特許第5738320号(P5738320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738320
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】排ガス装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/00 20100101AFI20150604BHJP
   F01N 1/00 20060101ALI20150604BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   F01N13/00 B
   F01N1/00 A
   F01N5/02 D
   F01N5/02 B
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-551576(P2012-551576)
(86)(22)【出願日】2011年1月25日
(65)【公表番号】特表2013-519029(P2013-519029A)
(43)【公表日】2013年5月23日
(86)【国際出願番号】EP2011050952
(87)【国際公開番号】WO2011095412
(87)【国際公開日】20110811
【審査請求日】2012年10月9日
(31)【優先権主張番号】102010007013.0
(32)【優先日】2010年2月5日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513212291
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー・エグゾースト・テクノロジー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ヴィアト
【審査官】 稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−054649(JP,A)
【文献】 特開2007−154796(JP,A)
【文献】 特開平08−014025(JP,A)
【文献】 特開平09−134653(JP,A)
【文献】 特開平11−024672(JP,A)
【文献】 特開平06−074036(JP,A)
【文献】 特開2005−194962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用の排ガス装置であって、
定常的に非貫流である少なくとも1つの排ガス非貫流領域(3)であって、該排ガス非貫流領域(3)において形成される凝縮水(12)を集める凝縮水集合領域(11)を有する排ガス非貫流領域(3)と、
少なくとも1つの排ガス貫流領域(2)と、
前記凝縮水集合領域(11)を前記排ガス貫流領域(2)に熱を伝達するように接続する熱伝達装置(13)と、を備えており、
前記排ガス非貫流領域(3)は、アクティブなマフラ(6)であり、該マフラ(6)のハウジング(7)は、前記凝縮水集合領域(11)を有し、接続管(9)が設けられていて、該接続管(9)を介して前記ハウジング(7)は、空気伝送音を伝達すべく前記排ガス貫流領域(2)に接続されていることを特徴とする排ガス装置。
【請求項2】
前記熱伝達装置(13)は、少なくとも1つの熱伝達体(15)を有し、該熱伝達体(15)は、一方側では、前記排ガス貫流領域(2)と熱を伝達するように接続されていて、かつ他方側では前記凝縮水集合領域(11)と熱を伝達するように接続されている、請求項1記載の排ガス装置。
【請求項3】
前記熱伝達体(15)は、熱伝導材料から成っている、又は熱伝導管(18)である、請求項2記載の排ガス装置。
【請求項4】
前記熱伝達体(15)は、前記凝縮水集合領域(11)の内部(33)に熱伝達構造体(36)を有し、かつ/又は
前記熱伝達体(15)は、排ガス貫流領域(2)の内部(35)に熱伝達構造体(37)を有し、かつ/又は
前記熱伝達体(15)は、前記凝縮水集合領域(11)の内部(33)を外側(25)から隔てる、前記凝縮水集合領域(11)の壁(32)を貫通し、かつ/又は
前記熱伝達体(15)は、前記排ガス貫流領域(2)の内部(35)を外側(24)から隔てる、前記排ガス貫流領域(2)の壁(34)を貫通している、請求項2又は3記載の排ガス装置。
【請求項5】
前記熱伝達装置(13)は、前記排ガス貫流領域(2)の外側(24)と前記凝縮水集合領域(11)の外側(25)とに配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の排ガス装置。
【請求項6】
前記熱伝達装置(13)は、断熱体(27)及び/又は風防体(28)及び/又はスプラッシュガード(29)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の排ガス装置。
【請求項7】
前記熱伝達装置(13)は、少なくとも1つの2形態体(31)を有し、該2形態体(31)は、それ自体の温度に関連して少なくとも2つの異なった幾何学形状を取り、この少なくとも2つの形状は、所定の温度未満では、前記排ガス貫流領域(2)から前記熱伝達装置(13)を介して前記凝縮水集合領域(11)への熱伝達を行い、かつこの熱伝達が所定の温度以上では中断されるように、選択されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の排ガス装置。
【請求項8】
前記2形態体(31)は、請求項2記載の熱伝達体(15)に組み込まれている、又は
前記2形態体(31)は、前記凝縮水集合領域(11)に組み込まれている、又は
前記2形態体(31)は、前記排ガス貫流領域(2)に組み込まれている、請求項7記載の排ガス装置。
【請求項9】
前記排ガス貫流領域(2)は、排気管(4)である、請求項1からまでのいずれか1項記載の排ガス装置。
【請求項10】
前記熱伝達装置(13)は、前記凝縮水集合領域(11)と前記排ガス貫流領域(2)との間における熱伝達(14)を変化させるための調節装置(38)を有し、該調節装置(38)は、熱伝達体(15)と共働する、請求項1からまでのいずれか1項記載の排ガス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用、特に自動車の内燃機関用の排ガス装置に関する。
【0002】
燃料の燃焼時には燃焼水が発生し、この燃焼水は、例えば冬期走行運転時に、排ガス装置の構成部材において問題を生ぜしめることがある。燃料の組成に応じて、燃焼により、消費される燃料の量に比較可能な所定量の燃焼水が遊離する。自動車の通常の中負荷運転では、通常、この発生した燃焼水は高温の排ガスと一緒に蒸気として排ガス装置を介して吹き出される。しかしながら冬期及び冬期に近い移行時期では、露点を下回り、排ガス装置内に液状の燃焼水の溜まることがある。例えば自動車における内燃機関の排ガスの露点は、燃焼法に応じて約20℃〜60℃である。従ってこのような温度では、排ガス装置内に凝縮水の集まることがある。このことは実地においては、排ガスと接触していて、排ガス装置の周囲条件に基づいて前記温度を下回っている、排ガス装置におけるすべての構成部材において、凝縮水集合を形成させる。今日の排ガス装置の多くの構成部材は、短い運転時間の後で、通常著しく高い温度になるので、形成された凝縮水は短時間後に蒸発し、擦過する排ガスによって運ばれることができる。しかしながら特に短区間運転では、外気温が低い場合に、より多くの凝縮水集合の形成されることがあり、この凝縮水集合は排ガス装置内において凝縮水溜めを形成することがある。それというのは、高温の排ガス装置区分から低温の排ガス装置区分への蒸気圧差によって、燃焼水は常に運ばれて沈積し、これにより水は排ガス装置の最も低い箇所に集まって、そこで前記凝縮水溜めを形成するからである。このような凝縮水溜めにおける問題は、酸を形成する排ガス成分又は他の排ガス成分を有する凝縮水の濃度が高くなることであり、これによって、このような凝縮水集合もしくはこのような凝縮水溜めが形成される排ガス装置部分には、持続的に腐食負荷が加えられる。ゆえに、このような繰り返し発生する排ガス装置の腐食負荷を減じるために、様々な措置が講じられる。そのために例えば最も低い箇所に、例えば最後のマフラにおけるアウトレットパイプを低く設置することによって、高温の排ガスを効果的に導くことが可能である。これによって集まった凝縮水は、排ガス流と一緒に運ばれ、排ガス流によって加熱され、かつ場合によっては蒸発する。
【0003】
しかしながら最後のマフラにおけるアウトレットパイプを最も低いポイントにおいて低く設置することが構造的に不可能である場合には、凝縮水を、吸込み管を用いてウォータジェットポンプのように吸い込んで、排ガス装置から外に運び出すことを、試すことができる。そのためには付加的に主管における管入口に絞りが導入され、この場合大きな排ガス流量時に圧力を低下させ、これによって凝縮水集合と排気管内を流れる排ガスとの間に大きな圧力差を発生させて、集まっている凝縮水を排ガス流によって連行することができる。このような手段は通常、内燃機関の中負荷から高負荷の範囲においてしか有効でないという欠点がある。通常は、短時間のフルロードによって凝縮水集合を搬出することができる。しかしながら多くの場合、市街地走行もしくは近距離走行におけるストップ・アンド・ゴー走行時には、この際に発生する圧力差は凝縮水集合を完全に搬出するのに十分ではない。
【0004】
このような措置が講じられていないと、例えばリヤマフラが、車両リヤ及び高位にある終端管に向かって通常斜めに取り付けられていることに基づいて、相応に低い外気温時に凝縮水によって満たされてしまう、という現象の発生することがある。これによって、排ガス装置のこの部分における凝縮水の激しい揺れや波立ちによる騒音が発生し、最悪の場合には凝縮水の逆流や持続的な霜の発生もしくは相応に低い温度時に、氷の栓による凍結によって排ガス装置の摩耗することがある。
【0005】
このような状況は、例えば、管を介して接続されたヘルムホルツ共鳴器の共振空洞又はアクティブな騒音減衰装置の、スピーカを有する空間が存在する場合のように、排ガス装置に新型の構成部材が存在している場合に、特に不都合である。このようなエレメント、つまりヘルムホルツ共鳴器の共振空洞やアクティブな騒音減衰装置の空間は、排ガスによって必ずしも貫流されないので、排ガスによって徐々に不都合にかつゆっくりと加熱される。しかしながら前記エレメントは、排ガス装置の排ガス貫流領域と同様に、排ガス及びその中に含有された燃焼水にさらされ、自動車の相応な運転状態、ひいてはこれに伴う低温時には、前記室や空間に凝縮水の集まることがある。従って通常、排ガス装置のこのような構成部材を、その最低位ポイントから高温の排ガス管に向かって常に勾配もしくは傾斜が形成されるように、配置することが試みられており、このような配置形式では、発生した凝縮水を流出させることができ、これにより凝縮水を可能な限り完全に排ガス装置から、もしくは前記構成部材から排出することができる。しかしながらこの配置形式は、このような構成部材に関して、また該構成部材に接続された排ガス装置の構成部材に関して、車両における不都合な取付け位置を生ぜしめることがある。これによって、排ガス装置からの凝縮水集合の排出が必要であることに基づいて、排ガス装置の構成自由度が制限されてしまう。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、排ガス非貫流領域において凝縮水集合が生じる排ガス装置のために、改善された構成を提供することであり、すなわち凝縮水集合の不都合な作用を減じることができ、しかも同時に、排ガス非貫流領域の配置形式に対する構成自由度がより多く得られるような構成を提供することである。また、この場合特に安価な解決策が有利である。
【0007】
この課題を解決するために本発明の構成では、請求項1記載のようにした。すなわち本発明による、内燃機関用、特に自動車の内燃機関用の排ガス装置では、凝縮水集合領域を有する、少なくとも1つの排ガス非貫流領域と、少なくとも1つの排ガス貫流領域と、凝縮水集合領域を排ガス貫流領域と熱を伝達するように接続する熱伝達装置と、を備える。
【0008】
本発明の別の有利な態様は、請求項2以下に記載されている。
【0009】
本発明は次の一般的な思想に基づいている。すなわち本発明では、凝縮水集合領域を有する排ガス非貫流領域と、排ガス貫流領域とを備える排ガス装置において、熱伝達装置を備え、該熱伝達装置は、凝縮水集合領域を排ガス貫流領域と熱を伝達するように接続している。排ガス装置の運転時もしくは排ガス装置を備えた内燃機関の運転時に、排ガス貫流領域は、内燃機関の高温の燃焼排ガスによって貫流され、これによって排ガス貫流領域は加熱される。熱伝達装置を用いて、加熱された排ガス貫流領域から、熱は凝縮水集合領域に伝達されることができる。これによって、凝縮水集合領域に集まっている凝縮水を加熱すること、もしくは蒸発させることができる。これによって液状の凝縮水における不都合な影響を、回避することができる。同時に、排ガス貫流領域に対する、排ガス非貫流領域の配置形式のための有利な可能性が得られる。熱伝達装置は熱伝達によって働くので、熱伝達装置は外部エネルギなしで、特に電気エネルギなしで作動することができる。熱伝達装置ではその代わりに、排出される排ガス中に含まれる熱エネルギが使用される。これによって特に本発明の解決策は、特に安価に実現することができる。
【0010】
本発明の有利な態様では、熱伝達装置が少なくとも1つの熱伝達体を有しており、該熱伝達体が一方側では、排ガス貫流領域と熱を伝達するように接続されていて、かつ他方側では凝縮水集合領域と熱を伝達するように接続されている。好ましくは、熱伝達体は熱を、特にもっぱら熱伝導によって伝達する。このような熱伝達体は単純な棒材、管又はこれに類したものによって形成することができる。
【0011】
例えば熱伝達体は、例えば銅又はアルミニウムもしくは銅合金又はアルミニウム合金製の熱伝導材料から成っている。択一的に熱伝達体は熱伝導管によって形成されてもよい。ヒートパイプとも呼ぶことができるこのような熱伝導管は、通常、凝縮水領域と蒸発領域と搬送領域とを有していて、この搬送領域は凝縮水領域と蒸発領域とを、蒸気路と凝縮水路とを介して接続している。特に搬送領域は、凝縮水を凝縮水領域から蒸発領域に運ぶために毛管構造体を有している。このような熱伝導管は、幾何学形状が同じ熱伝導材料製の物体に比べて3倍〜4倍大きな熱伝導率を有している。このようにして、凝縮水領域の極めて効果的な加熱を実現することができる。
【0012】
別の有利な態様では、熱伝達体が、凝縮水集合領域の内部に熱伝達構造体を有しており、これによって熱伝達体から凝縮水への熱伝達が改善される。付加的に又は択一的に、熱伝達体は、排ガスから熱伝達体への熱伝達を改善するために、排ガス貫流領域の内部に熱伝達構造体を有している。この熱伝達構造体を実現するために、熱伝達体は、凝縮水集合領域の内部を外側から隔てる、凝縮水集合領域の壁を貫通していてよい。付加的に又は択一的に、熱伝達体は、排ガス貫流領域の内部を外側から隔てる、排ガス貫流領域の壁を貫通している。各熱伝達構造体は、排ガス貫流領域と凝縮水領域との間の間隔を橋渡しする通常の熱伝達体とは異なり、例えば、著しく拡大された表面積によって特徴付けられており、このような表面積の拡大は例えば、リブ及び/又はフィン又はこれに類したものを用いて達成することができる。
【0013】
本発明の別の態様では、熱伝達装置は、排ガス貫流領域の外側と凝縮水集合領域の外側とに配置されている。このように構成されていると、熱伝達装置は、排ガス貫流領域と凝縮水領域との間における間隔を直接的かつ短い経路で、つまり排ガス装置の、排ガスにさらされる領域外において、橋渡しすることができる。
【0014】
本発明の別の態様では、熱伝達装置が断熱体を有しており、これによって熱伝達を特に効果的にかつ損失なしに実現することができる。付加的に又は択一的に、熱伝達装置は風防体及び/又はスプラッシュガードを有していてよい。熱伝達装置が、排ガスにさらされる領域の外に配置されている場合には、基本的に、熱伝達装置は、排ガス装置を備えた車両の走行風及び/又は飛沫水にさらされるという可能性がある。走行風にさらされることや、飛沫水がかかるということは、熱伝達装置を冷却する原因、つまり熱を奪う原因となり、これによって熱伝達装置の効果は減じられてしまう。相応な風防体もしくは相応なスプラッシュガードを設置することによって、このようなおそれを減じることができ、これによって熱伝達装置の効果は改善される。
【0015】
本発明の別の有利な態様では、熱伝達装置が、少なくとも1つの2形態体を有しており、この2形態体は、該2形態体がそれ自体の温度に関連して少なくとも2つの異なった幾何学形状を取ることによって特徴付けられている。この場合好ましくは、2形態体の少なくとも2つの形状及び2形態体の温度依存性は、所定の温度未満では、排ガス貫流領域から熱伝達装置を介して凝縮水集合領域への熱伝達を行い、かつこの熱伝達が所定の温度以上では中断されるように、選択されている。このように構成されていると、例えば、凝縮水が蒸発した後に、凝縮水集合領域が過熱することを回避することができる。
【0016】
例えば、2形態体が所定の温度未満において取る第1の形状においては、一方では排ガス貫流領域と熱伝達装置との間における連続した固体による接触が生ぜしめられ、かつ他方では、熱伝達装置と凝縮水集合領域との間における連続した固体による接触が生ぜしめられる。この第1の形状とは異なり、2形態体が所定の温度以上において取る第2の形状では、前記連続した接触は中断されている。例えば、熱伝達装置と、排ガス貫流領域との間における連続した接触が中断されているか、又は熱伝達装置と凝縮水集合領域との間における連続した接触が中断されているか、又は熱伝達装置の内部における連続した接触が中断されている。このような連続した接触が中断されるや否や、直接的な熱の流れが中断され、これにより熱伝達が著しく減じられ、例えば対流による著しく僅かな熱伝達へと減じられる。
【0017】
相応に別の有利な態様では、上に述べた2形態体が、さらに上に述べた熱伝達体に組み込まれている。同様に2形態体を凝縮水集合領域に組み込むことも可能である。択一的に2形態体を、排ガス貫流領域に組み込むことも、同様に可能である。このような2形態体は例えばバイメタル体として形成することも又は形状記憶合金体として形成することも可能である。
【0018】
本発明の別の有利な態様では、排ガス非貫流領域が、アクティブなマフラであり、該マフラのハウジングが凝縮水集合領域を有している。アクティブなマフラは通常少なくとも1つのスピーカを、騒音を消滅もしくは低減するために逆相波形音を発生させるために有している。
【0019】
このようなアクティブなマフラのハウジングは、好ましくは、空気伝送音を伝達するための接続管を介して、排ガス貫流領域に接続されている。この場合アクティブなマフラは、排ガスと共に導かれる騒音を減じるために利用することができる。アクティブなマフラと排ガス貫流領域との間にこのような接続部が存在しない場合には、アクティブなマフラが例えば、新鮮空気装置を介して生ぜしめられる騒音を低減するために使用されるようになっている態様で十分である。
【0020】
アクティブなマフラの代わりに、排ガス非貫流領域は、例えばヘルムホルツ共鳴器の共振空洞によって形成されてもよい。このような排ガス非貫流領域の別の構成も同様に可能である。
【0021】
本発明の有利な態様では、排ガス貫流領域が排気管であり、この排気管は、この排気管は、基本的に、内燃機関に接続された排ガスマニホルドと周囲に向かって開放した終端管との間において排ガス装置の任意の箇所に位置することができる。択一的に、排ガス貫流領域は排ガス装置の任意の構成部材であってよく、例えば排ガスマニホルド、排ガスターボチャージャのタービン、触媒装置、微粒子フィルタ又は終端管であってよい。
【0022】
本発明の別の有利な態様では、熱伝達装置が、凝縮水集合領域と排ガス貫流領域との間における熱伝達を変化させるための調節装置を有している。このように構成されていると、熱伝達を制御するための別のパラメータを考慮することが可能になる。例えばセンサ装置を介して温度センサを用いて、調節装置を相応に操作して適正な時機に熱伝達を減じるもしくは中断することによって、凝縮水集合領域の過熱を回避することができる。さらに例えば水分センサのようなセンサ装置を用いて、凝縮水集合領域における凝縮水の存在を監視することができ、これによって凝縮水が存在しない場合における熱伝達の開始を回避すること、及び/又は、凝縮水が完全に蒸発している場合に熱伝達を減じることもしくは中断することができる。調節装置を操作するために有利には、センサからの信号を考慮する相応な制御装置が設けられている。調節装置の操作時に考慮することができる別のパラメータとしては、例えば現在の機関運転状態、現在の車両運転状態、周囲温度、及び例えば雨もしくは飛沫水のような気象状況が挙げられる。そのために例えば前記制御装置は、排ガス装置を備えた内燃機関を操作するために設けられた機関制御装置に接続されていてもよい。特に前記制御装置はバスシステムを介して、特にCANバスを介して機関制御装置と通信することができる。調節装置は、熱伝達の接続・遮断もしくは作動・不作動を実施できるように構成されていてもよい。例えばそのために調節装置は熱伝達体と共働することができ、これによって熱伝達体を少なくとも2つの相対位置の間において、つまり凝縮水集合領域に関連した相対位置と排ガス貫流領域に関連した相対位置との間において、移動調節することができる。一方の相対位置において、凝縮水集合領域から熱伝達体を介して排ガス貫流領域への、連続した固体による接触が生ぜしめられている。他方の相対位置では、この連続した固体による接触は中断されている。さらに調節装置が熱伝達のために少なくとも1つの中間位置を実現するように、つまり減じられてはいるが、完全には中断されていない熱伝達を行う中間位置を実現するように、調節装置を構成することが可能である。特に任意の複数の中間位置を段階的に又は無段階式に実現することが可能である。例えば熱伝達体は、凝縮水集合領域と不動に結合された端部区分と、排ガス貫流領域に不動に結合された端部区分との間に、可動の中央区分を有することができ、この中央区分は接触面を介して両端部区分と接続している。中央区分を両端部区分に対して横方向に移動調節するために、調節装置は熱伝達体の中央区分と連結されていることができる。両端部区分に対する中央区分の相対位置に応じて、両端部区分と中央区分との間における熱伝達のために利用される接触面の大きさが変化させられる。これによって熱伝達量をいわば無段階式に任意に変化させることができる。
【0023】
もちろん、断熱体及び/又は風防体及び/又はスプラッシュガードが存在している場合には、調節装置はまた付加的に、断熱体及び/又は風防体及び/又はスプラッシュガードと共働することができる。
【0024】
本発明のその他の重要な特徴及び利点は、請求項2以下、図面及び図面を参照した実施形態の説明に記載されている。
【0025】
さらにまた、上に述べた特徴及び以下に記載の特徴は、本発明の枠を逸脱することなしに、記載された組合せにおいてのみならず、他の組合せにおいて使用することも又は独立して使用することも可能である。
【0026】
次に図面を参照しながら本発明の有利な実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】アクティブなマフラの領域における排ガス装置を概略的に示す図である。
図2】熱伝達装置の領域における排ガス装置の1実施形態を示す図である。
図3】熱伝達装置の領域における排ガス装置の別の実施形態を示す図である。
図4a】熱伝達装置の領域に2形態体を備えた1実施形態を示す図であって、第1の状態を示す図である。
図4b図4aに示した実施形態の第2の状態を示す図である。
図5a】熱伝達装置の領域に2形態体を備えた別の実施形態を示す図であって、第1の状態を示す図である。
図5b図5aに示した実施形態の第2の状態を示す図である。
図6a】熱伝達装置の領域に2形態体を備えたさらに別の実施形態を示す図であって、第1の状態を示す図である。
図6b図6aに示した実施形態の第2の状態を示す図である。
図7】1つの熱伝達構造体を備えた熱伝達装置の1実施形態を示す図である。
図8】1つの熱伝達構造体を備えた熱伝達装置の別の実施形態を示す図である。
図9】2つの熱伝達構造体を備えた熱伝達装置の1実施形態を示す図である。
図10】熱伝達装置の領域における排ガス装置のさらに別の実施形態を示す図である。
【0028】
図1に示すように、内燃機関(図示せず)の運転中に排ガスを排出するために働く排ガス装置1は、排ガスによって貫流される少なくとも1つの領域、つまり排ガス貫流領域2と、排ガスによって貫流されない少なくとも1つの領域、つまり排ガス非貫流領域3とを有している。排ガス貫流領域2は、例えば排気管4である。排ガス装置1もしくは内燃機関の運転時に排ガス貫流領域2において導かれる排ガス流5は、図1に矢印によって示されている。
【0029】
排ガス非貫流領域3は、図示の実施形態ではアクティブなマフラ6として形成されており、このマフラ6は、内部に少なくとも1つのスピーカ8が配置されているハウジング7を有している。アクティブなマフラ6がここにおけるように、排ガス流5において連行される騒音を減衰するために設けられている場合には、ハウジング7は接続管9を介して、排ガスを導く領域2に、つまりここでは排気管4に接続されていて、空気伝送音の伝達が可能である。図1においては、スピーカ8によって生ぜしめられた逆相波形音(Gegenschall)10が、矢印で示されており、この逆相波形音10は、接続管9を介して、排ガス貫流領域2内にまで伝搬する。
【0030】
排ガス非貫流領域3は、凝縮水集合領域11を有しており、この凝縮水集合領域11には、例えば内燃機関もしくは排ガス装置1の運転時に好ましくは、排ガス非貫流領域3内において形成され得る凝縮水12を集めることができる。
【0031】
図示の実施形態では凝縮水集合領域11は、アクティブなマフラ6のハウジング7内に形成されている。好ましくは、凝縮水集合領域11はハウジング7の内部もしくは排ガス非貫流領域3の内部において、低い箇所に位置しており、その結果凝縮水12は重力によって移動させられて凝縮水集合領域11内に達する。
【0032】
図示の排ガス装置1はさらに、熱伝達装置13を備えており、この熱伝達装置13は、凝縮水集合領域11を排ガス貫流領域2と、つまりここでは排気管4と、熱を伝達するように接続するように、設計されている。相応な熱伝達は図1において矢印14によって示されている。
【0033】
図1図10に示すように、熱伝達装置13は少なくとも1つの熱伝達体15を有している。各熱伝達体15は一方の側において箇所16で排ガス貫流領域2と、つまりここでは排気管4と、熱を伝達するように接続されていて、かつ他方の側において箇所17で凝縮水集合領域11と、熱を伝達するように接続されている。さらに熱伝達体15は有利には、内部において熱伝達14が少なくとも部分的に熱伝導体を用いて行われるように、設計されている。
【0034】
例えば熱伝達体15は、凝縮水集合領域11と、排ガス貫流領域2との間の間隔を橋渡しするために、縦長にもしくはロッド形状に形成されている。
【0035】
熱伝達体15は好ましくは熱伝導材料から成っていてよく、特に図2に示すように中実体として形成されている。適宜な熱伝導材料としては、周知のように銅又はアルミニウム又は相応な銅合金もしくはアルミニウム合金が挙げられる。
【0036】
択一的に、図3に示す熱伝達体15は熱伝導管18によって形成されている。ヒートパイプとも呼ばれるこのような熱伝導管18は、通常のように、排ガス貫流領域2に接続された蒸発領域19と、凝縮水集合領域11に接続された凝縮領域20と、この凝縮領域20と蒸発領域19との間に配置された搬送領域21とを有している。この搬送領域21は、熱伝導管18の蒸発した作業媒体を蒸発領域19から凝縮領域20へと流す少なくとも1つの蒸気通路22と、凝縮した作業媒体を凝縮領域20から蒸発領域19に戻す少なくとも1つの凝縮路23とを有している。特に凝縮路23は通常のように、毛管状の構造体を用いて実現されている。それぞれの作業媒体及び/又は熱伝導管18の内部における負圧を選択することによって、熱伝導管18が蒸発領域19から凝縮領域20への効果的な熱輸送を実現する温度範囲を、正確に調節することができ、有利である。
【0037】
図1図10の図示から分かるように、熱伝達装置13は、好ましくは次のように、すなわち熱伝達装置13が排ガス貫流領域2の外側面24と凝縮水集合領域11の外側面25とに位置するように、配置されている。これによって熱伝達装置13は、排ガスにさらされる排ガス装置1の領域の外側に位置することになる。これによって特に熱伝達装置13は、排ガス装置1の周囲26の内部に位置することになる。
【0038】
周囲26への熱損失を減じるために、熱伝達装置13は図2及び図3に示すように、断熱体27が、熱伝達体15を接続箇所16と接続箇所17との間において完全に取り囲んでいる。
【0039】
付加的に又は択一的に、図2及び図3に示すように、熱伝達装置13を矢印30で示された走行風や飛沫水による負荷に対して保護するために、風防体28及び/又はスプラッシュガード29が設けられていてよい。
【0040】
特に熱伝達体15もしくは熱伝導管18及び断熱体27及び風防体28もしくはスプラッシュガード29に関係する上に述べた態様が、基本的には任意に、以下に記載の実施形態と組合せ可能であることは、明らかである。
【0041】
図4図6に示す特殊な実施形態では、熱伝達装置13は少なくとも1つの2形態体(Zweiformkoerper)31を備えて形成されている。このような形状変化物体である2形態体31は、例えばバイメタルを用いて又は形状記憶合金を用いて実現することができ、温度に関連して少なくとも2つの異なった幾何学形状を取ることができるという特性を有している。
【0042】
図4a及び図4bでは2形態体31は熱伝達体15に組み込まれている。相応にここでは熱伝達体15は少なくとも、図4a及び図4bに示された2つの異なった幾何学形状を有する。
【0043】
図5a及び図5bに示す実施形態では、2形態体31は凝縮水集合領域11に、つまり凝縮水集合領域11の壁32内に組み込まれていて、この壁32は凝縮水集合領域11の内部33を外側25から隔てている。従って図5a及び図5bには、壁32もしくは2形態体31の2つの異なった形状もしくは状態が示されている。
【0044】
図6a及び図6bに示す実施形態では、2形態体31は、排ガス貫流領域2に、つまり排ガス貫流領域2の壁34に組み込まれていて、この壁34は、排ガス貫流領域2の内部35を外側24から隔てている。図6a及び図6bには、壁34もしくは2形態体31の2つの異なった形状もしくは状態が示されている。
【0045】
それぞれの2形態体31の設計は、好ましくは次のように行われる。すなわちこの場合、図4a、図5a及び図6aに示された、所定の温度未満で生じる第1の状態において、2形態体31は第1の形状を取り、この第1の形状は、排ガス貫流領域2から凝縮水集合領域11への所望の熱伝達14を可能にする。特にこの第1の状態において、排ガス貫流領域2から熱伝達装置13を介して凝縮水集合領域11へと通じる連続した固体よる接触が生ぜしめられており、これによってつまり一方では熱伝達装置13と排ガス貫流領域2との間の接触が得られ、かつ他方では熱伝達装置13と凝縮水集合領域11との間における接触が得られる。
【0046】
所定の温度以上で生じる第2の状態において、2形態体31は、図4b、図5b及び図6bに示された第2の形状を取る。この第2の状態において、排ガス貫流領域2から熱伝達装置13を介して凝縮水集合領域11へと通じる熱伝達14は中断されている。特にこの場合、連続した固体による接触は中断されている。図4bに示すように2形態体31が組み込まれている熱伝達体15は、凝縮水集合領域11から離れるように変形されているので、熱伝達体15と凝縮水集合領域11との間における相応な熱伝達箇所17はもはや存在していない。この形態では熱伝達体15は、排ガス貫流領域2と結合されている。別の択一的な実施形態では、熱伝達体15は凝縮水集合領域11と結合されていて、図4bに示された第2の状態において、排ガス貫流領域2から離れるようになっている。
【0047】
図5bに示した実施形態では、壁32によって形成された2形態体31は第2の形状を取っていて、この第2の形状により、壁32と熱伝達装置13との間には間隔が生ぜしめられ、その結果この実施形態においても相応な接触箇所17はなくなっている。
【0048】
図6bに示した状態では、2形態体31を形成する壁34は熱伝達装置13から離れていて、これによって相応な接触箇所16は消滅している。
【0049】
図7に示した実施形態では、熱伝達体15は凝縮水集合領域11の内部33に熱伝達構造体36を有している。この熱伝達構造体36は凝縮水12への熱導入を改善する。この場合熱伝達体15は壁32を貫通している。
【0050】
図8に示した実施形態では、熱伝達体15は、排ガス貫流領域2の内部35に熱伝達構造体37を有しており、この熱伝達構造体37は、排ガス流5から熱伝達体15への熱伝達を改善する。この場合熱伝達体15は壁34を貫通している。
【0051】
図9に示した実施形態では、熱伝達体15は、凝縮水集合領域11の内部33にも排ガス貫流領域2の内部35にも、それぞれ1つの熱伝達構造体36;37を有している。この場合熱伝達体15は壁32と壁34の両方を貫通している。
【0052】
図10に示した実施形態では熱伝達装置13は調節装置38を有しており、この調節装置38を用いて、排ガス貫流領域2から凝縮水集合領域11への熱伝達14を変化させることができる。図示の形態では調節装置38はピストンシリンダユニット又はスピンドル駆動装置として形成されている。しかしながら基本的には、電気式及び/又は空気力式及び/又は液圧式に作動する任意の調節装置を使用するが可能である。図10の実施形態では調節装置38は熱伝達体15と連結されていて、この熱伝達体15の移動調節によって熱伝達14を変化させることができる。図示の実施形態では熱伝達体15は3つの部分から構成されていて、つまりこの熱伝達体15は、排ガス貫流領域2に不動に結合された第1の端部区分39と、凝縮水集合領域11に不動に結合された第2の端部区分40と、中央区分41とを有している。この中央区分41は両端部区分39,40に対して調節装置38を用いて移動調節可能であり、このことは図10に二重矢印によって示されている。これによって接触面42の有効寸法を変化させることができ、これによって熱伝達14に対して直接的な影響が与えられる。図10の状態において中央区分41は、50%よりも多く、両端部区分39,40の整合面から側方に外へと移動させられており、これによって有効な接触面42は著しく小さくなっている。基本的には、調節装置38が中央区分41を完全に、両端部区分39,40の整合面から側方に引き出すように構成されていてもよく、これによって、接触面42は値0に減じられる。言い換えれば、両端部区分39,40と中央区分41との間における固体による接触はこの場合中断されている。同様に調節装置38は中央区分41を、この中央区分41が両端部区分39,40の面と整合するように、つまり面一になるように、両端部区分39,40の間に位置させることができ、これによって接触面42、ひいては熱伝達14は最大になる。この実施形態においても基本的には、中央区分41は任意の中間位置を取ることができる。
【0053】
調節装置38を操作するために図10では、好ましくは制御装置43が設けられており、この制御装置43は制御ライン44を介して調節装置38を制御することができる。図示の実施形態では、制御装置43と共働するセンサ装置が設けられている。このセンサ装置は図示の実施形態では水分センサ45を有しており、この水分センサ45を用いて、凝縮水集合領域11に凝縮水12が存在しているか否かを検出することができる。相応な信号ライン46が水分センサ45を制御装置43と接続している。センサ装置の温度センサ47は凝縮水集合領域11における温度を監視し、信号ライン48を介して制御装置43と接続している。さらに制御装置43は例えばデータバス49を介して、排ガス装置1を備えた内燃機関を運転するための機関制御装置(図示せず)と接続されていてよい。このようになっていると特に、熱伝達装置13、特にこれによって得られる熱伝達14を、任意のパラメータに関連して制御もしくは調節することが可能になる。例えば制御装置43は機関運転状態及び/又は車両運転状態及び/又は外気温を考慮することができる。今日の自動車は通常、ウインドシールドワイパ装置を制御するためのレインセンサを備えているので、制御装置43はデータバス49を介して、飛沫水が熱伝達14を減じているか否か考慮することもできる。図示のセンサ装置45,47を介して、例えば熱伝達の不要な作動もしくは接続を、凝縮水12が存在しない場合に回避することができる。さらに凝縮水集合領域11の過熱を回避することが可能である。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10