特許第5738282号(P5738282)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738282
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】ガラスの照射処理
(51)【国際特許分類】
   C03B 25/087 20060101AFI20150604BHJP
【FI】
   C03B25/087
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-513281(P2012-513281)
(86)(22)【出願日】2010年5月28日
(65)【公表番号】特表2012-528073(P2012-528073A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】US2010036529
(87)【国際公開番号】WO2010138793
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年5月28日
(31)【優先権主張番号】61/182,180
(32)【優先日】2009年5月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】キクツェンスキー,ティモシー ジェイ
【審査官】 田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−169076(JP,A)
【文献】 特開2000−302475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B25/00−27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)速い緩和種と遅い緩和種を含んでなる構造を含み、ガラス基板の歪み点Tcより低いバルク温度Tbを有するガラス基板を提供する工程と、
(b)TbをTcより高い温度まで増加させることなく、前記ガラス構造の部分を励起することができる照射に前記ガラス基板を暴露する工程と、
(c)前記暴露後の前記ガラス基板の表面上に非晶質または多結晶シリコンの層を形成する工程と、
を含んでなり、前記遅い緩和種の著しい緩和が生じることなく、前記速い緩和種の緩和をもたらす様式で前記ガラス基板が前記照射に暴露されることを特徴とする、ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
工程(b)において、Tbを200℃未満増加させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラス基板が、少なくとも640℃の焼きなまし点を有するガラス材料から実質的になることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)において、前記ガラス基板の任意の部分を最大で4時間前記照射に暴露することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の前に、前記ガラス基板を、前記ガラス基板の軟化温度TsからTcまで、少なくとも5℃/秒の平均冷却速度で冷却工程にかけることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)の後および工程(c)の前に、前記ガラス基板を二次熱焼きなまし工程にかけないことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記速い緩和種の緩和の後、緩和した前記速い緩和種が膨張し、前記遅い緩和種が収縮するように、Tbを300℃より高い温度まで増加させることを含んでなることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、全体として内容が依拠され、参照によって本明細書に組み込まれている、「IRRADIATION TREATMENT OF GLASS」と題された2009年5月29日出願の米国仮特許出願第61/182180号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、ガラス基板の製造方法、特に、ガラス基板を照射に暴露することを含むガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス基板を、液晶ディスプレイ(LCD)用途での使用に供することが知られている。(LCD)を製造する間、熱工程によってコンパクションが引き起こされ、ガラス基板の体積および寸法特性が望ましくない様式で変化するおそれがあることが知られている。ガラスコンパクションを促進する力は、特に、仮想温度(Tf)と加工温度との差で表すことができる。ガラスの仮想温度を加工温度へと発展させることによって、コンパクションが生じる。熱工程前の仮想温度(Tf)は、ガラス基板の初期形成によって決まる。一般的に、(例えば、フュージョンドロー法で)急速に形成されたガラス基板では、ガラス基板に「確定された(locked in)」比較的高い仮想温度(Tf)が生じる。(LCD)を加工する間のコンパクション促進を低減するため、もともとはガラス基板を形成する間に決まる仮想温度(Tf)を低下させることを目的として、プレコンパクティング二次焼きなまし工程(pre−compacting secondary annealing process)を実行することができる。
【0004】
ガラスコンパクションは、熱工程間の寸法変化に対するガラスの抵抗によっても影響を受ける。そのような抵抗は、熱工程間のガラス粘度によって表わされることが多いが、ガラス溶融粘度が1014.7ポアズ(1013.7パスカル秒)に等しい温度である歪み点、またはガラス溶融粘度が1013.18ポアズ(1012.18パスカル秒)に等しい温度である焼きなまし点で表わされることもある。熱工程間のガラスコンパクションを低減するために、次の方程式から、ガラス組成の調整によって低温粘度を高めることができ、それによって、所与の温度におけるガラスの緩和時間を増加させることができる。
【0005】
τ(T)≒η(T)/G
上記方程式で、「G」は剪断係数であり、粘度を緩和時間に変換する。以下の方程式によって、緩和時間が増加することによって、結果的にコンパクションの低減がもたらされる。
【0006】
Tf(t)=T+(Tf(t=0)−T)(e−t/τ(T)
上記方程式で、Tf(t)は時間の関数としてのガラスの仮想温度であり、Tは熱処理温度であり、Tf(t=0)は、(ガラスのドロー速度および粘度曲線に基づき)ガラス基板形成プロセスの間に決まる仮想温度であり、τ(T)はガラス粘度曲線に基づいて決まる。一般的に、熱工程間に仮想温度が低下することによって、典型的に、相当するガラス基板のコンパクションが得られる。したがって、上記の方程式への入力に基づき、仮想温度の変化を観察することによって、熱サイクル間のガラス基板のコンパクションをモデル化することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によって、ガラス基板の製造方法が提供される。この方法は、速い緩和種と遅い緩和種を有する構造を含むガラス基板を提供する工程を含む。ガラス基板は、ガラス基板の歪み点(Tc)より低いバルク温度(Tb)で提供される。この方法は、バルク温度(Tb)を歪み点(Tc)より高い温度まで増加させることなく、ガラス構造の部分を励起することができる照射にガラス基板を暴露する工程をさらに含む。ガラス基板は、遅い緩和種の著しい緩和が生じることなく、速い緩和種の緩和をもたらす様式で照射に暴露される。
【0008】
添付の図面を参照しながら、以下の「発明を実施するための形態」を読むことによって、本発明のこれらおよび他の特徴、態様および利点がより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の例証的態様を含むガラス基板の製造方法の略図。
図2A】ガラス基板を本発明の態様に従ってあらかじめ照射に暴露しなかった場合の、加熱サイクルに対する速い反応種および遅い反応種の仮定的応答を示す図。
図2B】ガラス基板を本発明の態様に従って照射に暴露した後に実行した加熱サイクルに対する速い反応種および遅い反応種の仮定的応答を示す図。
図3】本発明に従って照射に暴露された後に加熱されるガラス基板を表わす図。
図4】一方のガラス基板のみが本発明に従ってあらかじめ照射に暴露されていた、加熱サイクルにおける2つのガラス基板の体積変化を表わす実験結果のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、本発明の例証的実施形態が示される添付の図面を参照して、以下により完全に説明される。可能であれば、全図面を通して、同じ部分または同様の部分を指すために同じ参照番号を使用する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で具体化することが可能であり、本明細書に明示された実施形態に限定されるものとして解釈されてはならない。これらの例証的実施形態は、本開示が完全であるように、そして、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。
【0011】
本発明のガラス材料の処理方法は、ローリング、プレシング、フュージョンドロー、スロットドロー、フロートなどの様々な方法で製造された、ガラスシート、ガラス板、ガラス棒などの様々な形態の様々なガラス材料に適用可能であることに注目すべきである。しかしながら、本発明は、特に、5℃/秒以上のような高い冷却速度が適用される工程で形成されるガラス材料に有用である。
【0012】
本発明のガラス基板を製造するために、様々なガラス材料が使用可能である。例えば、ガラス基板は、少なくとも640℃の焼きなまし点を有するガラス材料から実質的になるが、他の焼きなまし点を有するガラス材料から実質的になってもよく、そして/または広範囲の焼きなまし点を有する様々なガラス材料成分が一緒にブレンドされて含まれてもよい。一例において、ガラス材料は、少なくとも720℃の焼きなまし点を有し得る。なおさらなる例において、ガラス材料は、少なくとも770℃の焼きなまし点を有し得る。本発明による照射処理終了後に、表面上に半導体フィルムを堆積するのに適切なガラスシートに半導体堆積工程をさらに行うことができる。例証的方法によって、様々な用途のためのガラス基板を製造することができる。一例において、液晶ディスプレイ(LCD)の製造方法では、本発明の態様に従う方法で製造されたガラス基板を組み込むことができる。
【0013】
図1を参照すると、方法の略図は、本発明の例証的態様を含む。説明のために、これらの例証的態様は、単一の連続的な生産ラインで示される。当然のことながら、図示された工程の1つまたはそれ以上が別々に行われてもよく、全く省略されてもよい。例えば、図示された各工程が、異なる位置でおよび/または異なる時間に実行されてもよい。一例において、一連の工程は、1つの位置で実行される。次いで、1つまたはそれ以上のその後の工程を、異なる位置で実行することができる。さらには、ガラス基板に、図1に示される例証的略図に例示されないさらなる工程を行ってもよい。
【0014】
図1に示すように、この例証的方法では、最初のガラス基板を形成するために加工されたガラス材料を供給することができる。例えば、示されるように、フュージョンドロー法100を使用して、ガラス材料からガラス基板102を形成することができる。さらなる例において、フロート法、ダウン−ドロー法、ローリング法および/または他のガラス基板形成法を使用して、ガラス基板102を形成することができる。示される通り、ガラス基板はガラス基板シートとして形成されるが、さらなる例では他の基板構造が提供されてもよい。
【0015】
典型的な方法では、フュージョンドロー法100または他の形成技術によって形成した後に、様々な所定の速度でガラス基板を任意に冷却することができる。例えば、ガラス基板を、ガラス基板の軟化温度(Ts)からガラス基板の歪み点(Tc)まで、少なくとも5℃/秒の平均冷却速度で冷却工程にかけることができる。もし設定するのであれば、所定の冷却速度を様々な方法で達成可能である。例えば、周囲の環境に、好ましい冷却速度を提供する条件を与えることができる。例えば、フュージョンドロー法100を、ガラス基板の冷却速度を制御するための所定の構成、温度および/または循環を有する雰囲気で実行することができる。さらなる例では、図示されたファン、またはガラス表面周囲で冷風の循環を制御する装置のような任意の冷却機構300を提供して、所定の速度でガラス基板の冷却を促進することができる。提供される場合、冷却機構300は図示されたファンを備えることができるが、さらなる例では他の冷却装置が提供されてもよい。
【0016】
示されるように、十分な長さのガラス基板が提供されるまで、ガラス基板102を下方向104aへ引き出すことができる。所望の長さが達成されたら、ガラス基板の下部分102bをガラス基板の上部分102aから分離することができる。例えば、示されるように、レーザー装置200によって、レーザービーム202でガラス基板に側面から切り目をつけ、ガラス基板の下部分102bを切り離すことができる。さらなる例では、下部分102bを、研削、破砕、切り目付けまたは他の分離技術によって切断することができる。さらなる例においては、ガラス基板102は本明細書に明示された様々な他の工程の間、そのままにされてもよい。例えば、フュージョンドロー法またはフロート法のような他のガラス形成工程から、以下に記載される冷却工程、照射ゾーン500、処理ゾーン600および/または加熱ゾーン700を通してガラス基板が連続していてもよく、その後、ガラス基板の下部分102bがガラス基板の上部分102aから分離される。したがって、例証的方法では、製造ラインにおいて、ガラス基板102の上部分102aから下部分102bを切断する前に、ガラス形成工程(例えば、フュージョンドロー法100)から連続的にガラス基板102を供給することができる。
【0017】
示される通り、冷却機構300を提供し、所定の冷却速度でガラス基板の上部分102aを冷却することができる。そのうえ、あるいは代替的に、ガラス基板の下部分102bをガラス基板の上部分102aから分離する前または後に、所定の冷却速度で下部分102bを冷却するように冷却機構を提供することができる。
【0018】
任意のガラス基板ハンドリング装置400を提供し、様々な任意の加工ゾーンにガラス基板を運搬することができる。例えば、示されるように、ハンドリング装置400は、コンベア機構406上でガラス基板の方向を改め、そして/またはガラス基板を配置するエアベアリング404を有する任意の定位装置402を含むことができる。ガラス基板102cは、例えば、照射ゾーン500に入る前に、コンベア機構406に配置されてもよい。
【0019】
ガラス形成技術に基づき、ガラス基板102cは、ガラス基板形成法に基づく基板に「凍結された(frozen)」緩和特性を有する構造を含む。特定の理論に考察を限定することはないが、本明細書に明示されたある種の証拠は、速い緩和種と遅い緩和種に関して、全体的な緩和特性を仮定的に説明することを可能にする。速い緩和種は単一の種の群を含むと考えることができ、また速い緩和種として一緒に挙動する複数の種の群を含んでもよい。同様に、遅い緩和種は単一の種の群を含むと考えることができ、また遅い緩和種として一緒に挙動する複数の種の群を含んでもよい。
【0020】
ガラス基板の速い緩和種および遅い緩和種は、その後の加熱サイクルの間にガラス基板の寸法変化に著しく影響すると考えられている。例証として、図2Aは、以下により完全に説明される照射ゾーン500に入れる前のガラス基板102cへの急速熱焼きなまし(RTA)などの加熱サイクル114の適用を表す。y軸は温度を表し、x軸は時間を表す。図2Aに示すように、加熱サイクル114は、ガラス基板の温度の増加を表す加熱セグメント114aを含む。加熱サイクル114は、ガラス基板が最大加熱温度で保持される期間を表す保持セグメント114bをさらに含む。最後に、加熱サイクル114は、加熱サイクル114間のガラス基板の温度低下を表す冷却セグメント114cを含む。
【0021】
また図2Aに、加熱サイクル114実行前、間および後の遅い緩和種の仮定的仮想温度プロフィール110を示す。加熱サイクル114の前に、遅い緩和種は、水平なセグメント110aによって表される初期の仮想温度を有することが示される。加熱サイクル114の開始後、そして冷却セグメント114cの前に、下方へ傾斜するセグメント110bによって表されるように、遅い緩和種の仮想温度は時間とともに低下する。冷却セグメント114cの間、遅い緩和種の仮想温度は、水平なセグメント110cによって表される最終的な仮想温度に「凍結される(frozen in)」。水平なセグメント110aと110cを比較すると、遅い緩和種の最終的な仮想温度は、遅い緩和種の初期の仮想温度より低い。矢印111aは、遅い緩和種の初期の仮想温度から最終的な仮想温度までの仮想温度の低下を表す。
【0022】
さらに図2Aに、加熱サイクル114実行前、間および後の速い緩和種の仮定的仮想温度プロフィール112を示す。加熱サイクル114の前に、速い緩和種は、水平なセグメント112aによって表される初期の仮想温度を有することが示される。加熱セグメント114aの間、下方へ傾斜するセグメント112bによって表されるように、速い緩和種の仮想温度は時間とともに低下する。セグメント112cで示すように、速い緩和種の仮想温度は、最終的には処理温度との平衡に達し、そして加熱セグメント114aの後部分、保持セグメント114bおよび冷却セグメント114cの開始部分間のガラス基板のバルク温度に続く。冷却セグメント114cの間、速い緩和種の仮想温度は、水平なセグメント112dによって表される最終的な仮想温度で最終的に「凍結される(frozen)」。水平なセグメント112aと112dを比較すると、速い緩和種の最終的な仮想温度は、速い緩和種の初期の仮想温度より低い。矢印113aは、速い緩和種の初期の仮想温度から最終的な仮想温度までの仮想温度の低下を表す。上記のように、仮想温度の低下は、ガラス基板のコンパクションをもたらす傾向がある。したがって、図2Aで示すように、ガラス基板を照射に暴露しない場合、速い緩和種と遅い緩和種は、加熱サイクル114の間にガラス基板のコンパクションに寄与すると考えられている。
【0023】
本発明の態様に従って、加熱サイクル114の前に、遅い緩和種の著しい緩和を生じさせずに速い緩和種に影響を与え、その後の加熱サイクルの間の寸法変化を低減することが望ましい。一例において、遅い緩和種の仮想温度プロフィール110を実質的に保持しながら、速い緩和種の初期の仮想温度が、速い緩和種の最終的な仮想温度より低くなるように、速い緩和種に影響を与えることが望ましい。
【0024】
例証として、図2B図2Aと類似しているが、以下により完全に説明される照射ゾーン500でガラス基板102dに照射する工程の後のガラス基板102dへの加熱サイクル114の適用を表わしている。図2Bに示されるように、遅い緩和種の仮定的仮想温度プロフィール110は、図2Aに例示されるプロフィール110と実質的に同じままである。他方、ガラス基板102dを照射に暴露することは、速い緩和種の仮定的仮想温度プロフィール112に実質的に影響を与えると考えることができる。実際に、加熱サイクル114の前には、速い緩和種が、図2Aに示される水平なセグメント112aによって表される初期の仮想温度より実質的に低い水平なセグメント112eによって表される初期の仮想温度を含むことが示される。加熱セグメント114aの間、速い緩和種の仮想温度は、初期の仮想温度のままであるが、セグメント112fによって表されるように、最終的には加熱セグメント114aの後部分、保持セグメント114bおよび冷却セグメント114cの開始部分の間、ガラス基板の温度に適合し始める。冷却セグメント114cの間、速い緩和種の仮想温度は、最終的には、水平なセグメント112gによって表される最終的な仮想温度でガラス基板に「固定される」(速い緩和種の最終的な仮想温度が加熱サイクルの冷却速度114cによって決定されるため、112dと同様)。水平なセグメント112eと112gを比較すると、速い緩和種の最終的な仮想温度は、速い緩和種の初期の仮想温度より高い。矢印113bは、速い緩和種の初期の仮想温度から最終的な仮想温度までの仮想温度の増加を表す。上記のように、仮想温度の低下によって、ガラス基板のコンパクションをもたらす傾向がある。同様に、仮想温度の増加は、ガラス基板の膨張をもたらす傾向がある。したがって、図2Bに示すように、ガラス基板を照射に暴露することによって、加熱サイクル114の間、緩和した速い緩和種を膨張させ、そして遅い緩和種を収縮させ、それによって部分的に互いに相殺し、基板の正味の寸法変化を減少させると考えられる。
【0025】
再び図1を参照して、ガラス基板のバルク温度(Tb)がガラス基板の歪み点(Tc)より低い状態で、ガラス基板102dを照射に暴露することができる。例えば、赤外線(IR)温度読み取り、コンタクト熱電対または他の測定構成によって、ガラス基板のバルク温度(Tb)を測定することができる。したがって、測定されたバルク温度(Tb)は、(Tb)より高くても低くてもよいガラス基板の特定の点よりも、ガラス基板の全体的な温度を指すことを目的としている。
【0026】
本発明の例証的態様は、速い緩和種および遅い緩和種を含む構造を有するガラス基板102cを提供することができる。ガラス基板102cは、ガラス基板102cの歪み点(Tc)より低いバルク温度(Tb)で提供される。次いで、任意のコンベア機構406によって、ガラス基板102cを方向104cに沿って照射ゾーン500へと輸送することができる。示されるように、照射ゾーン500には、任意の筐体502や、照射506をガラス基板102dに供給する照射供給源504を提供することができる。照射ゾーン500で、ガラス基板102dの歪み点(Tc)より高い温度までガラス基板102dのバルク温度(Tb)を増加させることなく、ガラス構造の部分を励起することができる照射にガラス基板102dを暴露する。ガラス基板102dは、遅い緩和種の著しい緩和が生じることなく、速い緩和種の緩和をもたらす様式で照射506に暴露される。
【0027】
照射供給源504から、様々な種類の照射を提供することができる。例えば、照射506は、1種またはそれ以上の赤外線照射、マイクロ波照射、紫外線照射および/またはこれらもしくは他の種類の照射の様々な組み合わせを含むことができる。さらに、例示されるように、さらなる例において非パルス(例えば、連続的)照射を提供可能であるが、照射506をパルスにすることができる。さらなる例において他の照射装置が使用されてもよいが、照射供給源504をレーザー装置とすることができる。レーザー装置として提供される場合、照射506は、1つまたはそれ以上のパルスまたは非パルスレーザービームとして供給可能である。一例において、248nmの紫外線パルスレーザーを、本発明の態様に従って使用することができる。
【0028】
ガラス基板102dを、様々な時間で照射506に曝露することができる。一例において、ガラス基板102dの任意の部分を、最大で4時間、照射506に曝露することができる。例えば、ガラス基板102dの任意の部分を、約4〜約18時間までの範囲で照射506に曝露することができるが、さらなる例において、曝露時間をこの範囲外とすることもできる。なおさらに、ガラス基板102dは、曝露時間中単一の間隔でパルスまたは非パルス照射に曝露することができるが、曝露時間中複数の断続的な間隔を含んでもよい。
【0029】
照射506に暴露されている間、ガラス基板102dのバルク温度(Tb)を、ある温度以下に保持することができる。一例において、ガラス基板102dを照射506に暴露する工程間、ガラス基板102dのバルク温度(Tb)を、150℃未満、100℃未満、50℃未満のような200℃未満の温度、例えば30℃未満増加させることができる。さらなる例において、ガラス基板102dを照射506に暴露する工程の終了時、バルク温度(Tb)を(Tc)−200℃未満とすることができる((Tc)は、ガラス基板の歪み点である)。例えば、ガラス基板102dを照射506に暴露する工程の終了時、バルク温度(Tb)を、(Tc)−400℃未満のような(Tc)−300℃未満の温度、例えば(Tc)−500℃未満とすることができる。さらなる例において、ガラス基板102dを照射506に暴露する工程の終了時、バルク温度(Tb)を、250℃未満、200℃未満、150℃未満のような300℃未満の温度、例えば100℃未満とすることができる。したがって、ガラス基板102dを照射506に暴露する工程を、代表的な二次熱焼きなまし工程(secondary thermal annealing process)よりも著しく低い温度で行うことができ、それによって、(変形のような)ガラス基板への望ましくない変化のリスクが低減することが認められるであろう。
【0030】
照射506への十分な暴露の後、コンベア機構406によって、方向104dに沿ってガラス基板102dを移動することができる。任意に、ガラス基板102dを、ガラス基板102eに1層またはそれ以上の非晶質または多結晶シリコンの層103が提供される処理ゾーン600に移動することができる。概略的に示されるように、ガラス基板102eが方向104eに沿って移動するとき、装置602によって層103を適用することができる。非晶質または多結晶シリコンを他の様々な技術によっても適用することができ、ガラス基板102eの片面または両面に適用することができる。示される通り、ガラス基板102dを二次熱焼きなまし工程にかけることなく、ガラス基板102dが照射ゾーンから処理ゾーン600に送られる。二次熱焼きなまし工程を行うことは可能であるが、回避するほうが有利である。そのうえ、ガラス基板を照射に暴露する工程によって、二次焼きなまし工程の必要性を排除することができるか、または二次焼きなまし工程の強度を低減できる。
【0031】
照射ゾーン500を通過した後、ガラス基板102fを加熱ゾーン700でさらに処理することができる。加熱ゾーン700には、緩和した速い緩和種が膨張し、遅い緩和種が収縮するように、バルク温度(Tb)を300℃より高い温度まで増加させるために構成された抵抗ヒーター702が含まれてもよい。加熱工程は、ディスプレー(LCD)の製造間または前に実行することができる。例えば、示されるように、図1に示される生産ラインで加熱工程を実行することができる。他の例において、ガラス基板が、照射ゾーン500と処理ゾーン600を通過してもよい。次いで、ガラス基板102eを、加熱ゾーン700によって表される加熱工程を行う他の位置に輸送することができる。
【0032】
加熱ゾーン700での加熱工程の間、遅い緩和種の収縮が速い緩和種の膨張によって少なくとも部分的に相殺されるため、(コンパクションまたは膨張のような)ガラス基板102fの望ましくない寸法変化を防ぐことができる。一例において、遅い緩和種の収縮は、加熱ゾーン700でガラス基板102fを加熱する工程の間、速い緩和種の膨張と実質的に等しい。そのように、ガラス基板102fのコンパクションおよび/または膨張を実質的に防ぐことができる。さらなる例において、遅い緩和種の収縮は、速い緩和種の膨張によって、部分的にのみ埋め合わせられる。そのような例においては、ガラス基板102fにコンパクションが生じる可能性がある。しかしながら、そのようなコンパクションは、照射ゾーンでガラス基板を照射に暴露することのない別の方法において生じ得るコンパクションよりは少ないであろう。なおさらなる例においては、速い緩和種の膨張が、遅い緩和種の収縮より大きい。そのような例においては、ガラス基板102fに膨張が生じる可能性がある。
【0033】
照射ゾーン500の照射範囲および/または加熱ゾーン700の加熱範囲を、300℃より高い温度にガラス基板102fを加熱する時のガラス基板102fの全体的な寸法変化を制御するように使用することができることが認められる。例えば、(LCD)製造に使用される既知のその後の加熱工程に基づき、ガラス基板102fのコンパクションを防ぐなどの低減する様式で、ガラス基板を照射することができる。そのように、望ましくない寸法変化を低減することができ、防ぐことが可能である。
【0034】
図3は、本発明に従って照射に暴露した後に、(450℃などの)仮定的温度において加熱ゾーン700中で加熱されたガラス基板102fを表わす。y軸は体積変化を表し、x軸は時間を表す。膨張曲線154は、速い緩和種の膨張を表し、収縮曲線156は、遅い緩和種のコンパクションを表す。寸法曲線150は、緩和した速い緩和種の膨張と遅い緩和種のコンパクションに基づく、加熱ゾーンにおけるガラス基板102fの全体的な寸法変化を表す。示される通り、速い緩和種の初期の膨張は、遅い緩和種の初期のコンパクションを過度に相殺する。したがって、ガラス基板102fは、寸法曲線150の上方へ傾斜するセグメント150aによって表されるように、加熱ゾーン700での加熱の間、最初に膨張する。時間とともに、速い緩和種の膨張は失速し始め、最終的には、膨張曲線154によって示されるように、速い緩和種の仮想温度が熱処理温度との平衡に達すると停止する。他方、コンパクション曲線156によって示されるように、遅い緩和種では、時間が経過してもコンパクションが続く。したがって、最終的には、下方へ傾斜するセグメント150bによって表されるように、ガラス基板102fでコンパクションが生じ始め、そして、セグメント150cによって表されるように、正味のコンパクションがもたらされる。点152は、ガラス基板102fが、正味ゼロの寸法変化を経験する時間を表す。
【0035】
図4は、寸法曲線401を、本発明に従って照射に暴露されなかったガラス基板102cの寸法曲線403と比較する実際の試験データを表すグラフである。この試験データは、ガラス基板102cおよび102fを450℃の温度で加熱ゾーン700に保持した時の経時的に生じた寸法変化を表す。y軸は、100万分の1(ppm)単位のガラス基板の寸法変化を表し、x軸は分単位の時間を表す。寸法曲線403は、時間ゼロと300分との間でコンパクションが連続的に増加していることを示す。他方、ガラス基板102fを表す寸法曲線401では、ガラス基板102fの初期の膨張と、その後のガラス基板102fのコンパクションが認められる。示される通り、正味ゼロの寸法変化は、加熱ゾーン700で450℃の加熱をして約45分〜60分の時点(点405)で生じる。
【0036】
ゾーン500、600および700が、同じ設備に、互いに近接して、または互いに遠く離れて、あるいは異なる設備に位置してもよいことに注意すべきである。したがって、照射処理工程、薄膜適用工程および熱処理後の工程を、同じまたは異なる要素によって、同じまたは異なる位置で実行することができる。
【0037】
したがって、非限定的な本開示の態様および/または実施形態には、以下が含まれる。
【0038】
C1.(a)速い緩和種と遅い緩和種を含んでなる構造を含み、ガラス基板の歪み点より低いバルク温度Tbを有するガラス基板を提供する工程と、
(b)TbをTcより高い温度まで増加させることなく、ガラス構造の部分を励起することができる照射にガラス基板を暴露する工程と
を含んでなり、遅い緩和種の著しい緩和が生じることなく、速い緩和種の緩和をもたらす様式でガラス基板が照射に暴露される、ガラス基板の製造方法。
【0039】
C2.工程(b)において、Tbを200℃未満増加させるC1の方法。
【0040】
C3.工程(b)の終了時、TbがTc−200℃未満であるC1またはC2の方法。
【0041】
C4.工程(b)の終了時、Tbが300℃未満であるC1〜C3のいずれか1つの方法。
【0042】
C5.ガラス基板が、少なくとも640℃の焼きなまし点を有するガラス材料から実質的になるC1〜C4のいずれか1つの方法。
【0043】
C6.照射が、赤外線照射、マイクロ波照射および紫外線照射からなる群から選択されるC1〜C5のいずれか1つの方法。
【0044】
C7.工程(b)において、照射がパルスであるC1〜C6のいずれか1つの方法。
【0045】
C8.工程(b)において、ガラス基板の任意の部分を最大で4時間照射に暴露するC1〜C7のいずれか1つの方法。
【0046】
C9.工程(a)の前に、ガラス基板を、ガラス基板の軟化温度TsからTcまで、少なくとも5℃/秒の平均冷却速度で冷却工程にかけるC1〜C8のいずれか1つの方法。
【0047】
C10.C1〜C9のいずれか1つの方法を使用する液晶ガラス基板の製造方法。
【0048】
C11.工程(b)の後、次の工程(c):
(c)ガラス基板の表面上に非晶質または多結晶シリコンの層を形成する工程
をさらに含んでなるC1〜C10のいずれか1つの方法。
【0049】
C12.工程(b)の後および工程(c)の前に、ガラス基板を二次熱焼きなまし工程にかけないC11の方法。
【0050】
C13.速い緩和種の緩和の後、緩和した速い緩和種が膨張し、遅い緩和種が収縮するように、Tbを300℃より高い温度まで増加させることを含んでなるC1〜C12のいずれか1つの方法。
【0051】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に様々な修正および変更を行うことができることは、当業者に明白であろう。したがって、本発明の修正および変更が添付の請求の範囲およびそれらの同等物の範囲内になるならば、本発明はそれらを含むものとする。
図1
図2A
図2B
図3
図4