(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記セットポイントと前記流量指令値とが所定以上かい離したことを条件として、前記インペラの流量の固定を解除することを特徴とする請求項2に記載の圧縮機制御装置。
前記制御部は、いずれのインペラの流量も前記セットポイントより小さくなったことを条件として、前記インペラの流量の固定を解除することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の圧縮機制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態における圧縮機システムの構成を示す概略構成図である。同図において、圧縮機制御システム1は、圧縮機制御装置11と圧縮機91と、放風弁811とを具備する。圧縮機制御装置11は、流量センサ111Aおよび111Bと、圧力センサ121と、制御部190とを具備する。圧縮機91は、インペラ911Aおよび911Bとインレットガイドベーン(Inlet Guide Vane;IGV)921Aおよび921Bとを具備する。
【0017】
圧縮機91は、空気を吸い込んで圧縮し、圧縮機91の下流に位置して圧縮空気を使用する機器(以下、「下位プロセス」と称する)へ圧縮空気を供給する。
但し、圧縮機91が圧縮する圧縮対象物は空気に限らない。例えば気体状の冷媒など圧縮可能な様々なガスを圧縮対象物とすることができる。
インペラ911Aおよび911Bは、出口側流路W21に対して並列に接続されており、入口側流路W11AおよびW11Bからインペラ911Aおよび911Bを介して流入する空気を圧縮して出口側流路W21へ出力する。但し、圧縮機91が具備するインペラの数は
図1に示す2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0018】
インレットガイドベーン(Inlet Guide Vane;IGV)921Aおよび921Bは、本発明における流量調整部の一例に該当し、各インペラの流量を調整する。より具体的には、インレットガイドベーン921A、921Bは、それぞれインペラ911A、911Bの入口側に設けられており、自らの翼開度であるIGV開度を調整することで、インペラ911A、911Bの流量を調整する。但し、本発明における流量調整部は、インレットガイドベーンに限らない。例えば流量調整部は、インペラ911A、911Bのそれぞれに設けられ、インペラ911Aや911Bの回転数を調整することで流量を調整する駆動回転器であってもよい。
また、以下ではインペラの流量としてインペラの入口側の流量を用いる場合について説明するが、インペラの出口側の流量をインペラの流量として用いるようにしてもよい。
【0019】
圧縮機制御装置11は、圧縮機91における流量や圧力の測定値に基づいて、当該圧縮機91の流量を制御する。
流量センサ111Aは、入口側流路W11Aに設けられてインペラ911Aの流量を検出する。流量センサ111Bは、入口側流路W11Bに設けられてインペラ911Bの流量を検出する。流量センサ111Aおよび111Bは、本発明における流量検出部の一例に該当する。
但し、本発明における流量検出部は、流量センサに限らない。例えば流量検出部は、流量センサが送信するセンシングデータを受信する受信回路であってもよい。
【0020】
圧力センサ121は、出口側流路W21に設けられて当該出口側流路W21の圧力を検出する。圧力センサ121は、本発明における圧力検出部の一例に該当する。
但し、本発明における圧力検出部は、圧力センサに限らない。例えば圧力検出部は、圧力センサが送信するセンシングデータを受信する受信回路であってもよい。
【0021】
放風弁811は、インペラ911Aまたは911Bを流れる流量が減少した際に、当該インペラの流量を確保してサージを防止しつつ、圧縮機91の供給する圧縮空気量の増加を防止するために、圧縮空気の一部を大気中へ放出する。より具体的には、インペラを流れる流量が、圧力センサ121の出力に基づく流量設定値を下回る場合、放風弁811を開いてサージ発生を防止する。
【0022】
制御部190は、圧力センサ121の検出結果に基づいて、インペラ毎の流量調整指令としてIGV開度指令をインレットガイドベーン921Aおよび921Bに出力して制御する。
また、制御部190は、流量の下限目標値として設定されたセットポイントと、各インペラの流量とを比較し、比較結果に基づいて他のインペラの流量調整指令を補正する。
これにより、圧縮機制御装置11は、あるインペラの流量がセットポイントより小さい場合に、当該インペラの流量とセットポイントとの差に相当する流量を他のインペラにおける流量目標値から減算することができる。従って、圧縮機制御装置11は、インペラ全体の流量を増やさずに、セットポイントより小さい流量となっているインペラの流量を増やしてセットポイントに近付けることができる。
【0023】
特に、圧縮機制御装置11は、複数のインペラ間に性能差が生じて流量に差が生じた場合に、流量の小さいインペラの流量がさらに小さくなって放風弁811を開く事態を回避しつつ、全体の流量を制御することができる。このように、圧縮機制御装置11は、複数のインペラ間に性能差が生じた場合でも圧縮機91の効率の低下を低減させることができる。
他のインペラの流量調整指令の補正によってもサージ防止のための流量を確保できない場合、制御部190は、放風弁を開いて流量を確保することでサージを防止する。
【0024】
また、制御部190が、あるインペラの流量がセットポイントよりも小さくなった場合、当該インペラの流量を固定するようインレットガイドベーン921Aまたは921Bを制御するようにしてもよい。
これにより、圧縮機制御装置11は、当該インペラの流量がさらに小さくなってサージが発生することを防止し得る。その際、他のインペラの流量を減少させることで、圧縮機制御装置11は、放風弁811を開いて大気中へ圧縮空気を放出する必要無しにサージ発生を防止し得る。
【0025】
また、制御部190が、セットポイントと流量指令値とが所定以上かい離したことを条件として、インペラの流量の固定を解除するようにしてもよい。
これにより、圧縮機制御装置11は、インペラの流量が大きくなってサージ防止制御を行う必要が無くなった場合に、インペラの流量を変化させて所望の流量の圧縮空気を圧縮機91に生成させることができる。特に、圧縮機制御装置11は、並列に配置された複数のインペラの流量を変化させることで、より大量の圧縮空気を圧縮機91に生成させることができる。
【0026】
また、制御部190が、いずれのインペラの流量もセットポイントより小さくなったことを条件として、インペラの流量の固定を解除するようにしてもよい。
これにより、圧縮機制御装置11は、各インペラの流量を、セットポイントから、放風弁811を開く基準流量を示すサージコントロールラインまで減少させることができる。すなわち、圧縮機制御装置11は、サージコントロールラインとセットポイントとの間に設けられているマージン分の流量を減少させることで、放風弁811を開くタイミングを遅らせることができ、この点で圧縮機91の効率の低下を低減させることができる。
【0027】
なお、圧縮機制御装置11が、本発明における圧力検出部の一例として、入口側流路W11AやW11Bの圧力を検出する圧力センサをさらに具備するようにしてもよい。そして、制御部190が、入口側流路W11AやW11Bの圧力に基づいて、流量調整指令を出力するようにしてもよい。
これにより、圧縮機制御装置11は、上流側に別プロセスがある場合など、入口側流路W11AやW11Bの圧力が変化する場合にも、所望流量の圧縮空気をより正確に生成し得る。
【0028】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、第1の実施形態における圧縮機システム1を更に具体化した一例について説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態における圧縮機システムの構成を示す概略構成図である。同図において、圧縮機システム2は、圧縮機制御装置12と圧縮機92と、放風弁811と、クーラ821および822とを具備する。
【0029】
圧縮機92は、インペラ911A、911B、912および913と、インレットガイドベーン921Aおよび921Bと、駆動機931と、シャフト941と、ギアボックス951、952および953とを具備する。
圧縮機制御装置12は、流量センサ111A、111Bおよび112と、圧力センサ121および122と、制御部192とを具備する。制御部192は、セットポイントギャップ記憶部201Aおよび201Bと、アンチサージ制御基準点設定部211Aおよび211Bと、セットポイント設定部212Aおよび212Bと、流量制御部213A、213Bおよび244と、スイッチ214A、214Bおよび245と、レートリミッタ215Aおよび215Bと、ゲイン乗算部216Aおよび216Bと、圧力制御部221と、関数演算部222A、222B、242および243と、減算部223A、223B、231Aおよび231Bと、大小判定部224Aおよび224Bと、ヒステリシス部232Aおよび232Bと、後述する論理演算部とを具備する。
【0030】
図2において
図1の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(111A、111B、121、911A、911B、921A、922B)を付して説明を省略する。また、
図2では、シャフトを鎖線で示し、空気の流路を破線で示し、データや制御情報の流れを実線で示している。
また、
図2において丸で囲まれた「A」、「B」、「C」および「X」は、後述する論理演算部に対する入出力を示す。
【0031】
インペラ911A、911B、912および913は3段に構成されており、1段目のインペラ911Aおよび911Bが出力する圧縮空気は、2段目のインペラ912と3段目のインペラ913とで更に圧縮される。
インペラ911A、911B、912、913の各々は、シャフト941を介して駆動機931と結合されている。シャフト941の一端には、1段目のインペラ911Aおよび911Bが配置されている。また、シャフト941の他端には、2段目のインペラ912と3段目のインペラ913とが配置されている。駆動機931は、シャフト941の中間に接続される。各インペラおよび駆動機931は、ギアボックス951、952および953を介してシャフト934と接続されている。なお、回転力を生成する様々な機器を駆動機931として用いることができる。例えば、駆動機931は、モータであってもよいしエンジンであってもよい。また、ギアボックス951、952および953の有無は、駆動機の配置や特性による。例えば、可変速の駆動機とインペラとを、シャフトを用いて直結し、ギアボックスを用いない構成としてもよい。
【0032】
また、クーラ821、822は、それぞれ1段目のインペラと2段目のインペラとの間、2段目のインペラと3段目のインペラとの間に設けられており、圧縮にて高温になった空気を冷却する。
放風弁811は圧縮機92の出口側に設けられており、放風弁811が開くことで圧縮機92が生成した圧縮空気の一部を大気中に放出する。
【0033】
圧力センサ121は、3段目のインペラ913の出口側の圧力を検出する。
圧力制御部221と関数演算部222Aとで、圧力センサ121が検出する3段目の出口側圧力に基づいて、インレットガイドベーン921Aに対する流量調整指令としてのIGB開度指令を生成する。圧力制御部221と関数演算部222Bとで、圧力センサ121が検出する3段目の出口側圧力に基づいて、インレットガイドベーン921Bに対する流量調整指令としてのIGB開度指令を生成する。
【0034】
圧力センサ122は、1段目のインペラ911Aおよび911Bの出口側の圧力を検出する。
アンチサージ制御基準点設定部211Aおよび211Bは、いずれも、圧力センサ122の検出するインペラ911Aおよび911Bの出口側の圧力に基づいて、放風弁811を開く基準流量を設定する。
セットポイント設定部212A、212Bは、それぞれ、アンチサージ制御基準点設定部211A、211Bが設定した流量に、所定のマージンであるセットポイントギャップ(SGp)を加えてセットポイントを設定する。このセットポイントは、インペラ911Aおよび911Bの流量の下限目標値として用いられる。
セットポイントギャップ記憶部201A、201Bは、それぞれ、セットポイント設定部212A、212Bが加える所定のマージンであるセットポイントギャップを記憶している。
【0035】
流量制御部213Aは、圧力制御部221と関数演算部222Bとが生成したIGV開度指令に対する補正値を生成する。すなわち、流量制御部213Aは、インペラ911Aの状態に基づいて、他のインペラ911Bの流量制御に対する補正値を生成する。特に、流量制御部213Aは、後述するIGVリミット制御において、セットポイント設定部212Aが設定したセットポイントと、各インペラの流量とを比較し、比較結果に基づいて他のインペラ911Bの流量調整指令を補正する。
【0036】
流量制御部213Bは、圧力制御部221と関数演算部222Aとが生成したIGV開度指令に対する補正値を生成する。すなわち、流量制御部213Bは、インペラ911Bの状態に基づいて、他のインペラ911Aの流量制御に対する補正値を生成する。特に、流量制御部213Bは、後述するIGVリミット制御において、セットポイント設定部212Bが設定したセットポイントと、各インペラの流量とを比較し、比較結果に基づいて他のインペラ911Aの流量調整指令を補正する。
【0037】
スイッチ214Aは、圧縮機システム2の状態に応じて、流量制御部213Aへの入力を、閉ループまたは0の何れかに切り替える。スイッチ214Bは、圧縮機システム2の状態に応じて、流量制御部213Bへの入力を、閉ループまたは0の何れかに切り替える。スイッチ214Aおよび214Bが行う処理については後述する。
レートリミッタ215A、215Bは、それぞれ、流量制御部213A、213Bが生成した補正値に対して、急変を防止するために変化率を一定範囲内に抑えるレートリミット処理を行う。
【0038】
ゲイン乗算部216A、216Bは、いずれも、レートリミット処理された補正値に対してゲインを乗算する。
減算部223Aは、圧力制御部221と関数演算部222Aとが生成したIGV開度指令から補正値を減算する補正を行う。減算部223Bは、圧力制御部221と関数演算部222Bとが生成したIGV開度指令から補正値を減算する補正を行う。
【0039】
大小判定部224Aは、補正後のIGV開度指令と、インレットガイドベーン921Aの最大/最小開度との大小関係を判定し、判定結果に応じて開指令または閉指令をインレットガイドベーン921Aへ出力する。大小判定部224Bは、補正後のIGV開度指令と、インレットガイドベーン921Bの最大/最小開度との大小関係を判定し、判定結果に応じて開指令または閉指令をインレットガイドベーン921Bへ出力する。
【0040】
減算部231Aは、流量センサ111Aが検出したインペラ911Aの流量から、セットポイント設定部212Aが設定したセットポイントを減算する。減算部231Bは、流量センサ111Bが検出したインペラ911Bの流量から、セットポイント設定部212Bが設定したセットポイントを減算する。
【0041】
ヒステリシス部232Aは、減算部231Aの演算結果の正負を判定する。この判定結果は後述する論理演算部におけるモード切替に用いられることから、モード切替の頻発を避けるため、ヒステリシス部232Aは、減算部231Aの演算結果の正負を判定する際、所定のヒステリシスを設ける。ヒステリシス部232Bは、減算部231Bの演算結果の正負を判定する。ヒステリシス部232Aの場合と同様、ヒステリシス部232Bは、減算部231Bの演算結果の正負を判定する際、所定のヒステリシスを設ける。
【0042】
流量センサ112は、3段目のインペラ913の出口側の流量を検出する。
圧力制御部221と、関数演算部242および243と、流量制御部244とで、3段目のインペラ913の出口側の流量や圧力に基づいて、放風弁811に対する制御情報を生成する。
スイッチ245は、放風弁811に対する制御情報の切替を行って、放風弁811に制御情報を出力することで放風弁811の開閉を制御する。
【0043】
ここで、
図3〜5を参照して、インペラの特性およびアンチサージ制御について説明する。
図3は、インペラの性能曲線の第1の例を示す図である。同図において、線L111、L112、L113は、IGVの各開度における圧力P−流量F曲線であり、特に、線L111は、IGVが最大開度(全開)のときの圧力P−流量F曲線である。また、線L121は、サージラインであり、これより左側の領域ではサージングが発生する。より具体的には、サージラインより左側の領域では風量が少なく、インペラ入口側圧力とインペラ出口側圧力との比が大きい。このため、インペラが後流側へ風を流しきることができずにサージ(振動)が生じる。風量が増えてくれば後流側へ流せるようになり、サージがおさまる。
【0044】
また、線SCLは、1段目のインペラの出口側圧力と、アンチサージ制御における流量制御目標値との関係を示すサージコントロールラインである。上記のように、サージラインL121より左側の領域ではサージが発生する。このため、サージラインL121に対してマージンをとったサージコントロールライン(Surge Control Line)SCLより右側の領域において、圧縮機の圧力や流量を制御するためのアンチサージ制御を行う。
アンチサージ制御は、放風弁を開けて圧縮空気の一部を大気中へ逃がして出口流量を大きくすることで行われる。圧縮空気の一部を大気中へ逃がすため圧縮機の効率が低下する。
また、線L131は現在の1段目の出口側圧力を示しており、点P111は、当該出口側圧力および現在のIGV開度に応じた入口側流量の例を示す。
【0045】
図4は、インペラの性能曲線の第2の例を示す図である。同図に示すインペラは、
図3に示すインペラよりも性能が低下している。
インペラの性能が低下すると、流量に対して圧力が小さくなる傾向にある。このため、流量制御目標値が小さくなった際に、サージコントロールラインSCLに到達し易くなる。インペラの流量がサージコントロールラインSCLに到達して放風弁811が開くと圧縮空気が大気中に放出されて圧縮機92の効率が低下してしまう。
【0046】
そこで、圧縮機制御装置12は、サージコントロールラインに対してマージンをとったIGVリミットコントロールライン(IGV Limit Control Line)を設定し、インペラの流量が小さい場合にIGVリミットコントロールラインにおける流量を制御目標値とするIGVリミット制御を行う。
【0047】
図5は、IGVリミットコントロールラインの例を示す説明図である。同図(A)に示す性能曲線は、性能が低下したインペラの性能曲線である。一方、同図(B)に示す性能曲線は、性能が低下していないインペラの性能曲線である。
図5の説明においては、同図(A)に示す性能曲線がインペラ911Aの性能を示しており、同図(B)に示す性能曲線がインペラ911Bの性能を示しているものとする。
【0048】
また、
図5では、サージコントロールラインSCLに対して流量Δx分のマージン(セットポイントギャップSGp)を持たせたIGVリミットコントロールラインILCLが示されている。また、線L131は現在の1段目の出口側圧力を示しており、点P211は、当該出口側圧力および現在のIGV開度に応じた入口側流量の例を示す。
【0049】
ここで、出口側圧力を示す線L131とサージコントロールラインSCLとの交点P212は、アンチサージ制御基準点設定部211Aが設定する、放風弁811を開く基準流量Q
SCLAを示している。また、サージコントロールラインSCLとIGVリミットコントロールラインILCLとのマージンの流量Δxは、セットポイント設定部212Aが加えるマージンであるセットポイントギャップ(SGp)に相当する。従って、線L131とIGVリミットコントロールラインILCLとの交点P213は、セットポイント設定部212Aが設定するセットポイント(流量Q
ILCLA)を示している。
【0050】
このセットポイント(流量Q
ILCLA)は、IGVリミット制御におけるインペラ911Aの流量の下限目標値として用いられる。IGVリミット制御は、1段目のインペラの何れかがサージコントロールラインに到達して、他の1段目のインペラの流量にサージコントロールラインからの余裕があるにもかかわらず放風弁を開くことを抑制するための制御である。
【0051】
図5(A)の例では、点P211の示すインペラ911Aの入口側流量が、IGVリミット制御のセットポイントを示すIGVリミットコントロールラインILCLよりも左にあり、インペラ911Aの入口側流量がセットポイント(流量Q
ILCLA)より小さくなっている。この場合、圧縮機制御装置12は、IGVリミット制御において、インペラ911Aの入口側流量をセットポイント(流量Q
ILCLA)に近付ける制御を行う。
その際、圧縮機制御装置12は、流量を絞る必要があれば、流量に余裕があるほうの目標流量を小さくすることで、1段目全体の流量を調整する。
図5の例では、圧縮機制御装置12は、同図(B)に示すように、流量に余裕があるインペラ911Bの流量を絞る。
【0052】
次に、
図6を参照して、IGVリミット制御において圧縮機制御装置12が行う処理について説明する。
図6は、
図2に示した圧縮機システム2の各部のうち一部を示す説明図である。
図6では、
図2に示した各部のうち、インペラ911Aおよび911Bと、インレットガイドベーン921Aおよび921Bと、流量センサ111Aおよび111Bと、アンチサージ制御基準点設定部211Aと、セットポイント設定部212Aと、流量制御部213Aと、レートリミッタ215Bと、ゲイン乗算部216Bと、圧力制御部221と、関数演算部222Bと、減算部223Bと、大小判定部224Bとが示されている。
【0053】
例えば、インペラ911Aの流量がIGVリミット制御のセットポイント(
図5の例では流量Q
ILCLA)より小さくなった場合、圧縮機制御装置12は、IGVリミット制御を行って、インペラ911Aの流量を当該セットポイントに近づける。
具体的には、流量制御部213Aは、流量センサ111Aが検出したインペラ911Aの流量を、セットポイント設定部212Aの設定した、IGVリミット制御のセットポイントに一致させるための、比例積分制御(PI制御)における目標流量を算出する。
なお、以下では、IGVリミット制御のセットポイントを、単に「セットポイント」と表記する。
【0054】
そして、減算部223Bが、流量制御部213の算出した目標流量にレートリミット処理やゲイン乗算等の整形を行った流量を、インペラ911Bの目標流量から減算する。いわば、圧縮機制御装置12は、インペラ911Bに対して、元々の目標流量からインペラ911Aにおける流量の差分だけ絞るようオフセットを与える。
インペラ911Bが流量を絞ることで、圧力制御部221の出力する流量指令値が大きくなり、その結果、インペラ911Aの流量がセットポイントに近付く。
【0055】
一方、インペラ911A、911B共に流量がセットポイントより大きい場合、圧縮機制御装置12はIGVリミット制御を行わず、流量制御部213Aや213Bは、補正値を一定に保つトラッキングを行う。この点について
図7を参照して説明する。
図7は、
図2に示した圧縮機システム2の各部のうち一部を示す説明図である。
図7では、
図2に示した各部のうち、インペラ911Aおよび911Bと、インレットガイドベーン921Aおよび921Bと、流量センサ111Aおよび111Bと、流量制御部213Aと、スイッチ214Aと、レートリミッタ215Bと、ゲイン乗算部216Bと、圧力制御部221と、関数演算部222Bと、減算部223Bと、大小判定部224Bとが示されている。
【0056】
インペラ911A、911B共に流量がセットポイントより大きい場合、流量制御部213Aや213Bは、IGVリミット制御を行わないモードであるマニュアルモードに設定される。この場合、流量制御部213Aや213Bは、オートモードからマニュアルモードに切り替わる直前に設定した補正値をトラッキングする。
図7の場合、流量制御部213Aは、スイッチ214Aの構成する閉ループにて、流量制御部213A自らが出力した補正値を取得し、再び補正値として出力する。
【0057】
このように、流量制御部213Aや213Bが、オートモードからマニュアルモードに切り替わる直前に設定した補正値をトラッキングすることで、圧縮機制御装置12は、インペラ911Aと911Bとの性能差に応じて目標流量の補正を行う。具体的には、圧縮機制御装置12は、性能が優れているほうのインペラの流量を絞るように補正を行う。これにより、性能が劣っているほうのインペラの流量とサージコントロールラインとの余裕が広がる点で、圧縮機制御装置12が、放風弁を開かずに圧縮機92の制御を行える幅が広がる。
【0058】
なお、駆動機931の停止中や、アンチサージ制御がマニュアルになっている場合など、IGVリミット制御を行う環境が整っていない状態では、流量制御部213Aや213Bは、トラッキング値をゼロにする。
図7に示す構成では、スイッチ214Aが、定数値「0.0」と流量制御部213Aとを接続するようになり、流量制御部213Aは、当該定数値を出力する。
【0059】
図8は、圧縮機制御装置12が具備する論理演算部における論理演算の例を示す説明図である。論理演算部は、スイッチ214Aや214Bに対する制御情報や、流量制御部213Aや213Bにおけるモードに対する制御情報を演算する。
図8に示す論理演算において、論理演算部は、駆動機931が動作中、かつ、アンチサージング制御がオートモードの場合にスイッチ214Aや214Bに対して閉ループ側への接続を指示する制御情報を出力する。逆に、駆動機931が停止中の場合や、アンチサージング制御がマニュアルモードの場合は、論理演算部は、スイッチ214Aや214Bに対して定数ゼロ側への接続を指示する制御情報を出力する。
【0060】
また、論理演算部は、流量制御部213Aや213Bのモードをオートに設定する条件として、3つの条件の論理積を取る。1つ目は、スイッチ214Aや214Bの制御と同様、駆動機931が動作中、かつ、アンチサージング制御がオートモードとなっていることである。2つ目は、圧力制御がオートモードであること、すなわち、圧力制御部221が圧力制御にてインペラ911Aや911Bの流量を制御していることである。3つ目は、インペラ911Aまたは911Bの何れか一方において、セットポイントと入口流量測定値との差が負であり、他方においては、セットポイントと入口流量測定値との差が正製であることである。すなわち、インペラ911Aまたは911Bの何れか一方は、IGVリミット制御を行うべき状態にあり、他方は、セットポイントからの余裕がある場合である。
【0061】
以上のように、制御部192(特に、圧力制御部221)は、圧力センサ121の検出結果に基づいて、インペラ毎の流量調整指令としてIGV開度指令をインレットガイドベーン921Aおよび921Bに出力して制御する。
また、制御部192(特に、流量制御部213Aおよび213B)は、流量の下限目標値として設定されたセットポイントと、各インペラの流量とを比較し、比較結果に基づいて他のインペラの流量調整指令を補正する。
これにより、圧縮機制御装置12は、あるインペラの流量がセットポイントより小さい場合に、当該インペラの流量とセットポイントとの差に相当する流量を他のインペラにおける流量目標値から減算することができる。従って、圧縮機制御装置12は、インペラ全体の流量を増やさずに、セットポイントより小さい流量となっているインペラの流量を増やしてセットポイントに近付けることができる。
【0062】
特に、圧縮機制御装置12は、複数のインペラ間に性能差が生じて流量に差が生じた場合に、流量の小さいインペラの流量がさらに小さくなって放風弁を開く事態を回避しつつ、全体の流量を制御することができる。このように、圧縮機制御装置11は、複数のインペラ間に性能差が生じた場合でも圧縮機92の効率の低下を低減させることができる。
【0063】
<第3の実施形態>
第2の実施形態では、第1の実施形態における圧縮機システム1を更に具体化したもう一つの例について説明する。
図9は、本発明の第3の実施形態における圧縮機システムの構成を示す概略構成図である。同図において、圧縮機システム3は、圧縮機制御装置13と圧縮機92と、放風弁811と、クーラ821および822とを具備する。
【0064】
圧縮機92は、インペラ911A、911B、912および913と、インレットガイドベーン921Aおよび921Bと、駆動機931と、シャフト941と、ギアボックス951、952および953とを具備する。
圧縮機制御装置13は、流量センサ111A、111Bおよび112と、圧力センサ121および122と、制御部193とを具備する。制御部193は、アンチサージ制御基準点設定部211Aおよび211Bと、セットポイント設定部212Aおよび212Bと、流量制御部213A、213Bおよび244と、スイッチ214A、214B、245、311A、311B、331Aおよび331Bと、レートリミッタ215Aおよび215Bと、ゲイン乗算部216Aおよび216Bと、圧力制御部221と、関数演算部222A、222B、242および243と、減算部223A、223B、231A、231B、321Aおよび321Bと、大小判定部224Aおよび224Bと、ヒステリシス部232A、232B、322Aおよび322Bと、後述する論理演算部とを具備する。
【0065】
図9において
図2の各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(111A、111B、112、121、122、201A、201B、211A、211Bと、212A、212Bと、213A、213B、244、214A、214B、245、215A、215B、216A、216B、219A、219B、221、222A、222B、242、243、223A、223B、231A、231B、224A、224B、232A、232B、811、821、822、92、911A、911B、912、913、921A、922B、931、941、951〜953)を付して説明を省略する。また、
図9では、シャフトを鎖線で示し、空気の流路を破線で示し、データや制御情報の流れを実線で示している。
また、
図9において丸で囲まれた「A1」、「A2」、「A3」、「B1」、「B2」、「B3」、「X」および「Y」は、後述する論理演算部に対する入出力を示す。
【0066】
セットポイントとインペラの流量とを比べると、(1)インペラ911A、911B共にインペラの流量のほうが大きい場合、(2)インペラ911A、911Bの何れか一方の流量がセットポイントより小さい場合、(3)インペラ911A、911B共にインペラの流量がセットポイントより小さい場合、の3通りが考えられる。圧縮機制御装置13は、この3通りの場合の各々に対応した運転モードにて圧縮機93の制御を行う。
【0067】
これらの運転モードの実行のために、減算部321Aおよび321Bと、ヒステリシス部322Aおよび322Bとは、論理演算部への入力として、インレットガイドベーン921A、921Bの各々について、IGV開度と指令値との乖離が大きいか否かを示す信号を生成する。
スイッチ331Aおよび331Bは、IGV開度の固定/否固定を切り替える。
【0068】
(1)インペラ911A、911B共にインペラの流量のほうが大きい場合、流量制御部213Aおよび213Bは、オードモードに設定される。圧縮機流量がIGVリミットコントロールラインより充分大きい場合、IGVリミット制御による補正値はゼロとなる。
一方、インペラの流量が減少してIGVリミットコントロールラインに近付くと、流量制御部213Aまたは213BがIGVリミット制御としてのPI制御を行い、反対側のインペラの流量指令値に対する補正信号を出力する。
【0069】
図10は、
図9に示した圧縮機システム3の各部のうち一部を示す説明図である。
図10では、
図9に示した各部のうち、インペラ911Aおよび911Bと、インレットガイドベーン921Aおよび921Bと、流量センサ111Aおよび111Bと、アンチサージ制御基準点設定部211Aと、セットポイント設定部212Aと、流量制御部213Aと、レートリミッタ215Bと、ゲイン乗算部216Bと、圧力制御部221と、関数演算部222Bと、減算部223Bと、スイッチ331Bと、大小判定部224Bとが示されている。
かかる構成により、流量制御部213Aは、
図6の場合と同様、IGVリミット制御を行う。
【0070】
(2)インペラ911A、911Bの何れか一方の流量がセットポイントより小さい場合、圧縮機制御装置13は、流量がセットポイントより小さくなったインペラの側のインレットガイドベーンのIGV開度を固定にする。
図11は、
図9に示した圧縮機システム3の各部のうち一部を示す説明図である。
図11では、
図9に示した各部のうち、インペラ911Aおよび911Bと、インレットガイドベーン921Aおよび921Bと、流量センサ111Aおよび111Bと、アンチサージ制御基準点設定部211Aおよび211Bと、セットポイント設定部212Aおよび212Bと、流量制御部213Aおよび213Bと、スイッチ214A、214B、311A、311B、331Aおよび331Bと、レートリミッタ215Aと、ゲイン乗算部216Aと、圧力制御部221と、関数演算部222Aおよび222Bと、減算部223Aと、大小判定部224Aおよび224Bとが示されている。
【0071】
例えば、インペラ911Bの流量がセットポイントより小さくなった場合、スイッチ331Bがループを構成してインレットガイドベーン921BのIGV開度指令値を保持する。また、スイッチ214Bおよび311Bがループを構成して当該IGV開度指令値における補正値を保持する。
【0072】
このように、圧縮機制御装置13がインペラの流量を固定することで、インペラの流量がさらに小さくなってサージが発生することを防止し得る。その際、他のインペラの流量を減少させることで、圧縮機制御装置13は、放風弁を開いて大気中へ圧縮空気を放出する必要無しにサージ発生を防止し得る。
【0073】
なお、IGV開度を固定する場合、圧縮機制御装置13は、IGV開度の固定を解除するときに当該IGV開度が急変しないように、補正値のトラッキングを行う。
図12は、圧縮機制御装置13が行う補正値のトラッキングの例を示す説明図である。同図では、
図9に示した各部のうち、流量制御部213Aと、圧力制御部221と、減算部223Bおよび321Bと、スイッチ331Bと、インペラ911Bと、インレットガイドベーン921Bとを示している。なお、図を見易くするため信号の経路上においても一部の記載を省略している。
【0074】
図12に示す例では、インレットガイドベーン921BのIGV開度を固定した際、圧力制御部221からのIGV開度指令が30%となっており、流量制御部213の生成した補正値が10%となっている。そこで、減算部223Bが、補正後のIGV開度指令を20%と計算して大小判定部224Bへ出力していた状態で、スイッチ331Bが閉ループを構成し、IGV開度20%を保持している。
【0075】
その後、圧力制御部221からのIGV開度指令値が25%に減った場合、仮に流量制御部213Aが、補正値10%を出力し続けると、補正後のIGV開度指令は15%となり、IGV開度の固定値と異なっている。このままスイッチ331Bが減算部223B側へ接続を変更してIGV開度の固定を解除すると、IGV開度が20%から15%へ急変してしまう。
【0076】
そこで、減算部321Bが、圧力制御部221からの開度指令とIGV開度の固定値との差を算出して、流量制御部213Aの出力する補正値を変化させる。
図12の例では、圧力制御部221からのIGV開度指令が25%に変化した際、減算部321Bは、IGV開度指令の25%からIGV開度の固定値20%を減算して、5%と算出する。そして、流量制御部213Aは、減算部321Bが算出した5%を補正値として出力する。
これにより、IGV開度の固定値と、補正後のIGV開度指令とが同じ値となり、スイッチ331BがIGV開度の固定を解除した際にIGV開度の急変が生じない。
【0077】
(3)インペラ911A、911B共にインペラの流量がセットポイントより小さい場合、圧縮機制御装置13は、IGV開度の固定を解除し、インペラ911A、911Bのいずれも流量を変更可能とする。その際、圧縮機制御装置13は、状態(3)に切り替わる直前の補正値をトラッキングする。
【0078】
図13は、
図9に示した圧縮機システム3の各部のうち一部を示す説明図である。
図11では、
図9に示した各部のうち、インペラ911Aおよび911Bと、インレットガイドベーン921Aおよび921Bと、流量センサ111Aおよび111Bと、流量制御部213Aおよび213Bと、スイッチ214A、214B、311A、311B、331Aおよび331Bと、レートリミッタ215Aおよび215Bと、ゲイン乗算部216Aおよび216Bと、圧力制御部221と、関数演算部222Aおよび222Bと、減算部223Aおよび223Bと、大小判定部224Aおよび224Bとが示されている。
【0079】
図13において、スイッチ214Aおよび311Aが閉ループを構成しており、流量制御部213Aは、当該閉ループにて補正値を保持する。スイッチ214Bおよび311Bと流量制御部213Bについても同様である。
そして、減算部223Aは、圧力制御部221からの流量指令から補正値を減算し、補正後の流量指令をインレットガイドベーン921Aへ出力すする。インペラ911B側についても同様である。
【0080】
このように、インペラ911A、911Bの何れの流量もセットポイントより小さくなった場合、スイッチ331Aおよび331Bは、インペラの流量の固定を解除する。
これにより、圧縮機制御装置13は、各インペラの流量を、セットポイントから、放風弁811を開く基準流量を示すサージコントロールラインまで減少させることができる。すなわち、圧縮機制御装置13は、サージコントロールラインとセットポイントとの間に設けられているマージン分の流量を減少させることで、放風弁811を開くタイミングを遅らせることができ、この点で圧縮機93の効率の低下を低減させることができる。
【0081】
また、圧縮機制御装置13は、(3)のモードへ切り替わる直前の補正値をトラッキングすることで、インペラ911Aと911Bとの性能差に応じて目標流量の補正を行う。具体的には、圧縮機制御装置13は、性能が優れているほうのインペラの流量を絞るように補正を行う。これにより、性能が劣っているほうのインペラの流量とサージコントロールラインとの余裕が広がる点で、圧縮機制御装置13が、放風弁を開かずに圧縮機93の制御を行える幅が広がる。
【0082】
図14は、圧縮機制御装置13が具備する論理演算部における論理演算の例を示す説明図である。論理演算部は、スイッチ214Aや214Bや311Aや311B等に対する制御情報や、流量制御部213Aや213Bにおけるモードに対する制御情報を演算する。
図14に示す論理演算において、論理演算部は、駆動機931が動作中、かつ、アンチサージング制御がオートモードの場合に、IGVリミット制御を行う。また、論理演算部がIGVリミット制御を自動に設定するのは、上述した(1)の場合である。具体的には、論理線算部は、IGVリミット制御を自動に設定する条件として、3つの条件の論理積を取る。
【0083】
1つ目は、駆動機931が動作中、かつ、アンチサージング制御がオートモードとなっていることである。2つ目は、圧力制御がオートモードであること、すなわち、圧力制御部221が圧力制御にてインペラ911Aや911Bの流量を制御していることである。3つ目は、インレットガイドベーン921AのIGV開度と開度指令値との乖離が大きく、かつ、インペラ911Aの流量がIGVリミットコントロールラインより小さいこと、または、インペラ911A、911Bのいずれも、流量がIGVリミットコントロールライン以上に大きいこと、または、インレットガイドベーン921BのIGV開度と開度指令値との乖離が大きく、かつ、インペラ911Bの流量がIGVリミットコントロールラインより小さいことである。
【0084】
なお、インレットガイドベーン921AのIGV開度と開度指令値との乖離が大きく、かつ、インペラ911Aの流量がIGVリミットコントロールラインより小さいこと、という条件は、上記(2)から(1)へ遷移するための条件である。インレットガイドベーン921BのIGV開度と開度指令値との乖離が大きく、かつ、インペラ911Bの流量がIGVリミットコントロールラインより小さいこと、という条件も同様である。
【0085】
また、論理演算部がインレットガイドベーン921AのIGV開度を固定する条件は、インペラ911Bの流量がIGVリミットコントロールライン以上に大きく、かつ、インペラ911Aの流量がIGVリミットコントロールラインより小さく、かつ、インレットガイドベーン921AのIGV開度と開度指令値との乖離が大きくないことである。
また、論理演算部がインレットガイドベーン921BのIGV開度を固定する条件は、インペラ911Aの流量がIGVリミットコントロールライン以上に大きく、かつ、インペラ911Bの流量がIGVリミットコントロールラインより小さく、かつ、インレットガイドベーン921BのIGV開度と開度指令値との乖離が大きくないことである。
【0086】
すなわち、論理演算部は、インペラ911Aまたは911Bのいずれか一方のみの流量がIGVリミットコントロールラインより小さく、かつ、流量がIGVリミットコントロールラインより小さくなっているインペラの流量と流量指令値との乖離が所定値以上に大きい場合に、当該インペラにかかるインレットガイドベーンのIGV開度を固定する。
【0087】
以上のように、制御部193は、インペラ911Aまたは911Bの流量がセットポイントよりも小さくなった場合、当該インペラの流量を固定するようインレットガイドベーン921Aまたは921Bのうち該当するほうを制御する。
これにより、圧縮機制御装置13は、当該インペラの流量がさらに小さくなってサージが発生することを防止し得る。その際、他のインペラの流量を減少させることで、圧縮機制御装置13は、放風弁811を開いて大気中へ圧縮空気を放出する必要無しにサージ発生を防止し得る。
【0088】
また、制御部193は、セットポイントと流量指令値とが所定以上かい離したことを条件として、インペラの流量の固定を解除する。
これにより、圧縮機制御装置13は、インペラの流量が大きくなってサージ防止制御を行う必要が無くなった場合に、インペラの流量を変化させて所望の流量の圧縮空気を圧縮機93に生成させることができる。特に、圧縮機制御装置13は、並列に配置された複数のインペラの流量を変化させることで、より大量の圧縮空気を圧縮機93に生成させることができる。
【0089】
また、制御部193は、いずれのインペラの流量もセットポイントより小さくなったことを条件として、インペラの流量の固定を解除する。
これにより、圧縮機制御装置13は、各インペラの流量を、セットポイントから、放風弁を開く基準流量を示すサージコントロールラインまで減少させることができる。すなわち、圧縮機制御装置13は、サージコントロールラインとセットポイントとの間に設けられているマージン分の流量を減少させることで、放風弁を開くタイミングを遅らせることができ、この点で圧縮機93の効率の低下を低減させることができる。
【0090】
このように、圧縮機制御装置13は、圧縮機制御装置12よりもさらに細やかな処理を行うことができる。一方、圧縮機制御装置12は、圧縮機制御装置13よりも制御が簡単であり、この点で、メンテナンスや改造を行い易い。
【0091】
なお、圧縮機制御装置13が、本発明における圧力検出部の一例として、入口側流路の圧力を検出する圧力センサをさらに具備するようにしてもよい。そして、制御部193が、入口側流路の圧力に基づいて、流量調整指令を出力するようにしてもよい。
これにより、圧縮機制御装置13は、上流側に別プロセスがある場合など、入口側流路の圧力が変化する場合にも、所望流量の圧縮空気をより正確に生成し得る。
【0092】
なお、圧縮機制御装置11や12や13の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0093】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。