(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図2】
図1に示したツインクラッチに用いられる半径方向内側に配置された多板クラッチK2の操作時の内部のパワーフローの概略図である。
【
図3】
図1および
図2に示したツインクラッチの支承形態の概略図である。
【
図4】遊びなしの摩擦板支持体が設けられた別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図5】組立て式の摩擦板支持体に関する概略図である。
【
図6】組立て式の摩擦板支持体に関する概略図である。
【
図7】二重環状ピストン(「CSC」)を介して操作される、内部で閉じられたパワーフローを有する別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図8】油供給部において軸方向遊び補償される、変速機軸に対して不動の別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図9】半径方向の油供給部を備えた、軸方向に浮動支承された別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図10】フレキシブルプレート支承を伴った、軸方向に浮動支承された別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図11】フレキシブルプレート支承を伴いかつパイロットを備えた、軸方向に浮動支承された別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図12】乾式のZMSを備えた別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図13】乾式のZMSを備えた別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図であり、外側のクラッチK1の外側摩擦板支持体とクラッチカバーとの間のスラスト軸受けが省略されている。
【
図14】内部で閉じられたパワーフローと、湿式のZMSと、遠心振り子(「FKP」)とを有する別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図である。
【
図15】内部で閉じられたパワーフローと、湿式のZMSと、遠心振り子(「FKP」)とを有する別の実施の形態に係るツインクラッチの半割断面図であり、
図14に示した金属薄板ジョーもしくは緊締ジョーが省略されている。
【0015】
本発明を以下に有利な実施の形態につき対応する図面を参照しながら詳しく説明する。
【0016】
図1には、半径方向で内外に嵌め合わされた2つの湿式の多板クラッチK1,K2から成るツインクラッチ1が示してある。このツインクラッチ1では、クラッチK1が半径方向外側に配置されており、クラッチK2が半径方向内側に配置されている。ツインクラッチ1は、このクラッチ1に前置された(図示していない)デュアルマスフライホイール(以下、ZMSとも呼ぶ)の出力ハブ2によって駆動される。ZMSとツインクラッチ1との間には、クラッチカバー3が位置している。このクラッチカバー3は湿室4を乾室5から分離している。クラッチカバー3を、パワートレーンにおいて引き続き配置された変速機(図示せず)の変速機ハウジング7に対して静的にシールすることは、有利にはOリング6またはその他の固定用のシールエレメントを介して行われる。ツインクラッチ1に対して、シールは、有利には、運動用のシールエレメントとしての回転軸用シールリング8を介して行われる。
【0017】
ZMSの出力ハブ2は歯列を介してクラッチハブ9に相対回動不能に結合されている。このクラッチハブ9は、半径方向で内外の嵌合いにおいて外側に配置されたクラッチK1の入力側の摩擦板支持体10に結合されている。択一的には、クラッチハブ9と入力側の摩擦板支持体10とが一体に形成されてもよい。多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10(=外側の入力摩擦板支持体10)と、この入力側の摩擦板支持体10に相対回動不能に結合されたクラッチハブ9とは、(中実軸として形成された)第1の変速機入力軸15にラジアル軸受け16を介して半径方向で支持されている。入力側の摩擦板支持体10は歯列範囲を有している。この歯列範囲には、外側の多板クラッチK1の摩擦板セットの入力側の摩擦板11が取り付けられており、これによって、この外側の入力側の摩擦板11が、相対回動不能であるものの軸方向に移動可能に配置されている。この外側の入力側の摩擦板11は、外側の出力側の摩擦板12と交互に配置されている。外側の入力側の摩擦板11と、これと交互に配置された外側の出力側の摩擦板12とは、一緒にクラッチK1の摩擦板セットを形成している。外側の出力側の摩擦板12は、相対回動不能であるものの軸方向に移動可能に外側の多板クラッチK1の外側の出力側の摩擦板支持体13に結合されている。多板クラッチK1の外側の出力側の摩擦板支持体13はハブ14を有している。このハブ14は、ツインクラッチ変速機(図示せず)の変速機入力軸15に結合されている。
【0018】
外側の多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10は、この入力側の摩擦板支持体10に取り付けられた結合金属薄板17を介して、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の内側の入力側の摩擦板支持体18に結合されている。半径方向内側に配置された多板クラッチK2の内側の入力側の摩擦板は、内側の入力摩擦板支持体の歯列範囲に、相対回動不能であるものの軸方向に移動可能に取り付けられている。半径方向内側に配置されたクラッチK2の内側の入力側の摩擦板は、内側の出力側の摩擦板と交互に配置されている。この内側の出力側の摩擦板は、多板クラッチK2の内側の出力側の摩擦板支持体19に、相対回動不能であるものの軸方向に移動可能に配置されている。この内側の出力側の摩擦板支持体19はハブ範囲を有している。このハブ範囲で内側の出力側の摩擦板支持体19は、(中空軸として形成された)第2の変速機入力軸20に結合されている。
【0019】
半径方向内側に配置された多板クラッチK2の内側の出力側の摩擦板支持体19は、波形ばね21によって(構造に起因して必要である場合には結合片22も介して)スラスト軸受け23を介在させて、半径方向外側に配置された多板クラッチK1の外側の出力側の摩擦板支持体13に向かって押圧される。波形ばねの代わりに、別のばねエレメント、たとえば皿ばねセットが使用されてもよい。半径方向外側に配置された多板クラッチK1の外側の出力側の摩擦板支持体13は、さらに、別のスラスト軸受け24を介在させて、半径方向外側に配置された多板クラッチK1の外側の入力側の摩擦板支持体10もしくはクラッチハブ9に向かって押圧される。半径方向外側に配置された多板クラッチK1の外側の入力側の摩擦板支持体10は、さらに、別のスラスト軸受け25を介在させてクラッチカバー3に向かって押圧される。このクラッチカバー3は変速機のハウジング7に位置固定エレメント26を介して支持されている。特に
図1に認めることができるように、軸受け23,24,25は、有利にはスラスト(針状ころ)軸受けとして形成されている。結合片22は、内外の出力側の摩擦板支持体の間に冷却油に対する流路が可能となるように形成されている。
【0020】
変速機入力軸15,20は、本実施の形態では、同軸的にかつ内外に嵌め合わされて配置されている。外側の変速機入力軸20はハウジング7内に支持軸受け38を介して支持されており、内側の変速機入力軸15は外側の中空軸20内に支承部を介して支持されている。
【0021】
さらに、ツインクラッチ1は、両多板クラッチK1,K2に対する中央のクラッチ切断機構として形成された操作装置27を有している。この操作装置27はハウジング28を備えている。このハウジング28は、変速機のハウジング7に支承球面29を介して支持されている。本実施の形態では二重環状ピストン式の接続機構(以下、ダブルCSCとも呼び、CSCは、「
Concentric
Slave
Cylinder(コンセントリックスレーブシリンダ)」を意味している)として形成された操作装置27は、円環状のかつ互いに同心的に配置された2つのピストン31,32を有している。
【0022】
図1〜
図4に示した操作装置27の種々の実施の形態では、円環状の両ピストン31,32が互いに滑動し合うようになっている。これによって、クラッチK1の外側のピストン31の内径が同時にクラッチK2の内側のピストン32に対するシール面を成している。択一的には、両ピストン31,32が、シール部材を滑動させることができる1つの円環状のウェブもしくはセパレータによって互いに分離されている実施の形態も可能である。このような択一的な実施の形態によって、シール部材によりピストン31,32に与えられる相互の影響を排除することができる。
【0023】
しかし、前述した操作装置27の可能な形態は、専ら幾つかの例を示したに過ぎない。環状ピストンの代わりに、円環と異なる横断面形状を備えたピストンおよび/または全周に沿って分配されて複数の個々のピストンが設けられていてもよい。また、ピストン/シリンダユニットの代わりに、電動式のもしくは電気機械式の切断機構が設けられてもよい。さらに、機械式の操作装置、特に梃子操作式の装置が設けられていてもよい。
【0024】
環状ピストン31,32のピストンシール部材は、本実施の形態では、エラストマシール部材として形成されている。このエラストマシール部材は各ピストンに形状接続的な結合部を介して結合されている。この形状接続的な結合部として、たとえばピストンに設けられた円錐形の溝が可能である。この溝内には、エラストマシール部材の対応するキーまたはエラストマシール部材それ自体が結合される。択一的には、たとえばPTFEから成る嵌込み式のシール部材も可能であるし、エラストマの射出成形によりピストンに直接固着したエラストマシール部材も可能である。
【0025】
環状のピストン31,32は接続機構ハウジング28によって収容される。この接続機構ハウジング28に設けられた孔(図示せず)は、ピストン31,32を圧油を介して操作するために働く。
【0026】
付加的には、接続機構ハウジング28が、ピストン31,32を支承球面29を介してクラッチベル4、つまり、釣鐘状のクラッチケース4の内部に半径方向で位置決めすることを引き受けている。
【0027】
操作装置27の各操作ユニットは、操作軸受け33,34を介して力伝達装置に結合されている。この力伝達装置によって、各多板クラッチK1,K2に各操作力が伝達される。本実施の形態では、各力伝達装置が、各軸受け33,34に接触しているほぼ剛性的な押圧ポット35A,35Bを有している。ここで念のために付言しておくと、当然ながら、各押圧ポット35A,35Bは、ある程度のばね作用を招く弾性を有している。しかし、ツインクラッチの前述した操作力に関連して、押圧ポット35A,35Bは「ほぼ剛性的」と仮想することができる。さらに、各力伝達装置は、各押圧ポット35A,35Bに接触している梃子ばね36A,36Bを有している。この梃子ばね36A,36Bは、それぞれ対応する多板クラッチK1,K2に設けられた摩擦板支持体に取り付けられている。取付け点は、梃子ばね36A,36Bに対する各旋回点を成している。梃子ばね36A,36Bの梃子比によって、操作ユニットにより発生させられた操作力の力変換が行われる。さらに、各力伝達装置は押圧片37A,37Bを有している。この押圧片37A,37Bは、対応する梃子ばね36A,36Bに接触していて、各多板クラッチK1,K2の摩擦板セットの摩擦板に作用結合されている。押圧片37A,37Bは操作力を多板クラッチK1,K2の摩擦板セットに伝達する。押圧片37A,37Bは半径方向外側の範囲で入力側の各摩擦板支持体の歯列に軸方向に移動可能に取り付けられていて、この歯列によって半径方向でセンタリングされる。操作力の梃子変換の代わりに、操作軸受け33,34と摩擦板セットとの間に配置された押圧ポット35A,35Bを介した直接的な操作、すなわち、1:1の梃子比での操作も可能である。
【0028】
操作装置27のハウジング28の外側の周面範囲には、(カバー軸受けとも呼ぶ)支持軸受け30が配置されている。この支持軸受け30は、半径方向外側の多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10に引張ポット31を介して結合されている。支持軸受け/カバー軸受け30のインナレースは、ハウジング28に形成されたつばを介してハウジング28に、そして、支持軸受け/カバー軸受け30のアウタレースは、引張ポット31に、それぞれ多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10から戻された操作力がハウジング28に伝達可能となるように支持されている。操作力を接続機構ハウジング28に引張ポット31と一緒に戻す支持軸受け30は、有利にはバヨネット結合を介して接続機構ハウジング28に結合される。
【0029】
一方のピストンもしくは両方のピストンの加圧時には、このピストンが、(
図1においてZMSの出力ハブ2の左側に配置された)クランクシャフトの方向に運動させられ、その際、対応する押圧ポット35A,35Bの連動によって各梃子ばね36A,36Bを操作する。この梃子ばね36A,36Bは、さらに、対応する押圧片37A,37Bを介して操作力を摩擦板セットに導入する。操作力は、半径方向内側に配置されたクラッチK2では、入力摩擦板支持体18と、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の入力側の摩擦板支持体と半径方向外側に配置された多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10との間に設けられた(結合金属薄板とも呼ぶ)結合片17とを介して伝達される。入力側の摩擦板支持体10は、さらに、操作力を、支持軸受け30を介して接続機構ハウジング28に結合された引張ポット31に伝達する。
【0030】
半径方向外側に配置されたクラッチK1では、導入された操作力が直接的に入力摩擦板支持体10を介して引張ポット31に戻され、ひいては、支持軸受け30を介して接続機構ハウジング28に戻される。
【0031】
すなわち、本実施の形態におけるダブルCSCは、押圧ポット35A,35Bに原動機の方向で作用する押圧力を発生させ、ハウジング28には、逆方向に向けられた相応に大きな反力が発生させられ、引張ポット31と支持軸受け30とを介して再び操作力が同じ量および同じ方向でハウジング28に戻される。すなわち、支持軸受け30が操作力を接続機構ハウジング28に伝達することによって、クラッチ1の内側で内部のパワーフロー(力伝達経路)が閉じられる。多板クラッチK2を操作するための操作力の流れは、
図2に破線L1によって概略的に示してある。すなわち、本実施の形態では、多板クラッチK1,K2を操作するために、半径方向の油供給時の外的な力が不要となるかもしくは軸方向の油供給時の外的な力がほぼ不要となる。したがって、クラッチ1によって、クラッチケース4に対するまたは機関側での操作力の支持が不要となる。
【0032】
ハイドロリック媒体(操作モジュール)は、操作装置に、クラッチケース4に接続された管継手を介して供給される。
【0033】
接続機構ハウジング28は、支持軸受け30の内部の軸受け摩擦が接続機構ハウジング28の回転を招かないようにするために、クラッチケース4の内部にトルク支持部材を有している。このトルク支持部材として、圧力供給のための管継手を使用することができる。択一的には、クラッチの組付け時にクラッチケース底部に係合するピンまたはこれに類する構成部材ごとに別個の支持部材が設けられていてもよい。
【0034】
図3には、
図1に示した実施の形態に係るクラッチ1の半径方向の支承部と軸方向の支承部とが矢印P1〜P5によって概略的に示してある。
【0035】
半径方向で見て、ツインクラッチ1の、機関回転数で回転する全ての構成要素は、変速機側では接続機構ハウジング28に支承されていて、機関側では中実軸15に支承されている。矢印P1は、接続機構ハウジング28に対する、半径方向外側に配置された多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体10と、この構成部材に結合された構成部材との支持点を示している。接続機構ハウジング28は、さらに、矢印P2によって示したように、支承球面29を介してケース底部(変速機ハウジング)に支持されている。支承球面29は中実軸15と変速機側の支承基部との間の角度補償部を成している。中実軸15は、矢印P3によって示したように、機関側で軸受け16を介して、半径方向外側に配置されたクラッチK1の入力側の摩擦板支持体10を支持している。各変速機入力回転数で中実軸15と中空軸20とによって回転するクラッチ構成要素14,19は、軸に装着されたハブ/ハブ範囲を介して半径方向に支承されている。
【0036】
支承球面29の代わりに、有利には外側の変速機入力軸に配置されたラジアル針状ころ軸受けによって、外側の変速機入力軸に対する半径方向の支持が利用されてもよい。
【0037】
軸方向で見て、クラッチ1はクラッチカバー3に支持されている。支持力は波形ばね21によって加えられる。軸方向の支承点は、矢印P4,P5によって示してある。波形ばね21は、中空軸20に取り付けられた位置固定リングと、多板クラッチK2の出力側の摩擦板支持体19のハブとに支持されている。多板クラッチK2の出力側の摩擦板支持体19は軸方向力をスペーサディスク22を介して、出力側の摩擦板支持体13もしくは出力側の摩擦板支持体13のハブ範囲14に位置するスラスト針状ころ軸受け23に導く。多板クラッチK1の出力側の摩擦板支持体13は、さらに、スラスト針状ころ軸受け24を介してクラッチK1の入力側の摩擦板支持体10に支持されている。この入力側の摩擦板支持体10は別の針状ころ軸受け25を介してクラッチカバー3に支持されている。これによって、クラッチシステム1が常にクラッチカバー3に位置決めされている。波形ばね21を介して、軸方向振動と誤差とを補償することができる。スラスト針状ころ軸受け23,24,25の代わりに、スラストワッシャが使用されてもよい。本実施の形態に係るクラッチ1のスラスト支承の前述した形態は、前述した内部で閉じられたパワーフローに関係なく、すなわち、別の形態の操作力伝達経路において使用されてもよく、一般的にツイン(湿式)クラッチに対する別個に使用可能な解決手段を成している。
【0038】
図4には、本発明に係るマルチクラッチ装置の別の実施の形態が示してある。この実施の形態は操作力伝達経路の思想に関して、すでに前述した実施の形態に完全に対応している。したがって、
図1〜
図3に示した実施の形態と
図4に示した実施の形態とにおける操作装置に関する前述した全ての特徴は互いに合致している。さらに、この実施の形態でも、やはり支承球面29が設けられており、これによって、操作ハウジング28が変速機ハウジング7に半径方向で支持され、軸線オフセットが補償される。しかし、
図4に示した実施の形態は、内燃機関から到来した回転むらを減衰するために使用されるエレメント、つまり、ZMSおよび/または遠心振り子の点で前述した実施の形態と異なっている。したがって、
図4に示した実施の形態によれば、ZMS39だけでなく、遠心振り子40もクラッチケース4内、すなわち、湿室それ自体内に配置されている。この湿室は乾室5に対してクラッチカバー41によって仕切られている。このクラッチカバー41は、この実施の形態では、クラッチをスラスト支承するために設けられていない。むしろ、クラッチカバー41は専らシール装置6,8による湿室4と乾室5との間の分離部材を成している。
【0039】
ZMS39は一次側のZMS金属薄板42を有している。このZMS金属薄板42は、この実施の形態では、ポット状に形成されていて、その半径方向内側の範囲にパイロットピン43を有している。このパイロットピン43はクランクシャフト45の凹部44内に係合していて、一次側のZMS金属薄板42をセンタリングしている。この一次側のZMS金属薄板42はその半径方向外側の範囲にポケット状の範囲を有している。この範囲内には、ばねエレメントが収容されている。エネルギ蓄え器46の、ポケットに接触しない端範囲は、二次側のZMSフランジ47に作用結合されている。この二次側のZMSフランジ47は、ほぼ円筒状の歯列付き金属薄板48にリベット49を介して結合されている。歯列付き金属薄板48は、半径方向外側に配置されたクラッチK1の入力側の摩擦板支持体として働く。
【0040】
入力側の摩擦板支持体48は、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の入力側の摩擦板支持体51に結合金属薄板50を介して結合されている。さらに、この結合金属薄板50は遠心振り子40に結合(この実施の形態では一体に形成)されており、これによって、ZMS39と遠心振り子40とが一緒に歯列付き金属薄板48に(有利にはリベット49を介して)結合されていて、これに相応して、並列に接続されている。
【0041】
歯列付き金属薄板48は、引張ポット52を介して支持軸受け53に結合されている。この支持軸受け53は(すでに前述したような)接続機構ハウジング28に配置されている。
【0042】
多板クラッチK1の出力側の摩擦板支持体54は、中実軸15に相対回動不能に配置されている。多板クラッチK2の出力側の摩擦板支持体55は、中空軸20に相対回動不能に配置されている。多板クラッチK2の出力側の摩擦板支持体55には、波形ばね21を介して、位置固定エレメント21Aと結合エレメント22とに相俟ってスラスト軸受けの介在下で出力側の摩擦板支持体54に向かって予荷重が加えられている。多板クラッチK1の出力側の摩擦板支持体54には、別のスラスト軸受けの介在下で一次側のZMSフランジ42(「ZMS金属薄板」とも呼ぶ)に対して荷重が加えられている。この一次側のZMS金属薄板42には、ドライブプレート56が不動に配置されている。このドライブプレート56はねじ締結部材57を介してフレキシブルプレート58に結合されている。このフレキシブルプレート58は別のねじ締結部材59を介してクランクシャフト45に結合されている。
【0043】
操作装置27はやはり操作ユニットを有している。この操作ユニットは、この実施の形態では、ピストン/シリンダユニットとして形成されている。このピストン/シリンダユニットは、すでに前述したように、それぞれ押圧ポットと、梃子ばねと、押圧片とから成る力伝達装置を介して多板クラッチK1,K2の各摩擦板セットに作用する。
【0044】
すなわち、
図4に示したクラッチ100は、フレキシブルプレート58を介して内燃機関に結合されている。ドライブプレート56と一次側のZMS金属薄板42とは、直接的に(有利には油密に)互いに結合されていて、軸方向でドライブプレート56と一次側のZMS金属薄板42との間に介装されたクラッチカバー41を回転軸用シール8と共に収容している。
【0045】
ZMS39の一次側の構成要素は、パイロットピン43を介してクランクシャフト45に直接支承されている。
【0046】
ZMS39の二次側のフランジ47は、この実施の形態では、同時に多板クラッチK1の端摩擦板を成している。
【0047】
多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体48は、(すでに述べたように)リベット締めされた変化形態として形成されている。
【0048】
このリベット締めされた摩擦板支持体の実施の形態は、
図5および
図6に示してある。
【0049】
図5には、(
図4の入力側の摩擦板支持体に対応させて)組立て式の摩擦板支持体134が詳細に断面図として示してある。この摩擦板支持体134は、フランジ部材113aと、支持ディスク136と、軸方向でフランジ部材113aと支持ディスク136との間に配置された、全周にわたって分配された結合エレメント190とから形成される。図示の実施の形態では、結合エレメント190が、予め曲げ加工された金属薄板部材191から形成されている。この金属薄板部材191は、軸方向に延びる複数のリベットピン192,193を有している。これらのリベットピン192,193は、フランジ部材113aもしくは支持ディスク136に設けられた対応する開口194,195を通してガイドされていて、フランジ部材113aもしくは支持ディスク136に対して外側でリベット締めされている。金属薄板部材191の、周方向に向けられた端部は、歯側面196を形成するために、半径方向内向きに面取りされているかまたは曲げ加工されており、これによって、金属薄板部材191の横断面で見て、歯側面異形部が形成される。この歯側面異形部には、摩擦板138が取り付けられている。このためには、この摩擦板138が相補的な外側異形部197を有しており、これによって、摩擦板138が摩擦板支持体134に対してセンタリングされており、この摩擦板支持体134に加えられたトルクが摩擦板138に伝達される。この摩擦板138は、相対回動不能であるものの軸方向に制限されて移動可能に出口側の摩擦板支持体142に取り付けられた摩擦板140と交互に積層されている。
【0050】
図6には、前述した摩擦板支持体に対して択一的に形成された組立て式の摩擦板支持体135aが示してある。この摩擦板支持体135aは、
図5の結合エレメント190に対応させて形成された結合エレメント198を有している。この結合エレメント198は端摩擦板172aと支持ディスク136との間にリベット締めされている。さらに、
図6には、軸方向に延長されたピン186を備えた結合エレメント190aが示してある。この結合エレメント190aは、たとえば複数の周方向位置において
図5の結合エレメント190の代わりに用いられていて、ピン186が摩擦リング187をクラッチユニットのハウジングに対して周方向に連行して、摩擦装置185を制御することにより、この摩擦装置185に対する摩擦板支持体134の作用を可能にしている。
【0051】
図4に示した実施の形態によれば、個々の歯列付き金属薄板は2つの異なる長さを有していて、全周にわたって交互に分配されている。短い方の歯列付き金属薄板は、多板クラッチK1,K2の入力側の摩擦板支持体48,51の結合金属薄板50にリベット締めされている。長い方の歯列付き金属薄板は、操作力を接続機構ハウジング28に戻す引張ポット52に結合されている。この段付けられた歯列付き金属薄板によって、遠心振り子がZMSの二次側のフランジに回動遊びなしに結合されている。これによって、引張ポット52が多板クラッチK1の入力側の摩擦板支持体48に形状接続的にかつ力を伝達するように結合されていて、発生させられた操作力を受け止めることができる。
【0052】
図7には、クラッチにカバー軸受けを介して統合された、ハウジングに対して不動のCSCとしての二重環状ピストン式の接続機構を介して操作されて、内部で閉じられたパワーフローを形成する湿式ツインクラッチが示してある。基本的な構造は、
図1に示した実施の形態に対応している。以下にさらに詳しく説明するように、二重環状ピストン式の接続機構のピストンは、この実施の形態では、接続力を調整ディスクを介して多板クラッチK1,K2の摩擦板セットに導入する。内側のクラッチK2では、操作力が外側摩擦板支持体(=入力摩擦板支持体)と中間ウェブ(=結合金属薄板214)とを介して外側のクラッチの外側摩擦板支持体に伝達される。そこから、力は位置固定リング229とクラッチカバー220(=引張ポット)とを介してカバー軸受け221に戻される。このカバー軸受け221は力を位置固定リング230を介してCSCに戻し、ひいては、パワーフローを閉じる。外側のクラッチK1では、力は、摩擦板セット以降、外側摩擦板支持体211と、位置固定リング229と、クラッチカバー220と、カバー軸受け221と、このカバー軸受け221とCSCハウジングとの間に設けられた位置固定リング230とを介して戻る。したがって、操作時には、周辺に力が導入されない。
【0053】
図7には、自動車、たとえば乗用車またはトラックに用いられるパワートレーンのうち、入力軸200を備えた(図示していない)原動機(この実施の形態では、クランクシャフトを備えた内燃機関)の後方の部分が詳しく示してある。入力軸200は、ZMSの入力側部材201に結合されている。この入力側部材201はスタータリングギヤ202を支持している。また、入力側部材201の半径方向外側の範囲には、ばねエレメント204(一般的な形態では、円弧状ばね)に対するほぼ閉鎖された収容範囲203が設けられている。円弧状ばね204内には、ZMSの出力部材205が係合している。このZMS出力部材205は付加はずみ質量体206にリベット締めされている。ZMS出力部材205は半径方向内側でフランジ範囲207に結合されている。このフランジ範囲207は半径方向内側に歯列を有している。この歯列は、クラッチハブ208の、半径方向外側に位置する歯列に噛み合っている。ZMSの出力側に設けられたフランジ207と、以下にさらに詳しく説明する湿式ツインクラッチの入力側部材としてのクラッチハブ208との間の歯列は、組付けに際して、機関に結合されたZMS(機関アッセンブリ)と、変速機に結合された湿式ツインクラッチ(変速機アッセンブリ)との間の分離平面を成している。この分離平面には、相対回動不能な結合と同時に軸方向の移動可能性が設定されている。クラッチハブ208は半径方向内側にラジアル軸受け209に対する軸受け座(この実施の形態では、針状ころ軸受けスリーブ)を備えて形成されている。クラッチハブ208は軸受け209を介して内側の変速機入力軸210に軸方向で支承されている。軸受け209の軸受け外輪はクラッチハブ208に不動に取り付けられており、転動体は、変速機入力軸210の対応する周面において直接転動する。
【0054】
クラッチハブ208は、半径方向で内外の嵌合いにおいて半径方向外側に配置された多板クラッチK1の入力摩擦板支持体211に軸方向で固くかつ相対回動不能に結合(この実施の形態では、溶接)されている。この入力摩擦板支持体211とクラッチハブ208との間には、さらに付加的にスリーブ状の構成部材212が挟み込まれている。この構成部材212は、クラッチカバー213とZMS出力フランジ207との間のシール箇所をシールする回転軸用シールリングに対する走行面を提供している。
【0055】
外側の入力摩擦板支持体211は、結合金属薄板214を介して、半径方向で内外の嵌合いにおいて半径方向内側に配置されたクラッチK2の内側の入力摩擦板支持体215に結合されている。両入力摩擦板支持体211,215と結合金属薄板214との間の各結合は、すでに前述した結合に対応している。
【0056】
外側の多板クラッチK1の出力摩擦板支持体216は、そのフランジ範囲に形成された軸方向の差込み歯列を介して内側の変速機入力軸210に、相対回動不能であるものの軸方向に移動可能に結合されている。
【0057】
半径方向内側に配置された多板クラッチK2の出力摩擦板支持体217も同じく、そのフランジ範囲に形成された軸方向の差込み歯列を介して外側の変速機入力軸218に、相対回動不能であるものの軸方向に移動可能に結合されている。この実施の形態では、所属の歯列が、クラッチK2の出力摩擦板支持体217に溶接されたハブ範囲に形成されている。付加的には、このハブ範囲が、流路217aを形成する凸部もしくは凹部を有しており、これによって、多板クラッチK1,K2の各出力摩擦板支持体の間を通って冷却油が流れるようになっている。
【0058】
さらに、ハブ範囲217と中空軸218との間には、ばねエレメント、たとえば波形ばね219が配置されており、これによって、多板クラッチK2のハブ範囲/出力摩擦板支持体と、1つのスラスト軸受けを介して多板クラッチK1の出力摩擦板支持体と、別のスラスト軸受けを介してクラッチハブ208とに予荷重が加えられる。さらに、このクラッチハブ208は、多板クラッチK1の入力摩擦板支持体211と、引張ポット220とを介して、カバー軸受け221に相俟って、CSCのハウジング222に軸方向で支承されている。このCSCのハウジング222は、ポット状に形成されたほぼ剛性的な構成部材223を介して、釣鐘状のクラッチケースの底部224に緊締される。なお、構成部材223は、加工機械においてワークピースをチャッキングするための緊締ジョーもしくは金属薄板ジョーのように機能する。択一的には、ポット状に形成された構成部材223に弾性的に予荷重が加えられていてもよい。緊締ジョー/金属薄板ジョーに相応の構成部材223は、油をCSCと、その内部に設けられたピストン・シリンダユニットとに引き続き案内する油供給部225を緊締するために働く。
【0059】
CSCに設けられたピストン・シリンダユニットは、操作軸受けを介して、ほぼ剛性的な押圧ポット226,227に結合されている。この押圧ポット226,227は、ピストン・シリンダユニットに適宜な圧力が加えられている場合、多板クラッチK1,K2の各摩擦板セットに1:1の梃子比で作用している。
【0060】
ほぼ剛性的な押圧ポット226,227と、操作軸受けとの間には、多板クラッチK1,K2の摩擦板セットの空隙を調整するための調整ディスク228,229が設けられている。半径方向内側に配置された多板クラッチK2の押圧ポット227の例において示したように、押圧ポットから舌片を成形することができ、これによって、調整ディスクが半径方向に位置決めされる。
【0061】
多板クラッチK2の押圧ポット227の半径方向のガイドは、結合金属薄板214に成形されたネック範囲を介して行われる。このネック範囲は、押圧ポット227の円筒状の範囲に対応して形成されている。
【0062】
さらに、結合金属薄板214は舌片を有している。この舌片には、押圧ポット227に多板クラッチの切断方向で荷重を加える戻しばねが支持されている。
【0063】
多板クラッチK1の押圧ポット226の半径方向のガイドは、引張ポット220に形成された円筒状の範囲を介して行われる。押圧ポット226に切断方向で予荷重を加える戻しばねが、結合金属薄板214に形成されたネック範囲の一方の端面との間に支持されている。
【0064】
纏めると、
図7に示した実施の形態に関して認めることができるように、CSCはクラッチと一緒に組付け可能なユニットを形成している。このクラッチ/CSCシステムユニットは、金属薄板ジョーを介してクラッチケースのケース底部に軸方向で位置固定される。金属薄板ジョーには、組付け時に軸方向で予荷重が加えられる。また、金属薄板ジョーは、運転中、クラッチからカバー軸受けを介してCSCに導入された力およびモーメントを吸収する。付加的には、金属薄板ジョーが、油引渡し部において軸方向でCSCに導入される押圧力を支持している。
【0065】
クラッチ/CSCシステムユニットは、CSCに設けられたセンタリングつばを介して半径方向でケース底部に支承されている。センタリングつばを介して支持される力は、カバー軸受けを介してCSCハウジングに導入される。反対の側では、クラッチが、可動軸受けとして形成されたラジアル軸受けを介して内側の変速機入力軸に支承されている。
【0066】
空隙を調整するために、この実施の形態では、クラッチカバーに設けられた位置固定リングの当付け面と、接続機構軸受けに設けられた調整ディスクの当付け面との間の間隔が測定される。付加的には、外側のクラッチの外側摩擦板支持体に設けられた溝に設けられた位置固定リングの当付け面と、押圧ポットに設けられた調整ディスクの当付け面との間の間隔が測定される。この測定量から、摩擦板セットにおける要求された空隙を差し引いた差が、必要となる調整ディスクの厚さとなる。
【0067】
図8には、油供給部において軸方向遊び補償される、変速機軸に対して不動の湿式ツインクラッチの実施の形態が示してある。
【0068】
図8に示した湿式ツインクラッチの実施の形態は、入力側部材201と、円弧状ばね204と、出力側部材205と、付加質量体206とフランジ範囲207との結合部とを備えたZMSの構成に関しても、湿式ツインクラッチと、この湿式ツインクラッチの操作と、変速機入力軸と、ケース底部との主要な特徴に関しても、すでに
図7に相俟って前述した実施の形態に対応している。
【0069】
しかし、湿式ツインクラッチのクラッチハブ208’に設けられた外側歯列に結合された内側歯列を有するZMSのフランジ範囲207’は軸方向でより短く形成されている。なぜならば、カバー213に設けられた回転軸用シールリングがクラッチハブ208’の外側の周面に直接接触していて、湿室を乾室に対してシールしているからである。
【0070】
さらに、
図8に示した構造は、
図7に示した構造と支承の思想の点で異なっている。なぜならば、クラッチハブ208’が固定軸受け209’を介して内側の変速機入力軸210’に半径方向でも軸方向でも支承されているからである。固定軸受け209’を組み付けるためには、クラッチハブ208’がクラッチハブカバー208’’を有している。このカバー208’’とクラッチハブ208’との間には、固定軸受け209’の軸受け外輪が挟み込まれている。軸受け209’の内輪は、軸210’に設けられた軸肩部と位置固定リングとの間に固定されている。外側の多板クラッチK1の入力摩擦板支持体211は、
図7に示した実施の形態に相応して、クラッチハブ208’に結合されている。同じく
図7の実施の形態に相応して、引張ポット220もカバー軸受け221を介してCSCのハウジング222に結合されている。
【0071】
CSCに設けられたピストン・シリンダユニットの構成も、操作軸受け、調整ディスクおよび操作ポットの構成も、
図7に相俟って説明したものに対応している。
【0072】
さらに、クラッチハブ208’に対する波形ばねと2つのスラスト軸受けとを用いた湿式クラッチの軸方向の支承は、
図7に相俟って説明したものに相応して形成されている。
【0073】
しかし、緊締ジョー/金属薄板ジョーとして作用する構成部材223の代わりに、この実施の形態では、フレキシブルな金属薄板300(以下、「フレキシブルプレート」と呼ぶ)が設けられている。このフレキシブルプレート300は、軸方向でも半径方向でも「軟質」のトルク支持部材として作用する。さらに、CSCハウジング222が複数の管301(ピストン・シリンダユニットあたり少なくとも1つの管)を介して、変速機ハウジングに設けられた油供給路に接続されている。管の長さは、CSCハウジング222の軸方向運動が可能となるように寸法設定されている。これに相応して、フレキシブルプレートは軸方向に決して力を伝達しない。
【0074】
クラッチとCSCとから成るシステムユニットの半径方向の支持のためには、CSCハウジング222と外側の変速機入力軸218との間にラジアル軸受け302が設けられている。
【0075】
纏めると、
図8に示した実施の形態に関して認めることができるように、クラッチ/CSCシステムユニットは、固定軸受けを介して内側の変速機入力軸に軸方向で位置決めされている。位置固定リングを固定軸受けに組み付けることができるようにするためには、クラッチが、さらに、ハブカバーを有している。このハブカバーは固定軸受けをクラッチに位置固定し、湿室を乾室に対して切り離す。さらに、圧油がCSCに、水平方向に延びる複数の管を介して供給される。これらの管(部分クラッチあたり1つの管)はシール部材を介してCSCおよび釣鐘状のクラッチケースに対して両側でシールされている。管は軸方向に遊びを有しており、これによって、軸方向の軸・クラッチ運動を補償することができる。フレキシブルプレートは、この実施の形態では、軸方向で軟質に形成されていて、クラッチの運動に追従する。周方向では、フレキシブルプレートが剛性的に形成されていて、接続機構軸受けの摩擦モーメントをケース底部に支持している。この実施の形態では、フレキシブルプレートが必ずしも回転対称的な構成部材として形成されている必要はなく、CSCとケース底部とにねじ締結されている金属薄板舌片として形成されていてもよい。
【0076】
上述したように、クラッチは、半径方向で固定軸受けを介して内側の変速機入力軸に支承されていて、反対の側でカバー軸受けと、外側の変速機入力軸とCSCハウジングとの間に設けられた針状ころ軸受けとを介して支承されている。
【0077】
図9には、半径方向の油供給部を備えた軸方向に浮動支承された湿式ツインクラッチの実施の形態が示してある。
【0078】
図9に示した実施の形態は、多くの特徴において、
図8に示した実施の形態に合致している。したがって、以下には、
図8に示したクラッチユニットと
図9に示したクラッチユニットとの間の違いだけを説明することにする。クランクシャフト200からクラッチハブ208’までの範囲は、
図8に示した実施の形態と
図9に示した実施の形態とにおいて同じである。第1の主要な違いは、クラッチハブ208’と内側に位置する変速機入力軸210’’との間の軸受けが、軸方向の可動軸受けとして形成されていることにある。なぜならば、確かに、軸受け400の軸受け外輪はクラッチハブカバー208’’とクラッチハブ208’との間に緊締されているが、しかし、軸受け400の軸受け内輪は変速機入力軸210’’に位置固定されていないからである。
【0079】
さらに、
図8および
図9の実施の形態は、CSCハウジング222をケース底部224に結合するフレキシブルプレート300が設けられている点で合致している。しかし、この実施の形態では、半径方向に延びる異なる油供給部が、半径方向に配置された管路401,402を介して変速機側の油案内部とCSCとの間に設けられている。半径方向では、CSCハウジング222が再びラジアル針状ころ軸受け302を介して外側の変速機入力軸218に支承されている。
【0080】
纏めると、
図9に示した実施の形態では、クラッチ/CSCシステムユニットが可動軸受けを介して半径方向で内側の変速機入力軸に支承されている。反対の側では、クラッチが、カバー軸受けと、外側の変速機入力軸とCSCハウジングとの間に設けられた針状ころ軸受けとを介して半径方向で支承されている。さらに、この実施の形態に係る湿式ツインクラッチは、フレキシブルプレート300と、デュアルマスフライホイールにおいて基本摩擦を発生させるために必要になるばね403,404との間に軸方向で浮動懸架されている。さらに、作動油はクラッチに半径方向で2つの管路を介して供給される。両管路は、クラッチの軸方向運動を吸収することができるように形成されている。各管路は、たとえば2つの分割管から成っている。CSCハウジング内に位置する管片はシステムユニットと一緒に組み付けられ、次いで、第2の分割管が、釣鐘状のクラッチケースに設けられた開口を通して導入され、第1の分割管に接続される。管片の接続箇所は、それぞれ互いにシールされていて、管長手方向に作用する押圧力を吸収することができるように形成されている(図示せず)。湿室を乾室から切り離すために、この実施の形態では、クラッチケースの開口と第2の分割管との間に付加的なシール部材が位置している。
【0081】
図10には、フレキシブルプレート支承を伴う軸方向に浮動支承された別のツインクラッチの実施の形態が示してある。
【0082】
図10に示した実施の形態は、すでに
図7に相俟って前述したように、可動軸受け209を介して内側の変速機入力軸210に支承されたクラッチハブ208を備えた湿式ツインクラッチを有している。さらに、
図10に示した実施の形態は、ZMSの出力側部材205との間の結合フランジ207を有している。この結合フランジ207は、
図7に相俟って説明した結合フランジに対応している。さらに、同じく
図7に相俟って説明したスリーブ状の構成部材212が設けられている。さらに、クラッチカバー213と湿式ツインクラッチとの特徴、特にクラッチハブ208に対する両スラスト針状ころ軸受けに相俟った波形ばね219を介した軸方向の支承も、押圧ポット226,227を介した操作も、
図7に相俟って説明したものに対応している。このことは、特にCSCハウジング222と外側の変速機軸218と間に、
図7に示した実施の形態でも、
図10に示した実施の形態でも、半径方向の支承部材が設けられていないこととしても認められる。
【0083】
しかし、
図7に示した実施の形態と
図10に示した実施の形態とは、
図7に示した実施の形態では、CSCハウジングに軸方向の付設部228が設けられており、この付設部228においてCSCハウジング222が半径方向でクラッチケース224に支承されていたのに対して、
図10に示した実施の形態では、CSCハウジング222をケース底部224に結合するフレキシブルプレート500が設けられている点で異なっている。このフレキシブルプレート500とケース底部との間の結合箇所は、相応の組付けを容易にするために、湿式ツインクラッチの直径の半径方向外側に配置されている。
【0084】
図9に示した実施の形態に対応して、CSCにハイドロリック媒体を供給するために、複数の管501,502を介した油供給部が設けられている。変速機ハウジング側の管501は変速機ハウジングにねじ締結されている。さらに、CSC側の管502はCSCハウジング222にねじ締結を介して固定されている。管501,502は軸方向に相対的に移動可能であり、相対的にシールされている。両管501,502はほぼ半径方向に延ばされている。
【0085】
纏めると、
図10に示した実施の形態では、クラッチ/CSCシステムユニットが、機関側で可動軸受けを介して内側の変速機入力軸に半径方向で支承されている。反対の側(変速機側)では、クラッチが半径方向でカバー軸受けとフレキシブルプレートとを介してクラッチケースに支承されている。CSC側の油案内部材は、ねじ締結を介してCSCに結合されていて、シールされている。第2の案内片(変速機ハウジング側)はフランジを介して外側でクラッチケースにねじ締結されていて、Oリングを介してシールされている。油供給部は、この実施の形態でも、軸方向に軟質に形成されており、これによって、クラッチの軸方向運動を吸収することができる。また、システムユニットは、すでに
図9に相俟って説明したように、フレキシブルプレートと、デュアルマスフライホイールに設けられたばねとの間で浮動する。
【0086】
図11には、フレキシブルプレート支承を伴う軸方向に浮動支承された別のツインクラッチの実施の形態が示してある。軸方向の浮動支承とフレキシブルプレート支承とに対して付加的に、支承が、クランクシャフトとクラッチとの間に設けられたパイロットを介して行われている。
図11に示した実施の形態の全ての構成は、
図10に示した構成と同一である。
図11の実施の形態では、クラッチハブ208の延長部として形成されたパイロット600が設けられている。このパイロット600とクランクシャフト200との間には、可動軸受け(たとえばラジアル針状ころ軸受け)が配置されている。
【0087】
図12には、乾式のZMSを備えた別の湿式ツインクラッチの実施の形態が示してある。
【0088】
図12に示した実施の形態によれば、半径方向外側に位置する円弧状ばねと、半径方向内側に配置された円弧状ばねとを備えたZMSが示してある。このZMSは、特に著しく顕著な回転むらを有する内燃機関において使用することができる。ただし、当然ながら、ZMSは、ツインクラッチの構成およびZMSとツインクラッチとの間の結合部に対しても、ツインクラッチの操作装置に対しても、限定的に形成されるものではない。むしろ、クランクシャフト200と湿式ツインクラッチとの間に、ZMSと、入力側部材201および出力側部材205’を備えた別のねじり振動減衰システムとが設けられていることしか重要でない。出力フランジ207’’が、
図1に示した実施の形態にほぼ対応する入力ハブ700に結合されている。入力摩擦板支持体701の構成も、
図1に相俟って説明した入力摩擦板支持体13に対応している。さらに、入力ハブ700と、この入力ハブ700に結合されたクラッチK1の入力摩擦板支持体とが、
図1に示したラジアル軸受け16に相応のラジアル軸受け702を介して内側の変速機入力軸703に半径方向で支持されている。湿式ツインクラッチを収容した湿室704が、ケース底部705とクラッチカバー706とによって支持される。このクラッチカバー706と入力ハブ700との間には、回転軸用シールリングが設けられている。この回転軸用シールリングは、クラッチハブの外側の周面に設けられた回転面707で回転する。この回転面707は、ZMS出力フランジ707’’とクラッチハブ700との間の軸方向の差込み歯列に続いて半径方向に配置されている。
【0089】
外側の多板クラッチK1の出力摩擦板支持体708も、これに対応する出力フランジも同じく、
図1に示した実施の形態における出力摩擦板支持体13と出力フランジ14とにほぼ対応して形成されている。さらに、半径方向内側に配置された多板クラッチK2の入力摩擦板支持体も多板クラッチK2の入力摩擦板支持体18にほぼ対応して形成されている。
図12に示した実施の形態では、両多板クラッチK1,K2の各入力摩擦板支持体の間に、
図1に示した結合金属薄板17に比べて異なって形成された結合金属薄板709が使用される。この結合金属薄板709は、ほぼ平らに形成されていて、この結合金属薄板709から押出し加工された舌片709aを有している。この舌片709aは、半径方向内側の多板クラッチK2の押圧ポット711の戻しばね710に対する支持フィンガとして使用される。さらに、
図7および
図8に示した実施の形態では、結合金属薄板214が、クラッチK2の押圧ポットに対するガイドとして使用される円筒状のネック範囲を有していた。
図12に示した実施の形態では、この円筒状のネック範囲は取り除かれている。ガイドは、ほぼ平らな結合金属薄板の円筒状の端面範囲を介して行われる。
図7および
図8に示した実施の形態では、円筒状のネック範囲が同じく外側のクラッチK1の押圧ポットの戻しばねに対する支持箇所として使用された。この円筒状のネック範囲の代わりに、環状のエレメント712が設けられている。この環状のエレメント712は結合金属薄板709に支持されていて、位置固定リング713を介して内側のクラッチK2の入力摩擦板支持体に半径方向でセンタリングされていて、円筒状の範囲のほかに、半径方向に延びる範囲を有している。この範囲には、外側のクラッチK1の押圧ポット714の戻しばね713が支持されている。この戻しばね713と押圧ポット714との間もしくは戻しばね710とクラッチK1,K2の押圧ポット711との間には、円形線材ばねエレメントが配置されている。この円形線材ばねエレメントには、ばねの各端面範囲が支持されている。
【0090】
図7に示した実施の形態に対応して、CSCのハウジング715は、軸方向に延びる付設部715aを介してケース底部705に半径方向でセンタリングされていて、緊締ジョー/金属薄板ジョーに相応して機能する構成部材716によってケース底部に軸方向で緊締される。
【0091】
カバー軸受け717は、CSCハウジング715に円形線材緊締リングを介して、軸受け内輪に形成された斜面に相俟って軸方向で取り付けられており、これによって、操作力の内側のパワーフローを形成することができる。
図7に示した実施の形態では、CSCハウジングに、方形の横断面を備えたスナップリングが使用されている。
【0092】
CSCハウジング715と中空軸718との間に付加的なラジアル支承箇所は設けられていない。
【0093】
纏めると、
図12に示した構成は以下の特徴を有している。
【0094】
1.トルクフローにおいて、外側のクラッチK1の摩擦板セットの後方に第1の遊び箇所が位置している。この遊び箇所は摩擦系の後方に位置しているので、ここには運転中にがたつき騒音は生じない。
【0095】
2.戻し押圧ばねが、開いた円形線材リングまたは閉じた円形線材リングを介して支持されている。これによって、クラッチの操作時のばねの転支特性がより良好となる。これによって、操作システムの基本ヒステリシスが減少させられる。
【0096】
3.外側のクラッチK1の戻し押圧ばねが、引張ポットに形成された全周にわたって延びるリングによって支持される。このリングは内側のクラッチの外側摩擦板支持体の位置固定リングを介してセンタリングされる。
【0097】
4.両クラッチの入力摩擦板支持体を互いに結合する結合金属薄板もしくは結合ウェブにおいて、内径領域に複数のフィンガが位置している。これらのフィンガには、内側のクラッチの戻し押圧ばねが支持されている。
【0098】
5.スラスト針状ころ軸受け(択一的には滑りディスク)をセンタリングするために、金属薄板から(少なくとも3つの)突起が押出し加工される。
【0099】
6.クラッチの、軸受け内輪を介してCSCにセンタリングされるカバー軸受けが、軸方向に生じた操作力を、CSCに設けられたスナップリングを介して支持している。このスナップリングは、方形のまたは円形の横断面を有していてよい。円形線材スナップリングの使用時には、CSCにおいて、方形スナップリングの使用時よりも僅かな応力ピークが生じる。
【0100】
7.CSCの環状のピストンが、CSCハウジングに対して遊び(ピストンシール部材を除く)を有しており、ピストン内径に対するピストンガイド長さの比が、0.5よりも少なく設定されている。これによって、ピストンをハウジング内で軸方向に移動させることができるだけでなく、傾倒させることもでき、したがって、ピストンがカルダン機能を引き受けている。誤差と、運転中には動的な影響とによって、クラッチがCSCに対して傾倒させられると、CSCのピストンがこの傾倒を補償するかもしくはこの傾倒に追従する。
【0101】
8.クラッチの両外側摩擦板支持体の間でクラッチに冷却油が供給される。この油は、半径方向に延びる溝を有する押圧片を通って流れる。次いで、油は、内側のクラッチの内側摩擦板支持体に設けられた開口を通流し、次いで、内側のクラッチの圧力室内に達する。
【0102】
9.外側のクラッチの入力摩擦板支持体と両部分クラッチの出力摩擦板支持体とが、スラスト針状ころ軸受け(またはスラストワッシャもしくは滑りディスク)を介して互いに間隔を置いて配置される。針状ころ軸受けの使用時には、妨害なしの運転のために、軸方向の最小予荷重が発生させられなければならない。この最小予荷重は、内側のクラッチのハブと外側の変速機入力軸の位置固定リングまたは段部との間に位置していると共に支持されている波形ばねまたは圧縮ばねを介して発生させられる。予荷重ばねは、
図12に示した構成と異なり、
図7に相俟って示したように、ハブの内径部分に位置していてもよい。
【0103】
10.出力摩擦板支持体を間隔を置いて配置するためのスラスト軸受けが、外側のクラッチのハブに統合された段部を介して支持される。
【0104】
11.以下、
図13に相俟って示しかつ説明するように、波形ばねの予荷重は、クラッチのカバー軸受けを介して受け止めることもできるので、外側のクラッチK1の外側摩擦板支持体と(湿室分離の)クラッチカバーとの間のスラスト軸受けは機能的に不要になる。
【0105】
図13には、乾式のZMSを備えた別の湿式ツインクラッチの実施の形態が示してある。この実施の形態では、外側のクラッチK1の外側摩擦板支持体とクラッチカバーとの間のスラスト軸受けが省略されている。なぜならば、このスラスト軸受けは、前述したように、機能的に不要となるからである。そのほかの点では、
図12および
図13に示した実施の形態は互いに合致している。
【0106】
図14には、内部で閉じられたパワーフローと、湿式のZMSと、遠心振り子(「FKP」)とを備えた別の湿式ツインクラッチの実施の形態が示してある。この実施の形態は、
図4〜
図6に示した実施の形態に極めて十分に合致しているので、以下の記載は、これらの実施の形態との間の違いだけに限定することにする。
【0107】
図14に示した実施の形態はCSCハウジング800を有している。このCSCハウジング800は軸方向の付設部801を有している。この付設部801を介して、CSCハウジング800はケース底部802に半径方向でセンタリングされている。CSCハウジング800と変速機入力軸803との間には、別のラジアル支承箇所は設けられていない。軸方向では、CSCハウジング800が、緊締ジョー/金属薄板ジョーに相応の(半径方向外側に位置するねじ締結部材805を有する)エレメント804を介してケース底部802に軸方向で緊締される。CSCハウジング800の外側の周面には、円形の横断面を備えたスナップリング806が設けられている。このスナップリング806は、カバー軸受け807の軸受け内輪に対する当付け面として働く。カバー軸受け807は引張ポット808を介してクラッチK1の入力摩擦板支持体に結合されている。この入力摩擦板支持体はクラッチK2の入力摩擦板支持体に結合金属薄板を介して結合されている。クラッチK1,K2は、ほぼ剛性的な押圧ポットを介して1:1の梃子比で操作される。押圧ポットとCSCのピストン・シリンダユニットとの間には、操作軸受けと調整ディスクとが配置されている。クラッチK1,K2の入力摩擦板支持体および出力摩擦板支持体の特徴と、操作ポット、調整ディスクおよび操作軸受けの特徴とは、
図4に相俟って説明したものに対応している。
【0108】
しかし、半径方向内側に位置する多板クラッチの出力摩擦板支持体809はその構造において、以下に説明するように、
図4に示したクラッチK2の出力摩擦板支持体45と異なっている。
【0109】
出力摩擦板支持体809は、個々の摩擦板を取り付けるための軸方向の差込み歯列を備えた円筒状の部分のほかに、結合フランジ810との結合部としての半径方向に延ばされた部分を有している。この部分は、出力フランジ809を中空の変速機入力軸803に軸方向の差込み歯列を介して結合している。
図14に示した実施の形態では、この半径方向に延ばされた範囲が摩擦板セットの機関側に配置されている。これに対して、
図4に示した実施の形態では、半径方向に延ばされた範囲が摩擦板セットの変速機側に配置されている。さらに、出力摩擦板支持体809は、冷却油をクラッチK2の摩擦板セットに通流させることができる貫通孔811を有している。冷却油流を方向調整して案内することができるようにするためには、結合フランジ810と出力摩擦板支持体809の円筒状の部分との間に配置された金属薄板812が設けられている。
【0110】
この実施の形態のその他の特徴については、
図4および
図4の説明に記載してある。
【0111】
図15には、内部で閉じられたパワーフローと、湿式のZMSと、遠心振り子(「FKP」)とを備えた別の湿式ツインクラッチの実施の形態が示してある。この実施の形態では、
図14に示した金属薄板ジョーもしくは緊締ジョー804が省略されている。CSCハウジングとケース底部との間の結合部をシールするための予荷重は、たとえばZMSに設けられたかつ/または組立て式の摩擦板支持体に設けられたかつ/またはクランクシャフトとZMS/クラッチ入力側部材との間の結合金属薄板に設けられた軸方向に作用する摩擦ばねにおける予荷重の適宜な選択によって達成することもできる。
【0112】
本発明を専らマルチクラッチ装置に関連して前述した。ここで、示唆しておくと、本発明、特にクラッチと操作装置とから成る構成ユニットおよび緊締ジョー/金属薄板ジョーの使用は、シングルクラッチに関連しても使用可能である。