、さらにより好ましくは、Mは、Mn、Fe、Co、Ni、W、Moから選択され、有利には、Mは、NiおよびCoから選択される。
【0090】
R
0は、同一または異なり、H、BF
2、BPh
2、B(R
1)
2、B(OR
1)
2、BFR
1から選択される基を表す。
【0091】
Lは、溶媒分子、例えば水、アセトン メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、アニオン性配位子、例えばハロゲン、擬似ハロゲン、例えばSCN−もしくはシアン化物、水素化物、含酸素アニオン、例えば硝酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、過塩素酸塩、または一般的な単座配位子、例えばピリジン、イミダゾール、トリアゾール、CO、H
2、ホルミル、ホスフィン、ニトリルもしくはイソニトリル配位子、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル、トリメチルイソニトリル、ベンジルイソニトリルから選択される。
【0092】
nは、0と6との間に含まれる数である。
【0093】
R
1、R
2、R
3は、同一または異なり、H、ならびに、−OH、−NH
2、−COOH、−CONH
2、トリアゾール環から選択される1個または複数の官能基を場合により含み、−CO−O−CO−、−CO−NH−CO−から選択される1個または複数の架橋によって場合により中断されている、C
1〜C
20アルキル、C
1〜C
20アルケニル、C
1〜C
20アルキニル、C
6〜C
30アリール、C
6〜C
30アラルキルから選択される基を表し、R
1基のうちの少なくとも1個、またはR
2基もしくはR
3基の一方が、リンカー分子との共有結合を表し、2個以上のR
1置換基が一緒に縮合されていてよく、2個以上のR
2置換基が一緒に縮合されていてよい。)
を有するもの。
【0094】
全てのR
1基が、少なくとも1個のR
1基がリンカー分子との共有結合である場合を除いて、同一であることが好ましい。
【0095】
全てのR
2基が、少なくとも1個のR
2基がリンカー分子との共有結合である場合を除いて、同一であることが好ましい。
【0096】
好ましくは、金属有機錯体は、金属ジホスフィンまたはジホスファイト錯体、例えば以下の式を有するもの(式中、R
1、R
2およびR
3は、上記と同様の定義を有する):
【0097】
【化14】
【0098】
から選択される。
【0099】
望ましい変形例は、以下の式(II):
【0100】
【化15】
【0101】
(式中、R
1およびR
2は、上記と同様の定義を有する)
に対応するものから選択される金属有機錯体を有する。
【0102】
有利には、全てのR
1が、少なくとも1個のR
1基がリンカー分子との共有結合である場合を除いて、同一であり、
【0103】
【化16】
【0104】
から選択される基を表す。
【0105】
好ましくは、全てのR
2が同一であり、フェニル基を表す。
【0106】
リンカーアームを通した、金属有機錯体による固体支持体の官能化は、いくつかの手段によって行われ得る:
−(i)金属有機錯体が、リンカーとまずカップリングされ得、このアセンブリは、高い比表面積を有する導電性または半導性材料にグラフト化され得る;
−(ii)高い比表面積を有する導電性または半導性材料が、リンカーによってまず官能化され得、その後、金属有機錯体が、クリック化学の方法を含めた伝統的な有機カップリング反応を用いて、リンカー上にカップリングされ得る;
−(iii)高い比表面積を有する導電性または半導性材料が、金属有機錯体の一部である配位子と既にカップリングされているリンカーによってまず官能化され得る。次いで、該錯体が、このグラフト化された配位子を、錯体の金属塩または金属前駆体と遊離配位子との混合物と反応させることによって形成される。
【0107】
これらの方法のいくつかは、実験部で説明される。
【0108】
リンカーが
【0109】
【化17】
【0110】
であるとき、リンカーと固体支持体との間の相互作用は、π−スタッキングを介する。リンカーは、固体支持体と接触して、リンカーのアリール基と固体支持体との間の相互作用が確立される。リンカーは、このステップの前に、金属有機錯体C
*によって、または金属有機錯体の配位子形成部分によって、グラフト化されていても、グラフト化されていなくてもよい。
【0111】
本発明による材料の調製の一例は、リンカーが(IC)のオリゴマー化から得られるオリゴマーである場合、
図14において説明される。
【0112】
カーボンナノチューブ支持体(CNT)のような固体支持体は、第1ステップにおいて、リンカーを用いて、
【0113】
【化18】
【0114】
(式中、Ar、X、Y、R、R’およびxは、上記と同じ意味を有し、Zは、反応性基である)のオリゴマー化によって官能化される。この官能化により、固体支持体とオリゴマーとの間に共有結合が生じる。次いで、官能化された固体支持体は、金属有機錯体誘導体C
*W(式中、C
*は、金属有機錯体であり、Wは、Zと反応して共有結合を形成することができる反応性基である)と反応する。
【0115】
本発明の材料の調製の別の概略的代表例は、
図15において説明される。
【0116】
固体支持体は、第1ステップにおいて、リンカーを用いて、
【0117】
【化19】
【0118】
(式中、Ar、X、Y、R、R’およびxは、上記と同じ意味を有し、L
*は、金属有機錯体の配位子またはその一部である)のオリゴマー化によって官能化される。この官能化により、固体支持体とオリゴマーとの間に共有結合が生じる。次いで、官能化された固体支持体は、金属原子Mと反応し、その結果、金属原子Mと、その配位子L
*とが接合して、金属有機錯体C
*を形成する。
【0119】
本発明の材料の調製の別の概略的代表例は、
図16において説明される。
【0120】
第1ステップにおいて、リンカー前駆体
【0121】
【化20】
【0122】
は、誘導体C
*W(式中、Ar、R、R’、X、Yおよびxは、上記と同じ意味を有し、WおよびZは、一緒になって共有結合を形成することができる反応性基を表す)との反応を経て金属有機錯体C
*のグラフト化によって官能化される。
【0123】
次いで、固体支持体が、リンカーC
*分子によって官能化されて、リンカーのオリゴマー化および固体支持体とオリゴマーとの間の共有結合の確立がもたらされる。
【0124】
オリゴマー化の程度は、説明目的でこれらの図において任意に選択されていて、限定としてみなされてはならない。
【0125】
本発明の材料をベースとする電極の一例が、
図13Aに表されており、本発明の望ましい対象である。
【0126】
本発明の材料をベースとする電極の別の例が、
図13Bに表されており、本発明の望ましい対象である。
【0127】
電極の構成要素のアセンブリは、いくつかの経路を用いて行われ得る。
【0128】
高い比表面積を有する導電性または半導性材料が、まず官能化され得、次いで導電性電極材料に堆積され得るか、または異なる順序では;堆積がまず行われ、続いて官能化ステップが行われてよい。
【0129】
導電性支持体に一旦堆積された本発明の材料は、燃料電池、特に水素燃料電池における、または電解槽、特に水電解槽におけるような電子用途のための電極として用いられ得る。これらの新規な電極材料は、プロトンから水素への高い還元速度を初めて示す。さらに、触媒プロセスが低い過電位において行われる。これらの材料は、MWCNTの大きな表面積および伝導率、ならびに分子触媒の、プロトンから水素への還元効率を兼ね備える。さらに、望ましい金属有機錯体である、式(II)のニッケル(II)ジホスフィン錯体は、合成が容易であり、空気に対して高い安定性を示し、一酸化炭素による毒作用はない。
【0130】
望ましい表面改質技術は、官能化されたアリールジアゾニウム塩の還元をベースとする。この技術は、レドックス系触媒を電極上に固定化するための、用途の広い、制御された電気グラフト化方法を付与する。ITO/MWCNTまたは黒鉛/MWCNT電極において、高速の不均一な電子移動が維持される。CNTをベースとする透明電極は、光電気化学電池での用途のために得られ得る(Trancikら、Nano Letters 2008年、8、982〜987頁)。改質された電子を目的とするこのルートは、用途が広く、他の高い表面積の炭素材料または金属酸化物光電極にも移行され得る。これらの低コストの透明電極は、エネルギー変換デバイスに容易に一体化され得る。
【0131】
これらの空気中で安定なナノ構造材料は、H
+からのH
2の生成におけるその効率が証明されており、電極触媒デバイスにおいて白金と少なくとも競合する可能性がある。該材料は、有機媒体または水のいずれかにおいて用いられ得る。これらの空気中で安定なナノ構造材料は、H
2の触媒酸化におけるその効率が証明されている。