(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エッチング工程のとき 、又は前記エッチング工程と前記光素子搭載工程との間に、前記台座に応じた形状の金属パターンをマイクロバンプ形状に加工するマイクロバンプ加工工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光デバイスの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔製造する光デバイスの例〕
まず、この発明の製造方法で製造する光デバイスの一例を
図1および
図2によって説明する。
【0016】
図1は、この発明の製造方法の第1実施例によって製造する光デバイスの基板側ブロックに光素子を搭載する前後の状態を示す斜視図であり、(a)光素子を搭載する直前の状態を、(b)は光素子を搭載した状態を示している。
図2は、その光デバイスの一例の光素子を搭載する前の基板側ブロックの構成を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)において説明する各部の断面が全て現れるようにしたA−A線に沿う断面図である。
【0017】
この光デバイスは
図1に示すように、基板側ブロック1と光素子2とからなり、基板側ブロック1は、平面形状が長方形の基板11上の長手方向の一端部寄り(全長の1/3程度)の第1の部分11aに、幅方向の中央部に沿って短冊状に光導波路12が形成されている。また、長手方向の残りの第2の部分11bに幅方向の中央部に沿って平行に一対の短冊状の接合部13,13が形成され、その一方の接合部13の光導波路12に近い側の端部に隣接する位置と他方の接合部13の光導波路12から遠い側の端部に隣接する位置とにそれぞれ小円形の位置決めマーク(アライメントマークとも云う)14a,14bが形成されている。
なお、第2の部分11bは第1の部分11aより幾分低くなっており段差を有するが、ごく僅かであるため、
図2ではその境界線15だけを示している。
【0018】
一方、光素子2はこの例では平面形状が長方形で扁平なレーザ素子であり、長手方向の一端面(
図1では光導波路に近い側の端面)2aの幅方向の中央部下面寄りの位置に、図示を省略しているが発光点(又は光出力点)を有する。そして、下面の長手方向に沿って基板側ブロック1の一対の短冊状の接合部13,13および一対の位置決めマーク14a,14bとそれぞれ対応する一対の短冊状の接合部23,23および一対の小円形の位置決めマーク24a,24bが形成されている。
【0019】
このように、基板11上に光導波路12とともに位置決めマーク14a,14bと接合
部13,13を形成した基板側ブロック1上に、光素子2を
図1の(a)に示す状態から(b)に示すように、その下面の各位置決めマーク24a,24bを基板上の各位置決めマーク14a,14bと一致させるように位置決めし、各接合部23を基板11上の各接合部13に密着させて接合すると、光デバイスが完成する。
それによって、光素子2の一端面2aの発光点が、光導波路12の光入力側の端面12aの中心と一致するように、サブミクロンレベルでの位置合わせ精度で光素子2を基板側ブロック1上に搭載することができる。
【0020】
この接合部同士の接合は表面活性化接合法によるとよい。表面活性化接合技術は、金属等の物質表面を覆っている酸化膜、有機系の汚染膜、や塵(コンタミ)などの不活性層をプラズマ処理などで取り除いて活性化し、表面エネルギーの高い原子同士を接触させて、その原子間の凝着力を利用して低温で接合する技術である。
【0021】
しかし、この技術を用いても、フラットな接合面同士の接合では100〜150℃程度には加熱しないと接合できない。そのため、各接合部を金(Au)などの塑性変形し易い金属材料で形成し、その接合面の片側すなわち基板側の接合部の表面に多数のマイクロバンプ(微小な凸部)を形成することにより、常温での接合が可能になる。
Auは電気伝導率も高いので電極としても好適であり、レーザ素子等の電極を有する光素子の電極をAuの接合部とし、基板側の電極を兼ねたAuの接合部と接合することによって、物理的にも電気的にも同時に接合することができる。
【0022】
図2は、この実施例における光デバイスの基板側ブロック1を拡大した平面図(a)とそのA−A線に沿う断面図(b)とによって、より詳細に示している。
この基板側ブロック1の基板11はシリコン(Si)基板であり、
図2で境界線15の右側の光導波路12を形成する第1の部分11aよりも、左側の接合部13と位置決めマーク14a,14bを形成する第2の部分を低く(厚さを薄く)形成している。そして、その基板11の段差を有する上面の全面にシリコン酸化膜(SiO膜)17を形成している。このシリコン酸化膜17は、光導波路12に対してはクラッド層の機能を果し、接合部13に対しては絶縁膜の機能を果す。
【0023】
光導波路12は、その第1の部分11aのシリコン酸化膜17上に光導波性材料であるシリコン窒化膜(SiN膜)で形成され、第2の部分11bのシリコン酸化膜17上の位置決めマーク14a,14bと接合部13とを形成する部分にも、それらと同一平面形状のシリコン窒化膜によって、位置決めマーク14a,14bの台座16a,16bと接合部13の台座16cが形成されている。シリコン窒化膜は屈折率が2程度あるため、光を閉じ込める効果がある光導波性材料であり、且つ絶縁性も高いため絶縁膜として使用できる。そのため、光導波路12と位置決めマーク14a,14bと接合部13の各台座16a,16b、16cが全て同じシリコン窒化膜で形成されている。
【0024】
そのシリコン窒化膜による小円形の台座16a,16b上に位置決めマーク14a,14bが、長手方向に平行な一対の短冊状の台座16c,16c上に一対の接合部13,13が、いずれも金(Au)等の金属材料で形成され、その各接合部13の上面は多数のマイクロバンプ(微小な凸部)13aを有するマイクロバンプ形状に形成されている。
【0025】
この基板側ブロック1の上面に
図2の(a)に仮想線で示す位置に、光素子2を
図1によって説明したように位置決めして搭載すれば光デバイスとなる。
この場合、基板側ブロック1の上の接合部13の上面をマイクロバンプ形状にしているので、常温での接合が可能であり、光素子2の物理的な固定と、光素子2の電極と基板側ブロック1の電極との電気的な接続とが同時になされる。
【0026】
〔第1実施例〕
この発明による光デバイスの製造方法の第1実施例の各工程を
図3〜
図5によって説明する。
図3の(a)〜(e)および
図4の(f)〜(j)はその各工程を説明するための図であり、いずれも
図2の(b)と同様な断面図である。
図5の(k),(l)はその基板側ブロックに光素子を搭載する工程を説明するための正面図であり、
図1の(a),(b)をそれぞれ右側から見た図に相当する。
【0027】
まず、
図3の(a)に示すようにシリコン(Si)からなる基板11を用意し、その光導波路を形成するための第1の部分11aと、それより幾分低い(厚さが薄い)第2の部分11bとを形成する。この基板加工工程では、例えば基板11における第1の部分11aとする領域の上面にのみレジスト膜を形成し、そのレジスト膜をマスクにして基板11における第2の部分11bとする領域を所定深さ(実装する素子にもよるが、例えば1〜2μm)だけエッチング加工して低段部を形成し、その後レジスト膜を除去する。
【0028】
次に
図3の(b)に示すように、その基板11の段差を有する上面の全面にシリコン酸化膜(SiO膜)17を形成する。すなわち、シリコン基板を酸化してシリコン酸化膜を形成する方法、またはプラズマCVD法でシリコン酸化膜を形成する方法により、シリコン酸化膜17を例えば0.5μmの厚みに形成する。
【0029】
その後、基板11上のシリコン酸化膜17上の全面に光導波性材料であるシリコン窒化膜(SiN膜)からなる第1の層18を形成する。これが第1の工程である。このシリコン窒化膜は、例えば、プラズマCVD法により約3μmの厚みに形成する。
そして、その第1の層18上に金属材料(好ましくはAu)からなる第2の層19を形成する。これが第2の工程である。この金属材料からなる第2の層19は、例えば蒸着またはスパッタリングにより形成される。後述する第6の工程におけるマイクロバンプによる常温活性化接合の接合強度を考慮すると、膜面に微少な凹凸が形成される蒸着により第2の層19を形成することが好ましい。
【0030】
次に、
図3の(c),(d)に示すように、第2の層19を、前述した光導波路12に応じた形状の第1の金属パターン19aと、位置決めマーク14a,14bに応じた形状の第2の金属パターン19bとに加工するとともに、この実施例では接合部13に応じた形状の第3の金属パターン19cにも加工する。これが第3の工程である。
この工程では、まず
図3の(c)に示すように第2の層19の上面全体にフォトレジスト31を塗布して乾燥させ、その上にマスク板32を位置決め配置する。
【0031】
そのマスク板32は、例えばガラス等の透明板上に、
図3の(d)に示す第1の金属パターン19aに対応する領域32a、第2の金属パターン19bに対応する領域32b、および第3の金属パターン19cに対応する領域32cにのみ、例えばクロム(Cr)によりパターンが形成されている。このマスク板32を通してフォトレジスト31に光を照射すると、マスク板32のクロムのパターンが形成されていない領域に対応する部分だけが露光される。
それを現像液に浸けて現像するとフォトレジスト31の露光された部分だけが溶解して除去され、第1の金属パターン19a、第2の金属パターン19b、および第3の金属パターン19cに対応する部分だけが残る。
【0032】
その残ったパターンのフォトレジスト31をエッチングマスクにしてドライエッッチングを行い、第2の層19のフォトレジスト31によって被覆されていない部分だけを選択的に除去した後、剥離剤によってフォトレジスト31を除去する。
これによって、
図3の(d)に示すように、Au等の金属材料からなる第2の層19による第1の金属パターン19a、第2の金属パターン19b、および第3の金属パターン
19cが形成される。
【0033】
なお、上述の説明ではフォトレジスト31の露光された部分だけが現像液によって溶解されて除去される場合について説明したが(ポジ型レジスト)、これとは別に、露光されなかった部分だけが現像液によって溶解されて除去されるフォトレジスト(ネガ型レジスト)もあり、それをフォトレジスト31として使用する場合には、マスク板32は第1の金属パターン19a、第2の金属パターン19b、および第3の金属パターン19cに対応する部分以外の領域にクロムのパターンを形成すればよい。
【0034】
次に、第3の工程で上述のように加工された第2の層19をエッチングマスクとして、SiN膜からなる第1の層18に対してドライエッチングを行って、第1の層18を
図3の(e)に示すように、第1の金属パターン19aに応じた形状の光導波路12となる部分18a、および位置決めマーク14a,14bとなる第2の金属パターン19bに応じた形状の部分18bと、この実施例では接合部13となる第3の金属パターン19cに応じた形状の部分18cにも加工する。これが第4の工程である。
【0035】
その後、
図4の(f)に示すように、基板11上の第1の金属パターン19a上を除く全面にフォトレジスト33を塗布し(これもマスク板を用いたフォトリソ法によって形成する)、そのフォトレジスト33をエッチングマスクとして第2の層19に対してウェットエッチングを行って、フォトレジスト33によって被覆されていない第1の金属パターン19aを除去する。そして、剥離剤によってフォトレジスト33を除去すると、
図4の(g)に示すようになる。これが第5の工程である。
【0036】
ここまでの工程で、基板側ブロック1が一応完成する。ここで、
図4の(f)における第2の層19の第2の金属パターン19bと第3の金属パターン19cが、同図の(g)における一対の位置決めマーク14a,14bと接合部13となる。また、
図4の(f)における第1の層18の部分18aが同図の(g)における光導波路12となり、同図の(f)における第1の層18の部分18bと部分18cが、同図の(g)における位置決めマーク14a,14bの台座16a,16bと接合部13の台座16cとなっている。
【0037】
この基板側ブロック1に、位置決めマーク14a,14bに応じた形状の第2の金属パターン19bを用いて、
図2に示した光素子2を位置合わせして搭載してもよい。しかし、この実施例ではその前に、接合部13に応じた形状の第3の金属パターン19cをマイクロバンプ形状に加工するマイクロバンプ加工工程を有する。
【0038】
そのマイクロバンプ加工工程では、まず
図4の(h)に示すように基板11上の全面にフォトレジスト34を塗布して乾燥させ、その上にマスク板35を位置決め配置する。
そのマスク板35は、例えばガラス等の透明板上に、接合部13に対応する領域を除く全ての領域と、接合部13に対応する領域内のマイクロバンプとなる部分に対応する部分35aにクロムのパターンを形成する。したがって、このマスク板35は、接合部13に対応する領域内のマイクロバンプとなる部分に対応する部分35a以外の部分だけが透明である。
【0039】
そして、このマスク板35を通してフォトレジスト34に光を照射すると、マスク板35のクロムのパターンが形成されていない領域に対応する部分だけが露光される。
それを現像液に浸けて現像するとフォトレジスト34の露光された部分だけが溶解して除去され、接合部13以外の全領域上と、接合部13におけるマイクロバンプとなる部分の上にはフォトレジスト34が残る。
【0040】
その残ったパターンのフォトレジスト34をエッチングマスクにして、接合部13(第
3の金属パターン19c)に対してドライエッチングを行い、その金属膜(Au膜)のフォトレジスト34に被覆されていない部分を選択的に厚さの半分程度までハーフエッチングして、
図4の(i)に示す状態にする。
【0041】
その後、剥離剤によってフォトレジスト34を除去すると、
図4の(j)に示すように接合部13の表面に多数のマイクロバンプ13aが形成されている。その各マイクロバンプ13aは接合部13の残存部(ハーフエッチングされた部分)によって全て導通されており、一体の電極として機能する。そのため、光素子2としてレーザ素子などの電極を有する素子を搭載する場合に適している。各マイクロバンプ13aは、例えば直径が8μm程度の円形で、高さが2μm程度である。
【0042】
なお、上述の説明ではフォトレジスト34の露光された部分だけが現像液によって溶解されて除去される場合について説明したが、露光されなかった部分だけが現像液によって溶解されて除去されるフォトレジストもあり、それをフォトレジスト34として使用する場合には、マスク板35は接合部13に対応する領域内のマイクロバンプとなる部分に対応する部分以外の部分だけにクロムのパターンを形成すればよい。
【0043】
このようにして完成した基板側ブロック1上に、第2の金属パターン19bによって形成された位置決めマーク14a,14bを用いて、
図5の(k),(l)に示すように光素子2を搭載する。これが第6の工程である。このとき、第3の金属パターン19cによって形成された接合部13に、光素子2を物理的および電気的に接合する。
【0044】
そのため、基板側ブロック1の接合部13および光素子2の接合部23の表面に対して、プラズマ洗浄やイオンビームによるスパッタエッチングを行って、その表面の酸化膜、有機系の汚染膜やコンタミを除去して、結合手を持った原子が露出した活性状態にする。
そして、
図5の(k)に示すように、光素子2の下面の位置決めマーク24a,24bを、基板側ブロック1上の位置決めマーク14a,14bと一致させるように、光素子2を基板側ブロック1上で位置決めする。この位置決めは、例えば以下のように行われる。
【0045】
光素子2の位置決めマーク24a,24bと、基板側ブロック1上の位置決めマーク14a,14bを、図示しない位置決め装置を用いて、例えば約30μmまで接近させた状態で、各位置決めマークをカメラで撮影した画像を確認する。各位置決めマークの撮影は、例えば赤外線が使用されるが、この場合、光素子2および基板11は赤外線を透過する材料である必要がある。位置決めマークの形状は、例えば、一方を円形とすると、他方をその円形円を囲むドーナツ型の形状とする。この両方のマークを同時に観察して、それぞれのマークの円の中心を計算して求め、そのお互いの位置を重ね合わせるように位置合わせすることのより、位置決めを行う。
【0046】
その後、矢印で示すようにそのまま垂直に下降させて加圧し、同図の(l)に示すように、基板側ブロック1上に搭載する。このとき、例えば、0.75mm×8mmの大きさの光素子2を搭載する場合には、約50kgfを加圧する。
【0047】
これによって、光素子2の端面2aの発光点が、基板側ブロック1上の光導波路12の光入力側の端面12aの中心に正確に位置決めされて光素子2が搭載され、基板側ブロック1の接合部13の多数のマイクロバンプ13aと光素子2の接合部23とが、表面活性化接合によって常温接合される。すなわち無加熱接合であるため、下記の利点を有する。ここで、「部品」とは、基板側ブロック1(特に光導波路12)および光素子2である。
【0048】
(1)熱膨張係数差の残留応力による部品破壊が発生しない。
(2)部品に対する熱ストレスがないので、部品の機能劣化が生じない。
(3)無加熱の固相接合であるため、実装時の位置ずれが生じない。
(4)他部品への熱の影響が生じない。
(5)原子の直接接合であるため、接合層の経時劣化が生じない。
【0049】
光素子2がレーザ素子などの電極を有する素子の場合、その各接合部23が各電極を兼ねており、その光素子2を基板側ブロック1上に搭載し、その各接合部23が基板側ブロック1の各接合部13の多数のマイクロバンプ13aとそれぞれ接合すると、光素子2と基板側ブロック1とが各接合部23と各接合部13を介して電気的にも接続される。これらの各接合部13,23は、いずれも塑性変形し易く電気伝導率が高い金(Au)で形成するのが望ましい。
【0050】
〔第2実施例〕
次に、この発明による光デバイスの製造方法の第2実施例の各工程を
図6〜
図8によって説明する。
図6の(a)〜(e)および
図7の(f),(g)はその各工程を説明するための図であり、いずれも
図2の(b)と同様な断面図である。
図8の(h),(i)はその基板側ブロックに光素子を搭載する工程を説明するための正面図であり、
図1の(a),(b)をそれぞれ右側から見た図に相当する。
【0051】
図6の(a)と(b)は前述した第1実施例における
図3の(a)と(b)と同じであり、まず基板加工工程で、シリコン(Si)からなる基板11に光導波路を形成するための第1の部分11aに対して、それより幾分低い(厚さが例えば1〜2μm薄い)第2の部分11bをエッチング加工によって形成する。そして、その基板11の段差を有する上面の全面にシリコン酸化膜(SiO膜)17を、例えば0.5μmの厚みで形成する。
【0052】
その後、第1の工程で、基板11上のシリコン酸化膜17上の全面に光導波性材料であるシリコン窒化膜(SiN膜)からなる第1の層18を形成する。
そして、第2の工程で、その第1の層18上に金属材料(好ましくはAu)からなる第2の層19を形成する。
【0053】
次に、第3の工程で
図6の(c),(d)に示すように、第2の層19を、前述した光導波路12に応じた形状の第1の金属パターン19aと、位置決めマーク14a,14bに応じた形状の第2の金属パターン19bとに加工するとともに、この第2実施例では接合部13′に応じたマイクロバンプ形状の第3の金属パターン19c′にも加工する。
この工程では、まず
図6の(c)に示すように第2の層19の上面全体にフォトレジスト31を塗布して乾燥させるまでは、前述した第1実施例と同じであるが、その上に位置決め配置するマスク板36が第1実施例で使用したマスク板32とは異なる。
【0054】
そのマスク板36は、例えばガラス等の透明板上に、
図3の(d)に示す第1の金属パターン19aに対応する領域36a、第2の金属パターン19bに対応する領域36b、およびマイクロバンプ形状の第3の金属パターン19c′を構成する各マイクロバンプに対応する部分36cにのみ、クロムのパターンを形成する。そして、このマスク板32を通してフォトレジスト31に光を照射すると、マスク板36のクロムのパターンが形成されていない領域に対応する部分だけが露光される。
【0055】
それを現像液に浸けて現像するとフォトレジスト31の露光された部分だけが溶解して除去され、第1の金属パターン19a、第2の金属パターン19b、およびマイクロバンプ形状の第3の金属パターン19c′を構成する各マイクロバンプに対応する部分だけが残る。
【0056】
その残ったパターンのフォトレジスト31をエッチングマスクにしてドライエッチング
を行い、第2の層19のフォトレジスト31によって被覆されていない部分だけを選択的に除去した後、剥離剤によってフォトレジスト31を除去する。
これによって、
図6の(d)に示すように、Au等の金属材料からなる第2の層19による第1の金属パターン19a、第2の金属パターン19b、およびマイクロバンプ形状の第3の金属パターン19c′が形成される。
【0057】
なお、上述の説明ではフォトレジスト31の露光された部分だけが現像液によって溶解されて除去される場合について説明したが、露光されなかった部分だけが現像液によって溶解されて除去されるフォトレジストもあり、それをフォトレジスト31として使用する場合には、マスク板36は第1の金属パターン19a、第2の金属パターン19b、および第3の金属パターン19c′を構成する各マイクロバンプに対応する部分以外の領域にクロムのパターンを形成すればよい。
【0058】
次に第4の工程で、第3の工程で上述のように加工された第2の層19をエッチングマスクとして、SiN膜からなる第1の層18に対してドライエッチングを行って、第1の層18を
図6の(e)に示すように、第1の金属パターン19aに応じた形状の光導波路12となる部分18a、および位置決めマーク14a,14bとなる第2の金属パターン19bに応じた形状の部分18bと、この実施例では接合部13となる第3の金属パターン19cに応じた形状の部分18cにも加工する。
【0059】
その後、第5の工程で
図7の(f)に示すように、基板11上の第1の金属パターン19a上を除く全面にフォトレジスト37を塗布し(このフォトレジスト37もマスク板を用いたフォトリソ法によって形成する)、そのフォトレジスト37をエッチングマスクとして第2の層19に対してドライエッチングを行って、フォトレジスト33によって被覆されていない第1の金属パターン19aを除去する。そして、剥離剤によってフォトレジスト33を除去すると、
図7の(g)に示すようになる。
【0060】
以上の工程によって基板側ブロック1′が完成する。ここで、
図7の(f)における第2の層19の第2の金属パターン19bと第3の金属パターン19c′が、同図の(g)における一対の位置決めマーク14a,14bとマイクロバンプ形状の接合部13′となる。また、
図7の(f)における第1の層18の部分18aが同図の(g)における光導波路12となり、同図の(f)における第1の層18の部分18bと部分18c′が、同図の(g)における位置決めマーク14a,14bの台座16a,16bと接合部13′の各マイクロバンプ13a′の台座16c′となっている。
【0061】
このように、この第2実施例では第3の工程において、金属材料からなる第2の層19から光導波路12に応じた形状の第1の金属パターン19aと、位置決めマーク14a,14bに応じた形状の第2の金属パターン19bとに加工する際に、多数のバンプ13a′からなる接合部13′になるマイクロバンプ形状の第3の金属パターン19c′を形成するので、第1実施例におけるマイクロバンプ加工工程が不要になり、製造工程が短縮される。
【0062】
そして、第6の工程において、完成した基板側ブロック1′上に、位置決めマーク14a,14bを用いて
図8の(h),(i)に示すように光素子2を搭載する。このとき、第3の金属パターン19c′によって形成された多数のバンプ13a′からなる接合部13に、光素子2を物理的に接合する。
そのため、基板側ブロック1′の接合部13′および光素子2の接合部23の表面に対して、プラズマ洗浄やイオンビームによるスパッタエッチングを行って、その表面の有機物系の汚染膜やコンタミを除去して、結合手を持った原子が露出した活性状態にする。
【0063】
そして、
図8の(h)に示すように、光素子2の下面の位置決めマーク24a,24bを、基板側ブロック1′上の位置決めマーク14a,14bと一致させるように、光素子2を基板側ブロック1′上で位置決めし、矢示にようにそのまま垂直に下降させて、この例では約50kgf加圧し、同図の(i)に示すように、基板側ブロック1′上に搭載する。
【0064】
これによって、光素子2の端面2aの光出力点が、基板側ブロック1′上の光導波路12の光入力側の端面12aの中心に正確に位置決めされて光素子2が搭載され、基板側ブロック1′の接合部13′を構成する多数のマイクロバンプ13a′と光素子2の接合部23とが、表面活性化接合によって常温接合される。その利点は前述したとおりである。
【0065】
しかし、この第2実施例による基板側ブロック1′の接合部13′を構成する多数のマイクロバンプ13a′は互いに電気的に導通してはいないので、SHG素子などの電極を有しない光素子を搭載する場合に適しており、レーザ素子などの電極を有する素子を搭載し、その電極を兼ねた接続部を基板側ブロックの接続部と電気的にも接続したい場合には適していない。
【0066】
〔第3実施例〕
次に、この発明による光デバイスの製造方法の第3実施例を
図9〜
図12によって説明する。
図9はこの発明の製造方法第3実施例で製造する光デバイスの基板側ブロックの構成を示し、(a)は平面図であり、(b)は(a)において説明する各部の断面が全て現れるようにしたB−B線に沿う断面図である。
【0067】
図10(a)〜(e)および
図11の(f)〜(j)はその各工程を説明するための図であり、いずれも
図9の(b)と同様な断面図である。
図12の(k),(l)はその基板側ブロックに光素子を搭載する工程を説明するための正面図であり、
図1の(a),(b)をそれぞれ右側から見た図に相当する。
これらの各図に示す各部は、
図1〜
図5によって説明した第1実施例における各部とその形状や寸法比等に相違があるが、説明の便宜上
図1〜
図5に示した各部と対応する部分には同一の符号を付している。
【0068】
図9に示す光デバイスの基板側ブロック1において、その上に搭載する光素子2を仮想線で示しているが、基板11の第1の部分11aより低い第2の部分11bを、その光素子2の長さ寸法L及び幅寸法Wよりいずれも小さい長さ寸法x及び幅寸法yを有し、第1の部分11aに囲まれた凹部として加工している点が第1実施例と異なっている。
そのように第2の部分11として凹部を加工した基板の段差のある上面の全面にシリコン酸化膜(SiO膜)17を形成した状態で、凹部17aを示している。
【0069】
そして、その第1の部分11aのシリコン酸化膜17上に光導波性材料であるシリコン窒化膜(SiN膜)で光導波路12が形成され、第2の部分11bのシリコン酸化膜17上に位置決めマーク14a,14bと多数のマイクロバンプ13aを有する接合部13とを形成している。
【0070】
そして、この基板側ブロック1上に光素子2を搭載する際には、前述したように位置決めマーク14a,14bを用いて水平(平面)方向の位置合わせをすると共に、光素子2の下面を基板1の第1の部分11aの上面(この例ではシリコン酸化膜17を介しているがその厚さは0.5μm程度である)に突き当てて、高さ方向の位置決めを行うことができる。したがって、光素子2を光導波路12に対して高さ方向も高精度で位置決めすることができる。
その他の構成は、
図1および
図2によって説明した光デバイスと同様であるので、説明を省略する。
【0071】
次に、この発明による光デバイスの製造方法の第3実施例の各工程を
図10〜
図12によって説明する。
図10の(a)〜(e)および
図11の(f)〜(j)はその各工程を説明するための図であり、第1実施例における
図3の(a)〜(e)および
図4の(f)〜(j)の各工程と殆ど同じであるので、主にその相違点について説明する。
【0072】
図10の(a)は基板加工工程で、シリコン(Si)からなる基板11に光導波路を形成するための第1の部分11aに対して、それより幾分低い(厚さが例えば1〜2μm薄い)第2の部分11bをエッチング加工によって形成する。
その第2の部分11bは、前述したように搭載する光素子2長さ寸法及び幅寸法よりいずれも小さい長さ寸法及び幅寸法を有し、第1の部分11aに囲まれた凹部として加工される。
【0073】
そして、その基板11の段差を有する上面の全面にシリコン酸化膜(SiO膜)17を、例えば0.5μmの厚みで形成する。17aはそのシリコン酸化膜17を形成した凹部である。
その後、第1の工程で、基板11上のシリコン酸化膜17上の全面に光導波性材料であるシリコン窒化膜(SiN膜)からなる第1の層18を形成する。
そして、第2の工程で、その第1の層18上に金属材料(好ましくはAu)からなる第2の層19を形成する。
【0074】
次に、第3の工程で
図10の(c),(d)に示すように、第2の層19を、前述した光導波路12に応じた形状の第1の金属パターン19aと、位置決めマーク14a,14bに応じた形状の第2の金属パターン19bとに加工するとともに、
図9に示した接合部13に応じた形状の第3の金属パターン19cも加工する。
この工程も第1実施例における
図3の(c),(d)で説明した工程と同様であるが、第1の金属パターン19aは、その先端を基板1の第1の部分11a上における第2の部分11bの凹部17aとの境界線から所定寸法dだけ離して形成する。金属パターン19bと第3の金属パターン19cは凹部17a内に形成する
【0075】
次に第4の工程で、上述のように加工された第2の層19をエッチングマスクとして、SiN膜からなる第1の層18に対してドライエッチングを行って、第1の層18を
図10の(e)に示すように、第1の金属パターン19aに応じた形状の光導波路12となる部分18a、および位置決めマーク14a,14bとなる第2の金属パターン19bに応じた形状の部分18bと、接合部13となる第3の金属パターン19cに応じた形状の部分18cに加工する。
【0076】
その後第5の工程で、
図4の(f)に示すように、基板11上の第1の金属パターン19a上を除く全面にフォトレジスト33を塗布し、そのフォトレジスト33をエッチングマスクとして第2の層19に対してドライエッチングを行って、第1の金属パターン19aを除去する。そして、剥離剤によってフォトレジスト33を除去すると、
図4の(g)に示すようになる。
【0077】
さらに、
図11の(h)〜(j)に示すマイクロバンプ加工工程で、第1実施例における
図4の(h)〜(i)で説明したマイクロバンプ加工工程と同様にして、接合部13に応じた形状の第3の金属パターン19cをマイクロバンプ形状に加工する。
【0078】
このようにして完成した基板側ブロック1上に、第6の工程によって
図12の(k),(l)に示すように、光素子2を位置決めして搭載する。このとき,光素子2の位置決めマーク24a,24bと、基板側ブロック1上の位置決めマーク14a,14bの各中心の位置を互いに重ね合わせるようにして水平方向の位置合わせすることは、第1実施例と同様である。
【0079】
また、この第3実施例では、
図12の(l)に示すように、光素子2の下面を基板1の第1の部分11aの上面(この例ではシリコン酸化膜17を介しているが、極めて薄いので実質的に第1の部分11aの上面に相当する)に突き当てて、高さ方向の位置決めを行う。したがって、光素子2を光導波路12に対して高さ方向の位置決めを高精度で行うことができる。
【0080】
この状態で、光素子2を基板側ブロック1に対して加圧(例えば50kgf)することにより、いずれも塑性変形し易く電気伝導率が高いAuなどの金属材料で形成されている、光素子2の接続部23と基板側ブロック1上の接合部13とが、表面活性化接合によって一体化して接合される。しかも、基板側ブロック1上の接合部13には多数のマイクロバンプ13aが形成されているため表面活性化接合が容易になり、無加熱での接合すなわち常温接合がなされる。また、加圧によりマイクロバンプ13aが塑性変形して潰れ、光素子2がマイクロバンプ13aの潰れ量分沈み、光素子2の下面と基板1の第1の部分11aの上面とが突き当たって、高さ方向の位置決めがされる。この接続部23と接合部13との接続によって、光素子2と基板側ブロック1とが物理的に結合(固定)されるとともに、各接合部23と各接合部13を介して電気的にも接続される。
【0081】
上述したように、各実施例の光デバイスの製造方法によれば、基板加工工程で基板11を加工して設けられた段差と、第1の層18のそれぞれの高さによって光素子2と光導波路12との相対高さが調整される。すなわち、光素子2と光導波路12の相対高さを調整するための工程は、基板に段差を設ける工程と、第1の層を成膜及びパターニングする工程のみであり、第1の膜の成膜及びパターニングと、第2の膜の成膜及びパターニングとをそれぞれ行う必要がある従来技術と比較して、製造工程を簡略化することが可能となる。
【0082】
〔各実施例の変更例〕
上述した第1実施例と第3実施例では基板側ブロック1にそれぞれ多数のマイクロバンプを形成した2本の接合部13,13を長手方向に沿って互いに平行に設けたが、その接合部の数や形状および形成位置は、搭載する光素子側の接合部の数や形状および形成位置に合わせて適宜変更する。
【0083】
なお、電極を有していない光素子を搭載する場合には、金属材料による第1の層18から接合部13や13′を加工せずに、接着剤等によって光素子を基板側ブロック上に接着して固定するようにしてもよい。
また、基板1に段差を形成しない場合には、基板1上の第1の部分11aに相当する領域を第2の部分11bに相当する領域より段差に相当する分だけ高くするための層を形成するようにしてもよい。
【0084】
上述した各実施例では、光デバイスを単個で製造する方法のように説明したが、基板の材料としてシリコンウェハのような大きな板材を使用して、多数個の基板側ブロックを同時に作製し、その各基板側ブロック上に光素子を搭載した後、単個の光デバイスに切り分けるようにしてもよい。あるいは、多数個の基板側ブロックを同時に作製した後、単個の基板側ブロックに切り分け、その各基板側ブロック上にそれぞれ光素子を搭載して各光デバイスを完成させるようにしてもよい。
【0085】
基板材料としては、基本的に絶縁体基板や導電性基板を使用することが可能であるが、加工性を考慮するとシリコン基板が好ましい。加工性を考慮しない場合は、金属板、窒化アルミニウム板、ガラス板、石英板、樹脂板なども使用可能である。
【0086】
光導波性材料としては、基本的には屈折率が高い材料が光を閉じ込める効果が大きいので光導波路の材料として使用可能である。シリコン窒化膜(SiN膜)は屈折率が約2くらい有り、Geドープのシリコン酸化膜はシリコン酸化膜よりも屈折率を高めることができ、いずれも光を閉じ込める効果が大きく、絶縁膜としても使用可能であるので、光導波路および台座としても使用できる。
【0087】
この発明は以上説明した各実施例およびその変更例に限るものではなく、特許請求の範囲の各請求項によって規定した範囲において、種々に変更し得ることは勿論である。