【実施例1】
【0010】
(実施例1の構成)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置1及び画像読み取り装置20の概略を示す外観図である。
【0011】
画像形成装置1は、原稿22から画像を読み取って画像データを出力する画像読み取り装置20と、画像読み取り装置20により出力される画像データに基づいて紙等の記録媒体33に画像を形成する画像形成部30とが、通信ケーブル28により通信可能に接続されて構成されている。画像読み取り装置20は、例えば、プリンタであり、画像形成部30は、例えば、プリンタ又はディスプレイである。
【0012】
画像読み取り装置20は、原稿22を載置する載置台21を有している。この載置台21には、光を透過するガラス等からなる透光板21aが嵌め込まれており、透光板21aの内部には、載置台21上に原稿22が載置されたことを検出する原稿検出センサ23と、載置台21上に載置された原稿22を走査して原稿22上に印刷された画像を電気的信号に変換して画像データを得る画像読み取り手段としてのイメージセンサ24とが設けられている。透光板21aは、一般的にはガラスにより構成されているが、読み取り画質に影響が出ない透明の材質で強度のあるものであればガラス以外の材質により構成しても良い。
【0013】
原稿検出センサ23は、載置台21の上に原稿22が載っていることを検出し、原稿22の有無を図示しないメイン制御部40に通知するものである。原稿検出センサ23は、機械的なスイッチ、即ち、センサ上部に原稿22が被さった時に、その原稿22の重みによりスイッチが押下されることによる検出方法や、光反射型素子による検出、センサ上部に原稿22が被さった時に、その原稿22により光を遮ることにより検出する方法等あるが、原稿22が有ることを検出できれば、センサの種類については問わない。
【0014】
イメージセンサ24により原稿22から画像データを読み取る方式は、既知の様々な方式を採用することができる。既知の方式として、例えば、載置台21に原稿22を置き、密着型境目イメージセンサを走行させて読み取る方式、又は電荷結合素子(Charge Coupled Device、以下「CCD」という。)イメージセンサを走行させて読み取る方式等がある。
【0015】
載置台21の上には、原稿22を押さえる載置台カバー25が開閉自在に設けられている。載置台カバー25は、イメージセンサ24が原稿22を読み取るときに外部からの環境光を遮断するために、載置台21を覆い隠す役割を果たすものである。
【0016】
載置台22の手前には、例えば、表示パネルにより構成される表示部26と、操作部27とが設けられている。表示部26は、画像読み取り装置の内部状態や操作ガイド等を表示するものであり、例えば、液晶、有機LE等により構成されている。操作部27は、読み取り動作の開始及び停止の操作や読み取り情報の設定を行なうものであり、テンキー27a、操作ボタン27b、カラー開始ボタン27c、モノクロ開始ボタン27d等から構成されている。
【0017】
画像形成部30は、複数枚の紙等の記録媒体33を収納するトレイ31と、画像形成された記録媒体33を排出する印刷紙排出部32とを備えている。
【0018】
図1は、
図2中の画像形成装置1及び画像読み取り装置20の構成の概略を示すブロック図である。
【0019】
画像読み取り装置20は、原稿検出センサ23と、イメージセンサ24と、表示部26と、操作部27と、モータ部29と、インタフェース部(以下「I/F部」という。)47と、がメイン制御部40と相互に接続されて構成されている。操作部27は、メイン制御部40に対し調整値S27を受け付ける機能を有している。モータ部29は、原稿22の読み取りを
行う際にイメージセンサ24を移動させるため駆動部である。I/F部47は、通信ケーブル28を介して画像形成部30等の外部機器との接続に使用するものであり、画像データがこのI/F部47を介して画像形成部30へ転送される。
【0020】
I/F部47は、一般的なインタフェースとしてユーエスビー(Universal Serial Bus、以下「USB」という。)、米国電気電子学会(The Institute of Electrical and Electronic Engineers、以下「IEEE」という。)1394、イーサネット(登録商標)(Ethernet(登録商標))、無線ラン(LAN)等がある。無線で外部機器とデータのやりとりをする場合には、通信ケーブル28は不要である。
【0021】
メイン制御部40は、画像読み取り装置20の全体を制御するものであり、駆動制御部41、画像データ入力部42、文字検出部43、マーキング検出部44、
決定部としての画質調整領域決定部45
、及び
処理部としての画像処理部46を有している。
【0022】
メイン制御部40は、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(以下「RAM」という。)、プログラムリードオンリメモリ(以下「PROM」という。)、中央演算装置(以下「CPU」と
いう。)により構成される。フラッシュメモリは、イメージセンサ24にて得られた画像データS24に対する補正処理内容を記憶する不揮発性のメモリである。RAMは、イメージセンサ24にて得た画像データS24等を記憶する揮発性のメモリである。
【0023】
PROMは、イメージセンサ24の画像読み取り制御、フラッシュメモリやRAMへの読み取り・書き込み制御等の種々の制御プログラムを格納した読み込み専用のメモリである。メイン制御部40は、PROMに格納されたプログラムをCPUによって実行し、画像読み取り装置20を制御するものである。メイン制御部40内の各部は、図示しないバスにより互いに接続されている。
【0024】
駆動制御部41は、原稿検出センサ23から原稿22有りの通知を受けると、モータ部29を駆動して、イメージセンサ24を走査するものである。
【0025】
画像データ入力部42は、イメージセンサ24により原稿22から読み取られた画像データS24を読み込んで、第1画像データS42を文字検出部43とマーキング検出部44と画像処理部46へ出力するものである。
【0026】
文字検出部43は、画像データ入力部42から入力された第1画像データS42を画素毎に文字のデータか否かを判定するものである。更に、文字検出部43は、エッジの度合いを示すエッジ量S43bを算出し、算出したエッジ量S43bがある閾値より大きい場合に文字と判定するものである。第1画像データS42中の全画素に対する文字データか否かを検出して文字検出結果S43aを画質調整領域決定部45に出力し、更に算出したエッジ量S43bをマーキング検出部44へ出力する。
【0027】
マーキング検出部44は、画像データ入力部42から入力された第1画像データS42において、文字検出部43から入力されるエッジ量S43b等を用いて、画素毎にマーキング領域のデータか否かを判定するものである。マーキング検出部44は、第1画像データS42中の全画素に
ついてマーキング領域のデータであるか否かを検出してマーキング検出結果S44を画質調整領域決定部45に出力するものである。
【0028】
画質調整領域決定部45は、文字検出部43から入力された文字検出結果S43aと、マーキング検出部44から入力されたマーキング検出結果S44とに基づいて、第1画像データS42中の全画素に対して画像処理を施す領域のデータか否かを判定し、第1画像データS42中において画質調整対象領域のデータS45を決定し、決定した画質調整領域のデータS45を画像処理部46へ出力するものである。
【0029】
画像処理部46は、画質調整領域決定部45から入力された画質調整領域のデータS45に基づいて、画像データ入力部42から入力された第1画像データS42に対して、操作部27でユーザから指定された調整値S27の画質調整を行うための画像処理を施すものである。第1画像データS42中の画質調整領域のデータS45に画像処理を施した第2画像データS46は、例えば、画像形成部30等の外部機器に出力される。
【0030】
画像読み取り装置20のI/F部47から出力される第2画像データS46は、通信ケーブル28を介して画像形成部30に出力される。
【0031】
図3は、
図2中の表示部26及び操作部27の例を示す図である。
表示部26には、コントラスト26a、明るさ26b、背景除去レベル26cの設定が表示され、それぞれの右の領域には、それぞれのレベルを示す領域26d,26e,26fが設けられている。更に、背景除去レベル26cの設定及びそのレベル表示領域26fの
下には、それぞれ前ページ26g及び次ページ26hの設定が表示されている。
【0032】
図3に示された表示部26では、コントラスト26aのレベルを示す領域26dに、「3」が指定されている。
【0033】
表示部26の右には、画像調整領域S45の画像処理を調整する調整値S27を受け付ける操作部27が設けられている。操作部27には、数字を押下することによりレベル等を入力するテンキー27aが設けられている。テンキー27aの右横上部には、操作ボタン27bが設けられている。操作ボタン27bは、4つの三角キー27b1〜27b4と、4つの三角キー27b1〜27b4の中央に位置するオーケー(OK)キー27b5により構成されている。4つの三角キー27b1〜27b4は、二等辺三角形の頂点が上を向いた上三角キー27b1、二等辺三角形の頂点が下を向いた下三角キー27b2、二等辺三角形の頂点が左を向いた左三角キー27b3、及び二等辺三角形の頂点が右を向いた右三角キー27b4である。これらの4つの三角キー27b1〜27b4は、表示部26上の項目を選択するための操作ボタンであり、OKボタン27b5は、表示部26上の項目を選択し、選択した項目に対して入力したレベルを決定する時に押下する操作ボタンである。
【0034】
更に、テンキー27aの右横下部分には、カラー原稿の読み取りの開始を指示するカラー開始ボタン27cと、モノクロ原稿の読み取りの開始を指示するモノクロ開始ボタン27dが設けられている。
【0035】
(実施例1の動作)
先ず、画像読み取り装置20の処理を説明する前に、処理の前提となる文字領域とマーキング領域が混在した原稿22について説明する。
【0036】
図4は、文字領域とマーキング領域が混在した原稿22の例を示す図である。
文字領域S43a1の「あいうえお」、文字領域S43a2の「かきくけこ」、文字領域S43a3の「さしすせそ」、文字領域S43a4の「たちつてと」、文字領域S43a5の「なにぬねの」及び文字領域S43a6の「はひふへほ」が
図4に示されている。
【0037】
この内の文字領域S43a1の「あいうえお」、文字領域S43a4の「たちつてと」及び文字領域S43a5の「なにぬねの」の文字領域は、文字領域S43aの上からのマーキングは施されていない。
【0038】
文字領域S43a2の「かきくけこ」及び文字領域S43a6の「はひふへほ」には、それぞれ「きくけ」及び「ひふへ」の文字を覆い隠す黒塗りのマーキング領域S44aが施されている。文字領域S43a2の「かきくけこ」及び文字領域S43a6の「はひふへほ」における「きくけ」及び「ひふへ」の文字がマーキング領域S44aにより覆われ、見た目では文字情報を読みとることができない領域である。但し、そのままでは文字情報を読み取ることができない領域であるが、マーキング領域S44と文字領域S43aとで微小な明度差が存在している領域である。
【0039】
又、文字領域S43a3の「さしすせそ」には、「しすせ」の文字領域の上に灰色のマーキング領域S44bが施されている。「しすせ」の文字に対してマーキングで覆われているが、文字領域S43a3の「さしすせそ」の文字と「しすせ」部分のマーキング領域のそれぞれの明度差が大きいため、文字情報を読み取ることができる領域である。
【0040】
次に、
図4に示された原稿22について、
図1中の画像読み取り装置20の全体の処理を説明する。
【0041】
図5は、
図1中の画像読み取り装置20の全体の処理を示すフローチャートである。
図1中の画像読み取り装置20における処理が開始されると、ステップST10へ進み、ステップST10において、画像読み取り装置20の載置台21に原稿22があることを原稿検出センサ23により検出すると、表示部26に原稿22の画質の読み取り条件を表示する。操作部27は、ユーザからの操作を受け付け、ユーザ指定の読み取り時の画質調整の設定を決定し、決定した画質調整の設定を図示しないRAMに保持しておく。ユーザから画質調整の設定の指定がなければ、画像読み取り装置20が予め保持している画質調整に設定を図示しないRAMに保持しておく。
【0042】
図3において、表示部26にはコントラスト26a、明るさ26b、背景除去レベル26cの設定項目が表示されている。
図3の例では、それぞれのレベルが「3」である。更に、
表示部26では、コントラスト26aのレベルの「3」が指定されており、テンキー27aを押すことでレベルが調整できる。下三角キー27b2及び上三角キー27b1を押下することで、コントラスト26aが指定されている状態から明るさ26bや背景除去レベル26c、更に、右三角キー27b4を押下することでユーザ指定の画質調整設定画面の次ページ26h、左三角キー27b3を押下することで前ページ26gを選択することにより、画質調整項目を選択することができる。全ての画質調整の設定が完了したら、
図3のOKボタン27b5を押下することで画質調整の設定を完了し、ステップST20へ進む
【0043】
ステップST20において、画像データ入力部42は、カラー開始ボタン27c又はモノクロ開始ボタン27dの押下を検知すると、モータ部29を駆動してイメージセンサ24を走査して載置台21に載置された原稿22を読み取って第1画像データS42を得て、ステップST30へ進む。
【0044】
ステップST30において、画像データ入力部42は、画像データS24の全画素に対して表現色空間をCIEL*a*b*色空間へ変換して、ステップST40へ進む。表現色空間からCIEL*a*b*色空間への変換方法は公知の変換方法を用いて行う。
【0045】
ステップST40において、文字検出部43は、ステップST20で得られた第1画像データS42に対して、画素毎に文字であるか否かを検出して文字検出結果S43a出力し、ステップST50へ進む。
【0046】
ステップST50において、マーキング検出部44は、ステップST20で得られた第1画像データS42に対して、画素毎にマーキングであるか否かを検出してマーキング検出結果S44を出力し、ステップST60へ進む。
【0047】
ステップST60において、画質調整領域決定部45は、ステップST40で得られた文字検出結果S43aと、ステップST50で得られたマーキング検出結果S44に基づいて、画質調整領域S45と、非画質調整領域/S45(ここで、「/S45」は、原稿22又は記録媒体33における画質調整領域S45以外の領域を意味する。)を決定し、ステップST70へ進む。
【0048】
ステップST70において、画像処理部46は、ステップST60で決定された画質調整領域S45に基づいて、ステップST20で得られた第1画像データS42に対して、ステップST10でユーザから指定された画質調整のための画像処理を施す。注目画素が画質調整領域S45ならば、ステップST10でユーザから指定された画質調整のための画像処理を注目画素に施し、注目画素が非画質調整領域/S45ならば注目画素に対して画像処理を施さない。
【0049】
尚、非画質調整領域/S45に対する画像処理は、上記では画像処理を施さないとしたが、これに限るものではなく、非画質調整領域/S45に対して黒く塗りつぶす画像処理や、白く塗りつぶして空欄とする画像処理等がある。
【0050】
図6は、
図1中の文字検出部43の処理を示すフローチャートである。
図7(a),(b)は、
図6の処理で用いる濃度差分を抽出するソーベルフィルタ用3×3係数行列の例を示す図であり、
図7(a)は、垂直方向の濃度差分E_vを抽出する際に用いるソーベルフィルタであり、
図7(b)は、水平方向の濃度差分E_hを抽出する際に用いるソーベルフィルタを示している。
【0051】
文字検出部43の処理が開始されると、ステップST41へ進み、ステップST41において、ある注目画素において、ステップST30で得られた注目画素のL*値と公知の3×3ソーベルフィルタによるフィルタ処理によりエッジ量Eを算出する。
【0052】
これらの2種類の係数行列の濃度差分値を用いて、式(1)によりエッジ量Eを算出し、ステップST42へ進む。
E=E_v
2+E_h
2 ・・・(1)
ステップST42において、ステップST41で得られたエッジ量Eに対して3値化を行う。所定の閾値TH_HとTH_L(TH_H>TH_L)を用いて、式(2)により3値化を行い、ステップST43へ進む。
【0053】
【数1】
【0054】
ここで、注目画素がE=2ならば強文字、E=1ならば弱文字、E=0ならば非文字とする。更に、3値化したエッジ量Eの結果を図示しないRAMに記憶しておく。
【0055】
例えば、
図4において、文字領域S43a1の「あいうえお」と
文字領域S43a2の「きくけ」の部分のマーキング領域S44aの輪郭と文字領域S43a3の「さしすせそ」は強文字(E=2)であり、文字領域S43a2の「かきこけこ」は弱文字(E=1)であり、マーキング領域S44aの「きくけ」の内部とマーキング領域S44bの「しすせ」と白地は非文字(E=0)となる。
【0056】
ステップST43において、ステップST20で得られた第1画像データS42の全画素に対して、注目画素としたかを判定する。注目画素としていない画素が残っている場合(N)、ステップST44に進む。ステップST44において、未だ注目画素としていない画素を注目画素とし、ステップST41へ戻り、ステップST43において、全画素を注目画素とした(Y)と判断されるまで、ステップST41〜ST44の処理を繰り返し、ステップST43において、全画素を注目画素としたと判断されたとき(Y)、ステップST45へ進む。
【0057】
ステップST45において、弱文字領域の領域拡大を行い、弱文字のエッジのみでなく、弱文字内部も弱文字領域として検出する。領域拡大は、弱文字領域と判定された画素の8方向の周辺画素を探索し、周辺8画素に対して弱文字領域であるか否かの判定を行う。弱文字領域であるか否かの判定方法は、判定対象画素を中心に5×5の画素ブロック内の明度の平均値を算出し、算出した平均値に所定の値TH_fを加えた値と判定対象画素との明度値を比較し、判定対象画素の明度値が低ければ弱文字領域とする。更に、その判定対象画素の周辺8画素に対しても同様に弱文字領域判定を行う。
【0058】
上記の
実施例1では、領域拡大に注目画素を中心とした5×5の画素ブロックを用いたが、弱文字領域の領域拡大の処理は、注目画素を中心とした5×5の画素ブロックに限るものではなく、7×7の画素ブロックや3×5の画素ブロック等の形状は問わない。又、弱文字領域であると判定された画素は、ステップST42で得られたエッジ量EをE=1とし、弱文字領域でないと判定された画素はE=0とする。
【0059】
図8は、
図1中のマーキング検出部44の処理を示すフローチャートである。
マーキング検出部44の処理が開始されると、ステップST51へ進み、ステップST51において、ある注目画素において、注目画素が非文字かを判定する。ここで、非文字とは、ステップST45で得られたエッジ量EがE=0の場合であり、注目画素が非文字(E=0)の場合(Y)、ステップST52に進み、注目画素が非文字でない(E≠0:E=1又はE=2)場合(N)、ステップST53へ進む。
【0060】
ステップST52において、ある注目画素において、注目画素がマーキング候補領域か否かを判定する。ステップST30で得られた注目画素のL*値と所定の閾値を比較し、L*値が所定の閾値より低ければ注目画素をマーキング候補領域とし、L*値が所定の閾値より高ければ非マーキング候補領域とする。
【0061】
図4において、マーキング領域S44aの「きくけ」の内部とマーキング領域S44bの「しすせ」部分はマーキング候補領域となり、他の領域は非マーキング候補領域となる。
【0062】
ステップST53において、ステップST20で得られた第1画像データS42の全面素に対して、注目画素としたかを判定する。注目画素としていない画素が残っている場合(N)、ステップST54に進み、ステップST54において、未だ注目画素としていない画素を注目画素とし、ステップST51へ戻り、ステップST53において、全画素に対し注目画素としたと判断されるまで、ステップST51〜ST54の処理を繰り返す。ステップST53において、全画素に対し注目画素としたと判断されると(Y)、ステップST55へ進む。
【0063】
ステップST55において、マーキング候補領域の領域拡大を行い、マーキング領域を決定する。領域拡大は注目画素を中心とした5×5の画素ブロック内のマーキング候補領域である画素を数え、5×5の画素ブロック内のマーキング、候補領域の画素数と所定の閾値との比較を行う。5×5の画素ブロック内のマーキング候補領域の画素数が所定の閾値より高ければマーキング領域とし、5×5の画素ブロック内のマーキング候補領域の画素数が所定の閾値より低ければ非マーキング領域とする。
【0064】
上記の実施例1では、領域拡大に注目画素を中心とした5×5の画素ブロックを用いたが、画素ブロックの形状は5×5に限るものではなく、7×7や3×5等の画素ブロックを用いても良い。
【0065】
ステップST20で得られた第1画像データS42の全画素に対して、マーキング領域か否かの判定を行う。全画素に対してマーキング領域の判定が終了したらステップST50の処理を終了させる。
【0066】
マーキング候補領域の領域拡大を行うことでマーキング領域を決定することにより、
図4において、文字領域S43a2の「かきくけこ」の「きくけ」の部分と、文字領域S43a3の「さしすせそ」の「しすせ」の部分が、それぞれマーキング領域S44aと、マーキング領域S44bとなる。
【0067】
図9は、
図1中の画質調整領域決定部45の処理を示すフローチャートである。
画質調整領域決定部45の処理が開始されると、ステップST61へ進み、ステップST61において、ある注目画素がマーキング、かつ、弱文字であるか否かを判定する。注目画素がマーキング、かつ、弱文字であった場合(Y)、ステップST62へ進み、注目画素がマーキングでない、又は、弱文字でない場合(N)、ステップST68に進む。ここで、マーキング、かつ、弱文字である画素とは、例えば、
図4において、文字領域S43a2の一画素である。
【0068】
ステップST62において、マーキング、かつ、弱文字である注目画素に連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素を検出する。マーキング、かつ、弱文字である注目画素の8方向を探索し、注目画素の周辺8画素に対してマーキング、かつ、弱文字である画素かを判定する。注目画素の周辺8画素にマーキング、かつ、弱文字である画素がなければ、連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素の検出を終了する。
【0069】
注目画素の周辺8画素にマーキング、かつ、弱文字である画素が存在すれば、更に、マーキング、かつ、弱文字である周辺画素を注目画素として8方向を探索し、周辺8画素に対してマーキング、かつ、弱文字である画素かを判定する。連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素の検出が終了するまで周辺画素の探索を繰り返し、連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素の検出を行う。ここで、連結しているマーキング、かつ、弱文字画素とは、例えば、
図4において、「きくけ」の文字全体、即ち、マーキングで覆われている文字領域を指している。
【0070】
ステップST63において、ステップST62で得られた連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素のL*値の平均値L*_T_aveを算出し、ステップST64へ進み、ステップST64において、ステップST62で得られた連結しているマーキング、かつ、弱文字である全画素に対して、連結しているマーキング、かつ、非文字である画素を検出する。ステST62で得られたマーキング、かつ、弱文字である全画素の8方向を探索し、周辺8画素がマーキング、かつ、非文字である画素かを判定する。周辺8画素にマーキング、かつ、非文字である画素が存在すれば、更に、そのマーキング、かつ、非文字である画素の8方向を探索し、周辺8画素に対してマーキング、かつ、非文字である画素かを判定する。これを繰り返し、周辺8画素に対してマーキング、かつ、非文字である画素がなければ、マーキング、かつ、非文字である画素の検出を終了する。
【0071】
連結しているマーキング、かつ、非文字である画素とは、例えば、
図4において、「きくけ」と「しすせ」のマーキング領域全体を指している。
【0072】
ステップST65において、ステップST64で得られた連結するマーキング、かつ、非文字である画素L*値の平均値L*_M_aveを算出し、ステップST66へ進む。ステップST66において、ステップST63で得られたL*_T_aveとステップST65で得られたL*_M_aveの差分値L*_diffを算出し、ステップST67へ進む。
ステップST67において、ステップST66で得られた差分値L*_diffと所定の閾値を比較する。差分値L*_diffが所定の閾値以下ならステップST62で得られた連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素、及び、ステップST64で得られたマーキング、かつ、非文字である画素を非画質調整領域とする。
【0073】
差分値L*_diffが所定の閾値より大きければ、ステップST62で得られた連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素、及び、ステップST64で得られたマーキング、かつ、非文字である画素を画質調整領域とする。
【0074】
差分値L*_diffに対する所定の閾値は、明度の最大値と最小値の差分の約10%程度の値にしておくのが望ましい。
【0075】
図4において、文字領域S43a2の「かきくけこ」と文字領域S43a6の「はひふへほ」の文字とマーキング領域S44aの明度差が微小なため非画質調整領域となる。一方、文字領域S43a3の「さしすせそ」とマーキング領域S44b文字「しすせ」部分に施されたマーキング領域S44bとの明度差が大きいため画質調整領域となる。
【0076】
ステップST68において、ステップST20で得られた第1画像データS42の全画素に対して、注目画素としたかを判定する。注目画素としていない画素が残っている場合(N)、ステップST69に進み、ステップST69において、未だ注目画素としていない画素を注目画素とし、ステップST68において、全画素を注目画素としたと判断されるまで、ステップST61〜ST69の処理を繰り返えし、ステップST68において、全画素を注目画素としたと判断されると(Y)、画質調整領域決定部45の処理を終了する。
【0077】
図10(a)〜(d)は、
図2の画像読み取り装置20による画像処理の内容を説明するための図である。
【0078】
図10(a)は、画像処理前の画像である。
図10(b)は比較対象として画質調整領域の決定を行わずにコントラスト調整等の画質調整を一律に従って画像処理をした画像である。
図10(c)は、実施例1にしたがって画質調整領域を決定し、非画質調整領域には画像処理を無効にした場合の画像である。
図10(d)は実施例1にしたがって画質調整領域を決定し、非画質調整領域を白で塗りつぶす画像処理を施した場合の画像である。
【0079】
図10(a)は、画像処理前の原稿22の画像、即ち、
図4に示された画像である。
図10(a)における「きくけ」及び「ひふへ」部分のマーキング領域S44aと文字領域S43a2の「かきくけこ」及び文字領域S43a6の「はひふへほ」の文字のコントラストの差が微少である。そのため、文字領域S43a2の「かきくけこ」における「きくけ」の文字部分及び文字領域S43a6の「はひふへほ」における「ひふへ」の文字部分がマーキング領域S44aにより覆い隠され、見えない画像になっている。
【0080】
図10(b)は、従来のコントラスト一律の画像処理後の画像であり、マーキング領域S44aの「きくけ」及び「ひふへ」のコントラストをマーキング領域S44bの「しすせ」のコントラストと一律にした場合の画像である。「きくけ」及び「ひふへ」部分のマーキング領域S44aと文字領域S43a2の「かきくけこ」及び文字領域S43a6の「はひふへほ」の文字とのコントラスト差は、マーキング領域S44bの「しすせ」部分のマーキング領域S44bと文字領域S43a3の「さしすせそ」の文字とのコントラスト差と同じであり、
図10(a)に較べてコントラス差が大きいため、文字領域S43a1,S43a3,S43a6における「きくけ」、「しすせ」、「ひふへ」部分の文字は透けて見えている。
【0081】
文書中の文字列を隠すために黒塗りで塗りつぶした原稿に対して、原稿全体に一律にコントラスト調整等の画像処理を施す従来の場合、黒塗りが不十分だと隠したはずの情報が漏洩してしまうという
問題があった。
【0082】
図10(c)は、画像処理を無効にした場合の画像処理後の画像であり、画像処理前の原稿22の画像を示す
図10(a)と同様である。文字「しすせ」部分ではマーキングで塗りつぶしたはずの文字情報が認識できていることがわかる。一方、「きくけ」と「ひふへ」では、「しすせ」のような問題は起きず、マーキングで塗りつぶした文字情報が読み取られることがなくなる。マーキング、かつ、弱文字である画素のL*値とその画素の周辺に存在するマーキングかつ非文字である画素のL*値に差がなければ、文字をマーキングにより隠したと判断し、コントラスト調整等のユーザ調整を無効にすることで、隠した文字情報を読み取られることはなくなり、情報漏洩を防止することができる。
【0083】
図10(d)は、非画質調整領域を白で塗りつぶす画像処理を施した場合の画像であり、マーキング領域
44cは、矩形の破線で示された部分である。実際には、破線はなく、非画質調整領域は白く塗りつぶされる。
【0084】
(実施例1の効果)
本発明の実施例1の画像形成装置1及び画像読み取り装置20によれば、原稿22を読み取った際に、文字上のマーキング領域を認識することができるため、マーキング領域に対してのみ簡単にユーザ所望の特別な画像処理を施すことができる。更に、文字上のマーキング領域に対して、ユーザ指定の画質調整を無効にすることで、マーキングに覆われた文字の情報を読み取られることがなくなり、情報漏洩の防止の効果が得られる。
【実施例2】
【0085】
(実施例2の構成)
図11は、本発明の実施例2における画像形成装置1A及び画像読み取り装置20Aの構成の概略を示すブロック図であり、実施例1を示す
図1と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0086】
本実施例2の画像形成装置1Aは、原稿22から画像を読み取って実施例1とは異なる第2画像データS46Aを出力する画像読み取り装置20Aと、画像読み取り装置20Aにより出力される第2画像データS46Aに基づいて記録媒体33に画像を形成する実施例1と同様の画像形成部30と、が通信可能に接続されて構成されている。
【0087】
画像読み取り装置20Aは、実施例1と同様の原稿検出センサ23、イメージセンサ24、表示部26、操作部27、モータ部29及びI/F部47と、実施例1とは機能が異なるメイン制御部40Aとから構成されている。
【0088】
メイン制御部40Aは、実施例1と同様の駆動制御部41、画像データ入力部42、文字検出部43、及びマーキング検出部44と、実施例1とは機能が異なる画質調整領域決定部45A及び画像処理部46Aを有している。
【0089】
画質調整領域決定部45Aは、文字検出部43から入力された第1画像データS42中の全画素に対する文字か否かの判定結果S43aと、マーキング検出部44から入力された第1画像データS42中の全画素に対するマーキングされた画素か否かの判定結果S44を基に、第1画像データS42中の全画素に対して、実施例1とは異なる画像処理を施す領域か否かを判定し、第1画像データS42中において画質調整領域を決定する。決定した画質調整領域を画像処理部46Aへ出力する。画像処理部46Aは、第1画像データS42に対し、実施例1とは異なる画像処理を施し、実施例1とは異なる第2画像データS46Aを出力する。
【0090】
(実施例2の動作)
図12は、
図11中の画像読み取り装置20Aの処理の全体を示すフローチャートであり、実施例1を示す
図5と共通の要素には共通の符号が付されている。
実施例2の画像読み取り装置20Aの処理が開始されると、ステップST10へ進み、実施例1と同様のステップST10〜ST50の処理が行われ、ステップST50の処理が終了すると、ステップST80へ進む。
【0091】
ステップST80において、画質調整領域決定部45Aは、ステップST40で得られた文字検出結果S43aと、ステップST50で得られたマーキング検出結果S44にしたがって、画質調整領域S45Aを決定し、ステップST70へ進み、実施例1と同様の処理が行われる。
【0092】
図13は、
図11中の画質調整領域決定部45Aの処理を示すフローチャートであり、実施例1を示す
図9と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0093】
実施例2の画質調整領域決定部45Aの処理は、実施例1の画像調整領域決定部45の処理を示す
図9に、ステップST81〜ST84の処理が追加されている。
【0094】
図13に基づいて、画質調整領域決定の動作を説明する。
画質調整領域決定部45Aの処理が開始されると、ステップST61へ進み、実施例1と同様のステップST61〜ST63の処理が行われ、ステップST63の処理が終了すると、ステップST81へ進む。
【0095】
ステップST81において、ステップST62で得られた連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素のa*値の平均値a*_T_aveを算出する。また、ステップST62で得られた連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素のb*値の平均値b*_T_aveを算出し、ステップST64へ進む。ステップST64、ST65において、実施例1と同様の処理が行われ、ステップST65の処理が終了すると、ステップST82へ進む。
【0096】
ステップST82において、ステップST64で得られた連結するマーキング、かつ、非文字である画素のa*値の平均値a*_M_aveを算出する。又、ステップST64で得られた連結するマーキング、かっ、非文字である画素b*値の平均値b*_M_aveを算出し、ステップST66へ進み、ステップST66において、実施例1と同様の処理が行われ、ステップST83へ進む。
【0097】
ステップST83において、ステップST81で得られたa*_T_aveとb*_T_ave、ステップST82で得られたa*_M_aveとb*_M_aveを用いて、連結するマーキング、かつ、弱文字画素と連結するマーキング、かつ、非文字である画素の彩度
間の距離a*b*_diffを算出し、ステップST84へ進む。算出方法は式(3)に基づく。
a*b*_diff=(a*_T_ave−a*_M_ave)
2
+(b*_T_ave−b*_M_ave)
2 ・・・(3)
【0098】
ステップST84において、ステップST66で得られたL*_diffとステップST83で得られたa*b*_diffを用いて画質調整領域S45Aを決定する。ステップST66で得られたL*_diffが所定の閾値以下、かつ、ステップST83で得られたa*b*_diffが所定の閾値以下であれば、ステップST62で得られた連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素、及び、ステップST64で得られたマーキング、かつ、非文字である画素を非画質調整領域/S45Aとする。ステップST66で得られたL*_diffが所定の閾値より大きい、又は、ステップST83で得られたa*b*_diffが所定の閾値より大きいならば、ステップST62で得られた連結しているマーキング、かつ、弱文字である画素、及び、ステップST64で得られたマーキング、かつ、非文字である画素を画質調整領域S45Aとする。
【0099】
ここで、a*b*_diffに対する所定の閾値は、a*とb*それぞれの最大値と最小値の差分の約10%程度の値にしておくのが望ましい。
【0100】
図14は、文字領域とマーキング領域が混在した原稿22の他の例を示す図であり、
図15は、
図14の原稿22に対して実施例2の画像処理を行った後の画像の例を示す図である。
【0101】
実施例1では、マーキング領域とそのマーキングで覆われた文字領域の明度差が微小であれば、非画質調整領域/S45としていた。
図14には、
図4とは別の原稿22の例が示されている。
【0102】
例えば、
図14のように明度が少し高い文字を用いた文書を読み取る場合において、マーキング領域S44dの四角で囲った箇所の文字列「ちつて」を強調するために赤の蛍光ペンでマーキングしたとする。このとき、赤のマーキングの明度とマーキングに覆われた文字の明度差が微小になってしまい、強調のためにマーキングした箇所が実施例1の処理では、非画質調整領域/S45と判定され、マーキング領域S44dは画質調整が施されないか、異なる画像処理、例えば黒、白などで塗りつぶされてしまっていた(
図15(a)のマーキング領域S44a)。このように実施例1では、マーキング領域とそのマーキング領域に覆われた文字との明度差のみで画質調整領域の判定を行うため、グレー文字上に赤のマーキング等では明度差が微小であるため、強調箇所であるはずのマーキング箇所がつぶれてしまい、読み取れなくなってしまうという問題があった。
【0103】
これに対し、実施例2では、マーキング領域とそのマーキング領域に覆われた文字との明度差だけではなく、彩度の差により画質調整領域か否かを判定するため、マーキングの赤とマーキングに覆われたグレーの彩度では大きな差があることから、
図14のマーキング領域S44dは画質調整領域S45Aとなり、強調のためのマーキング箇所がつぶれてしまうことがなくなる(
図15(b)のマーキング領域S44d)。
【0104】
本発明の実施例2の画像形成装置1Aのその他の動作は、実施例1の画像形成装置1の動作と同様であるので省略する。
【0105】
(実施例2の効果)
本実施例2の画像読み取り装置20A及び画像形成装置1Aによれば、実施例1の効果に加え、更に、画質調整領域の判定において、マーキング領域とそのマーキング領域に覆われた文字列の明度差だけではなく、彩度の差も考慮して判定を行うので、強調のために文字列を赤等でマーキングした場合に、そのマーキング領域は画質調整領域S45Aとなるため、強調のための文字列がつぶれてしまうことがなくなる。
【0106】
(変形例)
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、種々の利用形態や変形例が可能である。この利用形態や変形例として、例えば、次の(1)〜(4)のようなものがある。
【0107】
(1) 実施例1、2の文字領域S43aにおける文字は、平仮名を例に説明したが、文字領域S43aにおける文字は、平仮名に限定されず、カタカナ、漢字、ローマ字、その他の言語を表す文字にも適用可能である。
【0108】
(2) 実施例1、2のマーキング領域S44の形状は、矩形であるとして説明したが、マーキング領域S44の形状は、矩形に限定されない、文字を強調する形状、例えば、楕円等の形状にも適用可能である。
【0109】
(3) 実施例1、2の文字検出部43の濃度差分を抽出するソーベルフィルタ用係数行列として、左に向かって処理する場合と上に向かって処理する場合の2つの係数行列を
図7に示して説明したが、ソーベルフィルタ用係数行列は
図7に示された2つの係数行列に限定されない。例えば、濃度差分を抽出する際、右に向かって処理する場合、下に向かって処理する場合、斜め方向に向かって処理する場合等
、図7に示された係数行列とは異なる係数行列を適宜用いて処理することができる。
【0110】
(4) 実施例1、2の画像読み取り装置20,20Aとしてのスキャナの例で説明したが、スキャナに限定されず、画像読み取り機能が付属しているファクシミリ装置や複合機等にも適用可能である。