特許第5738319号(P5738319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738319
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/06 20060101AFI20150604BHJP
   H01M 8/04 20060101ALI20150604BHJP
   H01M 8/10 20060101ALN20150604BHJP
   H01M 8/12 20060101ALN20150604BHJP
【FI】
   H01M8/06 B
   H01M8/06 G
   H01M8/04 J
   H01M8/04 N
   H01M8/04 X
   H01M8/04 G
   H01M8/04 Z
   !H01M8/10
   !H01M8/12
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-551023(P2012-551023)
(86)(22)【出願日】2011年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2011080329
(87)【国際公開番号】WO2012091063
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】特願2010-292316(P2010-292316)
(32)【優先日】2010年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JX日鉱日石エネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】山本 暁
【審査官】 武市 匡紘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−251309(JP,A)
【文献】 特開2002−063924(JP,A)
【文献】 特開2009−076365(JP,A)
【文献】 特開2007−258020(JP,A)
【文献】 特開2007−280650(JP,A)
【文献】 特開2007−292435(JP,A)
【文献】 特開2010−030801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04−8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックを含むシステム本体と、熱媒体を流通させて熱回収する熱回収系と、熱需要に応じて熱量を前記熱媒体に熱供給するための熱供給部と、を具備する燃料電池システムであって、
前記システム本体内に設けられ、水蒸気を用いて水素含有燃料を改質し前記水素含有ガスを生成する水素発生部と、
前記システム本体内に設けられ、前記水蒸気を生成し前記水素発生部に供給する水気化部と、
前記熱供給部から排出される燃焼ガスを流通させる燃焼ガス流路と、を備え、
前記燃焼ガス流路は、前記燃焼ガスによって前記水気化部が加熱されるよう当該水気化部内を流通し、
前記熱供給部は、前記熱媒体を通過させて前記熱媒体に熱供給するボイラである、燃料電池システム。
【請求項2】
前記熱供給部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、熱需要が無い場合に前記熱供給部を停止させ、熱需要がある場合に当該熱需要に応じた燃焼量で前記熱供給部を動作させる請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記熱供給部の動作を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、熱需要に対する不足熱量を前記熱回収系の前記熱媒体に熱供給する際に前記熱供給部に起動信号を出力すると共に、前記水気化部を加熱する際に前記熱供給部に起動信号を出力する請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記熱回収系は、前記燃焼ガス流路において前記水気化部の下流側に設けられた熱交換器を有し、
前記熱交換器は、前記燃焼ガスと前記熱回収系の前記熱媒体とが流通され、前記燃焼ガスから当該熱媒体へ熱移動させる請求項1〜3の何れか一項記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記システム本体と前記熱供給部とは、一体化されている請求項1〜の何れか一項記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記システム本体を内包する第1箱体と、
前記熱供給部を内包する第2箱体と、をさらに備え、
前記システム本体と前記熱供給部とは、前記第1箱体を構成する面の1つと前記第2箱体を構成する面の1つとを互いに面接触させることで一体化されている請求項記載の燃料電池システム。
【請求項7】
第3箱体をさらに備え、
前記システム本体及び前記熱供給部は、前記第3箱体に内包されることにより一体化されている請求項記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記熱媒体は、水である請求項1〜の何れか一項記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとしては、例えば特許文献1に記載されているように、水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックを含むシステム本体と、熱需要に対する不足熱量を熱供給するためのバックアップボイラ(バックアップバーナ:熱供給部)と、を備えたものが知られている。このような燃料電池システムでは、水蒸気を用いて水素含有燃料を改質し水素含有ガスを生成する水素発生部(改質器)と、水蒸気を生成し水素発生部に供給する水気化部(水気化器)と、がシステム本体内に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−164868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような燃料電池システムでは、通常、燃焼部(例えば、オフガス燃焼部等)によって水気化部を加熱し、水蒸気を生成するための熱を水気化部に熱供給することが図られている。しかし、この場合、例えば他の部位(改質器、断熱材等)との構成上の位置関係や、他の部位による吸熱等によって、水気化部に十分に熱供給することが困難になるおそれがある。
【0005】
また、例えば起動時には、セルスタックを保護する目的から、セルスタックに水素含有ガスを早期に(セル温度が低温のうちに)供給する必要がある。よって、起動時においては、水蒸気を早期に発生させるため、水気化部に十分に熱供給することが特に望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、水気化部に十分に熱供給することができる燃料電池システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一側面に係る燃料電池システムは、水素含有ガスを用いて発電を行うセルスタックを含むシステム本体と、熱媒体を流通させて熱回収する熱回収系と、熱需要に応じて熱量を熱媒体に熱供給するための熱供給部と、を具備する燃料電池システムであって、システム本体内に設けられ、水蒸気を用いて水素含有燃料を改質し水素含有ガスを生成する水素発生部と、システム本体内に設けられ、水蒸気を生成し水素発生部に供給する水気化部と、熱供給部から排出される燃焼ガスを流通させる燃焼ガス流路と、を備え、燃焼ガス流路は、燃焼ガスによって水気化部が加熱されるよう当該水気化部内を流通する。
【0008】
この本発明の燃料電池システムでは、燃焼ガスによって水気化部が加熱されるよう燃焼ガス流路が水気化部内を流通することから、熱供給部の燃焼ガスによっても水気化部を加熱することができる。これにより、本発明によれば、水気化部に十分に熱供給することが可能となる。
【0009】
また、熱供給部の動作を制御する制御部をさらに備え、制御部は、熱需要に対する不足熱量を熱回収系の熱媒体に熱供給する際に熱供給部に起動信号を出力すると共に、水気化部を加熱する際に熱供給部に起動信号を出力してもよい。この場合、熱需要からの要請のみならず、水気化部への熱供給の要請によっても、熱供給部が起動されることとなる。
【0010】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、熱回収系は、燃焼ガス流路において水気化部の下流側に設けられた熱交換器を有し、熱交換器は、燃焼ガスと熱回収系の熱媒体とが流通され、燃焼ガスから当該熱媒体へ熱移動させる場合がある。
【0011】
また、システム本体と熱供給部とは、一体化されていてもよい。この場合、これにより、燃焼ガス流路の引回しを簡易化することが可能となり、燃料電池システムの小型化及び低コスト化を実現することができる。
【0012】
また、システム本体を内包する第1箱体と、熱供給部を内包する第2箱体と、をさらに備え、システム本体と熱供給部とは、第1箱体を構成する面の1つと第2箱体を構成する面の1つとを互いに面接触させることで一体化されていてもよい。
【0013】
また、第3箱体をさらに備え、システム本体及び熱供給部は、第3箱体に内包されることにより一体化されていてもよい。また、熱媒体は、水である場合がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水気化部に十分に熱供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムを示す概略ブロック図である。
図2】第1実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。
図3】第2実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。
図4図3の燃料電池システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図5図3の燃料電池システムの動作の他の一例を示すフローチャートである。
図6図3の燃料電池システムの動作のさらに他の一例を示すフローチャートである。
図7図3の燃料電池システムの動作の別の一例を示すフローチャートである。
図8】第3実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。
図9】第4実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。
図10】第5実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る燃料電池システムを示す概略ブロック図である。図1に示すように、燃料電池システム1は、脱硫部2と、水気化部3と、水素発生部4と、セルスタック5と、オフガス燃焼部6と、水素含有燃料供給部7と、水供給部8と、酸化剤供給部9と、パワーコンディショナー10と、制御部11と、を備えている。
【0018】
燃料電池システム1は、水素含有燃料及び酸化剤を用いて、セルスタック5にて発電を行う。燃料電池システム1におけるセルスタック5の種類は特に限定されず、例えば、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)、及び、その他の種類を採用することができる。なお、セルスタック5の種類、水素含有燃料の種類、及び改質方式等に応じて、図1に示す構成要素を適宜省略してもよい。
【0019】
水素含有燃料として、例えば、炭化水素系燃料が用いられる。炭化水素系燃料として、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはそれらの混合物が用いられる。炭化水素系燃料として、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類、バイオ燃料が挙げられ、これらの炭化水素系燃料は従来の石油・石炭等の化石燃料由来のもの、合成ガス等の合成系燃料由来のもの、バイオマス由来のものを適宜用いることができる。具体的には、炭化水素類として、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、タウンガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油が挙げられる。アルコール類として、メタノール、エタノールが挙げられる。エーテル類として、ジメチルエーテルが挙げられる。バイオ燃料として、バイオガス、バイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェットが挙げられる。
【0020】
酸化剤として、例えば、空気、純酸素ガス(通常の除去手法で除去が困難な不純物を含んでもよい)、酸素富化空気が用いられる。
【0021】
脱硫部2は、水素発生部4に供給される水素含有燃料の脱硫を行う。脱硫部2は、水素含有燃料に含有される硫黄化合物を除去するための脱硫触媒を有している。脱硫部2の脱硫方式として、例えば、硫黄化合物を吸着して除去する吸着脱硫方式や、硫黄化合物を水素と反応させて除去する水素化脱硫方式が採用される。脱硫部2は、脱硫した水素含有燃料を水素発生部4へ供給する。
【0022】
水気化部(水気化器)3は、水を加熱し気化させることによって、水素発生部4に供給される水蒸気を生成する。水気化部3における水の加熱は、例えば、水素発生部4の熱、オフガス燃焼部6の熱、あるいは排ガスの熱を回収する等、燃料電池システム1内で発生した熱を用いてもよい。また、別途ヒータ、バーナ等の他熱源を用いて水を加熱してもよい。ここでの水気化部3は、例えば、水素発生部4及びセルスタック5近傍に配置され、水素発生部4及びセルスタック5とともに昇温されるように構成されている。なお、図1では、一例としてオフガス燃焼部6から水素発生部4へ供給される熱のみ記載されているが、これに限定されない。水気化部3は、生成した水蒸気を水素発生部4へ供給する。
【0023】
水素発生部4は、脱硫部2からの水素含有燃料を用いて水素リッチガス(水素含有ガス)を発生させる。水素発生部4は、水素含有燃料を改質触媒によって改質する改質器を有している。水素発生部4での改質方式は、特に限定されず、例えば、水蒸気改質、部分酸化改質、自己熱改質、その他の改質方式を採用できる。なお、水素発生部4は、セルスタック5に要求される水素リッチガスの性状によって、改質触媒により改質する改質器の他に性状を調整するための構成を有する場合もある。例えば、セルスタック5のタイプが固体高分子形燃料電池(PEFC)やリン酸形燃料電池(PAFC)であった場合、水素発生部4は、水素リッチガス中の一酸化炭素を除去するための構成(例えば、シフト反応部、選択酸化反応部)を有する。水素発生部4は、水素リッチガスをセルスタック5のアノード12へ供給する。
【0024】
セルスタック5は、水素発生部4からの水素リッチガス及び酸化剤供給部9からの酸化剤を用いて発電を行う。セルスタック5は、水素リッチガスが供給されるアノード12と、酸化剤が供給されるカソード13と、アノード12とカソード13との間に配置される電解質14と、を備えている。セルスタック5は、パワーコンディショナー10を介して、電力を外部へ供給する。セルスタック5は、発電に用いられなかった水素リッチガス及び酸化剤をオフガスとして、オフガス燃焼部6へ供給する。なお、水素発生部4が備えている燃焼部(例えば、改質器を加熱する燃焼器など)をオフガス燃焼部6と共用してもよい。
【0025】
オフガス燃焼部6は、セルスタック5から供給されるオフガスを燃焼させる。オフガス燃焼部6によって発生する熱は、水素発生部4へ供給され、水素発生部4での水素リッチガスの発生に用いられる。
【0026】
水素含有燃料供給部7は、脱硫部2へ水素含有燃料を供給する。水供給部8は、水気化部3へ水を供給する。酸化剤供給部9は、セルスタック5のカソード13へ酸化剤を供給する。水素含有燃料供給部7、水供給部8、及び酸化剤供給部9は、例えばポンプによって構成されており、制御部11からの制御信号に基づいて駆動する。
【0027】
パワーコンディショナー10は、セルスタック5からの電力を、外部での電力使用状態に合わせて調整する。パワーコンディショナー10は、例えば、電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。
【0028】
制御部11は、燃料電池システム1全体の制御処理を行う。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイスを含んで構成されたデバイスによって構成される。制御部11は、水素含有燃料供給部7、水供給部8、酸化剤供給部9、パワーコンディショナー10、その他、図示されないセンサや補機と電気的に接続されている。制御部11は、燃料電池システム1内で発生する各種信号を取得すると共に、燃料電池システム1内の各機器へ制御信号を出力する。
【0029】
図2は、第1実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。図2に示すように、燃料電池システム1は、システム本体21と、熱回収系22と、バックアップボイラ(熱供給部)23と、を含んで構成されている。
【0030】
システム本体21は、上記脱硫部2、上記水気化部3、上記水素発生部4、上記セルスタック5、上記オフガス燃焼部6、上記水素含有燃料供給部7、上記水供給部8及び上記酸化剤供給部9を少なくとも有しており、パッケージ24内に配置されている。
【0031】
熱回収系22は、システム内において水(回収水)を循環するよう流通させて熱回収するものである。この熱回収系22は、水を流通させるものとして例えば配管等で構成された水流路22xと、当該水流路22xの水を加熱するための熱交換器22yと、を有している。
【0032】
バックアップボイラ23は、熱需要に対する不足熱量を熱回収系22の水に熱供給する(いわゆる追い炊き給湯を行う)ものであり、バーナ等の燃焼部(不図示)を有している。このバックアップボイラ23は、パッケージ24内においてシステム本体21と結合するよう設けられている。つまり、システム本体21及びバックアップボイラ23は、互いに一体化されて構成されている。換言すると、システム本体21を内包する第1箱体の上面(第1箱体を構成する面の1つ)と、バックアップボイラ23を内包する第2箱体の下面(第2箱体を構成する面の1つ)とは、互いに面接触されている。これにより、システム本体21及びバックアップボイラ23は、互いに一体化される。なお、システム本体及びバックアップボイラ23は、第3箱体としてのパッケージ24に内包されることで一体化されてもよい。
【0033】
このバックアップボイラ23には、ボイラ燃焼ガス流路(燃焼ガス流路)23xが設けられている。ボイラ燃焼ガス流路23xは、バックアップボイラ23の燃焼部から排出されるボイラ燃焼ガス(燃焼ガス)を流通させるものであり、例えば配管等で構成されている。
【0034】
ここで、本実施形態のボイラ燃焼ガス流路23xは、ボイラ燃焼ガスによって水気化部3が加熱されるように水気化部3内を流通した後、熱交換器22y内を流通している。ここでのボイラ燃焼ガス流路23xは、一旦パッケージ24外へ延びた後、システム本体21内に進入し、システム本体21内の水気化部3内を流通している。そして、再度パッケージ24外へ延び、その後、熱交換器22y内を流通している。つまり、本実施形態では、バックアップボイラ23からのボイラ燃焼ガスが、水気化部3の加熱に用いられると共に熱回収系22の水の加熱に用いられるようになっている。
【0035】
また、熱交換器22yは、水流路22x上であってボイラ燃焼ガス流路23xにおける水気化部3の下流側に設けられており、ボイラ燃焼ガス及び水が流通されている。この熱交換器22yは、ボイラ燃焼ガスから熱回収系22の水へと熱移動させ、当該水を加熱する。
【0036】
また、燃料電池システム1は、制御部34をさらに備えている。制御部34は、バックアップボイラ23の動作を制御するものであり、システム本体21内に搭載されている。この制御部34は、熱需要に対する不足熱量を熱回収系22で流通する水に熱供給する際、バックアップボイラ23に起動信号を出力すると共に、水気化部3を加熱する際、バックアップボイラ23に起動信号を出力する。
【0037】
以上、本実施形態の燃料電池システム1においては、水素発生部4(図1参照)の熱やオフガス燃焼部6(図1参照)の熱によって水気化部3を加熱し、当該水気化部3にて水蒸気を生成できるのに加え、ボイラ燃焼ガス流路23xが水気化部3内を流通することから、ボイラ燃焼ガスによっても水気化部3を加熱して水蒸気を生成することができる。すなわち、バックアップボイラ23からの排熱を、熱需要を満たすための補助熱源としてのみ利用するのではなく、水気化部3を加熱するための熱源として利用することが可能となる。従って、本実施形態によれば、水気化部3に十分に熱供給することが可能となる。その結果、他の部位(改質器、断熱材等)に対する水気化部3の配置関係によらずに水気化部3に十分に熱供給し易くなり、水気化部3の配置自由度が増すこととなる。
【0038】
また、本実施形態では、上述したように、制御部34により、熱需要に対する不足熱量を熱回収系22の水に熱供給する際だけでなく、水気化部3を加熱する際にもバックアップボイラ23に起動信号を出力することができる。よって、熱需要からの要請のみならず、水気化部3への熱供給の要請によっても、バックアップボイラ23を好適に起動することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、上述したように、システム本体21とバックアップボイラ23とが一体化されていることから、ボイラ燃焼ガス流路23xの引回しを簡易化することが可能となり、一層の小型化及び低コスト化を実現することができる。ひいては、ボイラ燃焼ガス流路23xの引回しに起因する放熱(ロス)をも低減することが可能となる。
【0040】
なお、システム起動時には、セルスタック5を保護する目的から、セル温度が低温のうちにセルスタック5に水素リッチガスを早期供給する必要がある。よって、システム起動時においては、水素発生部4で水素リッチガスを早期発生させるべく水気化部3で水蒸気を早期発生させるため、水気化部3に十分に熱供給できることが特に望まれる。この点、本実施形態は、水気化部3に熱を十分に熱供給できるため、特に有効なものといえる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態の説明では、上記第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0042】
図3は、第2実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。図3に示すように、本実施形態の燃料電池システム100では、システム本体21が発電部105、水気化部3及び加熱部123を少なくとも含んでいる。
【0043】
発電部105は、上記脱硫部2、上記水素発生部4及び上記セルスタック5を少なくとも含むものであり、セルスタック5としては、固体高分子形燃料電池(PEFC)が用いられている。この発電部105には、電池排ガス流路111及び改質水流路112が接続されている。電池排ガス流路111は、発電部105から排出される燃焼処理済みの電池排ガスを流通させる。電池排ガス流路111は、電池排ガスによって水気化部3が加熱されるように水気化部3内を流通した後、後述の熱交換器22z内を流通している。改質水流路112は、水気化部3により生成された改質水(蒸気)を水気化部3から発電部105へ供給する。
【0044】
水気化部3には、熱交換器22zで生じた排ガス回収水を流通させる回収水流路121が接続されている。回収水流路121上には、排ガス回収水を一時的に貯留する水タンク122が設けられている。水気化部3には、通常時に水気化部3を加熱するための加熱部123が設けられている。
【0045】
また、本実施形態の燃料電池システム100は、熱回収系122を備えている。熱回収系122は、システム内において熱媒体を循環するよう流通させて熱回収するものであり、熱媒体を流通させる熱媒体流路122xを有している。熱媒体としては、例えば、エチレングリコール及びその水溶液等の不凍液が用いられている。
【0046】
熱媒体流路122x上には、貯湯槽110、熱媒体タンク102及び熱交換器22y,22zが設けられている。貯湯槽110は、給湯ライン110aを介して外部から供給された例えば上水等の水を内部に貯えると共に、内部を通過する熱媒体流路122xを流れる熱媒体から熱を回収し、貯えた水へ蓄熱する。また、貯湯槽19は、例えばユーザ等の需要に応じて、給湯ライン110aを介して貯えた水を湯として排出する。なお、本実施形態のように発電部105がPEFCのセルスタック5を含む場合、発電部105に熱媒体が通過され(詳しくは後述)、熱媒体で発電部105からも熱回収が行われる。
【0047】
熱媒体タンク102は、熱媒体を一時的に貯留する。熱交換器22yは、ボイラ燃焼ガス流路23xが通過するように設けられており、ボイラ燃焼ガスから熱媒体流路122xの熱媒体へと熱移動させ、当該熱媒体を加熱する。熱交換器22zは、電池排ガス流路111が通過するように設けられている。熱交換器22zは、電池排ガス流路111から熱媒体流路122xの熱媒体へと熱移動させ、当該熱媒体を加熱する。
【0048】
このような熱媒体流路122xにおいて、貯湯槽110から導出された熱媒体は、熱媒体タンク102を通過した後、2分岐される。分岐された一方の熱媒体は、発電部105を通過し、熱交換器22yで加熱され、バックアップボイラ23を通過した後、貯湯槽110へ戻される。分岐された他方の熱媒体は、熱交換器22zで加熱された後、貯湯槽110へ戻される。
【0049】
また、本実施形態の制御部34は、例えば水気化部3の温度、バックアップボイラ23における熱媒体の入口温度及び出口温度等に基づいて、バックアップボイラ23の動作を制御する(詳しくは、後述)。
【0050】
次に、上記燃料電池システム100におけるバックアップボイラ23に関する動作について、各状況ごとに以下に例示して説明する。
【0051】
(1)貯湯槽110から給湯する場合
図4に示すように、発電時において貯湯槽110から給湯するための給湯信号が制御部34で受信されると、まず、当該給湯に係る熱需要に関する給湯熱需要情報が取得される(S1)。熱需要がありと判断されると、その熱需要に応じた燃焼量でバックアップボイラ23が動作され、上記S1へ再び移行する(S2,S3)。一方、熱需要が無しと判断されると、バックアップボイラ23がOFF(停止)とされる(S2,S4)。
【0052】
或いは、図5に示すように、給湯信号が制御部34で受信されると、給湯熱需要情報が取得され、熱需要がありと判断されると、出湯温度が適温よりも大きいか否かが判断される(S11〜S13)。上記S13でNoの場合、熱需要に応じた燃焼量でバックアップボイラ23が動作され、上記S11へ再び移行する(S14)。一方、上記S13でYesの場合、現状維持するようにバックアップボイラ23が制御され、現状の燃焼量でバックアップボイラ23が継続動作される(S15)。他方、上記S12でNoの場合、バックアップボイラ23がOFFとされる(S16)。
【0053】
なお、上記では、発電時の給湯を例にして説明したが、非発電時における給湯についても同様となる。つまり、非発電時における給湯においても、ボイラ燃焼ガス流路23x及び熱媒体流路122xの切替え等は行なわれない。また、熱媒体が高温となった場合には、出湯時の温度に基づいて、バックアップボイラ23の燃焼量を減らすフィードバック制御を行なってもよい。
【0054】
(2)起動時
図6に示すように、燃料電池システム100の始動時において始動信号が制御部34で受信されると、まず、水素発生部4で部分酸化改質が開始されると共に、水気化部3の温度が取得される(S31)。水気化部3の温度が、水が気化できる気化可能温度と所定値αとの合計(気化可能温度+α)よりも大きい場合、水気化部3へ水供給するための信号が制御部34へ送信され、水気化部3の水供給が開始される(S32,S33)。そして、改質反応がオートサーマル改質反応から水蒸気改質反応とされ移行され、発電が開始される。なお、「所定値α」は、バックアップボイラ23をOFFとした途端に熱不足となるのを防止するために設けられた設定値である。
【0055】
一方、上記S32でNoの場合、バックアップボイラ23をON状態(作動状態)とされ、上記S31へ再び移行される(S34)。この上記S34においてバックアップボイラ23が既に起動(ON)されているときには、ON状態が維持される。
【0056】
上記S33の後、水気化部3の気化開始による温度低下に応じた処理として、水気化部3の温度が再度取得される(S35)。水気化部3の温度が気化可能温度と所定値αとの合計よりも大きい場合、バックアップボイラ23がOFFとされる(S36,S37)。一方、上記S36でNoの場合、バックアップボイラ23をON状態(作動状態)が継続され、上記S35へ再び移行される(S38)。その後、例えば、給湯する場合の処理(上記(1)参照)が開始される。
【0057】
(3)負荷増加(負荷上げ)時
図7に示すように、燃料電池システム100の負荷増加(負荷上げ)時において負荷増加信号が制御部34で受信されると、例えば改質水の必要量、現在の改質水量、及び水気化部3の温度に基づいて、バックアップボイラ23が最大燃焼量で動作される(S41)。
【0058】
続いて、水気化部3の温度が取得され、当該水気化部3の温度が気化可能温度と所定値αとの合計よりも大きいか否かが判断される(S42,S43)。上記S43でNoの場合、バックアップボイラ23をON状態(作動状態)とされ、上記S42へ再び移行される(S44)。一方、上記S43でYesの場合、現在の改質水量が必要量よりも大きいか否かがさらに判断される(S45)。
【0059】
上記S45でNoの場合、水気化部3へ供給する改質水量を増量するための信号が制御部34へ送信されて改質水量が増量され、上記S42へ再び移行される(S46)。一方、上記S45でYesの場合、改質水量の増量が終了される(S47)。そして、燃料電池システム100の負荷が増加される。
【0060】
続いて、水気化部3の温度が再度取得され、水気化部3の温度が気化可能温度と所定値αとの合計よりも大きい場合、バックアップボイラ23がOFFとされる(S48〜S50)。一方、上記S49でNoの場合、バックアップボイラ23をON状態が継続され、上記S48へ再び移行される(S51)。
【0061】
以上、本実施形態においても、上記実施形態と同様な効果、すなわち、水気化部3に十分に熱供給するという効果が奏される。
【0062】
また、本実施形態では、水気化部3に要される熱について、本来は加熱部123等でまかなうべきところを、例えば起動時や負荷変動時等の熱不足が発生した場合、バックアップボイラ23からの排熱を利用することができる。つまり、水気化部3に対し、起動時・負荷上げ時の短時間の熱的補助を行なうことが可能となる。その結果、迅速な負荷追従性や起動性能を確保できる。
【0063】
また、このようにバックアップボイラ23からの排熱を、水気化部3を加熱するための熱源として利用することにより、給湯時に無駄に捨てる熱の回収が可能となる。
【0064】
なお、貯湯槽110の満蓄時においては、貯湯槽110内温度を通常温度(例えば70℃)よりも高い所定温度(例えば90℃)に設定することにより、その温度差(マージン)の分でバックアップボイラ23を作動させることができる。
【0065】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態の説明では、上記第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0066】
図8は、第3実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。図8に示すように、本実施形態の燃料電池システム200は、上記熱媒体流路122x(図3参照)に代えて、貯湯槽110の水を熱媒体として流通させる熱媒体流路222xを備えている。
【0067】
熱媒体流路222xでは、貯湯槽110から水が熱媒体として流出され、この熱媒体が2分岐される。分岐された一方の熱媒体は、発電部105を通過し、熱交換器22yで加熱され、バックアップボイラ23を通過した後、貯湯槽110へ戻される。分岐された他方の熱媒体は、熱交換器22zで加熱された後、貯湯槽110へ戻される。この熱媒体流路222xは、上記熱媒体タンク102(図3参照)を有しておらず、水(湯)が留まることなく流れるように構成されている。
【0068】
以上、本実施形態においても、上記実施形態と同様な効果、すなわち、水気化部3に十分に熱供給するという効果が奏される。
【0069】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態の説明では、上記第2実施形態と異なる点について主に説明する。
【0070】
図9は、第4実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。図9に示すように、本実施形態の燃料電池システム300は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)であるセルスタック5を少なくとも含む発電部105を備えている。また、燃料電池システム300は、上記熱媒体流路122x(図3参照)に代えて、発電部105を通過しない熱媒体流路322xを備えている。
【0071】
以上、本実施形態においても、上記実施形態と同様な効果、すなわち、水気化部3に十分に熱供給するという効果が奏される。
【0072】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態の説明では、上記第3実施形態と異なる点について主に説明する。
【0073】
図10は、第5実施形態に係る燃料電池システムの要部を示す概略ブロック図である。図10に示すように、本実施形態の燃料電池システム400は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)であるセルスタック5を少なくとも含む発電部105を備えている。また、燃料電池システム400は、上記熱媒体流路222x(図8参照)に代えて、発電部105を通過しない熱媒体流路422xを備えている。
【0074】
以上、本実施形態においても、上記実施形態と同様な効果、すなわち、水気化部3に十分に熱供給するという効果が奏される。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0076】
例えば、水気化部3の配置位置は、システム本体21内であれば何れの位置としてもよく、例えばシステム本体21の下部に設置してもよい。また、上記実施形態は、熱供給部としてバックアップボイラ23を備えているが、熱供給部は、熱需要に応じて熱量を熱回収系22の水に熱供給するためのものであればよく、例えば通常のボイラ(メインボイラを含む)等であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、熱媒体として水を用いているが、油、空気、二酸化炭素や窒素等のガス、又は蒸気等を用いてもよい。本発明の熱媒体は、熱を移動させるために用いられる流体であればよい。また、上記実施形態では、水素含有燃料として、純水素や水素富化ガス等の改質が不要なガスを供給することもできる。この場合、水素発生部4が有する改質器は不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、水気化部に十分に熱供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1…燃料電池システム、3…水気化部、4…水素発生部、5…セルスタック、21…システム本体(第1箱体)、22,122…熱回収系、22y…熱交換器、23…バックアップボイラ(熱供給部,第2箱体)、23x…ボイラ燃焼ガス流路(燃焼ガス流路)、24…パッケージ(第3箱体)、34…制御部。
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10