特許第5738227号(P5738227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738227
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】蒸気タービン設備
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20150528BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   F01D9/02 102
   F01D17/00 J
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-66507(P2012-66507)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-194720(P2013-194720A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2013年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内田 祐介
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02299068(EP,A1)
【文献】 特開2010−053855(JP,A)
【文献】 実開昭55−060403(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0081191(US,A1)
【文献】 特開2006−161698(JP,A)
【文献】 特開昭54−008244(JP,A)
【文献】 特開平07−034804(JP,A)
【文献】 実開昭60−195905(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 17/00−26
F02C 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの主蒸気により駆動される高圧タービンと、前記高圧タービンの排気蒸気を前記ボイラで再熱した再熱蒸気により駆動される中圧タービンと、前記中圧タービンの排気蒸気により駆動される低圧タービンと、前記ボイラから前記高圧タービンへ流れる主蒸気の一部を前記高圧タービンの入口をバイパスして中間段落に導くバイパス系統と、該バイパス系統に設けられた弁とを備えた蒸気タービン設備であって、
翼内部に中空部を有するタービン静翼を前記高圧タービンの中間段落に備え
前記バイパス系統を通過した蒸気を前記タービン静翼の中空部に導入し、前記中空部に導入した蒸気を前記タービン静翼の翼壁面に設けた供給口から主蒸気流路に供給することを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項2】
請求項1記載の蒸気タービン設備であって、
前記供給口は、前記タービン静翼の翼壁面にタービン半径方向に断続的に複数個設けられていることを特徴とする蒸気タービン設備。
【請求項3】
請求項1記載の蒸気タービン設備であって、
前記供給口は、前記タービン静翼の翼壁面にタービン半径方向にスリット状に設けられていることを特徴とする蒸気タービン設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン設備に関し、特にオーバーロードバルブを備えた蒸気タービンの蒸気混合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開平1−247704号公報(特許文献1)がある。
この公報には、蒸気加減弁とオーバーロードバルブとを備えた蒸気タービンが開示されている。この蒸気タービンでは、静翼と動翼とからなる段落を複数段を備えた蒸気タービンにおいて、主蒸気は蒸気加減弁を経て高圧タービン初段に導かれる一方、一部の主蒸気はオーバーロードバルブを経て初段をバイパスし後段動翼に導かれる。
【0003】
一般的に蒸気タービンは周波数変動に対応するために、定格出力で主蒸気加減弁を全開にせず運転している。つまり、定格出力時に主蒸気加減弁は全開ではなく、周波数変動時に主蒸気加減弁をさらに開けられるように裕度を持たせている。しかしながら、主蒸気加減弁が全開ではない状態の運転では、主蒸気加減弁での損失が大きく、定格出力時の効率が低下する問題がある。
【0004】
一方、オーバーロードバルブを用いた構造によれば、高圧タービン流入前の主蒸気の一部をバイパスして高圧タービンの途中段から流入させるようにし、周波数変動時には、このバイパスした蒸気を用いて対応する。つまり、定格出力時に主蒸気加減弁を全開にでき、主蒸気加減弁での損失低減が可能となるため、定格出力時の効率向上につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−247704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のオーバーロードバルブを用いた蒸気タービンでは、後段入口の主蒸気流路にバイパスした蒸気を流路外周側から流入させるため、主蒸気流が乱され、いわゆる混合損失が大きくなるという課題がある。
【0007】
そこで本発明は、オーバーロードバルブを備えた蒸気タービンにおいて、バイパスした蒸気の主蒸気流路への流入による主蒸気流の乱れを抑制し、混合損失を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、ボイラからの主蒸気により駆動される高圧タービンと、高圧タービンの排気蒸気をボイラで再熱した再熱蒸気により駆動される中圧タービンと、中圧タービンの排気蒸気により駆動される低圧タービンと、ボイラから高圧タービンへ流れる主蒸気の一部を高圧タービンの入口をバイパスして中間段落に導くバイパス系統と、バイパス系統に設けられた弁とを備えた蒸気タービン設備において、翼内部に中空部を有するタービン静翼を高圧タービンの中間段落に備え、バイパス系統を通過した蒸気をタービン静翼の中空部に導入し、中空部に導入した蒸気をタービン静翼の翼壁面に設けた供給口から主蒸気流路に供給するようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、バイパスした蒸気を主蒸気流路中から主蒸気流路に対して略平行に供給させられるため、バイパスした蒸気の主蒸気流路への流入による主蒸気流の乱れを抑制し、混合損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施例に係る蒸気タービン設備の系統概略図である。
図2】一般的なオーバーロードバルブを備える蒸気タービンの段落部の概略図である。
図3】本発明の第1の実施例に係る蒸気タービンの段落部の概略図である。
図4】本発明の第1の実施例に係る蒸気タービンの段落部の部分拡大図である。
図5】本発明の第1の実施例に係るタービン静翼の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を以下に図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の第1の実施例について以下に説明する。
図1は、本実施例に係る蒸気タービン設備の系統概略図である。蒸気タービン設備1は、主な機器として、ボイラ2、高圧タービン4、中圧タービン8、低圧タービン10、複水器11、発電機12を有する。高圧タービン4、中圧タービン8、低圧タービン10はロータ13で連結され、ロータ13は発電機12と連結している。
【0013】
ボイラ2で発生した主蒸気は、主蒸気管3を流下して高圧タービン4の入口に導かれる。高圧タービン4を駆動して排出された排気蒸気は、高圧タービン4から低温再熱管5を流下してボイラ2の再熱器6に導かれ再加熱される。再熱器6で加熱された蒸気は、高温再熱管7を流下して中圧タービン8に導かれ、中圧タービン8を駆動した後、主蒸気管9を流下して低圧タービン10に導かれる。低圧タービン10を駆動して排出された排気蒸気は、複水器11に導入されて冷却され、複水し、その後ボイラ2に給水として再導入される。高圧タービン4、中圧タービン8、低圧タービン10はロータ13で連結され、回転動力がロータ13を介して発電機12に伝えられ、発電機12によって回転動力が電力に変換される。
【0014】
ボイラ2から高圧タービン4へ流れる主蒸気が通る主蒸気管3には、蒸気の流れ方向上流側から下流側に向かって主蒸気止め弁14、主蒸気加減弁15が設けられている。また、主蒸気止め弁14と主蒸気加減弁15との間でバイパス管16が主蒸気管3から分岐して設けられている。主蒸気管3から分岐したバイパス管16は、高圧タービン4の中間段落に接続しており、主蒸気管3を流れる主蒸気の一部が高圧タービンの上流側段落の一部をバイパスして中間段落から高圧タービン4に導入されるようになっている。バイパス管16には弁17(オーバーロードバルブ)が設けられており、バイパス管16を流れるバイパス蒸気量を制御する。
【0015】
図2は、一般的なオーバーロードバルブを備えた蒸気タービンの高圧タービン段落部の構造を概略的に示した図である。高圧タービン4は、タービンケーシング22の内周側に軸方向に複数のタービン段落が設けられており、主蒸気が流れる主蒸気流路21が形成されている。タービン段落は、ロータ13の周方向に複数固定されたタービン動翼18と、タービン動翼18の上流側に対向するように、ダイヤフラム19に固定されたタービン静翼20とで構成される。このタービン段落がロータ13の軸方向に複数設けられている。
【0016】
タービンケーシング22には、ケーシングの外側から中間段落を構成するタービン静翼20とタービン動翼18との間の主蒸気流路21に向かって貫通する流路25が設けられており、この流路25にバイパス管16が接続している。バイパス管16を流下した蒸気は、流路25を通ってタービン静翼20とタービン動翼18との間から主蒸気流路21に供給される。この場合、バイパス蒸気26は、外周側から主蒸気流路21に供給されるため、主蒸気流を乱し、混合損失の増大につながる。
【0017】
図3は本実施例に係る高圧タービン段落部の構造を概略的に示した図である。本実施例では、中間段落のタービン静翼20を中空構造にして翼内部に中空部24を設けている。
中空部24は、タービンケーシング22に設けられた管27およびダイヤフラム19内部に設けられた中空部28を介してバイパス管16と接続している。バイパス管16を流下した蒸気は、管27、中空部28を通過してタービン静翼20の中空部24に導入される。タービン静翼20の表面には、中空部24と主蒸気流路21に連通する供給口23が設けられており、中空部24に導入されたバイパス蒸気26が供給口23から主蒸気流路21に供給される。図4(a)に示すように、供給口23は、タービン半径方向に沿って断続的に複数箇所設ける。または、図4(b)に示したように径方向にスリット状に設けてもよい。なお、中間段落とは、高圧タービンの初段下流側かつ最終段落上流側に設けられる段落であればよい。
【0018】
図5はタービン静翼20の断面を概略的に示した図である。供給口23はタービン静翼20の壁面を貫通して主蒸気流路21と静翼内部の中空部24に連通している。図5(a)に示したように供給口23を設ける位置はタービン静翼20の後縁端がよい。中空部24からタービン静翼20の後縁端に向かって、蒸気主流の流れ方向に沿うように供給口23を設けることで、供給口23から蒸気主流の流れ方向に沿ってバイパス蒸気を供給することができる。また、後縁端が薄く強度的に厳しいと考えられる場合はタービン静翼20の後縁端付近の背側(図5(b))または腹側(図5(c))でもよい。この場合、供給口23から供給するバイパス蒸気が、なるべく蒸気主流の流れを妨げないように、供給口23は、タービン静翼20の翼壁面に対して蒸気主流の流れ方向に傾斜させて設けるのがよい。さらに、図5(d)に示したようにタービン静翼20の前縁部に供給口23を設けて、前縁部からバイパス蒸気を供給するようにしてもよい。または、これらの組合せであってもよい。
【0019】
本実施例によれば、タービン静翼20の中空部24に導かれたバイパス蒸気は供給23より供給されるが、主蒸気流路中から主蒸気流路に対して平行にバイパス蒸気を供給できる。流路の外周側から供給するのに比較して、蒸気を主流路中に偏り無く導入でき、また供給する流れの向きを蒸気主流の流れの向きに合わせやすい。そのため主蒸気流の乱れを抑制でき、いわゆる混合損失の低減が可能となる。
【符号の説明】
【0020】
1 蒸気タービン設備
2 ボイラ
3、9 主蒸気管
4 高圧タービン
5 低温再熱管
6 再熱器
7 高温再熱管
8 中圧タービン
10 低圧タービン
11 複水器
12 発電機
13 ロータ
14 主蒸気止め弁
15 主蒸気加減弁
16 バイパス管
17 弁
18 タービン動翼
19 ダイヤフラム
20 タービン静翼
21 主蒸気流路
22 タービンケーシング
23 供給口
24 中空部
図1
図2
図3
図4
図5