(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計測値が前記対象部位の容積であって、前記再計測演算部は、前記対象部位の容積の算出法をシンプソン法又はエリア/レングス法で前記多次元情報又は前記計測値を演算する請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
前記計測値が前記対象部位の長さであって、前記再計測演算部は、前記対象部位の長さを前記対象部位の直交断面の軸長によって前記多次元情報又は前記計測値を用いて演算する請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
前記再計測演算部は、複数の前記計測値と前記多次元情報を計算し、前記複数の計測値と多次元情報と前記医用画像を組にして前記画像表示部に表示させる請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
前記再計測演算部は、前記複数の多次元情報を計算し、前記複数の多次元情報と一の前記医用画像に重畳して前記画像表示部に表示させる請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
前記再計測演算部は、健常に相当する前記多次元情報を計算し、前記健常の多次元情報と前記医用画像を重畳して前記画像表示部に表示させる請求項1又は2記載の医用画像診断装置。
被検者の医用画像を画像表示部に表示するステップと、予め入力された前記医用画像の対象部位の多次元情報を用いて計測値を演算するステップと、前記計測値を表示するステップと、前記医用画像における一方の前記多次元情報又は前記計測値の数値を再入力するステップと、再入力された前記数値に基づき前記多次元情報又は前記計測値の他方を再演算するステップとを含むことを特徴とする医用画像の計測値再入力方法。
被検者の医用画像を画像表示部に表示するステップと、予め入力された前記医用画像の対象部位の多次元情報を用いて計測値を演算するステップと、前記計測値を表示するステップと、前記医用画像における一方の前記多次元情報又は前記計測値を再入力するステップと、前記再入力された前記多次元情報又は前記計測値の一方に基づき前記多次元情報又は前記計測値の他方を再演算するステップとを含み、前記多次元情報又は前記計測値を再入力するステップは、前記計測値の表示欄に入力し、前記多次元情報又は前記計測値の他方を再計測するステップは、前記多次元情報を演算することを特徴とする医用画像の計測
値再入力方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例について図面を用いて説明する。
(本発明の複数の実施例に共通する部分の説明)
図1は、本発明の医用画像診断装置の概略構成例を示すブロック図である。
【0018】
本発明に係る医用画像診断装置は、出力・表示部1、入力部2、計測演算部3、再計測演算部4、記憶部5及び制御部6を備えている。
【0019】
出力・表示部1は、被検者の対象部位を含む医用画像を表示・出力するものである。出力・表示部1は、医用画像の関連情報を表示・出力するものでもある。出力・表示部1での具体的な表示・出力対象は、医用画像の他、輪郭線及び計測値であったり、計測値の計測レポートであったりする。表示・出力対象は、ビデオプリンタへの出力、フィルムへの出力、又はネットワーク接続されたパーソナルコンピュータへ電子ファイルを出力したりする。
【0020】
入力部2は、検者が診断装置の各種操作を行うインターフェイスである。具体的には、入力部2は、各種操作のうちの出力・表示部1に表示された対象部位の位置を設定入力するものである。また、入力部2はキーボード、トラックボール、スイッチ、ダイヤル等の入力機器であり、生体組織の種類や特徴点を指定するために用いられる。また、入力部2は検者が対象部位の多次元情報を入力する多次元情報入力部の機能と、検者が多次元情報と前記医用画像を参照して前記多次元情報の多次元情報を再入力する多次元情報再入力部の機能を共用するために一体構造として説明する。また、入力部2は、多次元情報入力部と多次元情報再入力部が個別に機能するように別体でそれぞれ設けてもよい。
【0021】
計測演算部3は、予め検者が入力部2を用いて入力した対象部位を指す点、線、領域などの多次元情報を用いて対象部位の運動指標を演算する。対象部位の運動指標の演算の具体例については実施例1〜8で説明する。
【0022】
再計測演算部4は、検者が入力部2を用いて再入力のため再入力した対象部位の一部分を指す点、線、領域などの多次元情報を用いて対象部位の運動指標の多次元情報を演算する。
【0023】
記憶部5は、医用画像診断装置を構成する出力・表示部1、計測演算部3、再計測演算部4、記憶部5及び制御部6の各構成要素を入力部2への設定入力により動作させるためのプログラムが格納されている。記憶部5は、また画像データを記憶している。
制御部6は、医用画像診断装置を構成する出力・表示部1、計測演算部3、再計測演算部4、記憶部5及び制御部6の各構成要素を入力部2への設定入力により動作させる医用画像診断装置全体の各構成要素を制御する。制御部6には、例えば、中央演算装置が用いられる。
【0024】
システムバス7は、接続されるハードウエア間で相互にデータ通信を行うデータ転送バスである。システムバス7には、出力・表示部1、入力部2、計測演算部3、再計測演算部4、記憶部5及び制御部6が接続されている。
【0025】
また、
図1では、医用画像診断装置の具体例として、超音波診断装置100を例に挙げて説明する。
【0026】
超音波診断装置100は、さらに超音波探触子9、超音波送受信部10及び超音波画像生成部11を備えている。
【0027】
超音波探触子9は、被検者8の対象部位の体表に当接させ、前記対象部位に超音波信号を送信すると共に、前記超音波信号の反射波である反射エコー信号を受信する。超音波探触子9は複数チャンネルの振動子素子を一次元あるいは二次元配列して形成される。また、超音波探触子9は振動子素子の材質で分類すると、ピエゾ圧電素子、Capacitive Macromachined Ultrasonic Transducer(CMUT)などがある。
【0028】
超音波送受信部10は超音波探触子9に超音波信号を送信させるための駆動信号を供給すると共に、超音波探触子9を用いて反射エコー信号を受信し、受信した反射エコー信号を信号処理する。反射エコー信号の信号処理の具体例は反射エコー信号の増幅と整相処理である。
【0029】
超音波画像生成部11は、超音波送受信部10によって信号処理された反射エコー信号を超音波画像に走査変換し、該超音波画像を出力・表示部1に出力する。
【0030】
また、超音波送受信部10と超音波画像生成部11は、システムバス7を介して制御部6に接続し、制御部6の制御を受ける。
【0031】
次に、再計測演算部4における対象部位の運動指標の具体例を説明する。
対象部位の運動指標は、例えば対象部位が心臓であれば、式(1)左室の駆出率値(Ejection Fraction Value、「EF値」と略記する)がある。
EF値は心臓のポンプ機能の働きを表す指標である。また、EF値がおよそ50%以上を正常範囲とし、心臓の機能が低下するに従って、EF値が低下する。
【0032】
心臓の拡張時及び収縮時の容積は、次の算出法で制御部6によって計算される。
容積の計算方法はシンプソン法と呼ばれる計算法である。シンプソン法とは、例えば、超音波画像を用いた心室の容積を演算する場合、心室の容積計算領域を複数積み上げられた円柱形の小円柱に分割して、各小円柱の体積の総和で心室の容積を演算する計算法であり、詳細は
特許文献2に開示されている。また、シンプソン法の他には、実施例2で説明するエリア/レングス法など公知の容積の計算法がある。
【0033】
(本発明の主題)
本発明の主題は、被検者8の個体差によって臓器領域の計測値又は多次元情報を再入力するため、検者が入力部2を用いて出力・表示部1に表示された医用画像における一方の前記多次元情報又は前記計測値を再入力し、再計測演算部4が前記一方の再入力の結果に連動して前記多次元情報又は前記計測値の他方を再演算するものである。
【0034】
(本発明の複数の実施例の具体的な説明)
次に、実施例1〜8について説明する。
【実施例1】
【0035】
実施例1は、EF値の再入力に伴って心臓の左心室の輪郭線が再演算され、再演算された輪郭線の結果とともにEF値を表示する方法について、
図2のフローチャートに示した処理手順に従い、
図3の出力・表示部1の表示例を用いて説明する。
【0036】
図2は実施例1のフローチャート、
図3は実施例1の出力・表示部1の表示例を示す図である。
【0037】
最初に、制御部6は、出力・表示部1の表示画面上に、対象とする生体組織が描出された超音波画像を表示する(S101)。
【0038】
ここでは、
図3の表示画面301のように、左室容積計測およびEF計測を目的として、左室の拡張末期超音波画像302と収縮末期超音波画像303を並べて表示した例で説明する。
【0039】
次に、検者が入力部2に多次元情報(ここでは「輪郭線」)を設定する、あるいは制御部6が記憶部5に記憶される多次元情報自動設定プログラムによって自動的に輪郭線を設定してもよい(S102)。輪郭線の設定について図を用いて説明すれば、例えば、
図3のように対象部位を心臓とし、心臓に対して、左室内膜の拡張末期の輪郭線304、収縮末期の輪郭線305を設定する。
【0040】
次に、制御部6は、前記設定された輪郭線304、305の長さや線間の距離を計測演算部3に次の計算を行わせる(S103)。
【0041】
輪郭線304や305でなく、多次元情報が点である場合は、点の座標や点間の距離を算出してもよく、多次元情報が領域である場合は、領域の面積や容積を算出してもよい。面積算出の方法としては、楕円や矩形に近似する方法がある。
【0042】
また、容器算出の方法としては、実施例1ではシンプソン法を用いる。
以上説明した輪郭線の演算は、記憶部5にプログラムとして記憶されており計測演算時に呼び出される。
【0043】
次に、制御部6は、計測演算部3によって算出された輪郭線の計算値を出力・表示部7の画面上に表示させる(S104)。計算値の表示形態は以下の3つがある。
【0044】
第1の表示形態:計測演算部3によって算出された計測値の表示の具体例は、
図3に示すように、EF値308A、拡張末期容積308B、収縮末期容積308C、拡張末期軸長308D、収縮末期軸長308Eを数値表示する。
【0045】
第2の表示形態:制御部6は表示画面301上の対象部位の領域を参照してEF値を求める。
例えば、制御部6は拡張末期左心室の輪郭線304で囲まれる部分の容積と収縮末期左心室の輪郭線305で囲まれる部分の容積を用いてEF値を算出し、算出された表示をEF値308Aとして画面表示してもよい。
【0046】
第3の表示形態:制御部6は表示画面301上の対象部位の領域の時間変化をグラフ化し、表示されたグラフを参照してEF値を求める。例えば、制御部6は1心周期の超音波画像フレームの各フレームで左室容積を算出し、左室容積の時間変化についてグラフ309を作成してもよい。グラフ309を用いてEF値を算出する場合は、容積の最大値310を用いて容積の最小値311を除して算出してもよい。
【0047】
図3では、第1乃至第3の表示形態を全て表示した例を示しているが、第1乃至第3の表示形態の少なくとも一つの表示形態であればよい。なお、計測値の表示態様はEF値を例示する。
【0048】
次に、検者は、出力・表示部1の表示画面上のEF値が適正か否かを確認し、入力部2に適正(OK)、不適正(NG)を入力する(S105)。制御部6は、入力部2のOKの入力を受けて計測の一連の処理を終了する。また、制御部6は、入力部2のNGの入力を受けて計測値再入力処理(S106)へ移行する。
【0049】
検者は、表示画面301上に表示されているEF値308Aと上記第1乃至3の表示形態の算出過程を確認しながら、入力部2を用いてEF値を適正に再入力する(S106)。
【0050】
EF値の再入力の具体例は、検者が画面上に表示される計測値再入力スイッチ313を押下して数値の微調整を行ったり、検者がキーボードを用いて直接EF値を入力したりしてもよい。
【0051】
制御部6には、再入力されたEF値に基づいて輪郭線を再演算する際に、次に例示するような輪郭線再演算に寄与する変数を固定して制御する機能が備えられている。
【0052】
第1の例は、検者が軸長固定スイッチ316Dを押下し、軸長を不変とし径長を変化させることで輪郭部分を変形させる。軸長とは、心臓左室で弁輪部の中点312Aから心尖部312Bへ伸びる軸を示す線分306の長さとする。
【0053】
第2の例は、検者が径長固定スイッチ316Eを押下し、シンプソン法における楕円柱の直径の長さを不変とし、軸長を変化させることで輪郭部分を変形させる。
【0054】
第3の例は、検者が均等変形スイッチ316Hを押下し、軸長や径長を均等に変化させることで輪郭部分を変形させる。
【0055】
さらに、制御部6は、再入力したいEF値の数値を直接再入力するだけでなく、輪郭線を左室の輪郭の内側または外側に設定するような輪郭線補正方向指定スイッチを設けてもよい。
図3の例では、内側へ調整スイッチ316A、外側へ調整スイッチ316Bが設けられている。そして、内側へ調整スイッチ316A又は外側へ調整スイッチ316Bに移動された輪郭線の再入力結果は、再計測演算部4に連動している。
【0056】
この方法では、例えば、外側へ調整するスイッチ316Bを押下すると、輪郭線が外側へ調整され、そのときの輪郭線算出されるEF値308A、拡張期末期容積308B、収縮期末期容積308Cが順次増加されて表示される。輪郭線を調整する方法は、例えば、輪郭線の垂直方向に外側または内側へ1画素ずつ移動させたり、線分306に対して垂直な方向に移動させたりするなど、移動量や移動方法を予め設定しておくようにしてもよい。
【0057】
次に、制御部6は、EF値の再入力量に基づいて輪郭線の移動量を再計測演算部4に算出させる(S107)。
【0058】
検者がEF値を再入力した場合を例に説明する。EF値は式(1)で算出されることは既に説明した。そして、EF値を再入力する場合、次の式(2)が示される。
ここでVdは拡張末期容積、Vsは収縮末期容積である。EF値を再入力することは、再入力したいEF値をΔEF値として加算することを意味する。
【0059】
このとき、式(2)の右辺のように拡張末期容積Vdと収縮末期容積Vsが再入力拡張末期容積ΔVdと再入力収縮末期容積ΔVsだけ変化することになる。つまり、計測演算部3はΔEF値が与えられたときの再入力拡張末期容積ΔVdと再入力収縮末期容積ΔVsを用いて演算することになる。
【0060】
次に容積値を用いて設定位置を算出する方法について、シンプソン法を利用して容積計測を行った場合を例に説明する。
図4は、再入力容積ΔVの算出でシンプソン法を用いた場合の原理を説明する図である。
【0061】
心尖部4腔像(Apical Four Chamber image、「A4C像」と略記する)と心尖部2腔像(Apical Two Chamber image、「A2C像」と略記する)は直交する位置関係にある。さらに、軸長Lとし、これに垂直な方向で対向する壁面間の距離をそれぞれ第1の径の長さ(「第1径長」と略記する)ai、第2の径の長さ(「第2径長」と略記する)biとし、軸長をn等分(n:1より大きい整数)した距離L/nを高さとした楕円柱を想定する。心腔容積Vは、n個の楕円柱についてそれぞれの体積を求め、各求めた体積を加算して式(3)のように演算する。また、第1径長と第2径長は総称して径長という。
ここで、上述の容積変化量ΔVを加算すると式(4)の左辺となる。このとき、軸長L、第1径長ai、第2径長biが再入力軸長ΔL、再入力第1径長Δai、再入力第2径長Δbiだけ変化することになる。つまり、再入力容積ΔVは再入力軸長ΔL、再入力第1径長Δai、再入力第2径長Δbiを用いて演算することができる。
【0062】
次に、再入力容積ΔVについて次の条件付けの方法を説明する。
図5は、輪郭線の位置の変更方法の例を説明する図である。
図5(a)は変更前の輪郭線を示している。
図5(b)は、点線が変更前の輪郭線、実線が変更後の輪郭線を示している。
図5(b)の輪郭線の変更前後の操作を説明すると、まず検者は
図3の軸長固定スイッチ316Dを押下し、軸長Lを固定する、すなわち再入力軸長ΔL=0に設定する。制御部6は、第1径長aiをai+Δaiに変化させ、第2径長biをbi+Δbiに変化させる。ここで
図5(b)では、Δai=Δbiとして円形に近似することになる。
【0063】
図5(b)は、軸長の誤差を重視する輪郭線の再入力方法に有用である。なぜならば、シンプソン法による心腔の容積計測では、A4Cの軸長とA2Cの軸長の誤差を10%以内に収めることが推奨されているため、
図5(b)に示す輪郭線の再入力方法が好適であるためである。
図5(c)は、
図5(b)と同様に、点線が変更前の輪郭線、実線が変更後の輪郭線を示している。
図5(c)の輪郭線の変更前後の操作を説明すると、まず検者は
図3の径長固定スイッチ316Eを押下し、第1径長ai、第2径長biを固定する、すなわち再入力第1径長Δai=0、再入力第2径長Δbi=0とする。制御部6は、軸長LのみをL+ΔLに変更させ、式(4)においてΔai=0、Δbi=0としてΔLを演算する。軸長L+ΔLへの変更は各楕円柱の高さL/nが均等に変更されるものとしている。
【0064】
図5(c)は、径長の誤差を重視する輪郭線の再入力方法に有用である。なぜならば、被検者の心臓の動きは個人差があり、多くの場合、軸長方向の誤差の対応で足りるが、
図5(c)は径方向の誤差を重視しなければならない被検者への輪郭線の再入力方法として好適であるためである。
【0065】
図5(d)は、
図5(b)と同様に、点線が変更前の輪郭線、実線が変更後の輪郭線を示している。
図5(d)の輪郭線の変更前後の操作を説明すると、まず検者は
図3の均等変形スイッチ316Hを押下する。制御部6は、軸長L、第1径長ai、第2径長biを全て変更する。
図5(d)では、再入力軸長ΔL、再入力第1径長の半分(Δai/2)、再入力第2径長の半分(Δbi/2)の各値が等しいとして式(4)を演算することにする。
図5(d)のように軸長と径長がほぼ均等に変更されることになる。
【0066】
図5(d)は、軸長及び径長の誤差を均等する輪郭線の再入力方法に有用である。なぜならば、被検者の心臓の動きの個人差が軸長誤差重視(
図5(b))、径長誤差重視(
図5(c))でも輪郭線の再入力が行い難い場合、
図5(d)は軸長及び径長の誤差を均等した被検者への輪郭線の再入力方法として好適であるためである。
【0067】
また、輪郭線を変更するにあたって、
図6の再入力範囲設定スイッチ601を押下し、EF値308A等の再入力量の上限値および下限値を設定してもよい。
【0068】
図6は実施例1の画面の
図3と異なる表示例を示す図である。
EF値308Aの再入力量は±10%以内、拡張末期容積308B、収縮末期容積308Cの再入力量は±20ml以内と表示領域602に示すように再入力範囲を予め設定しておく。
【0069】
制御部6は設定された再入力範囲を超える再入力が加えられたときには、出力・表示部1に警告表示を行う。
【0070】
警告表示の例は、出力・表示部1の画面301の表示領域602に示すように、「メッセージ(「MSG」と略記している): EF値の再入力範囲を超えています。ご確認願います。」などの警告文を表示したり、限界値に達したEF値308Aの数値に色付けして表示したりするなどの方法が行われる。
【0071】
図6の例は、輪郭線について許容される再入力範囲を超える再入力動作に対する検者への注意喚起に有用である。
【0072】
さらに、検者が再入力を必要とする場合には、S106、S107、S103、S104、S105を再入力不要となるまで繰り返し行うことができる。
【0073】
以上説明した実施例1によれば、被検者の臓器領域の多次元情報及び計測値の再入力機能を有する医用画像診断装置と医用画像の計測値再入力方法を提供するという効果を奏する。また、実施例1の特有の効果は、シンプソン法による容積算出法において、軸長、径長の一方又は両方を調整するか否かを検者の任意で選択可能で、部分的に多次元情報(輪郭線)を変更することができる効果を奏する。
【実施例2】
【0074】
実施例2は、実施例1の再入力多次元情報演算(S107)において、実施例1で用いるシンプソン法でなくエリア/レングス法を用いていることである。
【0075】
以下、実施例1との相違部分のS107の演算方法のみを説明する。
図7は、実施例2のエリア/レングス法を用い再入力容積ΔVの算出の原理を説明する図である。エリア/レングス法は、
図3に示す輪郭線304、305で囲まれた領域の面積Aと弁輪312間の中点から心尖への伸びる軸長Lを用いて式(5)で左心室の容積Vを算出する。
【0076】
また、左心室の容積Vは容積変化量ΔVを加算すると式(6)となる。
このとき、面積A、軸長Lの再入力分は、それぞれ再入力面積ΔA、再入力軸長ΔLとする。実施例1と同様に、ΔVは再入力面積ΔA、再入力軸長ΔLを用いて演算する。
【0077】
次に、上述の条件付けの方法を説明する。
図7は、条件付けによって輪郭線304、305の位置を変更した例を示す図である。
【0078】
図7(a)は変更する前の輪郭線を示している。
図7(b)は、軸長固定スイッチ316Dによって軸長固定と設定した例である。軸長Lを固定として面積Aのみを変更する方法である。つまり、式(6)において再入力軸長ΔL=0として再入力面積ΔAを演算することになる。面積Aは
図7(b)のように軸Lが変わらないように輪郭線304又は輪郭線305を移動させる。
図7(c)は、面積と軸長を可変にした例である。この場合は軸長固定スイッチ316Dなどのスイッチを押さない場合に選択される。制御部6は、表示画面301に一部に
図7(c)を模式的に表示し、再入力面積ΔAと再入力軸長ΔLを入力部2(例えばマウス)の操作によって任意に設定する。このように設定された再入力面積ΔAと再入力軸長ΔLを式(6)に用い、再入力容積ΔVを演算する(S107)。
【0079】
以上説明した実施例2によれば、被検者の臓器領域の多次元情報及び計測値の再入力機能を有する医用画像診断装置と医用画像の計測値再入力方法を提供するという効果を奏する。また、実施例2の特有の効果は、エリア/レングス法による容積算出法において、軸長を調整するか軸長と面積の両方を調整するかを検者の任意で選択可能で、部分的に多次元情報(輪郭線)を変更することができる効果を奏する。
【実施例3】
【0080】
実施例3は、実施例1の再入力多次元情報演算(S107)において、実施例1で用いるシンプソン法における軸長の計算方法が異なるものを用いていることである。以下、実施例1との相違部分のS107の演算方法のみを説明する。
【0081】
図8は、A4CとA2Cのそれぞれの軸長を変更する方法を示した図である。一般にEF値計測では、A4Cの軸長とA2Cの軸長の誤差を10%以内にして計測することが推奨されている。このため、
図3のように軸長の計測結果を表示した後に、これらの軸長を推奨される誤差範囲に再入力する場合がある。
【0082】
再入力の方法は、検者が入力部2に設けられるマウスを用いて、
図9に示すように、軸長誤差再入力スイッチ316Gを押下して数値の微調整を行ったり、入力部2に設けられるキーボードを用いて直接EF値を入力したりしてもよい。
図9は、実施例3の計測結果を表示する画面の例を示している。制御部6は、入力部2を用いて入力値を受けて軸長LをL+ΔLに再入力する。
【0083】
このとき、検者が予め、径長固定スイッチ316Eで第1径長及び第2径長を固定にするか、容積固定スイッチ316Gで容積を固定にするかを選択しておけば、式(4)または(6)に条件付けして演算することが可能になる。
図8の例では、容積固定の条件のもとで、軸長をΔLだけ変化させたときの輪郭線を示している。破線が変更前の輪郭線で、実線が変更後の輪郭線である。
【0084】
また、上記で説明した軸長誤差再入力スイッチ316Gは、検者の入力部2による入力を受けただけで、制御部6がA4CとA2Cの軸長誤差が10%以内になるようなΔLを自動調整するように計算位置再計測演算部4及び計測演算部3を制御してもよい(S107)。
【0085】
以上説明した実施例3によれば、被検者の臓器領域の多次元情報及び計測値の再入力機能を有する医用画像診断装置と医用画像の計測値再入力方法を提供するという効果を奏する。また、実施例3の特有の効果は、EF値計測においてA4CとA2Cの軸長の違いを自動的に補正できるようになるため、検者の手動による再入力の手間を軽減する効果を奏する。
【実施例4】
【0086】
実施例4は、検者が入力部2を用いて再入力EF値をEF値308Aの表示欄に入力し、入力されたEF値に従って超音波画像に重畳表示される輪郭線を設定する例を説明する。
【0087】
実施例4において実施例1との相違点は、生体組織の超音波画像表示(S101)と多次元情報設定(S102)に計測値設定(S201)が挿入されることである。相違点以外の説明は実施例1と同じであるため、相違する部分のみを説明する。
【0088】
図10のフローチャートを用いて説明する。
図10は実施例4の動作手順を示すフローチャートである。検者は入力部2を用いて、S101で表示された超音波画像を見ながら所望のEF値を
図3のEF値リスト308Aに設定する(S201)。
【0089】
制御部6は、S201で設定したEF値が算出されるように再入力多次元情報演算(S107)を行う。その後に計測設定位置を画面上に表示する(S104)。結果を確認(S105)して、再入力が必要であれば、検者が入力部2を操作してEF値の再入力を行う(S106)。
【0090】
以上説明した実施例4によれば、被検者の臓器領域の多次元情報及び計測値の再入力機能を有する医用画像診断装置と医用画像の計測値再入力方法を提供するという効果を奏する。また、実施例4の特有の効果は、処理の初期段階で所望のEF値を設定することができるため、予めEF値が予想される場合には、最初に予想されるEF値に設定して、次に再入力を行う手順で多次元情報(輪郭線)の設定が可能になる効果を奏する。
【実施例5】
【0091】
実施例5は、実施例1の計測結果表示(S104)において、再入力輪郭線の候補を複数提示し、検者が前記複数提示した候補のいずれかを選択できるようにする方法である。実施例1と異なる再入力多次元情報および画面表示に関する計測結果表示(S104)についてのみ説明する。
【0092】
図11は、実施例5の計測結果を表示する画面の例を示している。
図11の画面では、左列にEF値が50%の輪郭線を表示している。その右側には順に、EF値が50%の前後の46%、48%、52%の超音波画像が並べられている。そして、EF値50%の超音波画像が挿入される部分は符号1101で示される。
【0093】
EF値が50%と再入力された後(S103)、EF値再入力において50%前後でEF値を変化させた値を設定する(S106)。ここでは、EF値が2%刻みで変化させ他例を示しているが、EF値の再入力の変化量は任意の刻みとしてもよい。
【0094】
次に、再入力しようとするEF値に基づいて再入力多次元情報演算を行って、各輪郭線を算出する(S107)。ここでは、EF値が46%、48%、52%のEF値となる各輪郭線を算出する。
【0095】
図11は、複数のEF値に対する輪郭線を表示する画面である。なお、上段の超音波画像が拡張末期の超音波画像で、下段の超音波画像が収縮末期の超音波画像である。検者は各超音波画像の輪郭線を表示された超音波画像を見ながら最適な輪郭線を視認し選択して確定する(S105)。
【0096】
これによって、検者は、EF値が50%以下で疾患の疑い、EF値が50%を超えれば正常範囲であるとすれば、検者は心臓の拡大末期の動き、収縮末期の動きを総合して正常範囲か疾患の疑い有りかの判断を確認することができる。
【0097】
以上説明した実施例5によれば、被検者の臓器領域の多次元情報及び計測値の再入力機能を有する医用画像診断装置と医用画像の計測値再入力方法を提供するという効果を奏する。また、実施例5の特有の効果は、心臓の拡大末期の動き、収縮末期の動きなどを総合した診断のための判断情報を提供することができる効果を奏する。また、検者は、EF値の微小な変化に対する多次元情報(輪郭線)の変化を見ながら最適な多次元情報(輪郭線)およびEF値を選択することができる効果を奏する。
【実施例6】
【0098】
実施例6は、実施例5の計測結果表示(S104)の変形例であり、A4C像にA2C像を参照表示する例である。実施例5と異なる輪郭線再入力および画面表示に関する計測結果表示(S104)についてのみ説明する。
【0099】
図12は、実施例6の計測結果を表示する画面の例を示す図である。
図12の最も左の超音波画像302と超音波画像303はEF値を50%に設定したときのA4C像である。超音波画像302と超音波画像303の右隣にはA2C像を表示している。前記A4C像と前記A2C像は上段が拡張末期の超音波画像で下段が収縮末期の超音波画像である。
【0100】
また、A4C像とA2C像は直交する位置関係にあるため、互いの径長を用いて積み上げた楕円柱を3次元的に表示することと同じ意味を持つ。
【0101】
また、A2C像の右隣の2列は、EF値が50%となる48%と52%のA4C像が表示されている。
図12の表示例では、A4C像を示しているがA2Cであってもよい。検者は3次元で表示された輪郭線を見ながら最適な輪郭線を選択して確定する(S105)。
【0102】
以上説明した実施例6によれば、被検者の臓器領域の多次元情報及び計測値の再入力機能を有する医用画像診断装置と医用画像の計測値再入力方法を提供するという効果を奏する。また、実施例6の特有の効果は、A4C像とA2C像は直交する位置関係の超音波画像を表示するので、三次元情報に基づいて多次元情報(輪郭線)を再入力することができるという効果を奏する。
【実施例7】
【0103】
実施例7は、実施例1の計測結果表示(S104)において、同一の超音波画像に再入力輪郭線の候補を複数提示し、検者が前記複数提示した候補のいずれかを選択できるようにする方法である。実施例1と異なる輪郭線再入力および画面表示に関する計測結果表示(S104)についてのみ説明する。
図13は、実施例7の複数の計測結果を表示する画面の例を示している。
【0104】
破線(304、305)はEF値50%の輪郭線を示している。輪郭線の外側には、EF値の52%の輪郭線が実線で示している。
【0105】
さらに、EF値50%の輪郭線の内側には、EF48%の輪郭線が実線で示している。検者は、同時に表示された複数の輪郭線候補を見ながら最適な輪郭線を選択して確定する(S105)。実施例7では、輪郭線の表示方法について線種を変えて表示しているが、輪郭線の色を変えたり、異なる輪郭線を点滅表示させたりする、即ち、複数の輪郭線間で異なる表示態様であればよい。
【0106】
また、実施例7では、
図13において2次元の輪郭線を例に示しているが、実施例6のように3次元の輪郭線を表示するようにしてもよい。
【0107】
以上説明した実施例7によれば、被検者の臓器領域の多次元情報及び計測値の再入力機能を有する医用画像診断装置と医用画像の計測値再入力方法を提供するという効果を奏する。また、実施例7の特有の効果は、一つの超音波画像を表示するので、拡張末期と収縮末期の超音波画像の2つの画像表示だけで表示領域が足りるので、実施例5などの複数の超音波画像の組を表示する場合と比較して、より少ない表示画面で多次元情報(輪郭線)の比較表示ができるという効果を奏する。
【実施例8】
【0108】
実施例8は、実施例1の計測結果表示(S104)において、現在の輪郭線として健常の場合の輪郭線を表示し、治療経過を観察できるようにする方法である。実施例8は、実施例1と異なる輪郭線再入力および画面表示に関する計測結果表示(S104)についてのみ説明する。
【0109】
例えば、拡張型心筋症では、収縮末期容積が増大し、EF値が低下する。これを薬物等によって、収縮末期容積を減少させ、EF値を増大させる治療を行う場合がある。このとき、現在の輪郭線を用いて、健常な容積およびEF値になったときの輪郭線を算出し、これらの輪郭線を画面上に表示すれば、現在の心臓と健常な心臓との差異を図形的に理解しやすくなる。
【0110】
図14は、実施例8の複数の計測結果を表示する画面の例を示している。
図14は病変のEF値に対する輪郭線(破線)と、健常のEF値に対する輪郭線(実線)を示している。病変のEF値に対する輪郭線を設定した後に、健常例設定スイッチ317を押下すると、病変のEF値に対する輪郭線の実線が表示される。
【0111】
健常な容積値やEF値は、予め標準値が記憶部5に記憶されている。制御部6は標準値を読み出して、標準値の輪郭線を算出する。標準値の輪郭線は、例えば、多数の健常例の値を平均したもの、または、対象患者が目標とすべき値である。
【0112】
また、制御部6は過去の少なくとも1回の検査において計測された値および輪郭線を記憶部5に記憶しておき、これらのデータを現在検査の画面上に重畳表示させてもよい。これによって、過去の検査から現在の検査までの連続的な治療経過を理解しやすく表示することができる。
【0113】
以上説明した実施例8によれば、被検者の臓器領域の多次元情報及び計測値の再入力機能を有する医用画像診断装置と医用画像の計測値再入力方法を提供するという効果を奏する。また、実施例8の特有の効果は、過去の検査から現在の検査までの連続的な治療経過を理解しやすく表示することができるという効果を奏する。
【0114】
以上は、超音波診断装置における心臓の計測を例に説明したが、他の診断装置および生体組織に対しても同様に適用可能である。