特許第5738223号(P5738223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5738223-人工股関節のための股関節プロテーゼ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738223
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】人工股関節のための股関節プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/34 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   A61F2/34
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-54984(P2012-54984)
(22)【出願日】2012年3月12日
(62)【分割の表示】特願2006-504830(P2006-504830)の分割
【原出願日】2004年3月24日
(65)【公開番号】特開2012-106121(P2012-106121A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2012年3月12日
【審判番号】不服2013-25877(P2013-25877/J1)
【審判請求日】2013年12月27日
(31)【優先権主張番号】10313413.1
(32)【優先日】2003年3月25日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102004011046.8
(32)【優先日】2004年3月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511004645
【氏名又は名称】セラムテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】CeramTec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ライエン
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ブンツ
【合議体】
【審判長】 高木 彰
【審判官】 山口 直
【審判官】 関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第2365343(GB,A)
【文献】 米国特許第4068324(US,A)
【文献】 特表2003−504154(JP,A)
【文献】 実開平3−72319(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00- 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
股関節プロテーゼであって、該股関節プロテーゼにセラミックから成る内側のスライドシェル(1)が設けられており、該スライドシェル(1)の外面がプラスチックカバー(2)により取り囲まれており、前記股関節プロテーゼが、外側の金属シェル(6)内に挿入するか、又は骨セメントにより直接にインプラントするために設けられており、内側のスライドシェル(1)内でボールヘッドが関節をなしており、該ボールヘッドが、シャフトに配置されており、該シャフトが、大腿骨内に固定可能になっている形式のものにおいて、スライドシェル(1)が、外面に、複数の球面状の凹部(9)から成る構造化部を有し、
スライドシェル(1)の前記外面は半球状に形成され、前記複数の球面状の凹部(9)は、スライドシェル(1)の前記外面の略全域に分散して配置されており、
スライドシェル(1)の内側形状(10)が、スライドシェル(1)の外側形状(11)に対して偏心的に配置されており、
同心率(偏心率)に関する偏差が、少なくとも0.001mmであることを特徴とする、股関節プロテーゼ。
【請求項2】
前記球面状の凹部(9)の半径が、0.5mmよりも大きい、請求項1記載の股関節プロテーゼ。
【請求項3】
プラスチックカバー(2)が、スライドシェル(1)の開かれた端部を包囲把持している、請求項1又は2記載の股関節プロテーゼ。
【請求項4】
スライドシェル(1)の上面に位置する、プラスチックカバー(2)のカラー(5)が、上縁の半分を覆っている、請求項3記載の股関節プロテーゼ。
【請求項5】
スライドシェル(1)が、プラスチックカバー(2)内への圧入により該プラスチックカバー(2)に結合されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の股関節プロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念部に記載の股関節プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
人工股関節は、一般にスライドシェルから成っており、このスライドシェルは、直接に、又はプラスチックカバーを介して外側の金属シェル内に挿入されている。この金属シェルは骨盤骨内にインプラントされる。スライドシェルとプラスチックカバーとの組合せはサンドイッチインサートとも呼ばれる。
【0003】
このためには大腿骨内にはシャフトがインプラントされ、このシャフトにはボールヘッドが配置されており、このボールヘッドはスライドシェル内で関節をなす。
【0004】
人工股関節では、股関節臼へのボールヘッドシャフトの衝突が繰り返し起こり得る。衝突力が十分に大きい場合には、このことは機械的な人工股関節結合部の分解につながりかねない。特にこの場合にはサンドイッチ関節臼システムが危険にさらされている。なぜならば、主に使用されるPE(ポリエチレン)は前記衝撃力に対して不十分な抵抗しか提供することができないからである。
【0005】
サンドイッチインサートは種々異なった形式で製造される。
【0006】
1つのシステムの場合には、セラミックのスライドシェル若しくはインサートがプラスチックにより押出被覆され、この場合にはスライドシェルには凹部が配置されている。この場合には加熱により生じる劣悪なポリエチレン(PE)特性が欠点である。さらにセラミックのスライドシェルには熱衝撃が起こる。成形型及び熱い部材の処理による押出成形手間と並んで、大きい所要構成スペースが欠点である。
【0007】
択一的なシステムでは、複合構成部材の強度が部分的にわずかな場合に、スライドシェルが円錐状のクランプによりプラスチックカバー内に固定される。この場合にも大きい所要構成スペースが欠点である。
【0008】
有利にはプラスチックカバー内へのスライドシェルの熱間圧入(warme Einpressung)も用いられる。しかしながら、この場合に複合構成部材の部分的にわずかすぎる強度が生じる。さらに圧縮結合に基づく狭い許容公差にも注意すべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、請求項1の上位概念部に記載の股関節プロテーゼを改良して、所要構成スペースが小さい場合に高い傾動に対する強さが得られているようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記課題を解決するために、スライドシェルが外面に、横断面図で見て波形の凹部又は半円形の凹部から成る構造化部を有している。
【発明の効果】
【0011】
上記構成により、上記課題は、所要構成スペースが最小限の場合に傾動又は転倒に対する強さが著しく高められていることに基づき解決される。なぜならば、前記構造化部は所要構成スペース拡大をほとんど必要としないからである。このような股関節プロテーゼはポリロックインサートとも呼ばれる。
【0012】
前記構造化部は、有利には溝底部に大きい半径を設けられており、これにより、場合によっては生じる溝応力が最小化される。
【0013】
この場合に、高い構成部材安定性を得るためには底部の溝半径は0.5mmよりも大きいことが望ましい。
【0014】
波形の凹部は、有利にはスライドシェルの外面に環状に配置されている。
【0015】
スライドシェルは、有利には外面に球面状の、又は段付けされた構成形式を有している。球面状の構成形式は極めて小さい所要構成スペースを有している。
【0016】
有利な実施態様では、プラスチックカバーはスライドシェルの開かれた端部を包囲把持しており、この場合に、有利にはスライドシェルの上面に位置する、プラスチックカバーのカラーは上縁のほぼ半分を覆っている。
【0017】
サンドイッチインサートは、有利にはプラスチックカバー内にスライドシェルを圧入することにより製造される。
【0018】
有利な実施態様では、スライドシェルの内側形状は、スライドシェルの外側形状に対して偏心的に配置されている。
【0019】
同心率(偏心率)に関する偏差は、有利には少なくとも0.001mmである。
【0020】
本発明のさらなる特徴を図面につき以下に説明する
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】球面状の構成形式の本発明によるサンドイッチインサートの横断面図である。
図2】段付けされた構成形式の本発明によるサンドイッチインサートの横断面図である。
図3】インサートの外面の波形の構造化部を示す横断面図である。
図4】インサートの外面の半円形の構造化部を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、球面状の構成形式の、セラミックから成るスライドシェル1を有するサンドイッチインサート1を示している。製造時には、このスライドシェル1はプラスチックカバー2内へ圧入される。このプラスチックカバー2は、有利にはポリエチレン(PE)から成っている。このサンドイッチインサート1は外側の金属シェル6内へ挿入されている。
【0023】
図2は、スライドシェル1が外面に段付けされた構成形式による択一的な実施態様を示している。
【0024】
プラスチックカバー2の開かれた端部がスライドシェル1を包囲把持しており、これにより、固定が改良されている(図1参照)。スライドシェル1の上面に位置するカラー5が、上縁のほぼ半分を覆っている。
【0025】
図1及び図2に示した両方のサンドイッチインサート1は、スライドシェル1の外面に本発明による構造化部を示していない。
【0026】
本発明の有利な実施態様では、スライドシェル1の内側形状10が、スライドシェル1の外側形状11に対して偏心的に配置されており、この場合に、同心率(偏心率)に関する偏差は、有利には少なくとも0.001mmである。
【0027】
図3は、プラスチックカバー2内へ挿入されたサンドイッチインサート、すなわちセラミックのスライドシェル1を示している。このスライドシェル1の外面には構造化部が配置されており、この構造化部は横断面図で見て波形の凹部8から成っている。この場合、前記構造化部には溝底部に大きい半径が設けられており、この半径が0.5mmよりも大きくなければならないことが重要である。溝底部のこれらの半径ははじめてプラスチックカバー2内のスライドシェル1の良好な傾動及び転倒に対する強さをもたらす。
【0028】
波形の凹部8は、スライドシェル1の外面に環状に配置されている。
【0029】
図4は、半円形の凹部9から成る構造化部を示している。ここでも溝底部には0.5mmよりも大きい溝半径を有する凹部が設けられている。
【0030】
図1から図4までに示したサンドイッチインサート1は、ポリロック(Polylock)・インサートとも呼ばれ、例えば外側の金属シェル6内へ挿入され、この金属シェル6は次いで骨盤骨内にインプラントされる。択一的には、このインサートは骨セメントにより骨盤骨内に直接にインプラントすることもできる。
【0031】
スライドシェル1内には、ここには図示していない、有利にはセラミックから成るボールヘッドが関節をなしている。このボールヘッドは、大腿骨内にインプラントされたシャフトに固定されている。
【符号の説明】
【0032】
1 スライドシェル、 2 プラスチックカバー、 5 カラー、 6 金属シェル、 8,9 凹部
図1
図2
図3
図4