特許第5738271号(P5738271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738271
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/14 20060101AFI20150604BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20150604BHJP
   G01N 21/01 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   H01S5/14
   G01N21/17 630
   G01N21/01 D
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-502409(P2012-502409)
(86)(22)【出願日】2010年1月22日
(65)【公表番号】特表2012-523104(P2012-523104A)
(43)【公表日】2012年9月27日
(86)【国際出願番号】CH2010000015
(87)【国際公開番号】WO2010111795
(87)【国際公開日】20101007
【審査請求日】2013年1月18日
(31)【優先権主張番号】61/166,470
(32)【優先日】2009年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506250675
【氏名又は名称】エグザロス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EXALOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レバンドゥスキー,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】デュルク,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ベレツ,クリスティアン
【審査官】 佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−042971(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0101016(US,A1)
【文献】 特開平05−328049(JP,A)
【文献】 特開2003−021576(JP,A)
【文献】 特開2007−273834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00−5/50
G01N 21/01
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光モジュールであって、
少なくとも1つの光学的フィードスルーおよび複数の電気的フィードスルーを有する光モジュールケーシングと、
前記光モジュールケーシング内の光源と、
前記光源を制御でき、および/または、前記光モジュールの検出手段からの信号を分析できる電子機器ユニットとを備え、
前記光モジュールは、さらに、波長計をさらに備え、前記波長計は、
前記光源によって生成された光の波長計部分を主要なビームから離れる方に向けることができる波長計タップと、
前記波長計部分を受けるように配置された波長選択フィルタと、
前記フィルタを透過した放射の透過放射強度を測定するように配置された第1の波長計検出器と、
前記フィルタを透過しなかった放射の非透過放射強度を測定するように配置された第2の波長計検出器とを備え、
前記波長計タップ、前記波長選択フィルタ、前記第1の波長計検出器および前記第2の波長計検出器は、好ましくは前記モジュールケーシングに配置され、
前記光源は
光増幅を行なうように動作可能な半導体利得装置と、
波長選択器とを備え
前記光源は、第1のタイプおよび/または第2のタイプの光源であって、前記第1のタイプの光源は、さらに、
再方向付け器を少なくとも備え、
前記利得装置、前記光再方向付け器および前記波長選択器は、前記利得装置によって放出されて前記波長選択器によって選択される光部分のためにマルチモード共振器が構築されるように前記光モジュールケーシングに互いに配置され、
前記共振器は外部キャビティレーザ共振器であり、
前記共振器の1つの端部反射器は部分的に透過性であり、この1つの端部反射器を透過した光は、少なくとも部分的に前記光学的フィードスルーを通って出るように向けられ、
前記第2のタイプの光源は、さらに、
遅延装置およびベースを少なくとも備え、前記遅延装置は材料からなるブロックを備え、明確に規定されたビーム経路長を有するビーム経路は、前記利得装置によって生成された、前記材料からなるブロック内の光のために規定され
前記利得装置、前記遅延装置および前記波長選択器は、前記利得装置によって放出されて前記波長選択器によって選択される光部分のためにマルチモード共振器が構築されるように前記ベース上に互いに配置され、
前記遅延装置における前記ビーム経路は、前記共振器のビーム経路の一部である、光モジュール。
【請求項2】
前記第1および第2の波長計検出器の信号を比較して分析するために備付けられた電子機器ユニットを備え、前記信号の分析は、値(IT−IR)/(IT+IR)の評価を備え、ここでITは第1の光強度検出器によって測定される強度であり、IRは第2の光強度検出器によって測定される強度である、請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記電子機器ユニットはクロックを備え、前記クロックは、第1および第2の検出器信号のサンプリングを起動するように動作可能である、請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
必要信号強度検出器をさらに備え、前記クロックは、前記必要信号強度検出器からの信号のサンプリングを起動するようにさらに動作可能である、請求項3に記載の光モジュール。
【請求項5】
平衡ヘテロダイン検出に基づいたDC信号オフセット補償をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項6】
ビームスプリッタ/コンバイナと、必要信号強度検出器とをさらに備え、前記ビームスプリッタ/コンバイナは、一次ビームをサンプルアームと基準アームとに分割し、前記サンプルアームおよび前記基準アームから戻ってくる光部分を組合せて、組合せられた干渉する光部分を前記必要信号強度検出器上に向けるように動作可能である、請求項1から5のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項7】
前記ビームスプリッタ/コンバイナからの基準光ビームを規定された光路長を有する光路に沿って前記ビームスプリッタ/コンバイナに戻すように向ける光偏向手段および/または光案内手段を有する基準アームを前記モジュールケーシング内にさらに備える、請求項6に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記一次ビームを2つの部分的なビームに分割するための一次ビームスプリッタをさらに備え、部分的なビーム毎に、ビームスプリッタ/コンバイナと、必要信号強度検出器とをさらに備え、各ビームスプリッタ/コンバイナは、それぞれの前記部分的なビームをサンプルアームと基準アームとに分割し、前記サンプルアームおよび前記基準アームから戻ってくる光部分を組合せて、組合せられた干渉する光部分をそれぞれの前記必要信号強度検出器上に向けるように動作可能である、請求項1から7のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項9】
前記光源が前記第1のタイプの光源である場合、前記光源は、少なくとも前記半導体利得装置および前記波長選択器と熱的に接触する共通の熱電冷却器を備え、
前記光源が前記第2のタイプの光源である場合、前記光源は、前記ベースに接続され、前記ベースに熱的に結合された熱電冷却器をさらに備える、請求項1から8のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項10】
前記光源は、前記第1のタイプの光源であり、
前記共振器は光遅延装置を備え、前記遅延装置は材料からなるブロックを備え、明確に規定されたビーム経路長を有するビーム経路は、前記利得装置によって生成されて前記共振器内を循環する、前記材料からなるブロック内の光のために規定される、請求項1から9のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記波長選択器は、MEMS可動装置を備える、請求項1から10のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項12】
前記波長選択器は、MEMSミラーと、回折格子とを備え、前記MEMSミラーは、前記回折格子への光ビームの入射角を走査するように動作可能であり、または、前記波長選択器は、一体化したMEMS格子ミラー装置を備え、特に、前記格子はチャープされる、請求項11に記載の光モジュール。
【請求項13】
前記回折格子または前記一体化したMEMS格子ミラー装置はそれぞれ、前記共振器の端面を規定する、請求項12に記載の光モジュール。
【請求項14】
前記半導体利得装置は、半導体増幅器および反射性半導体増幅器からなる群から選択され、特に、前記半導体利得装置は反射性半導体増幅器であり、前記反射性半導体増幅器の反射コーティングは、前記共振器の共振器端部ミラー、たとえば出力結合ミラーである、請求項1から13のいずれかに記載の光モジュール。
【請求項15】
前記共振器の出力に光学的に結合された光ファイバをさらに備える、請求項1から14のいずれかに記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、光源の分野における発明であり、すなわち、電磁放射スペクトルの赤外線部分、可視部分および紫外線部分における電磁放射の供給源の分野における発明である。より具体的には、本発明は、光源、光干渉断層装置および光干渉断層モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
光干渉断層法(Optical Coherence Tomography)(OCT)は、医学的用途、生物学的用途および他の用途での表面付近画像化のための台頭しつつある技術である。OCTは、超音波の光学的アナログであるが、光のより短い波長を活用してより高い解像度の画像を達成する。対象の波長範囲は、スペクトルの可視領域から近赤外線領域内にあるかもしれず、400nm〜2000nmである。現在のところ、OCTには対象の波長範囲が4つあり、それらの波長範囲は850nm、1050nm、1300nmおよび1550nmを中心としている。OCTシステムは、(1)広帯域光源と、(2)放出された放射をサンプルおよび参照ミラーに向けるための光学的構成要素の構成と、(3)サンプルから反射された光および参照ミラーから反射された光の干渉を測定するための光学的構成とを備えている。従来技術の時間領域OCT(TD−OCT)システムでは、広帯域供給源は、広範囲の波長(40nm〜200nmの帯域幅)で光を放出する高輝度発光ダイオード(superluminescent light emitting diode)(SLED)であり、表面付近画像化深さは参照ミラーの位置を走査することによって制御される。参照ミラーとサンプル反射器との間の経路長が光源のコヒーレンス長の範囲内で等しいときにのみ、建設的干渉が生じる。フーリエまたは周波数領域OCT(FD−OCT)は、たとえば分散素子およびCCD検出器アレイまたは分光計を用いて干渉を復号することによってスペクトル周波数情報を利用する(スペクトル領域OCTまたはSD−OCT)。より単純な検出システムを必要とする別のFD−OCT技術は、狭帯域幅光源をスペクトル的に走査することによって、調子を合わせてスペクトル符号化を用いる(波長掃引光源(Swept Source)OCTまたはSS−OCT)。
【0003】
従来技術によれば、SS−OCTでは、光源としてチューナブルレーザが用いられる。SS−OCTは、TD−OCTと比較して信号対ノイズの大きな利点を有することが実証されている(Choma et al, Optics Express, vol. 11, 2003 pp. 2183-2189参照)。TD−OCTと比較したその利点を実現するために、波長掃引光源OCTシステムは、20kHz〜400kHzの高周波数で波長範囲を掃引できるチューナブル光源を必要とする。これらのシステムの干渉計に必要な画像化深さが光源のコヒーレンス長に関連しているので、これも光源の線幅および線間隔の要件を規定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SS−OCTのための波長掃引光源を達成するためにさまざまな方法が利用されてきた。これらの中には、カスケード分布帰還型(DFB)レーザ(US2008/0037608)、多波長レーザ(US2007/0002327)、回折格子および格子対(US2008/0002209、US7006231)、ファイバレーザリングキャビティ(US2006/0193352)、リングおよび線形の構成の両方においてファブリ・ペローフィルタ同調素子を利用する外部キャビティレーザ(US7242509、US2006/0215713)がある。これの方法のうち、後者のMEMSファブリ・ペローフィルタのアプローチは、コンパクトな光モジュール内での一体化に最も応用できる。この場合、MEMS装置は、波長選択機能および波長掃引機能の両方の機能を実行し、厳しい機械的許容差に合わせて製造する必要がある。ファブリ・ペローMEMS装置は実質的には、速度限界を有し、かつ、同調帯域幅上で反射率、平行度、平坦度およびフィルタキャビティの厚みの変化を被りやすい線形トランスデューサである。後者のパラメータの変化は、SS−OCTシステムの波長掃引中に帯域幅、コヒーレンスおよび画像化深さの変化をもたらす。
【0005】
別の方法(US2007/0183643)は、垂直キャビティ面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)(VCSEL)と一体化したMEMSチューナブルミラーを利用する。しかしながら、これらの素子の一体化は、製造が困難であり、まだ実現されていない。
【0006】
より単純かつより用途の広い構成は、フィルタリング機能および波長掃引機能が格子および回転または走査ミラーによって実行される外部キャビティレーザに基づいている(US6,111,645、US5,907,423、US2007/0276269、US2007/0239035、US2007/0064239、US2008/0043244、US2004/0213306)。これらの構成は、他の波長範囲に比較的容易に適合可能であるので、用途が広い。波長掃引光源OCTの応用例は、特定の最小値を上回り特定の最大値を下回るコヒーレンス長を波長掃引光源が有することを必要とする。最小値は、この応用例の最小画像化範囲に関連し(画像化範囲はコヒーレンス長の半分である)、たとえば網膜の画像化では6mmであり、または網膜から角膜までの目全体の画像化では25mmまでである。しかしながら、長過ぎるコヒーレンス長を有する波長掃引光源を採用することはよくないであろう。なぜなら、画像化範囲内の如何なる種類の反射物体も望ましくない干渉信号を引起すことになるためである。したがって、外部キャビティレーザのスペクトル帯域幅が特定の最小値を有するように、マルチモードレーザ動作が必要である。単一のモード動作は、コヒーレンス長が許容可能な特定の最大値を超えないことを保証しないであろう。この最小スペクトル帯域幅の結果は、比較的長いキャビティ長である。一般に、波長範囲およびキャビティにおけるモードの数によっては、これは3cm〜30cmの範囲内である。このキャビティ長要件は、波長掃引光源の小型化を制限する。理想的には、波長掃引光源は、容易に適格化されるべきであり、コンパクトなSS−OCTシステムに一体化されるべきである。また、長過ぎるキャビティ長は波長同調をゆっくりとしたものにし、掃引速度を制限する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明の目的は、先行技術の光源の欠点を克服するOCTのための「波長掃引光源」光源または波長掃引光源の他の応用例を提供することである。さらなる目的は、光干渉断層装置、光干渉断層モジュールを提供することである。
【0008】
本発明の第1の局面によれば、波長掃引光源であって、
少なくとも1つの光学的フィードスルーおよび複数の電気的フィードスルーを有する光モジュールケーシングと、
光増幅を行なうように動作可能な半導体利得装置と、
波長選択器と、
光再方向付け器とを備え、
利得装置、光再方向付け器および波長選択器は、利得装置によって放出されて波長選択器によって選択される光部分のためにマルチモード共振器が構築されるように光モジュールケーシングに互いに配置され、
共振器は外部キャビティレーザ共振器であり、たとえば自由空間に光路部分を備え、
共振器の1つの端部反射器は部分的に透過性であり、この1つの端部反射器を透過した光は、少なくとも部分的に光学的フィードスルーを通って出るように向けられる、光源が提供される。
【0009】
好ましい実施例では、本発明の第1の局面に係る波長掃引光源は、本発明の第2の局面の波長掃引光源の特徴を備え、以下に記載する光遅延装置を備える。これも有利であり得る他の実施例では、本発明の第1の局面に係る波長掃引光源は、光が複数回モジュールケーシング内の異なる経路部分上を行ったり来たりする折曲げられたキャビティを備える。
【0010】
光学的フィードスルーは、ファイバもしくは複数のファイバを備えていてもよく、または放射が通過する窓を備えていてもよい。
【0011】
本発明の第1の局面に係るアプローチの利点は、光源構成要素、ならびにおそらくは強度検出器、ビームスプリッタ/コンバイナ、波長計および/またはさらにはOCT機構の基準アームなどのさらなる装置の素子が、共通のパッケージに一体化されることである。パッケージに一体化されたこれらの装置は、好ましくは、MEMS格子またはMEMSミラーなどの可動部を含む。
【0012】
このアプローチは、コンパクトさ、取扱い、製造コスト、およびユーザによる較正努力の点で利点をもたらす。好ましい実施例によれば、パッケージのこれらの装置は、モジュールケーシング内の複数の構成要素が配置される台と接触する共通の熱電冷却器を有する。これは、安定性および再現性の点でさらなる利点をもたらし、製造時の複雑さの点で有利である。
【0013】
先行技術の光源としての光学的パッケージとは対照的に、本発明の第1の局面は、(可動MEMSミラーおよび格子またはファブリ・ペローフィルタ同調素子(たとえば、ファブリ・ペローMEMS装置)または回転走査ミラーおよび格子などを備えていてもよい)波長選択器を有する波長掃引光源を提供することを提案し、マルチモード動作を提案する。マルチモード動作は、許容可能な特定の最大値を超えないようにコヒーレンス長を制御できることを可能にする。さらに、単一モード動作では、複雑な機構を必要とするであろう同調中にキャビティ長が調整されなければ、モードホッピングが起こる。モードホッピングとは、レーザが短期間にわたってレージング動作をオフにし、次いで、チューナブルフィルタが次のレージングモードと一致すると再びレージング動作をオンにすることを意味する。しかしながら、レーザのオンにするプロセスは、(SS−OCTの応用例に必要な速い掃引速度に対して)比較的ゆっくりとしたプロセスであり得る。なぜなら、刺激を受けたレーザ放出は自然放出および増幅された自然放出から高まっていなければならず、したがって、低雑音および優れた信号対雑音比の安定したレーザ動作では、レーザキャビティにおいて数回の往復が必要になるためである。したがって、高速波長同調にはやはりマルチモードレーザキャビティが有利である。なぜなら、レーザキャビティは波長掃引中レージングを維持できるためである。しかしながら、(フーリエ領域モードロッキング(Fourier-domain mode-locking)(FDML)のような特別な技術が用いられない限り)レーザキャビティは長過ぎてはならない。これは、関連付けられた長い往復時間が再び高速波長同調を禁止するであろうという理由のためである。
【0014】
本発明の第2の局面によれば、掃引波長光源であって、
光増幅を行なうように動作可能な半導体利得装置と、
光遅延装置とを備え、遅延装置は材料からなるブロックを備え、材料からなるブロック内の明確に規定されたビーム経路長を有するビーム経路は、利得装置によって生成された光のために規定され、上記光源はさらに、
波長選択器と、
ベースとを備え、
利得装置、遅延装置および波長選択器は、利得装置によって放出されて波長選択器によって選択される光部分のために共振器が構築されるようにベース上に互いに配置され、これは、(共振器端部ミラーを含む)追加のミラー、レンズ、偏光選択素子、他の受動光学的構成要素などの共振器に寄与するさらなる素子の存在を除外するものではなく、
遅延装置におけるビーム経路は、共振器のビーム経路の一部である、光源が提供される。
【0015】
本文全体を通して、「光」という用語は、スペクトルの赤外線部分、可視部分および紫外線部分における電磁放射を指すために用いられる。本発明に係る光源は、スペクトルの近赤外線部分または可視部分において光を生成することに特に適している。
【0016】
したがって、本発明の第2の局面の実施例における遅延装置は、光学的外部キャビティレーザ共振器の一部である。遅延装置おける光路は、好ましくは、光共振器長の主な実質的な部分を構成する。遅延装置における経路長(したがって、反射の数も)この構成によって明確に規定される。たとえば、遅延装置における光路長は、光共振器長の少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%もしくは60%である(光路長は、局所的な屈折率を乗じた物理的な経路長として規定される)。遅延装置内のパスの数は、たとえば少なくとも4つであり、好ましくは少なくとも6つであり、またはさらには8つ以上である。多くの実施例では、遅延装置において占められる経路長の割合は、光学的パッケージ内に光学的キャビティを一体化できるほど十分に高い。装置内の光跡が必ずしも平行ではない光遅延装置の実施例がある。一般に、「パス」は、2つの後続の反射間の遅延装置内の経路部分である。
【0017】
光共振器長は、しばしば1cm〜1mであり、多くの場合3cm〜30cmである。
第1および/または第2の局面の実施例では、利得装置、遅延装置および波長選択器は共通のベース上に配置され、多くの実施例では、それらは光モジュールパッケージにパッケージングされて光モジュールを構成する。光モジュールパッケージは、少なくとも1つの光学的フィードスルーと、パッケージ内の構成要素に給電し、パッケージ内の構成要素を制御し、必要ならばパッケージ内から信号を読出すための複数の電気的フィードスルーとを有するパッケージハウジングを形成する。光学的パッケージはたとえば共通の熱電冷却器を備え、パッケージの光学装置はすべて、熱電冷却器と直接的に熱的に接触する。すなわち、パッケージの光学装置はたとえば、熱電冷却器と直接的に物理的に接触する共通の熱伝導キャリアプレート上にある。光学的パッケージはたとえば、ベース上の構成要素が電気的フィードスルーおよび/または光学的フィードスルーによって精々アクセス可能であるように外部に対して閉じられ、おそらくは封止されている。遅延装置は、たとえばバタフライパッケージのような当該技術分野において公知のものなどの標準的な光モジュールに組立てることができるようにチューナブル外部キャビティの構成の小型化を可能にする。比較的単純な光学的構成は、好適な利得ブロック(または、場合によっては、自由空間共振器の共振器形態)および構成要素上の光学コーティングを利用することによって、SS−OCTのための対象のすべての波長範囲で動作するように容易に適合可能である。
【0018】
マルチモード動作および対応するキャビティ寸法要件を達成するにも関わらず、パッケージ全体の寸法はコンパクトであり、(台の平面における)二次元的広がりは、好ましくは22mm*60mm以下であり、好ましい実施例では13mm×30mm以下である。たとえば、全体的な広がりは、22mm*60mm*20mm以下であり、好ましくは20mm*40mm*20mm以下であり、特に15mm*35mm*10mm以下または13mm*30mm*10mm以下である。
【0019】
第2の局面の多くの実施例では、遅延装置は、材料からなるブロック内を伝搬する光部分を行ったり来たり反射させるための複数の反射面を備える。遅延装置は、材料、たとえばシリカもしくはLiNbO3からなるブロックであってもよく、または関係している光の波長に透過的なその他の好適な材料からなるブロックであってもよい。ブロックは、実質的に平行であり得て、反射性を有するように少なくとも部分的にコーティングされ得る2つの対向する面を有していてもよい。好適なコーティングは、金属コーティング、誘電体コーティングまたは他の反射層を含んでいてもよい。遅延装置内の光路は、
入射角および幾何光学、ならびに
材料からなるブロック内に形成された導波構造、のうちの少なくとも1つによって規定されてもよい。
【0020】
特別な実施例では、遅延装置は循環光導波管構成を備えていてもよい。
他の実施例では、遅延装置は、使用すべき光を透過する材料からなる本体を備える。この本体は、互いに対して90°とは異なる角度をなすファセットを含む複数の平面ファセットを有する。ファセットのうちの少なくとも2つは、(反射コーティングを有することによって、および/または、内部反射の角度を超えるほど十分に浅い角度で当たる光によって)共振器内の光に対して少なくとも部分的に反射性があり、本体の内部からファセットに当たる光を反射して本体に戻す。この本体は、共振器における光路が非反射性の入口および出口端部ファセット(入口と出口との区別はある程度任意であり、共振器では、光は入口ファセットおよび出口ファセットを通って入ったり出たりする)におけるそれぞれの端部ファセットに対して垂直であり、反射コーティングを少なくとも部分的に備えたファセットに対して垂直でないように設計され、配置される。
【0021】
好ましい実施例では、遅延装置は、遅延装置における少なくとも1つの反射、好ましくはすべての反射が、低角度で、たとえば50°を下回る角度または全内部反射のための最大角度を下回る角度でファセットに入射する光によって引起されるように設計される。この手段によって、反射コーティングについて理想的ではないコーティングによって引起される挿入損失が回避される。また、これらの実施例では、それぞれのファセットはまた、非常に反射性のコーティングを備えていてもよい。
【0022】
透過性材料からなる本体は、たとえば、ガラス(特に内部反射される光が低角度で当たる実施例でも好適な材料である)、シリカ、ポリマー、半導体化合物などでできていてもよい。
【0023】
たとえば、遅延装置本体は、第1のファセットと、第1のファセットに平行ではない第2のファセットとを有する概して菱形の形状を有する。遅延装置は、第1のファセットへの入射角が垂直であるように配置される。遅延装置における光路は、幾何光学によって規定される。遅延装置からの光路の出口ポイントに、第2のファセットまたは第1のファセットは、出て行くときに、出るときに通る面に対して光路が垂直であるように、角度が付いた部分を備える。
【0024】
さらなる実施例では、遅延装置は、遅延装置においてより長いビーム経路長を可能にするように異なる垂直な平面に規定された導波管を有する光導波管構成を備えていてもよい。このような光導波管構成は、異なるレベルでの光軸を有する光学的構成要素への結合も容易にする。
【0025】
遅延装置は、1つ以上の光方向性結合器を含んでいてもよい。このような方向性結合器は、遅延装置内の光を、共振器経路とモニタリング経路とに分割する、サンプル出力と基準出力とに分割する、および/またはさらには入力と画像化出力とに分割するために用いられてもよい。
【0026】
第1および/または第2の局面の実施例における波長選択器は、格子などの波長選択素子と協働する走査微小光学電気機械システム(Micro-Opto-Electro-Mechanical Systems)(MOEMS)ミラー(時にはMEMSミラーとも呼ばれる)を備えていてもよい。MOEMSミラーおよび格子の構成要素は、外部キャビティレーザのチューナブルな特徴を提供するように配置される。格子は、キャビティのための狭い範囲の波長を選択するためのフィルタとしての役割を果たす。MOEMSミラーは、狭い範囲の波長の中心波長を変化させることができるように格子への光の入射角を変化させるように走査される。代替的に、格子は、MOEMS走査装置の表面上に一体化できるであろう。
【0027】
MOEMS装置(ミラーまたは代案としてたとえばMOEMSプリズムも用いることができるであろう)は、全体的な大きさに如何なる負の影響も与えることなく、共通のベース上および光電子パッケージへの一体化に好適な寸法を有するという利点を特徴としている。
【0028】
また、いくつかの実施例では、一体化した掃引波長光源は、これも共通のベース上に配置されるモニタリングフォトダイオードなどのモニタも備える。このモニタは、共振器内を循環する光の代表的な部分が共振器から結合され、モニタ上に向けられるように配置される。モニタは、光源の電子制御の可能性を提供するように電気的フィードスルーによってモジュールの外部から接触可能な電子モニタ出力を備える。
【0029】
用途によっては有利であり得る本発明の第1および/または第2の局面の実施例では、利得装置は、共振器端部ミラーとして用いられる反射性の端部ファセットを有する。たとえば、部分的に透過的なレーザ出力結合ミラーは、利得装置の(部分的に)反射性の端部ファセットと置換えられてもよい。反射性の端部ファセットを有する半導体利得装置は、反射性の半導体光増幅器(R−SOA)に対応する。利得装置および出力結合ミラーとしてR−SOAを用いるという単純な手段によって、装置の効率を向上させることができる。これは、レーザ共振器では、共振器内を循環する光が利得装置に結合されるときに結合損失があるためである。共振器の内部に設置された利得装置の代わりにR−SOAを用いると、2回ではなく共振器内での往復毎に1回だけ光を利得装置に結合させなければならない。これは、キャビティ損失を実質的に低減でき、したがってパワー、同調速度、同調範囲、信号対雑音比および/または他の光学的パラメータの点で掃引波長光源を改良できる。
【0030】
ここで、本発明の第2の局面に注目して、第2の局面の実施例は、以下の構成のうちの1つに従って実現されてもよい:
第1の構成タイプでは、遅延装置は利得装置と波長選択器との間に位置決めされる;
第2の構成タイプでは、遅延装置は利得ブロックおよび波長選択器の一方の側に位置決めされる。
【0031】
いずれの場合にも、「側」とは共振器における光ビーム経路を指す。
第1の構成タイプの場合、用いられる利得ブロックは、(それ自体が共振器であってもよい)反射性の半導体光増幅器であってもよい。光学的放射は、R−SOAの部分的に反射性の(たとえば、3%〜80%)ファセットから遅延装置を通って延びる経路に沿って伝搬し、たとえばMEMsミラーによって格子上に反射される。R−SOAと格子との間の光路長は、共振器(キャビティ)の長さおよび波長掃引光源のコヒーレンス特性を規定する。外部キャビティレーザ光は、部分的に反射性の半導体光増幅器における光ファイバに結合される。代替的に、第1の構成の場合、用いられる利得ブロックは、(非反射性の、たとえば<0.5%)半導体光増幅器(SOA)であってもよく、別個の出力結合ミラーが設けられる。しかしながら、R−SOAを有する実施例はよりコンパクトである。
【0032】
第2の構成タイプの場合、用いられる利得ブロックは半導体光増幅器(SOA)であってもよい。この場合、光学的放射は、遅延装置上の反射コーティングからSOAを通って延びる経路に沿って伝搬し、また(たとえば)MEMSミラーによって格子上に反射される。遅延装置の反射コーティングと格子との間の光路長は、キャビティの長さおよび波長掃引光源のコヒーレンス特性を規定する。外部キャビティレーザ光は、遅延装置における光ファイバに結合される。代替的な実施例では、(SOAと比較して)遅延装置の他方の側の別個の出力結合ミラーがキャビティの端部を規定する。
【0033】
第2の構成の特別な実施例では、遅延装置は、光ファイバまたは複数の光ファイバに結合される出力を有する追加の干渉計を備える。
【0034】
第1および/または第2の局面の実施例では、光源は、その性能を調節および調整するために電子コントローラをさらに備えていてもよい。これは、たとえば電子構成要素を制御すること、ならびに/または、PC、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラもしくはFPGAなどの一般的なハードウェア上で実行されるソフトウェアおよび/またはファームウェアを制御することを含む制御装置を備えていてもよい。コントローラは、電気的フィードスルーなどの電気的接触手段によってベース上の構成要素に接続されるかまたは接続可能である。
【0035】
本発明はまた、光干渉断層装置であって、
本発明の第1および/または第2の局面に係る光源と、
光源と光学的に通信する干渉計と、
光源から生じる光部分をサンプルの選択された場所上に集束させ、上記場所およびサンプルが互いに対して動かされる走査を行なうことに好適な光学機器ユニットとを備え、
干渉計は、光源によって生成されてサンプルから戻った光の部分を、光源によって生成されて基準経路を経由して干渉計に戻った光の部分と組合せるように動作可能であり、
上記装置はさらに、
組合せられた光を干渉計から受けるように位置決めされた検出器ユニットを備える、装置に関する。
【0036】
ここでは、「干渉計」とは、2つの経路から来る光を再び組合せる干渉計の少なくとも一部を指す。他の物理的な定義は、照射時に光部分が放出されて戻されるサンプル、反射ミラーおよび検出器を含む、光路を構成するすべての素子が干渉計に属していることを要求するが、これは本文で用いられる定義ではない。したがって、以下では、2つの経路から来る光を再び組合わせる干渉計(または干渉計部分)は、時には「干渉計の部分」とも呼ばれる。
【0037】
上述のように、遅延装置が少なくとも1つの方向性結合器を含む光源の実施例がある。これらは、方向性結合器または方向性結合器のうちの1つが4つの導波管分岐部を備える実施例を含む:
共振器に結合された第1の分岐部;
2つの出力ファイバに結合された第2および第3の分岐部であって、第1の分岐部から来る光は、第2の分岐部と第3の分岐部とに分割される;および
(高感度フォトダイオードなどの)検出器に結合された第4の分岐部であって、第2および第3の分岐部から来る光部分は方向性結合器において干渉し、干渉する光部分のうちのいくらかは第4の分岐部に結合される(その他は再び第1の分岐部に結合され得る)。
【0038】
上述の種類の光干渉断層装置がこのような実施例に係る光源を備える場合、(方向性結合器によって形成される)干渉計の部分は、光源に一体化され、したがって任意に検出器である。そして、光学機器ユニットは、一体化した光源および検出器モジュールを単に備えていなければならないかもしれない。
【0039】
本発明はさらにまた、光干渉断層装置のための光干渉断層モジュールであって、
本発明の第1および/または第2の局面に係る光源を備え、
光源によって生成された光の特性を検知し、および/または、干渉計信号の測定を行なうように位置決めされ、備付けられたセンサ構成をさらに備える、モジュールを指す。
【0040】
実施例では、このモジュールは、光源に加えて、
光源と光学的に通信し、光源によって生成されサンプルから戻った光の部分を、光源によって生成され基準経路から戻った光の部分と組合せるように動作可能な干渉計の部分と、
組合せられた光を干渉計から受けるように位置決めされた(センサ構成であるまたはセンサ構成に属する)検出器ユニットと、を備えていてもよい。
【0041】
一体化した干渉計および検出器を有する上述の種類の実施例では、モジュールは一体化した光源である。他の実施例では、モジュールは、パッケージングされた光源に加えて、別個のものであるが場合によっては固定的に取付けられた干渉計および検出器を備えていてもよい。
【0042】
モジュールは、モジュールケーシングの外側に、センサ構成によって生成されたデータを評価するための分析器および/または評価器を含む電子機器ユニットをさらに備えていてもよい。
【0043】
本発明の如何なる局面にも係る光源は、掃引が線形またはおよそ線形であることを保証するための手段をさらに組入れてもよい。共振器では、可動部が、調子を合わせて線形である電気信号によって単に駆動される場合、または、たとえば正弦波的に振動するようにクロックのような信号によって駆動される共振MEMS構造である場合、しばしば出力放射の非線形の周波数依存性が結果として生じることになる。しかしながら、OCTの応用例では、周波数領域での(k−空間での)経時的な線形掃引が有利である。組入れられた手段は、以下のもののうちの1つ以上を含んでいてもよい:
(i) 周波数領域においてこのような線形掃引を提供するために、(MEMSミラーなどの)波長選択器の可動部は特徴的な傾斜パターンで駆動される;
(ii) 光ビームが掃引している範囲にわたってピッチ(格子定数)が一定でない(波長選択器が回折格子を備える実施例における)波長選択器の回折格子。一定でないピッチ、すなわち一種の特別な「チャープ」は、調子を合わせたより線形の周波数掃引が達成されるように選択される;
(iii) 格子への入射角は、光源の可動部(同調素子、たとえばミラー)と格子との間の光学的構成要素によって変更される。このような追加の光学的構成要素は、やはり、経時的に掃引特性を変化させ、掃引特性を周波数領域においてより線形にするであろう。
【0044】
本発明の第3の局面によれば、光モジュールであって、
たとえば本発明の第1および/または第2の局面に係る波長掃引レーザ光源と、
光源によって出力された光の波長および/または周波数の大きさを発するように動作可能であり、位置決めされた波長計とを備え、上記波長計は、
光源によって生成された一次ビームのタッピングされたビーム部分を主要ビーム経路とは別個の経路上に向けることができるビームタップと、
タッピングされたビーム部分がフィルタに当たるように配置された、波長依存性の透過特性を有するフィルタ装置と、
フィルタ装置を透過したタッピングされたビーム部分の一部の強度を検出するように配置された第1の波長計検出器と、
フィルタ装置を透過しなかったタッピングされたビーム部分の一部の強度を検出するように配置された第2の波長計検出器と、を備える、モジュールが提供される。
【0045】
そして、電子機器ユニットは、量(IT−IR)/(IT+IR)を計算するように構成されてもよく、そこから公知のまたは最初に測定されたフィルタ特性を前提として、波長または関連の量が計算されてもよい。
【0046】
フィルタ装置は、光源出力波長が掃引する光源波長範囲において、フィルタ特性が顕著な波長依存性を有するように選択される。好ましくは、光源波長範囲では、フィルタ透過特性は、波長の厳密に単調な関数である。そして、波長範囲の最低波長での透過と波長範囲の最高範囲での透過との差はできる限り高いことが好ましい。フィルタは、ハイパスフィルタであってもよく、またはローパスフィルタであってもよい。しかしながら、好ましい実施例では、フィルタはバンドパスフィルタであり、その通過帯域は、波長範囲がフィルタ透過特性の傾斜部分にあるように波長範囲に対してオフセットされる。たとえば波長掃引光源OCTに用いられる波長範囲内で急な特性を有するバンドパスフィルタが利用可能である。
【0047】
SS−OCTシステムの先行技術では、周波数領域(k−空間)において周期的な透過反応または反射反応を有する光学フィルタ、たとえばマッハ・ツェンダー干渉計またはファブリ・ペローフィルタを用いて、このような周期的な光学フィルタの自由スペクトル範囲と同一の一定量だけ波長掃引光源が周波数を変化させるたびに極大またはピークを示す信号である光学的k−クロックを生成する。この光学的k−クロック信号は、光検出器によって検出され、電気的なk−クロック信号に変換され、この電気的なk−クロック信号は次いで、たとえば干渉計から受取ったOCT信号のサンプリングを担当するSS−OCTシステムの他のクロック信号と同期させられる。
【0048】
しかしながら、たとえばマイケルソンまたはフィゾー干渉計の原理に基づく先行技術の波長計とは対照的に、本発明の第3の局面に係る提案されている波長計は、単純であり、堅固であり、可動部を有しておらず、出力信号の分析が容易である。
【0049】
また、この波長計からの信号は、波長掃引レーザの光出力パワーから独立しており、したがって、波長または周波数の真の大きさである。
【0050】
先行技術のOCTモジュールのk−クロックとは対照的に、相対的な大きさだけでなく、波長の絶対値の大きさが測定される。さらに、波長値の測定は、いつでも、すなわち別個のクロックによって設定された如何なるサンプリングレートでもなされることができる。したがって、信号の測定をサンプリングするために用いられるクロック(システムクロック)、たとえば測定すべきOCT干渉信号の強度Iまたはこのようなシステムクロックと調子を合わせた他のクロックを用いることができる。装置を同期させることは、k−クロック自体の信号ピークが同期信号の働きをしなければならなかった先行技術のアプローチよりもはるかに容易である。波長計が必要な信号と同期してサンプリングされる場合、(必要な)強度データおよび必要な強度データが生成された波長のデータ対が直接得られる。したがって、好ましい実施例によれば、モジュールの電子機器ユニットは、第1および第2の波長計検出器信号のサンプリングを起動するように動作可能なクロックをさらに備える。このクロックはさらに、必要な強度信号のサンプリングを起動するように動作可能であってもよい。
【0051】
レーザを安定させるための波長選択フィルタを用いることが知られている。しかしながら、本発明の第3の局面の実施例は、信号と同期してサンプリング可能な波長計の構成要素としてこのようなフィルタを用いることを提案することによって、他の方向に行っている。
【0052】
本発明の第1、第2および/または第3の局面に係る光モジュールの実施例は、以下のもののうちの1つまたは組合せをさらに任意に備えていてもよい:
DC信号オフセット補償:このようなDC信号オフセット補償は、ヘテロダイン平衡検出の原理に基づいていてもよい。DC信号オフセット補償は、たとえば(生成された放射強度が何らかの波長依存性を有する場合)掃引周波数とともに周期的に生じ得るまたは温度変化などの変化するパラメータに対する反応としてゆっくりと生じ得る一次光源強度変化の効果を無くし得る。たとえば、ビームスプリッタ/コンバイナの2つの出力が用いられ、2つの検出器に向けられてもよく、これらの検出器で測定された強度を互いに引算する。2つの検出器において干渉信号が180°位相がずれて生じるので、2つの信号を引算することはヘテロダイン干渉信号を加えるが、過剰な雑音を取去る;
一次ビームをサンプルアームと基準アームとに分割し、サンプルアームおよび基準アームから戻ってくる光部分を組合せ、組合せられた干渉する光部分を必要信号強度検出器(この検出器は好ましくは光モジュールの素子でもある)上に向けるために用いられるOCT装置(OCT干渉計)のビームスプリッタ/コンバイナ。任意に、光モジュールは、基準光ビームをビームスプリッタ/コンバイナから規定の光路長を有する光路に沿ってビームスプリッタ/コンバイナに戻るように向ける光偏向手段および/または光案内手段を有する基準アームをさらに備えていてもよい。これによって、光モジュールは、「OCTエンジン」、すなわち、(OCT干渉計サンプルアームの)サンプル放射を出力し、干渉させてサンプルアームにおけるサンプルから戻ってくる放射を分析するための手段を備える装置になり得る;
たとえば同等のまたはほぼ同等の強度のビームスプリッタ。そして、モジュールは、2つのビームスプリッタ/コンバイナと、(DCオフセット補償を任意に含んでいてもよい)2つの対応する検出手段と、任意に2つの基準アームと、対応する光学的な(および電気的な)出力/入力とをさらに備えていてもよい。これによって、光モジュールは、単一の光源によって2つのOCT測定を同時に行なうことに好適である。
【0053】
これらの任意の特徴はすべて、コンパクトな光モジュールのパッケージに、およびモジュールハウジング内に、好ましくは共通の台の上に、共通の熱電冷却器と熱的に接触させて組入れられてもよい。
【0054】
本文中の本発明の局面に係る光源および光モジュールについては主にOCTの重要な応用例を参照しながら説明するが、他の用途でも有利に用いることができる。このような他の用途は、たとえばファイバ・ブラッグ質問器などを含む。
【0055】
以下では、図面を参照して本発明の実施例および局面について説明する。図面はすべて概略的であり、一定の比例に応じておらず、同一の参照番号は同一または類似の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】R−SOAを用いた光学的構成の絵画図を示す。
図2】光モジュールにおける光学的構成のアセンブリの絵画図を示す。
図3】モニタダイオードが再位置決めされた光学的構成の絵画図である。
図4】SOAを用いた光学的構成の絵画図を示す。
図5】光モジュールにおけるSOAを有する光学的構成のアセンブリの絵画図を示す。
図6】一体化した干渉計を有するSOAを用いた光学的構成の絵画図を示す。
図7】光モジュールにおける干渉計を有する光学的構成の絵画図を示す。
図8】遅延装置の実施例を示す。
図9a】遅延装置の実施例を示す。
図9b】遅延装置の実施例を示す。
図9c】遅延装置の実施例を示す。
図10】遅延装置を持たない本発明の第1の局面に係る光源の実施例を示す。
図11】本発明の第3の局面に係る波長計を有する光モジュールを示す。
図12】波長依存性のフィルタ透過特性の概略図を示す。
図13】第3の局面に係る光モジュールのスキームを示す。
図14】DCオフセット補償を有する光モジュールを示す。
図15】基準アームを有する光モジュールを示す。
図16】デュアルビームOCTモジュールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
好ましい実施例の説明
本発明の第1の実施例は、図1に示される光学的構成である。この実施例では、光学的構成は、対向するファセットに反射コーティング101を有する光遅延装置100と、光利得ブロック102と、走査MEMSミラー103と、回折格子104と、モニタフォトダイオード105と、利得ブロック結合レンズ106と、ビームの視準を合わせ得るまたはビームを結像し得るレンズ107とを備える。
【0058】
この実施例および他の図示されている実施例では、共振器の構成は、回折格子が共振器ミラーの役割を果たすいわゆるリトロー構成に基づいている。しかしながら、すべての実施例に関係する本発明は、このような構成に限定されるものではない。当業者は、外部キャビティダイオードレーザのためのチューナブル共振器の他の共振器の構成を知っている。他の公知の構成は、回折された放射が向けられる、(可動装置であってもよい)別個のミラーが端部ミラーとして用いられるいわゆるリットマン・メトカーフ構成である。当業者は、格子が共振器端部ミラーではない態様で共振器構成要素を再配置する方法を知っている。
【0059】
この実施例では、利得ブロックは、好ましくは、40nm〜200nmという広い利得帯域幅を有する反射性半導体光増幅器(R−SOA)である。R−SOAは、光遅延装置から離れた方の面110上に反射コーティングを有する。光遅延装置100は、好ましくは、その平行な面上にミラー層101を堆積させた、シリカまたはガラス、ポリマーまたは半導体化合物からなるブロックを用いて作られる。ミラー層は、好ましくは、平行な面の、光ビームを遅延させる部分のみがコーティングされるように規定される。平行な面の他の部分は、反射防止コーティングでコーティングされてもよい。図1には、光路での反射が8回であり、その結果、遅延装置のパスが9回である遅延装置が示されている。代替的に、遅延装置は、チューナブルレーザのキャビティ長での必要性に応じて如何なる回数の反射も提供するように用いられることができる。光遅延装置における光路は、ブロックに形成された導波管によって任意に規定されてもよい。このような導波管は(これは遅延装置ブロックに導波管を有するすべての実施例に関係する)、たとえばフェムト秒パルスレーザによってシリカに直接書込まれたかもしれない。
【0060】
本発明の別の実施例では、光遅延装置は、ニオブ酸リチウムまたはその他の好適な材料でできていてもよい。
【0061】
この光学的構成は、上述の第1のタイプのチューナブル外部キャビティレーザを構成する。利得ブロック102で生成された光は、利得ブロック102上の反射コーティング110および格子104によって規定される共振器において振動する(外部キャビティレーザのキャビティは、ここでは出力結合ミラーとして機能するR−SOA110の前面ファセットと回折格子104との間に延在している)。レンズ107は遅延装置100と(MEMSミラー103および格子104を備える)波長選択器との間で光の視準を合わせるために用いられるのに対して、利得ブロック結合レンズは利得ブロックと光遅延装置との間で結像させる。代替的に、レンズ107は、レンズ107、MEMSミラー103および回折格子104の間で画像の大きさが変化するようにMEMSミラー上に光を結像させるために用いられる。より一般的には、(レンズに加えてまたはレンズの代わりに、適切に成形された反射器を含んでいてもよい)結像および/または視準合わせ手段の任意の好適な構成、ならびに、必要ならば放射方向付け手段が用いられてもよい。レンズの代わりに、光を利得ブロックに直接結合するために遅延装置によって光導波管テーパが設けられてもよい。
【0062】
この実施例(および本明細書に記載される他の実施例)で用いられるMEMSミラーは、好ましくは、20kHz〜400kHzの周波数で走査し、共振または線形傾斜波形によって駆動される。
【0063】
モニタダイオードは、格子によって共振器に戻るように向けられる光部分とは異なる光部分がぶつかる位置に配置される。たとえば、マイナス一次回折次数が共振器に戻るように向けられるときには、一次回折次数またはゼロ次回折次数がモニタダイオード105上に向けられてもよい。
【0064】
レーザからの光は、結合レンズ108によって光ファイバ109に結合される。
図2は、モジュールにおける外部チューナブルレーザのアセンブリの図である。好ましくは、R−SOA102は第1のサブマウント111上に実装され、ファイバ109は第2のサブマウント112上に実装される。サブマウント111も112も、他の光学的構成要素とともに、(ベースの働きをする)キャリア113上に実装される。キャリアは、それ自体が光モジュールケーシング115に実装される熱電冷却器(TEC)114上に実装されてもよい。光モジュールケーシングは、図2に示されるようにバタフライパッケージケーシングであってもよい。本発明の別の実施例では、光モジュールは、DIL(デュアル・イン・ライン)パッケージまたは他の光モジュールであってもよい。ファイバ109は、フェルール117でモジュールフィードスルー116に固定されてもよい。代替的に、ファイバはフィードスルーに直接固定されてもよい。モジュールは、モジュール内の装置を供給し、制御し、タッピングするための複数の電気的フィードスルー119も備える。
【0065】
本発明の別の実施例では、キャリア113は2つのプレートでできていてもよく、それによって、小さい方のプレートが大きい方のプレートの上に取付けられて、異なるレベルでの光学的構成要素のベースの実装を容易にし、それらの光軸を整列させる。代替的に、異なる実装レベルがその表面に機械加工されたキャリアが用いられてもよい。
【0066】
図3は本発明の別の実施例を示し、この実施例は、これも第1のタイプの構成に対応するという点で図1の実施例に類似している。図1における機能と同じ機能を有する要素については、再びここで説明することはしない。図3の実施例では、モニタフォトダイオード105は、遅延装置の、R−SOA102と同じ側に位置決めされている。この実施例では、遅延装置118は、1つの界面において光ビームを部分的に反射し部分的に透過して、その結果、これをモニタダイオード105上に結像できるように作られ、位置決めされている。この実施例では、光ビームが通過してモニタダイオードに至る遅延装置の面の部分120において、部分的に反射性のコーティングが用いられてもよい。
【0067】
外部キャビティレーザの、第2のタイプに対応する別の構成が図4および図5に示される。この実施例は、利得ブロック121の一方の側に位置決めされた異なる遅延装置122、回折格子104およびMEMSミラー103を提供する。この場合、利得ブロック121は、その両方のファセット上に反射防止コーティングを有する半導体光増幅器(SOA)である。
【0068】
この構成の光キャビティは、反射器101におけるポイントAから格子104まで延在している(したがって、8回遅延装置を通る)。この実施例では、遅延装置は、ポイントAにおいて、ならびに、たとえば光ファイバ109およびモニタフォトダイオード105への遅延装置122の出力においても、光が垂直に当たるように好ましくは導波管を用いて作られる。
【0069】
ポイントAにおいて反射した光部分は、共振器に戻るように向けられる部分と出力の方に向けられる部分とに分割される。図示されている実施例では、この出力部分はさらに、ファイバ109に結合される部分とモニタダイオードに当たるようにされる部分とに分割される。
【0070】
ここで、それぞれの部分への分割は、遅延装置122に形成された第1の方向性結合器131(導波管結合器)および第2の方向性結合器132によって達成される。代替的な構成では、この分割する機能は、部分的に透過的なミラー、たとえば放射の一部を反射して共振器に戻し、他の部分と結合させる部分的に透過的なミラーによっても達成できるであろう。その場合、モニタダイオードは図1または図3のように設置されてもよい。
【0071】
さらに、光を利得ブロックに直接結合するために光導波管テーパを有する遅延装置を提供できる。光を光ファイバに直接結合するために光導波管テーパを有する遅延装置を提供することもできる。
【0072】
遅延装置におけるビーム経路の一部のみまたは遅延装置におけるビーム経路全体のために導波管を用いることができる。
【0073】
さらに、たとえば図1または図3に係る第1のタイプの構成においても、ビーム経路の少なくとも一部が導波管によって規定される遅延装置を提供できる。
【0074】
またさらに、遅延装置が導波管を備えておらず、反射して共振器に戻った光と出力とに分割することが、部分的に透過的なミラーなどの他の手段によって達成される第2のタイプの構成を提供することもできるであろう。
【0075】
図4に示される構成の利点は、フォトダイオードによって測定される光パワーが外部キャビティレーザの出力パワーに正比例することである。
【0076】
図6および図7は、光遅延装置に追加の光導波管を設けた本発明の別の実施例を示す。ここで、遅延装置123は、外部キャビティレーザに光学的に結合され、そこから結合された光によって給電される第1の導波管分岐部133.1(入力導波管)と、2本の光ファイバ124に光学的に結合された第2および第3の導波管分岐部133.2、133.3(出力導波管)と、基準フォトダイオード125に繋がる第4の導波管分岐部133.4とを有する第3の方向性結合器133を含む。
【0077】
この実施例では、第3の方向性結合器133は2つの機能を有する。第1に、第3の方向性結合器133は、入力分岐部133.1に沿ってレーザから来る光を2つの出力導波管分岐部133.2、133.3に、したがって、たとえばそれぞれOCT装置のサンプルアームと基準アームとに繋がる2つの光ファイバ124に分割する。第2に、第3の方向性結合器133は、それぞれ第2および第3の導波管分岐部を経由して2つのファイバ124から戻ってくる光を干渉させる。したがって、第3の方向性結合器133は干渉計の役割を果たす。光ファイバは波長掃引光源OCTシステムの一部を構成するこの干渉計のサンプルアームおよび基準アームの役割を果たし、基準フォトダイオード125はたとえばOCTシステムの検出装置の役割を果たす。
【0078】
このサブシステムは、図7に示されるように1つのフィードスルー116を有する光モジュールに一体化されてもよい。代替的に、光モジュールは複数の光学的フィードスルーを含むことができるであろう。
【0079】
図8図9a、図9bおよび図9cには、遅延器を備えるマルチモード波長掃引レーザ光源の任意の実施例で用いられ得る光遅延器の変形例が示される。図8図9a、図9bおよび図9cに見られるように、遅延器100、118、122、123は、互いに対して鋭角または鈍角をなすファセット(90°とは異なる角度をなす平行でないファセット)を含む平面ファセットを有する。これらのファセットは、ビームが直角をなして遅延器に当たり、次いで(遅延器本体を通る明確に規定されたいくつかの移動(パス)を有し、したがって明確に規定された長さを有する)明確に規定された経路上で偏向され、次いで再び直角をなして遅延器を出て出口ファセットに至ることができるように互いに配置されており、いくつかの実施例では反射コーティング101を部分的に備えている。
【0080】
図9bおよび図9cは、マルチモード波長掃引レーザ光源の任意の実施例で用いられ得る光遅延器の変形例を示す。図9bおよび図9cからわかるように、これらの遅延器100、118、122、123は、角度が付いた多数のファセット101aを備えており、これらのファセット101aは、ビームが直角をなして遅延器に当たり、次いで角度が付いた各ファセットにおいて低角度でそのビームを反射させることができるように互いに配置されている。好ましくは、これらのファセットは、入射ビームを完全に内部で反射させる臨界角を超える角度で配置される。ファセット101aは、高反射率コーティングを有するようにまたは高反射率コーティングを持たないように規定されてもよい。図9cに示されている遅延器は、ビームが毎回好ましくは直角をなして二度以上遅延器に入って遅延器を出るように、外部反射器101bとともに用いられてもよい。
【0081】
鋭角をなすファセットを含む6つ以上の平面ファセットを備えた本体を有するという概念が、幾何光学を応用することによって、遅延器の形状のさらなる変形例を複数個生み出し、これらの変形例はすべて、本体を通る明確に規定されたいくつかの移動と組合さって適正な入口角度および出口角度を保証することを当業者は認識する。
【0082】
図10は、利得装置121と、波長選択器103、104と、光再方向付け器104;106、107とを光モジュールケーシング内に備えるマルチモード外部キャビティ波長掃引レーザ光源の変形例を示す。前に記載した実施例とは対照的に、共振器は光遅延器を備えておらず、複数のモジュール長に対応する十分なキャビティ長を有するように折曲げられている。
【0083】
図示されている実施例では、利得装置121はSOAであり、したがってファセットがいずれも光を反射して装置に戻すことをしない利得ブロックである。たとえば、ファセットはビーム方向に対して垂直でない角度をなしていてもよく、および/または、ファセットはARコーティングなどを備えていてもよい。
【0084】
しかしながら、たとえば出力結合ミラー140の位置にRSOA利得素子を有する、図10に示される種類の遅延器を持たない光源を提供することもできるであろう。その利点は、光遅延器を有する装置の利点と同じであり、結合損失を減少させることであろう。
【0085】
図11図12および図13を参照して、本発明の第3の局面に係る波長掃引光源の波長計の概念について説明する。波長掃引光源を有する測定装置によって得られたデータを分析する際、ほとんどの場合、どのデータポイントが、波長掃引光源によって生成された光のどの波長に対応するかを知ることが重要である。したがって、先行技術の光干渉断層(OCT)装置および類似の装置では、データサンプリングのためにいわゆるk−クロックが用いられる。この中の「k」という文字は、波長の逆数に比例し、したがって所与の媒体では周波数に比例する波数kを指すために用いられる。先行技術の装置のk−クロックはファブリ・ペローフィルタなどを備え、このファブリ・ペローフィルタなどを通して、生成された光の一部が向けられる。フィルタを透過した信号は、たとえば25GHzの規則的な周波数距離でピークパターンを有する周波数への特徴的な依存性を有することになる。そして、このピークは実信号のサンプリングを起動するために用いられる。この方法には2つの不利な点がある。第1に、絶対波長位置が分からず、相対的なピーク対ピーク距離のみ分かることである。第2に、ピーク対ピーク周波数距離、すなわちファブリ・ペローフィルタの自由スペクトル範囲が固定されることである。しかしながら、通常非線形の出力周波数と時間との関係を前提として、サンプリングは不規則な時間間隔で行なわれ、これは重要な同期の問題を引起す。
【0086】
図11は、本発明の第3の局面に係る装置の波長計を示す。ブロック201は波長掃引光源を示し、本発明の前に記載した局面のうちの1つまたは両方に係る光源であってもよい。この図および後続の図ではさらなる素子とは別個のブロックとして光源201を示しているが、実際には、さらなる素子も、光源を備えるパッケージに一体化でき、さらなる素子は光源の素子の間(であるが、もちろん、光源の共振器内のビーム経路を遮らない)にまたは別個の位置に物理的に配置できる。ビームスプリッタ202によって、ビームの一部、たとえばビームのうち1%〜10%が「タッピングされ」、すなわち主要なビームから離れて波長計上に向けられる。
【0087】
波長計は、タッピングされたビーム部分が当たるフィルタ装置204を備える。図示されている実施例ではフィルタはバンドパスフィルタであり、その通過帯域は、波長範囲がフィルタ透過特性の傾斜部分にあるように波長範囲に対してオフセットされる。
【0088】
図12は、相対的なフィルタ透過パワー(強度透過係数)の波長への概略的な依存性を示す。縦線は、波長範囲の上限および下限を概略的に示している。
【0089】
図11を参照して、フィルタ装置204に加えて、波長計は第1の光強度検出器206と、第2の光強度検出器207とを備える。第1の光強度検出器は、フィルタを透過するタッピングされたビームの光を検出するように構成され、配置されている。第2の光強度検出器207は、フィルタ204によって透過されず、その結果フィルタ204によって反射される光部分を検出するように構成され、配置されている。
【0090】
透過強度の波長への依存性のために、第1の光強度検出器206によって測定される強度ITと第2の光強度検出器207によって測定される強度IRとの差である量IT−IRが、波長の大きさである。好ましくは、公知のフィルタ特性を用いて波長を決定するための入力量として、正規化された値(IT−IR)/(IT+IR)が用いられる。フィルタ特性は、当初の測定に基づいて、たとえば製造者によって装置の電子機器に保存することができる。量(IT−IR)/(IT+IR)自体を波長の大きさとして用いることもできるであろう。
【0091】
このアプローチのために、相対的な大きさだけでなく波長の絶対値が分かる。さらに、波長値の測定は、いつでも、すなわち別個のクロックによって設定された如何なるサンプリングレートでもなされることができる。したがって、システムクロックまたはこのようなシステムクロックと調子を合わせた他のクロックを用いることができる。装置を同期させることは、k−クロック自体の信号ピークが同期信号の働きをしなければならなかった先行技術のアプローチよりもはるかに容易である。
【0092】
図13は、対応する測定システムを非常に概略的に示す。システムクロック211は、第1および第2の波長計強度検出器206、207ならびに必要信号強度検出器221の測定値を読出すためのトリガ信号を提供する。システム電子機器は、波長計強度検出器信号から波長を計算し、強度/波長データ対を保存する。これらの値は、当該技術分野において公知であるように、表示されてもよく、および/または、さらなる計算で用いられてもよい。現実には、信号を読出すために、トリガ信号によって起動されるアナログ/デジタル変換器が検出器毎に用いられてもよい。また、さらなる信号をサンプリングするためにもクロックトリガ信号が用いられてもよく、および/または、たとえば以下に記載される実施例のように、必要な信号が複数の検出器信号から得られてもよい。
【0093】
図14は、光源強度または測定パラメータの変動によって生じ得るDCオフセットを補償するために用いられ得る測定原理を示す。この機構は、「平衡検出」の原理に基づいている。図示されている実施例では、循環器231を用いて、ビームスプリッタ/コンバイナ224の第2の出力として(循環器のポートIIに)戻ってくる光部分を平衡検出器の方に向け、そこで必要な信号Sとその光部分を組合せて干渉させる。図示されている実施例では、必要な信号Sは、サンプル経路samから戻ってくる信号および基準経路refから戻ってくる信号を干渉させることによって得られるOCT信号である。図示されている実施例では、ビームスプリッタ/コンバイナ224は、主要なビームをサンプル経路と基準経路とに分割し、それらをともに組合せて干渉させるために用いられる。偏向器235は、信号ビームをコンバイナ233および2つの強度検出器221.1、221.2上に向けるために用いられる。2つの検出器221.1、221.2で測定された強度差が、平衡信号として用いられる。循環器は、ポートIに入る光をポートIIに向け、ポートIIに入る光をポートIIIに向け、ポートIIIから来る光をポートIに向けるように動作可能である。循環器は、ビームスプリッタ/コンバイナの第2の出力を平衡検出機構に向けることに役立つことに加えて、光がレーザ光源に戻ることを防ぐ光アイソレータの働きもする。
【0094】
図14では、図11図13を参照して説明した種類の任意の波長計208が破線によって示されている。
【0095】
光源201と、(もしあれば)波長計208の光学的構成要素、すなわちビームスプリッタ/コンバイナおよび強度検出器と、ポテンシャルビーム方向付け手段とを備える、図14に示される光モジュールは、光モジュール構成要素が配置されるモジュールケーシングを備えていてもよく、モジュールケーシングは、図2図5図7に示される装置のように光学的フィードスルーおよび電気的フィードスルーを備える。光モジュール構成要素は、共通のモジュール熱電冷却器と接触させて共通の台の上に配置されてもよい。図15は、OCT装置のための光モジュールを示す。光モジュールは、好ましくは共通の冷却器上にフィードスルーおよびおそらくは共通の台を有する単一のモジュールハウジング内に、光源201に加えて、波長計および強度検出器(図示されている実施例では2つの強度検出器)および前に記載したDCオフセット補償機構の(任意の)光学的構成要素を備える。光モジュールは、OCTの基準アーム251も備える。基準アームは、基準光ビームをビームスプリッタ/コンバイナ224から規定された光路長を有する光路に沿ってビームスプリッタ/コンバイナ224に戻るように向ける光偏向手段および/または光案内手段252、253を備える。図15の実施例、および、以下にさらに記載するが一体化した基準アームを有するデュアルビーム波長掃引光源光モジュールの対応する変形例は、OCT装置全体が小さい場合、たとえば測定される物体までの距離が小さい手持ち式の装置の場合に、そのコンパクトさのために有利である。
【0096】
図16は、OCT装置のためのデュアルビーム波長掃引光源光モジュールをさらに示す。デュアルビーム波長掃引光源光モジュールは、好ましくは前の実施例に記載した種類の単一の波長掃引レーザ光源201を備える。光モジュールは、上述の種類の波長計202、208をさらに備えていてもよい。好ましくは、たとえば約50:50の比率で一次ビームを2つの部分的なビームに分割するために、波長計の下流に(すなわち、一次ビーム経路における波長計の後に配置して)ビームスプリッタ251が位置決めされている。2つの部分的なビームは、2つの別個のOCT装置分岐部の個々のOCT測定に用いられる。たとえば、2つの分岐部は、それぞれ左目および右目のOCT画像を作るために用いられてもよい。そして、OCT装置は一種の双眼鏡のような装置として作られてもよい。
【0097】
部分的なビームは各々、ビームスプリッタ/コンバイナ224.1、224.2上に向けられ、そこから、部分的なビーム部分はそれぞれサンプルアームおよび基準アーム上に向けられる。基準アームは、光モジュール内にあってもよく、または図示されているように、光モジュールの外側の部分を構成していてもよい。ビームスプリッタ/コンバイナ224.1、224.2に戻ってくるそれぞれのサンプルアームおよび基準アームの光は、干渉させられ、次いで、両方の分岐部において個々に強度が測定される。任意に、これらの分岐部は各々、図14を参照して説明した強度基準機構を備えていてもよい。その目的のために、分岐部毎に、光源201によって生成された光の一部がタッピングされ(ごく一部を離れる方に向けるためのビーム分割タップは、図16では、231.1および232.2によって示されている)、各分岐部の強度検出手段は2つの強度検出器221.1、221.2;221.3、221.4を備えている。一次ビームからの光部分のタッピングは、(示されているように)ビームスプリッタの上流であってもよく、または各分岐部においてビームスプリッタの下流であってもよい。
【0098】
図16では、参照番号250は検出スキームを概略的に示している。また、図16では、他のすべての実施例のように、検出は、含まれている平衡ヘテロダイン検出スキームに基づいていてもよい。この目的のために、ビームスプリッタ251とビームスプリッタ/コンバイナ224.1、224.2の各々との間にたとえば光循環器が存在していてもよい。
【0099】
また、図16の実施例では、(ちょうど前に記載した実施例のように光学的フィードスルーおよび電気的フィードスルーを有する)ケーシング241内にあるように示されている構成要素は、共通の台の上にあってもよく、共通の熱電冷却器と熱的に接触していてもよい。
【0100】
波長計のためのタップと強度基準のための少なくとも1つのタップとを両方備えるすべての実施例において、一次ビーム経路に対するタップの並びは、記載した実施例と比較して逆にされてもよい。
【0101】
すべての実施例において、(もしあれば)モニタおよび/または(もしあれば)検出器は、必ずしもフォトダイオードである必要はなく、光強度を検出するための他の好適な検出器であってもよい。
【0102】
図6および図14図16に示されている実施例などの)光モジュール内に干渉計の一部を一体化する実施例では、光アイソレータを設けることが有利であろう。このような実施例では、光アイソレータがなければ、サンプルアームおよび基準アームからの反射が波長掃引光源レーザに戻ってしまう可能性がある。平衡検出スキームを有する実施例の光循環器は、ポートIIに入射する光がポートIIIに透過されることを防ぐことによってこのような光アイソレータの働きをする。光循環器を持たない実施例では、またはそれに加えて、それらの反射のパワーレベルによっては、波長掃引光源レーザを保護するためにも光アイソレータを一体化することが望ましいであろう。光アイソレータは、たとえば光源201とビームスプリッタ/コンバイナ224との間に設置されるであろう。光アイソレータは、光循環器のように、ファラデー回転子の原理に基づいていてもよい。
【0103】
たとえばフォトニック光波回路PLCにおいて導波管技術を用いても、図11図16を参照して説明した光モジュールの機能を提供できるであろう。
【0104】
本発明の多くの実施例について本明細書で説明しているが、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく変更を行なうことができることを当業者は理解する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16