(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738387
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】完全変位弁組立体を備えたショックアブソーバ
(51)【国際特許分類】
F16F 9/348 20060101AFI20150604BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
F16F9/348
F16F9/32 L
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-249527(P2013-249527)
(22)【出願日】2013年12月2日
(62)【分割の表示】特願2010-522966(P2010-522966)の分割
【原出願日】2008年8月29日
(65)【公開番号】特開2014-43950(P2014-43950A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2013年12月24日
(31)【優先権主張番号】11/897,351
(32)【優先日】2007年8月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505318721
【氏名又は名称】テネコ オートモティブ オペレーティング カンパニー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Tenneco Automotive Operating Company Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ステファン デファーム
【審査官】
長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0283676(US,A1)
【文献】
特開平06−280920(JP,A)
【文献】
特開2002−195335(JP,A)
【文献】
実開昭60−099341(JP,U)
【文献】
特開平06−280919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/348
F16F 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動チャンバを形成する圧力チューブと、
該圧力チューブ内に配置されかつ前記作動チャンバを上方作動チャンバと下方作動チャンバとに分割するピストン組立体とを有し、該ピストン組立体は、
第1ハウジングと、
該第1ハウジングに取付けられた第2ハウジングと、
上方作動チャンバと下方作動チャンバとの間に延びている複数の第1通路とを有し、該複数の第1通路は第1および第2ハウジングを通って延びており、
第1ハウジングに隣接して配置された第1弁組立体を有し、該第1弁組立体は、第1ハウジングと係合して前記複数の第1通路の少なくとも1つを閉じる第1弁ディスクと、該第1弁ディスクに荷重を加える平板状の第1押圧ディスクとを備え、
第1ハウジングから延びている複数の第1ランドを更に有し、前記第1弁ディスクは複数の第1ランドと係合し、複数の第1ランドの各々が前記複数の第1通路のそれぞれを包囲しており、
前記第1押圧ディスクはドーナツ状の環状中央部および該環状中央部の外径側に延びる複数の脚から成り、該脚と該環状中央部の外径側とが円弧状に接続し、該脚が異なる脚幅を有しかつ円周方向に異なる間隔で配置され、前記第1押圧ディスクにより加えられる前記荷重は、前記ピストン組立体の軸芯回りの周方向で不均一となる荷重であり、
前記第1押圧ディスクが撓むことで前記第1弁ディスクが第1ランドから離間し、
前記第1弁組立体は更に、第1弁ディスクと第1押圧ディスクとの間に配置された第1インターフェースを有し、
前記第1インターフェースは第1押圧ディスクと係合して、第1インターフェースのセンタリングを行うことを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項2】
前記ピストン組立体に取付けられたピストンロッドを更に有し、前記第1インターフェースはピストンロッドと係合して、第1インターフェースのセンタリングを行うことを特徴とする請求項1記載のショックアブソーバ。
【請求項3】
前記第1弁ディスクは、第1ハウジングと係合して前記複数の第1通路の少なくとも1つを閉じる第1位置から、第1ハウジングから完全に間隔を隔てて複数の第1通路の少なくとも1つを開く第2位置へと軸線方向に移動することを特徴とする請求項1記載のショックアブソーバ。
【請求項4】
前記ピストン組立体は更に、第1ハウジングと第2ハウジングとの間に配置されたチューニングディスクを有し、該チューニングディスクは、前記複数の第1通路に連通する複数のチューニング通路を形成していることを特徴とする請求項1記載のショックアブソーバ。
【請求項5】
前記チューニングディスクは、上方作動チャンバと下方作動チャンバとの間に常時開放流路を形成するブリード通路を形成していることを特徴とする請求項4記載のショックアブソーバ。
【請求項6】
前記ピストン組立体は、
前記上方作動チャンバと下方作動チャンバとの間に延びている複数の第2通路を有し、該複数の第2通路は第1ハウジングと第2ハウジングとを通って延びており、
第2ハウジングに隣接して配置された第2弁組立体を更に有し、該第2弁組立体は、第2ハウジングと係合して前記複数の第2通路の少なくとも1つを閉じる第2弁ディスクおよび前記第2弁ディスクに荷重を加える平板状の第2押圧ディスクを有し、
前記第2押圧ディスクはドーナツ状の環状中央部および該環状中央部の外径側に延びる複数の脚から成り、該脚と該環状中央部の外径側とが円弧状に接続し、該脚が異なる脚幅を有しかつ円周方向に異なる間隔で配置され、
前記第2押圧ディスクが撓むことで前記第2弁ディスクが第2ハウジングから離間し、
前記第2弁組立体は更に、第2弁ディスクと第2押圧ディスクとの間に配置された第2インターフェースを有し、
前記第2インターフェースは第2押圧ディスクと係合して、第2インターフェースのセンタリングを行うことを特徴とする請求項1記載のショックアブソーバ。
【請求項7】
前記ピストン組立体は更に、第1ハウジングと第2ハウジングとの間に配置されたチューニングディスクを有し、該チューニングディスクは、前記複数の第1通路に連通する複数の第1チューニング通路と、前記複数の第2通路に連通する複数の第2チューニング通路とを形成していることを特徴とする請求項6記載のショックアブソーバ。
【請求項8】
前記チューニングディスクは、第1チューニング通路の1つと第2チューニング通路の1つとの間に常時開放したブリード通路を形成していることを特徴とする請求項7記載のショックアブソーバ。
【請求項9】
前記第2ハウジングから延びている複数の第2ランドを更に有し、前記第2弁ディスクは前記複数の第2ランドと係合し、複数の第2ランドの各々が前記複数の第2通路のそれぞれを包囲していることを特徴とする請求項6記載のショックアブソーバ。
【請求項10】
前記第2押圧ディスクは非対称的な形状に形成され、前記第2押圧ディスクにより加えられる前記荷重は、前記ピストン組立体の軸芯回りの周方向で不均一となる荷重であることを特徴とする請求項6記載のショックアブソーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、自動車に使用されるサスペンションシステムのようなサスペンションシステムに使用される油圧ダンパすなわちショックアブソーバに関し、より詳しくは、流体の流れを制御する完全変位弁組立体(full displacement valve assembly)を備えたショックアブソーバに関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションでの記載は、本発明に関連する背景技術情報を提供するもので、従来技術を構成するものではない。
【0003】
ショックアブソーバは、運転中に生じる好ましくない振動を吸収する自動車のサスペンションシステムに関連して使用される。ショックアブソーバは、一般に、自動車のばね上部分(ボディ)とばね下部分(ホイール)との間に連結される。モノチューブショックアブソーバでは、ピストンは、ショックアブソーバの圧力チューブにより形成される作動チャンバ内に配置され、ピストンロッドを介して自動車のばね上部分に連結されている。圧力チューブは、当業界で知られた方法の1つにより車両のばね下部分に連結される。ショックアブソーバが圧縮または伸長されるとき、ピストンは、弁作用によりピストンの両側の減衰流体の流れを制限できるので、ショックアブソーバは、さもなくば自動車のばね下部分とばね上部分との間で伝達される虞れがある好ましくない振動を減衰させる減衰力を発生できる。
【0004】
デュアルチューブショックアブソーバでは、ピストンは、ショックアブソーバの圧力チューブにより形成される作動チャンバ内に配置され、ピストンロッドを介して自動車のばね上部分に連結されている。リザーブチューブが圧力チューブを包囲してリザーブチャンバを形成しており、ベース弁組立体が作動チャンバとリザーブチャンバとの間に配置されている。リザーブチューブは、当業界で知られた方法の1つにより車両のばね下部分に連結されている。ショックアブソーバが伸長されて減衰荷重を発生するとき、ピストンの弁作用により、ピストンの上側と下側との間の減衰流体の流れが制限される。ショックアブソーバが圧縮されて減衰荷重を発生するとき、ベース弁組立体の弁作用により、作動チャンバとリザーブチャンバとの間の減衰流体の流れが制限される。ピストンはまた、圧縮ストローク中にピストンの上側に流体を補充する逆止弁を有し、ベース弁組立体は、伸長ストローク中にピストンの下側に流体を補充する逆止弁を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ショックアブソーバのピストンは、一般に、少なくとも1つの流体制御弁組立体を有している。流体制御弁組立体は、ピストン本体に対して軸線方向に移動して流体通路を完全に開く弁ディスクを有している。流体制御弁組立体は、ピストン組立体および/またはベース弁組立体の圧縮弁組立体としておよび/またはリバウンド弁組立体として使用される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の他の適用領域は、本明細書での説明から明らかになるであろう。本明細書での説明および特定例は、例示を目的としたものであり、本発明の開示範囲を制限することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0007】
本明細書の添付図面は例示のみを目的としたものであって、いかなる意味においても本発明の開示範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明によるピストン設計が取り入れられたショックアブソーバを備えた自動車を示す図面である。
【
図2】本発明によるピストン設計が取り入れられた
図1のショックアブソーバを示す、一部を破断した側面図である。
【
図3】
図2に示したショックアブソーバのピストン組立体の一部を破断した拡大側面図である。
【
図4】
図3に示したピストンの一部を破断した斜視図である。
【
図5】
図3に示したピストンを示す分解斜視図である。
【
図6】
図3−
図5に示したチューニングディスクを示す平面図である。
【
図7】
図2および
図3に示したインターフェースディスクの種々の実施形態を示す斜視図である。
【
図8】本発明の他の実施形態によるピストン組立体の一部を破断した拡大側面図である。
【
図9】
図2および
図3に示したインターフェースディスクの種々の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明は本質の単なる例示であり、本発明の開示、用途または使用を限定することを意図するものではない。
図1には、ショックアブソーバを備えたサスペンションシステムが組込まれた車両(その全体が参照番号10で示されている)が示されており、各ショックアブソーバには、本発明によるピストン組立体が組込まれている。車両10は、リアサスペンション12と、フロントサスペンション14と、ボディ16とを有している。リアサスペンション12は、1対のリアホイール18を支持できる横方向に延びたリアアクスル組立体(図示せず)を有している。リアアクスルは、1対のショックアブソーバ20および1対のスプリング22を介してボディ16に取付けられている。同様に、フロントサスペンション14は、1対のフロントホイール24を支持する横方向に延びたフロントアクスル組立体(図示せず)を有している。フロントアクスル組立体は、1対のショックアブソーバ26および1対のスプリング28を介してボディ16に取付けられている。ショックアブソーバ20、26は、車両10のばね上部分(すなわちボディ16)に対するばね下部分(すなわち、フロントサスペンション14およびリアサスペンション12)の相対運動を減衰させるべく機能する。車両10はフロントアクスル組立体およびリアアクスル組立体を備えた乗用車として示されているが、ショックアブソーバ20、26は、非独立フロントサスペンションおよび/または非独立リアサスペンションが組込まれた車両、および独立フロントサスペンションおよび/または独立リアサスペンションまたは当業界で知られた他のサスペンションシステムが組込まれた車両を含む他の形式の車両または他の形式の用途(但し、これらに限定されない)に使用できる。また、本明細書で使用する用語「ショックアブソーバ」は、広くダンパを意味し、したがってマクファーソンストラットおよび当業界で知られた他のダンパ設計を含むものである。
【0010】
ここで
図2を参照すると、ショックアブソーバ20がより詳細に示されている。
図2にはショックアブソーバ20のみが示されているが、ショックアブソーバ26も本発明によるマルチピースピストンを有していることを理解すべきである。ショックアブソーバ26がショックアブソーバ20とは異なっている点は、ショックアブソーバ26が車両10のばね上部分およびばね下部分に連結できる点だけである。ショックアブソーバ20は、圧力チューブ30と、ピストン組立体32と、ピストンロッド34とを有している。ピストン組立体32を備えたショックアブソーバ20はモノチューブショックアブソーバとして示されているが、ピストン組立体32は、デュアルチューブショックアブソーバまたはマルチチューブショックアブソーバにも使用できるものである。
【0011】
圧力チューブ30は、作動チャンバ42を形成している。ピストン組立体32は圧力チューブ30内にスライド可能に配置され、作動チャンバ42を上方作動チャンバ44と下方作動チャンバ46とに分割している。ピストン組立体32と圧力チューブ30との間にはシール48が配置され、不利な摩擦力を発生させることなくピストンチューブ30に対してピストン組立体32がスライド運動することを可能にしかつ下方作動チャンバ46から上方作動チャンバ44をシールする。ピストンロッド34はピストン組立体32に取付けられており、かつ上方作動チャンバ44と、圧力チューブ30の上端部を閉じる上端キャップすなわちロッドガイド50とを通って延びている。シーリングシステム52は、ロッドガイド50と、圧力チューブ30と、ピストンロッド34との間の界面をシールする。ピストン組立体32とは反対側のピストンロッド34の端部は、車両10のばね上部分に固定できるようになっている。ロッドガイド50とは反対側の圧力チューブ30の端部は、車両10のばね下部分に連結できるようになっている。圧力チューブ30内でのピストン組立体32の伸長運動中、ピストン組立体32の伸長弁作用によって、上方作動チャンバ44と下方作動チャンバ46との間の流体の移動が制御される。ピストン組立体32の圧縮弁作用によって、圧力チューブ30内でのピストン組立体32の圧縮運動中に、下方作動チャンバ46と上方作動チャンバ44との間の流体の移動が制御される。
【0012】
図2−
図6を参照すると、ピストン組立体32がより詳細に示されている。ピストン組立体32は、圧縮弁組立体60と、マルチピースピストン本体62と、伸長弁組立体64とを有している。ピストンロッド34には小径セクション66が形成されており、該小径セクション66には、圧縮弁組立体60と、マルチピースピストン本体62と、伸長弁組立体64とが配置されている。ピストン組立体32は、ナット68によりピストンロッド34の小径セクション66上に固定されており、圧縮弁組立体60はピストンロッド34のショルダに当接し、マルチピースピストン本体62は圧縮弁組立体60に当接し、伸長弁組立体64はマルチピースピストン本体62に当接し、ナット68は伸長弁組立体64およびマルチピースピストン本体62に当接している。
【0013】
圧縮弁組立体60は、弁ディスク72と、環状ハウジングすなわちインターフェース74と、1つ以上の押圧部材76と、1つ以上のスペーサ78と、リテーナ80とを有している。
図3に示すように、弁ディスク72、押圧部材76およびスペーサ78は、リテーナ80上に配置されおよび/または該リテーナ80と係合することにより案内される。弁ディスク72は、マルチピースピストン本体62内に延びている複数の圧縮通路82をカバーする。環状ハウジング74は、マルチピースピストン本体62とは反対側の弁ディスク72の側面に当接している。1つ以上の押圧部材76が環状ハウジング74と係合しかつ該環状ハウジング74を弁ディスク72と係合させ、これにより、弁ディスク72がマルチピースピストン本体62に対して押圧される。押圧部材76は、環状ハウジング74により形成された凹部84内で重ね合わされており、マルチピースピストン本体62およびピストンロッド34に対して環状ハウジング74の位置のセンタリングを行いかつこの位置を維持する。1つ以上の押圧部材76とリテーナ80との間には1つ以上のスペーサ78が配置されている。リテーナ80は、ピストンロッド34により形成されたショルダに当接している。弁ディスク72は、上方作動チャンバ44から下方作動チャンバ46への流体の流れは防止するが、1つ以上の押圧部材76の撓みにより弁ディスク72の座合が引離されることにより、下方作動チャンバ46から上方作動チャンバ44への流体の流れは許容する。
【0014】
伸長弁組立体64は、弁ディスク92と、環状ハウジングすなわちインターフェース94と、1つ以上の押圧部材96と、1つ以上のスペーサ98と、ナット68とを有している。
図3に示すように、弁ディスク92、押圧部材96およびスペーサ98は、ナット68上に配置されおよび/または該ナット68と係合することにより案内される。弁ディスク92は、マルチピースピストン本体62内に延びている複数の伸長通路102をカバーする。環状ハウジング94は、マルチピースピストン本体62とは反対側の弁ディスク92の側面に当接している。1つ以上の押圧部材96が環状ハウジング94と係合しかつ該環状ハウジング94を弁ディスク92と係合させ、これにより弁ディスク92がマルチピースピストン本体62に対して押圧される。押圧部材96は、環状ハウジング94により形成された凹部104内で重ね合わされており、マルチピースピストン本体62およびピストンロッド34に対する環状ハウジング94の位置のセンタリングを行いかつこの位置を維持する。1つ以上の押圧部材96とナット68との間には1つ以上のスペーサ98が配置されている。ナット68の位置は複数のシム106により制御され、これにより、1つ以上の押圧部材76および1つ以上の押圧部材96により加えられる押圧荷重したがって、圧縮ストローク中および伸長ストローク中のショックアブソーバ20の減衰特性が決定される。弁ディスク92は、下方作動チャンバ46から上方作動チャンバ44への流体の流れは防止するが、1つ以上の押圧部材96の撓みにより弁ディスク92が座合から引離されることにより、上方作動チャンバ44から下方作動チャンバ46への流体の流れは許容する。シム106はリテーナ80とマルチピースピストン本体62との間に配置されているところが示されているが、シム106をマルチピースピストン本体62とナット68との間に配置することも本発明の開示範囲内に含まれるものである。
【0015】
図3−
図6を参照すると、マルチピースピストン本体62は、リバウンド側ハウジング110と、圧縮側ハウジング112と、チューニングディスク114とを有している。リバウンド側ハウジング110には、1つ以上の伸長通路入口102aおよび1つ以上の圧縮通路出口82bが形成されている。各圧縮通路出口82bは、アイランド・ランド(island land)82cにより包囲されている。
図3−
図5には、各圧縮通路出口82bが単一のアイランド・ランド82cにより包囲されているものが示されているが、単一のアイランド・ランド82cにより包囲された1つ以上の圧縮通路出口82bをもつものも本発明の範囲内にある。圧縮側ハウジング112には、複数の圧縮通路入口82aおよび複数の伸長通路出口102bが形成されている。各伸長通路出口102bは、アイランド・ランド102cにより包囲されている。
図3―
図5には、各伸長通路出口102bが単一のアイランド・ランド102cにより包囲されているものが示されているが、単一のアイランド・ランド102cにより包囲された1つ以上の伸長通路出口102bをもつものも本発明の範囲内にある。リバウンド側ハウジング110と圧縮側ハウジング112との間にはチューニングディスク114が配置され、該チューニングディスク114の形状もショックアブソーバ20の減衰特性を決定する。
【0016】
ここで
図6を参照すると、チューニングディスク114には、複数の圧縮開口82dおよび複数の伸長開口102dが形成されている。適正に組立てられると、複数の圧縮開口82dは複数の圧縮通路82と整合し、複数の伸長開口102dは複数の伸長通路102と整合する。上記開口とこれらのそれぞれの通路との整合を維持するため、種々の方向決め手段を設けることができる。シール48の組立てのような帯締め加工(banding process)を直後に行なう部品を方向決めするのに、特殊組立て工具(図示せず)を使用できる。シール48は、保持手段として機能しかつピストン組立体32の取扱いおよび組立て中に、コンポーネンツを、正しい方向に組立てられた状態に維持する。チューニングディスク114には、1つ以上のデテント120を形成できる。デテント120は、正しい方向を得るため、リバウンド側ハウジング110の1つ以上の孔(図示せず)および圧縮側ハウジング112の1つ以上の孔(図示せず)と係合するように設計できる。ピストン組立体32を更に取扱うことができるようにするため、デテント120とこれらのそれぞれの孔との間に僅かな締り嵌めを使用できる。締り嵌めに加えまたは締り嵌めに代えてシール48を使用し、コンポーネンツの方向を維持することができる。
【0017】
ショックアブソーバ20の圧縮ストローク中、下方作動チャンバ46内の流体圧力は増大し、上方作動チャンバ44内の流体圧力は減少する。この流体圧力の差は、弁ディスク72に対して、該弁ディスク72をマルチピースピストン本体62との座合から引離そうとする方向に作用する。流体圧力のこの差はまた、弁ディスク92に対して、該弁ディスク92を押圧してマルチピースピストン本体62と係合させるように作用する。流体圧力差が増大すると、1つ以上の押圧部材76が撓むことにより、弁ディスク72は、マルチピースピストン本体62のアイランド・ランド82cとの座合から完全に引離され、流体は、下方作動チャンバ46から、複数の圧縮通路入口82a、複数の圧縮開口82d、複数の圧縮通路出口82bおよび弁ディスク72を通って、上方作動チャンバ44内に流入する。
【0018】
圧縮ストローク中のショックアブソーバ20の減衰特性は、1つ以上の押圧部材76および圧縮開口82dのサイズにより決定される。
【0019】
ショックアブソーバ20の伸長ストロークすなわちリバウンドストローク中、上方作動チャンバ44内の流体圧力は増大し、下方作動チャンバ46内の流体圧力は減少する。この流体圧力の差は、弁ディスク92に対して、該弁ディスク92をマルチピースピストン本体62との座合から引離そうとする方向に作用する。流体圧力のこの差はまた、弁ディスク72に対して、該弁ディスク72を押圧してマルチピースピストン本体62と係合させるように作用する。流体圧力差が増大すると、1つ以上の押圧部材96が撓むことにより、弁ディスク92は、マルチピースピストン本体62のアイランド・ランド102cとの座合から完全に引離され、流体は、上方作動チャンバ44から、複数の伸長通路入口102a、複数の伸長開口102d、複数の伸長通路出口102bおよび弁ディスク92を通って、下方作動チャンバ46内に流入する。
【0020】
リバウンドストロークすなわち伸長ストローク中のショックアブソーバ20の減衰特性は、1つ以上の押圧部材96および伸長開口102dのサイズにより決定される。
【0021】
ショックアブソーバ20をチューニングするとき、ショックアブソーバ20の圧縮ストロークおよび伸長ストロークの両ストロークにおいて常時開いている通路である共通ブリード流れ通路140を設けるのが有利である。
図6には、ショックアブソーバ20の圧縮ストロークおよびリバウンドストロークの両ストローク中に、上方作動チャンバ44と下方作動チャンバ46との間の流体の流れを許容するブリード流れ通路140が破線で示されている。ブリード流れの量は、ブリード流れ通路140のサイズおよび数を変えることにより制御される。
【0022】
かくして、マルチピースピストン本体62は、チューニングディスク114の設計を変えることにより、圧縮減衰、リバウンド減衰およびブリード流れの個々のチューニングが可能である。これにより、チューニングディスク114の設計により選択される特定チューニング条件により、同じリバウンド側ハウジング110および圧縮側ハウジング112を用いる種々の用途が可能になる。また、異なる押圧部材76および/または96であるが共通の側のハウジング110、112を用いることにより、他のチューニング条件を選択できる。
【0023】
図7Aには、押圧部材76、96の一実施形態が示されている。押圧ディスク76、96は、環状中央部150および複数の脚152を有している。脚152の数および幅は、
ショックアブソーバ20に特定の減衰特性を付与するように選択される。
図7Aに示すように、複数の脚152は全て同じ幅でありかつ中央部150の回りで対称的に配置されている。
図7Bには、複数の脚152が、同じ幅ではなくかつ中央部150の回りで非対称的に配置されており、したがって非対称的に設計された押圧ディスク76′、96′が示されている。この非対称的な設計は、ショックアブソーバ20の減衰曲線を調整するのに使用できる。
図7Cには、脚152が設けられていない完全環状ディスクとして押圧ディスク76″、96″が示されている。
【0024】
図8を参照すると、ここにはピストン組立体232が示されている。ピストン組立体232は、圧縮弁組立体260と、マルチピースピストン本体62と、伸長弁組立体264とを有している。ピストンロッド234には小径セクション66が形成されており、該小径セクション66に圧縮弁組立体260、マルチピースピストン本体62および伸長弁組立体264が配置されている。ピストン組立体232は、ピストンロッド234のリベット形端部268を用いてピストンロッド234の小径セクション66に固定されている。圧縮弁組立体260はピストンロッド234のショルダに当接し、マルチピースピストン本体62は圧縮弁組立体260に当接し、伸長弁組立体264はマルチピースピストン本体62に当接し、リベット形端部268は伸長弁組立体264に当接している。
【0025】
圧縮弁組立体260は、弁ディスク72と、環状ハウジングすなわちインターフェース274と、1つ以上の押圧部材76と、1つ以上のスペーサ78と、リテーナ80とを有している。かくして、圧縮弁組立体260は、該圧縮弁組立体260が環状ハウジングすなわちインターフェース274を有している点を除き、圧縮弁組立体60と同じである。インターフェース274は、リテーナ80上で案内されることにより軸線方向移動するように案内される。これにより、凹部84を省略できかつ押圧部材76を単に環状ハウジング274に当接させるだけでよい。圧縮弁組立体260の機能および作動は、圧縮弁組立体60について上述した機能および作動と同じである。
【0026】
伸長弁組立体264は、弁ディスク92と、環状ハウジングすなわちインターフェース294と、1つ以上の押圧部材96と、1つ以上のスペーサ98と、リテーナ80とを有している。かくして、伸長弁組立体264は、該伸長弁組立体264が環状ハウジングすなわちインターフェース294を有する点およびピストンロッド234のリベット形端部268によりリテーナ80がナット68に置換されている点を除き、伸長弁組立体64と同じである。インターフェース294は、リテーナ80上で案内されることにより、軸線方向に移動するように案内される。これにより、凹部104を省略できかつ押圧部材96を単に環状ハウジング294に当接させるだけでよい。リベット形端部268はピストン組立体232の組立体を維持しかつピストンロッド34およびナット68に関連するねじ連結部を省略できる。ピストン組立体232はまた、押圧部材76、96により加えられる荷重を制御すべく、シム106を使用している。
【0027】
図9を参照すると、ここにはピストン組立体332が示されている。ピストン組立体332は、圧縮弁組立体260と、マルチピースピストン本体62と、伸長弁組立体364とを有している。ピストンロッド34には小径セクション66が形成されており、該小径セクション66には、圧縮弁組立体260、マルチピースピストン本体62および伸長弁組立体364が配置されている。ピストン組立体332は、ナット368を用いてピストンロッド34の小径セクション66に固定されている。圧縮弁組立体260はピストンロッド34のショルダに当接し、マルチピースピストン本体62は圧縮弁組立体260に当接し、伸長弁組立体364はマルチピースピストン本体62に当接し、ナット368は伸長弁組立体364に当接している。
【0028】
圧縮弁組立体260は、弁ディスク72と、環状ハウジングすなわちインターフェース274と、1つ以上の押圧部材76と、1つ以上のスペーサ78と、リテーナ80とを有している。かくして、圧縮弁組立体260は、該圧縮弁組立体260が環状ハウジングすなわちインターフェース274を有している点を除き、圧縮弁組立体60と同じである。インターフェース274は、リテーナ80上で案内されることにより軸線方向移動するように案内される。これにより、凹部84を省略できかつ押圧部材76を単に環状ハウジング274に当接させるだけでよい。圧縮弁組立体260の機能および作動は、圧縮弁組立体60について上述した機能および作動と同じである。
【0029】
伸長弁組立体364は、複数の弁ディスク392と、1つ以上のスペーサ394と、リテーナ396とを有している。1つの弁ディスク392が、マルチピースピストン本体62内に延びている複数の伸長通路102をカバーする。1つ以上のスペーサ394が、マルチピースピストン本体62とは反対側の弁ディスク392の側面に当接する。マルチピースピストン本体62とナット368との間には、複数の弁ディスク392、1つ以上のスペーサ394およびリテーナ396がクランプされている。シム106は、圧縮弁組立体260の押圧部材76により加えられる荷重を制御する。伸長ストローク中のショックアブソーバ20の減衰特性は、弁ディスク392の曲りすなわち撓みにより制御される。下方作動チャンバ46から上方作動チャンバ44への流体の流れは弁ディスク392により防止されるが、上方作動チャンバ44から下方作動チャンバ46への流体の流れは、弁ディスク92の曲りすなわち撓みにより許容される。
【0030】
ショックアブソーバ20の伸長ストローク中、上方作動チャンバ44内の流体圧力は増大しかつ下方作動チャンバ46内の流体圧力は減少する。この流体圧力の差は、弁ディスク392に対し、該弁ディスク392を曲げようすなわち撓ませようと作用する。この流体圧力の差はまた、圧力弁組立体260の弁ディスク72に対し、該弁ディスク72をマルチピースピストン本体62に係合させるように作用する。流体圧力差が増大すると、弁ディスク92が曲りすなわち撓んで、流体が、上方作動チャンバ44から、複数の伸長通路入口102a、複数の伸長開口102d、複数の伸長通路出口102bおよび弁ディスク392を通って下方作動チャンバ46内に流入する。
【符号の説明】
【0031】
20、26 ショックアブソーバ
32 ピストン組立体
60 圧縮弁組立体
62 マルチピースピストン本体
64 伸長弁組立体
74、94 環状ハウジング(インターフェース)
76、96 押圧部材
82c、102c アイランド・ランド
114 チューニングディスク