【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来型の散気装置のうち、微細気泡式散気装置では微細孔を設けるための特殊加工が必要で部材が高価になること、又気泡が微細孔を通過する際の圧力損失が大きく、空気を供給するためのブロワ動力が大きくなる欠点があった。又、機械式散気装置では、機械が大きく装置が高価で、かつ大きな気泡を微粉砕するためのモータ動力が大きくなる欠点があった。更に、両方式とも部材破損等の事故や定期的なメンテナンスには、ばっ気水槽の水を抜く、あるいは重機で吊り上げなければならない等の煩わしさがあった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空気を供給するためのブロワにかかる余分な負荷がなく、簡単な構造で酸素溶解効率が高く、且つメンテナンスが容易な散気装置を提供することにある。
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)少なくとも底板と上蓋とに気泡の流通路が確保され、気泡の微細化手段が充填された充填ケースと、前記充填ケースに対し下方から空気を供給する空気供給手段とが、ばっ気水槽内に設置され、前記気泡の微細化手段は、幹部から枝部が分岐した樹状構造を有する紐状体であり、前記幹部及び枝部のいずれか一方が他方よりも大径をなし、該大径をなす部分によって前記充填ケース内での気泡の浮上を妨げて充填ケース内の滞留時間を延ばす、気泡の浮上阻害手段が構成され、他方の小径をなす部分によって、前記充填ケース内での気泡の浮上に伴い気泡を分断する気泡の微細化手段が構成されている散気装置。(請求項1)。
【0007】
本項に記載の散気装置は、ばっ気水槽に溜められた液中に、空気供給手段から空気が供給されると、その空気が気泡となって、充填ケースの底板の、気泡の流通路を介して充填ケース内へと進入する。そして、充填ケースに充填された気泡の微細化手段を構成する、幹部から枝部が分岐した樹状構造を有する紐状体によって、気泡の更なる浮上が妨害される。幹部及び枝部のいずれか一方が他方よりも大径をなしており、大径をなす部分によって、気泡の浮上阻害手段が構成され、充填ケース内での気泡の浮上を妨げて充填ケース内の滞留時間を延ばすこととなる。又、他方の小径をなす部分によって、気泡の微細化手段が構成され、充填ケース内での気泡の浮上に伴い気泡を分断するものである。
【0008】
(2)上記(1)項において、前記気泡の微細化手段は、幹部と該幹部よりも細径に構成され該幹部から分岐する複数の環状枝部とを含み、少なくとも前記幹部が前記充填ケースの上下方向と交差する方向に向くようにして、前記充填ケースに充填されている散気装置(請求項2)。
【0009】
本項に記載の散気装置は、ばっ気水槽に溜められた液中に、空気供給手段から空気が供給されると、その空気が気泡となって、充填ケースの底板の、気泡の流通路を介して充填ケース内へと進入する。そして、充填ケースに充填された気泡の微細化手段を構成する紐状体の、幹部と、該幹部よりも細径に構成され該幹部から分岐する複数の環状枝部とによって、気泡の更なる浮上が妨害される。特に、充填ケースの上下方向と交差する方向に向けて充填された幹部によって、気泡の浮上が妨げられることで、気泡は、幹部を避けるように蛇行する浮上経路を辿り、充填ケース内の滞留時間が長くなることとなる。この際、環状枝部によっても気泡の浮上が妨げられるが、環状枝部は幹部よりも細径に構成されているが故に、環状枝部の直径と同等かそれ以上の大きさの気泡は、環状枝部により分断されて微細化されることとなる。しかも、幹部に対して環状枝部が環状に分岐し、突出していることにより、気泡が浮上する際に、環状に連続する環状枝部のいずれかの部位で、気泡は上述の分断作用を受け、気泡の微細化が促進されるものである。
【0010】
(3)上記(2)項において、前記気泡の微細化手段の環状枝部には、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工されてなるものが含まれる散気装置(請求項3)。
本項に記載の散気装置は、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工された環状枝部の各部において、気泡の浮上経路の蛇行作用と、環状枝部による気泡の分断作用とが得られるものとなる。
なお、採用される「かさ高加工」としては、例えば、タスラン加工やバルキ加工が挙げられる。
【0011】
(4)上記(2)又は(3)項において、前記気泡の微細化手段の幹部は組紐構造を有し、前記環状枝部は、前記組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成されている散気装置(請求項4)。
本項に記載の散気装置は、気泡の微細化手段の組紐構造を有する幹部によって、気泡の浮上経路の蛇行作用が得られるものである。又、組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成された環状枝部によって、気泡の分断作用が得られるものとなる。又、本項に係る気泡の微細化手段は、幹部と環状枝部とが、組紐構造を構成する際に、一連の工程で一体的に構成されるものとなる。
【0012】
(5)上記(4)項において、前記組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸が用いられ、前記環状枝部の各々が、前記太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成されている散気装置(請求項5)。
本項に記載の散気装置は、組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸が用いられることで、単位長さあたりのかさ密度の最適化が図られるものである。すなわち、組紐構造を構成する糸に太い糸と細い糸とが混合して用いられることで、細い糸によるかさ密度を下げることが可能となり、太い糸と細い糸との割合によっても、かさ密度の調整を行うものである。又、上記(5)項のごとく、環状枝部は、組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成されていることから、環状枝部の各々は、太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成され、各々の太さに応じた、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。即ち、環状枝部が太いものほど、気泡の浮上経路の蛇行促進機能が高まり、環状枝部が細いものほど、気泡の微細化促進機能が高まるものとなる。
【0013】
(6)上記(
2)から(5)項において、前記環状枝部は、前記幹部の延長方向と交差する方向に対を成して突出している散気装置(請求項6)。
本項に記載の散気装置は、環状枝部が、幹部の延長方向と交差する方向に対を成して突出することで、環状枝部の各々による、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。
(7)上記(
2)から(6)項において、前記幹部が捩れて、前記複数の環状枝部が、前記幹部の延長方向に沿って、らせん状に並ぶように構成されている散気装置(請求項7)。
本項に記載の散気装置は、幹部が捩れて、複数の環状枝部が、幹部の延長方向に沿ってらせん状に並ぶように構成されていることで、幹部を中心に様々な方向に分岐する環状枝部により、浮上しようとする気泡を捉え、気泡の浮上経路の蛇行促進機能と、微細化促進機能とを発揮するものとなる。
【0014】
(8)上記(1)から(7)項において、前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの上下方向に積層されて、前記気泡の微細化手段が前記充填ケース内で所定のかさ密度を有している散気装置(請求項8)。
本項に記載の散気装置は、気泡の微細化手段の幹部が、充填ケースの上下方向に積層され、充填ケース内で気泡の微細化手段が所定のかさ密度を有していることにより、充填ケースの底板の気泡の流通路を介して充填ケース内へと進入する気泡は、気泡の微細化手段によって更なる浮上が妨害される。そして、幹部を避けるように蛇行する気泡の浮上経路の蛇行促進と、環状枝部による微細化促進とが適切になされ、水中への酸素溶解効率を高めるものとなる。なお、上記機能を発揮する上で好ましい、充填ケースにおける気泡の微細化手段のかさ密度の数値範囲は、本発明者らの鋭意研究の結果、10kg/m
3〜20kg/m
3とすることが望ましい。
【0015】
(9)上記(8)項において、前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層されている散気装置(請求項9)。
本項に記載の散気装置は、気泡の微細化手段の幹部が、充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層されていることで、充填ケースの室内が気泡の微細化手段によって満たされる。そして、底板と上蓋との間の全体で、幹部による気泡の浮上経路の蛇行作用と、環状枝部による気泡の分断作用が得られるものとなる。なお、充填ケース内に積層される気泡の微細化手段の幹部が連続して全体として一本からなるものであっても良く、適宜分断された複数の幹部が、積層されたものであっても良い。
又、気泡の微細化手段の積層構造としては、本項に挙げられたものの他にも、充填ケースの中心部から花弁状に幹部が並べられるものや、充填ケースの上下方向と直交する方向に直線状に往復するようにして、幹部が並べられるもの等、様々な構造が適宜採用されるものである。
【0016】
(10)上記(1)から(9)項において、前記充填ケースにおける前記気泡の微細化手段の充填高さが、500mmである散気装置。
本項に記載の散気装置は、充填ケースにおける気泡の微細化手段の充填高さとして、500mmが確保されることで、充填ケースの底板の気泡の流通路を介して充填ケース内へと進入する気泡が、気泡の微細化手段によって更なる浮上が妨害され、幹部を避けるように蛇行する気泡の浮上経路の蛇行促進と、環状枝部による微細化促進とが十分になされ、水中への酸素溶解効率を高めるものとなる。
【0017】
(11)上記(1)から(10)項において、前記充填ケースの底板と上蓋とが、開口付き板により構成されている散気装置。
本項に記載の散気装置は、開口付き板により構成された底板により、気泡の微細化手段が充填ケース内にて下支えされるものである。そして、底板の開口が気泡の流通路となって、気泡の充填ケース内への進入を許容するものである。一方、開口付き板により構成された上蓋により、充填ケース内の気泡の微細化手段が気泡と共に浮上し、充填ケースから脱落することを防ぐものである。又、上蓋の開口が気泡の流通路となって、ばっ気水槽の液中へと、微細化された気泡を散気するものである。
【0018】
(12)上記(11)項において、前記充填ケースの底板と上蓋とが、前記充填ケースに対し着脱自在に構成され、前記底板に吊ワイヤーが固定されかつ前記上蓋に前記吊ワイヤーが挿通ないし固定され、前記吊ワイヤーの上端部が前記ばっ気水槽の液面上に留められている散気装置。
本項に記載の散気装置は、上端部がばっ気水槽の液面上に留められている吊ワイヤーを引き上げることで、充填ケースに対し着脱自在に構成された底板及び上蓋と共に、底板及び上蓋に挟持された状態の気泡の微細化手段をばっ気水槽内の充填ケースから引き上げるものである。又、気中から、気泡の微細化手段を底板及び上蓋に挟持した状態で吊ワイヤーを適宜緩めて、ばっ気水槽内の充填ケースに、底板及び上蓋と共に気泡の微細化手段をセットするものである。
【0019】
(13)上記(12)項において、前記ばっ気水槽には、前記気泡の微細化手段が前記底板と前記上蓋とに挟持された状態で、これらを前記ワイヤーによって一体に昇降させるための、上下方向に延びるガイドレールが設けられている散気装置。
本項に記載の散気装置は、吊ワイヤーにより、底板と上蓋とに挟持された状態の気泡の微細化手段を充填ケースから引き上げ、又は、充填ケースにセットする際に、ばっ気水槽に設けられた、上下方向に延びるガイドレールにより、底板、上蓋及び気泡の微細化手段の昇降ガイドがなされるものである。特に、充填ケースにセットする際には、ばっ気水槽の液中に設置された充填ケースに対する位置決めが確実になされることとなる。
【0020】
(14)上記(1)から(13)項において、前記空気供給手段は、前記ばっ気水槽の底面と前記充填ケースとに設けられた空間部に向けて開口する空気配管を備える散気装置。
本項に記載の散気装置は、空気供給手段の、ばっ気水槽の底面と充填ケースとに設けられた空間部に向けて開口する空気配管から液中へと空気を噴出させることで、充填ケースに対し下方から空気を供給するものである。
【0021】
(15)上記(14)項において、前記空気配管は、前記ばっ気水槽の液面上方から底面に沿って延びる主配管と、該主配管から複数点で分岐する分岐配管とを含み、該分岐配管の先端が開口している散気装置。
本項に記載の散気装置は、空気配管が、ばっ気水槽の液面上方から底面に沿って延びる主配管から、先端が開口する分岐配管が複数点で分岐することにより、主配管に沿って分岐する各分岐配管の先端から液中へと空気を噴出させることで、主配管に沿った広範囲にわたり、充填ケースに対し下方から空気を供給するものである。しかも、分岐配管の先端の開口がそのまま空気の噴出口となっているので、目詰まりし難く、無駄な圧力損失も生じない。又、主配管から直接空気を噴出させるのではなく分岐配管を介することで、主配管の基端寄りと先端寄りとでの空気の噴出量の偏りを防ぐものである。
【0022】
(16)少なくとも底板と上蓋とに気泡の流通路が確保された充填ケース内に、幹部から枝部が分岐した樹状構造を有する紐状体を充填し、前記幹部及び枝部の一方を他方よりも大径に構成し、大径をなす部分によって前記充填ケース内での気泡の浮上を妨げて充填ケース内の滞留時間を延ばす、気泡の浮上阻害手段を構成し、他方の小径をなす部分によって、前記充填ケース内での気泡の浮上に伴い気泡を分断する気泡の微細化手段を構成して、前記充填ケースと、前記充填ケースに対し下方から空気を供給する空気供給手段とを、ばっ気水槽内に設置し、前記空気供給手段から前記ばっ気水槽に溜められた液中に空気を噴出させる散気方法(請求項10)。
(17)上記(16)項において、前記気泡の微細化手段は、幹部と該幹部よりも細径に構成され該幹部から分岐する複数の環状枝部とを含み、少なくとも前記幹部が前記充填ケースの上下方向と交差する方向に向くようにして、前記充填ケースに充填する散気方法(請求項11)。
(18)上記(17)項において、前記気泡の微細化手段の環状枝部には、複数のフィラメント糸同士が結束し、かつ、かさ高加工されたものを含む散気方法(請求項12)。
【0023】
(19)上記(17)(18)項において、前記気泡の微細化手段の幹部を組紐構造とし、前記環状枝部を、前記組紐構造を構成する右回り、左回りの糸のうちいずれか一方の糸によって構成する散気方法(請求項13)。
(20)上記(19)項において、前記組紐構造を構成する糸には太さの異なる少なくとも二種類の糸を用い、前記環状枝部の各々を、前記太さの異なる糸のうちの一種類の太さの糸によって構成する散気方法(請求項14)。
(21)上記(
17)から(20)項において、前記環状枝部を、前記幹部の延長方向と交差する方向に対を成すように突出させる散気方法(請求項15)。
(22)上記(
17)から(21)項において、前記幹部を捩り、前記複数の環状枝部が、前記幹部の延長方向に沿って、らせん状に並ぶように構成することを特徴とする請求項10から15のいずれか1項記載の散気方法(請求項16)。
【0024】
(23)上記(16)から(22)項において、前記気泡の微細化手段が前記充填ケース内で所定のかさ密度を有するように、前記気泡の微細化手段の幹部を、前記充填ケースの上下方向に積層する散気方法(請求項17)。
(24)上記(23)項において、前記気泡の微細化手段の幹部が、前記充填ケースの内部において、渦巻状に外から中心へ、及び/又は、中心から渦巻状に外へと配置されることを繰り返すようにして、積層する散気方法。
そして、上記(16)から(24)項記載の散気方法は、上記(1)から(9)項記載の散気装置によって実行されることで、上記(1)から(9)項記載の散気装置と同様の作用が得られるものである。