特許第5738389号(P5738389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738389
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】散気装置及び散気方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/20 20060101AFI20150604BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20150604BHJP
   B01F 5/00 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   C02F3/20 Z
   B01F3/04 A
   B01F3/04 Z
   B01F5/00 Z
【請求項の数】18
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-258473(P2013-258473)
(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公開番号】特開2015-112581(P2015-112581A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】株式会社ウェルシィ
(73)【特許権者】
【識別番号】000109369
【氏名又は名称】ティビーアール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 達郎
(72)【発明者】
【氏名】駒形 淳
(72)【発明者】
【氏名】恩田 真
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−213680(JP,A)
【文献】 特開2012−250176(JP,A)
【文献】 米国特許第05152888(US,A)
【文献】 実開平06−063128(JP,U)
【文献】 特開2009−028720(JP,A)
【文献】 特開2003−005626(JP,A)
【文献】 特開2003−053381(JP,A)
【文献】 特開2004−243207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/14−3/26
C02F 7/00
B01F 1/00−5/26
B05B 1/00−3/18
B05B 7/00−9/08
C02F 1/20−1/26
C02F 1/30−1/38
C02F 1/70−1/78
C02F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底板と上蓋とに気泡の流通路が確保され、気泡の微細化手段が充填された充填ケースと、前記充填ケースに対し下方から空気を供給する空気供給手段とが、ばっ気水槽内に設置され、
前記気泡の微細化手段は、幹部から枝部が分岐した樹状構造を有する紐状体であり、前記幹部及び枝部のいずれか一方が他方よりも大径をなし、該大径をなす部分によって前記充填ケース内での気泡の浮上を妨げて充填ケース内の滞留時間を延ばす、気泡の浮上阻害手段が構成され、他方の小径をなす部分によって、前記充填ケース内での気泡の浮上に伴い気泡を分断する気泡の微細化手段が構成されていることを特徴とする散気装置。
【請求項2】
前記気泡の微細化手段は、幹部と該幹部よりも細径に構成され該幹部から分岐する複数の環状枝部とを含み、少なくとも前記幹部が前記充填ケースの上下方向と交差する方向に向くようにして、前記充填ケースに充填されていることを特徴とする請求項1記載の散気装置。
【請求項3】
前記気泡の微細化手段の環状枝部には、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工されてなるものが含まれることを特徴とする請求項2項記載の散気装置。
【請求項4】
前記気泡の微細化手段の幹部は組紐構造を有し、前記環状枝部は、前記組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成されていることを特徴とする請求項2又は3記載の散気装置。
【請求項5】
前記組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸が用いられ、前記環状枝部の各々が、前記太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成されていることを特徴とする請求項4記載の散気装置。
【請求項6】
前記環状枝部は、前記幹部の延長方向と交差する方向に対を成して突出していることを特徴とする請求項から5のいずれか1項記載の散気装置。
【請求項7】
前記幹部が捩れて、前記環状枝部が、前記幹部の延長方向に沿って、らせん状に並ぶように構成されていることを特徴とする請求項から6のいずれか1項記載の散気装置。
【請求項8】
前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの上下方向に積層されて、前記気泡の微細化手段が前記充填ケース内で所定のかさ密度を有していることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の散気装置。
【請求項9】
前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層されていることを特徴とする請求項8記載の散気装置。
【請求項10】
少なくとも底板と上蓋とに気泡の流通路が確保された充填ケース内に、幹部から枝部が分岐した樹状構造を有する紐状体を充填し、前記幹部及び枝部の一方を他方よりも大径に構成し、大径をなす部分によって前記充填ケース内での気泡の浮上を妨げて充填ケース内の滞留時間を延ばす、気泡の浮上阻害手段を構成し、他方の小径をなす部分によって、前記充填ケース内での気泡の浮上に伴い気泡を分断する気泡の微細化手段を構成して、前記充填ケースと、前記充填ケースに対し下方から空気を供給する空気供給手段とを、ばっ気水槽内に設置し、前記空気供給手段から前記ばっ気水槽に溜められた液中に空気を噴出させることを特徴とする散気方法。
【請求項11】
前記気泡の微細化手段は、幹部と該幹部よりも細径に構成され該幹部から分岐する複数の環状枝部とを含み、少なくとも前記幹部が前記充填ケースの上下方向と交差する方向に向くようにして、前記充填ケースに充填することを特徴とする請求項10記載の散気方法。
【請求項12】
前記気泡の微細化手段の環状枝部には、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工されたものを含むことを特徴とする請求項11記載の散気方法。
【請求項13】
前記気泡の微細化手段の幹部を組紐構造とし、前記環状枝部を、前記組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成することを特徴とする請求項11又は12記載の散気方法。
【請求項14】
前記組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸を用い、前記環状枝部の各々を、前記太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成することを特徴とする請求項13記載の散気方法。
【請求項15】
前記環状枝部を、前記幹部の延長方向と交差する方向に対を成すように突出させることを特徴とする請求項11から14のいずれか1項記載の散気方法。
【請求項16】
前記幹部を捩り、前記環状枝部が、前記幹部の延長方向に沿って、らせん状に並ぶように構成することを特徴とする請求項11から15のいずれか1項記載の散気方法。
【請求項17】
前記気泡の微細化手段が前記充填ケース内で所定のかさ密度を有するように、前記気泡の微細化手段の幹部を、前記充填ケースの上下方向に積層することを特徴とする請求項10から16のいずれか1項記載の散気方法。
【請求項18】
前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層することを特徴とする請求項17記載の散気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散気装置及び散気方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性汚泥処理等で使用される散気装置は、ばっ気水槽に貯留された活性汚泥中に空気を供給するものであり、これまでにも多種類のものが開発、実用化され、それぞれ空気中の酸素が水に効率良く溶解するための工夫が凝らされている。それらの種類を大別すると微細気泡式と機械式に分けることができる。
微細気泡式散気装置の場合は、ブロワから活性汚泥装置へ供給される空気を、微細気泡式散気装置で気泡径を小さくし気泡の表面積を大きくして、空気中の酸素が水に効率良く溶解するようにしたものがある(例えば、特許文献1、2)。又、機械式散気装置の場合は、微細気泡式散気装置の代わりにモータを擁する機械で大きな気泡を微粉砕し、同様に空気中の酸素が水に効率良く溶解するようにしたものもある(例えば、特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−24974号公報
【特許文献2】特開2010−51854号公報
【特許文献3】特開2000−301188号公報
【特許文献4】特開2003−53371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来型の散気装置のうち、微細気泡式散気装置では微細孔を設けるための特殊加工が必要で部材が高価になること、又気泡が微細孔を通過する際の圧力損失が大きく、空気を供給するためのブロワ動力が大きくなる欠点があった。又、機械式散気装置では、機械が大きく装置が高価で、かつ大きな気泡を微粉砕するためのモータ動力が大きくなる欠点があった。更に、両方式とも部材破損等の事故や定期的なメンテナンスには、ばっ気水槽の水を抜く、あるいは重機で吊り上げなければならない等の煩わしさがあった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空気を供給するためのブロワにかかる余分な負荷がなく、簡単な構造で酸素溶解効率が高く、且つメンテナンスが容易な散気装置を提供することにある。
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)少なくとも底板と上蓋とに気泡の流通路が確保され、気泡の微細化手段が充填された充填ケースと、前記充填ケースに対し下方から空気を供給する空気供給手段とが、ばっ気水槽内に設置され、前記気泡の微細化手段は、幹部から枝部が分岐した樹状構造を有する紐状体であり、前記幹部及び枝部のいずれか一方が他方よりも大径をなし、該大径をなす部分によって前記充填ケース内での気泡の浮上を妨げて充填ケース内の滞留時間を延ばす、気泡の浮上阻害手段が構成され、他方の小径をなす部分によって、前記充填ケース内での気泡の浮上に伴い気泡を分断する気泡の微細化手段が構成されている散気装置。(請求項1)。
【0007】
本項に記載の散気装置は、ばっ気水槽に溜められた液中に、空気供給手段から空気が供給されると、その空気が気泡となって、充填ケースの底板の、気泡の流通路を介して充填ケース内へと進入する。そして、充填ケースに充填された気泡の微細化手段を構成する、幹部から枝部が分岐した樹状構造を有する紐状体によって、気泡の更なる浮上が妨害される。幹部及び枝部のいずれか一方が他方よりも大径をなしており、大径をなす部分によって、気泡の浮上阻害手段が構成され、充填ケース内での気泡の浮上を妨げて充填ケース内の滞留時間を延ばすこととなる。又、他方の小径をなす部分によって、気泡の微細化手段が構成され、充填ケース内での気泡の浮上に伴い気泡を分断するものである。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記気泡の微細化手段は、幹部と該幹部よりも細径に構成され該幹部から分岐する複数の環状枝部とを含み、少なくとも前記幹部が前記充填ケースの上下方向と交差する方向に向くようにして、前記充填ケースに充填されている散気装置(請求項2)。
【0009】
本項に記載の散気装置は、ばっ気水槽に溜められた液中に、空気供給手段から空気が供給されると、その空気が気泡となって、充填ケースの底板の、気泡の流通路を介して充填ケース内へと進入する。そして、充填ケースに充填された気泡の微細化手段を構成する紐状体の、幹部と、該幹部よりも細径に構成され該幹部から分岐する複数の環状枝部とによって、気泡の更なる浮上が妨害される。特に、充填ケースの上下方向と交差する方向に向けて充填された幹部によって、気泡の浮上が妨げられることで、気泡は、幹部を避けるように蛇行する浮上経路を辿り、充填ケース内の滞留時間が長くなることとなる。この際、環状枝部によっても気泡の浮上が妨げられるが、環状枝部は幹部よりも細径に構成されているが故に、環状枝部の直径と同等かそれ以上の大きさの気泡は、環状枝部により分断されて微細化されることとなる。しかも、幹部に対して環状枝部が環状に分岐し、突出していることにより、気泡が浮上する際に、環状に連続する環状枝部のいずれかの部位で、気泡は上述の分断作用を受け、気泡の微細化が促進されるものである。
【0010】
(3)上記(2)項において、前記気泡の微細化手段の環状枝部には、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工されてなるものが含まれる散気装置(請求項3)。
本項に記載の散気装置は、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工された環状枝部の各部において、気泡の浮上経路の蛇行作用と、環状枝部による気泡の分断作用とが得られるものとなる。
なお、採用される「かさ高加工」としては、例えば、タスラン加工やバルキ加工が挙げられる。
【0011】
(4)上記(2)又は(3)項において、前記気泡の微細化手段の幹部は組紐構造を有し、前記環状枝部は、前記組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成されている散気装置(請求項4)。
本項に記載の散気装置は、気泡の微細化手段の組紐構造を有する幹部によって、気泡の浮上経路の蛇行作用が得られるものである。又、組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成された環状枝部によって、気泡の分断作用が得られるものとなる。又、本項に係る気泡の微細化手段は、幹部と環状枝部とが、組紐構造を構成する際に、一連の工程で一体的に構成されるものとなる。
【0012】
(5)上記(4)項において、前記組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸が用いられ、前記環状枝部の各々が、前記太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成されている散気装置(請求項5)。
本項に記載の散気装置は、組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸が用いられることで、単位長さあたりのかさ密度の最適化が図られるものである。すなわち、組紐構造を構成する糸に太い糸と細い糸とが混合して用いられることで、細い糸によるかさ密度を下げることが可能となり、太い糸と細い糸との割合によっても、かさ密度の調整を行うものである。又、上記(5)項のごとく、環状枝部は、組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成されていることから、環状枝部の各々は、太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成され、各々の太さに応じた、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。即ち、環状枝部が太いものほど、気泡の浮上経路の蛇行促進機能が高まり、環状枝部が細いものほど、気泡の微細化促進機能が高まるものとなる。
【0013】
(6)上記()から(5)項において、前記環状枝部は、前記幹部の延長方向と交差する方向に対を成して突出している散気装置(請求項6)。
本項に記載の散気装置は、環状枝部が、幹部の延長方向と交差する方向に対を成して突出することで、環状枝部の各々による、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。
(7)上記()から(6)項において、前記幹部が捩れて、前記複数の環状枝部が、前記幹部の延長方向に沿って、らせん状に並ぶように構成されている散気装置(請求項7)。
本項に記載の散気装置は、幹部が捩れて、複数の環状枝部が、幹部の延長方向に沿ってらせん状に並ぶように構成されていることで、幹部を中心に様々な方向に分岐する環状枝部により、浮上しようとする気泡を捉え、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。
【0014】
(8)上記(1)から(7)項において、前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの上下方向に積層されて、前記気泡の微細化手段が前記充填ケース内で所定のかさ密度を有している散気装置(請求項8)。
本項に記載の散気装置は、気泡の微細化手段の幹部が、充填ケースの上下方向に積層され、充填ケース内で気泡の微細化手段が所定のかさ密度を有していることにより、充填ケースの底板の気泡の流通路を介して充填ケース内へと進入する気泡は、気泡の微細化手段によって更なる浮上が妨害される。そして、幹部を避けるように蛇行する気泡の浮上経路の蛇行促進と、環状枝部による微細化促進とが適切になされ、水中への酸素溶解効率を高めるものとなる。なお、上記機能を発揮する上で好ましい、充填ケースにおける気泡の微細化手段のかさ密度の数値範囲は、本発明者らの鋭意研究の結果、10kg/m〜20kg/mとすることが望ましい。
【0015】
(9)上記(8)項において、前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層されている散気装置(請求項9)。
本項に記載の散気装置は、気泡の微細化手段の幹部が、充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層されていることで、充填ケースの室内が気泡の微細化手段によって満たされる。そして、底板と上蓋との間の全体で、幹部による気泡の浮上経路の蛇行作用と、環状枝部による気泡の分断作用が得られるものとなる。なお、充填ケース内に積層される気泡の微細化手段の幹部が連続して全体として一本からなるものであっても良く、適宜分断された複数の幹部が、積層されたものであっても良い。
又、気泡の微細化手段の積層構造としては、本項に挙げられたものの他にも、充填ケースの中心部から花弁状に幹部が並べられるものや、充填ケースの上下方向と直交する方向に直線状に往復するようにして、幹部が並べられるもの等、様々な構造が適宜採用されるものである。
【0016】
(10)上記(1)から(9)項において、前記充填ケースにおける前記気泡の微細化手段の充填高さが、500mmである散気装置。
本項に記載の散気装置は、充填ケースにおける気泡の微細化手段の充填高さとして、500mmが確保されることで、充填ケースの底板の気泡の流通路を介して充填ケース内へと進入する気泡が、気泡の微細化手段によって更なる浮上が妨害され、幹部を避けるように蛇行する気泡の浮上経路の蛇行促進と、環状枝部による微細化促進とが十分になされ、水中への酸素溶解効率を高めるものとなる。
【0017】
(11)上記(1)から(10)項において、前記充填ケースの底板と上蓋とが、開口付き板により構成されている散気装置。
本項に記載の散気装置は、開口付き板により構成された底板により、気泡の微細化手段が充填ケース内にて下支えされるものである。そして、底板の開口が気泡の流通路となって、気泡の充填ケース内への進入を許容するものである。一方、開口付き板により構成された上蓋により、充填ケース内の気泡の微細化手段が気泡と共に浮上し、充填ケースから脱落することを防ぐものである。又、上蓋の開口が気泡の流通路となって、ばっ気水槽の液中へと、微細化された気泡を散気するものである。
【0018】
(12)上記(11)項において、前記充填ケースの底板と上蓋とが、前記充填ケースに対し着脱自在に構成され、前記底板に吊ワイヤーが固定されかつ前記上蓋に前記吊ワイヤーが挿通ないし固定され、前記吊ワイヤーの上端部が前記ばっ気水槽の液面上に留められている散気装置。
本項に記載の散気装置は、上端部がばっ気水槽の液面上に留められている吊ワイヤーを引き上げることで、充填ケースに対し着脱自在に構成された底板及び上蓋と共に、底板及び上蓋に挟持された状態の気泡の微細化手段をばっ気水槽内の充填ケースから引き上げるものである。又、気中から、気泡の微細化手段を底板及び上蓋に挟持した状態で吊ワイヤーを適宜緩めて、ばっ気水槽内の充填ケースに、底板及び上蓋と共に気泡の微細化手段をセットするものである。
【0019】
(13)上記(12)項において、前記ばっ気水槽には、前記気泡の微細化手段が前記底板と前記上蓋とに挟持された状態で、これらを前記ワイヤーによって一体に昇降させるための、上下方向に延びるガイドレールが設けられている散気装置。
本項に記載の散気装置は、吊ワイヤーにより、底板と上蓋とに挟持された状態の気泡の微細化手段を充填ケースから引き上げ、又は、充填ケースにセットする際に、ばっ気水槽に設けられた、上下方向に延びるガイドレールにより、底板、上蓋及び気泡の微細化手段の昇降ガイドがなされるものである。特に、充填ケースにセットする際には、ばっ気水槽の液中に設置された充填ケースに対する位置決めが確実になされることとなる。
【0020】
(14)上記(1)から(13)項において、前記空気供給手段は、前記ばっ気水槽の底面と前記充填ケースとに設けられた空間部に向けて開口する空気配管を備える散気装置。
本項に記載の散気装置は、空気供給手段の、ばっ気水槽の底面と充填ケースとに設けられた空間部に向けて開口する空気配管から液中へと空気を噴出させることで、充填ケースに対し下方から空気を供給するものである。
【0021】
(15)上記(14)項において、前記空気配管は、前記ばっ気水槽の液面上方から底面に沿って延びる主配管と、該主配管から複数点で分岐する分岐配管とを含み、該分岐配管の先端が開口している散気装置。
本項に記載の散気装置は、空気配管が、ばっ気水槽の液面上方から底面に沿って延びる主配管から、先端が開口する分岐配管が複数点で分岐することにより、主配管に沿って分岐する各分岐配管の先端から液中へと空気を噴出させることで、主配管に沿った広範囲にわたり、充填ケースに対し下方から空気を供給するものである。しかも、分岐配管の先端の開口がそのまま空気の噴出口となっているので、目詰まりし難く、無駄な圧力損失も生じない。又、主配管から直接空気を噴出させるのではなく分岐配管を介することで、主配管の基端寄りと先端寄りとでの空気の噴出量の偏りを防ぐものである。
【0022】
(16)少なくとも底板と上蓋とに気泡の流通路が確保された充填ケース内に、幹部から枝部が分岐した樹状構造を有する紐状体を充填し、前記幹部及び枝部の一方を他方よりも大径に構成し、大径をなす部分によって前記充填ケース内での気泡の浮上を妨げて充填ケース内の滞留時間を延ばす、気泡の浮上阻害手段を構成し、他方の小径をなす部分によって、前記充填ケース内での気泡の浮上に伴い気泡を分断する気泡の微細化手段を構成して、前記充填ケースと、前記充填ケースに対し下方から空気を供給する空気供給手段とを、ばっ気水槽内に設置し、前記空気供給手段から前記ばっ気水槽に溜められた液中に空気を噴出させる散気方法(請求項10)。
(17)上記(16)項において、前記気泡の微細化手段は、幹部と該幹部よりも細径に構成され該幹部から分岐する複数の環状枝部とを含み、少なくとも前記幹部が前記充填ケースの上下方向と交差する方向に向くようにして、前記充填ケースに充填する散気方法(請求項11)。
(18)上記(17)項において、前記気泡の微細化手段の環状枝部には、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工されたものを含む散気方法(請求項12)。
【0023】
(19)上記(17)(18)項において、前記気泡の微細化手段の幹部を組紐構造とし、前記環状枝部を、前記組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成する散気方法(請求項13)。
(20)上記(19)項において、前記組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸を用い、前記環状枝部の各々を、前記太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成する散気方法(請求項14)。
(21)上記(17)から(20)項において、前記環状枝部を、前記幹部の延長方向と交差する方向に対を成すように突出させる散気方法(請求項15)。
(22)上記(17)から(21)項において、前記幹部を捩り、前記複数の環状枝部が、前記幹部の延長方向に沿って、らせん状に並ぶように構成することを特徴とする請求項10から15のいずれか1項記載の散気方法(請求項16)。
【0024】
(23)上記(16)から(22)項において、前記気泡の微細化手段が前記充填ケース内で所定のかさ密度を有するように、前記気泡の微細化手段の幹部を、前記充填ケースの上下方向に積層する散気方法(請求項17)。
(24)上記(23)項において、前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層する散気方法。
そして、上記(16)から(24)項記載の散気方法は、上記(1)から(9)項記載の散気装置によって実行されることで、上記(1)から(9)項記載の散気装置と同様の作用が得られるものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明はこのように構成したので、空気を供給するためのブロワにかかる余分な負荷がなく、簡単な構造で酸素溶解効率が高く、且つメンテナンスが容易な散気装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係る散気装置の構成を示す斜視図(部分透視図)である。
図2】本発明の実施の形態に係る散気装置の、気泡の微細化手段を模式的に示したものであり、(a)は断面図、(b)は側面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る散気装置の、気泡の微細化手段の具体例を示す斜視図である。
図4図1の例におけるばっ気装置を備えるばっ気水槽の、具体的設置態様を示す模式図である。
図5】本発明の実施の形態に係る散気装置を備える、角型ばっ気水槽を示す斜視図(部分透視図)である。
図6図5の角型ばっ気水槽に採用される空気配管を示す斜視図である。
図7図4の例における酸素溶解効率を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る散気装置10は、図1にその主要構成が概略的に示されているように、気泡の微細化手段12と、底板14と上蓋16とに気泡の流通路18が確保され、気泡の微細化手段12が充填される充填ケース20と、充填ケース20に対し下方から空気Airを供給する空気供給手段22とが、ばっ気水槽40内に設置された構成を有するものである。
【0028】
気泡の微細化手段12は、図2に概略的に示されるように、幹部122から枝部124が分岐した樹状構造を有する紐状体である。より具体的には、幹部122と、幹部122よりも細径に構成され幹部122から分岐する複数の環状枝部124と、を含むものである。図示の例では、幹部122は組紐構造を有しており、環状枝部124は、組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成されているが、適宜、他の構造を採用することとしても良い。又、図示の例では、組紐構造を構成する糸には太さの異なる二種類の糸が用いられ、環状枝部124の各々が、太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成されている。図2の例では、気泡の微細化手段12は、幹部122は2本の太い糸と4本の細い糸とによって組紐構造が構成されている。そして、符号124Aで示される環状枝部は、太い糸によって構成されており、符号124Bで示される環状枝部は、4本の細い糸によって構成されている。
【0029】
ここで、太い糸で構成された環状枝部124Aは、ポリプロピレン、金属類、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン、塩化ビニール、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS等からなるフィラメント糸により構成されている。又、後述する理由から、環状枝部124Aを構成する太い糸には、水よりも比重の軽い材料を選択する場合もある。そして、フィラメント糸が複数結束し、かつ、かさ高加工されたものである。具体的には、芯糸に対して複数の浮糸が絡みつくように、タスラン加工によって結束されたものや、芯糸が存在せず複数の浮糸がバルキ加工(懸縮加工)によって結束されたもの等が用いられる。又、用いられるフィラメント糸の直径は10μm〜50μmであり、複数のフィラメント糸が結束して、直径2〜4mm程度の糸が構成される。
一方、細い糸によって構成された環状枝部124Bは、直径0.2mm〜0.5mm程度のビニロン糸、ポリプロピレン糸、ナイロン糸等が用いられている。
【0030】
又、環状枝部124は、図2(b)に示されるように、幹部122の延長方向と交差する方向に対を成して突出している。そして、太い糸によって構成された環状枝部124Aと、4本の細い糸によって構成された環状枝部124Bとが、間隔を空けて幹部122の延長方向に交互に配置されている。環状枝部124A、124Bのピッチは一定であることが望ましいが、必要に応じ、結束ピッチを変えることも可能である。
図2(b)に示される例では、幹部122の延長方向に隣接する環状枝部124Aのピッチが7〜10mm程度であり、それらの間に適切な間隔を空けて、環状枝部124Bが配置されている。
【0031】
更に、幹部122が捩れることによって、複数の環状枝部124が、幹部122の延長方向に沿って、らせん状に並ぶように構成されることで、気泡の微細化手段12は、図3に示されるような外観を呈している。なお、幹部122の捩れは、組紐構造を構成する際に、意図的に捩れを与えることで実現することが可能である。
なお、図2(a)の例では、環状枝部124A、124Bは、水滴状を成すようにして、幹部122から放射状に突出し、気泡の微細化手段12は全体として、例えば100mm程度の直径となっている。又、環状枝部124A、124Bの間隔は、幹部122から分岐する部分が狭く、半径方向外側ほど広くなっており、気泡の微細化手段12の半径方向中間位置で、例えば1〜2mm程度となるように構成されている。又、図2(b)、図3は気泡の微細化手段12を部分的に示したものであるが、実際に用いる気泡の微細化手段12は、数10m〜数100mの長さとなっている。
【0032】
このような構造を有する気泡の微細化手段12は、図1に示される充填ケース20の上下方向と交差する方向に向けて充填されている。図1の例では、気泡の微細化手段12の充填方法として、円筒状の充填ケース20の内部に、幹部122が渦巻状に外から中心へ、又、中心から渦巻状に外へと交互に繰り返すようにして、積層する手法を採用している。このようにして積層された気泡の微細化手段12の、充填ケース20におけるかさ密度は、本発明者らの鋭意研究の結果、10kg/m〜20kg/mに調整されることが望ましい。
【0033】
充填ケース20は、ばっ気層22に対して適切な方法で固定された円筒状の壁部30と、底板14と、上蓋16とで構成されたものであり、底板14及び上蓋16は、いずれも、空気の流通路18としての開口付き円形板により構成されている。そして、充填ケースの底板14と上蓋16とは、充填ケース20の壁部30に対し着脱自在に構成されている。底板14及び上蓋16は樹脂製でも良いが、特に上蓋16は、気泡の微細化手段12の浮上防止対策であることに加え、積層された気泡の微細化手段12の長期の揺動による膨らみを押さえるための機能を有するだけの質量を有していることが好ましい。この観点から、少なくとも上蓋16は、鋼製2mm〜5mm程度の厚み(質量)のある、ステンレス等の鋼製であることが望ましい。なお、図1には、底板14の空気の流通路が図示されていないが、底板14の形状は上蓋16と同様である。
【0034】
更に、底板14には吊ワイヤー32が固定され、かつ、上蓋16に吊ワイヤー32が挿通ないし固定され、吊ワイヤー32の上端部に留め環34が固定されて、この留め環34が、ばっ気水槽40の液面上の壁36に固定されたフック38に留められている。よって、気泡の微細化手段12は底板14と上蓋16とに挟持された状態で、吊ワイヤー32により吊下げられ、充填ケース20内に位置決めされる。そして、積層された気泡の微細化手段12が目詰まりしたような場合には、吊ワイヤー32を用いて、底板14及び上蓋16と共に気泡の微細化手段12を水面上に引き上げ、気中で洗浄後に元の位置に再装填できる構成となっている。なお、充填ケース20の壁部30に、少なくとも底板14の下降限度位置を定めるブラケットを設け、常時吊ワイヤー32に気泡の微細化手段12、底板14及び上蓋16の荷重が加わらないようにしても良い。
【0035】
図4には、図1に示される散気装置10の具体的寸法が例示されている。この散気装置10は比較的小型に構成されたもので、特に試験装置に適するように構成されている。ばっ気水槽40は、内径200mm、高さ2100mmの透明円筒形をなしている。又、充填ケース20は、同じく円筒形で内径100mm、高さ1600mmの透明円筒形をなしている。そして、充填ケース20は、有効水深1800mmの中間に位置し、上下とも循環流のために高さ方向で100mmの空隙距離を設けている。充填ケース20には、気泡の微細化手段12を500mmの高さまで充填している。
ばっ気水槽40の底面と充填ケース20との間には、100mmの高さの空間部を設け、この空間部に向けて、空気供給手段22の配管噴出部分44(図1)が開口するように設置される。空気供給手段22を構成するブロワ42から供給される空気は、内径20mmの配管で充填ケース20の下部から噴出するようになっており、その先端部は加工なく配管が切断された状態、すなわち、配管噴出部分44(図1)の口径は、配管の内径と同じく20mmとなっている。
【0036】
配管噴出部分44から噴出された気泡は、充填ケース20内の高さ500mmに充填された気泡の微細化手段12を通じて充填ケース20上部の液面WLに達する。この気泡の上昇力で充填ケース20内の水が上向流となり、水面WL直下では矢印Sで示される旋回流を生じ、これが循環流となって再び下部の内筒内へ吸い込まれることになる。
空気供給手段22の空気噴出部44から噴出される気泡径は10〜20mm程度であるが、充填ケース20の気泡の微細化手段12の充填層を気泡が通過する間に、環状枝部124で気泡が分割すなわち切断されるため、気泡の微細化手段12の充填層を通り抜けた気泡の径は、大小交えた状態でかつ大きな気泡径で約5mmに微細化される。又、幹部122により気泡の垂直上昇を妨げることとなり、気泡の微細化手段12の充填層を気泡が通過している間に幹部122にぶつかった気泡が横にズレて、気泡が蛇行する状態が目視できる。気泡が横にズレることにより水中の気泡保持時間が長くなり酸素溶解効率向上に貢献することとなる。
【0037】
図5には、本発明の実施の形態に係る散気装置10を備える角型のばっ気水槽46が例示されている。図5の説明に際し、図1図4の例と同一部分、若しくは相当する部分については、同一符号で示している。又、一部図示を省略した部分については、適宜、図1図4を参照されたい。
さて、図5の例は、実用化に適したものであり、充填ケース20は樹脂製又は鋼製であり、無底無蓋の四角い箱状の壁部30と、この壁部30内に嵌入可能な四角い底板14(図示省略)及び上蓋16とからなるものである。又、底板14及び上蓋16には、流通路18としての開口が各々形成さている。
【0038】
壁部30の、短手方向の幅は50mm〜200mmを標準としている。一方、壁部30の長手方向の寸法は、ばっ気水槽46の寸法に合せて、必要な空気供給能力を発揮する値に設定される。そして、気泡の微細化手段12は、充填ケース20の長手方向を往復するようにして多段に積層される態様で、その内部に充填される。壁部30の鉛直方向の高さは、気泡の微細化手段12の充填高さ500mmに底板14及び上蓋16の厚みを加えた高さ合計よりも、100mm〜300mm 高い構造にしている。この時、壁部30の上端と上蓋16とは最低50mmの鉛直距離を設けることが必要である。これは空気による揺動で上蓋16が壁部30からはみ出し、脱落することを防ぐためである。又、壁部30の下端と底板14との間も同様に最低50mm(図4参照)の鉛直距離を設けることが必要である。これは供給された空気が壁部30の外に漏れ出すことを防ぐためである。
【0039】
更に、ばっ気水槽46には、気泡の微細化手段12が底板14と上蓋16とに挟持された状態で、これらを吊ワイヤー32によって一体に昇降させるための、上下方向に延びるガイドレール48が設けられている。ガイドレール48は、調達の容易さと耐食性とを考慮して、ステンレス製等の汎用チャンネル材を用いることが好ましいが、必要な耐久性が確保できるものであれば、その他の金属や樹脂製のチャンネル材、若しくは、専用の断面コ字状部材を用いることとしても良い。壁部30はこのガイドレール48に設けられたストッパー(図示省略)で下部固定され、ばっ気水槽の底面に対して高さ50mm〜100mmの空間を開けて保持されている。
ガイドレール48の上部先端は、作業性を考慮し、吊ワイヤー32を掛け置くためのフック38が、ばっ気水槽46の壁面の、液面より高い位置に設けられている。ばっ気水槽46の上面にカバーを設ける場合は、吊ワイヤー32による気泡の微細化手段12、底板14及び上蓋16の出し入れを考慮し、開閉可能な蓋を適宜設けることとする。
【0040】
又、本例の空気供給手段22は、図6に示される空気配管52を備えている。空気配管52は、ばっ気水槽46の底面50と充填ケース20との間に設けられた空間部に向けて開口するものである。そして、ばっ気水槽46の液面上方から底面50に沿って延びる主配管(ヘッダー配管)54と、主配管54から複数点で分岐する分岐配管56とを含み、分岐配管56の先端が、配管噴出部分44として開口している。本例においても、配管噴出部分44(図1)の口径は、分岐配管56の内径と同じくなっている。なお、主配管54の先端部はキャップ58によって塞がれている。又、空気配管52はブロワ42(図4参照)に接続されている。
【0041】
なお、分岐配管56先端の配管噴出部分44は、充填ケース20の壁部30の1面と鉛直位置がほぼ一致するように設置するのが良い。これは配管噴出部分44から噴出する空気が、噴出した際の勢いで横走りすることを考慮し、充填ケース20の中央付近で空気泡が鉛直方向に上昇していくように配慮したものである。
【0042】
又、分岐配管56の空気噴出部分44が主配管54に単に開口穴を並べる構造でなく、分岐配管56の先端部としている理由は、次の通りである。これとは別の形態として、例えば、主配管54に、直接的に開口穴を小さく形成して発生気泡を小さくする手法を採用した場合は、開口穴が目詰まりし易く、且つ圧力損失が伴いブロワの吐出圧の上昇を招くことから、これを避ける意図である。一方、主配管54に直接的に開口穴を大きく形成する手法を採用した場合は、供給空気の上流側開口穴からの空気の出方が多く、主配管54の先端部のキャップ56側からの空気の出方が少ない状態となり、充填ケース20へと供給される空気量の不均一性が生じることとなるため、これを防ぐ意図である。
【0043】
なお、ガイドレール48間の距離が長くなり、気泡の微細化手段12、底板14及び上蓋16の質量が重く、吊ワイヤー32による吊り上げ又は吊り下げが困難な場合は、ガイドレール48の間に、ガイドレール48と内幅、長さが等しいH型鋼等を、中間ガイドレールとして配する。そして、充填ケース20及び気泡の微細化手段12を、これらのガイドレールの間に、2分割や3分割にして配置することで、気泡の微細化手段12、底板14及び上蓋16の質量を軽くしても良い。
更には、散気装置10の配置を、図6に示されるように、ばっ気水槽46の長手方向の中央一か所として、相対方向の旋回流を生じさせるケースのみでなく、適宜、ばっ気水槽46の長手方向の複数箇所に複数の散気装置を配することや、設置方向を変えて複数設置する等、様々な配置が可能である。
【0044】
上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。
本発明の実施の形態に係る散気装置10は、ばっ気水槽40、46に溜められた液中に、空気供給手段22から空気Airが供給されると、その空気が気泡となって、充填ケース20の底板14の、気泡の流通路18を介して充填ケース20内へと進入する。そして、充填ケース20に充填された気泡の微細化手段12を構成する、幹部122から環状枝部124が分岐した樹状構造を有する紐状体によって、気泡の更なる浮上が妨害される。しかも、幹部122が環状枝部124よりも大径をなしており、大径をなす幹部122によって、気泡の浮上阻害手段が構成され、充填ケース20内での気泡の浮上を妨げて充填ケース20内の滞留時間を延ばすこととなる。又、小径をなす環状枝部124によって、気泡の微細化手段が構成され、充填ケース20内での気泡の浮上に伴い気泡を分断することが可能となる。
【0045】
又、本発明の実施の形態に係る散気装置10は、充填ケース20に充填された気泡の微細化手段を構成する紐状体の、幹部122と、幹部122よりも細径に構成され幹部122から分岐する複数の環状枝部124とによって、気泡の更なる浮上が妨害される。特に、充填ケース20の上下方向と交差する方向に向けて充填された幹部122によって、気泡の浮上が妨げられることで、気泡は、幹部122を避けるように蛇行する浮上経路を辿り、充填ケース20内の滞留時間が長くなることとなる。この際、環状枝部124によっても気泡の浮上が妨げられるが、環状枝部124が幹部122よりも細径に構成されているが故に、環状枝部124の直径と同等かそれ以上の大きさの気泡は、環状枝部124により分断されて微細化されることとなる。しかも、幹部122に対して環状枝部124が環状に分岐し、突出していることにより、気泡が浮上する際に、環状に連続する環状枝部124のいずれかの部位で、気泡は上述の分断作用を受け、気泡の微細化が促進されるものである。
【0046】
なお、環状枝部124Aが、ポリプロピレン等の水よりも比重の軽い材料により構成されている場合には、幹部122から分岐した環状枝部124が上方に浮上する姿勢となり、浮上する気泡を、環状に連続する環状枝部124のいずれかの部位で捕らえ易くなり、気泡の分断を促進するものとなる。
又、本発明の実施の形態に係る散気装置10は、環状枝部124が、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工されていることにより、環状枝部124の各部において、気泡の浮上経路の蛇行作用と、環状枝部による気泡の分断作用が得られるものとなる。
【0047】
又、本発明の実施の形態に係る散気装置10は、気泡の微細化手段12の組紐構造を有しており、幹部122によって、気泡の浮上経路の蛇行作用が得られるものである。又、組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成された環状枝部124によって、気泡の分断作用が得られるものとなる。又、気泡の微細化手段12は、幹部122と環状枝部124とが、組紐構造を構成する際に、一連の工程で一体的に構成されるものであるから、幹部から枝部が分岐した樹状構造を、連続的に生産する事が容易となる。
【0048】
又、本発明の実施の形態に係る散気装置10は、組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸が用いられることで、単位長さあたりのかさ密度の最適化が図られるものである。すなわち、組紐構造を構成する糸に太い糸と細い糸とが混合して用いられることで、細い糸によるかさ密度を下げることが可能となり、太い糸と細い糸との割合によって、かさ密度の調整を行うものである。又、環状枝部124は、組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成されていることから、環状枝部124A、124Bの各々は、太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成され、環状枝部124A、124Bの各々の太さに応じた、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。即ち、太い環状枝部124Aでは、気泡の浮上経路の蛇行促進機能が高まり、細い環状枝部124Bでは、気泡の微細化促進機能が高まるものとなる。
【0049】
又、本発明の実施の形態に係る散気装置10は、環状枝部124が、幹部122の延長方向と交差する方向に対を成して突出することで、各環状枝部124による、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。
更に、幹部122が捩れて、複数の環状枝部124が、幹部122の延長方向に沿ってらせん状に並ぶように構成されていることで、幹部122を中心に様々な方向に分岐する環状枝部124により、浮上しようとする気泡を捉え、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。
【0050】
又、本発明の実施の形態に係る散気装置10は、充填ケース20内で気泡の微細化手段12が所定のかさ密度(例えば10kg/m〜20kg/m)を有していることにより、充填ケース20の底板14の気泡の流通路18を介して充填ケース20内へと進入する気泡は、気泡の微細化手段12によって更なる浮上が妨害される。そして、幹部122を避けるように蛇行する気泡の浮上経路の蛇行促進と、環状枝部124による微細化促進とが適切になされ、水中への酸素溶解効率を高めることが可能となる。
【0051】
又、本発明の実施の形態に係る散気装置10は、気泡の微細化手段12の幹部122が、充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層されていることで、充填ケース20の室内が気泡の微細化手段によって満たされる。そして、底板14と上蓋16との間の全体で、幹部122による気泡の浮上経路の蛇行作用と、環状枝部124による気泡の分断作用が得られるものとなる。
【0052】
又、充填ケース20における気泡の微細化手段12の充填高さとして、500mmが確保されることで、充填ケース20の底板14の気泡の流通路18を介して充填ケース20内へと進入する気泡が、気泡の微細化手段12によって更なる浮上が妨害され、幹部122を避けるように蛇行する気泡の浮上経路の蛇行促進と、環状枝部124による微細化促進とが十分になされ、水中への酸素溶解効率を高めるものとなる。
【実施例】
【0053】
図7の図表には、図4に示された、ばっ気水槽40において、操作条件を、ばっ気水槽有効容量60L 、気泡の微細化手段12の充填高さ0mm〜750mm、幹部122の直径8mm、環状枝部124Aの直径100mm、環状枝部124Bの直径100mm、とした場合の、供給空気量10L/分での総括酸素移動容量係数(20℃換算) KLa20と酸素溶解効率(20℃、4m 水深換算)を求めた結果が、まとめられている。
なお、KLa20測定に際しては一般細菌等の影響による測定誤差が生じないように、測定前に図4の装置内部を濃度100mg/Lの次亜塩素酸ソーダで殺菌処理した後に水洗浄を行った。
【0054】
図7の図表に示されるように、酸素溶解効率の測定結果は、気泡の微細化手段12の充填高さ0mm、即ち、気泡の微細化手段12がない状態の酸素溶解効率5.4% に対し、気泡の微細化手段12の充填高さ500mmで、酸素溶解効率は19.0%になっており、酸素溶解効率に3倍以上の差異がある。
【0055】
この結果は、単に配管噴出部分44から空気を噴出する場合(気泡の微細化手段12無し)に比して、気泡の微細化手段12を通過させることでブロワ42の仕様、大きさが約3分の1になることを意味している。さらに、従来型の微細孔を有する散気装置では圧力損失が大きくその圧力損失に見合ったブロワの加圧が必要であるのに対し、本発明では散気装置10の圧力損失はゼロで、散気装置10の見合い分の加圧は不要、すなわち水深見合い分以外は無圧で良いことが大きな特徴になっている。
【0056】
又、気泡の微細化手段12の充填高さが500mm未満では、酸素溶解効率は低く、充填高さが500mmを超えても酸素溶解効率はわずかに増加するだけである。すなわち、実施設計にあたっては、ばっ気水槽40の容量が大きくなっても、気泡の微細化手段12の充填高さは約500mm程度であれば良い。この時の気泡の微細化手段12の充填かさ密度は約13kg/mである。
【符号の説明】
【0057】
10:散気装置、12:気泡の微細化手段、122:幹部、124:環状枝部、14:底板、16:上蓋、18:流通路、20:充填ケース
図2
図3
図4
図7
図1
図5
図6