(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738332
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20150604BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20150604BHJP
【FI】
B60R21/231 300
B60R21/205
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-23848(P2013-23848)
(22)【出願日】2013年2月8日
(62)【分割の表示】特願2009-47764(P2009-47764)の分割
【原出願日】2004年8月11日
(65)【公開番号】特開2013-82454(P2013-82454A)
(43)【公開日】2013年5月9日
【審査請求日】2013年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】塙 晃史
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽介
【審査官】
三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−011871(JP,A)
【文献】
特公昭49−023176(JP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0145160(US,A1)
【文献】
特開2003−335203(JP,A)
【文献】
特表2004−502585(JP,A)
【文献】
実公昭50−034441(JP,Y1)
【文献】
欧州特許出願公開第01364840(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の乗員を拘束するエアバッグ装置において、
膨張展開可能な状態で収容され、膨張展開時に乗員側中央付近に縦方向に延びる凹部と、当該凹部の左右両側に位置する凸部とが単一空間として形成されるエアバッグと;
前記エアバッグ内部に膨張ガスを供給するガス供給部と;
前記ガス供給部を固定する固定部を有し、前記エアバッグを収容するハウジングと;
一端が前記エアバッグの前記凹部の内側に連結され、他端が前記固定部に固定される規制部材とを備え、
前記凹部の乗員側には他の部材が介在せず、
前記エアバッグの膨張展開時に、前記規制部材によって前記エアバッグの中央付近が乗員側に移動するのを規制し、乗員の額、鼻、顎を含む頭部前面側が前記凹部に入り込み、当該乗員の首傷害を低減させるように構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
車両内の乗員を拘束するエアバッグ装置において、
膨張展開可能な状態で収容され、膨張展開時に乗員側中央付近に縦方向に延びる凹部と、当該凹部の左右両側に位置する凸部とが単一空間として形成されるエアバッグと;
前記エアバッグ内部に膨張ガスを供給するガス供給部と;
前記ガス供給部を固定する固定部を有し、前記エアバッグを収容するハウジングと;
一端が前記エアバッグの前記凹部の内側に連結され、他端が前記固定部に固定される規制部材とを備え、
膨張展開時の前記エアバッグの最上位部が前記凸部よりも乗員側に突出することなく、前記エアバッグの前記凹部の上端部及び下端部が開放された形状となり、
前記エアバッグの膨張展開時に、前記規制部材によって前記エアバッグの中央付近が乗員側に移動するのを規制し、乗員の額、鼻、顎を含む頭部前面側が前記凹部に入り込み、当該乗員の首傷害を低減させるように構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項3】
車両内の乗員を拘束するエアバッグ装置において、
膨張展開可能な状態で収容され、膨張展開時に乗員側中央付近に縦方向に延びる凹部と、当該凹部の左右両側に位置する凸部とが単一空間として形成されるエアバッグと;
前記エアバッグ内部に膨張ガスを供給するガス供給部と;
前記ガス供給部を固定する固定部を有し、前記エアバッグを収容するハウジングと;
一端が前記エアバッグの前記凹部の内側に連結され、他端が前記固定部に固定される規制部材とを備え、
前記凹部の乗員側には他の部材が介在せず、
膨張展開時の前記エアバッグの最上位部が前記凸部よりも乗員側に突出することなく、前記エアバッグの前記凹部の上端部及び下端部が開放された形状となり、
前記エアバッグの膨張展開時に、前記規制部材によって前記エアバッグの中央付近が乗員側に移動するのを規制し、乗員の額、鼻、顎を含む頭部前面側が前記凹部に入り込み、当該乗員の首傷害を低減させるように構成されていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項4】
前記エアバッグは、前記凹部の内壁を形成する少なくとも1枚のインナーパネルと;当該エアバッグの外周部分を形成する1枚の本体パネルとによって構成されることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記規制部材の他端が前記凹部の底部に対応する前記インナーパネルに固定されることを特徴とする請求項4に記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記インナーパネルは、2枚のパネルを貼り合わせた構成であることを特徴とする請求項4又は5に記載のエアバッグ装置。
【請求項7】
前記規制部材は、前記エアバッグと同一素材で成形されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エアバッグ装置に関し、特に、乗員がエアバッグ装置に対して異常接近している際の傷害値低減を図り得るエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置、特にステアリングホイール(ハンドル)中心部に収容される運転席用エアバッグ装置や、インパネ(ダッシュボード)内に収容される助手席用のエアバッグ装置においては、エアバッグの速やかな展開が重要である。反面、乗員がステアリングホイールやインパネに異常接近している際の乗員傷害値を低減させることが要求される。
【0003】
特開2003−335203に記載された発明においては、乗員に対して左右に位置する2つのエアバッグを備え、これら2つのエアバッグを乗員側端部においてタイパネルで連結している。
【0004】
【特許文献1】特開2003−335203
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2003−335203に記載された発明では、エアバッグの膨張展開時にタイパネルが乗員の頭部もしくは頸部に強く接触し、乗員の首傷害が悪化する恐れがあった。このような問題は、異常接近(アウトオブポジション)時のみならず、通常着座時においても起こり得るものである。
【0006】
本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたものであり、異常接近時及び通常着座時において、乗員の首傷害を低減させることが可能なエアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るエアバッグ装置は、
車両内の乗員を拘束するエアバッグ装置において、膨張展開可能な状態で収容され、膨張展開時に乗員側中央付近に縦方向に延びる凹部と、当該凹部の左右両側に位置する凸部とが単一空間として形成されるエアバッグと;一端が前記エアバッグの前記凹部に固定される規制部材とを備える。そして、前記凹部の乗員側には他の部材が介在せず、前記エアバッグの膨張展開時に、前記規制部材によって前記エアバッグの中央付近が乗員側に移動するのを規制し、乗員の額、鼻、顎を含む頭部前面側が前記凹部に入り込み、当該乗員の首傷害を低減させるように構成されている。
【0008】
本発明によれば、乗員がインパネに異常接近した状態でエアバッグ装置が作動した場合、エアバッグが乗員側に展開しようとするが、規制部材によってエアバッグの中央付近が乗員側へ移動するのが規制され、凹部が形成される。乗員の頭部はエアバッグの凹部に深く入り込み、乗員の頭部にエアバッグが強く接触することが避けられる。これにより、異常接近時(Out Of Position)の乗員に対する首傷害値を低減させることが可能となる。
【0009】
好ましくは、前記エアバッグの膨張展開時に、乗員の頭部が前記凹部に入り込んで前記エアバッグからの衝撃を緩和するとともに、乗員の肩部付近が前記凸部に接触して当該乗員を充分に拘束するように構成する。これにより、正常着座時(Normal Position)の乗員に対する首傷害値を低減させることが可能となる。
【0010】
また、前記エアバッグは、前記凹部の内壁を形成するインナーパネルと;それ以外の本体パネルとを備えることができる。インナーパネルは、2枚のパネルを貼り合わせた構成とすることができる。
【0011】
更に好ましくは、前記エアバッグ内部に膨張ガスを供給するガス供給部と;前記ガス供給部が固定される固定部とを更に備える。そして、前記規制部材の一端が前記固定部に固定され、他端が前記凹部の底部に対応する前記インナーパネルに固定される構造とする。なお、前記規制部材は、前記エアバッグと同一素材で成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一般的なエアバッグ装置の作動状態を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例に係るエアバッグ装置のエアバッグの展開状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図2のA−A’方向の断面図(上面図)である。
【
図4】
図4は、実施例に係るエアバッグ装置の使用状態を示す模式図であり、インパネに対して乗員が異常接近している場合の状態を示す。
【
図5】
図5は、
図4のB−B’方向の断面図(上面図)である。
【
図6】
図6は、実施例に係るエアバッグ装置の使用状態を示す模式図であり、乗員が正常着座している場合のエアバッグの展開状態を示す。
【
図7】
図7は、
図4のC−C’方向の断面図(上面図)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、一般的なエアバッグ装置の作動状態を示す説明図である。本発明の実施例に係るエアバッグ装置10は、膨張展開可能な状態でハウジング20に収容されたエアバッグ12と、膨張ガスを発生するインフレータ18とを備えている。エアバッグ装置10は、例えば、インストルメントパネル16内に配置され、助手席の乗員14を拘束する。なお、本発明は、ステアリングホイールに内蔵される運転席用のエアバッグ装置にも適用可能である。図において、12aは展開状態のエアバッグを示し、22は座席シートを示す。なお、本発明によるエアバッグの実際の展開状態については、
図3及び
図5に示し、詳細については後述する。
【0014】
図2は、本発明の実施例に係るエアバッグ装置のエアバッグ12の展開状態を示す側面図である。
図3は、
図2のA−A’方向の断面図(上面図)である。本実施例に係るエアバッグ装置10は、膨張展開可能な状態で折り畳まれ、膨張展開時に乗員側中央付近に凹部38が形成される構成であり、前記凹部38を形成するインナーパネル30(図の斜線模様部)を有するエアバッグ12と;エアバッグ12内部に膨張ガスを供給するインフレータ(ガス供給部)18と;ハウジング20の一部分でインフレータ18を固定する固定部28と;一端が固定部28に固定され、他端が前記凹部38の底部に対応する前記インナーパネル30に固定されるテザー(規制部材)32とを備えている。エアバッグ12の膨張展開時に、インナーパネル30の後端部39が乗員14側に移動するのをテザー32によって規制することで、凹部38が形成される。
【0015】
エアバッグ12は、外部から見たときに1つの袋状となっている。すなわち、エアバッグ12は、仮にテザー32を備えない場合には、凹部38が形成されることなく、どこにも凹みのないボールのような形状となる。
【0016】
エアバッグ12は、インナーパネル30の他に本体パネル26を有する。本体パネル26とインナーパネル30とは、縫製によって連結することができる。また、本体パネル26は、複数のシートを縫い合わせることによって成形することができる。また、インナーパネル30は、2枚のシートを中央で縫い合わせることによって成形し、あるいは1枚のシートとして成形することもできる。本体パネル26は、例えば、ナイロン6.6(JIS規格)で成形されている。なお、ナイロンはポリアミドとも表記することができる。インナーパネル30は、本体パネル26と同一素材で成形することができる。上述したように、テザー32の一端は2枚のインナーパネル30の中央縫製部に固着される。
【0017】
本実施例では、ハウジング20のインフレータ18の固定部28に規制部材としてのテザー32の一端が取り付けられているが、エアバッグ12の展開時にその凹部38の底部が当該テザー32によって引っ張られるような位置関係であれば、テザー32の端部の固定位置は特に限定されない。好ましくは、エアバッグ12の展開時にインナーパネル30に対して相対的に移動量の少ない本体パネル26のハウジング20付近にテザー32が固定される。より好ましくは、ハウジング20の一部にテザー32が固定される。
【0018】
図4は、実施例に係るエアバッグ装置10の使用状態を示す模式図であり、インパネ16に対して乗員14が異常接近している場合の状態を示す。
図5は、
図4のB−B’方向の断面図(上面図)である。
図4及び
図5に示すように、乗員14がインパネ16に異常接近した状態でエアバッグ装置10が作動した場合、エアバッグ12が乗員側に展開しようとするが、テザー32によってインナーパネル30の乗員14側への移動が規制され、凹部38が形成される。そして、乗員14の頭部はエアバッグの凹部38に深く入り込み、乗員14の頭部にエアバッグが強く接触することが避けられる。これにより、異常接近時(Out Of Position)の乗員14に対する首傷害値を低減させることが可能となる。
【0019】
図6は、実施例に係るエアバッグ装置10の使用状態を示す模式図であり、乗員14が正常着座している場合のエアバッグ12の展開状態を示す。
図7は、
図4のC−C’方向の断面図(上面図)である。
図6及び
図7に示すように、乗員14が正常着座位置で乗車している場合、エアバッグ12が乗員側に展開しようとするが、テザー32によってインナーパネル30の乗員14側への移動が規制され、凹部38が形成される。そして、乗員14の頭部はエアバッグの凹部38に浅く入り込み、乗員14の頭部にエアバッグが強く接触することが避けられる。これにより、正常着座時(Normal Position)の乗員14に対する首傷害値を低減させることが可能となる。また、エアバッグ12は乗員14の胸部及び/又は肩部である肩部付近に接触するため、乗員14を十分に拘束することができる。
【0020】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更可能なものである。例えば、エアバッグ12は1つの袋であれば良く、本発明による規制部材が配置できる限り、その中にもう一つの別の袋を設けたり、複数の室に分けたりしても良い。
【符号の説明】
【0021】
10 エアバッグ装置
12 エアバッグ
14 乗員
16 インパネ
18 インフレータ
20 ハウジング
30 インナーパネル
32 テザー(規制部材)
38 凹部