特許第5738366号(P5738366)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許57383661,3,3,3−テトラフルオロプロペン及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738366
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】1,3,3,3−テトラフルオロプロペン及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20150604BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C21/18
【請求項の数】4
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-165052(P2013-165052)
(22)【出願日】2013年8月8日
(62)【分割の表示】特願2011-142048(P2011-142048)の分割
【原出願日】2005年4月29日
(65)【公開番号】特開2013-241454(P2013-241454A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2013年8月12日
(31)【優先権主張番号】60/567,428
(32)【優先日】2004年4月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】タン,ヒュー・エス
(72)【発明者】
【氏名】ナイル,ハリダサン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ムクホパドヤイ,サンディップ・エス・エム
(72)【発明者】
【氏名】ファン・デル・ピュイ,マイケル
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−256224(JP,A)
【文献】 特表平09−500900(JP,A)
【文献】 国際公開第95/004020(WO,A1)
【文献】 特開昭48−026708(JP,A)
【文献】 特表2005−504097(JP,A)
【文献】 国際公開第03/027051(WO,A1)
【文献】 特表2007−509942(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/042451(WO,A1)
【文献】 特開2011−236226(JP,A)
【文献】 特表2007−535571(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/108334(WO,A1)
【文献】 HASZELDINE,ROBERT N.,JOURNAL OF THE CHEMICAL SOCIETY (C),1970年,P414-421
【文献】 J. Org. Chem.,1985年,Vol.50, No.18,p.3342-3348
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/25
C07C 21/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)BrまたはIFと式(II):CFCH=CHの化合物とを反応させてCFCHFCHBrまたはCFCHFCHを含む反応生成物を生産すること及び
(b)前記CFCHFCHBrまたはCFCHFCHIを2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに変換すること
を含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の合成方法。
【請求項2】
前記変換工程(b)が脱ハロゲン化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の工程:
(a)IFと式(II):CFCH=CHの化合物とを反応させてCFCHFCHIを含む反応生成物を生産すること;及び
(b)CFCHFCHIを2,3,3,3−テトラフルオロプロペンに変換すること
を含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の合成方法。
【請求項4】
前記変換工程(b)が脱ヨウ化水素を含む、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四フッ化プロペンの製造のための方法に関する。より具体的には、本発明は
、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン;CFCH=CHF(HFO−1234z
e);の製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロプロペンは、多様なホモポリマー及びコポリマーの製造においてモノマ
ーとして有用であることが知られている。例えば、米国特許3,472,826は、ポリ
エチレンの生産におけるコモノマーとしてテトラフルオロプロペンを記載している。本発
明の譲受人に譲渡されている米国特許出願番号10/694,273は、低い地球温暖化
係数を有する冷媒としての、及び多様な様式の発泡体の形成に関連した使用のための発泡
剤としての、CFCH=CFHの使用を開示している。さらに、CFCH=CFHは
、工業用化学薬品の製造のための中間体として有用な様々な化合物に官能化されることが
できる。
【0003】
テトラフルオロプロペン化合物の製造のためのいくつかの方法が知られている。例えば
、米国特許6,548,719B1は、概して、相間移動触媒の存在下で式CFC(R
)C(R)[式中、R置換基は、少なくとも一つの水素原子と少な
くとも一つのハロゲン原子が隣接した炭素原子に存在するとの条件で、当該特許で定義さ
れた通りである]の化合物を少なくとも一種のアルカリ金属水酸化物で脱ハロゲン化水素
することによる広範なフルオロオレフィンの生産を開示している。この特許は、多くのテ
トラフルオロプロペンの製造のための効率的で有用な方法を開示しているが、1,3,3
,3−テトラフルオロプロペンの製造のための方法を具体的には開示していない。
【0004】
1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造について、米国特許5,986,15
1に具体的に開示されている。この特許は、CFCH=CFHを与える気相でのCF
CHCFHの触媒的脱フッ化水素を含む方法を開示している。1,3,3,3−テト
ラフルオロプロペンの製造については、また、米国特許6,124,510に開示されて
いる。この特許も、気相でのCFCHCFHの触媒的脱フッ化水素を含む方法を開
示している。これらの特許のそれぞれの方法は、出発反応物質として1,1,1,3,3
−ペンタフルオロプロパン(“245fa”)を単離することが必要であるということに
よって制限されるという不利があり、そして、それは、費用、利用可能性等の理由のため
に望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、少なくとも上記の先行技術の欠点を克服する、1,3,3,3−テトラ
フルオロプロペンの合成のための方法を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの態様における方法は、概して、(a)式(I):Xの化合物と式
(II):CFCH=CHの化合物とを反応させて式(III):CXCHX
CHの化合物を含む反応生成物を生産すること[式中、X及びXはそれぞれ、
及びXは双方が水素ではないという条件で、水素、塩素、臭素、フッ素及びヨウ素
からなる群から独立に選択される];(b)式(III)のXがフッ素でない場合、式
(III)の化合物をフッ素化して式(III):CXCHXCH[式中、
は上記の通りであり、Xはフッ素である]の化合物を含む反応生成物を生産するこ
と;及び、(c)前記式(III)の化合物を1,3,3,3−テトラフルオロプロペン
に変換するのに効果的な反応条件にその化合物をさらすこと;を含む。限定する意図では
なく便宜目的で、この態様の方法を、本明細書において「ハロゲン化水素付加方法」とい
うことがある。
【0007】
本発明の別の態様における方法は、概して、(a)塩素と式():CHCH=CH
の化合物とを反応させて式(II):CClCHClCHClの化合物を含む反応
生成物を生産すること;(b)式(II)の化合物をフッ素化して式(III):CF
CHClCHFの化合物を含む反応生成物を生産すること;及び、(c)前記式(II
)の化合物を1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに変換するのに効果的な反応条
件に式(III)の化合物をさらすこと;を含む。第一工程がこの態様の方法の好ましい
形態にあるので、限定する意図ではなく便宜目的で、この態様の方法を、本明細書におい
て「塩素化方法」ということがある。
【0008】
従って、本発明は、簡単に入手可能でそして相対的に安価な出発材料から、スケールア
ップの容易な、CFCH=CFHの生産のための方法に向けられたものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、1,3,3,3−テトラフルオロ−2−プロペン:CFCH=CHF(“
HFC−1234ze”)のシス−及びトランス−の両方の異性体の生産のための方法に
関するものである。
【0010】
限定する意図ではなく便宜目的で、ハロゲン化水素付加方法と塩素化方法とを、以下で
別々に記述する。
【0011】
ハロゲン化水素付加方法
式(I)の化合物と式(II)の化合物とを反応させる工程は、本明細書に含まれる教
示に従って、非常に多くの具体的プロセス条件および工程に従うものであり、そしてその
ような変法の総てが本発明の広い範囲に含まれる。例えば、その反応工程は、液相または
気相の付加反応を含むことができ、そして、それらは、一般に、触媒される反応が好まし
いが、触媒されても触媒されなくてもよい。式(I)のX及びXがそれぞれ、X
びXが同一ではないという条件で、F、Cl、Br及びIから選択される(例えばその
化合物がClFである)態様について、その反応工程は、好ましくは、約0℃乃至約10
0℃の温度で、触媒、好ましくは6属金属の酸化物、例えばV、の存在下に反応物
質をさらすことを含むことが好ましい。式(I)のX及びXが同一であって、F、C
l、Br及びIから選択される(例えばその化合物がBrである)態様について、その
反応工程(a)は、好ましくは、約−10℃乃至約50℃の温度で、溶媒の存在下に反応
物質をさらすことを含むことが好ましい。例えば酢酸、四塩化炭素、クロロホルム及びジ
クロロメタン等、広範な溶媒を使用することができる。
【0012】
反応工程(a)がXがフッ素でない式(III)の化合物を生じる態様(式(II)
がBrである場合が相当するであろう)では、得られた化合物についてフッ素化が行な
われる。フッ素化条件の多くの変法が本発明の目的に対して効果的であることが考えられ
、そしてそのような条件は総て、本発明の広い範囲に含まれる。一般に気相フッ素化が好
ましいが、フッ素化を気相または液相で行なうことを考えることができる。気相フッ素化
について、概して、HF、好ましくは無水HFガスの存在下、約250℃乃至約500℃
の温度で、触媒的気相フッ素化、好ましくはCr−酸化物(Cr)に触媒される気
相フッ素化を利用することが好ましい。ある好ましい態様において、フッ素化反応のため
にフロー反応器が用いられる。フッ素化反応は、一般に、CFCHXCHF(式中
、Xは好ましくはFではない)を含む反応生成物を生じる。
【0013】
非常に好ましい態様において、フッ素化反応は工程(a)の反応と実質的に同時に起こ
る。例えば、フッ化水素の存在下で、そしてZhuranl Organicheskoi Khimii, 28(4), 642
-80, (1982)(本文献は参照として本明細書に援用される)に開示されているような適切
な条件で、工程(a)の反応を実施するような場合である。
【0014】
本明細書で具体的に開示された好ましい条件以外に、本明細書に含まれている教示を基
に、反応工程(a)への良好な結果を伴って、多様な反応条件を利用することができると
いうことが考えられる。
【0015】
反応工程(a)の後、または存在する場合にはフッ素化工程(b)の後、本発明は、式
(III)の化合物:CFCHXCHFを1,3,3,3−テトラフルオロプロペ
ンを含む反応生成物を生産するのに効果的な反応条件にさらすことを必要とする。好まし
い態様において、このさらす工程は、気相及び/または液相で式(III)の化合物を脱
ハロゲン化水素することを含む。本明細書に含まれる教示に従って、良好な結果を伴って
、多くの脱ハロゲン化水素工程が利用できることが考えられ、ある態様では、脱ハロゲン
化水素工程は、式(III)の化合物を1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに変換
するのに十分な時間、相対的に高い温度で式(III)の化合物を触媒と接触させること
を含む。脱臭化水素については、一般に、式(III)の化合物を触媒の存在下、KOH
水溶液中で反応させることが好ましい。ある脱ハロゲン化水素反応は、式(III)の化
合物を含むストリームを触媒、好ましくは鉄−ベース触媒、より好ましくはFeCl
の触媒床を含み、約200℃乃至約400℃の温度に維持された反応器に導入し、そして
その条件で約2秒乃至約30秒の接触時間を作り出すことを含む。好ましくは、反応圧は
約0psig乃至約200psigに維持される。このさらす工程は、また、米国特許6
,548,719B1の教示に従って行なうことができる(この米国特許は本発明の譲受
人に譲渡されており、そして参照として本明細書に援用される)。適切な触媒及び高い温
度を用いた気相脱ハロゲン化フッ素は、また、米国特許5,986,151(この米国特
許は参照として本明細書に援用される)に開示されている手順に従って行なうことができ
る。
【0016】
このさらす工程は、好ましくは、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応
生成物ストリーム、より好ましくは1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの大部分を
含む反応生成物ストリーム、さらに好ましくは少なくとも約45%の1,3,3,3−テ
トラフルオロプロペンを含む反応生成物ストリーム、を生じる。このさらす工程において
、化合物(III)の量に基づいた1,3,3,3−テトラフルオロプロペン収率は、好
ましくは、少なくとも約60%(mol)である。
【0017】
反応生成物ストリームに含まれる副生成物は、周知の手段(蒸留等)によって望みの程
度まで除くことができる。
【0018】
本発明の一つの特定の態様は、以下のスキーム1に示される反応工程を含む。
【0019】
スキーム1
【0020】
【化1】
本発明者らは、上記スキーム1で示される本発明の態様は、ある場合、副生成物として
式:CFCHFCH(式中、Xはフッ素以外のハロゲンである)の化合物を生
じることに気付き、そして、ある好ましい態様では、本発明の所望のフルオロオレフィン
、すなわちCFCF=CH(HFO−1234yf)を生じるように、その化合物を
、好ましくは脱ハロゲン化水素によって、反応させるさらなる工程を実施することが好ま
しいであろう。例えば、上記のスキームにおいて、ある態様での最初の反応はCFCH
FCHBrの生産をもたらすことがあり、そしてそれは脱臭化水素されてHFO−12
324yfを生じることができる。
【0021】
本発明の別の特定の態様は、以下のスキーム2に示すように、二重結合へのIFの付加
、及び引き続いての脱ハロゲン化によってCFCH=CFHを与えることを含む。
【0022】
スキーム2
【0023】
【化2】
スキーム1に関して上述したことと同様に、発明者らは、上記スキーム2で示される本
発明の態様は、ある場合、副生成物として式:CFCHFCHIの化合物を生じるこ
とに気付き、そして、ある好ましい態様では、本発明の所望のフルオロオレフィン、すな
わちCFCF=CH(HFO−1234yf)を生じるように、その化合物を、好ま
しくは脱ヨウ化水素によって、反応させるさらなる工程を実施することが好ましいであろ
う。
【0024】
塩素化方法
この態様に従う反応工程(a)は、広い意味での塩素化工程である。そしてこの塩素化
工程は、本明細書に含まれる教示に従って非常に多くの具体的なプロセス条件及び工程に
従うものであり、そしてそのような変法の総てが本発明の広い範囲に含まれる。しかしな
がら、反応工程(a)は光塩素化を含むことが特に好ましい。そのため、好ましい反応工
程(a)は、反応物質を、好ましくは液相で、塩素化触媒、好ましくはAu/TiO
媒、の存在下、ニート(neat)で、紫外線照射、好ましくは約200乃至400nm
の範囲の紫外線照射、にさらすことを含む。反応は、好ましくは、溶媒中で、より好まし
くは、CCl等の塩素化溶媒中で、行なわれる。反応は、好ましくは約0℃乃至約30
0℃の温度で実施され、より好ましくは、約0℃乃至約300℃で約0.5時間乃至約7
0時間、好ましくは約0.5時間乃至約48時間、の時間で行なわれる。不要な副生成物
を除きそして式(II)の化合物が相対的に高濃度であるストリームを生産するために、
式(II)の化合物を含む反応生成物について、一つ以上の分離工程(蒸留等)を随意に
行なうことができる。
【0025】
随意の分離工程の後、反応工程(a)からの式(II)の化合物に対してフッ素化が行
なわれる。本発明の目的のために、多様なフッ素化条件が効果的であることが考えられ、
そして、そのような条件は総て本発明の広い範囲に含まれる。一般に気相フッ素化が好ま
しいが、フッ素化を気相または液相で行なうことができると考えられる。気相フッ素化に
ついては、概して、HF存在下、好ましくは無水HFガス存在下、約250℃乃至約50
0℃、好ましくは約250℃乃至約400℃の温度で、触媒的気相フッ素化、好ましくは
Cr酸化物(Cr)に触媒される気相フッ素化、を利用することが好ましい。ある
好ましい態様において、フッ素化反応にはフロー反応器が使用され、そして、好ましくは
、その反応は、約1秒乃至約50秒、より好ましくは約5秒乃至約50秒の接触時間を生
じる条件で行なわれる。フッ素化反応は、概して、式(III):CFCHClCH
Fの化合物を含む反応生成物を生じる。
【0026】
ある好ましい態様においては、フッ素化反応は工程(a)の反応と実質的に同時に起こ
ることが想定される。例えば、フッ化水素の存在下で、適切な条件で、工程(a)の反応
を実施するような場合である。
【0027】
反応工程(a)及びフッ素化工程(b)の後、本発明のこの態様は、好ましくは、1,
3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物を生産するのに効果的な反応条件
に式(III):CFCHClCHFの化合物をさらすことを含む。好ましい態様に
おいて、このさらす工程は、気相及び/または液相で、式(III)の化合物を脱塩化水
素することを含む。本明細書に含まれる教示に従って、良好な結果を伴って、多くの脱塩
化水素工程が利用できることが考えられ、ある態様では、脱塩化水素工程は、式(III
)の化合物を、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンに変換するのに十分な時間、相
対的に高い温度で式(III)の化合物を触媒と接触させることを含む。好ましくは、脱
塩化水素反応は、式(III)の化合物を含むストリームを触媒、好ましくは鉄−ベース
触媒、より好ましくはFeCl、の触媒床を含み、約200℃乃至約400℃の温度に
維持された反応器に、約2秒乃至約50秒、より好ましくは約20秒乃至約30秒、の接
触時間を作り出す条件下で導入することを含む。好ましくは、反応圧は約0psig乃至
約200psigである。このさらす工程は、また、米国特許6,548,719B1の
教示に従って行なうことができる(この米国特許は本発明の譲受人に譲渡されており、そ
して参照として本明細書に援用される)。適切な触媒及び高い温度を用いた気相脱塩化水
素は、また、米国特許5,986,151(この米国特許は参照として本明細書に援用さ
れる)に開示されている手順に従って行なうことができる。
【0028】
このさらす工程は、好ましくは、1,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む反応
生成物ストリーム、より好ましくは1,3,3,3−テトラフルオロプロペンの大部分を
含む反応生成物ストリーム、さらに好ましくは少なくとも約50重量%の1,3,3,3
−テトラフルオロプロペンを含む反応生成物ストリーム、を生じる。このさらす工程にお
いて、化合物(III)の量に基づいた1,3,3,3−テトラフルオロプロペン収率は
、好ましくは、少なくとも約60%(mol)である。
【0029】
本発明の態様において、反応生成物ストリームに含まれるいずれもの副生成物は、一般
に、周知の手段(蒸留等)によって望みの程度まで除くことができる。
【0030】
以下の実施例は本発明の具体的な実例として示したものである。そして、本発明が以下
の実施例に説明された詳細なものに限定されるものではないことに留意すべきである。C
CH=CFHの総ての異性体(シス及びトランス)が本発明の範囲に含まれる。
【0031】
実施例
実施例1
Br及びHF(BrF)並びにCFCH=CHからのCFCH=CHFの合成
テフロン(登録商標)で覆われたモネルのオートクレーブ中、触媒としての約0.00
5モルのFeClまたはSbFの存在下、約−30℃乃至−60℃で、CFCH=
CH(0.5モル)をBr(0.4モル)及びHF(50モル)と反応させる。反応
時間は、前記の温度で約10乃至30分、そしてその後室温で1時間であった。反応生成
物をCHClで抽出する。主生成物はCFCHBrCHF(55%)であって、
副生成物は主にCFCHBrCHBr(40%)であった。CFCHBrCH
を蒸留によって単離し、そして、それを525℃、接触時間約20秒乃至約30秒で、約
50グラム(gm)の活性炭からなる触媒床上を通して脱臭化水素を行い、CFCH=
CHFを含む反応生成物を約95%の収率で得た。
【0032】
実施例2
IF及びCFCH=CHからのCFCH=CHFの合成
CFCHICHFを生産するのに効果的な条件下、適切な割合で、CFCH=C
とIF(IとIFの反応、またはIとHFの反応によって形成される)とを反
応させる。そして、CFCH=CHFを含む反応生成物を、好ましくは約95%の収率
で、生じるに効果的な条件でCFCHICHFの脱ヨウ化水素を行なう。
【0033】
実施例3
CHCH=CH及びClからのCFCH=CHFの合成
CClを溶媒として使用し、フロー反応器中、1−3%のAu/TiO触媒の存在
下、UV(200−400nm)光下、0℃で、約0.5モルのCHCH=CHと0
.2モルのClを反応させる。0℃乃至10℃で約5乃至20秒間、反応を行なってC
ClCHClCHClを与える。その後、得られた生成物を単離し、そして50gの
1/8インチのCrの触媒床上、5モル過剰のHF存在下、約250−400℃で
約5乃至50秒の接触時間で、フロー反応器を通して、CFCHClCHFを与える
。そして、そのCFCHClCHFを、425−550℃、接触時間25乃至30秒
でCr触媒(50g)上を通すことによって脱塩化水素を行いCFCH=CFH
を得た。CFCH=CFHの単離収率は40−60%であった。