特許第5738285号(P5738285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5738285再使用可能なクロマトグラフィー装置の特徴決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738285
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】再使用可能なクロマトグラフィー装置の特徴決定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/86 20060101AFI20150604BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20150604BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20150604BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   G01N30/86 P
   G01N30/88 J
   G01N30/88 201Z
   G01N30/86 J
   G01N30/74 E
   G01N30/26 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-516575(P2012-516575)
(86)(22)【出願日】2010年6月22日
(65)【公表番号】特表2012-530911(P2012-530911A)
(43)【公表日】2012年12月6日
(86)【国際出願番号】EP2010003813
(87)【国際公開番号】WO2010149367
(87)【国際公開日】20101229
【審査請求日】2012年2月8日
(31)【優先権主張番号】09008247.0
(32)【優先日】2009年6月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130845
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ベロウソフ アントン
(72)【発明者】
【氏名】ダムズ トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジャーワット ベンジャミン
【審査官】 清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/047009(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/094203(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドの精製の精製段階において少なくとも2度目に使用される再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物が、該ポリペプチドの該精製の該精製段階において低下した分離効力を有するか否かを判定するための方法であって、
a)移動相に含有される、再使用可能なカラム充填物と相互作用しない物質の濃度の変化によりもたらされるシグナル変化であることを特徴とする、少なくとも2度目の使用の該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の変を同定する段階、および
該シグナル変化の実験データを経時的に測定する段階、
b)段階a)において得られた経時的なシグナル変化の実験データを適合させることにより、式Iの関数のパラメータを測定する段階、
c)段階a)において得られた経時的なシグナル変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を測定する段階、
d)段階c)において測定された差の最大値と最小値との間の差を算出し、かつ該差を正規化する段階、
e)段階d)において算出された差の絶対値が0.1より大きい時、該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の低下した分離効力を判定する段階
を含むことを特徴し、
ここで、式Iの関数が
であり、振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、かつ
を伴う、方法。
【請求項2】
再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を用いる少なくとも1つのクロマトグラフィー段階が含有される、ポリペプチドのクロマトグラフィー精製のための方法であって、
a)移動相に含有される、再使用可能なカラム充填物と相互作用しない物質の濃度の変化によりもたらされるシグナル変化であることを特徴とする、少なくとも2度目の使用の該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の変を同定する段階、および
該シグナル変化の実験データを経時的に測定する段階、
b)段階a)において得られた経時的なシグナル変化の実験データを適合させることにより、式Iの関数のパラメータを測定する段階、
c)段階a)において得られた経時的なシグナル変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を測定する段階、
d)段階c)において測定された差の最大値と最小値との間の差を算出し、かつ該差を正規化する段階
を含むことを特徴とし、
ここで、式Iの関数が
であり、振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、および
を伴い、ならびに
−段階d)において算出された差の絶対値が0.05もしくはそれより小さい時、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物をさらに使用する段階、または
−段階d)において算出された差の絶対値が0.05より大きいが0.2より小さい時、精製されたポリペプチドの追加的な特徴決定および/もしくは評価を行う段階、または
−段階d)において算出された差の絶対値が0.2もしくはそれより大きい時、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を交換する段階
を含む、方法。
【請求項3】
シグナル変化が、伝導率または280 nmでの吸収における変化であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
移動相の変化が、100%の変性剤を含有する溶液から100%の該変性剤を含有しない溶液への変化、またはその逆であることを特徴とする、求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
変性剤が、水酸化ナトリウム、塩化グアニジウム、尿素、または有機溶媒から選択されることを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
経時的なシグナル変化がS字形変化であることを特徴とする、求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において報告する方法は、クロマトグラフィーの分野、特に調製用カラムクロマトグラフィーの分野におけるものである。本明細書において、工程におけるデータに基づくクロマトグラフィーカラムの充填物の品質の直接的な判定のための方法を報告する。単にカラムの完全性判定の目的のための追加的なデータ取得が排除され得るため、本方法で工程における時間および資源の節約が達成され得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
今日、薬剤において使用されるほぼすべてのポリペプチドは組み換えで調製される。厳しい規制指針および要求のため、副産物は治療用ポリペプチド調製物からできる限り除去されなければならない。従って、組み換え生産後の大量の未処理ポリペプチドの下流の加工において、少なくとも1つのクロマトグラフィー段階が使用される。発酵工程の収量に対するクロマトグラフィー装置の大きさ、特にクロマトグラフィーカラムの分離能力が限定されるため、必要量の精製された治療用ポリペプチドを提供することができるように多数のバッチが加工処理されなければならない。
【0003】
精製された治療用ポリペプチドの各バッチが同一の薬学的作用を有することを保証するために、各バッチについて分析パラメータのリストが満たされなければならない。精製工程の段階が一貫してかつ効率的に作動する場合のみ、これが達成され得る。しかし、精製工程の1つの段階が適切に働かない場合、取得された産物はほぼ確実に分析試験を通らないと考えられ、最悪の状況においてこのバッチは使用できない。従って、精製段階の性能および効力を判定するための方法を提供することが必要である。
【0004】
Teeters, M.A. and Quinones-Garcia, I. (J. Chrom. A 1069 (2005) 53-64)(非特許文献1)は、伝導率に基づくパルスへの応答およびトレーサー実験由来の段階入力および特に測定された滞留時間分布由来の工程における移行を用いて、工程規模のクロマトグラフィーカラムの充填物挙動を評価およびモニタリングすることを報告している。Norlingら(Norling, L., et al. J. Chrom. A 1069 (2005) 79-89)(非特許文献2)は、陰イオン交換クロマトグラフィー媒体を複数回再使用することがウイルス除去へ与える影響を報告している。生産規模のタンパク質精製カラムにおけるクロマトグラフィー性能を評価するための工程データの使用が、Larsonら(Larson, T.M., et al., Biotechnol. Prog. 19 (2003) 485-492)(非特許文献3)により報告されている。Moscariello, J., et al. J. Chrom. A 908 (2001) 131-141(非特許文献4)は、産業規模のカラムの性能の特徴決定を報告している。クロマトグラフィーにおける分解能およびカラム効率が、Vink, H., J. Chrom. 69 (1972) 237-242(非特許文献5)により報告されている。Sarker, M. and Guiochon, G., J. Chrom. A 702 (1995) 27-44(非特許文献6)は、調製用クロマトグラフィーについての軸圧縮カラムの充填物挙動の研究を報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Teeters, M.A. and Quinones-Garcia, I. J. Chrom. A 1069 (2005) 53-64
【非特許文献2】Norling, L., et al. J. Chrom. A 1069 (2005) 79-89
【非特許文献3】Larson, T.M., et al., Biotechnol. Prog. 19 (2003) 485-492
【非特許文献4】Moscariello, J., et al. J. Chrom. A 908 (2001) 131-141
【非特許文献5】Vink, H., J. Chrom. 69 (1972) 237-242
【非特許文献6】Sarker, M. and Guiochon, G., J. Chrom. A 702 (1995) 27-44
【発明の概要】
【0006】
本明細書において報告する方法で、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の分離効力および/または充填品質の低下の判定を、カラム材料の完全性の判定のために粗製ポリペプチド溶液の分離に先立ってさらなるトレーサー化合物を使用および注入する必要無く、またはこの精製段階の歴史的データの必要無く確定することができる。
【0007】
本明細書において報告する第1の局面は、ポリペプチドの精製の精製段階において少なくとも2度目に使用される再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物が、例えば同一のポリペプチドの同一の精製の同一の精製段階において1度目に使用された時の分離効力と比較して、低下した分離効力を有するか否かを判定するための方法であって、以下の段階を含む方法である:
a)該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを同定および測定する段階、
b)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを適合させることにより、式Iの関数のパラメータを測定する段階、
c)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を測定する段階、
d)段階c)において測定された差の最大値と最小値との間の差を算出し、かつ該差を正規化する段階、
e)段階d)において算出された差の絶対値が0.1より大きい時、該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の低下した分離効力を判定する段階、
ここで、式Iの関数は
であり、振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、および
を伴う。
【0008】
本明細書において報告する別の局面は、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物での少なくとも1つのクロマトグラフィー段階が含まれる、ポリペプチドのクロマトグラフィー精製のための方法であって、以下の段階を含む方法である:
a)該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを同定および測定する段階、
b)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを適合させることにより、式Iの関数のパラメータを測定する段階、
c)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を測定する段階、
d)段階c)において測定された差の最大値と最小値との間の差を算出し、かつ該差を正規化する段階、
ここで、式Iの関数は
であり、振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、および
を伴い、かつ
−段階d)において算出された差の絶対値が0.05もしくはそれより小さい時、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物をさらに使用する段階、または
−段階d)において算出された差の絶対値が0.05より大きいが0.2より小さい時、精製されたポリペプチドの追加的な特徴決定を行う段階、または
−段階d)において算出された差の絶対値が0.2もしくはそれより大きい時、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を交換する段階。
【0009】
1つの態様において、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化は、該移動相に含有される再使用可能なカラム充填物と相互作用しない物質の濃度の変化によりもたらされる有意なシグナル変化である。別の態様において、実験データを測定する段階は、不活性な変化の物理化学的パラメータの実験データを経時的に測定する段階である。さらなる態様において、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化は、100%の変性剤を含有する溶液から100%の該変性剤を含有しない溶液への、または100%の該変性剤を含有しない溶液から100%の変性剤を含有する溶液への移動相の変化である。別の態様において、変性剤は、水酸化ナトリウム、塩化グアニジウム、尿素、または有機溶媒から選択される。1つの態様において、段階c)は、少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を各実験データ点について測定する段階である。1つの態様において、シグナル変化は、伝導率または280 nmでの吸収における変化である。さらなる態様において、不活性な変化はS字形変化である。さらに別の態様において、少なくとも1つの物理化学的パラメータは、調節または再生段階において測定される。
[本発明1001]
ポリペプチドの精製の精製段階において少なくとも2度目に使用される再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物が、該ポリペプチドの該精製の該精製段階において低下した分離効力を有するか否かを判定するための方法であって、
a)少なくとも2度目の使用の該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを同定および測定する段階、
b)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを適合させることにより、式Iの関数のパラメータを測定する段階、
c)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を測定する段階、
d)段階c)において測定された差の最大値と最小値との間の差を算出し、かつ該差を正規化する段階、
e)段階d)において算出された差の絶対値が0.1より大きい時、該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の低下した分離効力を判定する段階
を含むことを特徴し、
ここで、式Iの関数が
であり、振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、かつ
を伴う、方法。
[本発明1002]
再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を用いる少なくとも1つのクロマトグラフィー段階が含有される、ポリペプチドのクロマトグラフィー精製のための方法であって、
a)少なくとも2度目の使用の該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを同定および測定する段階、
b)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを適合させることにより、式Iの関数のパラメータを測定する段階、
c)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を測定する段階、
d)段階c)において測定された差の最大値と最小値との間の差を算出し、かつ該差を正規化する段階
を含むことを特徴とし、
ここで、式Iの関数が
であり、振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、および
を伴い、ならびに
−段階d)において算出された差の絶対値が0.05もしくはそれより小さい時、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物をさらに使用する段階、または
−段階d)において算出された差の絶対値が0.05より大きいが0.2より小さい時、精製されたポリペプチドの追加的な特徴決定および/もしくは評価を行う段階、または
−段階d)において算出された差の絶対値が0.2もしくはそれより大きい時、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を交換する段階
を含む、方法。
[本発明1003]
再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化が、再使用可能なカラム充填物と相互作用しない移動相における物質の濃度の変化によりもたらされる変化であることを特徴とする、本発明1001または1002の方法。
[本発明1004]
不活性な変化が、伝導率または280 nmでの吸収における変化であることを特徴とする、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1005]
再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化が、100%の変性剤を含有する溶液から100%の該変性剤を含有しない溶液への変化、またはその逆であることを特徴とする、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1006]
変性剤が、水酸化ナトリウム、塩化グアニジウム、尿素、または有機溶媒から選択されることを特徴とする、本発明1005の方法。
[本発明1007]
不活性な変化がS字形変化であることを特徴とする、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1008]
不活性な変化が経時的な変化であることを特徴とする、前記本発明のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】低下した分離効力/充填品質を有さない再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物についての伝導率の例示的な不活性な変化の実験データ(白丸);X軸:時間[分];Y軸:伝導率[mS/cm]。
図2】低下した分離効力/充填品質を有さない再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物についての伝導率の例示的な不活性な変化の実験データ(白丸)および式Iの関数に従って適合させた関数;X軸:時間[分];Y軸:伝導率[mS/cm]。
図3】低下した分離効力/充填品質を有さない再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物についての伝導率の例示的な不活性な変化の実験データ(白丸)と、式Iに従って適合させた関数との間の絶対差;X軸:時間;Y軸:差。
図4】低下した分離効力/充填品質を有する再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物についての伝導率の例示的な不活性な変化の実験データ(白丸);X軸:時間[分];Y軸:伝導率[mS/cm]。
図5】低下した分離効力/充填品質を有する再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物についての伝導率の例示的な不活性な変化の実験データ(白丸)および式Iの関数に従って適合させた関数;X軸:時間[分];Y軸:伝導率[mS/cm]。
図6】低下した分離効力/充填品質を有する再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物についての伝導率の例示的な不活性な変化の実験データ(白丸)と、式Iの関数に従って適合させた関数との間の絶対差;X軸:時間[分];Y軸:差[mS/cm]。
図7】式IIを使用した、50クロマトグラフィーサイクルに渡る本明細書において報告する方法でのカラム完全性のモニタリング。
図8】式IIを使用した、本明細書において報告する方法でのカラム完全性のモニタリング。黒丸:カラム充填物において変化の無いカラムの再生に由来するパラメータ。白丸:再生サイクルNo.9の間のひび割れたベッドを伴うカラムの再生に由来するパラメータ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書において報告する第1の局面は、ポリペプチドの精製の精製段階において少なくとも2度目に使用される再使用可能なカラムクロマトグラフィーカラム充填物が、同一のポリペプチドの同一の精製の同一の精製段階において1度目に使用された時の分離効力と比較して、低下した分離効力を有するか否かを判定するための方法であって、以下の段階を含む方法である:
a)不活性な変化を同定する段階、および、クロマトグラフィーカラム充填物の少なくとも1度目の使用の後に、該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の、100%の変性剤を含有する溶液から100%の該変性剤を含有しない溶液への不活性な変化、またはその逆の物理化学的パラメータの実験データを経時的に測定する段階、
b)a)において取得された少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを適合させることにより、式Iの関数のパラメータを測定する段階、
c)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を測定する段階、
d)段階c)において測定された差の最大値と最小値との間の差を算出し、かつ該差を正規化する段階、
e)段階d)において算出された差の絶対値が0.05より大きい時、該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の低下した分離効力を判定する段階、
ここで、式Iの関数は
であり、振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、および
を伴う。
【0012】
「再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物」という用語は、クロマトグラフィーカラム中に充填されるクロマトグラフィー材料を意味し、それにより、精製後クロマトグラフィー材料は、改変されていない形態で、すなわち精製前と同一の特徴を有して得られる。精製段階は一般に、クロマトグラフィーカラム充填物の調節、粗製ポリペプチド溶液の適用、任意でクロマトグラフィー材料の洗浄、クロマトグラフィーカラム充填物からの精製されたポリペプチドの回収、およびクロマトグラフィーカラム充填物の再生を含むサイクルを意味する。本明細書において報告する局面の1つの態様において、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化は、経時的な、および/またはクロマトグラフィーカラム充填物の調節における、および/またはクロマトグラフィーカラム充填物の再生における物理化学的パラメータの変化である。
【0013】
上記で概要を述べた再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の定義は、精製のすべての個々の段階が完全に可逆的であることを要求する。しかしこれは現実的ではない。精製段階の間に、例えば充填されたクロマトグラフィー材料の完全に均質の性質はかき乱される可能性があり、かつ分離マトリクスを通した流れは損なわれ得る。1つの時点で、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の分離効力および/または回収および/または充填品質は、副産物からのポリペプチドの精製を可能にするのにまだ十分であるが、該ポリペプチドの規格の要求を満たす純度において十分ではない。結果として、ポリペプチドのこのバッチはおそらく治療用物質として使用することができず、さらに処理するかまたは廃棄しなければならない。
【0014】
本明細書において報告する方法で、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の分離効率および/もしくは充填品質における低下、ならびに/またはそれからの回収における低下の判定が、i)カラム材料完全性の判定のために粗製ポリペプチド溶液の分離に先立ってさらなるトレーサー化合物を使用および注入する必要、またはii)この精製段階の歴史的データの必要が無く可能である。従って、本発明による方法は、不必要なトレーサー物質の注入などの追加的な段階を行うポリペプチドのクロマトグラフィー精製段階の間に通常は取得されるデータに基づいて、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の品質の判定を可能にする。
【0015】
本明細書において報告する方法は、ポリペプチドの精製の間に再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化が、クロマトグラフィー材料の分離効力および/または充填品質を判定するために使用され得るという知見に基づく。そのような「不活性な変化」とは、精製段階の間の、移動相に含有される物質の濃度などの、少なくとも1つの、好ましくは1つの経時的な物理化学的パラメータの、または移動相自体の変化である。物質は、ポリペプチドの精製をもたらすクロマトグラフィー材料の機能性と相互作用しない。再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの例示的な不活性な変化は、i)変性条件から非変性条件への変化、またはii)強アルカリ性条件から緩衝条件への変化、またはiii)有機溶媒から水への変化である。1つの態様において、変化は、100%の0.5〜1 M水酸化ナトリウム溶液または5 M塩化グアニジウム溶液または8 M尿素溶液または有機溶媒から、100%緩衝液、または任意で最大1%(v/v)までのトリフルオロ酢酸などのイオン化剤を含む100%水への変化である。または逆に、変化は、i)非変性条件から変性条件へ、またはii)緩衝条件から強アルカリ性条件へ、またはiii)水から有機溶媒への変化である。別の態様において、変化は、100%緩衝液、または任意で最大1%(v/v)までのトリフルオロ酢酸などのイオン化剤を含む100%水から、100%の0.5〜1 M水酸化ナトリウム溶液へ、または100%の5 M塩化グアニジウム溶液へ、または100%の8 M尿素溶液もしくは有機溶媒への変化である。分離効力/充填品質において低下を示さない不活性な変化についてのクロマトグラムを図1に示し、および分離効力/充填品質において低下を示す不活性な変化についてのクロマトグラムを図4に示す。
【0016】
1つの態様において、経時的な少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化は、280 nmでの吸収、またはクロマトグラフィーカラムを離れる移動相の伝導率、またはクロマトグラフィーカラムを離れる有機溶媒濃度など、精製の間に記録される実験データにより測定される。
【0017】
「移動相」という用語は、カラムクロマトグラフィーにおいて使用され、かつ、今度は固定相であるクロマトグラフィーカラム充填物のクロマトグラフィー材料を取り囲む液体を意味する。
【0018】
再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の少なくとも2度目の使用の不活性な変化の間に記録された実験データの、式Iの関数に適合させた該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の少なくとも2度目の使用の不活性な変化の間に記録されたデータとの比較から、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の分離効力/充填品質の判定を得ることできることが見出されている。1つの態様において、実験データは、この使用に先立って同一のポリペプチドの同一の精製の同一の精製段階において1回または複数回使用されたクロマトグラフィー材料で作製されたカラム充填物でのポリペプチドの少なくとも2度目の精製の間に記録される。式Iの関数は以下であり:
振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、および
を伴う。
【0019】
本明細書において報告する方法は、カラムの充填物についての品質特性をもたらすガウス分布の積分型を使用する。式Iの関数で、カラム入口において化合物のほぼ矩形のパルスで含有される該化合物の純粋に拡散律速の分布機構に由来する偏差を測定することができる。これは、ポリペプチドの精製において同定された不活性な変化の間に記録された実験データに適合させた式Iの関数を、記録された実験データ自体と比較することにより達成され、それによって、望ましい特徴の精製されたポリペプチドを提供するために、適合させた関数および適合させていない実験データの不活性な変化の間の差はあらかじめ設定された閾値を超えるべきではない。
【0020】
比較は、式Iの関数を適合させた実験データと、適合させた式Iの関数との間の差を算出することにより行う。互いに比較可能な個々の精製の結果を作製するために、例えば、不活性な変化の間の物理化学的パラメータの実験データの最大値で値を割ることにより、結果または差を正規化する。1つの態様において、正規化は、適合させた式Iの関数のパラメータA0の値での除算による。1つの態様において、以下の式IIに示すように、正規化された差分関数を使用する。
【0021】
従って、1つの態様において、段階b)は、少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを適合させることによる、式Iの関数のパラメータの測定、およびそれと共に式IIの正規化された差分関数のパラメータの測定をも読み取り、ならびに段階c)は、少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式IIの関数との間の差の測定を読み取る。別の態様において、正規化は、不活性な変化の間の物理化学的パラメータの実験データの最大値で差を割ることで該差を正規化することにより、実験データと該実験データに適合させた式Iの関数との間の測定された差の最大値と最小値との間の差を算出する段階における。
【0022】
分離効力および/または充填品質における低下を伴わない不活性な変化のクロマトグラムについての例示的な差分関数を図3に示し、かつ分離効力および/または充填品質における低下を伴う不活性な変化のクロマトグラムについての例示的な差分関数を図6に示す。
【0023】
絶対差分値の算出のために、実験データと各実験データ点について算出された適合させた実験データとの間の差の全体的な最大および全体的な最小を測定する。この最大値とこの最小値との間の差を算出し、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物の充填品質を判定することができるパラメータを提供する。1つの態様において、算出に使用する実験データの最大値で算出された差分値を割ることにより差を正規化する。
【0024】
精製されるポリペプチドおよび達成されるその特徴に依存して、差分関数の最大値と最小値との間の絶対差についての閾値を与えることができ、それにより閾値の各々の個々の超過が、行われる行動をもたらす。1つの態様において、正規化された差分関数の最大値と最小値との間の差を容認することができ、および算出された差の絶対値が0.2または0.1または0.05より小さい場合、充填物をさらに使用することができる。1つの態様において、正規化された差の最大値と最小値との間の差を容認することができるが、絶対値が0.05もしくはそれより大きいが0.2より小さいか、または0.1もしくはそれより大きいが0.2より小さいか、または0.1もしくはそれより大きいが0.15より小さい場合、精製されたポリペプチドの規格適合を保証するために追加的な分析および/または評価を行わなければならない。1つの態様において、正規化された差の最大値と最小値との間の差を容認することができず、および絶対値が0.2もしくはそれより大きいか、または0.15もしくはそれより大きい場合、充填物を交換/更新しなければならない。
【0025】
従って、本明細書において報告する別の局面は、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を使用する少なくとも1つのクロマトグラフィー段階が含有される、ポリペプチドのクロマトグラフィー精製のための方法であって、以下の段階を含むことを特徴とする方法である:
a)該再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を通過する移動相の少なくとも1つの物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを同定および測定する段階、
b)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データを適合させることにより、式Iの関数のパラメータを測定する段階、
c)少なくとも2度目の使用の物理化学的パラメータの不活性な変化の実験データと、段階b)において測定されたパラメータを伴う式Iの関数との間の差を測定する段階、
d)段階c)において測定された差の最大値と最小値との間の差を算出し、かつ該差を正規化する段階、
ここで、式Iの関数は
であり、振幅P1、開始値A0、平均値m、標準偏差sを伴い、および
を伴い、ならびに
−段階d)において算出された差の絶対値が0.05もしくはそれより小さい時、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物をさらに使用する段階、または
−段階d)において算出された差の絶対値が0.05もしくはそれより大きいが0.2より小さい時、精製されたポリペプチドの追加的な評価および/もしくは特徴決定を行う段階、または
−段階d)において算出された差の絶対値が0.2もしくはそれより大きい時、再使用可能なクロマトグラフィーカラム充填物を交換する段階。
【0026】
「ポリペプチド」は、天然に生産されようとまたは合成的に生産されようと、ペプチド結合により連結されたアミノ酸からなるポリマーである。約20アミノ酸残基より小さいポリペプチドは「ペプチド」と呼ばれ得るのに対して、2つまたはそれ以上のポリペプチドからなる分子、または100アミノ酸残基より大きい1つのポリペプチドを含む分子は「タンパク質」と呼ばれ得る。ポリペプチドはまた、炭水化物群、金属イオン、またはカルボン酸エステルなどの非アミノ酸成分を含み得る。非アミノ酸成分は、ポリペプチドを発現する細胞により付加され得、かつ細胞のタイプと共に変化し得る。ポリペプチドは、本明細書において、そのアミノ酸バックボーン構造または同一物をコードする核酸に関して定義される。炭水化物群などの付加物は一般に特定されないが、それにもかかわらず存在し得る。
【0027】
1つの態様において、ポリペプチドは組み換えで生産される。別の態様において、ポリペプチドはイムノグロブリンまたはイムノグロブリン結合体である。「イムノグロブリン」という用語は、イムノグロブリン遺伝子により実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を指す。認識されているイムノグロブリン遺伝子は、様々な定常領域遺伝子および無数のイムノグロブリン可変領域遺伝子を含む。イムノグロブリンは、例えば、Fv、Fab、およびF(ab)2ならびに一本鎖(scFv)または二重特異性抗体(diabody)を含む様々な形式で存在し得る(例えば、Huston, J.S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988) 5879-5883;Bird, R.E., et al., Science 242 (1988) 423-426;一般に、Hood, L.E., et al., Immunology, Benjamin N.Y., 2nd edition (1984);およびHunkapiller, T. and Hood, L.E., Nature 323 (1986) 15-16)。「イムノグロブリン結合体」という用語は、ペプチド結合を介してさらなるポリペプチドに結合されたイムノグロブリン重鎖または軽鎖の少なくとも1つのドメインを含むポリペプチドを意味する。さらなるポリペプチドは、ホルモン、もしくは増殖受容体、もしくは抗融合性(antifusogenic)ペプチド、もしくは補体因子などのような非イムノグロブリンペプチド、または、Fv、Fab、およびF(ab)2、ならびに一本鎖抗体(scFv)もしくは二重特異性抗体などのイムノグロブリン断片のいずれかである。
【0028】
ポリペプチドおよびイムノグロブリンを精製するための方法はよく確立され、かつ広範に用いられ、かつ単独または組み合わせのいずれかで使用される。そのような方法は、例えばおよびある特定の態様において、微生物由来のタンパク質を用いる親和性クロマトグラフィー(例えば、プロテインAまたはプロテインG親和性クロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換(カルボキシメチル樹脂)、陰イオン交換(アミノエチル樹脂)、および混合様式交換クロマトグラフィー)、チオフィリック(thiophilic)吸着(例えば、β-メルカプトエタノールおよび他のSHリガンドでの)、疎水性相互作用または芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニル-セファロース、アザ-アレノフィリック(aza-arenophilic)樹脂、またはm-アミノフェニルボロン酸)、金属キレート親和性クロマトグラフィー(例えば、Ni(II)-およびCu(II)-親和性材料での)、サイズ排除クロマトグラフィー、ならびに調製用電気泳動法(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)である(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)。1つの態様において、クロマトグラフィーカラム充填物は、親和性クロマトグラフィー材料、またはイオン交換クロマトグラフィー材料、またはチオフィリック吸着クロマトグラフィー材料、または疎水性相互作用クロマトグラフィー材料、または芳香族吸着クロマトグラフィー材料、または金属キレート親和性クロマトグラフィー材料、またはサイズ排除クロマトグラフィー材料より選択されるクロマトグラフィー材料である。
【0029】
別の態様において、本明細書において報告する方法は、クロマトグラフィー材料以外の工程機器が、低下した分離効力を有するか否かの判定のために使用される。
【0030】
以下の実施例および図面は、本発明の理解を助長するために提供され、その真の範囲は添付の特許請求の範囲において示される。本発明がなされた時にポリペプチドであるエリスロポエチンが本発明者らの実験室において十分な量で利用可能であったため、本発明はこのポリペプチドで例証される。これは本発明の限定としてではなく、単に実施例として理解されるべきである。本発明の趣旨から逸脱することなく、示される手順において改変がなされ得ることが理解される。
【実施例】
【0031】
実施例1
エリスロポエチンの発酵および精製
エリスロポエチンは、例えば国際公開公報第01/87329号に従って生産および精製することができる。
【0032】
精製は、いくつかのクロマトグラフィー段階を含む。これらのうちの1つがBlue Sepharoseクロマトグラフィーである。Blue Sepharoseは、表面にCibacron青色色素が共有結合で結合したセファロースビーズからなる。エリスロポエチンは大抵の非タンパク質性夾雑物よりも強くBlue Sepharoseに結合するため、この段階においていくつかのタンパク質性不純物およびPVA、エリスロポエチンを濃縮することができる。Blue Sepharoseカラムの溶出は、塩濃度およびpHを上昇させることにより行う。カラムをBlue Sepharoseで満たし、NaOHで再生させ、かつ平衡緩衝液(塩化ナトリウム/カルシウムおよび酢酸ナトリウム)で平衡化する。酸性化および濾過した発酵槽の上清をロードする。ロードが完了した後、より高い塩化ナトリウム濃度を含有する平衡緩衝液に類似した緩衝液でカラムを最初に洗浄し、続いてTRISベースの緩衝液で洗浄する。生成物をTRISベースの緩衝液で溶出し、マスター溶出プロファイルに従って単一画分において収集する。
【0033】
クロマトグラフィーサイクルの平衡化、分離、および再生段階の間に、カラムの出口での移動相の伝導率を標準的な伝導率計測装置で測定および記録する。
【0034】
実施例2
カラム特性における変化
本明細書において報告する方法を用いて、工程に渡って継続的にカラムをモニターすることができる。他の工程パラメータの変化とは独立して微妙な変化が検出可能になる。図7において、分離特性における変化をもたらすカラム充填物における変化を示す。変化はサイクル40の後に起きた。
【0035】
壊れたベッドを伴うカラムの場合には、図8のサイクル9(白丸)で示される導かれたパラメータ残差(residuals difference)において見られるように適合の品質が劇的に低下する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8