(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3記載の脱硫装置にあっては、脱硫部を加熱させる加熱媒体の温度が高温となる。このため、脱硫部の保温温度によっては加熱媒体の温度と脱硫部の保温温度との差が著しく大きくなり、効率的な保温ができないおそれがある。本技術分野では、脱硫部をエネルギー効率良く保温することができる脱硫装置及び当該脱硫装置を備える燃料電池システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る脱硫装置は、水素含有燃料を用いてセルスタックにより発電するとともに熱媒体を用いてセルスタックの排熱を回収する燃料電池システムに用いられる脱硫装置である。この脱硫装置は、脱硫部及び脱硫系熱交換部を備える。脱硫部は、脱硫触媒を収容した脱硫流路を有し、水素含有燃料を流体入口から流体出口まで延びる脱硫流路に流通させて脱硫する。脱硫系熱交換部は、脱硫部の側方を覆うように配置され、セルスタックの排熱を回収した後の熱媒体を流通させて熱媒体と脱硫部とを熱交換させる。脱硫系熱交換部の流体流通方向及び脱硫流路の流体流通方向は、対向流となるように形成されており、脱硫流路の内部において、流体入口側及び流体出口側に流体の流れを変更する邪魔板が設けられ
、流体入口側の邪魔板は、流体入口から離間して、脱硫触媒が収容されている部分の内部に配置され、流体出口側の邪魔板は、流体出口から離間して、脱硫触媒が収容されている部分の内部に配置されており、脱硫流路には、流体入口から一方側へ流通する水素含有燃料を一方側とは反対の他方側へ流通させる折返し部が形成され、流体入口から前記折返し部までの脱硫流路が、熱媒体流路と隣接するように配置されており、流体入口から折返し部までの脱硫流路の流体流通方向と、熱媒体流路の流体流通方向及び折返し部から流体出口までの脱硫流路の流体流通方向とが、対向流となるように形成され、脱硫流路の内部において、折返し部に流体の流れを変更する邪魔板が設けられている。
【0006】
本発明の一側面に係る脱硫装置では、セルスタックの排熱を回収した熱媒体が脱硫部と熱交換する。熱媒体は、セルスタックの排熱によって加熱されるため、改質ガスの温度、改質触媒に供給されて受熱された水の温度、及び燃焼触媒の反応温度に比べて、低い温度となる。このため、比較的低い温度で保温されるべき脱硫部をエネルギー効率良く保温することができる。さらに、本発明の一側面に係る脱硫装置では、水素含有燃料の流通方向と熱媒体の流通方向とが対向流となるように形成されている。このため、脱硫部をエネルギー効率良く保温することができる。さらに、本発明の一側面に係る脱硫装置では、脱硫流路の内部において、流体入口側及び流体出口側に流体の流れを変更する邪魔板が設けられている。このように構成することで、脱硫流路内に生じる偏流を抑制することができる。
さらに、本発明の一側面に係る脱硫装置では、脱硫流路には、流体入口から一方側へ流通する水素含有燃料を一方側とは反対の他方側へ流通させる折返し部が形成され、流体入口から折返し部までの脱硫流路が、熱媒体流路と隣接するように配置されており、流体入口から折返し部までの脱硫流路の流体流通方向と、熱媒体流路の流体流通方向及び折返し部から流体出口までの脱硫流路の流体流通方向とが、対向流となるように形成されている。このように構成されることで、流体入口から折返し部までの脱硫流路を流通する水素含有燃料と、熱媒体及び折返し部から流体出口までの脱硫流路を流通する水素含有燃料とが対向流とされる。すなわち、流体入口から折返し部までの脱硫流路を流通する水素含有燃料は、熱媒体から加熱されるとともに、折返し部から流体出口までの脱硫流路を流通する水素含有燃料によっても加熱される。このように、加熱される流体の流通方向と加熱元の流体の流通方向を対向流とすることで熱効率を向上させることできるので、エネルギー効率良く脱硫部を保温することが可能となる。さらに、本発明の一側面に係る脱硫装置では、脱硫流路の内部において、折返し部に流体の流れを変更する邪魔板が設けられていてもよい。このように構成することで、脱硫流路内に生じる偏流を抑制することができる。
【0010】
一実施形態では、流体入口から折返し部までの脱硫流路は、脱硫部の外周壁及び脱硫部内部に設けられた内壁によって画成され、折返し部から流体出口までの脱硫流路は、内壁によって画成され、内壁は、流体入口から折返し部までの脱硫流路と、折返し部から流体出口までの脱硫流路とが同一の体積となるように設けられていてもよい。このように構成することで、流体入口から折返し部までの脱硫流路、及び、折返し部から流体出口までの脱硫流路において、流体の流速が平均化され、偏流偏差を小さくすることができる。
【0011】
一実施形態では、脱硫部は、円筒を呈し、脱硫部の半径と脱硫部に収容される所定の触媒量とに基づいて求まる表面積が最小値となるように設定された半径を有してもよい。このように構成することで、脱硫装置90の放熱を適切に抑制することができる。
【0012】
本発明の他の側面に係る燃料電池システムは、上述した脱硫装置を備え、脱硫後の水素含有燃料を用いて発電するように構成される。当該燃料電池システムは、上述した脱硫装置を備えているので、エネルギー効率良く脱硫部を保温することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の種々の側面及び実施形態によれば、エネルギー効率良く脱硫部を保温することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
最初に燃料電池の基本構成について概説する。
図1は、本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、燃料電池システム1は、脱硫部2と、水気化部3と、水素発生部4と、セルスタック5と、オフガス燃焼部6と、水素含有燃料供給部7と、水供給部8と、酸化剤供給部9と、パワーコンディショナー10と、制御部11と、を備えている。燃料電池システム1は、水素含有燃料及び酸化剤を用いて、セルスタック5にて発電を行う。燃料電池システム1におけるセルスタック5の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。なお、セルスタック5の種類、水素含有燃料の種類、及び改質方式等に応じて、
図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
【0017】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0018】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0019】
脱硫部2は、水素発生部4に供給される水素含有燃料の脱硫を行う。脱硫部2は、水素含有燃料に含有される硫黄化合物を除去するための脱硫触媒を有している。脱硫部2の脱硫方式として、例えば、硫黄化合物を吸着して除去する吸着脱硫方式や、硫黄化合物を水素と反応させて除去する水素化脱硫方式が採用される。脱硫部2は、脱硫した水素含有燃料を水素発生部4へ供給する。
【0020】
水気化部3は、水を加熱し気化させることによって、水素発生部4に供給される水蒸気を生成する。水気化部3における水の加熱は、例えば、水素発生部4の熱、オフガス燃焼部6の熱、あるいは排ガスの熱を回収する等、燃料電池システム1内で発生した熱を用いてもよい。また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いて水を加熱してもよい。なお、
図1では、一例としてオフガス燃焼部6から水素発生部4へ供給される熱のみ記載されているが、これに限定されない。水気化部3は、生成した水蒸気を水素発生部4へ供給する。
【0021】
水素発生部4は、脱硫部2からの水素含有燃料を用いて水素リッチガス(水素含有ガス)を発生させる。水素発生部4は、水素含有燃料を改質触媒によって改質する改質器を有している。水素発生部4での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。なお、水素発生部4は、セルスタック5に要求される水素リッチガスの性状によって、改質触媒により改質する改質器の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、セルスタック5のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、水素発生部4は、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。水素発生部4は、水素リッチガスをセルスタック5のアノード12へ供給する。
【0022】
セルスタック5は、水素発生部4からの水素リッチガス及び酸化剤供給部9からの酸化剤を用いて発電を行う。セルスタック5は、水素リッチガスが供給されるアノード12と、酸化剤が供給されるカソード13と、アノード12とカソード13との間に配置される電解質14と、を備えている。セルスタック5は、パワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。セルスタック5は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び酸化剤をオフガスとして、オフガス燃焼部6へ供給する。なお、水素発生部4が備えている燃焼部(例えば、改質器を加熱する燃焼器など)をオフガス燃焼部6と共用してもよい。
【0023】
オフガス燃焼部6は、セルスタック5から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部6によって発生する熱は、水素発生部4へ供給され、水素発生部4での水素リッチガスの発生に用いられる。
【0024】
水素含有燃料供給部7は、脱硫部2へ水素含有燃料を供給する。水供給部8は、水気化部3へ水を供給する。酸化剤供給部9は、セルスタック5のカソード13へ酸化剤を供給する。水素含有燃料供給部7、水供給部8、及び酸化剤供給部9は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。
【0025】
パワーコンディショナー10は、セルスタック5からの電力を、外部での電力使用状態に合わせて調整する。パワーコンディショナー10は、例えば、電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。
【0026】
制御部11は、燃料電池システム1全体の制御処理を行う。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイスによって構成される。制御部11は、水素含有燃料供給部7、水供給部8、酸化剤供給部9、パワーコンディショナー10、その他、図示されないセンサや補機と電気的に接続されている。制御部11は、燃料電池システム1内で発生する各種信号を取得すると共に、燃料電池システム1内の各機器へ制御信号を出力する。
【0027】
ここで、燃料電池システム1は、セルスタック5が発生する熱を用いて水を温水に変え、その温水を貯湯槽に貯えて利用する熱回収系を備えている。すなわち、燃料電池システム1は、いわゆるコジェネレーションシステムを備えている。以下、燃料電池システム1における熱回収系を概説する。
図2は、本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
図2では、熱回収系に関係のない部分は一部省略している。
図2に示されるように、燃料電池システム1の熱回収系は、セルスタック5の排熱を回収するものであって、貯湯槽81、熱交換器80、脱硫系熱交換部82及び循環流路83を備えている。貯湯槽81、熱交換器80及び脱硫系熱交換部82は、循環流路83によって順に接続されている。また、脱硫部2及び脱硫系熱交換部82を備えて脱硫装置が構成されている。
【0028】
貯湯槽81は、水又は温水を貯留するユニットである。なお、「水」とは、その温度に関係なく液体状態である水のことであって、温水とは「水」に熱を加えたものである。貯湯槽81の貯留水は、熱媒体として熱交換器80へ供給される。なお、熱交換器80への供給前にラジエータ等によって熱媒体が冷やされてもよい。
【0029】
熱交換器80は、循環流路83を介して貯湯槽81に接続されるとともに、セルスタック5の出力側に接続されている。熱交換器80は、セルスタック5のオフガス(排ガス)と熱媒体とを熱交換させる。すなわち、熱交換器80によってオフガスを加熱源として熱媒体が加熱される。熱媒体は、60℃〜80℃程度に加熱される。熱交換後の熱媒体は、循環流路83を巡って脱硫部2の脱硫系熱交換部82へ供給される。
【0030】
脱硫系熱交換部82は、循環流路83を介して熱交換器80に接続されるとともに、脱硫部2と熱的に接触されている。脱硫系熱交換部82は、熱媒体と脱硫部2とを熱交換させる。すなわち、脱硫系熱交換部82によって熱媒体を加熱源として脱硫部2が加熱される。熱交換後の熱媒体は、循環流路83を巡って貯湯槽81へ戻される。
【0031】
以上、燃料電池システム1の熱回収系では、貯湯槽81から低温の熱媒体が熱交換器80へ供給されて加熱され、加熱された熱媒体が脱硫装置の脱硫系熱交換部82へ供給されて脱硫部2を加熱する。ところで、燃料電池システム1の改質ガスは、水素発生部4で生成されるものであり、600℃〜700℃程度の温度を有しているとされている。改質触媒に供給される改質水もまたスーパーヒートされ、水蒸気の状態であるため、かなりの高温となっている。さらに、通常の燃焼触媒の触媒燃焼温度は600℃程度である。このため、改質ガス、改質水又は燃焼触媒は、極めて高温であるため、比較的低温に保温すべき脱硫部2を保温しようとしてもエネルギーロスが大きいこととなる。このような低温の脱硫部2の一例としては、ゼオライト系の吸着脱硫部(保温温度60℃〜80℃)がある。燃料電池システム1では、熱媒体を用いるため、低温の脱硫部2を採用する場合にエネルギーロスの少ない保温をすることができる。
【0032】
次に、
図3,4を用いて脱硫装置の構成を説明する。
図3は、本実施形態に係る脱硫装置の斜視図、
図4は、
図3に示す脱硫装置のIV−IV線に沿った断面図である。
【0033】
図3,4に示されるように、脱硫装置90は、略円筒状を呈し、脱硫部2及び脱硫系熱交換部82を備えている。脱硫装置90の上側には、脱硫処理前の水素含有燃料を脱硫部2へ導入する流体入口20a、及び、脱硫処理後の水素含有燃料を脱硫部2から導出する流体出口20bが形成されている。一方、脱硫装置90の下側側部には、セルスタック5の排熱を回収した後の熱媒体を脱硫系熱交換部82へ導入する流体入口21aが形成され、脱硫装置90の上側側部には、流体入口21aから最も離れた位置に熱交換後の熱媒体を脱硫系熱交換部82から導出する流体出口21bが形成されている。
【0034】
脱硫部2は、外周壁2aを側壁として略円筒状に形成されている。その内部には、脱硫触媒21が収容されている。また、脱硫部2の上部内壁には、脱硫部2の下部内壁に向けて内周壁(内壁)2bが立設されている。内周壁2bは、外周壁2aから離間した状態で外周壁2aに沿って延在している。内周壁2bの先端側と脱硫部2の下部内壁との間には、空隙(折返し部25)が設けられている。このため、脱硫部2の内部には、外周壁2a及び内周壁2bによって脱硫流路23が画成され、内周壁2bの内部に脱硫流路24が画成されている。脱硫流路は、脱硫部2の外側から内側へ向けて、脱硫流路23及び脱硫流路24の順に配置されている。また、脱硫部2の流体入口20aは、外周壁2a及び内周壁2bによって画成された脱硫流路23に連通されている。脱硫部2の流体出口20bは、内周壁2bの内部に画成された脱硫流路24に連通されている。
【0035】
このため、流体入口20aから脱硫部2へ導入された水素含有燃料は、外周壁2a及び内周壁2bによって画成された脱硫流路23を上側から下側(一方側)へ向かって流通し、折返し部25で折り返して、内周壁2bの内部に画成された脱硫流路24を一方側とは反対の方向である上側(他方側)へ流通して、脱硫後の水素含有燃料として流体出口20bから導出される。
【0036】
脱硫部2の側方には、脱硫部2を覆うように脱硫系熱交換部82が配置されている。脱硫系熱交換部82は、その内部に熱媒体を流通させる熱媒体流路22が設けられている。すなわち、脱硫部2の側方は、加熱された熱媒体、例えば温水による槽(ジャケット槽)が配置されている。流体入口21aから脱硫系熱交換部82へ導入された熱媒体は、熱媒体流路22を下側から上側へ向かって流通して流体出口21bから導出される。
【0037】
このように、流体入口20aから折返し部25までの脱硫流路23が、熱媒体流路22と隣接するように配置されており、熱媒体流路22の流体流通方向及び脱硫流路23の流体流通方向が対向流となるように形成されている。このため、熱媒体流路22を流通する熱媒体から脱硫流路23又は脱硫流路23を流通する水素含有燃料へ効率的に熱を与えることができる。
【0038】
また、流体入口20aから折返し部25までの脱硫流路23の流体流通方向、及び折返し部25から流体出口20bまでの脱硫流路24の流体流通方向が、対向流となるように形成されている。このため、脱硫流路24を流通する水素含有燃料から、脱硫流路23を流通する水素含有燃料へ効率的に熱を与えることができる。言い換えれば、既に加熱された水素含有燃料から、これから加熱する水素含有燃料へ効率的に熱を与えることができる。このように、自己熱回収される構成とされているので、脱硫部2の内部の熱の均一化が促進される。
【0039】
以上、本実施形態に係る脱硫装置90又は燃料電池システム1によれば、セルスタック5の排熱を回収した熱媒体が脱硫部2と熱交換する。熱媒体は、セルスタック5の排熱によって加熱されるため、改質ガスの温度、改質触媒に供給されて受熱された水の温度、及び燃焼触媒の反応温度に比べて、低い温度となる。このため、比較的低い温度で保温されるべき脱硫部2をエネルギー効率良く保温することができる。また、脱硫部2を加熱するためのヒータ等が不要となるので、コストも優れている。
【0040】
また、本実施形態に係る脱硫装置90又は燃料電池システム1によれば、水素含有燃料の流通方向と熱媒体の流通方向とが対向流となるように形成されているため、脱硫部2をエネルギー効率良く保温することができる。
【0041】
さらに、本実施形態に係る脱硫装置90又は燃料電池システム1によれば、流体入口20aから折返し部25までの脱硫流路23を流通する水素含有燃料と、熱媒体及び折返し部25から流体出口までの脱硫流路24を流通する水素含有燃料とが対向流とされる。すなわち、流体入口20aから折返し部25までの脱硫流路23を流通する水素含有燃料は、熱媒体から加熱されるとともに、折返し部25から流体出口20bまでの脱硫流路24を流通する水素含有燃料によっても加熱される。このように、加熱される流体の流通方向と加熱元の流体の流通方向を対向流とすることで熱効率を向上させることできるので、エネルギー効率良く脱硫部2を保温することが可能となる。
【0042】
なお、上述した実施形態は本発明に係る脱硫装置及び燃料電池システムの一例を示すものである。本発明に係る脱硫装置及び燃料電池システムは、実施形態に係る脱硫装置90及び燃料電池システム1に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る脱硫装置90及び燃料電池システム1を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、セルスタック5のオフガスから排熱を回収する例を説明したが、セルスタック5から発生する熱を直接回収してもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、脱硫部2の脱硫流路に折返し部25を設ける場合を説明したが、折返し部25を設けずに構成してもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、熱媒体及び水素含有燃料の流体入口及び流体出口について説明したが、上述した実施形態に示す取り付け位置及び取り付け方向に限定されるものではない。例えば、流体入口及び流体出口を逆方向にしてもよいし、熱媒体の流体入口及び流体出口を脱硫装置90の側方ではなく、下部及び上部に設けてもよい。
【0046】
また、脱硫装置90内部における水素含有燃料の偏流を抑制するために、邪魔板を設けてもよい。以下、変形例について
図5〜7を用いて説明する。
図5は、変形例に係る脱硫装置の上部の内部構造を説明するための概要図である。
図6は、変形例に係る脱硫装置の下部の内部構造を説明するための概要図である。
図7は、
図5に示す脱硫装置のVII−VII線に沿った断面図である。なお、変形例においては上記実施形態と重複する説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0047】
図5,7に示すように、脱硫処理前の水素含有燃料を脱硫部2へ導入する流体入口20aの下流側には、邪魔板91が設けられている。邪魔板91は、脱硫流路23内部において、脱硫流路23の上流側(流体入口20aから所定距離離間した位置)に設けられている。邪魔板91は、矩形の板状部材である。なお、邪魔板91の形状は矩形に限定されず、円形、楕円形であってもよい。邪魔板91は、流体入口20aから流入する水素含有燃料の流れを変更するように設けられる。例えば、水素含有燃料の流れの方向と、邪魔板91の主面とが直交するように、邪魔板91は設けられる。ここでは、水素含有燃料の流れの方向が脱硫装置90の軸線方向(すなわち鉛直方向)であるので、邪魔板91は、その主面が脱硫装置90の軸線方向と直交するように、(すなわち略水平となるように)配置される。邪魔板91を設けることにより、脱硫流路23に流入した水素含有燃料は、邪魔板91にぶつかり、脱硫流路23内部を脱硫装置90の径方向へ拡散する。したがって、流体入口20a近傍において生じる偏流を抑制し、脱硫流路23内部において水素含有燃料を均一に流通させることができる。
【0048】
脱硫処理後の水素含有燃料を導出する流体出口21bの上流側には、邪魔板92が設けられている。邪魔板92は、脱硫流路24内部において、脱硫流路24の下流側(流体出口21bから所定距離離間した位置)に設けられている。邪魔板92は、円形の板状部材である。邪魔板92の中央には、厚さ方向に貫通する貫通孔92aが形成されている。なお、邪魔板92の形状は円形に限定されず、矩形であってもよい。邪魔板92は、流体出口21bから流入する水素含有燃料の流れを変更するように設けられる。例えば、水素含有燃料の流れの方向と、邪魔板92の主面とが直交するように、邪魔板92は設けられる。ここでは、水素含有燃料の流れの方向が脱硫装置90の軸線方向(すなわち鉛直方向)であるので、邪魔板92は、その主面が脱硫装置90の軸線方向と直交するように、(すなわち略水平となるように)配置される。邪魔板92を設けることにより、脱硫後の水素含有燃料が導出される際に、水素含有燃料が邪魔板92にぶつかり、脱硫流路24内部を脱硫装置90の径方向へ拡散する。従って、脱硫流路24内部において流体出口21b近傍において生じる偏流を抑制することができる。さらに、貫通孔92aを設けることで、一部の水素含有燃料は邪魔板92にぶつかることなく脱硫装置90から導出される。よって、貫通孔92aを設けることで偏流の抑制度合いを調整することができる。
【0049】
さらに、
図6,7に示すように、折返し部25に邪魔板93を設けてもよい。邪魔板93は、脱硫部2の上部内壁から脱硫部2の下部内壁に向けて立設された内周壁2bの下端部に設けられている。邪魔板93は、内周壁2bの端部において、内周壁2bの径方向内側へ突出するように配置される。邪魔板93は、その中央に開口93aを有するリング状の部材である。邪魔板93の外径は内周壁2bの外径又は内径とほぼ同一とされ、邪魔板93の内径は、内周壁2bの内径よりも小さくされている。邪魔板93は、折返し部25において水素含有燃料の流れを変更するように設けられる。ここでは、邪魔板93は、その主面が脱硫装置90の軸線方向と直交するように、(すなわち略水平となるように)配置される。邪魔板93を設けることにより、折返し部25を流通する水素含有燃料は、邪魔板93を回り込むように流通し、脱硫流路24の径よりも小さい径を有する開口93aから脱硫流路24へ流入する。このように、折返し部25近傍において、より中央側から脱硫流路24へ流入させることで、脱硫流路24内部において水素含有燃料を均一に流通させることができる。
【0050】
また、脱硫流路23内部を第1触媒槽、脱硫流路24内部を第2触媒槽とすると、脱硫装置90内部における水素含有燃料の偏流を抑制するために、第1触媒槽と第2触媒槽とを仕切る内周壁2bを、第1触媒槽及び第2触媒槽のそれぞれの触媒量が同一となるように設けてもよい。例えば、
図7に示すように、第1触媒槽の半径をr
1、中心から第2触媒槽の外径までの長さをr
2とすると、以下式を満たす位置に内周壁2bを立設させる。
【数1】
【0051】
第1触媒槽及び第2触媒槽の何れかの流速が遅い場合には、流れが閉塞して流量偏差が大きくなり、偏流が発生する可能性が高まる。上記式を満たすように内周壁2bを設けることで、第1触媒槽及び第2触媒槽において水素含有燃料の流速が平均化され、偏流の発生を抑制することができる。
【0052】
また、脱硫装置90の放熱はエネルギーロスになるため、円柱型の脱硫装置90の円半径は、脱硫装置90の表面積が最小値となるように設定されていてもよい。
図7に示すように、第1触媒槽の半径をr
1、中心から第2触媒槽の外径までの長さをr
2とし、触媒量(体積V)が一定(所定値)であるとすると、脱硫装置90の表面積Sは、以下式で表現することができる。
【数2】
【0053】
上記式において表面積Sが最小値となるr
2を設定する。このように設定することで脱硫装置90の放熱を適切に抑制することができる。なお、上記式では、熱媒体流路22の厚さを省略し、第2触媒槽の外径が脱硫装置90の外径と等しいと仮定して説明した。すなわち、脱硫装置90の表面積が脱硫部2の表面積と略同一であるとして説明した。これに対して、熱媒体流路22の厚さを考慮して表面積Sを算出してもよい。