(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車(10)の車輪(11、22)の取付位置(VL、VR、HL、HR)を特定する方法であって、少なくとも1つの車輪が車輪電子ユニット(12、21)を有しており、前記方法は
前記車輪電子ユニット(12、21)に割り当てられた車輪(11、22)の第1の回転角度位置を車輪電子ユニットで求めるステップ(S1)と、
求めた第1の回転角度位置に依存する第1の回転角度情報を含む送信信号(X1)を送信するステップ(S2)と、
前記車輪(11、22)の第2の回転角度位置を車両側で求め、第2の回転角度位置に依存して第2の回転角度情報を生成するステップ(S3)と、
第1の回転角度情報を第2の回転角度情報と照合するステップ(S4)と、
前記照合に依存して前記車輪電子ユニット(12、21)に割り当てられた車輪(11、22)の取付位置(VL、VR、HL、HR)を求めるステップ(S5)と
を有する方法において、
前記送信信号(X1)を送信する際に、車輪電子ユニット(12、21)に知られている固定的に設定された回転角度位置において、かつ、異なる時点において、複数の異なる送信信号(X1)を当該送信信号(X1)の個数に相当する数の第1の回転角度情報と共に、前記車輪電子ユニット(12、21)により送信し、
前記第2の回転角度情報を生成する際に、車両側で、各送信信号(X1)の受信時点に、当該受信した各送信信号についての第2の回転角度位置を求め、第2の回転角度位置から第2の回転角度情報を導出し、
各車輪(11、22)について、第2の回転角度情報の分布を作成し、ここで、前記分布は第2の回転角度情報から導出された第2の回転角度位置を含んでおり、
前記取付位置(VL、VR、HL、HR)を求めるために、前記分布の最大値および/または分散を評価する
ことを特徴とする、自動車の車輪の取付位置を特定する方法。
自動車(10)の車輪(11、22)の取付位置(VL、VR、HL、HR)を特定する方法であって、少なくとも1つの車輪が車輪電子ユニット(12、21)を有しており、前記方法は
前記車輪電子ユニット(12、21)に割り当てられた車輪(11、22)の第1の回転角度位置を車輪電子ユニットで求めるステップ(S1)と、
求めた第1の回転角度位置に依存する第1の回転角度情報を含む送信信号(X1)を送信するステップ(S2)と、
前記車輪(11、22)の第2の回転角度位置を車両側で求め、第2の回転角度位置に依存して第2の回転角度情報を生成するステップ(S3)と、
第1の回転角度情報を第2の回転角度情報と照合するステップ(S4)と、
前記照合に依存して前記車輪電子ユニット(12、21)に割り当てられた車輪(11、22)の取付位置(VL、VR、HL、HR)を求めるステップ(S5)と
を有する方法において、
前記車輪電子ユニット(12、21)によって少なくともN個の送信信号を送信し、
車両側で順次受信した車輪電子ユニット(12、21)の少なくとも2つの送信信号についての、それぞれ各車輪(11、22)の第2の回転角度位置を求め、
前記車輪(11、22)の取付位置を求めて評価するために、第2の回転角度位置の少なくともN/2個の組合せを参照し、
第2の回転角度位置に対してそれぞれ、
・各車輪(11、22)に関してそれぞれの回転角度位置の差の値を計算し、かつ、
・計算された差の値の、前記車輪(11、22)の完全な1回転に相当する値に対する比を計算し、
前記比が累積的に最小である、および/または、前記比の分布が最小である車輪として、前記取付位置(VL、VR、HL、HR)を求める
ことを特徴とする方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車の車輪の取付位置を特定する方法および装置に関する。車輪のタイヤ圧は、種々の原因のせいで、例えば車輪の周囲圧力、温度、車輪の使用年数などのせいで、ある一定の変化を被る。このことに関連して、タイヤ圧の誤った調整が道路交通における事故の大きな要因であることが分かっている。車両の安全性と信頼性は自動車分野において中心的な要素であるから、すでに安全技術上の理由からだけでも、タイヤ圧を定期的に検査しなければならない。しかし、調査により、タイヤ圧を定期的に検査する車両運転者はごく僅かしかいないことが判明している。特にこの理由から、現代の自動車はタイヤ圧管理システムのようなタイヤ情報装置を有している。これらタイヤ情報装置は車輪に取り付けられた車輪電子ユニットを有しており、これら車輪電子ユニットが車輪に固有の種々の測定量(例えばタイヤ圧、タイヤ温度、タイヤ負荷など)の測定値を測定し、これらの測定値から導出された情報を車両側の受信装置に送信する。
【0002】
タイヤ情報システムは一般に、車輪で求められたデータを高周波送信信号で車両側の中央評価装置に送信する、各車輪に割り当てられた電子的な車輪ユニットを使用する。電子的な車輪ユニット(以下では短く車輪電子ユニットと呼ぶ)とは、車輪に固有の情報と状態を求める任意の装置であると理解してよい。車輪に生じうる故障状態は上記の車輪に固有の状態を介して検出することができる。この文脈では、故障状態という概念は広く解釈すべきであり、各車輪の検出に値すると見なされるすべての状態、特性および情報を包摂する。
【0003】
ただし、ここで、受信された送信信号を送信器の、すなわち車輪電子ユニットの、次の未知の車輪位置に自動的かつ一意的に対応付けるという問題が存在する。たしかに、EP626911B1に記載されているように、車輪電子ユニットは、この車輪電子ユニットのための一意的な識別子を送信信号内で一緒に伝送してもよい。しかし、この車輪が実際に車両のどの位置に取り付けられているかは、これによっては未知のままである。それゆえ現代のタイヤ情報システムでは、故障状態の本来の検出に加えて車両に対する個々の車輪のいわゆる取付位置も求められる。これは関連文献において位置特定とも呼ばれている。
【0004】
以上を背景として本発明は、できるだけ簡単で信頼性の高い車輪の位置特定を提案することを課題としている。本発明によれば、この課題は請求項1に記載の特徴を備えた方法および/または請求項13に記載の特徴を備えた装置および/または請求項15に記載の特徴を備えた車両によって解決される。
【0005】
すなわち、下記の方法、装置および車両によって解決される。
自動車の車輪の取付位置を特定する方法であって、少なくとも1つの車輪が車輪電子ユニットを有しており、前記方法は前記車輪電子ユニットに割り当てられた車輪の第1の回転角度位置を前記車輪電子ユニット側で求めるステップと、求めた第1の回転角度位置に依存する第1の回転角度情報を含む送信信号を送信するステップと、車輪の第2の回転角度位置を車両側で求め、第2の回転角度位置に依存して第2の回転角度情報を生成するステップと、第1の回転角度情報を第2の回転角度情報と照合するステップと、前記照合に依存して前記車輪電子ユニットに割り当てられている車輪の取付位置を求めるステップとを有することを特徴とする、自動車の車輪の取付位置を特定する方法。
自動車の車輪の取付位置を特に本発明の方法によって特定する装置であって、割り当てられた車輪の第1の回転角度位置を求め、求めた第1の回転角度位置に依存する第1の回転角度情報を車両側の受信装置に送信するよう設計された、車輪に取り付けられた少なくとも1つの車輪電子ユニットと、割り当てられた車輪の第2の回転角度位置を求め、求めた第2の回転角度位置に依存して第2の回転角度情報を生成するよう設計された、少なくとも1つの車両側の回転数センサと、前記第1の回転角度情報を少なくとも2つの前記第2の回転角度情報と照合し、この照合に依存して前記車輪電子ユニットに割り当てられた車輪の取付位置を求める評価装置とを有することを特徴とする、自動車の車輪の取付位置を特定する装置。
複数の車輪と、本発明による装置を備えたタイヤ情報装置とを有する車両、特に乗用車。
【0006】
本発明は、車両に存在している車輪は一般に様々な要因、影響および条件のせいで多少とも異なる速度で回転する。本発明によれば、これらの異なる回転情報は取付位置を求めるために使用される。それは、車輪電子ユニットによって求められた回転角度情報を車両側で求めた回転角度情報と照合することによって行われる。
【0007】
有利なことに、上記した本発明の評価照合方法は無線伝送がまばらにしか行われない場合でも機能する。しかしながら、一般に、伝送が比較的稀にしか行われない場合には、位置特定に要する収束時間は相応して長くなる。さらに、車輪電子ユニットは必ずしも1回転ごとに伝送を開始しなくてもよく、公知の方法で必要とされるように所定の時間間隔でそれぞれ少なくとも1回は伝送を実行しなければならないということもなく、むしろ例えば行われた車輪回転の回数に基づいて評価を行うことで十分である。
【0008】
また、車輪の各回転ごとに位置検出を行う必要もない。そのため、車輪電子ユニットのエネルギー消費は少なくなる。車輪電子ユニットへのエネルギー供給は局所的であり、それゆえ使用可能なエネルギーも限られているため、上記のことは特別な利点である。
【0009】
さらに、本発明による方法は、凸凹の車道または濡れた車道を車両が走行する場合でも、すなわち、摩擦係数の低い車道の場合または車輪のスリップ量が大きすぎる場合でもほとんど問題がない。それどころか全く逆に、本発明による方法にとって、多少とも大きな車輪スリップ量は利点ですらある。というのも、個々の車輪の回転特性が互いに大きく異なるからである。したがって、車輪または車両全体がどのような道を進んでいるかも無関係である。重要なのは、車輪の向きまたは回転角度だけである。
【0010】
本発明の有利な実施形態および発展形態は従属請求項と図面とを照らし合わせてみることで明らかとなる。
【0011】
本発明の1つの有利な実施形態では、複数の送信信号がこれら送信信号の数に相当する複数の第1の回転角度情報と共に車輪電子ユニットから異なる時点に送信され、相応する数の対応する第2の回転角度情報と照合される。
【0012】
一般に、少なくとも2つの、有利には少なくとも6つの、特にさらに有利には少なくとも20の送信された送信信号が取付位置を求めるために考慮される。
【0013】
1つの有利な実施形態では、車輪電子ユニット側で、異なる複数の送信信号がそれぞれ車輪電子ユニットによって固定的に設定された既知の回転角度位置において送信される。車両側では、受信された送信信号に関して、この送信信号の受信時点に第2の回転角度位置が求められ、この第2の回転角度位置から第2の回転角度情報が導出される。
【0014】
1つの有利な実施形態では、各車輪について、第2の回転角度情報の分布が作成される。なお、この分布は第2の回転角度情報から導出された(例えば0°〜360°で表された)第2の回転角度位置を含む。取付位置を求めるために、この分布の最大値および/または分散が評価される。
【0015】
1つの有利な実施形態では、最も大きな最大値または最小の分散を有する分布がこの分布に対応付けられた車輪の取付位置として求められる。
【0016】
1つの有利な実施形態では、第2の回転角度位置の分布の外れ値が分布を評価する前に検出され、除去される。
【0017】
1つの有利な実施形態では、第2の回転角度位置が0°または360°の付近に累積した場合、第2の回転角度位置の分布は横軸において所定の値だけ、例えば90°または180°だけずらされる。
【0018】
1つの有利な実施形態では、(a)車両側で受信した車輪電子ユニットの少なくとも2つの送信信号について、それぞれ各車輪の第2の回転角度位置を求め、(b)各車輪に関してそれぞれの回転角度位置の差の値を計算し、(c)計算された差の値と車輪の1回転に相当する値との比を計算し、(d)取付位置を前記比が最小となる車輪として求める。
【0019】
1つの有利な実施形態では、車輪電子ユニットによって少なくともN個の送信信号が送信される。車輪の取付位置を求めて評価するためには、第2の回転角度位置の少なくともN/2個の、有利には(N−1)個の、特に有利にはN*(N−1)/2個の組合せが考慮され、第2の回転角度位置に対してそれぞれ上記ステップ(b)および(c)が実行される。この場合、ステップ(d)では、取付位置は累積的に最小の比を有する、および/または、比の最小の分布を有する車輪として求められる。
【0020】
1つの有利な実施形態では、車輪電子ユニット側での送信信号のためのテレグラムの作成と、意図的に挿入される遅延または待ち時間と、送信信号の送信と、車両側での送信信号の受信および評価と、受信された送信信号から得られた第1の回転角度情報の転送と、第2の回転角度情報の導出および転送と、第1の回転角度情報と第2の回転角度情報の照合とによって生じる遅延時間が、評価および照合の際に考慮される。
【0021】
1つの有利な実施形態では、第2の回転数センサは立上りクロックエッジおよび/または立下りクロックエッジを数えることによって第2の回転数位置を求める。ここで、所定数のクロックエッジが車輪の1回転に相当する。
【0022】
本発明の1つの有利な実施形態では、回転数センサはESP回転数センサまたはABS回転数センサとして形成されている。
【0023】
上記の実施形態および発展形態は有意味である限りにおいて任意に組み合わされる。本発明の他の可能な実施形態、発展形態および実装は、以上にまたは以下に実施例に関連して説明する本発明の特徴の明示的には示されていない組み合わせも含んでいる。とりわけ、当業者は個々の態様を本発明の基本形に改善または補足として付け加える。
【0024】
以下に、本発明を図面に示された実施例に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるタイヤ情報装置を備えた車両の概略図を示す。
【
図2】
図2Aは、自動車の車輪の取付位置を特定する本発明による装置のブロック回路図を示し、
図2Bは、取付位置を特定する本発明による方法の流れを説明するフローチャートを示す。
【
図3A】車輪の速度が一定の場合と可変の場合の回転数センサの出力信号を示す。
【
図3B】車輪の速度が一定の場合と可変の場合の回転数センサの出力信号を示す。
【
図4】車輪電子ユニットと対応する回転数センサとを備えた車両の構成を示す。
【
図5】
図5A−5Dは、複数の異なる車輪電子ユニットに対する複数の異なる車輪の車輪角度位置の分布を示す。
【
図6】
図6A、6Bは、1つの車輪電子ユニットに対する複数の異なる車輪の車輪角度位置の分布を3次元または2次元表示で示す。
【
図7】車輪電子ユニットの20の放射時点と、2つの異なる車輪の相応するカウンタ読み値と角度位置を含んだ表を示す。
【
図7A】
図7の2つの車輪の車輪角度位置の分布を示す。
【
図7B】
図7の2つの車輪の車輪角度位置の分布を示す。
【
図8】様々な時間差、相応するカウンタ読み値、回転の回数、および2つの異なる車輪の1回転の差を含んだ表を示す。
【
図8A】
図8の2つの車輪に関する相応する分布を示す。
【
図8B】
図8の2つの車輪に関する相応する分布を示す。
【
図9】
図9A、9Bは、ずれを説明するための、車輪角度位置の別の2つの分布を示す。
【
図10】
図10A、10Bは、外れ値の検出および除去を説明するための、車輪角度位置の別の2つの分布を示す。
【0026】
図中、断りがない限り、同一の要素および機能が同じ要素には同じ参照符号が付されている。
【0027】
図1には、本発明によるタイヤ情報装置を備えた車両の概略図が示されている。ここで参照符号10で表されている車両は4つの車輪11を有している。各車輪11には車輪電子ユニット12が割り当てられている。車両側には、1つ(または例えば2つ以上)の中央送受信ユニット13が設けられており、車輪電子ユニット12と通信接続されている。車輪電子ユニット12と送受信ユニット13は全体としてタイヤ情報装置の構成要素であり、タイヤ情報装置はこれらの他に中央制御器14も使用することができる。このタイヤ情報装置はまた、異なる複数の車輪10の位置特定を行うようにも設計されている。制御器14はさらに、プログラム制御されるデバイス15、例えばマイクロコントローラまたはマイクロプロセッサと、記憶デバイス16、例えばROMまたはDRAMを有している。車両10はさらに車両情報システム17を有している。
【0028】
図2Aには、車輪の取付位置を特定する本発明による装置の概略的なブロック回路図が示されている。位置特定のためにはまず、車輪の取付位置を特定する装置を有するタイヤ情報装置が自動車に装備される。この装置は
図2Aでは参照符号20で表されている。装置20は、それぞれ1つの車輪22に配置された少なくとも1つの車輪電子ユニット21(図示の例では2つの車輪電子ユニット21)を有している。さらに装置20は、それぞれ複数の異なる車輪22に割り当てられた複数の車両側の回転数センサ23を有している。最後に、安定化制御システム25を介して回転数センサ23と接続されている評価ユニット24が設けられている。この評価ユニット24は一般に(図示されていない)受信および照合ユニットを含んでいる。車輪22または車輪22内に設けられた車輪電子ユニット21は、送信信号X1、X2をここには図示されていない車両側の受信器(これは例えば評価ユニット内に設けられていてよい)へ送信するために、ワイヤレス通信コネクションを介して車両と通信接続されている。安定化制御システム25は例えばABSおよび/またはESPシステムであってよい。したがって、回転数センサ23は評価ユニット24と直接には接続されていない。安定化制御システム25と評価ユニット24との間の接続は例えば内部通信バスとして形成されていてよい。
【0029】
図2Bには、自動車の車輪の取付位置を特定する本発明による方法を説明するフローチャートが示されている。以下では、
図2A、2Bに基づいて本発明による方法を手短に説明する。
【0030】
方法ステップS1において、この車輪電子ユニット21に割り当てられた車輪22の第1の回転角度位置が車輪電子ユニット側で求められる。次のステップS2では、まずこの回転角度位置またはこれに依存する回転角度情報を有する送信信号X1が生成される。送信信号X1はさらに別の情報、例えばタイヤ圧やタイヤ温度のような車輪に固有の情報も含んでいてよい。続いて、このようにして生成されたこの送信信号が車輪電子ユニットの送信器を介して送信される。このようにして送信された送信信号X1は車両側で受信器によって受信される。ステップS3では、車輪22の第2の回転角度位置が車両側で求められる。ここで、送信信号X1を送信する車輪電子ユニット21に割り当てられた車輪の回転角度位置だけでなく、残りの車輪22の回転角度位置も求められる。そうすることで、一般に車輪の数に対応する数の回転角度情報が得られる。次のステップS4では、このようにして得られた第1および第2の回転角度情報が互いに照合され、有利には互いに比較される。続くステップS5では、行われた照合に依存して、取付位置が求められる、したがって車輪電子ユニット21に割り当てられた車輪22が位置特定される。
【0031】
以下では、本発明による位置特定のために車輪電子ユニット側と車両側とで求められた車輪角度情報の照合の様々なアプローチを説明する。
【0032】
本発明は、車両に取り付けられている車輪は一般に1つまたは複数の異なる速度で回転するという認識を前提としている。本発明はさらに、車輪電子ユニットは車両に対する車輪電子ユニットの所定の回転角度位置を求めることができるということも前提としている。この情報は、車輪電子ユニットが車両側の受信器に送信信号(相応のテレグラムと共に)を送信する場合に利用される。送信すべき送信信号のテレグラムは、車輪固有の情報の他に、この回転角度位置またはこれから導出された回転角度情報も有している。ここで、車輪電子ユニットがまさに正確に測定された回転角度位置を知っているということは重要ではなく、時として有利でもない。重要なのは、車輪電子ユニットおよび/または車両側の評価ユニットが、車輪電子ユニットによって送信信号が送信されたときの回転角度位置を、例えば既知の計算時間、伝送持続時間、車両速度等を用いて、測定された回転角度情報から求めることができるということだけである。本発明はさらに、車両側で各車輪に例えばESPシステムまたはABSシステムの構成要素として回転数センサが設けられていることを前提としている。この回転数センサによって回転数信号パルスが求められ、この回転数信号パルスから車両に対する正確な車輪角度位置が導出される。
【0033】
本発明のアイディアは、車輪電子ユニットが送信信号を多重に送信する点にある。これらの送信信号は、この車輪電子ユニットによってつねに正確に同じ回転角度位置または少なくとも正確に知られている回転角度位置において送信される。なお、回転角度位置は車輪電子ユニットによって求めてもよいし、評価ユニットによって逆算してもよい。この送信信号が車両側で受信されると、受信時点に、または少なくとも受信時点と送信時点とから導出される時点に、車両側で例えば回転数センサを用いて各車輪位置が求められる。
【0034】
車輪の向き、車輪の角度位置
図3には、回転数センサが概略的に示されている。
図3では、車輪の回転数測定と回転角検出のための参照ディスクが参照符号30で表されている。このようなディスク30が各車輪に割り当てられており、例えば各車輪11の回転軸に固定的に結合されている。ディスク30は所定の数の(互いに分かれた)セグメントを有しており、これらセグメントを介して正確な回転角を求めることが可能である。今日のディスクは例えば中間領域によって互いに分離された48個のセグメント33を有している。
図3ではさらに、保持部32を介してディスク30に機械的、電気的または光学的に接触している回転数センサ32が設けられている。保持部32に、回転数センサ31から供給された電気信号を評価するユニットを設けてもよい。この評価ユニットは、例えば回転数センサ31によってカウントされたパルスをカウントして評価し、これに依存して現在の回転角度位置を求めることができる。ディスク30上の様々なセグメント33が回転数センサ31を介して検出される。ディスク30上の1つのセグメントから隣接するセグメントへの切り替わりごとに1つの境界が生じるので、48個のセグメントを有するディスク30の場合、車輪の完全な1回転につき全部で96の境界がカウントされる。
図3Aおよび3Bにはそれぞれ、車輪の速度が一定の場合(
図3A)と可変の場合(
図3B)の回転数センサの出力信号が示されている。ここで、出力信号は順次して生じる一定の振幅の方形パルスとして表される。速度が増していくと、方形パルスはより幅狭くなり、速度が低下していくと、方形パルスはより幅広くなる。
【0035】
回転数センサはふつう決まった零位置を有していないので、絶対的な角度位置を示すことはできない。それゆえ、例えば所定の時点に、例えば車両のイグニッションオンとその結果としての、車両に取り付けられた制御器のスイッチオンの際に、1つのセグメント33または回転数センサ31の歯を基準点または零点として定めてよい。その後の車輪角度は、この回転角度位置を基準として、それ以降に通過するエッジのカウントに基づいて計算することができる。上記の例の96個のエッジを(同じ方向の回転で)通過し終わると、再び基準位置に達し、完全な1回転が達成される。
【0036】
エッジをカウントする際には、車輪の運動方向(前方、後方)に注意しなければならない。つまり、現在位置のエッジを足すのか引くのかに注意しなければならない。運動方向は例えば4つの回転数信号のすべてを評価して求めることができる。さらに、または代替的に、運動方向を付加的な測定量、例えば車両加速度、車両回転(特にヨー特性、ピッチ特性等)も考慮して求める、または妥当性検査するようにしてもよい。またそのために、運転者または自動操縦装置によって入れられたギアに関する情報を評価してもよい。最後に、車輪が前向きに回転しているのか後ろ向きに回転しているのかという情報を前もって提供する、新世代の特殊な車輪回転数センサを使用することも可能である。これにより、所望のいずれの時点においてもつねに車輪の現在の回転の向きを知ることができる。
【0037】
しかしまた、車輪の絶対的な回転位置(つまり回転角度位置)を要さない特殊な照合方法を使用することも考えられる。その場合には、例えばつねにエッジの数に基づいて求められた、2時点間で為された車輪回転のみを参照する。
【0038】
回転数センサの回転数信号は一般に、直接車両のブレーキ制御または安定化制御システムにおいて使用することができる。送信信号を例えばタイヤ情報装置のような他の車両システムのために直接分岐させることは、これらの信号を改竄から守るという点から、大抵の場合は望ましくない、または安全技術上の理由から許されない。それゆえ、回転数信号はブレーキ制御または安定化制御システムによる前処理の後に車両の通信バスに入力される。そうすることによって、回転数信号は他のシステムでも利用可能になる。
【0039】
車輪電子ユニットが送信信号を周期的に送信する場合、前回に送信された送信信号からカウントした回転数センサのエッジの数が送られる。それぞれの送信信号を伝送する一般的な周期はおよそ10ミリ秒〜20ミリ秒である。
【0040】
照合
受信された送信信号の伝送時点を割り当てられた角度位置と照合する際、考察されている評価期間Txにわたって、同一の車輪に属する車輪電子ユニットと回転数または回転速度センサとの任意の組み合わせの無線伝送の伝送時点間に固定的な関係を確立することができる。各車輪電子ユニットは、各自の送信信号のテレグラムによって、各車輪電子ユニットの車両側での識別を可能にする一意的な識別子を送信する。
【0041】
図4に示されている、車輪電子ユニットRA〜RDおよび対応する回転数センサD1〜D4を有する車両構成の場合、例えば表1に示されている関係が得られる。ここで、Xは一致を、−−−は不一致を表している。Xは、車輪電子ユニットRA〜RDの放射の伝送時点と割り当てられた各車輪VL、VR、HL、HRとの間に固定的な関係が成り立っていることを示している。以下では、放射とは車輪電子ユニットによって送信される送信信号のことを意味する。
【表1】
【0042】
車輪電子ユニットRA〜RDの一致は、この車輪電子ユニットRA〜RBにそれぞれ割り当てられた車輪VL、VR、HL、HRとの間にしか成立しない。なぜならば、走行中すべての車輪は一般に個々別々に回転するからである。したがって、例えば外転輪は内転輪よりも長い道程を経なければならず、それゆえより高い角速度で回転する。さらに、駆動される車輪には大抵、駆動されていない車輪よりも大きなスリップが存在するので、駆動されている車輪は少しだけより速く回転する。また、タイヤ充填圧、プロファイル深さ、タイヤサイズなどの違い(例えば不所望な製造ばらつきによる)は、異なる車輪角速度をもたらす。
【0043】
理想的には、車輪の車輪電子ユニットRA〜RDを評価する際に、
図5A〜5Dに示されている関係が生じる。
【0044】
以下では、全部で4つの車輪VL、VR、HL、HRを有する乗用車を前提とする。なお、各車輪VL、VR、HL、HRには、それぞれ1つの車輪電子ユニットRA〜RDと1つの回転数センサD1〜D4が割り当てられている。それぞれの車輪電子ユニットRA〜RDに割り当てられた車両側の受信器はそれぞれ放射を、すなわち、それぞれ異なる車輪電子ユニットRA〜RDによって送信された送信信号を受け取る。
【0045】
理解しやすくするために、それぞれ異なる車輪電子ユニットに対応する4つの放射が
図5A〜5Dの4つの図に示されている。これら各図において、4つの車輪電子ユニットはRA〜RDで表されている。
図5A〜5Dの各図にはさらに、4つの部分図が含まれている。各部分図は、各車輪電子ユニットRA〜RDの放射について、車輪角度位置の分布を各取付位置のヒット数として示している。ここで、VL、VR、HL、HRは、左前輪、右前輪、左後輪、右後輪の車輪電子ユニットRA〜RDの取付位置を表している。上記分布は、各取付位置VL、VR、HL、HRのヒット数、つまり、回転角センサによる放射の受信時に測定された車輪角度位置ごとのヒット数を示している。
【0046】
図5A〜5Dでは、そのようにして受け取った車輪角度位置が3次元分布(いわゆるヒストグラム)の形態で表されている。この3次元分布において、黒円はそれぞれ0°〜360°の車輪角度位置を表し、これら黒円から突き出たトゲまたは尖端はこれら車輪角度位置のヒットを表している。横軸の平面には、特定の車輪角度位置における放射のヒット数が示されている。
【0047】
図5A〜5Dでは、それぞれ20の放射、したがってまた20の伝送時点(放射時点)が、4つの車輪の0°〜360°の回転位置上にプロットされて示されている。各車輪電子ユニットRA〜RDに対して、1つの車輪VL、VR、HL、HRの取付位置が存在しており、この放射時点に関して求められたすべての車輪位置は一致する。他の3つの車輪VL、VR、HL、HRでは、一致はまったくまたはほとんど見つからない。さらに、一意的な対応付けのためには、車輪角度の絶対的な位置の指示は必要ないことを理解すべきである。
【0048】
図5A〜5Dの図示によれば、互い一致する放射を有するマッチする車輪VL、VR、HL、HRは放射の際に車輪の角度位置に関してつねに同じ向きである、または順次連続する2つの放射の間につねに車輪の整数会の回転が行われると解釈される。
【0049】
現実には、そのような正確な一致はむしろ蓋然性が低い。それは例えば制御器での処理時間、送信信号の受信時および処理時の遅延時間、車輪電子ユニットでの角度位置検出の不正確性、雑音等を原因としている。したがって、むしろ
図6Aによる3次元ヒストグラムが得られる。なお、
図6Aでは、車輪電子ユニットRAの複数の放射の関係しか示されていない。
図6Bには、車輪位置上での放射の分布を幾らか違う方法で示した別の図がヒストグラムの形態で示されている。基本的に、車輪は0°〜360°にスライスされ、直線上にプロットされる。この表示は以下でも用いられる。
【0050】
図6Bにおいて、マッチする車輪における、すなわち、一致する車輪角度位置を有する車輪における車輪角度値は、各無線伝送において正確に一致するわけではないことを理解すべきである。むしろ、一般にはっきりと認識できる平均値と或る一定の分散を有する統計的なクラスタが得られる。しかし、以前と同じく、車輪電子ユニットRAと対応する左前輪VLとの間の明らかな関係は認識される。以下に示す評価方法によれば、車輪電子ユニットRA〜RDとこれらに属する車輪VL、VR、HL、HRとの間のこれらの関係が抽象的に求められる。
【0051】
評価方法:整数回の回転を求め、回転数信号を通信バスによって補間する
基本的には、車輪電子ユニットの放射と車輪の向きとの間の関係を評価するために、タイヤ情報装置の制御器において様々なコンセプトを採用してよい。以下に、様々なアプローチを説明するが、これらは有利には互いに組み合わせてもよい。
【0052】
1.特定の車輪の向きにおける車輪電子ユニットの放射の累積/集中
図6Bにおいて、左前輪VLが約45°の方向角度をとっている場合、放射はつねに1つの車輪角度位置において、したがって1つの時点において生じる。それに対して、他の車輪VR、HL、HRの場合、放射のこのような関係は認識されない。
【0053】
この第1のアプローチでは、生じた累積が数値的に定量化され、それによって放射と車輪の一致が推論される。そのために、例えば求められた車輪角度位置に関するヒットの統計的な分散を計算してもよい。
図6Bのグラフにおいて、左前輪VLの回転位置に関するヒットのばらつきが残りの車輪VR、HL、HRの分布よりも遥かに小さいことは明白である。
【0054】
代替的に、4つの異なるヒストグラムの中で最大値(車輪角度位置の最大ヒット数)の評価を行ってもよい。例えば、
図6Bにおいて、一致する車輪VLの場合には値5が見られる。つまり、5つの放射が同一の車輪角度位置において受信された。一方で、他の車輪VR、HL、HRの場合には、1または最大で2の値しか存在しない。
【0055】
しかし、これは再び理想的でない「雑音のある」測定値であるから、各最大値の個々の値だけでなく、最大値の周辺の値も評価することが有効である。これらの測定値の数に応じて、だいたい一意的な情報が得られる。その際に、多くの測定結果、すなわち放射を取り込めば取り込むほど、明確性を増すことができる。もちろん上記2つの方法を組み合わせること、つまり、分布の分散の評価を最大値の評価と組み合わせることも有利である。
【0056】
2.2つの車輪電子ユニットの放射と車輪の整数回の回転の間の時間間隔の一致
左前輪VLは大抵、車輪電子ユニットRAの2回の放射の間にほぼ整数回の回転を行う。車輪が整数回の回転を行うかどうかは、いわゆるモジュロ除算によって非常に良く決定することができる。そのために、前回の放射以来の車輪回転数センサのエッジの数を利用することができる(例えば、1回転につき96のエッジならば、10回転で960のエッジ)。完全な1回転のエッジ数によるモジュロ除算の剰余がゼロならば、相応する車輪は整数回の回転を行ったことになる。
【0057】
しかし、実際上はむしろ、車輪電子ユニットの放射は、例えば位置検出の不正確性、車輪電子ユニットにおける所定の期間のみでの信号処理のクロッキング等のせいで、正確に同じ箇所では行われないので、対応する車輪もつねに正確に1回転するわけではない。実際上は、特に考察時間、ひいては回転数が大きい場合、つねに完全な1回転よりも小さな偏差が生じる。例えば、962のエッジの場合、モジュロ除算の剰余は2である。
【0058】
さらに、従来一般的に知られているアプローチは、車輪電子ユニットの順次行われる2つの放射の間の個々の間隔の比較に関連している。例えば、車輪電子ユニットの2つの放射だけが時点T1とT2において順次行われ、それによって整数回の回転の後の4つの車輪(VL、VR、HL、HR)の角度変化を求める場合、検出の正確性は限定される。特に、車輪がこの期間中にごく僅かにしか異ならずに回転した場合には、そうである。同じ現象は時点T3、T4、T5、T6における別の測定でも生じる。
【0059】
本発明による方法では、位置検出の性能を著しく改善するいわゆる累積的方法が提案される。この累積的方法は、T1−T2、T2−T3、T3−T4等だけでなく、すべての可能な組み合わせを評価する。時点T1、T2、T3、T4、T5、T6における放射/測定の場合、例えば以下の組み合わせが評価される。
T1−T2、
T1−T3、
T1−T4、
T1−T5、
T1−T6、
T2−T3、
T2−T4、
T2−T5、
T2−T6、
T3−T4、
T3−T5、
T3−T6、
T4−T5、
T4−T6、
T5−T6。
【0060】
一般には、nの異なる測定T1〜Tnから、全部でn*(n−1)/2の調べる組み合わせが生じる。使用する測定値nが増えれば増えるほど、上記の単純な方法に比べて、利点が大きくなることは明らかである。この利点は、2つの事象の間の比を評価するというより、むしろ有利にはすべての放射または少なくとも大多数の放射の間の関係全体を考察するということに基づいている。
【0061】
任意の時点における車輪角度位置または車輪の向きを車輪回転数のパルスに基づいてどのように再構成することができるかは、すでに上で説明した。問題は、通信バス上で1つのメッセージ内で他の制御器からのパルスを利用できるようにする場合に生じる。これらのメッセージはふつう正確に情報が必要とされる無線伝送時点に送られるのではない。この場合、車輪角度位置はメッセージ受信中に通信バス上で補間法が適用できるように所望の時点において再構成される。その際、約5ミリ秒〜100ミリ秒の周期で十分に正確である。
【0062】
以下に、上に記載した2つの評価方法を説明するための1つの例を
図7の表2に基づいて示す。
【0063】
図7の表2には、車輪電子ユニットの20の放射に対して、これらの時点T1−T20においてカウントされたエッジに関するカウンタの状態と2つの異なる車輪の相応する角度位置とが示されている。各時点T1−T20において、2つの車輪の現在の向きが求められる。他の車輪についての表示は表2では省かれている。車輪の方向角度は通過した回転数パルスに基づいて求められる。パルス数/エッジ数は制御器のスイッチオン時に例えばゼロにリセットされ、それからまた連続的にカウントされる。
図7−7Bの例では、厳密に前方に走行したので、パルス数はテレグラムの伝送時点が増えるにつれて単調増加する。車輪の向きは1回転(360°=1回転)当りのパルス数によるモジュロ除算と後でパルスを度数表示に変換することによって得られる。
【0064】
図7において、車輪電子ユニットが送信信号を発する場合、第1の車輪F1はつねに約240°の向きをとることに気付かなければならない。他の車輪F2の場合には、このような関係は認識できない。これらの関係は
図7A、7Bではヒストグラムの形態で示されている。車輪F1の場合、向きが1つの位置に非常に強く集中していることがはっきりと認識できる。一方、車輪2の場合には、規則性がまったく認識できない。これは上で述べた第1の評価方法に相当する。
【0065】
以下では、上で述べた第2の評価方法を
図8〜8Bに基づいて説明する。この方法では、そのつど2つの伝送時点の間の差異が評価される。20個の伝送時点T1〜T20の場合、20*19/2=190の組み合わせが得られる。
図8に示されている表3には、一方では各伝送時点の間にカウントされたパルス/エッジとこれらから計算された車輪回転数とが示されている。さらには、車輪回転の完全な1回転に対する差が度数で示されている。
【0066】
整数回の車輪回転に対するこの差は絶対角度として示されていることに注意しなければならない。代替的に、もちろん車両回転数に対する相対的な偏差を評価してもよい。
【0067】
図8の表3において、第1の車輪F1の場合、2つの放射の間に正確に整数回の回転が行われるが、車輪F2の場合はそうでないことが分かる。これもまた、
図8Aの第1の車輪F1のためのヒストグラムと、
図8Bの第2の車輪F2のためのヒストグラムの、2つのヒストグラムによって示すことができる。これらのヒストグラムには、完全な1回転にたいする偏差が記入されている。これらのグラフに基づけば、一致を求めるために、ひいては照合のために、上で説明した第1の評価方法の数学的手法が適用可能であることが分かる。
【0068】
要約すると、上で述べた第1の方法は各伝送時点における車輪の現在の向き、すなわち絶対的な向きに関しており、第2の方法は2つの放射の相対的な回転に、すなわち相対的な向きに基づいていると述べることができる。ただし、これら2つの方法は完全に無関係というわけではなく、評価の際にこれら2つの方法を組み合わせれば、さらに性能の良い位置割当てが可能となる。
【0069】
提案された方法の最適化
上で説明した第1の方法では、分布の内部、すなわちヒストグラムの内部で累積/集中が探し求められた。そのためには、例えば分散や標準偏差を求めるといった一般的に知られている統計的アプローチを使用することができる。ただしその場合、359°の回転角度もほぼ1°の角度であること、または角度360°が角度0°に相当することを考慮しなければならない。例えば
図9に示されているように、この角度範囲内に回転角度の集中が生じている場合には、公知の統計的アプローチによる評価は難しいだろう。これを解決するために、上記した従来の統計的アプローチは拡張される。そのために、例えば「ずれた」分布を或る距離だけ「円状」に車輪の回転に沿ってこの値範囲の境界を超えてシフトさせるか、または鏡映も用いるように、上記方法を変更する。しかし、原則的に、先ず初めに、このような分布が値範囲の境界を超えていることを検出しなければならない。これは
図9Aおよび9Bに示されている。
図9Aの分布は、シフトされているが、
図9Bの分布と同じ分布である。
図9Aの分布は、
図9Bの元の分布に対して絶対値にして約180°だけシフトされている。
【0070】
さらに問題なのは、実用においてはつねに、車輪角度位置の分布内に外れ値が見つかるということである。この外れ値は、例えば車輪電子ユニット内での回転位置の検出の誤りによって、または制御器内での計算の問題、例えば送信および受信された送信信号の時間遅延によっても生じうる。この現象は、車輪電子ユニットが、例えば車道の凹凸等のせいで、強い雑音を伴った送信信号を誤った伝送位置において、つまり誤った回転角度位置において送信する場合に、特に頻繁に予想される。これまでのヒストグラムですでに示されたように、特に多数の伝送を評価する場合には、分布のばらつきが小さいことは或る程度つねに予想される。上記方法は通常これらのばらつきにも対処できる。
【0071】
問題はむしろ、
図10Bのヒストグラムにおいて示されているように、外れ値が個別化されることである。
図10Bにおいて、外れ値はおよそ60°と80°に存在している。ここで、例えば分散の計算のような上記統計的方法を適用すれば、
図10Bの例では、約160°における平均値の周りの集中の評価が大幅に悪くなる。一方では、分布の平均値は不所望なことに60°と80°における2つの外れ値によって左にシフトする。他方では、分散が増大する。この理由から、方法を最適化する際には、例えば統計的評価の前に前処理を行うことによって、外れ値の影響を除去する。前処理では、
図10Bの60°と80°で検出された外れ値を統計的評価から除外する。
図10Aには、このようにして修正された分布が示されている。この外れ値検出方法は第1の評価方法においても第2の評価方法においても使用することができる。
【0072】
車輪回転数信号の中断
上記方法にとって、タイヤ情報システムの車両側の制御器に連続的に正しい回転数情報を提供することによって、車輪の向きを正しく再構成できるようにすることは有利である。ただし、実用上は、これが満たされない状況も存在する。1つには、内部通信バスに故障があって、このような回転数情報が失われてしまう場合がある。もう1つには、例えば前進ギアが入っているという理由から、制御器は車輪が前向きに回転していると仮定しているにもかかわらず、車両は例えば坂で後進しているというようなことが起こりうる。さらに、車両は進んでいるが、それに関する方向情報が存在していないということも起こりうる。これは、上記すべてのケースにおいて、後続の伝送時点に関して誤った車輪の向きが計算されることにつながる。このため、評価を正しく行うことができない。なぜならば、分布から得られる車両のヒストグラムに、例えば複数の累積が生じうるからである。
【0073】
そのために、複数の累積を検出することのできる評価方法を用いてもよいが、比較的コストが高くつく。
【0074】
代替的には、第1の評価方法において、つねに一貫して正しい車輪の向きを求めることができた期間に処理を適用することが考えられる上に、有利でもある。伝送位置の最終的な対応付けのためには、個々の期間を全体的に考察することが必要である。第2の評価方法では、実際、実行がいくらか簡単である。この場合、2つの伝送時点の間の整数回の回転を、つねに一貫して正しい車輪の向きを有する同一の期間からの2つの伝送時点の間においてだけ探せばよい。端部についての特別な考察はもはや不要である。というのも、いずれにせよここでは、絶対的な車輪の向きの考察ではなく、つねに相対的な車輪の向きの考察だけが関心事だからである。
【0075】
車輪の向きの正しい検出の中断は様々な方法で確認することができる:
通信バス上でのメッセージの喪失は、例えば周期的な処理における不連続性から検出することができる。車両は走行しているが、方向情報が不在であることは、回転数情報のエッジは見られるが、現時点で方向情報が存在していないことから認識される。誤った方向への走行は、例えば車両か速度、回転等のような車両からの他の信号による妥当性検査によって知ることができる。誤った方向への走行は基本的に、車両速度が非常に低いか、一時的にゼロである場合にしか起こらない。というのも、その場合にしか、前進ギアと後進ギアの切り替えは可能でないからである。
【0076】
タイヤ位置/収束基準の割当て
車輪角度に関連した放射の累積の評価は、車輪電子ユニットの位置特定のための基礎である。しかし、車両への取付位置を求めるにはさらに、車輪電子ユニットに、ひいては対応する車輪に車両への正しい取付位置を割り当てる付加的なステップが必要である。この割当ては様々な基準に基づいて行うことができ、基準は互いに組み合わせてもよい。
【0077】
有意性基準:
各車輪電子ユニットについて、車輪への帰属度の評価が行われる。その際、例えばすでに上で述べた評価方法に基づいて、各車輪への帰属の数値的度合いが求められる。放射と車輪角度位置との一致に依存して、ほぼ一意的な像が得られる。さらに、車輪電子ユニットごとに、一致の率を評価する、特に最も蓋然性の高い車輪への帰属がどれくらい有意であるかを評価する有意度が生成される。この有意度が所定の閾値を超えていれば、一意的な、または少なくとも有意性基準を満たす、尤もな割当てが可能である。
【0078】
割当ての矛盾:
原則的に、評価方法とそこから得られた結果とに基づいて、2つの異なる車輪電子ユニットが見かけ上は同一の車輪に属しうることは可能である。このような割当ての矛盾は検出されなければならない。このような場合、まず初めに、車輪電子ユニットの各取付位置への割当てが停止または中断される。そしてその後、有利にはすべての車輪電子ユニットと車輪の有意度の直接比較に基づいて、割当てが行われる。
【0079】
処理される無線放射の数:
処理される受信された放射が多ければ多いほど、一般に割当ては確実になる。したがって、放射の最低数を設定し、割当ての前に少なくとも最低数の放射が存在し、評価されていなければならないようにするのが有利である。また、車輪電子ユニットごとに受信される放射の最低数を、例えば少なくとも5、好ましくは少なくとも10、さらに好ましくは少なくとも20と設定することも有利である。
【0080】
早期の割当て:
4つの車輪電子ユニットまたは車輪の場合において、3つの車輪電子ユニットに関して、その取付位置をすでに非常に高い確実性をもって割り当てることができているならば、残りの第4の車輪電子ユニットとまだ占められていない第4の取付位置に関する評価を行うことを省いてよい。その場合、位置特定機能を終了してもよい。それと同様に、すでに1つの軸の車輪に対する割当が可能ならば、この割当てをそこで実行してもよい。これは、例えば複数の異なる軸圧の監視による軸割当てしか必要でない場合に有利である。この場合、車両側の情報とは無関係に、すでに例えばタイヤ充填圧の監視が可能である。
【0081】
上記諸点の例えばAND結合および/またはOR結合による多様な組み合わせが可能である。さらに、例外も解釈可能である。例えば非常に一意的な有意度に基づいて割当てが可能ならば、例えば放射の最低数の要求は無くてよい。
【0082】
一方では、位置特定は可能な限り速く完了させるべきである。他方では、走行時の車両の車輪はたいていの走行状態においては互いに対してゆっくりとしか回転しない。したがって、照合方法において一意的な違いが明らかになり、確実な割当てが可能となるまで、多少長くかかる。それゆえ通常は、迅速な位置特定と確実な位置特定との間の妥協が重要であり、追求すべきである。
【0083】
伝送時点:送信または受信されるテレグラムの送信時点および受信時点
車輪電子ユニット側(送信側)では、下記のステップが実行される。
1.車輪電子ユニットの放射(テレグラム全体の伝送)の伝送時点を待つステップ。しかし、車輪電子ユニットは一般に連続的には送信されず、2つの放射の間には最低間隔が設定されているので、車輪電子ユニットはそのつど放射のためのタイムスライス、例えばすべて15秒、を待たなければならない。
2.送信が行われるべき、車輪の所定の向きまたは角度位置を検出するステップ。代替的に、車輪の現在の向きを検出してもよい。その場合、この情報が送信信号のテレグラムによって一緒に送信される。
3.送信信号のテレグラムを組み立てるステップ。無線伝送の準備。
4.テレグラム全体を含む送信信号の送信を開始するステップ。
5.送信信号の送信を終了するステップ。テレグラム全体が送信し終わる。
6.方法ステップ1へ戻る。
【0084】
車両側の受信装置側(受信側)では、下記のステップが実行される。
a.テレグラム全体を含む送信信号を待つステップ。
b.無線伝送の開始を検出するステップ。
c.無線伝送の終了を検出するステップ。
d.必要に応じて、無線伝送の時点に関する情報と共にタイプスタンプを伝送するステップ。
e.ステップaへ戻る。
【0085】
受信側の時点b.は送信側の時点4.に対応している。車両側の、つまり受信側の評価ユニットが、いつ送信側の車輪電子ユニットが車輪の向きの検出を行ったかを知っていることは重要であるから、実際には時点2.が求められる。しかし、大抵これは困難である。それゆえ、受信器はふつうむしろ時点c.を、つまり、テレグラムが誤り無く受信された時点を求める。時点b.を求めることは原理的には可能だが、送信および受信される送信信号の受信中に無線伝送の中断が生じる場合には、無条件的には有意義ではない。しかし一般的に、時点b.は時点c.から逆算することができる。なぜならば、ふつう、無線伝送が通常どのくらいの長さ続くかは既知だからである。この情報は、車輪電子ユニット側の送信器が完全な送信プロトコルに含まれているデータ量を送信するのに既知の持続時間を要するので、このデータ量から得られる。その場合、時点4.から時点2.を逆算するだけでよい。これは、車輪電子ユニットの挙動の分析による遅延時間を求めれば、可能である。したがって、制御器において正確な時点2.を逆算し、この時点に関して、車輪電子ユニットによって求められた4つの車輪の向きまたは車輪角度位置を求めることが可能である。
【0086】
テレグラムが制御器外部の外部受信ユニットから通信バスを介して評価ユニット/制御器に伝送される場合には、別の遅延も発生する。この場合には、無線伝送のタイムスタンプをメッセージ内に含めて一緒に伝送してもよい。代替的に、通信に関して通信バス上での伝送に必要な既知の一定の遅延を遵守するようにすることも考えられる。その場合には、この遅延を制御器において再び差し引くことができる。
【0087】
一般に、すべての情報をできるだけ早くかつ改竄なしに処理するために、存在するすべての遅延をできるだけ小さく保つことも、もちろん望ましいことである。
【0088】
車輪電子ユニットの挙動において、これまで説明してきた流れを拡張することが有意義である。実地では、例えば強く雑音を含んだ信号が存在する場合など、車輪の向きを求めることができないことが時々起こる。これは例えば車両が走行している道路に強い凹凸がある場合に起きる。向きを検出できない、または検出中に時間オーバーになった場合には、車輪電子ユニットで向きを決めるべきである。この場合、通常はつねに、例えばタイヤ充填圧のようなタイヤに関する現在の情報を監視のために制御器に送るために、さらに無線テレグラムが送られる。ここで、車輪電子ユニットは、向きに関連しない放射であるという通知をテレグラムに含めて一緒に送ることが必要である。したがって、制御器では送信された情報だけが処理され、位置特定のために無線伝送時点を評価することはない。
【0089】
時点2.を求める際には、或る役割を果たす、注意しなければならない他の要因も存在する。これらの要因については、以下で手短に説明する。
【0090】
タイヤセンサの伝送のときに、いわゆる「ブラックスポット」が存在することは知られている。これは、車両側の受信器によるテレグラムの受信が困難または全く不可能になるような車輪の角度位置である。これは、無線回線が例えば車体部材によって影響を受けることに起因している。したがって、つねに同一の位置で放射するのではなく、360°の完全な車輪回転上にできるだけ一様な放射の分布が達成されるように、ランダムな遅延、すなわちシフトされた車輪角度を本来の無線送信の前に挿入することが有効である。車輪電子ユニットの放射の際、テレグラム内にそれぞれのランダムな遅延に関する情報が含まれていることが重要である。この遅延は、車輪電子ユニット内での位置検出の元々の時点を得るために、制御器において再び差し引くことができる。さらに、実用上は、例えば他の車輪電子ユニットの同時放射による無線障害や消失のせいで、個々の伝送が正しく受信されないことが頻繁に起こりうる。こうした理由から、車輪電子ユニットの情報を冗長的に送るのが有利である。したがって、同一の情報を含む個々のフレームまたは放射が送信される。
【0091】
実用上は、決められた車輪の向きにおいて各フレームを送信するのではなく、第1のフレームに対して予め決められた向きを決定し、その後、他のフレームを所定のパターンで送信する。したがって、位置に関連した車輪電子ユニットの送信の際には、バーストの1つまたは2つのフレームの受信だけから、向きの元々の検出が逆算できることも不可欠である。そのためには、各フレームがバースト内の何番目のフレームであるかという情報を持っていることが必要である。この情報とフレーム間の休止時間に関する情報とを用いて、制御器は元々の検出時点を順次逆算することができる。
【0092】
ここでまた、車輪電子ユニットにおいて所定の向きを検出し、それを放射することは、無条件に必要なわけではないことを指摘しておきたい。代替的に、任意の向きを検出し、この向きで放射し、それぞれの向き情報を送信される送信信号に含めて一緒に送ることも可能である。制御器では、この情報から、再び伝送時点と車輪角度位置との一致を探すことができる。上記の方法はこの目的に容易に適合させることができる。しかし、基本的に、予め決められた向きを検出する方が、連続的に向きを求めるよりも簡単である。
【0093】
以上において本発明を有利な実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施例には限定されず、多種多様に変更が可能である。
【0094】
本発明は必ずしもPKWにおいて使用されるタイヤ情報装置に限定されない。本発明はむしろトラック、バス、オートバイ、駆動部無しのトレーラ等のような任意の車両において使用される。特に、本発明はまた、上で説明した個数の、車両の車輪に限定されず、4個よりも多いまたは少ない車輪電子ユニットを位置特定するようにしてもよい。車輪位置特定の代わりに、軸位置特定も考えられる上に、有利でもある。
【0095】
ここで、本発明はタイヤの位置特定そのものにも関しており、したがって、特許請求項は「車両の少なくとも1つの車輪を位置特定する装置および方法」という意味において読まなければならないことを指摘しておく。「車輪」という概念は明細書の残りの部分においても概念的に「タイヤ」で置き換えうる。
【0096】
とりわけ、本発明は、放射が行われるべき車輪位置をタイヤ電子ユニットが求めるという様式に限定されない。これは、例えば重力センサによって求められた重力情報、加速度情報、およびその微分等の評価によって行ってもよい。