(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738402
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】格子板
(51)【国際特許分類】
F27D 15/02 20060101AFI20150604BHJP
C04B 7/47 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
F27D15/02 H
C04B7/47
F27D15/02 C
【請求項の数】8
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-512809(P2013-512809)
(86)(22)【出願日】2011年5月6日
(65)【公表番号】特表2013-533451(P2013-533451A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011057320
(87)【国際公開番号】WO2011151130
(87)【国際公開日】20111208
【審査請求日】2014年2月3日
(31)【優先権主張番号】2010/0339
(32)【優先日】2010年6月3日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】500425242
【氏名又は名称】マゴット アンテルナショナル エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ピラルド, レグニエール
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエルヴォイ, クリストフ
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06290493(US,B1)
【文献】
国際公開第99/44001(WO,A1)
【文献】
特開平09−188551(JP,A)
【文献】
特開2001−012864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 15/02
C04B 7/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉を離れる非常に熱い材料を運びかつ冷却するための格子板(1)であって、前記板が長方形形状の中空部(2)を含み、その最大寸法が材料の運搬方向に対して垂直であり、これらの中空部(2)の断面が、逆傾斜を持つひっくり返された端部(4)で終わるひれ形状をした下部(3)を持つ三角形であり、中空部(2)の傾斜角(α)が、水平に対して10〜45°であり、ひっくり返された端部の逆傾斜角(β)が、中空部(2)の傾斜角(α)に等しいかまたはそれより最大6°小さい角度を持つことを特徴とする格子板(1)。
【請求項2】
中空部(2)の傾斜角(α)が、水平に対して20〜30°であることを特徴とする請求項1に記載の格子板(1)。
【請求項3】
各中空部(2)の下部において、中空部のそれぞれの最下方部中に開口する一つ以上の冷却空気注入スリット(5)を持ち、これらのスリットが、空気を中空部の下部に対して平行に注入するように配向されており、これらのスリット(5)が、二つの連続ひれ(3)間に位置された空間を局部的に狭めるように格子板の構成要素の下方表面上に配置された材料の過剰厚さにより得られることを特徴とする請求項1または2に記載の格子板(1)。
【請求項4】
ひれ(3)のひっくり返された端部(4)が、少なくとも20mmの長さを持つことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の格子板(1)。
【請求項5】
格子板が、前面上に、一つ以上の空気注入スリット(6)をさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の格子板(1)。
【請求項6】
格子板の前面のスリットが、中空部(2)の下部中に開口するスリットと同じ長さを持つことを特徴とする請求項5に記載の格子板(1)。
【請求項7】
格子板の前面のスリットが、格子板(1)の上部表面の面から5〜40ミリメートルの距離で配置されていることを特徴とする請求項5に記載の格子板(1)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の格子板を含むことを特徴とする格子冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子冷却器の構成要素に関し、より詳細には高温度で炉を離れるバルク材料を効率的にかつ経済的に運びかつ冷却することを意図された格子板に関する。
【背景技術】
【0002】
格子冷却器は、例えば焼成後のセメントクリンカーを冷却するための周知の装置である。この装置の主要な機能は、冷却、熱回収及びクリンカー運搬を包含する。冷却器は、一般的に水平に対してある角度で横たわる重ねられた格子の床を含む。
【0003】
文献EP0120227(Orren)は、材料を前方に動かす振動格子のシステムを使用する冷却技術の基礎を説明する。しかし、この文献は、板の過剰摩耗と戦うためのシステムを全く提供しないし、板の摩耗を限定する板の効率的な冷却を確実にすることができる構成の詳細を全く開示しない。この文献に開示された設計は、単に空気の注入を可能にするはずの一定数の入口を提供するだけである。
【0004】
文献US4600380(von Wedel)は、非常に薄いスリットにより穴をあけられ、それを通して冷却空気が注入される、箱の形の格子板を記載する。この文献は、空気を正確な角度で注入することを提案し、冷却される材料がスリットを通して流れることができないようにスリットに曲った輪郭を与えることを提供するが、それは、冷却空気の注入の予期しない中断の場合にそれらをおそらく詰まらせるかもしれない。これらのスリットの入口は、スリットの全長に渡って狭くなっており、それが主要な圧力損失を起こす。さらに、保持ポケットが設けられておらず、熱い材料が箱の全表面と直接接触し、それが一般的に早期の摩耗を導く。
【0005】
文献US5282741(Massaro)は、冷却される材料の流れにさらされる部分にポケットを含む格子板を開示する。平坦な下部のポケットはまた、空気注入を実行するための側方スリットを含むが、このポケットの配向は材料の流れに平行であり、それは流速に効率的に影響を及ぼさない。
【0006】
文献US5575642(Willis)は、平坦な下部の幾つかのポケットを備えた格子板を提案し、冷却空気はポケットの側面を通して注入される。これらの注入入口に空気をもたらす通路を設けることが必要であるので、冷却される熱い材料と接触させられる表面は実質的に残ったままである。
【0007】
文献EP1060356(Pirard)は、傾斜した下部と特別な構成の冷却空気の進行のための通路を持つ特別な形状のポケットを含む格子板を開示する。これらのポケットは、三角形断面、及びそれらが格子の表面に結合される場所に縁を持たない。この文献により開示された格子板は、ポケットの傾斜に関して逆傾斜を持つひっくり返された端部を全く持たない。
【0008】
文献DE19537904A1は、ポケットを持たない格子板を開示する。しかし、ポケットの存在は、ポケット内に捕えられかつ既に冷却された材料が過熱に対して格子を保護するので、格子を冷却するために必要である。この文献に要約された角度は、格子の表面への冷却ガスの注入のための通路に関する。これらの角度は、逆傾斜を持つひっくり返された端部に全く関係しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明による格子板は、従来技術の格子板の欠点を克服するために構成される。本発明は、より詳細には、材料床を支持するシステム中への冷却空気の効率的な注入による効率的な冷却と組み合わされた材料床の規則的な移動速度を可能にする、特に効率的な設計の格子板を目的としており、それによりこれらの支持体の必然的な摩耗に対する制御を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、炉を離れる非常に熱い材料を運びかつ冷却するための格子板であって、前記板が長方形形状の中空部を含み、その最大寸法が材料の運搬方向に対して垂直であり、これらの中空部の断面が、逆傾斜を持つひっくり返された端部で終わるひれ形状をした下部を持つ三角形であり、中空部の傾斜角が、水平に対して10〜45°、好ましくは20〜30°であり、かつひっくり返された端部の逆傾斜角(β)が、中空部の傾斜角(α)に等しいかまたはそれより最大6°小さい角度を持つ格子板を開示する。
【0011】
本発明の特別な実施態様によれば、本発明は、以下の特徴のうちの少なくとも一つまたは好適な組み合わせを含む:
− 各中空部の下部は、中空部のそれぞれの最下方部中に開口する一つ以上の冷却空気注入スリットを持ち、これらのスリットは、中空部の下部に対して平行に空気を注入するように配向されており、これらのスリットは、二つの連続ひれ間に位置された空間を局部的に狭めるように格子板の構成要素の下方表面上に配置された材料の過剰厚さにより得られる;
− ひれのひっくり返された端部は少なくとも20mmの長さを持つ;
− 格子板は、前面に、一つ以上の空気注入スリットをさらに含む;
− 格子板の前面スリットは、中空部の下部中に開口するスリットと同じ長さを持つ;
− 格子板の前面のスリットは、格子板の上部表面の面から5〜40ミリメートルの距離に配置される。
【0012】
本発明はまた、前述の特徴のいずれか一つによる格子板を含む格子冷却器を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明による格子板の三次元図である。
【0014】
【
図2】
図2は、運搬ラインの格子板の集成装置を示す。
【0015】
【
図3】
図3は、本発明による格子板の断面図である。
【0016】
【
図4】
図4は、α及びβ角度を持つ、本発明による格子板の詳細な断面図である。
【0017】
【
図5】
図5は、格子冷却器の運搬ライン上に配置された幾つかの格子板の断面図である。
【0018】
図面の符号
1. 格子板
2. 中空部
3. ひれ
4. ひっくり返された端部
5. 中空部中に冷却空気を注入するためのスリット
6. 格子板の前面上に冷却空気を注入するためのスリット。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、最初に高い温度(一般的に1000℃より高い温度)にあるバルク材料を効率的にかつ経済的に冷却することを意図された冷却システムの構成要素に関する。かかる冷却システムは、通気された格子板上で規則的な速度で非常に熱い材料の床を動かしながら、この材料を冷却することを意図された冷却空気を吹き込むことを与える。
【0020】
厳密に制御されなければならないパラメーターは以下のものである:
− 冷却される材料の床の移動速度;
− 冷却効率;
− 冷却空気注入の規則性;
− 材料の床を支持するシステムの冷却;
− 要素の摩耗に対する制御;
− 冷却される材料から来る可能な攻撃に対する台枠及びシステムの機構のより良好な保護。
【0021】
格子板(grate plates)と呼ばれるこれらの支持要素の研究された構造及び設計は、最も重要なものである。
【0022】
本発明では、幾つかのポケットまたは中空部(2)の使用を通して冷却される材料の移動床を特に効率的な態様で制御することが提案され、ポケットまたは中空部のひれ形状をした下部(3)は、冷却される材料の運搬方向の上昇勾配に従って傾斜されており、中空部(2)の断面は全体的に三角形の形状をしており、それは、各中空部が格子の面と直線に沿って交差を持ち、従って材料の運搬方向に優しい変化を持つことを意味する。材料の運搬を減速する傾向のある、縁、リブ、棒またはいかなる他の障害物はない。この設計は、冷却される材料の効率的かつ規則的な運搬を可能にする。
【0023】
中空部の数及びポケットの下部の傾斜角度の選択は、希望の流速により決定される。
【0024】
冷却空気は、中空部の下部の二つの連続ひれ間に含まれる空間を通して注入され、この空間は、上部ひれの下部表面上に単独で集中した材料の過剰厚さにより各中空部の下部中への開口直前で局部的に狭くなっており、従って空気は一つ以上のスリットを介して注入される。この断面減少は、圧損を減らすように通路の非常に限られた部分で実行される。それが中空部中に開口するとき、通路は、2から10ミリメートルの幅及び20から280ミリメートルの長さのスリットの外観を持つ。
【0025】
使用時には、種々の理由のため、冷却空気の供給が急に偶然に中断されるかもしれない。格子上に位置されかつ中空部を満たす冷却される材料は、そのとき、空気注入スリットを通して重力により流れるのを防がなければならない。この材料は、格子の下方部を満たし、空気注入の再開を妥協するか、または台枠及び器具の機構と接触することとなるかのいずれかの影響を持つであろうし、それは、それらを損傷する影響を持つであろう。この目的のために、中空部の下部を形成する各ひれの下方端は、それが中空部の下部の角度αに等しいかまたはそれより最大6°小さい角度βを水平に対して形成するが逆傾斜を持つ、すなわち冷却される材料の運搬方向に下向きになるように傾斜されている。逆傾斜を持つこの部分は、空気注入通路を通る材料の可能な流れを効率的に中断するために十分な最小長さを持たなければならない。この長さは、一般的に15mmより大きく、好ましくは20mmより大きい。
【0026】
格子の摩耗速度を制限するためには、使用時に材料は冷却されなければならないだけでなく、格子自身も冷却されなければならない。この目的のために、十分な流速と速度を考慮するが、流れの方向が中空部の下部に平行である流れにも従って、中空部の下部の構成壁が空気により効率的に掃除されかつ冷却されるように格子の中空部の下部中に空気が注入されることが条件とされる。
【0027】
格子板の寿命は、冷却される材料の通過による酸化及び摩滅の現象にさらされる構成要素及び格子の壁の厚さの減少に転換されるある摩耗を越えて、格子がその機能を適切に満たさずかつ取りはずさなければならないという事実により決定される。それは、設備の完全な停止を必要とし、それは、完全な設備を与えるためにサービスを可能にするために十分な冷却のための時間を包含するので、極めて不利な立場に置く。この目的を達成するために、摩滅の現象は、熱い材料に直接露出される格子板の表面を厳密に制限することにより戦わなければならず、酸化の現象は、これらの表面が効率的に冷却されることを確保することにより戦わなければならない。