(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738286
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】流体を遠心ポンプで移送する方法
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20150604BHJP
F04D 7/06 20060101ALI20150604BHJP
F04D 7/02 20060101ALI20150604BHJP
F04B 15/08 20060101ALI20150604BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
F04D15/00 Z
F04D7/06 Z
F04D7/02 A
F04B15/08
F04B49/06 311
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-516734(P2012-516734)
(86)(22)【出願日】2010年6月24日
(65)【公表番号】特表2012-531551(P2012-531551A)
(43)【公表日】2012年12月10日
(86)【国際出願番号】EP2010058967
(87)【国際公開番号】WO2011000761
(87)【国際公開日】20110106
【審査請求日】2013年5月23日
(31)【優先権主張番号】102009031309.5
(32)【優先日】2009年6月30日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー・アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】KSB AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァルツ,ゲルハルト
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−512472(JP,A)
【文献】
特表2004−517270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
F04B 15/08
F04B 49/06
F04D 7/02
F04D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を遠心ポンプ(11)で移送する方法であって、前記流体の圧力および/または温度に影響を及ぼす機械(1、6)および/または装置(3、8)が、前記遠心ポンプ(11)の上流側に配置されているものにおいて、
前記流体が、その実在気体係数(z)が既にその極小に達しまたは超過した状態のみを、前記遠心ポンプ(11)内で占めるように、前記遠心ポンプ(11)への前記流体の吸込状態が前記機械(1、6)および/または装置(3、8)によって調整されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記流体が、前記遠心ポンプ(11)への吸込み部および/または前記遠心ポンプ(11)内で、超臨界状態で存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記遠心ポンプ(11)内で圧力が上昇する場合に、前記流体の実在気体係数(z)が同じままであるかまたは増加することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記流体の吸込温度(T)および/または吸込圧力(p)が測定されかつ制御および/または調節ユニット(13、14)に転送されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記制御および/または調節ユニット(13、14)は、前記機械(1、6)および/または装置(3、8)に信号を転送し、前記機械および/または装置を介して前記流体の吸込状態が調整可能であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記制御および/または調節ユニット(13、14)は、前記遠心ポンプ(11)への吸込み部で前記流体の実在気体係数(z)がその極小に達していない場合に、警報を発することを特徴とする請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記制御および/または調節ユニット(13、14)は、前記遠心ポンプ(11)への吸込み部で前記流体の実在気体係数(z)がその極小に達していない場合に、プロセスを安全状態に移すことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
圧縮機として形成される前記機械(1、6)および/または熱交換器として形成される前記装置(3、8)によって前記流体の吸込状態が調整可能であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
被移送流体が少なくとも1つの圧縮段および/または冷却段を通過することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
二酸化炭素を隔離する方法であって、二酸化炭素が所定の貯蔵所に適した圧力および/または温度にされかつ前記貯蔵所内に移送されるものにおいて、
遠心ポンプ(11)が二酸化炭素を前記貯蔵所内にポンピングし、二酸化炭素の圧力および/または温度に影響を及ぼすように、前記遠心ポンプの上流側に配置された機械(1、6)および/または装置(3、8)によって、前記二酸化炭素の実在気体係数(z)が既にその極小に達しまたは超過した状態のみを前記二酸化炭素が前記遠心ポンプ(11)内で占めるように前記二酸化炭素の吸込状態が調整されることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記二酸化炭素が、前記遠心ポンプ(11)への吸込み部および/または前記遠心ポンプ(11)内で、超臨界状態で存在することを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記遠心ポンプ(11)内で圧力が上昇する場合に、前記二酸化炭素の実在気体係数(z)が同じままであるかまたは増加することを特徴とする請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記二酸化炭素の吸込温度(T)および/または吸込圧力(p)が測定されて制御および/または調節ユニット(13、14)に転送されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記制御および/または調節ユニット(13、14)は、前記機械(1、6)および/または装置(3、8)に信号を転送し、前記機械および/または装置を介して前記二酸化炭素の吸込状態が調整可能であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記制御および/または調節ユニット(13、14)は、前記遠心ポンプ(11)への吸込み部で前記二酸化炭素の実在気体係数(z)がその極小に達していない場合に、警報を発することを特徴とする請求項13または14記載の方法。
【請求項16】
前記制御および/または調節ユニット(13、14)は、前記遠心ポンプ(11)への吸込み部で前記二酸化炭素の実在気体係数(z)がその極小に達していない場合に、設備を遮断することを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
圧縮機として形成される前記機械(1、6)および/または熱交換器として形成される前記装置(3、8)によって前記二酸化炭素の吸込状態が調整されることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記二酸化炭素が少なくとも1つの圧縮段(1、6)および/または冷却段(3、8)を通過することを特徴とする請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を遠心ポンプで移送する方法であって、流体の圧力および/または温度に影響を及ぼす機械および/または装置が遠心ポンプの上流側に配置されているものに関する。本発明はさらに、二酸化炭素を隔離する方法であって、二酸化炭素が所定の貯蔵所用に適した圧力および/または温度にされかつ貯蔵所内に移送されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所で化石燃料を燃焼させるとき発生する二酸化炭素は温室効果にとって決定的責任がある。それゆえに、大気中への二酸化炭素の放出を減らすことが目的である。効果的措置は二酸化炭素の隔離である。発電所で発生する二酸化炭素は分離されて最終処分場に供給される。油層、ガス層、含塩帯水層または炭層等の地質学的累層が貯蔵所と見做される。深海貯蔵も研究されている。
【0003】
従来の方法では気体二酸化炭素の移送は圧縮機によって行われる。圧縮は複数段で行われ、圧縮ガスのさまざまな中間冷却が不可欠である。圧縮も冷却もきわめてエネルギーを要する。圧縮は気体状態から超臨界状態へと直接行われる。
【0004】
液体二酸化炭素は散発的にダイヤフラムポンプでも移送された。液体二酸化炭素をポンピングする場合、ポンプ内で空洞現象の起きないことを保証しなければならない。二酸化炭素は、蒸気圧力に達しない状態または下まわる状態を占めることができるだけである。さもないと蒸気泡が生成し、この蒸気泡はポンプ内で圧力上昇時に内破し、重大な損傷をもたらす。従って蒸気圧曲線が液体二酸化炭素移送の限界線となる。
【0005】
液体二酸化炭素の移送時にポンプ内で超臨界状態への不可避的転換を生じることがある。その原因は、二酸化炭素の臨界温度が僅か31.0℃と比較的低く、また臨界圧力が僅か73.8バールと比較的低いことにある。さらに、ポンプへの吸込み時に二酸化炭素を既に超臨界状態とする方法がある。
【0006】
超臨界二酸化炭素を遠心ポンプで移送することは基本的に知られている。特許文献1に述べられた単段キャンドモータポンプは超臨界二酸化炭素を循環移送する。流体を移送するインペラは耐食軸受内に配置された軸に固着されている。高速キャンドモータを破壊することのあるアブレシブ粒子の生成がこうして防止されるとされる。
【0007】
特許文献2には液体二酸化炭素または超臨界二酸化炭素を移送するポンプシステムが述べられている。このポンプシステムはポット形ハウジング内に配置される水中モータポンプの態様の多段ポンプを含む。この配置は、きわめて高いポンプ吸込圧力が優勢である密閉移送システム用に指定されている。指摘された境界条件のゆえに被移送二酸化炭素は専ら液相で存在する。このシステムは原油回収増進(Enhanced Oil Recovery、EOR)に利用され、被移送油の歩留りを高めるために油田に二酸化炭素が注入される。このシステムは二酸化炭素の隔離にも役立つ。
【0008】
超臨界二酸化炭素を遠心ポンプで移送するときしばしば深刻な問題が発生する。というのも、二酸化炭素が超臨界範囲内でしばしば占める状態は非恒常的ポンピング特性をもたらし、場合によっては遠心ポンプの破損ももたらすからである。遠心ポンプ内で圧力が上昇すると大きな流体密度変化が生じ、そのことでこの特性が引き起こされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/052365号パンフレット
【特許文献2】国際公開第00/63529号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、被移送流体の許容外の密度変化を確実に防止して遠心ポンプでの超臨界流体の移送を可能とする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、流体の実在気体係数が既にその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が遠心ポンプ内で占めるように、遠心ポンプへの流体の吸込状態が機械および/または装置によって調整されることによって解決される。
【0012】
圧縮係数とも称される実在気体係数は次式として定義されている:
【数1】
【0013】
その際、個々の式記号は以下の量を表す:
【表1】
【0014】
理想的気体では実在気体係数が1に等しいのに対して、実在気体において実在気体係数は圧力および温度に依存して相違する。実在気体係数は、いわゆるボイル温度以下では圧力の上昇に伴ってさしあたり減少し、極小に達し、次に再び上昇する。実在気体係数がその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が遠心ポンプ内で占めることは本発明に係る方法によって保証される。これを可能とする運転範囲内で遠心ポンプが作動する場合、超臨界流体の移送時に遠心ポンプの非恒常的ポンピング特性と破損は確実に排除される。
【0015】
液状範囲において遠心ポンプ運転の、移送時に達してはならないまたは下まわってはならない限界線は久しく知られている。液体の場合、蒸気圧曲線がこれらの限界線である。限界線を下まわると空洞現象が生じる。それに対して超臨界範囲では、限界線が臨界点で終了するので蒸気圧曲線に類似した限界線は存在しない。
【0016】
超臨界範囲に関して遠心ポンプ運転の、移送時に下まわってはならない限界線は本発明によって初めて定義される。超臨界範囲内で被移送流体の許容外の密度変化を防止する信頼性は本発明に係る方法によって保証される。
【0017】
ポンピング過程中に遠心ポンプ内で圧力が高まり、温度が上昇する。或る流体が遠心ポンプ内で占める諸状態は移送状況と利用される遠心ポンプの形式とに依存している。これらのことは経営者には一般に知られている。本発明で利用される機械および装置は、流体の実在気体係数が少なくとも遠心ポンプへの吸込み部で既にその極小に達しまたは上まわるように流体の吸込状態を構成する。
【0018】
本方法において流体は既に遠心ポンプへの吸込み時に超臨界状態で存在することができる。同様に、流体が遠心ポンプへの吸込み時にまず液状で存在し、遠心ポンプ内ではじめて超臨界状態を占めることも可能である。その場合にも本発明に係る限界線は守ることができる。
【0019】
主に、流体の吸込状態は圧縮機と熱交換器とで調整される。流体が少なくとも1つの圧縮段と1つの冷却段とを通過すると好ましいと実証された。遠心ポンプへの流体の吸込状態は圧縮段および冷却段の数を介して調整される。
【0020】
一般に遠心ポンプ吸込ノズルへの吸込み部での流体状態が吸込状態と見做される。しかし本発明に係る吸込状態は遅くともインペラへの流体吸込み時に達成されていなければならない。
【0021】
本発明の特別好ましい1実施形態では流体の吸込温度および/または吸込圧力が測定されて制御および/または調節ユニットへと転送される。市販の制御装置または調節器を制御および/または調節ユニットとして利用することができる。プロセス制御システムの利用も考えられる。流体の吸込状態を調整するために機械および装置は制御および/または調節ユニットを介して適切に影響を受けることができる。このため制御および/または調節ユニットは信号を機械および装置に送信する。機械および装置の駆動モータもしくはアクチュエータは信号を介して影響を受ける。本発明の有利な1実施形態では、流体の実在気体係数がポンプへの吸込み部でその極小にまだ達していないとき制御および/または調節ユニットは警報を発する。その場合補足的にまたは選択的に設備を安全位置に移動させることもできる。その際、遠心ポンプの停止をもたらすこともできる。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は図を基にした説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】二酸化炭素の実在気体係数と圧力との関係を示す線図である。
【
図3】二酸化炭素について積p・vを圧力の関数として示す線図である。
【
図4a】二酸化炭素の状態図であり、遠心ポンプ運転の本発明に係る限界線が超臨界範囲に書き込まれており、遠心ポンプの運転曲線は完全に許容範囲内を延びている。
【
図4b】二酸化炭素の状態図であり、遠心ポンプ運転の本発明に係る限界線が超臨界範囲に書き込まれており、遠心ポンプの運転曲線はさしあたり完全に禁止範囲内を延びている。
【
図4c】二酸化炭素の状態図であり、遠心ポンプ運転の本発明に係る限界線が超臨界範囲に書き込まれており、吸込点は許容範囲内にあるが、しかし吐出し点はさしあたり禁止範囲内にある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る方法の流れ図が
図1に略図で示してある。流体、ここでは二酸化炭素がまず圧縮機1に流入する。圧縮機1はモータ2で駆動される。この略図は単段または多段圧縮機構造にあてはまる。図示プロセス内の流体および冷却材の吸込状態に依存して圧縮機および熱交換器の段数が変化する。見易くする理由からここでは単に2つのプロセス段が示してあるが、しかし通常はそれ以上である。
【0025】
圧縮機1内で流体が高い圧力にされ、流体温度が上昇する。圧縮機1後に流体は熱交換器3に流入する。冷却材を流通させる熱交換器3が流体流から熱を吸収し、こうして流体温度を下げる。冷却材の量は弁4で調整される。弁4はアクチュエータとしてのモータ5で作動される。
【0026】
熱交換器3後に二酸化炭素は他の圧縮機6または他の圧縮機段に流入することができ、圧縮機がここではモータ7で作動される。他の圧縮機6において流体は、中間冷却器として形成しておくこともできる他の熱交換器8に流入する前に圧力および温度の再上昇を受ける。二酸化炭素流は熱交換器8内で再度冷却される。この冷却は、アクチュエータとしてのモータ10を備えた弁9を介して調節される冷却材流でも行われる。
【0027】
本発明によれば遠心ポンプ11への流体の吸込状態は機械1、6および装置3、8を介して、実在気体係数が既にその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が遠心ポンプ11内で占めるように調整される。このため遠心ポンプ11への吸込み部で通常の圧力および温度測定部13、14によって流体の凝集状態が検出される。測定部13、14は機械1、6および装置3、8を調節する調節ユニット15と接続されている。調節ユニット15は、遠心ポンプ11の上流側で調整される凝集状態に基づいて遠心ポンプが害なく作動できることを保証する。遠心ポンプ11のモータ12も、モータが適宜に形成されている場合調節ユニット15によって影響を及ぼすことができる。可変速モータを使用するとプロセスにとって有利である。そのことは、本方法またはその設備のその都度与えられた境界条件に依存している。
【0028】
略号PIで表した圧力測定部13が二酸化炭素の圧力を測定する。遠心ポンプ11の内部で二酸化炭素が禁止範囲において、実在気体係数がまだその極小に達していない状態を占める虞がある場合、その信号は、二酸化炭素の圧力を調整することのできる調節ユニット15を介して圧縮機1、6のモータ2、7へと転送される。
【0029】
略号TIで表した温度測定部14が二酸化炭素の温度を測定する。実在気体係数がまだその極小に達していない状態を二酸化炭素が遠心ポンプ11の内部で禁止範囲において占める虞がある場合、その信号は調節ユニット15を介して弁4、9のモータ5、10に転送され、この調節ユニットを介して二酸化炭素の温度は熱交換器3、8を流れる冷却材流によって調整することができる。機械1、6および装置3、8を監視するセンサが他にあるとしてもそれらは見易くする理由から図示されておらず、プロセスに影響を及ぼすためにやはり調節ユニット15と接続されてよう。
【0030】
二酸化炭素は後続プロセスに必要な状態で遠心ポンプ11から流出する。二酸化炭素を移送するのに圧縮機のみが利用される従来の方法とは異なり、本発明に係る方法でもって遠心ポンプ内に高い圧力差は付加的中間冷却なしに実現することができる。
【0031】
図2に示した線図では被移送流体の二酸化炭素についてその実在気体係数zが圧力pの関数としてプロットされている。本発明によれば、遠心ポンプ11を流通時に実在気体係数が既にその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が占めるように、流体の吸込状態は機械1、6および/または装置3、8によって調整される。遠心ポンプ内で圧力が高まるとき流体の実在気体係数は同じままでありまたは増加する。
図2に示した遠心ポンプ11の運転曲線16では流体の吸込状態Eも吐出し状態Aも許容範囲内にある。流体は遠心ポンプ11への入口で、実在気体係数zがその極小を既に超過した状態にある。ポンプ11内で流体の圧力pと温度Tが変化する。流体はここで95バールの圧力でポンプ11に流入し、300バールの圧力でポンプ11から流出する。流体の吸込温度は約35℃、流体の吐出し温度は約70℃である。本発明によれば、実在気体係数zが既にその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が遠心ポンプ11内で占めるように、流体の吸込状態は機械1、6および/または装置3、8によって調整された。
【0032】
図2の線図に破線で示した個々の流体等温線の極小を結ぶことによって、超臨界範囲におけるポンピング可能な流体の太い実線の限界曲線17が定義されている。この超臨界範囲は流体の超臨界点kPの右側にある。これにより、本発明によれば超臨界範囲について遠心ポンプ運転の限界曲線17が定義される。二酸化炭素が遠心ポンプ11内で占めてよいのは、この限界曲線17上の状態またはその右側にある状態のみである。この範囲内で二酸化炭素の実在気体係数は既にその極小に達しまたは上まわっている。遠心ポンプ11の運転曲線16は完全に許容範囲内にある。
【0033】
図3が示す線図では二酸化炭素について積p・vが圧力pの関数としてプロットされている。積p・vは実在気体係数zと同様に検討することができる。理想的気体特性について等温線が水平に延びるのに対して、実在気体は
図3に破線の等温線で示した特性を示す。等温線上の積p・vはさしあたり圧力の上昇に伴って小さくなり、極小に達する。各極小を通過後、積p・vは圧力の上昇に伴って再び大きくなる。その際、積p・vはほぼ線形に増加する。本発明によれば流体の吸込状態は機械1、6および/または装置3、8によって、遠心ポンプ11内の流体の積p・vが既にその極小に達しまたは上まわるように調整される。
図3に示す遠心ポンプ11の運転曲線16では流体の吸込状態Eも吐出し状態Aも許容範囲内にある。流体はポンプ11への入口で、実在気体係数zがその極小を既に超過した状態を有する。ポンプ内で流体の圧力pと温度Tが変化する。流体は95バールの圧力でポンプに流入し、300バールの圧力でポンプから流出する。流体の吸込温度は約35℃、流体の吐出し温度は70℃である。本発明によれば流体の吸込状態は機械1、6および/または装置3、8によって、流体の実在気体係数zが既にその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が遠心ポンプ11内で占めるように調整された。運転曲線16は完全に許容範囲内にある。
図2と同様にここでもポンピング限界は太い実線の限界曲線17として示してある。
【0034】
図4a、
図4b、
図4cが示す二酸化炭素の状態図はしばしばフェーズダイアグラムまたはp−T線図とも称される。通常の凝集状態、気状gfおよび液状flの他に、超臨界状態ukも書き込まれている。この線図から明らかとなるように、二酸化炭素は1013バールの標準圧力では液状で存在することができず、−78.5℃において昇華が観察されるだけである。圧力が高まってはじめて二酸化炭素は液状で存在することができる。液体二酸化炭素の移送に関して蒸気圧曲線18が運転状態の限界線であり、この限界線を流体は遠心ポンプ内で占めることができる。液体二酸化炭素は遠心ポンプ内で、蒸気圧曲線18に達しまたは上まわる状態を占めてはならない。というのも、さもないと遠心ポンプ内で空洞現象が起きるからである。蒸気圧曲線18は三重点TPと臨界点kPとによって限定されている。
【0035】
図4aの図では被移送流体の吸込状態Eが許容範囲内にある。流体は遠心ポンプ11への入口で、実在気体係数zがその極小を既に超過した状態を有する。遠心ポンプの内部で流体の圧力と温度が変化する。流体は95バールの圧力でポンプに流入し、220バールの圧力でポンプから流出する。流体の吸込温度は35℃、流体の吐出し温度は59℃である。本発明によれば流体の吸込状態は機械1、6および/または装置3、8によって、流体の実在気体係数が既にその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が遠心ポンプ11内で占めるように調整される。運転曲線16は完全に、限界曲線17によって分割された許容超臨界範囲内にある。
図4aのこの図において許容ポンプピング範囲は限界曲線17の左側にある。
【0036】
図4bの図示例では吸込状態Eも吐出し状態Aも許容範囲内にない。運転曲線16全体が限界曲線17の右側にあり、従って禁止された超臨界範囲内にある。というのも被移送流体の実在気体係数zはその極小にまだ達していないからである。ところで本発明によれば、運転曲線16’全体が許容範囲内にあるように、すなわち流体の実在気体係数が既にその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が遠心ポンプ11内で占めるように、流体の吸込状態は機械1、6および装置3、8によって変更される。これにより運転曲線16全体が変位し、いまや許容運転曲線16’として完全に許容範囲内を延びている。吸込状態は機械1、6および/または装置3、8によって、比較的低い吸込温度Tで流体が遠心ポンプ11に流入するように変更された。これにより運転曲線全体が16から16’へと変位し、いまや本発明によれば遠心ポンプ11内で流体は、実在気体係数zが既にその極小に達しまたは超過した状態のみを占める。それに対する代案として、一層高い吸込圧力pを調整することもできる。吸込状態のこの変更後、すべての状態が許容範囲内にある。
【0037】
図4cの図では流体の吸込状態Eが確かに許容超臨界範囲内にあるが、しかし吐出し状態Aは禁止範囲内にある。その際流体はさしあたりポンプへの入口で、実在気体係数zがその極小を既に超過した状態で存在する。ポンプの内部で流体の圧力と温度が変化する。
【0038】
流体は95バールの圧力でポンプに流入し、220バールの圧力でポンプから流出する。流体の吸込温度は35℃、流体の吐出し温度は130℃である。流体の運転状態は、運転曲線16と太い実線の限界曲線17との交点V以降、流体の実在気体係数がその極小にまだ達しないかまたは上まわっていない値を占める。この交点V以降、運転曲線は禁止範囲内を延びる。ところで本発明によれば、運転曲線16全体が許容範囲内にあるように、すなわち流体の実在気体係数が既にその極小に達しまたは超過した状態のみを流体が遠心ポンプ内で占めるように、流体の吸込状態は機械1、6および装置3、8によって変更される。曲線16の吸込点Eがさらに右に変位し、流体は吸込点E’において比較的低い吸込温度で遠心ポンプ11に流入する。これにより、ここで許容外の運転曲線16全体が新たな許容運転曲線16’として許容超臨界範囲内に変位する。これに対する代案として、一層高い吸込圧力pを調整することもできる。本発明によれば次に遠心ポンプ内で流体は、実在気体係数が既にその極小に達しまたは上まわる状態のみを占める。吸込状態のこの変更後、すべての状態は許容範囲内にある。