【課題を解決するための手段】
【0009】
定義
本発明のさらなる説明の前に、本発明は、記載された特定の実施形態によって限定されないことを理解することが必要である。換言すれば、特定の形式に違いがあってもよい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に従うので、本明細書中の用語は、本発明を限定するのではなく、特定の実施形態を説明することのみを意図したものであることがさらに注意されるべきである。
【0010】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、本明細書で交換可能に使用されてもよい。これらの用語は当業者に周知であり、具体的には、抗原と特異的に結合可能である1種以上のポリペプチドからなるタンパク質をいう。1つの型の抗体が抗体の基本構造単位を構成し、これは四量体である。これは、各対が軽鎖および重鎖を有する2対の完全に同一の抗体鎖からなる。抗体鎖の各対において、軽鎖および重鎖の可変ドメインは一緒に結合されて、抗原との結合の原因となるのに対して、定常ドメインは抗体のエフェクター機能の原因である。
【0011】
現在知られている免疫グロブリンポリペプチドには、κおよびλ軽鎖、α、γ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、δ、εおよびμ重鎖、または他のその等価物が含まれる。免疫グロブリン「軽鎖」(約25kDaまたは約214アミノ酸)は、その全長において、NH2末端に約110アミノ酸からなる可変ドメイン、およびCOOH末端にκまたはλ定常ドメインを含む。同様に、免疫グロブリン「重鎖」(約50kDaまたは約446アミノ酸)は、その全長において、可変ドメイン(約116アミノ酸)およびγなどの重鎖定常ドメイン(約330アミノ酸)のうち1つを含む。
【0012】
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、任意のアイソフォーム抗体または免疫グロブリン、または抗原となお特異的に結合される抗体セグメントを含み、これには、Fab、Fv、scFvおよびFdセグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、ならびに抗体の抗原結合部分および非抗体タンパク質を有する融合タンパク質が挙げられるがこれらに限定されない。抗体は、例えば、放射性同位元素、アッセイ可能な物質を産生することが可能な酵素、蛍光タンパク質、およびビオチンによって、標識および検出されてもよい。さらに、抗体は、ポリスチレンプレートまたはビーズが挙げられるがこれらに限定されない固体支持体と結合できる。この用語はさらに、抗原と特異的に結合することが可能である、Fab’、Fv、F(ab’)
2および/または他の抗体セグメントおよびモノクローナル抗体を含む。
【0013】
抗体はまた、例えば、Fv、Fab、および(Fab’)
2、ならびに二機能ハイブリッド抗体(例えば、Lanzavecchia et al.,Eur.J.Immunol,1987;17,105)を含む種々の型で、ならびに単鎖(例えば、参照により本明細書に引用される、Huston et al.,Proc.NatL Acad.Sci.U.S.A.,1988;85,5879およびBird et al.,Science,1988;242,423)の型で存在してもよい。免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の可変ドメインは、3個の超可変ドメイン(「相補性決定領域」またはCDRとも呼ばれる)からなる。これらの超可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)によって隔てられている。FRおよびCDRの範囲は正確に規定されている(「Sequences of Proteins of Immunological Interest」E.Kabat et al.,U.S. Department of Health and Human Services,1991を参照のこと)。本明細書で説明されるすべての抗体のアミノ酸配列は、Kabatシステムを参照することによって分類されている。同じ種の異なる軽鎖および重鎖FR配列が比較的保存されている。抗体FRはCDRを位置決めおよび較正するために使用される。CDRは抗原エピトープとの結合の主な原因である。
【0014】
キメラ抗体は、構築された重鎖および軽鎖遺伝子を有する抗体、特に、遺伝子操作されかつ異なる種に属する可変ドメインおよび定常ドメイン遺伝子を有する抗体である。例えば、マウスモノクローナル抗体遺伝子の可変ドメインセグメントは、γ1およびγ3などのヒト抗体の定常ドメインセグメントに結合される。例えば、医学的処置において使用されるキメラ抗体は、キメラタンパク質の一種であり、これは、ヒト抗体定常ドメインまたはエフェクトドメインと合わせたウサギ抗体可変ドメインセグメントまたは抗原結合ドメインセグメントである(例えば、A.T.C.C.番号CRL 9688の保存番号を有する細胞を用いて調製された抗Tacキメラ抗体)。当然、キメラ抗体は、他の哺乳動物種からの遺伝子もまた使用できる。
【0015】
「ヒト化抗体」および「ヒト化免疫グロブリン」という用語は同じ意味を有する。非ヒト化型の抗体と比較して、そのヒト化抗体は、典型的には、ヒト宿主における免疫反応を減少させる。
【0016】
本発明に従って設計および産生されたヒト化抗体は、抗原結合または抗体の他の機能に実質的に影響を与えないいくつかの保存性アミノ酸を置き換えてもよいことが理解されるべきである。言い換えると、アミノ酸は、glyおよびala;val、ileおよびleu;aspおよびglu;asnおよびgln;serおよびthr;lysおよびarg;pheおよびtyrの組み合わせの中で相互に置換できる。同じグループの中にないアミノ酸は「実質的に異なる」アミノ酸である。
【0017】
ある実施形態において、抗体とその標的の場所との間の親和性はK
d(解離定数)によって表され、これは、10
−6M、10
−7M、10
−8M、10
−9M、10
−10M、10
−11Mより低いか、または約10
−12M以下である。
【0018】
抗体の重鎖または軽鎖の「可変ドメイン」は、その鎖のN末端における成熟領域である。すべてのドメイン、CDR、および残基の数は、配列アラインメントを通して、そして既存の構造的知見に基づいて規定される。FRおよびCDR残基の決定および番号付けは、Chothiaおよび他の研究者が記載したことに基づいている(Chothia,Structural determinants in the sequences of immunoglobulin variable domain.J Mol Biol.1998;278,457)。
【0019】
VHは抗体の重鎖の可変ドメインである。VLは抗体の軽鎖の可変ドメインであり、これは、κおよびλアイソタイプを含んでもよい。K−1抗体はκ−1アイソタイプを有するのに対して、K−2抗体はκ−2アイソタイプを有し、そしてVλは可変λ軽鎖である。
【0020】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書で交換可能に使用されてもよい。これらの両方は、任意の長さの重合したアミノ酸をいい、これは、コードアミノ酸および非コードアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導されたアミノ酸、および修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含んでもよい。この用語は、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質;N末端メチオニン残基を有するかまたは有さない、異種および同種リーダー配列を有する融合タンパク質;免疫学的タグを有するタンパク質;検出可能な融合パートナーを有する融合タンパク質、例えば、蛍光タンパク質、βガラクトシダーゼ、フルオレセインなどを含む融合パートナーとして機能できる融合タンパク質などが挙げられるがこれらに限定されない、融合タンパク質を含んでもよい。ポリペプチドは任意の長さであり得、「ペプチド」という用語は8〜50残基(例えば、8〜20残基)の長さのポリペプチドをいう。
【0021】
「被験体」、「宿主」、「患者」、および「個体」という用語は本明細書では交換可能に使用されてもよく、具体的には、診断または治療される任意の哺乳動物、特にヒトをいう。他の被験体には、サル、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどが含まれてもよい。
【0022】
「一致するアミノ酸」とは、2個以上のアミノ酸配列が比較されるときに、同じ位置におけるアミノ酸残基をいう(すなわち、これらは互いに一致している)。抗体配列の比較および番号付けの方法は、Chothia(上記を参照のこと)、Kabat(上記を参照のこと)、およびその他によって詳細に記載されてきた。時折、1個、2個、または3個のギャップが作製されてもよく、および/または1個、2個、3個、もしくは4個の残基もしくは最大で約15個の残基(特に、L3およびH3 CDR中)が抗体の1個または2個のアミノ酸の中に挿入され、それによって、比較を完了してもよいことが当業者に知られている(例えば、Kabat 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest,DHHS,Washington,DCを参照のこと)。
【0023】
「置換可能な位置」とは、抗体の結合活性を有意に減少させることなく、異なるアミノ酸によって置換できる、抗体の特別な位置をいう。置換可能な位置を決定するための方法、およびこれらがどのように置換できるかは、以下により詳細に記載される。置換可能な位置は、「変動耐容性位置」と呼ばれることもある。
【0024】
「親の」抗体とは、アミノ酸置換の標的抗体をいう。ある実施形態において、「ドナー」抗体は親の抗体にアミノ酸を「供与」して、変化した抗体を産生する。「関連抗体」とは、類似の配列を有し、共通のB細胞祖先を有する細胞によって産生される抗体をいう。このB細胞祖先は、再編成された軽鎖VJCドメインおよび再編成された重鎖VDJCドメインを有するゲノムを含み、そしてさらに、親和性成熟を受けていない抗体を産生する。脾臓組織に存在するこの「未感作」または「一次」B細胞がB細胞の共通の祖先である。同一のエピトープとの関連抗体の結合は、典型的には、配列、特に、それらのL3およびH3 CDRが非常に類似している。関連抗体のすべてのH3およびL3 CDRが同じ長さおよびほぼ同一の配列を有する(0〜4個の異なるアミノ酸残基を伴う)。関連抗体は、共通の抗体祖先、すなわち、もともとのB細胞祖先によって産生された抗体を通して相関している。
【0025】
発明の要旨
本発明の目的は、VEGFとのより高い親和性を有するモノクローナル抗体を提供することである。本発明に従うVEGFモノクローナル抗体は、配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖の可変ドメイン、ならびに/または配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖の可変ドメインを有する。
【0026】
本明細書における「抗体」は、必要とされる特異性を伴う結合ドメインを有する任意の特異的結合因子を包含するように解釈されるべきである。従って、この用語は、その同種抗体セグメント、誘導体、およびヒト化抗体、ならびに抗体の機能的等価物および相同物を包含し、天然または合成のいずれかである、抗原結合ドメインを有する任意のポリペプチドもまた含む。抗体の例は、免疫グロブリンサブタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)ならびにそのサブタイプおよびサブクラスであり;これは、さらにFab、scFv、Fv、dAb、およびFdなどの抗原結合ドメイン;およびダイアボディを含有するセグメントであってもよい。別のポリペプチドに融合し、抗原結合ドメインまたはその等価物を含有するキメラ分子もまた含まれる。キメラ抗体のクローニングおよび発現はEP.A−0120694およびEP.A.0125023に記載されている。
【0027】
本発明に従うモノクローナル抗体は、例えば、一価または単鎖抗体、二本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ならびに上記の抗体の誘導体、機能的等価物、および相同物であってもよく、そして抗体セグメント、および抗原結合ドメインを含有する任意のポリペプチドをさらに含有してもよい。
【0028】
抗体は、様々な方法を通して修飾されてもよく、DNA組換え技術を使用してもともとの抗体特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子を産生してもよい。この技術は、抗体の免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRをコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常ドメインまたは定常ドメインプラスフレームワーク領域に導入し得る。EP.A.184187、GB 2188638AまたはEP.A.239400を参照のこと。遺伝子変異または他の変化は、抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞に対して実施されてもよく、これは、産生される抗体の結合特異性を変化させてもよいし、変化させなくてもよい。
【0029】
重鎖および軽鎖における高度な可変ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3、ならびにリンカー配列以外では、本発明に従うモノクローナル抗体の残りの部分はフレームワーク領域である。このフレームワーク領域は、結合により必要とされる三次元構造が影響を受けないという条件で、他の配列によって置き換えられてもよい。抗体の特異性の分子的基礎は、主として、その高度な可変ドメインCDR1、CDR2、およびCDR3に由来し、これらは抗原と結合するための鍵となる位置である。好ましい結合特異性を維持するために、CDR配列は可能な限り保持されるべきである。しかし、結合特異性を最適化するためにいくつかのアミノ酸を変化させることが必要であるかもしれない。当業者は標準的な実務を通してこの目的を達成し得る。
【0030】
ある好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、以下のような可変ドメインを含む:例えば、CDR1(SNNDVMCW;配列番号1)、CDR2(GCIMTTDVVTEYANWAKS;配列番号2)およびCDR3(RDSVGSPLMSFDLW;配列番号3)を含む配列番号7を含む重鎖可変ドメイン;ならびに、例えば、CDR1(QASQSIYNNNELS;配列番号4)、CDR2(RASTLAS;配列番号5)、およびCDR3(GGYKSYSNDGNG;配列番号6)を含む配列番号8を含む軽鎖可変ドメイン。
【0031】
最大で6個のアミノ酸の置換に違いがあることを除けば、可変ドメインCDRの改変体は上記のCDRと実質的に同じであり(例えば、1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸の置換)、このモノクローナル抗体のCDRはVEGF結合活性を有する。
【0032】
他の実施形態において、抗体は、a)アミノ酸配列が最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号7とは異なる、重鎖可変ドメイン;およびb)アミノ酸配列が最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号8とは異なる、軽鎖可変ドメインを含んでもよい。標的抗体は、これらの置換のいずれか1つまたはその組み合わせを含んでもよい。
【0033】
同様に、これらの置換位置のいずれか1つを有する抗体、およびすべての置換位置を有する抗体はVEGF結合活性を有する。アミノ酸置換はフレームワーク領域に存在してもよく、CDRはフレームワーク領域またはCDRに同時にまたは単独で出現する。従って、ある好ましい実施形態において、重鎖可変ドメインのフレームワーク領域のアミノ酸配列は、最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号7とは異なってもよく、そして軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域のアミノ酸配列は、最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号8とは異なってもよい。
【0034】
ある抗体において、アミノ酸置換は、複数のCDRに広がってもよい。従って、重鎖可変ドメインの複数のCDRのアミノ酸配列が、最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号7とは異なってもよく、軽鎖可変ドメインの複数のCDRのアミノ酸配列が、最大で6個のアミノ酸置換、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、または6個のアミノ酸置換を有するという点で配列番号8とは異なってもよい。
【0035】
特別に好ましい実施形態において、この抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号7と同じである重鎖可変ドメイン、およびb)アミノ酸配列が配列番号8と同じである軽鎖可変ドメインを含んでもよい。
【0036】
特別に好ましい実施形態において、この抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号7と少なくとも95%同一性を有する重鎖可変ドメイン、およびb)アミノ酸配列が配列番号8と少なくとも95%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含んでもよい。従って、標的抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号7と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する重鎖可変ドメイン、およびb)アミノ酸配列が配列番号8と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する軽鎖可変ドメインを含んでもよい。
【0037】
特別に好ましい実施形態において、この抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号9と同じである重鎖、およびb)アミノ酸配列が配列番号10と同じである軽鎖を含んでもよい。
【0038】
特別に好ましい実施形態において、この抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号9と少なくとも95%同一性を有する重鎖、およびb)アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも95%同一性を有する軽鎖を含んでもよい。従って、標的抗体は、a)アミノ酸配列が配列番号9と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する重鎖、およびb)アミノ酸配列が配列番号10と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一性を有する軽鎖を含んでもよい。上記に記載されたアミノ酸置換に加えて、標的抗体は、重鎖または軽鎖の両端においてさらなるアミノ酸を有してもよい。例えば、標的抗体は、重鎖および/または軽鎖のC末端またはN末端において、それぞれ、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、または6個以上のさらなるアミノ酸を含んでもよい。ある実施形態において、標的抗体は、本明細書に記載される例示的なアミノ酸よりも短くてもよく、その主な違いは、重鎖および軽鎖の2つの末端が、それぞれ、例示的なアミノ酸よりも1個、2個、3個、4個、5個、または6個少ないアミノ酸を有することである。
【0039】
標的抗体はヒト化されてもよい。一般的に言えば、ヒト化抗体は、親の抗体のフレームワーク領域においてアミノ酸置換を実施することを通して修飾された抗体であり、そして親の抗体と比較して、ヒト化抗体は、より低い免疫原性を有する。抗体は、CDR移植(ERA−239、400;PCT公開WO 91/09967;米国特許第5,225,539号;同第5,530,101号;および同第5,585,089号)および鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)などを含む当該分野において周知である多くの技術を用いてヒト化されてもよい。ある好ましい実施形態において、フレームワーク置き換えは、CDRとフレームワーク残基の間との相互作用を模倣することを通して抗原結合におけるフレームワーク残基の重要性を明らかにし、そして配列アラインメントを通して通常ではないフレームワーク残基を同定する(例えば、米国特許第5,585,089号;Riechmann,et al.,Nature,1988;332,323を参照のこと)。抗体ヒト化方法の具体的な詳細のための2004年11月8日に出願されかつ「Methods for antibody engineering」という表題の米国特許出願第10/984,473号を参照のこと。この出願は、その全体が参考として組み込まれる。一般的に言えば、このようなヒト化方法は、同一の抗原を結合することが可能である抗体配列を比較することを通しての適切な部位の同定、およびその部位上のアミノ酸を類似のアミノ酸の同じ部位における異なるアミノ酸で置換することを含む。これらの方法に従って、親の抗体のアミノ酸配列は、他の関連する抗体と比較され(例えば、配列アラインメント)、それによって、変動耐容性位置を同定する。典型的には、親の抗体の可変ドメインのアミノ酸配列は、ヒト抗体データベース中のアミノ酸配列と比較され、親の抗体と類似のアミノ酸配列を有するヒト化抗体が選択される。親の抗体の配列とヒト化抗体の配列が比較され(例えば、配列アラインメント)、親の抗体の1個以上の変動耐容性位置のアミノ酸が、ヒト化抗体中の対応する位置におけるアミノ酸によって置換される。
【0040】
変動耐容性位置の上記の置換方法は、任意の公知のヒト化方法と容易に合わせられることができ、CDRを含むヒト化抗体の産生において容易に応用されることができ、これらの抗体のCDRは修飾されるが、親の抗体のCDRに対して忠実である。従って、本発明は、親の抗体の修飾バージョンからの複数のCDRを含むヒト化VEGF中和抗体をさらに提供する。
【0041】
先行技術に従う製品であるアバスチンと比較すると、本発明に従うヒト化ウサギ抗VEGFモノクローナル抗体の方が、より低い解離定数Kdを有し(本発明に従うモノクローナル抗体は0.485nMのKdを有するのに対して、アバスチンのKdは47.9nMである)、本発明に従うモノクローナル抗体はVEGFとのより高い親和性を有し、本発明がVEGFに対してより強い阻害を有することを示す。マウスモデルを用いる実験は、本発明に従う抗体がアバスチンよりも著しく高い腫瘍阻害速度を有することを示した(実施例5を参照のこと)。従って、本発明はアバスチンよりも理論的に高い潜在的な臨床治癒効果を有する。
【0042】
1つの実施形態において、本発明に従うモノクローナル抗体は、配列番号9によって示されるその重鎖アミノ酸配列および配列番号10によって示されるその軽鎖アミノ酸配列を有する、保存番号CGMCC No.3233の
細胞株によって産生される。そのVEGFとの解離定数は0.485nMであり、これはアバスチンの解離定数の1/100であり、このことは、アバスチンよりもEPI003がVEGFとのより強い結合能力を有することを示す。
【0043】
本発明はさらに、the China General Microbiological Culture Collection Centerに保存されており、保存番号CGMCC No.3233を有する
細胞株を提供する。これはモノクローナル抗体を産生し、この抗体は、配列番号9として示される重鎖アミノ酸配列および配列番号10として示される軽鎖アミノ酸配列を有する。本発明に従う実施形態において、これはEPI0030抗体と名付けられる。細胞実験およびインビボ動物実験は、この抗体がVEGFによって誘導される内皮細胞の増殖および移動のインビトロ阻害が可能であり、そして動物の体内で腫瘍増殖を阻害できることを示してきた。この抗体はVEGF関連疾患を治療するために使用できる。
【0044】
本発明はさらに、VEGF関連疾患を治療するために薬物を調製する際のこのモノクローナル抗体の適用を提供する。このVEGF関連疾患には、腫瘍、AMD、神経変性疾患、肥満、および糖尿病が含まれる。この標的抗体は、発生生物学、細胞生物学、代謝、構造生物学、および機能ゲノミクスを含む様々な分野における研究などのVEGF関係研究、または腫瘍、AMD、神経変性疾患、肥満、および糖尿病などに対する薬学的研究において使用されてもよい。
【0045】
本発明はさらに、有効量の上記のモノクローナル抗体および薬学的に許容されるキャリアを含むことを特徴とする薬学的組成物を提供する。
【0046】
本発明はさらに、上記のモノクローナル抗体を含む試薬、キット、またはチップを提供する。
【0047】
本発明はさらに、VEGF活性を阻害するためにこの標的抗体を使用し、VEGF関連疾患を治療するためにこの標的抗体を使用し、またはVEGF関連診断およびアッセイを実施するためにこの抗体を含むキットを使用する方法を提供する。
【0048】
本発明に従う抗体分子が調製されるとき、これは、免疫グロブリン分子を精製するための当該分野において公知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、特に、プロテインAを通しての特定の抗原のためのアフィニティークロマトグラフィー、および他のカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の違い、またはタンパク質を精製するための任意の他の標準的な技術を用いて精製できる。多くの実施形態において、抗体は細胞から培養培地に分泌され、そして抗体は培養培地を収集することおよび精製を通して得られる。
【0049】
抗体は様々な手法を通して修飾されてもよく、DNA組換え技術を使用して、もともとの抗体の特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子を産生してもよい。この技術は、抗体の免疫グロブリン可変ドメインまたはCDRをコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常ドメインまたは定常ドメインプラスフレームワーク領域に導入してもよい。EP.A.184187、GB 2188638A、またはEP.A.239400を参照のこと。遺伝子変異または他の変化もまた、抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞に対して実施されてもよく、これは、産生された抗体の結合特異性に変化を与えてもよいし、変化を与えなくてもよい。
【0050】
本発明において使用されるモノクローナル抗体はまた、ハイブリドーマ法を用いて調製されてもよい。本発明に従うヒト化抗体をコードするDNA配列は、当業者に公知の従来的な手段、例えば、本発明において公開されるアミノ酸配列の人工合成またはPCR増幅などを通して入手できるので、従って、この配列はまた、組換えDNA法を用いて、および当該分野で公知である種々の方法を用いて、適切な発現キャリアに連結できる。最終的に、本発明に従う抗体の発現のために適切な条件下で、当業者は、得られた宿主細胞を培養および形質転換し、次いで、周知の従来的な分離および精製手段を利用して、本発明に従うモノクローナル抗体を精製する。
【0051】
上記のように、本発明は、本発明に従う抗体を実行するための試薬、キット、またはチップをさらに提供する。これらの試薬、キット、またはチップは、以下の1つ以上を少なくとも含む:上記の方法に従って調製される抗体、この抗体をコードするリボヌクレオチド、またはこの抗体を含有する真核生物細胞、原核生物細胞、およびウイルス。この抗体はヒト化されてもよい。
【0052】
これらの試薬、キット、またはチップの他の任意の成分には、抗体活性アッセイの実験を実施するための制限エンドヌクレアーゼ、プライマーおよびプラスミド、緩衝溶液などが含まれる。これらの試薬、キット、またはチップの核酸は、非ウサギ抗体核酸とのこれらの接続のための制限エンドヌクレアーゼ部位、マルチプルクローンサイト、プライマーサイトなどをさらに含んでもよい。これらの試薬、キット、またはチップのすべての成分は、別々の容器に個別に保存されてもよく、またはいくつかの適合可能な成分が必要に応じて単一の容器にあらかじめ集められてもよい。
【0053】
薬学的に許容されるキャリアは、標的抗体を調製するときに加えられてもよい。「薬学的に許容されるキャリア」という用語は、天然または合成であってもよく、抗体と合わせた後で抗体の適用を促進できる、1種以上の有機または無機成分をいう。薬学的に許容されるキャリアは、滅菌生理食塩水溶液、または薬学的に利用可能でありかつ当該分野において公知である他の水系もしくは非水系等浸透圧性溶液および滅菌懸濁液を含む。「有効用量」とは、病理学的状態、変性状態、または損傷状態の進行を改善させることができるかまたは遅らせることができる用量をいう。
【0054】
有効用量の定義は個体ベースであり、具体的には、これは、徴候の治療、および個体に基づく結果を模索することを考慮する。有効用量は当該分野における一般的な技術を通して決定され、これを使用するためのこれらの因子は従来的な実験を超えるものではない。
【0055】
生物学的材料の保存の説明
保存番号CGMCC NO.3233を有する
細胞株は、2009年8月20日にDatun Road,Chaoyang District,Beijingの所在地で保存されており、その分類名はチャイニーズハムスター卵巣細胞である。