特許第5738424号(P5738424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5738424中央管理型の時分割方式蒸気滅菌システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5738424
(24)【登録日】2015年5月1日
(45)【発行日】2015年6月24日
(54)【発明の名称】中央管理型の時分割方式蒸気滅菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20150604BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20150604BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20150604BHJP
【FI】
   A61L2/20
   A61L2/24
   B08B3/02 C
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-542031(P2013-542031)
(86)(22)【出願日】2011年11月17日
(65)【公表番号】特表2014-510546(P2014-510546A)
(43)【公表日】2014年5月1日
(86)【国際出願番号】US2011061175
(87)【国際公開番号】WO2012074768
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2013年6月14日
(31)【優先権主張番号】13/296,766
(32)【優先日】2011年11月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/418,015
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】302044247
【氏名又は名称】アメリカン ステリライザー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒル、アーロン、エル.
(72)【発明者】
【氏名】ミールニック、サディアス、ジェイ
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−535215(JP,A)
【文献】 米国特許第06445969(US,B1)
【文献】 特表2006−500300(JP,A)
【文献】 特表2007−524444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00− 2/26
A61L 11/00−12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品が複数の処理ラインに沿って移動するシステムであって、その複数の処理ラインへと滅菌剤蒸気を輸送するシステムにおいて、
滅菌剤蒸気を供給するための一つの気化ユニットと、
前記滅菌剤蒸気を前記一つの気化ユニットから複数の処理ラインへと輸送する輸送手段と、
前記システムおよび前記複数の処理ラインに関する複数の動作パラメータを検出する検出手段と、
前記検出手段から信号を受信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、第一の動作モードおよび第二の動作モードで動作し、前記第一の動作モード中には、前記システムまたは前記複数の処理ラインについて異常を示すイベントが発生したかどうか判定するために、前記検出手段を連続的に監視するようプログラムされており、
前記コントローラは、前記イベントに応じて前記第二の動作モードで動作し、前記第二の動作モード中には、前記複数の処理ラインのうちの異常が発生していない一本または複数本が中断することなく動作し続けるようにするために、前記システムを調整するようプログラムされている
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記一つの気化ユニットの出力を調整するようにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記一つの気化ユニットにより供給される前記滅菌剤蒸気の濃度を調整するようにプログラムされていることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記一つの気化ユニットにより供給される前記滅菌剤蒸気の温度を調整するようにプログラムされていることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記一つの気化ユニットにより供給される前記滅菌剤蒸気の流量を調整するようにプログラムされていることを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記複数の処理ラインのそれぞれへと供給される前記滅菌剤蒸気の濃度を個別に制御するようにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記複数の処理ラインのそれぞれへと供給される前記滅菌剤蒸気の温度を個別に調整するようにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記複数の処理ラインのそれぞれへと供給される前記滅菌剤蒸気の流量を個別に調整するようにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記複数の処理ラインの動作を調整するようにプログラムされていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラが、前記イベントに応じて、前記複数の処理ラインの速度を調整するようにプログラムされていることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記検出手段が、前記複数の処理ラインに個別に割り当てられた搬送センサを備え、
前記搬送センサが、当該搬送センサに割り当てられた前記処理ラインの速度を示す信号を発信するように動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記システムの異常を示す前記イベントが、前記搬送センサからの信号であって、前記複数の処理ラインのうち当該搬送センサに割り当てられたものに沿って移動する物品の速度がユーザの設定した許容範囲外となっていることを示す信号であることを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記検出手段が、前記複数の処理ラインに個別に割り当てられた物品センサを備え、
前記物品センサが、当該物品センサに割り当てられた処理ラインに沿った所定の位置に物品が存在することを示す信号を発信するように動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記システムの異常を示す前記イベントが、前記物品センサからの信号であって、前記複数の処理ラインのうち当該物品センサに割り当てられたものに沿って移動する物品の数量がユーザの設定した許容範囲外となっていることを示す信号であることを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記検出手段が、前記複数の処理ラインに個別に割り当てられた滅菌剤センサを備え、
前記滅菌剤センサが、当該滅菌剤センサに割り当てられた処理ラインに沿った個別位置における前記滅菌剤蒸気の濃度を示す信号を発信するように動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記システムの異常を示す前記イベントが、前記滅菌剤センサからの信号であって、前記個別位置における前記滅菌剤蒸気の濃度がユーザの設定した許容範囲外となっていることを示す信号であることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記検出手段が、前記複数の処理ラインに個別に割り当てられた温度センサを備え、
前記温度センサが、当該温度センサに割り当てられた処理ラインに沿った個別位置における前記滅菌剤蒸気の温度を示す信号を発信するように動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記システムの異常を示す前記イベントが、前記温度センサからの信号であって、前記個別位置における前記滅菌剤蒸気の温度がユーザの設定した許容範囲外となっていることを示す信号であることを特徴とする請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記検出手段が、前記複数の処理ラインに個別に割り当てられた流速センサを備え、
前記流速センサが、当該流速センサに割り当てられた処理ラインに沿った個別位置における前記滅菌剤蒸気の流速を示す信号を発信するように動作可能であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムの異常を示す前記イベントが、前記流速センサからの信号であって、前記個別位置における前記滅菌剤蒸気の流速がユーザの設定した許容範囲外となっていることを示す信号であることを特徴とする請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記一つの気化ユニットが、
途切れのない液体滅菌剤の流れを供給するための滅菌剤供給ユニットに接続されており前記液体滅菌剤を気化させる気化と、
記滅菌剤蒸気を前記複数の処理ラインのそれぞれに沿った個別位置へと輸送する第一の送風機と
備えたことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記一つの気化ユニットから前記複数の処理ラインの一つ一つへとそれぞれ延びる複数の管路と、
前記一つの気化ユニットから前記複数の処理ラインのそれぞれへの前記滅菌剤蒸気の流れを前記コントローラがそれぞれ制御できるようにするための、前記複数の管路のそれぞれの内に配置された弁と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大まかには物品の滅菌に関するものであり、より具体的には、物品が沿って移動する複数の処理ラインへと蒸気滅菌剤を中央供給源から供給するシステムと、その運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造業において、食品や飲料等の包装製品のための設備は、複数の処理ラインを備えることが知られている。こうした処理ラインは、容器などの物品に対して製品を収納するように設計されている。この容器は一般的に、目的の製品が詰め込まれる前に滅菌される。
【0003】
詰め込みラインによっては、繊維材の平板からなる容器を用いることがある。繊維材は通常、板紙やプラスチックや箔を重ね合わせた積層体からなるものである。繊維材は、容器へと組み立てられる前に過酸化水素液の浴槽に浸されて、乾かされて、それから容器へと組み立てられる。容器を高濃度の過酸化水素液(典型的には35%の濃度)に浸した場合、素材内に過酸化水素が高いレベルで残留してしまうことがある。
【0004】
そのほかに、閉鎖端と開放端を有する容器を用いる処理ラインもある。各容器の開放端は上方へと向けられて、過酸化水素液を容器内へ噴霧できるようにされる。その後、容器は無菌水ですすがれる。容器を水切りする際には、容器はひっくり返されて、容器の開放端が下方へと向くようにされる。それから容器は再度ひっくり返されて、飲料を充填できるように、容器の開口部が上方へと向けられる。
【0005】
容器の滅菌にあたっては、容器の向き合わせを繰り返す必要のない方法や、容器に残留する過酸化水素の量が抑えられる方法で行われることが望ましい。滅菌工程を簡略化することにより、そして容器に残留する過酸化水素の量を抑えることにより、容器の滅菌に必要な時間を短縮することができる。
【0006】
近年、食品製造業において、容器を滅菌するのに過酸化水素蒸気が用いられるようになってきている。過酸化水素蒸気は、容器を素早く滅菌することにおいて、そして容器に残留する過酸化水素の量を少なくすることにおいて効果的であることが確認されている。システムによっては、中央供給源から複数の処理ラインへと過酸化水素蒸気を供給して、処理ラインに沿って移動する容器を滅菌するようになっていることがある。こうしたシステムにおいて、過酸化水素蒸気は通常、中央供給源から各処理ラインに対して、同時に、同じ濃度で、同じ流量で輸送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第11/741299号(米国特許出願公開第2007/0253859号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
いずれかの処理ライン沿いにて異常が発生した際に、過酸化水素蒸気の中央供給源に関してある問題が生じる。一つの処理ライン沿いでの異常が解消されるまで、全ての処理ラインが停止されてしまうのである。全ての処理ラインが停止してしまうと、想像はつくであろうが、設備の生産力は低下し、設備の運用コストは増加する。そこで、システムまたは複数の処理ラインのうち一本もしくは複数本に関して異常を示すイベントが検出された際にも一つまたは複数の処理ラインへと滅菌剤蒸気を供給するシステムおよび方法があると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、それに沿って物品を移動させる複数の処理ラインへと滅菌剤蒸気を供給するためのシステムを提供する。このシステムは、複数の処理ラインに割り当てられた複数のセンサを備え、このセンサは、システムおよび複数の処理ラインの動作を示す信号を発信する。この複数のセンサを連続的に監視するために、コントローラが設けられる。このコントローラは、システムに関する異常または複数の処理ライン中の一本か数本に関する異常を示す一件のイベント(または数件のイベント)を検出するために、複数のセンサを連続的に監視するようプログラムされる。イベントが検出された際、複数の処理ラインのうち一本または数本の動作が途切れなく行われるように、コントローラはシステムおよび/または複数の処理ラインの動作を調整する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、それに沿って物品を移動させる複数の処理ラインへと滅菌剤蒸気を輸送するシステムが提供される。このシステムは、滅菌剤蒸気の中央供給源を備える。この中央供給源から複数の処理ラインへと滅菌剤蒸気を輸送する輸送装置が設けられる。システムおよび複数の処理ラインに関する複数の動作パラメータを検出する複数の検出装置が設けられる。この複数の検出装置からの信号を受信するコントローラが設けられる。このコントローラは、複数の検出装置を連続的に監視して、システムまたは複数の処理ラインについて異常を示すイベントが発生したかどうかを判定するようにプログラムされている。このコントローラは、イベントに応じてシステムの動作を調整して、複数の処理ラインのうち一本または複数本を中断することなく動作させ続けるようにプログラムされている。
【0011】
本発明の利点は、滅菌剤蒸気の中央供給源から複数の処理ラインへ滅菌剤蒸気を供給するシステムとなっていることにある。
本発明の別の利点は、上述のシステムにおいて、複数の処理ラインの動作を連続的に監視する複数のセンサを備えたことにある。
【0012】
本発明のさらに別の利点は、上述のシステムにおいて、コントローラが、システムまたは複数の処理ラインのうちの一本もしくは複数本について異常を示すイベントを検出するようプログラムされていることにある。
【0013】
本発明の別の利点は、上述のシステムにおいて、コントローラが、検出されたイベントに応じてシステムの動作を調整して、複数の処理ラインのうちの一本または複数本に対する滅菌剤蒸気の供給を中断することなく行うようプログラムされていることにある。
【0014】
本発明のさらに別の利点は、上述のシステムにおいて、コントローラが、システムまたは複数の処理ラインのうちの一本もしくは複数本に関する異常を示す一件のイベント(または数件のイベント)に応じて中央供給源の出力を調整することにある。
【0015】
本発明のさらなる別の利点は、上述のシステムにおいて、コントローラが、システムまたは複数の処理ラインのうちの一本もしくは複数本に関する異常を示す一件のイベント(または数件のイベント)に応じて中央供給源からの滅菌剤蒸気の濃度を調整することにある。
【0016】
本発明の別の利点は、上述のシステムにおいて、コントローラが、システムまたは複数の処理ラインのうちの一本もしくは複数本に関する異常を示す一件のイベント(または数件のイベント)に応じて中央供給源からの滅菌剤蒸気の流量を調整することにある。
【0017】
本発明のさらなる別の利点は、上述のシステムにおいて、コントローラが、システムまたは複数の処理ラインのうちの一本もしくは複数本に関する異常を示す一件のイベント(または数件のイベント)に応じて中央供給源からの滅菌剤蒸気の温度を調整することにある。
【0018】
本発明のさらに別の利点は、上述のシステムにおいて、コントローラが、システムまたは複数の処理ラインのうちの一本もしくは複数本に関する異常を示す一件のイベント(または数件のイベント)に応じて複数の処理ラインのうちの一本または複数本の速度を調整することにある。
【0019】
これらの利点およびその他の利点は、以下の好ましい実施形態の説明や添付の図面および特許請求の範囲を考え合わせることにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明は、特定の部品や各部品の組み合わせによる物理的な形態をなすことができ、好ましい実施形態の一つが本明細書にて詳細に説明され、本出願の一部をなす添付の図面にて以下のように例示される。
図1】本発明の好適な実施形態の一つを例示する図であり、蒸気滅菌剤を複数の処理ラインへと供給する滅菌剤供給システムの概略図である。
図2図1に示す滅菌剤供給システムの気化ユニットを描き表す図である。
図3図1に示す滅菌剤供給システムの曝気ユニットを例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において参照する図面は本発明の実施形態の一つを図示するものであるが、本発明を同一の形態に限定するものではなく、図1では、複数の処理ラインへ滅菌剤蒸気を供給する滅菌剤供給システム10を示していて、この複数の処理ラインに沿って容器12が移動するようになっている。この滅菌剤供給システム10は、食料品包装設備において、複数の処理ラインに沿って移動する容器を滅菌するものとして説明する。ただし、この他の、例えば医療器具といった物品が沿って移動する複数の処理ラインへ滅菌剤を供給するシステムにおいても、本発明は有用な適用法が見出し得ることを理解されたい。
【0022】
図示の実施形態において、コンベア14A,14Bは、システム10に属する二本(2つ)の処理ラインを表している。コンベア14Aは、容器12用の第一の処理ラインの一部を表す。コンベア14Bは、容器12用の第二の処理ラインの一部を表す。容器12をコンベア14Aに沿って移動させるために、第一のモータ16Aが設けられる。容器12をコンベア14Bに沿って移動させるために、第二のモータ16Bが設けられる。
【0023】
コンベア14A,14Bは、除染室50A,50Bを通って延びている。システム10は、コンベア14A,14Bの除染室50A,50B内に配置される部分へと滅菌剤蒸気を送る。各除染室50A,50Bは、囲繞体または筐体52を有する。筐体52は、滅菌される容器12がコンベア14A,14Bによって搬送されて通過する空間または領域54を規定する。容器12がシステム10によって滅菌された後、容器12は詰め込み作業所(図示せず)に搬送され、そこで飲料やその他何らかの製品が容器12に詰め込まれる。
【0024】
本発明に係る滅菌剤供給システムは、大まかに述べると、滅菌剤供給ユニットと、空調ユニットと、気化ユニットと、無害化ユニットと、曝気ユニットと、から構成される。以上の各構成要素は、参照することにより本明細書に組み込まれる特許文献1で詳細に記載されている。図示の実施形態では、滅菌剤供給システム10は、滅菌剤供給ユニット100を一つと、空調ユニット200を一つと、気化ユニット300を一つと、無害化ユニット600を一つと、曝気ユニット700を一つと、を備える。滅菌剤供給システム10が二本(2つ)より多くの処理ラインへ滅菌剤蒸気を輸送することも考えられる。しかし説明を簡略化するため、以下においては、二本(2つ)の処理ラインへの滅菌剤蒸気の輸送について滅菌剤供給システム10を説明する。
【0025】
ここで図1を参照すると、滅菌剤供給ユニット100が示されている。供給ライン112は、滅菌剤供給ユニット100を液体滅菌剤の外部供給源114に接続する。気化ユニット300への、連続した途切れのない滅菌剤の流れができるように、貯留部130が設けられている。気化送込みライン192は一端が貯留部130、他端が気化ユニット300に接続されている。
【0026】
空調ユニット200は、空調のため、すなわち、気化ユニット300で使用される空気を濾過および乾燥させるため、そして曝気ユニット700により使用される空気を濾過するために設けられている。空気導入管212は、雰囲気すなわち室内気に通じる第一の端部と、空調ユニット200に接続されるもう一つの端部とを有する。第一の空気供給ライン282は、一端が空調ユニット200に、他端が気化ユニット300に接続される。第二の空気供給ライン216は、一端が空調ユニット200に、他端が曝気ユニット700に接続される。
【0027】
図2に示すように、気化ユニット300は、滅菌剤供給ユニット100からの気化送込みライン192に接続されるとともに、空調ユニット200からの空気ライン282に接続されている。気化ユニット300は、送風機322と、空気流量を測定する流量素子332と、加熱器342と、気化器360と、を備えている。
【0028】
送風機322は、空調ユニット200からの空気供給ライン282内に配置されている。送風機322は、モータ324によって駆動される。モータ324は、通り抜ける空気流を増減して送風機322の出力を制御することができる速度可変のモータであることが好ましい。送風機322は、動作の際、空調ユニット200を通じて、濾過した乾燥空気を引き込む。図示の実施形態では、送風機322の送出口は管路328に接続されている。流量素子332は、管路328を通る空気流量を測定するために、管路328内に配置されている。流量素子332は、ベンチュリ装置であるのが望ましい。センサ334は、流量素子332での圧力変化を測定して、流量素子332を通る空気流量を示す信号を発信する。ベンチュリ装置が望ましいのは、空気流量の分解能を高いものとできるほか、空気が通り抜けて流れるにあたっての力の損失が少ないからである。流量素子332の下流には温度センサ338が配置されている。
【0029】
加熱器342は、管路328内に配置されており、管路328を通って流れる空気を加熱するために設けられている。加熱器342は、管路328を通って流れる空気を、気化過酸化水素を十分に高い温度まで加熱できるように、そして滅菌剤供給システム10内の結露を防止するのに必要な所望の温度を維持するに足りる高い温度まで加熱できるように、設計されている。実施例としては、加熱器342は、管路328を通って流れる空気を少なくとも105℃程度まで加熱することができる。異なる実施例としては、加熱器342は、管路328を通って流れる空気を少なくとも180℃まで加熱することができる。加熱器342の下流には温度センサ344が配置されている。温度センサ344は、管路328を通って流れる空気の温度を示す信号を発信する。
【0030】
気化器360は、管路328内で加熱器342の下流側に配置されている。気化器360の出口側の管路328内に過酸化水素蒸気センサ362が配置されており、これは過酸化水素蒸気および水蒸気の濃度を示す信号を発信する。センサ362は、好ましくは赤外線(IR)センサであり、さらに好ましくは近赤外(IR)センサである。
【0031】
導管423は、一端では濾過・乾燥した加圧空気の供給源(図示せず)に、他端では気化器360に接続されている。滅菌剤を気化器360へと加圧の下で供給するために、モータ428によって駆動されるポンプ426が滅菌剤供給ライン192に配置されている。ポンプ426は、可変速度の蠕動式ポンプであるのが望ましい。ポンプ426は、滅菌剤を特定の速度で気化器360へと送り込むために設けられている。モータ428は可変速度モータ、それもモータ428の速度を変えることで気化器360への滅菌剤の注入速度を変化できるものであるのが望ましい。ポンプ426の下流側では、圧力センサ429が滅菌剤供給ライン192内に配置されている。圧力センサ429は適切な滅菌剤注入速度を監視(そして確保)する。
【0032】
図2に示すように、管路328は、第一の分岐路328Aと第二の分岐路328Bとに分かれる。気化ユニット300は、過酸化水素蒸気分岐管路328A,328Bによって除染室50A,50Bに接続されている。第一の分岐路328Aを通る流れの量を調節するため、第一の分岐路328A内に第一の弁364Aが配置されている。第二の分岐路328Bを通る流れの量を調節するため、第二の分岐路328Bに第二の弁364Bが配置されている。
【0033】
過酸化水素蒸気分岐管路328A,328Bのそれぞれの端部には、多岐管542が取り付けられている。第一の分岐路328Aに連結した多岐管542と、第二の分岐路328Bに連結した多岐管542とは、実質的に同等のものである。そのため、第一の分岐路328Aに連結した多岐管542についてのみ説明すれば、その説明は第二の分岐路328Bに連結した多岐管542にも同様に適用されることが理解されるだろう。図示の実施形態では、多岐管542は筐体52内に配置されている。多岐管542は複数の相隔たる開口部またはノズル544を備えており、これらは除染室50Aの筐体52内の空間または領域54に通じている。ノズル544はコンベア14Aの上方に配置されて、除染室50Aを通って移動する容器12上へ均一に過酸化水素蒸気を分配するようになっている。
【0034】
図1に示すように、管路612,614は除染室50Aの囲繞体52を無害化ユニット600へと連絡している。管路612は、囲繞体52の底部を通して囲繞体52内の領域54に通じている。管路614は、囲繞体52の側面の一つを通して囲繞体52内の領域54に通じている。排出管路618は無害化ユニット600を周囲環境へと流体的に連絡する。無害化ユニット600は中和器を含んでいる。中和器は大まかに言うと、通り抜けて流れる過酸化水素を分解するように動作可能な触媒装置である。ここで、触媒中和器は過酸化水素蒸気を水と酸素に変換する。
【0035】
次に、図3を参照すると、曝気ユニット700が最もよく示されている。曝気ユニット700は、空調ユニット200からの第二の空気供給ライン216に接続されている。空調ユニット200からの第二の空気供給ライン216は、曝気ユニット700に濾過空気を供給する。第二の空気供給ライン216は、送風機712の入口側に接続されている。送風機712は可変速度モータ714によって駆動される。送風機712は、曝気ユニット700内に配置されており、空調ユニット200および第二の空気供給ライン216を通して外気をシステム10へ引き込むようになっている。送風機712の出口側は曝気管路722に接続されている。曝気管路722は曝気ユニット700にわたって延びている。送風機712の下流側では、流量素子732が曝気管路722内に配置されている。望ましい実施形態においては、流量素子732は、ベンチュリ装置である。
【0036】
圧力センサ734は流量素子732での圧力変化を測定して、曝気管路722を通る流量を示す信号を発信する。流量素子732の前(上流)には、温度センサ736が配置されている。この温度センサ736は、送風機712と流量素子732の間に配置されている。曝気管路722を通る流量を調節するために、弁738が曝気管路722内で流量素子732の下流に配置されている。弁738の下流には濾過体742が配置されている。濾過体742、好ましくはHEPAフィルタ、は、曝気管路722を通って流れる空気の二次濾過を行う。曝気管路722内で濾過体742の下流側には加熱器744が配置されている。加熱器744は、管路722に沿って流れる空気を加熱するために設けられている。
【0037】
図3に示すように、曝気管路722は、第一の分岐路722A及び第二の分岐路722Bに分かれる。曝気ユニット700は、曝気分岐管路722A,722Bによって除染室50A,50Bに接続されている。第一の分岐路722Aを通る流れの量を調節するために、第一の弁752Aが第一の分岐路722A内に配置されている。第二の分岐路722Bを通る流れの量を調節するために、第二の弁752Bが第二の分岐路722Bに配置されている。
【0038】
曝気分岐管路722A,722Bのそれぞれの端部には、多岐管762が接続されている。第一の分岐路722Aに連結した多岐管762と、第二の分岐路722Bに連結した多岐管762とは、実質的に同等のものである。そのため、第一の分岐路722Aに連結した多岐管762についてのみ説明すれば、その説明は第二の分岐路722Bに連結した多岐管762にも同様に適用されることが理解されるだろう。図示の実施形態では、多岐管762は、除染室50Aの筐体52内に配置されている。多岐管762は、濾過・加熱された空気を除染室50A内に分配するための複数のノズルまたはポート764を含む。多岐管762は、コンベア14Aが除染室50Aを抜け出る位置でコンベア14Aの上方に配置されている。多岐管762内には温度センサ766が配置されている。曝気ユニット700は基本的に、コンベア14A上の容器12から過酸化水素蒸気を除去し、結露を防止するために、加熱・濾過された空気を除染室50Aへ供給する。
【0039】
本発明では、除染室50A、50B内に複数のセンサが配置されている。これら複数のセンサは、コントローラ800(詳しくは後述)に接続されており、滅菌剤供給システム10とコンベア14A,14Bの動作を示す信号を発信する。コンベア14Aに割り当てられたセンサは、コンベア14Bに割り当てられたセンサと実質的に同等のものである。そのため、コンベア14Aに関するセンサについてのみ説明すれば、その説明はコンベア14Bに関するセンサにも同様に適用されることが理解されるであろう。
【0040】
図2に示すように、コンベア14Aに対して、温度センサ548と過酸化水素蒸気センサ552が配置されている。図示の実施形態では、温度センサ548と過酸化水素蒸気センサ552は、多岐管542内に配置されている。温度センサ548は、多岐管542内の温度を示す信号を発信する。過酸化水素蒸気センサ552は、多岐管542内の過酸化水素蒸気および水蒸気の濃度を示す信号を提供する。センサ552は、好ましくは近赤外(IR)センサである。
【0041】
コンベア14Aに対して、搬送センサ562が配置されている。搬送センサ562は、領域54を通り抜けるコンベア14Aの動きを示す信号を発信する。例えば、搬送センサ562は、コンベア14Aが動く速度を示す信号を発信することができる。図示の実施形態では、センサ562は、コンベア14Aと接触するように配置されているホイールを含んでいる。ここで、コンベア14Aが動くことでホイールが回転するようになっている。ホイールが回転すると、センサ562がコンベア14Aの動きを示す信号を発信する。センサ562は従来から知られているセンサであってもよく、例えば領域54を通るコンベア14Aの動きを検出するのに有用な近接センサとすることも考えられる。
【0042】
コンベア14Aに対して、物品センサ564が配置されている。物品センサ564は、容器12が領域54を移動しているかどうかを示す信号を発信する。図示の実施形態では、センサ564は、領域54内の所定位置での物品の存在を検出するのに有用な従来の近接センサである。
【0043】
コントローラ800は、システム10内に配置された各種センサからの信号を受信する。図示の実施形態では、コントローラ800は、滅菌剤供給システム10やコンベア14A,14Bに割り当てられた複数のセンサからの信号を受信する。具体的には、コントローラ800は、センサ334,338,344,362,429,548,552,562,564,734,736,766からの信号を受信する。システム10やコンベア14A、14Bの動作を制御するため、そしてシステム10またはコンベア14A、14Bについて異常を示すイベントが発生したかどうかを判定するために、コントローラ800は定常的に上記センサ群からの信号を監視するようにプログラムされている。コントローラ800は、異常を示すイベントが検出された場合にはシステム10および/またはコンベア14A,14Bの動作を調整して、できるだけ多くの処理ラインの連続動作を維持するようにプログラムされている。具体的には、コントローラ800が検出したイベントの内容に応じて、コントローラ800は、一本または複数本の処理ラインを停止し、それと同時に、できるだけ多くの処理ラインが中断することなく動作し続けるようにするため、滅菌剤供給システム10および/またはコンベア14A,14Bの動作を調整する。
【0044】
異常を示すイベントとしては、これらに限定するものではないが、以下のものが挙げられる:
1)処理ラインが容器12を搬送している速度が許容速度範囲外である;
2)処理ラインに沿って搬送される容器12の数が想定範囲外である;
3)処理ラインへ輸送される過酸化水素蒸気の濃度が許容範囲外である;
4)処理ラインへ輸送される空気の温度が許容範囲外である;
5)処理ラインへ輸送される過酸化水素蒸気の流量が許容範囲外である。
なお、その他のセンサをシステム10内に設置してもよく、それによって上記以外の異常を示す信号が発信されるようにすることも考えられる。
【0045】
コントローラ800は、第一および第二の処理ラインへ輸送される過酸化水素蒸気の濃度がユーザの設定した許容範囲内となるように、滅菌剤供給システム10における空気の温度、空気の流速、滅菌剤の温度、滅菌剤の注入速度を制御するようプログラムされている。また、コントローラ800は、容器12が第一の処理ラインおよび第二の処理ラインに沿って移動する速度も制御する。具体的には、容器12が過酸化水素蒸気に曝される時間が容器12を滅菌するのに十分なものとなるように、コントローラ800は容器12の移動する速度を制御する。コントローラ800は、ユーザの設定した過酸化水素蒸気濃度の許容範囲をユーザが入力できるようにするための入力手段を含む。
【0046】
滅菌システムで過酸化水素蒸気を使用するにあたっては、滅菌すべき物品に過酸化水素蒸気が結露してしまうことを防止する必要がある。結露を防止するため、定常状態、定常流の過酸化水素蒸気滅菌処理において、滅菌剤注入速度、空気流量、空気温度が制御されなければならない。本発明の実施形態の一例においては、結露を防止するために、過酸化水素蒸気が所望の濃度および温度となるようシステム10が制御される。具体的には、空気流中の過酸化水素蒸気の濃度を、滅菌されるべき物品の温度より露点温度が低くなる濃度に維持するように、システム10の動作が制御される。システム10は、特許文献1に詳しく説明されているような数学的モデルに基づいて制御されてもよい。
【0047】
また、各処理ラインに輸送される空気が、ユーザの設定した許容流量範囲およびユーザの設定した許容温度範囲内となるように、コントローラ800は、曝気ユニット700における空気温度および空気流量も制御するようにプログラムされている。コントローラ800は、上記ユーザの設定した許容範囲をユーザが入力できるようにするための入力手段を含む。
【0048】
コントローラ800は、センサ334,338,344,362,429,548,552,562,564,734,736,766からの信号を受信する。また、コントローラ800は、モータ16A,16B,324,428,714と、弁364A,364B,738,752A,752Bと、加熱器342,744の動作も制御する。特に、以下に詳述するように、コントローラ800は、センサ334,338,344,362,429,548,552,562,564,734,736,766から受信した信号に基づいて、上記構成要素の動作を制御する。
【0049】
ここで本発明の動作について言及すると、コントローラ800は、二通り(2つ)の相異なる動作モードでシステム10を動作させるようにプログラムされている、すなわち:
(1)第一の、通常動作モードと、(2)第二の、イベント駆動型動作モードである。第一の動作モード中には、処理ラインに沿って搬送される容器12が滅菌されるように、すべての処理ラインが完全稼動されている。第二の動作モード中には、システム10またはコンベア14A,14Bの異常を示すイベントに応じて、コントローラ800が随時システム10および/またはコンベア14A,14Bの動作を調整する。
【0050】
第一の動作モード中は、コントローラ800は、複数の処理ラインに沿って搬送される容器12が滅菌されるようにシステム10を制御する。図示の実施形態では、容器12は、コンベア14Aで表される第一の処理ラインと、コンベア14Bで表される第二の処理ラインに沿って搬送される。詳しくは、コントローラ800が弁364A,364Bを開放位置にして、コンベア14A,14Bに沿って移動する容器12へと過酸化水素蒸気が滅菌剤供給システム10から輸送されるようにする。
【0051】
上述したように、コントローラ800は、モータ16A,16B,324,428と加熱器342が、センサ334,338,344,362,429,548,552,562,564から受信した信号に基づいて制御されるようにプログラムされている。具体的には、センサ552からの信号に基づいて、コントローラ800が、気化器360へ供給される液体過酸化水素の量が除染室50A,50Bを通って移動する容器12を殺菌するのに十分となるように、モータ428を制御する。また、コントローラ800は、気化器360を通り抜けて行く空気の量が、除染室50A、50Bを通って移動する容器12へと過酸化水素蒸気を輸送するのに十分となるようにモータ324を制御する。多岐管542の温度センサ548からの信号に基づいて、コントローラ800は、各除染室50A,50B内の過酸化水素蒸気濃度がユーザの設定した許容範囲に収まり続けるのに必要な空気温度が得られるように、加熱器342を制御する。除染室50A,50B内の過酸化水素濃度に基づいて、コントローラ800は、容器12を滅菌するのに十分な時間にわたり容器12が過酸化水素蒸気に曝されることが可能な速度で、モータ16A,16Bが容器12を第一および第二の処理ラインに沿って移動させるようにする。上記したように、センサ562は、コンベア14A,14Bが容器12を移動させている速度を示す信号を発信する。センサ564は、コンベア14A,14Bに沿って移動している容器12の数の示度を発信する。ここで、コントローラ800は、センサ562,564からの信号に基づいて、正しい速度で正しい数の容器12が除染室50A,50Bを通って搬送されているかどうかを判定する。
【0052】
本発明の実施形態の一例においては、コントローラ800は、空気温度および曝気ユニット700からの空気流量も制御する。ここで、コントローラ800は、除染室50A,50Bを通って移動する容器12へと輸送される空気がユーザの設定した許容範囲内となるように、曝気ユニット700を制御する。本実施形態では、コントローラ800は、曝気ユニット700から除染室50A,50Bの両方へと無菌暖気が輸送されるように、弁752A,752Bを開放位置にする。無菌暖気は、両除染室50A,50Bを通って移動する容器12から過酸化水素蒸気を除去するために供給される。具体的には、センサ736,734,766からの信号に基づき、コントローラ800が、曝気ユニット700から輸送される空気の温度と空気の量が除染室50A,50Bを通って移動する容器12から過酸化水素蒸気を除去するのに十分となるよう、モータ714および加熱器744を制御する。
【0053】
残留過酸化水素蒸気は、管路612,614を通って除染室50A,50Bを出て行く。残留過酸化水素蒸気は無害化ユニット600に輸送され、そこで過酸化水素蒸気は水と酸素に分解される。水と酸素は、排出管路618を通じて無害化ユニット600の外部へ運ばれる。
【0054】
上記で説明した通り、コントローラ800は、このようにシステム10を第一の動作モードで動作させて、この動作モードにおいてはコンベア14A,14Bに沿って移動する容器12が滅菌される。
【0055】
第一の動作モード中、コントローラ800は、システム10またはコンベア14A,14Bについて異常を示すイベントが発生したかどうかを判定するために、システム10内に配置された各種センサを常に監視する。例えば、いずれかの除染室内の過酸化水素蒸気の濃度がユーザの設定した許容範囲外となるとき、センサ522がそうした出来事を示す信号をコントローラ800へ発信する。コントローラ800は、検出された信号、例えば上記に挙げたような異常を示す信号に基づいて、第二の、イベント駆動型動作モードを起動するようにプログラムされている。第二の、イベント駆動型動作モード中は、概要的には、できるだけ多くの処理ラインが動作し続けるように、コントローラ800がシステム10および/またはコンベア14A,14Bの動作を調整する。
【0056】
第二の動作モードに係る本発明の動作について、第一の処理ライン、すなわちコンベア14Aに対応する処理ライン沿いで発生した異常を示すイベントに関するものとして詳細に説明する。しかしながら、以下の説明は、第二の処理ライン、すなわちコンベア14Bに対応する処理ライン沿いで発生した異常を示すイベントを検出した場合にも同様に適用されるであろうと考えられる。
【0057】
第一の処理ライン沿いでのイベントを検出すると、コントローラ800はまず、第一の処理ラインを停止するべきかどうか、あるいは第一の処理ラインが稼動し続けるように第一の処理ラインの動作を「修正」できるかどうか、を判断する。例えば、コントローラ800宛ての信号が、第一の処理ラインへの滅菌剤蒸気の流れが完全に停止していることを示している場合には、コントローラ800は、第一の処理ラインを停止することが必要であると判断すればよい。コントローラ800は、この場合には、除染室50Aが気化ユニット300から流体的に分離されるように、弁364Aを閉鎖位置に動作させるようプログラムされている。それと同時に、コントローラ800は、容器12がコンベア14、すなわち第一の処理ラインに沿って移動しないように、モータ16Aを停止させる。
【0058】
一方、コントローラ800宛ての信号が、除染室50Aへ輸送される滅菌剤蒸気がユーザの取り決めた許容範囲外であることを示している場合には、コントローラ800は、第一の処理ラインに沿って移動する容器12の滅菌を継続すべく第一の処理ラインの動作を「修正」することができると判断してもよい。例えば、除染室50Aへの滅菌剤蒸気の流量が低い場合には、コントローラ800はモータ16Aに、容器12が除染室50Aを通って移動する速度が減少するようにさせて、容器12が除染室50内にいる期間が容器12を滅菌するのに十分なものとなるようにすればよい。除染室50Aへの滅菌剤蒸気の流量が高い場合には、コントローラ800は弁364Aに、除染室50Aへの滅菌剤蒸気の流量が減少するようにさせればよく、さらに/または、コントローラ800はモータ16Aに、容器12が除染室50Aを通って移動する速度が増加するようにさせればよい。また、他のパラメータ、例えば滅菌剤蒸気の濃度や温度などがユーザの設定した許容範囲外となっている場合にも第一の処理ラインの動作を修正するように、コントローラ800をプログラムしておくことも考えられる。
【0059】
コントローラ800が第一の処理ラインを停止させるか、第一の処理ラインの動作を修正するかによらず、コントローラ800は第二の処理ラインに割り当てられたセンサを監視し続ける。第二の処理ラインに割り当てられたセンサから受信した信号に基づき、コントローラ800は、第二の処理ラインすなわちコンベア14Bに沿って搬送される物品が滅菌され続けるようにすべく、ポンプ426および送風機322の出力の調整をモータ324,428に行わせる。例えば、除染室50Bのセンサ552からの信号を用いて、除染室50Bに供給される過酸化水素蒸気の濃度がユーザの設定した許容範囲内となっているかどうかを判定するように、コントローラ800はプログラムされる。濃度がユーザの設定した許容範囲外である場合には、コントローラ800は、気化器360への液体過酸化水素の流速の増減をモータ428に行わせる。同様に、コントローラ800は、除染室50Bへの空気の流速の増減をモータ324に行わせる。コントローラ800は、除染室50Bにおける、センサ552によって測定される過酸化水素蒸気の濃度がユーザの設定した許容範囲内となるまで、モータ324、428を調整し続ける。同様に、コントローラ800は、除染室50B内の空気が、除染室50B内の過酸化水素濃度がユーザの設定した許容範囲内に収まる空気流量と温度になるまで、モータ324と加熱器342を調整するようにプログラムされている。また、コントローラ800は、容器12が過酸化水素蒸気に曝される期間が容器12を滅菌するのに十分となるようモータ16Bの速度を調整するようにもプログラムされている。
【0060】
また、コントローラ800がコンベア14Aの異常を示すイベントに基づいて第二の動作モードを起動するようにしてもよいと考えられる。この場合、異常を示すイベントは、容器12が除染室50Aを通っての移動をしなくなってしまったことを示すセンサ564からの信号であってもよい。同様に、異常を示すイベントは、コンベア14Aの速度が許容範囲外であることを示すセンサ562からの信号であってもよい。上述の信号に基づいて、コントローラ800は、上記で説明したように、第二の動作モードを起動するようプログラムされている。
【0061】
また、コントローラ800は、作業者から受信した信号に基づいて第二の動作モードを起動するようにもプログラムされている。例えば、作業者は、第一の処理ラインが停止されたことを示す信号をコントローラ800に送信することができる。作業者からの指令は、作業者によって検出された異常に応じたものでもよいし、作業者が第一の処理ラインの保守を行おうとしていることを理由とするものでもよい。いずれの場合にせよ、コントローラ800は、作業者からの信号に基づいて、第一の処理ラインを停止すべく第二の動作モードを起動する。
【0062】
第二の動作モードが起動された理由によらず、コントローラ800は、第一の処理ラインが完全に動作を再開する準備ができていると判断されるまで、システム10を第二の動作モードで動作させ続ける。その後、第一の処理ラインを完全な動作状態に戻すためには、作業者がコントローラ800に信号を送信する。作業者からの信号に基づいて、コントローラ800は、弁364Aを適切な開閉位置に動作させるとともに、コンベア14Aによる除染室50Aを通した容器12の搬送を適切な速度でモータ16Aに行わせる。これと同時に、コントローラ800は、両除染室50A,50B内の過酸化水素蒸気の濃度をユーザの設定した許容範囲内に維持するために、気化ユニット300の構成要素を制御する。例えば、コントローラ800は、気化器360への液体過酸化水素の流速の増減をモータ428に行わせ、除染室50A,50Bへの空気の流速の増減をモータ324に行わせるようプログラムされている。コントローラ800は、除染室50A,50B内の過酸化水素蒸気の濃度がユーザの設定した許容範囲内となるまで、モータ324,428を調整し続ける。同様に、コントローラ800は、両除染室50A,50B内の空気が、各除染室内の過酸化水素蒸気の濃度がユーザの設定した許容範囲内に収まる温度となるまで、加熱器342を調整し続けるようプログラムされている。上記したように、容器12が第一の処理ラインに沿って移動する速度は、除染室50A内の過酸化水素蒸気の濃度に基づいて決定される。容器12の速度は、容器12を滅菌するのに十分な時間の間、容器12を過酸化水素蒸気に曝すように選択される。
【0063】
本発明の別の実施形態によれば、コントローラ800は、第二の動作モード中に、除染室50Aに対応する処理ラインへの空気流の停止または流量の調整を曝気ユニット700に行わせるようプログラムされている。ここで、コントローラ800は、必要に応じて、弁752Aの開閉位置を調整するようにプログラムされている。これと同時に、コントローラ800は、システム10内のセンサ734,736,766を監視する。上記センサから受信した信号に基づいて、コントローラ800は、除染室50Bへ輸送される空気の量がユーザの設定した許容範囲内に留まるように送風機712の出力を調整するべくモータ714を制御する。例えば、コントローラ800は、除染室50Bに供給される空気の温度がユーザの設定した許容範囲内にあるかどうかを、コントローラ800が多岐管762内のセンサ766からの信号に基づいて判定するようにプログラムされている。空気の温度がユーザの設定した許容範囲外である場合、コントローラ800は、除染室50Bを通じて輸送される空気の温度を上下するために、加熱器744によって生成される熱量を増減する。同様に、コントローラは、除染室50Bを通って流れる空気の量がユーザの設定した許容範囲内になるまで、モータ714を調整する。
【0064】
上記では、第二の動作モード中におけるシステム10の動作を、第一の処理ラインの動作を停止または修正することに関して説明した。同様に、コントローラ800は、第二の処理ラインの動作の停止または修正を、第一の処理ラインを完全稼動状態に保ったまま行うようプログラムされている。
【0065】
ここまでは、システム10の説明を、二本(2つ)の処理ラインを備えたシステムに関して行ってきた。システム10は、滅菌剤供給システム10にそれぞれ繋がった二本(2つ)より多くの処理ラインを含むものでもよいと考えられる。この場合、コントローラ800は、システム10に属する複数のセンサを連続的に監視するようプログラムされる。複数の処理ラインのうち一本または複数本について異常を示すイベントが検出された場合には、できるだけ多くの処理ラインの完全稼動を維持するべくシステム10の動作を調整するように、コントローラ800はプログラムされる。例えば、検出されたイベントに基づいて、コントローラ800は、他の処理ラインの途切れない動作を維持したまま、一本または複数本の処理ラインを停止するようにするとよい。
【0066】
以上の説明は、本発明の具体的な実施形態の一例である。なお、本実施形態は、例示のために説明されたものに過ぎないと理解されるべきであり、様々な変更および改善が本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって実施され得る。また、そうしたあらゆる改善および変更は、それが請求項に記載されたものまたはその均等物に属する限り本発明の範囲に含まれる。
図1
図2
図3